説明

膝サポータ

【課題】膝サポータに適した生地を用いて、膝関節の屈曲時のつっぱりを解消できる膝サポータを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の膝サポータは、膝頭を露出させるための開口部22を有する筒状の本体20と、該本体20に接合されて前記本体20の上から膝頭の周囲を締付ける締付け部材70と、を備えた膝サポータ10であって、前記本体20が、膝の裏面を覆う膝裏用部材60と、膝の前面を覆う膝前用部材30とから成り、前記膝前用部材30は、前記開口部22を形成するように、膝頭の上側を覆う上部布片40と膝頭の下側を覆う下部布片50とに分離されていることを特徴とする。膝前用部材30が上部布片40と下部布片50とに分離されているので、膝関節を屈曲したときに、上部布片40と下部布片50との間が広がって膝部の屈曲に追従するので、膝関節の屈曲時のつっぱりが解消される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節に装着する膝サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節の疼痛緩和のために、膝頭の周囲を圧迫する膝サポータが使用されている。
例えば、膝頭が露出するように装着されるサポータ本体と、露出した膝頭を覆う伸縮性軟質生地から成る覆い布片とから成る膝サポータが知られている(例えば特許文献1参照)。サポータ本体は、膝裏用布片の左右側部に接合されて左右に伸張し且つ途中で上下に二股状に分かれた巻付け布片を有し、二股状部分が膝頭の上側又は下側に配置されて、その間から膝頭が露出する。
【0003】
また、別のタイプの膝サポータとしては、膝蓋骨部位を覆う膝当て布片を含む膝当て部材と、膝当て部材に一端を取着した幅広の膝裏用布片と、膝裏用布片の他端に取着され途中で上下二股状にした二股状突片を有する巻付け布片と、から成る膝サポータが知られている(例えば特許文献2参照)。膝当て部材には、膝頭を露出させるための切抜き部が形成されている。
【特許文献1】特開2002−345865号公報
【特許文献2】特開2004−162183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な膝サポータでは、膝関節の屈伸時に違和感のあることが多い。第1の理由は、膝サポータが膝頭を圧迫しているため、膝関節の屈曲時に膝頭が突出するのが阻害されて、膝関節を屈曲しにくいことである。第2の理由は、膝頭及びその周囲を覆う布片が膝頭周囲の皮膚に比べて伸縮性に乏しいため、布片が膝部の皮膚の伸縮に追従できず、膝関節を屈曲するときに膝頭の周囲につっぱりを感じることである。
【0005】
第1の理由は、例えば、特許文献2のように、膝当て部材に切抜き部を設けて膝頭を露出させることで解消できる。
しかしながら、第2の理由は容易に解消できない。第2の理由を解消する最も容易な方法は、膝の前側を覆う布片を、伸縮性が極めて高い生地に変更することである。しかしながら、皮膚と同様に伸縮する生地を使用すれば、膝頭の周囲を圧迫する力は殆ど得られず、膝サポータとしての機能を十分に発揮できない恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、膝サポータに適した生地を用いて、膝関節の屈曲時のつっぱりを解消できる膝サポータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の膝サポータは、膝頭を露出させるための開口部を有する筒状の本体と、該本体に接合されて前記本体の上から膝頭の周囲を締付ける締付け部材と、を備えた膝サポータであって、前記本体が、膝の裏面を覆う膝裏用部材と、膝の前面を覆う膝前用部材とから成り、前記膝前用部材は、前記開口部を形成するように、膝頭の上側を覆う上部布片と膝頭の下側を覆う下部布片とに分離されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の膝サポータは、膝前用部材が、膝頭の上側を覆う上部布片と膝頭の下側を覆う下部布片とに分離されているので、膝関節を屈曲したときに、上部布片と下部布片との間が広がって膝部の屈曲に追従する。よって、上部布片及び下部布片に、膝サポータに適する生地(伸縮性はあるものの、皮膚よりも格段に伸縮性の低い生地)を使用しても、膝関節の屈曲時のつっぱりを解消できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膝サポータに適した生地を用いても、膝関節の屈曲時のつっぱりを解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及び、それらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0011】
