説明

膨化菓子及びその製造方法

【課題】
ダイレクトパフにより得られる膨化菓子において、該膨化菓子の持つ食感をさらに改良して、柔らかくかつ極めて口溶けの良い食感を有する膨化菓子とその製造方法を提供する。
【解決手段】
穀類及び/又は澱粉を主とする原料をエクストルーダーに供給し、該原料をダイレクトパフすることにより得られた膨化菓子生地を作成し、該膨化菓子生地を、凹凸を有する2つの押し型を使用して、該押し型の突起部と窪み部が嵌合するように配置して押しつぶすことを特徴とする膨化菓子の製造方法、及び表面に複数の溝を有し、反対面に該溝と互い違いの位置に溝を有する膨化菓子により課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔らかくかつ極めて口どけの良い食感を有する膨化菓子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
穀類や澱粉を主原料とする膨化菓子には、煎餅、あられ、ポテトチップ、コーンチップ、ポップコーン、ダイレクトパフスナックなどがある。膨化菓子の膨化方法としては、ポップコーンやポン菓子のように、生原料を直接加熱加圧して膨化する方法、煎餅のように、エクストルーダーや蒸練機等により澱粉をα化した餅状のドウを、成形ロールを通過させることにより薄いシート状に成形し、該シートをカッティングしてペレットを作成し、該ペレットを油揚げや焼成により膨化する方法(ペレット製法)、ダイレクトパフスナックのように、原料をエクストルーダーに供給して高温高圧状態にして、その吐出口に設置したノズルから吐出させ、瞬時に膨化する方法(ダイレクトパフ製法)等がある。このようにして得られた膨化菓子では、膨化菓子生地の硬さに起因する食感の特徴が品質の重要な因子であり、これまでに様々な研究・開発が行われ、数多くの製品が販売されてきた。
【0003】
エクストルーダーを使用したダイレクトパフ製法による膨化菓子の製造では、以下の様な方法が一般的である。すなわち、穀類や澱粉を主原料として、エクストルーダーフィード口から該原料を投入し、エクストルーダーのバレル部内において加圧・加熱混練処理を行い、エクストルーダー先端部に取り付けたノズルから吐出させる際に瞬時に膨化させ、次いで成型、切断を行って膨化菓子生地を得る。必要に応じて該膨化菓子生地を乾燥して水分を数%程度にまで減じた後に、調味液等を塗布して膨化菓子が得られる。エクストルーダーを使用したダイレクトパフ製法により製造される膨化菓子は、微細な気泡とそれを囲む澱粉薄膜の連続体で構成されているが、咀嚼時に必要な力は澱粉薄膜を破壊するだけでよく、このためダイレクトパフした膨化菓子の食感は一般的に柔らかいと評され、サクサクなどと表現され、高い嗜好性を有する。
【0004】
エクストルーダーを使用したダイレクトパフスナックの食感を軽くするは、エクストルーダーに供する原料の水分値を通常よりも低く設定する方法がある。それによりエクストルーダー加工中に原料へ与えられる剪断/摩擦エネルギーが多くなり、膨化菓子生地の組織を構成する澱粉薄膜が薄くなるので食感を軽くすることはできる。しかしながら、原料の水分値が低すぎるとエクストルーダー内部で原料が焦げてしまうなどの悪影響の懸念があり、生産の安定性を考慮した場合、水分の範囲は限定されてしまい、その結果食感の範囲も限定されてしまう。エクストルーダーの処理条件、特にスクリューの回転数を増加させることも同様の効果が得られるが、同じ理由で食感の範囲はやはり限定されてしまう。
【0005】
エクストルーダーでの処理条件の調整以外にも、膨化菓子の食感を改良する方法が試みられている。特許文献1には、水分含量を20〜30重量%に調整し、油脂を総固形分に対し2〜8重量%添加した澱粉原料をエクストルーダーで加熱加圧して常圧下で押し出し、成形ロール間を狭圧下で通過させることにより、板状や棒状の生地を得、該生地を焼成、油揚げ、味付けした膨化スナック食品が開示されている。しかしながら、澱粉原料の水分含量が20重量%以上と高く、またエクストルーダー処理後に焼成や油揚げをしているため、ダイレクトパフ製法ではなくペレット製法であり、成形ロール間を狭圧下で通過させるのはペレットを成形するためである。
【0006】
特許文献2には、高圧押出機から押し出された膨化物を1.5〜3倍の範囲で延伸して食感を改良する膨化スナックの製造法が開示されている。本方法によれば、膨化スナック生地を引き伸ばすことにより折れにくくなり、シャリシャリした食感になるが、引き伸ばし方向に組織が揃い、気泡膜が密になるために強度が増し、サクサクではなく、シャリシャリという表現が示すように口残りのするものとなる。
