説明

膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子のための被覆剤としてのハイドロホビン

ハイドロホビン、特に一般構造式(I)
n−C1−X1-50−C2−X0-5−C3−X1-100−C4−X1-100−C5−X1-50−C6−X0-5−C7−X1-50−C8−Xm (I)
(但し、
Xが、20種の天然由来のアミノ酸の何れか、
nとmが0〜500の範囲の数、
Cがスチレン、
である。)
のプロテインを含む被膜を有する、膨張可能な、又は膨張した、熱可塑性ポリマー粒子、及び静電防止剤としてのその使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロホビンを含んだ被膜を有する膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子に関し、及びこれらを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膨張可能なポリスチレンを、問題が発生しない方法で輸送可能とするために、及び予備発泡(前発泡)したポリスチレンフォーム粒子の静電気的電荷(帯電)を低減するために、このESP粒子は、通常、静電気防止剤(帯電防止剤)で被覆される。被覆剤が磨耗し、又は粒子表面から洗い流されることに起因して、静電防止特性(帯電防止特性)は、しばしば不十分なものとなる。このことは、この静電防止性被覆について、粒子の塊状化(caking)と流動性が低下するという結果をもたらす。
【0003】
特許文献1(EP−A470455)には、ビード状の静電防止性(帯電防止性)、膨張性スチレンポリマーが記載されており、このスチレンポリマーは、第4級アンモニウム塩及び微細に粉砕されたシリカを含む被膜を有しており、そして、良好な流動性を有していることで区別される。
【0004】
ハイドロホビンは、約100〜150個のアミノ酸を有する小さなプロテイン(small protein)であり、糸状菌(filamentous fungi)例えば、シゾフィラムコムネ(Schizophyllum commune)に特有のものである。通常、これらは8個のシステイン単位を有している。
【0005】
ハイドロホビンは、境界表面に顕著な親和性(affinity)を有しており、そして従って、表面の被覆に適切である。従って、例えば、疎水性の表面を得るために、ハイドロホビンを使用して、テフロン(登録商標)を被覆することが可能である。
【0006】
ハイドロホビンは、天然物質から分離(単離)して良い。本出願人による特許文献2(DE102005007480.4)は、ハイドロホビンを製造する方法が開示されている。
【0007】
従来技術には、ハイドロホビンの種々の使用方法が提案されている。
【0008】
特許文献3(WO96/41882)は、ハイドロホビン性表面を疎水化するために、疎水性表面の耐水性を改良するために、水中オイル(oil in water)乳濁液又はオイル中水(water in oil)乳濁液を製造するために、ハイドロホビンを、乳化剤、シックナー、界面活性剤として使用する方法を提案している。軟膏又はクリームの製造等の薬学(製薬)的適用、及び、スキン保護又はヘアシャンプー又はヘアリンス等の化粧品的適用も提案されている。
【0009】
特許文献4(WO01/57528)は、窓ガラス、コンタクトレンズ、バイオセンサー、医療機器、試験資材の運搬用又は保存用容器、船体、固体粒子、又は車体(シャシー)又は旅客車の車体を、30〜80℃の温度において、ハイドロホビン含有溶液で被覆することを開示している。
【0010】
特許文献5(WO03/53383)は、化粧分野において、ケラチン(角質)を処理するために、ハイドロホビンを使用することを開示している。
【0011】
特許文献6(WO03/10331)には、ハイドロホビンで被覆されたセンサー、例えば測定電極(このセンサーには、別の非共有結合物質、例えば電気活性(electroactive)物質、抗体又は酵素が付加されている。)が開示されている。
【0012】
【特許文献1】EP−A470455
【特許文献2】DE102005007480.4
【特許文献3】WO96/41882
【特許文献4】WO01/57528
【特許文献5】WO03/53383
【特許文献6】WO03/10331
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、上述した不利な点を除去し、そして、膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子のための、密度を低下させる予備発泡又は発泡の間、粒子が塊状化する傾向を低減させる、静電気防止性(帯電防止性)被覆を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、上述した膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子が見出された。
【0015】