<実施の形態1>
図1〜3は、本実施の形態に係る膝サポータ10を示している。本体20は、膝の裏面を覆う膝裏用部材70と、膝の前面を覆う膝前用部材30とから筒状に成形されている。また、本体20は、膝頭を露出させるための開口部22を有している。本体20には、締付け部材70が接合されている。図1のように、膝サポータ10の装着時には、締付け部材70は、本体20の上から膝頭の周囲を締付けるのに使用される。
【0012】
膝前用部材30は、膝頭の上側を覆う上部布片40と、膝頭の下側を覆う下部布片50とに分離されている。そして、上部布片40と下部布片50との間に開口部22が形成されている。上部布片40と下部布片50とが分離しているので、膝眼節を屈曲したときに、上部布片40は上方向(太腿方向)に僅かにずれ、下部布片50は下方向(脛方向)に僅かにずれる。この僅かなずれによって、上部布片40と下部布片50との間が広がり、膝関節の屈曲に追従する。このように、本発明では、膝前用部材30を上下に分離した構造とすることにより、膝関節の屈伸運動に容易に追従できる膝サポータを得ることができる。
【0013】
図4に示すように、上部布片40の下縁部42に、略V字状の上部切込み部44を形成し、そして図5に示すように、下部布片50の上縁部52に略V字状の下部切込み部54を形成するのが好ましい。図4の上部布片40と図5の下部布片50とを、図2に示すように重ねることにより、上部切込み部44と下部切込み部52との間に開口部22を形成することができる(図2)。さらに、開口部22の左右で、上部布片44と下部布片52とが重なって重複領域32が形成されるので、膝前用部材30を上下に分離していても、膝関節への圧迫(特に、膝頭の左右への圧迫)を強めることができる。
【0014】
図2及び図3に示すように、本実施の形態の膝サポータ10には、本体20の両側に、締付け部材70が接合されている。詳しくは、締付け部材70は、開口部22の左側部から上側を締め付ける左上布片71と、開口部22の右側部から上側を締め付ける右上布片72と、開口部22の左側部から下側を締め付ける左下布片73と、開口部22の右側部から下側を締め付ける右下布片74と、の4枚の布片から構成するのが好ましい。左上布片71と右上布片72とにより、開口部22の上側(装着時には膝頭の上側)を圧迫できる(図1)。また左下布片73と右下布片74とにより、開口部22の下側(装着時には膝頭の下側を圧迫できる(図1)。
【0015】
締付け部材70は、開口部22の上側で、左上布片71が右上布片72より内側に固定されるならば、開口部22の下側では、右下布片73が左下布片74より内側に固定されるのが好ましい(図1)。開口部22の上側(装着時には膝頭の上側)では、左上布片71の外側に固定される右上布片72の方向(右方向)に引っ張られ、逆に、開口部22の下側(装着時には膝頭の下側)では、右下布片74の外側に固定される左下布片73の方向(左方向)に引っ張られる。つまり、図1の膝サポータ10は、反時計回り方向に、引っ張り力を生じることができる。
このような膝サポータ10は、膝頭に時計回りのねじりが加わって膝関節に痛みを感じている場合に特に有効であり、膝頭を正常な状態に近づけて、痛みを緩和することができる。
【0016】
また、締付け部材70の関係を逆にすることにより、時計回り方向に引っ張り力を生じることができる。すなわち、本実施の形態には、開口部22の上側では、右上布片72が左上布片71より内側に固定され、開口部22の下側では、左下布片74が右下布片73より内側に固定される膝サポータも含んでいる。
このような膝サポータ10は、膝頭に反時計回りのねじりが加わって膝関節に痛みを感じている場合に特に有効であり、膝頭を正常な状態に近づけて、痛みを緩和することができる。
【0017】
締付け部材70は、一端が着脱可能な固定方法で固定されているのが好ましい。ここで「一端」とは、左上布片71及び右上布片72では、開口部22の上側に固定される端部を指し、左下布片73及び右下布片74では、開口部22の下側に固定される端部を指す。締付け部材70の一端を着脱可能にすることで、締付け部材70による締付け力を簡単に調節できる。
【0018】
着脱可能な固定方法としては、例えば面ファスナーの使用が挙げられる。面ファスナーのフック部材(表面に多数のフックを有する部材)と、ループ部材(表面に多数のループを有する部材)の配置例を、図2及び図3を参照しながら説明する。なお、以下の説明において「内面」とは、膝サポータ10を装着したときに内側になる面を指し、「外面」とは膝サポータ10を装着したときに外側になる面を指している。