【特許文献1】特開昭63−32448号公報
【特許文献2】特開昭63−226246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ダイレクトパフにより得られる膨化菓子において、該膨化菓子の持つ食感をさらに改良して、柔らかくかつ極めて口溶けの良い食感を有する膨化菓子とその製造方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、穀類及び/又は澱粉を主とする原料をエクストルーダーに供給し、該原料をダイレクトパフすることにより得られる膨化菓子生地を作成し、該膨化菓子生地を、凹凸を有する2つの押し型を使用して、該押し型の突起部と窪み部が嵌合するように配置して押しつぶすことを特徴とする膨化菓子の製造方法、及び表面に複数の溝を有し、反対面に該溝と互い違いの位置に溝を有する膨化菓子によって、上記課題を解決することができた。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、柔らかくかつ極めて口溶けの良い食感を有する、ダイレクトパフした膨化菓子が得られる。さらに、押しつぶされた膨化菓子生地の厚さを元の厚さの30〜60%の間で任意に調整することで、膨化菓子の食感の柔らかさの程度を様々に調整することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に使用するエクストルーダーは1軸エクストルーダー又は2軸エクストルーダーから選択することができる。また、膨化菓子生地を製造するためにエクストルーダーに供する原料としては、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、燕麦粉、オーツ麦粉、とうもろこし粉、米粉、大豆粉、マッシュポテト、コーングリッツ等の穀類、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ等の澱粉等がある。またα化物、アセチル化誘導体、リン酸架橋誘導体等の加工澱粉を使用しても良い。穀類、澱粉原料とともに、糖質原料、蛋白原料、油脂原料、農水産物、アミノ酸、乳化剤、膨張剤、食塩、香辛料、調味料、ビタミン、ミネラル、セルロース等を使用しても良い。特に、エクストルーダーに投入する原料の乾燥重量に対して、セルロースを0.5〜6重量%、好ましくは1.5〜4重量%となるように添加すると、エクストルーダーから吐出した膨化菓子生地を押しつぶしたときに気泡膜が適度に破壊され、柔らかくかつ極めて口溶けの良い食感となる。なお、エクストルーダーに投入する原料の乾燥重量は、エクストルーダーから吐出した膨化菓子生地の乾燥重量と同じである。
【0011】
上記原料に水を添加して、水分を14〜19重量%、好ましくは15〜17重量%に調整する。14重量%よりも少ないと、膨化菓子生地に焦げが発生したりひび割れが起こり好ましくない。19重量%を超えると、膨化菓子生地中に十分に気泡が発生せず、好ましい食感とならない。水分を調整した原料をエクストルーダーに投入し、120〜200℃、好ましくは140〜180℃でクッキングを行うことで、ダイレクトパフした膨化菓子生地を得る。
【0012】
エクストルーダーから吐出した膨化菓子生地を、凹凸を有する2つの押し型を使用して、該押し型の突起部と窪み部が嵌合するように配置して押しつぶす。このとき、押し型は回転ロール型であっても、プレス型であっても良い。型表面に形成される凹凸は、2つの押し型を重ね合わせたときに、凹凸部分が嵌合する形状であることが好ましく、例えば、突起部と窪み部が互い違いに直線状に並行する形状(図1)、突起部と窪み部が互い違いに山型に並行する形状(図2)、突起部と窪み部が互い違いに波状に並行する形状(図3)等があげられる。該形状の方向はどのような角度であっても良く、例えば図1の形状の場合、直線状の突起部及び窪み部が、膨化菓子生地の進行方向に対して平行であっても、垂直であっても、斜めであっても良い。突起部と窪み部により形成される溝の深さは、2〜8mm程度が好ましく、隣接する突起部間の距離は、2〜10mm程度が好ましい。
【0013】
該形状の2つの押し型を、重ね合わせたときに突起部と窪み部が嵌合するように設置する。図4は、突起部と窪み部が互い違いに直線状に並行する形状を、回転ロール表面に膨化菓子生地の進行方向と平行に形成し、重ね合わせたときに突起部と窪み部が嵌合するように、2つの該回転ロールを設置した模式図である。なお本発明において、嵌合とは型の凹凸部分がかみ合った状態を示すが、2つの型が完全に密着してかみ合っても良く、完全には密着せず、かみ合ったときに型間に隙間を生じてもよい(図5参照)。また、嵌合するように配置するとは、型表面に対して垂直方向に2つの型を近づけると、型の凹凸部分がかみ合う位置に配置することを示す。