この被覆(被覆物)は、熱可塑性ポリマーに対して、1〜5000ppm、特に10〜1000ppmのハイドロホビン(ヒドロホビン:hydrophobin)を含むことが好ましい。被覆は、更に、静電防止剤及び/又は被覆助剤を含んでも良く、又、異なる被覆剤を含む別の被覆が施されても良い。ハイドロホビン又はハイドロホビン混合物のみから成り、そして膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子上に単分子層(monomolecular layer)を形成する被覆が特に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子のために、ポリスチレン(EPS)等のスチレンポリマー又はポリエチレン(EPE)又はポリプロピレン(EPP)等のポリオレフィンを使用することが好ましい。
【0017】
膨張可能な熱可塑性ポリマー粒子は、膨張された熱可塑性ポリマー粒子を得るために、例えば、ホットエア又は熱風(ホットストリーム)により、発泡(フォーム化)可能なものである。これらは、通常、化学的又は物理的発泡剤を、熱可塑性ポリマーに対して2〜10質量%、好ましくは3〜7質量%の量で含む。
【0018】
好ましい物理的発泡剤は、窒素又は二酸化炭素、又は2〜7個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル又はハロゲン化炭化水素等のガスである。イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、n−ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン又はこれらの混合物を使用することが特に好ましい。
【0019】
膨張可能な、及び膨張した熱可塑性ポリマー粒子は、更に、染料、顔料等の通常の助剤、充填剤、カーボンブラック等のIR吸収剤、アルミニウム又はグラファイト、安定剤、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)等の難燃剤(frame retardants)、ジクミル(dicumyl)又は過酸化ジクミル(dicumyl preoxide)等の合成難燃剤、核生成剤(nucleating agent)又はグリダント(glidant)を有効な量だけ含んでも良い。
【0020】
製造方法に依存して、本発明に従う膨張可能な熱可塑性ポリマー粒子は、球状、ビード状又はシリンダー状であって良く、そして通常、平均粒径が、0.05〜5mmの範囲、特に0.3〜2.5mmの範囲であって良く、そして適切であれば、スクリーニング(選別)により、個々の部分けしても良い。
【0021】
膨張した熱可塑性ポリマー粒子は、平均粒子が、1〜10mmの範囲、特に2〜6mmの範囲であり、そして膨張の程度に対応して、密度が、10〜200kg/m3の範囲である。
【0022】
膨張可能な熱可塑性ポリマー粒子は、例えば、以下の方法で得ることができる。すなわち、(例えば、)熱可塑性ポリマーを、タンク中において、発泡剤で、圧力含浸(pressure impregnation)させることにより、発泡剤の存在下に懸濁重合させることにより、又は押出し成形機又は静的攪拌器内で溶融含浸させ、その後に、水の使用下に圧力造粒(pressure granulation)することにより得ることができる。
【0023】
膨張した熱可塑性ポリマー粒子は、膨張可能な熱可塑性ポリマー粒子を発泡させることにより得られて良く、これは、例えば、予備発泡器(prefoamer)中のホットエアー又は熱風を使用して、又は熱可塑性粒子をタンク中の発泡剤で圧力含浸させ、後に減圧することにより、又は発泡剤を含んだ溶融物を発泡させながら溶融押出し、そして次に造粒することにより行われて良い。
【0024】
本発明に従い使用される「ハイドロホビン」という用語は、以降、一般構造式(I)、
n−C1−X1-50−C2−X0-5−C3−X1-100−C4−X1-100−C5−X1-50−C6−X0-5−C7−X1-50−C8−Xm (I)
(但し、Xは、20種の天然由来のアミノ酸(Phe、Leu、Ser、Tyr、Cys、Trp、Pro、His、Gln、Arg、Ile、Met、Thr、Asn、Lys、Val、Ala、Asp、Glu、Gly)の何れかであって良い。)のプロテイン(protein)を意味する。Xは、同一であって良く、異なっていても良い。Xに続く指数(indice)は、各場合においてアミノ酸の数を表し、Cは、システインを表し、そして、指数n及びmは、独立して0〜500の範囲の自然数、好ましくは15〜300の範囲の自然数である。
【0025】
式(I)に従うポリペプチドは、ガラス表面に被覆した後、水滴の接触角度が、少なくとも20°、好ましくは25°、及び特に好ましくは30°増加する(各場合、室温で測定)という特性によって更に特徴づけられる(但し、上記接触角度の増加は、同一の大きさの水滴と、被覆を行なっていないガラス表面との接触角度と比較してのものである。)。
【0026】