【0019】
本体20の外面には、2枚のループ部材24、26が固定される。上部布片40には、開口部22の上側に上側ループ部材24が固定され、下部布片50には、開口部22の下側に下側ループ部材26が固定される。
左上布片71の内面713には、左上布片フック部材711が端部近傍に固定され(図2)、左上布片71の外面714には、左上布片ループ部材712が広い範囲に固定されている(図3)。
右上布片72の内面723には、右上布片フック部材721が端部近傍に固定されている(図2)。
左下布片73の内面733には、左下布片フック部材731端部近傍に固定されている(図2)。
そして、右下布片74の内面743には、右下布片フック部材741が端部近傍に固定され(図2)、右下布片74の外面744には、右下布片ループ部材742が広い範囲に固定されている(図3)。
なお、各締付け部70の他端は、本体20の両側に縫合してもよい。
【0020】
図1のように膝サポータ10を装着する際の締付け部材70の固定手順を説明する。
円筒状の本体20に脚を通して、開口部22から膝頭を露出させる。次に、膝頭上側の締付け部材70の固定と、膝頭下側の締付け部材70の固定を順次行う。
【0021】
膝頭上側の締付け部材70の固定では、左上布片71の一端を開口部22の上側まで引っ張り、上側ループ部材24に左上布片フック部材711を固定する。次に、右上布片72の一端を開口部22の上側まで引っ張り、左上布片71の外面714に固定された左上布片ループ部材712に右上布片フック部材721を固定する。
【0022】
同様に、膝頭下側の締付け部材70の固定を行う。右下布片74の一端を開口部22の下側まで引っ張り、下側ループ部材26に右下布片フック部材741を固定する。次に、左下布片73の一端を開口部22の下側まで引っ張り、右下布片74の外面744に固定された右下布片ループ部材742に左下布片フック部材731を固定する。
【0023】
全ての締付け部材70を固定すると、図1のように膝サポータ10が装着される。なお、例示では、膝頭上側の締付け部材70を固定した後に、膝頭下側の締付け部材70を固定したが、固定順序は逆でも構わない。また、締付け部材70を固定する前の引っ張りの程度を調節することにより、締付け力を調節することができる。
【0024】
<実施の形態2>
図6〜図8に図示した本実施の形態の膝サポータ10は、締付け部材70の形状が実施の形態1と異なる。その他の部分は、実施の形態1とほぼ同様である。
【0025】
本実施の形態では、締付け部材70の他端(本体20に結合されている端部)の幅が、本体20の縦方向の長さの半分よりも長い。そのため、上側の締付け部材70(左上布片71と右上布片72)と下側の締付け部材70(左下布片73と右下布片74)とを本体20の両側に、上下に並べて接合したときに、上側の締付け部材70の他端と下側の締付け部材70の他端とが、部分的に重なる。
この重複領域75は、図6のように膝サポータ10を装着すると、開口部22の左右に位置し、上部布片44と下部布片52との重複領域32の上に重なる。よって、膝関節への圧迫(特に、膝頭の左右への圧迫)を強めることができる。
【0026】
この重複領域75の上下関係は、締付け部材70の一端の上下関係を考慮して決定するのが好ましい。例えば、図6に示すように、左上布片71を左下布片73より外側に固定した場合には、左上布片71を右上布片72より内側に固定し、右下布片74を右上布片72より外側で且つ左下布片73より内側に固定するのが好ましい。
【0027】
すなわち、左上布片71は、他端側では左下布片73を外側から押さえ、一端側では右上布片72によって外側から押さえられる。
また、右下布片74は、他端部側では右上布片72を外側から押さえ、一端側では左下布片73によって外側から押さえられる。
この構成を左下布片73及び右上布片72から見れば、他端部側では上下方向に隣接する締付け部材70によって外側から押さえられ、一端側では左右方向に対面する締付け部材70を外側から押さえることになる。
【0028】
全ての締付け部材70は、両端のいずれか一方が隣接する締付け部材によって外側から押さえられているので、締付け部材70が浮き上がりにくい。よって、膝サポータ10のフィット感を増すことができる。
【0029】
また、図6のようなサポータでは、開口部22の上側(装着時には膝頭の上側)では、左上布片71の外側に固定される右上布片72の方向(右方向)に引っ張られ、逆に、開口部22の下側(装着時には膝頭の下側)では、右下布片73の外側に固定される左下布片74の方向(左方向)に引っ張られる。さらに、開口部22の右側(装着時には膝頭の右側)では、右上布片72の外側に固定される右下布片74の方向(下方向)に引っ張られ、開口部22の左側(装着時には膝頭の左側)では、左下布片73の外側に固定される左上布片71の方向(上方向)に引っ張られる。つまり、図6の膝サポータ10は、反時計回り方向に引っ張り力を生じることができる。本実施の形態の膝サポータ10では、重複領域75で生じる引っ張り力が加算されるので実施の形態1(図1)の膝サポータ10よりも、反時計回りの引っ張り力を強くできる。