【0014】
回転ロールを使用する場合、適当なクリアランスに調整した2つの回転ロールを回転させ、該2つの回転ロールの間に膨化菓子生地を送り込む。すると、2つの回転ロールの隙間に膨化菓子生地が進入し、押しつぶされて送り出される。図6は、膨化菓子生地が回転ロールに供給され圧縮される態様を示すものである。膨化菓子生地は、エクストルーダーから吐出直後に微細な気泡とそれを囲む澱粉薄膜で構成される連続膜構造を獲得するが、本発明では、膨化菓子生地を回転ロールやプレス機等で押しつぶすことで連続膜構造が適度に破壊されるために、柔らかくかつ極めて口どけの良い食感が得られる。押し型が突起や窪みを有さない平滑形状である場合は、押しつぶしても、連続膜構造が変形するだけで破壊されないので、良好な食感が得られず、さらに極限まで押しつぶすと気泡がつぶれ、かえって硬く口溶けが悪い食感となる。また、突起部同士が重なるように押し型を配置して製造しても、突起部で膨化菓子生地が極度に押しつぶされるか切断される一方、窪み部では十分に押しつぶされないため好ましくない。
【0015】
エクストルーダーから吐出後、膨化菓子生地温度の低下とともに連続膜構造の強度が増加する。すなわち膨化菓子生地は硬くなっていく。該膨化菓子生地にまだ柔軟性が残存する間に押しつぶすことが重要である。このときの押しつぶすまでの時間は、エクストルーダー吐出後1〜6秒、好ましくは2〜4秒の間である。1秒未満では、膨化生地の連続膜構造がまだ柔らかく、押しつぶしても連続膜構造が破壊されない。一方、6秒を越えると、連続膜構造が硬すぎて膨化菓子生地全体が破壊されて粉々になってしまう。
【0016】
2つの押し型間のクリアランスを調整することで、膨化菓子生地の厚さを調整することが可能である。膨化菓子生地を押しつぶす程度は、押しつぶした後の膨化菓子生地の厚さが押しつぶす前の膨化菓子生地の厚さの30〜60%、好ましくは40〜50%が良い。押しつぶした後の膨化菓子生地の厚さが60%よりもりも厚いと食感の変化が少なく、30%未満にすると、膨化菓子生地全体が破壊されて粉々になってしまう。膨化菓子生地を押しつぶす前後、または押しつぶすと同時に膨化菓子生地を適当な大きさに切断しても良い。またその後、乾燥により水分を調整したり、調味液を塗布して味付けしても良い。
【0017】
このようにして得られた膨化菓子は、押し型の突起部により、その表面に複数の溝が形成され、反対面には該溝と互い違いの位置に同様に形成された溝を有する。図7は、図1の形状の押し型により作成された本発明の膨化菓子の斜視図を示す。押しつぶした後の膨化菓子生地の厚さが、押しつぶす前の膨化菓子生地の厚さの70%以上の場合は明瞭な溝は形成されない。また、エクストルーダー吐出口のノズル形状を工夫して、溝を有する膨化菓子生地を成形しようとしても、エクストルーダー吐出時には溝を埋めるように膨化するため、ダイレクトパフ後に型押ししないと溝は形成されない。
以下に実施例を例示して、本発明の製造方法をさらに詳細に説明するが、これらは例示であって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0018】
試験例1
コーングリッツ(水分12重量%)95.95重量部、結晶セルロース3.2重量部、グリセリン脂肪酸エステル0.35重量部、食塩0.3重量部、植物油脂0.2重量部に水4重量部を添加し、水分を約15.9重量%に調整した原料を、一軸エクストルーダーに投入し、バレル温度160℃、スクリュー回転220rpmにて処理し、水分が8重量%、厚さ12mmの板状の膨化菓子生地を吐出させた。該膨化菓子生地を吐出後1〜10秒後に図4に示される回転ロールに供給して押しつぶし、膨化生地の厚さを約5mmにした。その後該膨化菓子生地を長さ50mmに切断し、水分が1重量%になるまで乾燥し、調味液を塗布して膨化菓子を得た。該膨化菓子の食感を、専門パネルにより、押しつぶさずに製造した膨化菓子との比較により評価した。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

×・・・組織破壊、○・・・口溶け良、◎・・・口溶け最良

エクストルーダーから吐出後、1〜6秒後に押しつぶしたものは押しつぶさなかったものよりも口溶けが良好であり、2〜4秒のときが特に好ましいものであった。また、吐出後8秒以上経過すると、組織全体が破壊されてしまった。破壊されていない膨化菓子表面には直線状の複数の溝が形成されており、その反対面には該溝と互い違いの位置に同様な溝が形成されていた。