1〜C8で表されたシステインは、還元された状態で存在して良く、又は相互間で二硫化ブリッジを形成して存在して良い。C−Cブリッジを分子間で形成することが特に好ましく、特に少なくとも1個、好ましくは2個、特に好ましくは3個の分子間形成であり、及び極めて好ましくは4個の分子間二硫化ブリッジである。
【0027】
本発明を行うために、一般式(II)、
n−C1−X3-25−C2−X0-2−C3−X5-50−C4−X2-35−C5−X2-15−C6−X0-2−C7−X3-35−C8−Xm (II)
(但し、X、C及びXとCに続く指数は、上記に定義したものであり、しかし、指数nとmは、0〜300の範囲の数を表す。)のヒドロホビンを使用することが好ましく、そしてこのプロテインは、更に上述した接触角の変化で区別可能である。
【0028】
一般式(III)、
n−C1−X5-9−C2−C3−X11-39−C4−X2-23−C5−X5-9−C6−C7−X6-18−C8−Xm (III)
(但し、X、C及びXとCに続く指数は、上記に定義したものであり、指数nとmは、0〜200の範囲の数を表す。)のヒドロホビンを使用することが特に好ましく、そしてこのプロテインは、更に上述した接触角の変化で区別可能なものである。
【0029】
残基(残留物:residue)Xn及びXmは、ペプチド配列であって良く、このペプチド配列は、ハイドロホビンに自然に結合していても良い。しかしながら、残基XnとXmの何れか、又は両方がハイドロホビンと自然には結合しないペプチド配列であっても良い。ここで、これには、ハイドロホビン中に自然に発生(存在)するペプチド配列が、ハイドロホビン中には自然には存在しないペプチド配列によって延長(増量)されている、残基Xn及び/又はXmも含まれる。
【0030】
n及び/又はXmが、ハイドロホビンと自然には結合しないペプチド配列である場合、このような配列(シーケンス)は通常、少なくとも20アミノ酸の長さであり、この長さは、少なくとも35アミノ酸であることが好ましく、少なくとも50アミノ酸であることがより好ましく、そして、少なくとも100アミノ酸であることが極めて好ましい。ハイドロホビンと自然には結合しないこの種の残基は、以降、融合相手部分(fusion partner portion)とも称される。このことは、本発明に従い使用されるプロテインは、少なくとも1種のハイドロホビン部分(hidorohobin portion)と、融合相手部分(これらは、この状態では自然には一緒に発生しない。)とから構成されて良いことを説明することを意図している。
【0031】
この融合相手部分は、多種のプロテインから選ばれて良い。複数の融合相手部分が1個のハイドロホビン部分、例えば、上述したハイドロホビン部分のアミノ末端基(アミノ末端部分)(Xn)、又はカルボキシル末端基(Xm)と結合することも可能である。しかし、例えば、2個の融合相手部分が、本発明のプロテインの1箇所(Xn又はXm)と結合することも可能である。
【0032】
特に適切な融合相手部分は、微生物(microorganismus)、特にE.コイル又はバチルスサブチリス中に自然に発生するプロテインである。このような融合相手部分の例は、配列yaad(SEQ ID NO:15及び16)、yaae(SEQ ID NO:17及び18)及びチオレドキシン(thioredoxin)である。上述した配列の1部分のみ、好ましくは上述した配列の70%〜99%及び、より好ましくは80〜98%を含む、上述した配列の断片(fragment)又は誘導体も適切であり、又、上述した配列に対して、個々のアミノ酸又はヌクレオチドが取替えられているものも適切である(なお、百分率は、全てアミノ酸の数に対してである)。
【0033】
本発明に従い使用されるプロテインのポリペプチド配列は、例えば、グリコシル化、アセチル化によって、又は他に、例えばグルタルアルデヒドでの化学的な架橋によって、追加的に修飾(改変:modify)されていても良い。
【0034】
本発明に従い使用されるプロテインの特性の一つには、表面(surface)がこのプロテインで被覆された場合には、表面特性が変化することが挙げられる。表面特性の変化は、表面をプロテインで被覆する前と後で、水の滴の接触角を測定し、そしてこの2つの測定値の差を測定(計算)することにより、実験的に確かめることができる。
【0035】
接触角の測定は、この技術分野の当業者にとって公知である。接触角の測定は、室温及び5μlの水に基づいている。例えば、適切な接触角の測定方法の正確な実験条件は、実施例部分に記載されている。実施例で記載した条件下で、本発明に従い使用されるプロテインは、接触角度を、少なくとも20°、好ましくは少なくとも25°、及び特に好ましくは少なくとも30°増加させる(但し、上記接触角度の増加は、同一の大きさの水滴と、被覆を行なっていないガラス表面との接触角度と比較してのものである。)。
【0036】
今日までに知られているハイドロホビンのハイドロホビン部分には、極性及び非極性アミノ酸の部分(箇所:position)が含まれて(保存されて)おり、これは、特徴的なハイドロホビンプロット(hydrophobicity plot)を提供する。生物物理的特長及び疎水性(hudrophobicity)の差異により、今日までに知られているハイドロホビンは、クラスIとII(Wassels et al.1994, Ann. Rev.Phytopathol.,32,413−437)の2種類に分けられる。