【0030】
また、締付け部材70の関係を逆にすることにより、時計回りの引っ張り力を生じることができる。すなわち、本実施の形態には、左上布片71は、他端部側では左下布片73より内側で、一端側では右上布片72より外側に固定され、右下布片74は、他端部側では右上布片72より内側で、一端側では左下布片73より外側に固定される膝サポータも含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1に係る膝サポータの装着状態を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る膝サポータの概略正面図である。
【図3】実施の形態1に係る膝サポータの概略背面図である。
【図4】実施の形態1に係る膝サポータに使用される上部布片の概略正面図である。
【図5】実施の形態1に係る膝サポータに使用される上部布片の概略正面図である
【図6】実施の形態2に係る膝サポータの装着状態を示す斜視図である。
【図7】実施の形態2に係る膝サポータの概略正面図である。
【図8】実施の形態2に係る膝サポータの概略背面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 膝サポータ
20 本体
22 開口部
24 上側ループ部材
26 下側ループ部材
30 膝前用部材
32 上部布片と下部布片との重複領域
40 上部布片
42 下縁部
44 上部切込み部
50 下部布片
52 上縁部
54 下部切込み部
60 膝裏用部材
70 締付け部材
71 左上布片
72 右上布片
73 左下布片
74 右下布片
75 締付け部材の重複領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝頭を露出させるための開口部を有する筒状の本体と、
該本体に接合されて前記本体の上から膝頭の周囲を締付ける締付け部材と、を備えた膝サポータであって、
前記本体が、膝の裏面を覆う膝裏用部材と、膝の前面を覆う膝前用部材とから成り、
前記膝前用部材は、前記開口部を形成するように、膝頭の上側を覆う上部布片と膝頭の下側を覆う下部布片とに分離されていることを特徴とする膝サポータ。
【請求項2】
前記上部布片の下縁部に略V字状の上部切込み部が形成され、
前記下部布片の上縁部に略V字状の下部切込み部が形成されており、
前記上部切込み部と前記下部切込み部とから開口部が形成され、
前記開口部の左右で、前記上部布片と前記下部布片とが重なっていることを特徴とする請求項1に記載の膝サポータ。
【請求項3】
前記締付け部材が、
前記開口部の左側部から上側を締め付ける左上布片と、
前記開口部の右側部から上側を締め付ける右上布片と、
前記開口部の左側部から下側を締め付ける左下布片と、
前記開口部の右側部から下側を締め付ける右下布片と、から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の膝サポータ。
【請求項4】
前記左上布片は、前記左下布片より外側で、前記右上布片より内側に固定され、
前記右下布片は、前記右上布片より外側で、前記左下布片より内側に固定されることを特徴とする請求項3に記載の膝サポータ。
【請求項5】
前記左上布片は、前記左下布片より内側で、前記右上布片より外側に固定され、
前記右下布片は、前記右上布片より内側で、前記左下布片より外側に固定されることを特徴とする請求項3に記載の膝サポータ。
【請求項6】
前記左上布片の一端及び右上布片の一端が、前記開口部の上側に着脱可能に固定され、
前記左下布片の一端及び右下布片の一端が、前記開口部の下側に着脱可能に固定されることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の膝サポータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−249746(P2009−249746A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95933(P2008−95933)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(592074289)株式会社京都繊維工業 (6)
【Fターム(参考)】