【0020】
試験例2
コーングリッツ(水分12重量%)95.95重量部、結晶セルロース3.2重量部、グリセリン脂肪酸エステル0.35重量部、食塩0.3重量部、植物油脂0.2重量部に水4重量部を添加し、水分を約15.9重量%に調整した原料を、一軸エクストルーダーに投入し、バレル温度160℃、スクリュー回転220rpmにて処理し、水分が8重量%厚さ12mmの板状の膨化菓子生地を吐出させた。該膨化菓子生地を、吐出の4秒後に、図4に示される回転ロールに供給し、回転ロール間のクリアランスを調整し、厚さが押しつぶす前の20〜70%になるようにして押しつぶした。その後該膨化菓子生地を長さ50mmに切断し、水分が1重量%になるまで乾燥し、調味液を塗布して膨化菓子を得た。該膨化菓子の食感を、試験例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0021】
【表2】

×・・・組織破壊、△・・・変化なし、○・・・口溶け良、◎・・・口溶け最良

押しつぶしたときの厚さが押しつぶす前の30〜60%のときに口溶けが良好となり、40〜50%が最も好ましかった。70%では、押しつぶす前と口溶けはあまり変わらなかった。また、厚さ20%にまで押しつぶしたものは組織全体が破壊されてしまった。厚さを押しつぶす前の70%とした膨化菓子以外の、破壊されていない膨化菓子表面には直線状の複数の溝が形成されており、その反対面には該溝と互い違いの位置に同様な溝が形成されていた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】押し型表面の突起部と窪み部が互い違いに直線状に並行する形状を上面から見た模式図及びAB線で切断したときの断面図。
【図2】押し型表面の突起部と窪み部が互い違いに山型に並行する形状を上面から見た模式図及びCD線で切断したときの断面図。
【図3】押し型表面の突起部と窪み部が互い違いに波状に並行する形状を上面から見た模式図及びEF線で切断したときの断面図。
【図4】突起部と窪み部が互い違いに直線状に並行する形状を、回転ロール表面に膨化菓子生地の進行方向と平行に形成し、重ね合わせたときに突起部と窪み部が嵌合するように、2つの該回転ロールを設置した模式図。
【図5】a 上型と下型が密着して嵌合した態様の模式図。 b 上型と下型が密着せずに嵌合した態様の模式図。
【図6】膨化菓子生地が回転ロールに供給され圧縮される態様の模式図。
【図7】図1の形状の押し型により作成された本発明の膨化菓子の斜視図。
【符号の説明】
【0023】
1・・・・・本発明の押し型の窪み部
2・・・・・本発明の押し型の突起部
3・・・・・回転ロール
4・・・・・回転軸
5・・・・・押しつぶされる前の膨化菓子生地
6・・・・・押しつぶされた後の膨化菓子生地
7・・・・・上型
8・・・・・下型
9・・・・・型間の隙間
10・・・・膨化菓子に形成された溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類及び/又は澱粉を含む原料をエクストルーダーに供給し、ダイレクトパフして膨化菓子生地を作成し、該膨化菓子生地を、凹凸を有する2つの押し型を使用して、該押し型の突起部と窪み部が嵌合するように配置して押しつぶすことを特徴とする、膨化菓子の製造方法。
【請求項2】
エクストルーダーに供給する原料の水分が14〜19重量%である請求項1に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項3】
エクストルーダーから吐出した膨化菓子生地を、吐出後1〜6秒の間に押しつぶすものである請求項1又は2に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項4】
押しつぶした後の膨化菓子生地の厚さが、押しつぶす前の膨化菓子生地の厚さの30〜60%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項5】
膨化菓子生地の乾燥重量に対して、セルロースが0.5〜6重量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項6】
表面に複数の溝を有し、反対面に該溝と互い違いの位置に溝を有する膨化菓子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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