【0037】
クラスIのハイドロホビンの(集められた)被膜は、広い範囲で不溶性であり(例えば、高温度下のナトリウムドデシルサルフェート(SDS)の1質量%の水溶液にも不溶性である。)、そして、濃縮トリフルオロ酢酸(TFA)又は蟻酸でのみ解離可能である。これに対して、クラスIIのハイドロホビンの(集められた)型は、より不安定である(安定性に劣る)。これらは、60%濃度(strength)のエタノールの又は1%SDS(室温における。)に溶解可能である。
【0038】
アミノ酸配列を比較した場合、システインC3とシステインC4との間の領域の長さは、クラスIのハイドロホビンよりも、クラスIIのハイドロホビンの方が明らかに短いことがわかる。更に、クラスIIのハイドロホビンは、クラスIのハイドロホビンよりも、より荷電された(charged)アミノ酸を有している。
【0039】
本発明を実施するための、特に好ましいハイドロホビンは、タイプdewA、rodA、hypA、hypB、sc3、basf1、basf2のもので、これらは以下に列挙する配列に構造的な特徴を有している。これら(上記好ましいハイドロホビン)は上述したタイプの一部分のみ、又はこれらの誘導体であって良い。ハイドロホビン部分の複数、好ましくは2又は3個の同一又は異なる構造物を互いに結合させて良く、及び対応する適切なポリペプチド配列(このポリペプチド配列は、自然にはハイドロホビンと結合しないものである。)に結合させて良い。
【0040】
本発明を行うために特に適切なものは、更に、SEQ ID NO:20,22,24中に示されたポリペルチド配列を有する融合プロテイン(fusion protein)、及びそのためにコードする核酸配列(nucleic acid sequence)を有する融合プロテインであり、これは、特にSEQ ID NO:19,21,23に従う配列である。特に好ましい実施の形態として、更に、プロテインは、SEQ ID NO:22,22又は24中に示されたポリペプチド配列から出発して、全てのアミノ酸の、少なくとも1から10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは5%を、変換(置換)、挿入(差込:insertion)又は削除(deletion)することにより得られ、且つ出発プロテインの生物学的特性を少なくとも50%有しているプロテインも含む。ここで、プロテインの生物学的特性は、上述した接触角度の増加量が、少なくとも20°であることを意味している。
【0041】
本発明に従い使用されるプロテインは、ペプチド合成の通常の技術(例えば、メリフィールド(Merrifield)固相合成)によって化学的に製造可能である。
【0042】
自然に発生するハイドロホビンは、適切な方法を使用して、天然原料から分離することができる。例えば、Wosten et. al.,Eur.J Cell Bio.63,122−129(1994)又はWO96/41882が参照可能である。
【0043】
融合プロテインは、遺伝子工学法によって製造可能であることが好ましく、この遺伝子工学法では、融合相手のため、及びハイドロホビン部分のためにコードする核酸配列、特にDNA配列が(互いに)組合され、そして、ホスト有機体(宿主有機体:host organism)中で、組合された核酸配列の遺伝子発現(expression)により、所望のプロテインが形成されるものである。このような製造方法は、本願の出願人による、先願のDE102005007480.4に開示されている。
【0044】
上述した製造方法のために適切なホスト有機体(生成有機体)は、原核生物(prokaryotes)(始原(Archaea)を含む)又は真核生物(eukaryotes)であって良く、特にハロバクテリア含有バクテリア及びmetanococci、フンギ(菌)、インセクトセル(昆虫細胞)、植物細胞、及び哺乳類細胞、より好ましくはEscerichiaコイル、バチルスサブチリス、バチルスメガテリウム(megaterium)、アスペルギルスオリジア(Aspergillus oryzea)、アスペルギルスニドランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)、ピキアパトリス(Pichia pastoris)、シュードモナス(Pseudomonas)種(spec.)、ラクトバシリ(Lactobaclli)、ハンセヌラポリモルファ(Hansenula polymorpha)、トリコデルマレーゼイ(Trichoderma reesei)、SF9(又は関連する細胞)等であって良い。
【0045】
更に、本発明は、遺伝子発現構築体(expression construct)の使用方法に関し、ここで、この遺伝子発現構築体は、調節核酸配列の遺伝子的な制御下に、本発明に従い使用されるポリペプチドのためにコードする核酸配列、及びこれら発現構築体を少なくとも1種含むベクターを含むものである。
【0046】
使用する構築体(遺伝子発現構築体)は、好ましくは、所定のコード配列(暗号配列:coding sequence)の5’−上流側に、(1つの)プロモーター(promoter)を含み、及び(それぞれコード配列の)3’−下流側に、末端配列(ターミネーター配列)を含み、及び所望により、通常の別の調節エレメント(regulatory element)を含み、そして、各場合において、コード配列と、実質的に(操作的に)結合している。
【0047】
上記「実質的に(操作的に)結合」は、プロモーター、コード配列、ターミネーター、及び所望により別の調節エレメントの次のような配列的な配置、すなわち、各調節エレメントが、コード配列の遺伝子発現において必要とされる機能を発揮し得るような配置を意味する。
【0048】
実質的に(操作上)結合可能な配列の例は、標的(targeting)配列、及びエンハンサー(enhancer)、ポリアデニル化シグナル等である。更なる調節エレメントは、選択性(selectable)マーカー、増幅(amplification)シグナル、複製の原点(origin)等である。適切な調節配列は、例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA(1990)に記載されている。
【0049】
これらの調節配列(regulatory sequence)に加え、これら配列の自然の調節(regulation)が、実際の構造遺伝子の上流(upstream)に存在しても良く、及び適切であれば、自然調節が排除(スイッチオフ)され、そして遺伝子の発現が増加するように遺伝子上、代え(alter)られて良い。
【0050】
好ましい核酸構築体は、上述したエンハンサーの配列を1種以上含むことが有利であっても良い。ここで、このエンハンサーの配列は、プロモーターと機能的に結合しており、そして、核酸配列の発現を高めることができるものである。また、DNA配列の3’エンドに、更に、調節エレメント又はターミネータ等の有利な配列が挿入されても良い。
【0051】
核酸は、1個以上のコピーの状態で構築体中に含まれても良い。構築体(construct)は、更に、場合により、抗生物質耐性(antibiotic resistance)又は栄養要求性相補遺伝子(auxotrophy−complemeting gene)等の付加的なマーカーを(構築体上で選択するために)含んでも良い。
【0052】
この方法のために有利な調節配列は、例えば、cos、tac、trp、tet、trp、tet、lpp、lac、lpp−lac、laclq−T7、T5、T3、gal、trc、ara、rhaP(rhaPBAD)SP6、lambda−PR又はimlambda−Pプロモーター等のプロモーター中に存在する(ここで、プロモーターは、グラム陰性(Gram−negative)バクテリア中に使用することが有利である)。更に、有利な調節配列は、例えば、グラム陽性(Gram−positive)プロモーターのamy及びSP02中に、イースト(yeast)又は菌(fungal)プロモーターADC1、MFalpha、AC、P−60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADH中に存在する。
【0053】
調節のために、人工的なプロモーターを使用することも可能である。
【0054】
ホスト有機体(宿主有機体)中で発現するために、核酸構築体は、ベクター中に有利に装入される。ここで、このベクターは、例えば、プラスミド又はファージ(phage)等のものであり、これらは、ホスト(宿主:host)中に遺伝子の最適な発現を可能にするものである。ベクターは、プラスミド(plasmid)及びファージの他に、更に、当業者に公知のベクターをも意味する。この公知のベクターは、例えば、SV40、CMV等のウィルス、バキョロウィルス(baculovirus)及びアデノウィルス(adenovirus)、トランスポゾン(transposons)、IS要素、ファスミド(phasmids)、コスミド(cosmids)、及び直線状又は環式DNA、及び又、アグロバクテリウム(Agrobacterium)系である。
【0055】
これらのベクターは、ホスト有機体内で、内因的に再現(複製)されて良く、又は染色体的に再現されて良い。これらベクターは、本発明の別の形態を構成する。適切なプラスミド(plasmid)の例は、Eコイル、pLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223−3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、plN−III”3−B1、tgt11又はpBdCl中のもの、ストレプトミセス(Streptomyces)、plJ101、plJ364、plJ702、又はplJ361中のもの、バチルス(Bacillus) pUB110、pC194、又はpBD214中のもの、コリネバクテリウム(Corynebacterium) pSA77又はpAJ667中のもの、菌(フンギ)pALS1、plL2又はpBB116中のもの、イースト(yeasts)2アルファ、pAG−1、YEp6、YEp13、又はpEMBLYe23中のもの、又は植物pLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004又はpDH51中のものである。上述したプラスミドは、可能なプラスミドの小部分を選択して示したものである。更なるプラスミドは、それ自身公知であり、そして、例えば、book Cloning Vectors(Eds.Pouwels P.H.et al. Elsevier, Amsterdam−New York−Oxford、1985、ISBN 0444904018)に見出される。
【0056】
存在する他の遺伝子を発現させるために、核酸構築体は、更に、3’−及び/又は5’−ターミナル調節配列も含み、ホスト又は遺伝子(遺伝子は複数種類の場合を含む)の選択に従い、最適の発現のために選択された発現を高める(増加させる)ことが有利である。
【0057】
これら調節配列は、目標とする遺伝子の発現とプロテイン発現を可能にすることを意図している。ホスト有機体に依存して、このことは、例えば遺伝子が、誘導(induction)の後にのみ発現又は過剰発現(overexpress)されて良いことを意味して良く、又は直ちに発現又は過剰発現されて良いことを意味して良い。
【0058】
これに関連して、調節配列或いはファクター(因子:factor)は、好ましくは、導入された遺伝子発現に積極的な影響を及ぼすことが可能であり、そしてこれにより、この遺伝子発現を高める(増加させる)ことができる。従って、強い転写シグナル、例えばプロモーター及び/又はエンハンサーを使用することにより、調節エレメントの強化(増加)を転写領域(transcription level)上で有利に行うことができる。しかしながら、これに加え、例えば、mRNAの安定性を改良することにより、翻訳を高めることも可能である。
【0059】
ベクターの他の実施の形態では、本発明の核酸構築体又は核酸を含むベクターは、直線状(直鎖状)DNAの状態で、微生物中に有利に導入されても良く、そしてヘテローグ(異種又は相異:heterologous)又はホモローグ(同種又は相同:homologous)の組換えを介して、ホスト有機体のゲノムに統合されても良い。この直線状DNAは、プラスミド等の直線化ベクターで構成されて良く、又は核酸構築体又は核酸のみよって構成されても良い。
【0060】
ヘテローグ遺伝子の、有機体中での最適の発現のために、有機体中で使用される特定の「コドン(codon)使用」に従い、核酸配列を改変(alter)することが有利である。「コドン使用」は、対象となる有機体の、他の既に知られている遺伝子をコンピュータ解析することにより容易に決定(測定)することができる。
【0061】
発現カセットは、適切なプロモーターを適切なコード核酸配列(coding nucleotide sequenve)及びターミネータシグナル又はポリアデニル化シグナルに融合させることにより製造される。例えば、T.Maniatis,E.F.Fritsch andJ.Sambrook, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(1989)に、及びまた、T.J.Silhavy,M.L.Berman and L.W.Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor laboratory, Cold Spring Harbor,NY(1984)中に、及びAusubel, F.M.etal., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience(1987)中に記載された、通常の組換え及びクローン技術がこの目的のために使用される。
【0062】
適切なホスト有機体内で発現を達成するために、組換え核酸構築体又は遺伝子構築体が、ホスト中で遺伝子の最適の発現を提供するホスト特殊ベクター(host-specific vector)に有利に挿入される。ベクターは、当業者にとって公知であり、そして例えば、「Cloning Vectors」(Pouwels P.H. etal.,Eds,Elsevier,Amsterdam−New York−Oxford,1985)から得ることができる。
【0063】
例えば、少なくとも1種のベクターで形質転換(transform)され、そして、本発明に従い使用されるプロテインを製造するために使用されて良い組換え微生物を、ベクターの補助下に製造することができる。有利なことに、上述した本発明の組換え構築体は、適切なホストシステム(宿主系)に導入され、そして発現される。これに関連して、特定の発現系中に発現するべき核酸を発生させるために、当業者にとって公知の、通常のクローン化法及びトランスフェクション法、例えば、共析出(coprecipitation)、プロトプラスト融合、エレクトロポーレイション、レトロウィルストランスフェクション等の方法を使用することが好ましい。適切な系(system)は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology、 F.Ausubel et al., Eds.,Wiley Interscience,New York 1997又はSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual. 2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,NY,1989に記載されている。
【0064】
ホモローグに組換えられた微生物を製造することも可能である。この目的のために、本発明に従い使用される遺伝子の少なくとも1切片(区分:section)又は、コード配列の1切片を含むベクターが、このために製造される。ここで、適切であれば、この配列を修飾(改変)、例えば機能的に分解(disrupt)するために(ノックアウトベクター)、少なくとも1種のアミノ酸−削除、−付加、又は−置換が導入される。導入された配列は、例えば、関連する微生物からのホモローグ(ホモログ変換)であっても良く、又、哺乳類、イースト、又はインセクトのソース(供給源)から誘導されても良い。この代わりに、ホモローグ性組換えのために使用されるベクターは、以下のように設計されて良い。すなわち、ホモローグ性組換えの場合、内生的な遺伝子が、変異(mutate)するか、又は他に、代えられるが、しかし機能プロテインをなおエンコード(encode)するように設計されて良い(例えば、上流の調節領域が、これにより内生的なプロテインの発現が代えられるように、代えられていても良い。)。本発明に従い使用される遺伝子の、代えられた切片は、ホモローグ性組換えベクター中に存在する。ホモローグ性組換えのために適切なベクターの構成は、例えば、Thomas,K.R.及びCapecchi,M.R.(1987)Cell51:503に記載されている。
【0065】
本発明に従い使用される核酸、又は核酸構築体のために適切な組換えホスト有機体は、原則として、何れの原核性又は真核性有機体であっても良い。有利なことに、バクテリア、菌(フンギ)、又はイースト等の微生物が、ホスト有機体として使用される。グラム陽性又はグラム陰性バクテリア、好ましくは、科(ファミリー)、腸内細菌(Enterobacteriaceae)、シュードモナス(Pseudomonadaceae)、リゾビアセー(Rhizobiaceae)、ストレプミセトアセー(Streptomycetaceae)又はノカルジセアエ(Nocardiceae)、特に好ましくは、類(genera)エシェキアノ(大腸菌:Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ノルカルディア(Nocardia)、バークホルディア(Burkholderia)、サルモネラ(Salmonella)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)又はロドコッカス(Rhdococcus)が有利に使用される。
【0066】
融合プロテインの製造方法に使用される有機体は、ホスト有機体に依存して、当業者にとって公知の方法で栽培(飼育)又は培養される。微生物は、通常、炭素供給源(通常は砂糖の状態)、窒素供給源(通常は、イースト抽出物、又は硫化アンモニウムの塩等の有機窒素供給源の状態)、鉄塩、マンガン塩等の少量の要素(元素)、及び適切な場合には、ビタミンを含む液体媒体中で、0℃〜100℃の温度、好ましくは10℃〜60℃の温度で、酸素の供給下に栽培(飼育)される。これに関連し、栄養液体のpHは、一定の値に維持されても、維持されなくても良く、すなわち、培養の間調節しても、調節しなくても良い。培養は、非連続的(バッチ式:batchwise)、準バッチ式、又は連続的に行って良い。栄養剤は、発酵の初期に導入して良く、又、後に、準連続的又は連続的な方法で導入して良い。酵素は、実施例に記載した方法で有機体から分離して良く、又粗製抽出物として反応に使用して良い。
【0067】
本発明に従い使用されるプロテイン又はこの、機能的(functional)、生物学的に活性な部分は、組換え製造方法によって製造されても良く、ここで、この製造方法では、プロテインを製造する微生物が培養され、適切であれば、プロテインの発現が誘導され、そして上述したプロテインが培養から分離される。このプロテインは、所望する場合には、この方法により工業規模で製造されて良い。組換え微生物は、公知の方法で培養され、そして、発酵されて良い。バクテリアは、例えば、TB媒体又はLB媒体中で、及び20℃〜40℃の温度で、及び6〜9のpHで繁殖させて良い。適切な培養条件は、例えば、T.Maniatis,E.F.Fritsch and J.Sambrook, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(1989)に詳細に記載されている。
【0068】
本発明に従い使用されるプロテインが、培養媒体に分泌(secrete)されない場合、細胞は分解(崩壊)され、そして、公知のプロテイン分離法により、生成物がリゼイド(溶解質:lysate)から得られる。細胞は、所望するように分解して良く、この分解は、高周波超音波を使用して、高圧を使用して、例えば、French圧力セル中で、osmolysisを使用して、洗浄剤(detergent)、溶菌(lytic)酵素又は有機溶媒の作用で、同質器(ホモナイザー)を使用して、又は上述した方法の2種以上を組合わせて行われる。
【0069】
本発明に従い使用されるプロテインは、分子篩クロマトグラフィ(ゲル濾過)、例えばQ Sepharoseクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、及び疎水性クロマトグラフィ等の公知のクロマトグラフィ法、及びウルトラ濾過、結晶化、塩化分離(salting-out)、透析(dialysis)及び自然ゲル電気泳動等の他の通常の方法を使用して精製して良い。適切な方法は、例えば、Cooper,F.G.Biochemische Arbeitsmethoden, Verlag Walter de Gruyter, Berlin, New Yorkに、又はScopes、R.,Protein Purification,Springer Verlag, New York, Heidelberg, Berlinに記載されている。
【0070】
ベクター系(vector system)又はオリゴヌクレオチドを使用して組換えプロテインを分離(単離)することが有利であって良く、オリゴヌクレオチドは、(所定のヌクレオチド配列分)cDNAを延長させる。そして、延長したcDNAで、変えられたポリペプチド又は融合プロテインをコードするもので、これは、例えば精製の簡素化に役立つ。この種の適切な修飾(modification)の例は、アンカーとして機能する、いわゆる「tags」(例えば、ヘキサ−ヒスチジンアンカーとして公知の修飾)、又は、抗体の抗原として識別されているエピトピ(epitopes)(例えば、Harlow, E.and Lane,D.,1988,Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor(N.Y.) Pressに記載されている。)を含む。他の適切なtagは、例えば、HA、calmodulin−BD、GST、MBD;chitin−BD、steptavidin−BD−avi−tag、Flag−tag、T7等である。これらのアンカーは、プロテインを、例えば、ポリマーマトリックス(ポリマーマトリックスは、例えば、クロマトグラフィカラムに詰め込まれても良い。)等の固定の基体(support)に留めるために使用されて良く、又は、微小滴定(microtiter)プレート又は他の基体に留めるために使用されても良い。対応する精製施行例(プロトコール)は、市販の類似するtagの提供者から得られる。
【0071】
上述のように製造されるプロテインは、融合プロテインとして直接的に使用して良く、又は切断(cleaving off)し、及び融合相手部分を除去した後、「純粋」なハイドロホビンとして使用しても良い。
【0072】
融合相手部分の除去が意図される場合、可能な切断部位(cleavage site)(プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)のための、特定の認識部位)を、融合プロテイン中、ハイドロホビン部分と、融合相手部分との間に挿入する(移入する)ことが有利である。適切な切断部位は、特に、他の場合では、ハイドロホビン部分中にも、融合相手部分中にも発生しないペプチド配列である。このことは、生命情報学機器を使用して容易に調査(確認)可能である。特に好ましくは、例えば、メチオニン上のBrCN切断、又はファクター(因子)Xaを有するプロテアーゼ媒介(protease−mediated)切断、エンテロキナーゼ(enterokonase)切断、トロンビン(thrombin)、TEV−切断(tabacco etch ウィルスプロテアーゼ)である。
【0073】
膨張可能な、又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子は、発泡の前又は後に、ドラム内でハイドロホビンを施すことにより、Lodige パドルミキサーを使用して、又は浸漬又はスプレーがけにより上述したポリマー粒子をハイドロホビンを含んだ溶液と接触させることにより、被覆して良い。発泡剤を含んだ溶融物を押出し成形することによる製造は、水を使用したペレタイザーの水流サーキットにハイドロホビンを加えることを含んでも良い。
【0074】
膨張可能な、又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子は、ハイドロホビンの濃度が1〜100g/l、及びpH範囲が5〜9の水溶液を使用して、被覆されることが好ましい。このハイドロホビンを含んだ溶液は、通常、0〜140℃の温度範囲、好ましくは30〜80℃の温度範囲で施される。
【0075】
本発明に従う膨張可能な、及び膨張した熱可塑性ポリマー粒子は、静電防止性(帯電防止性)であり、発泡の間、塊状化(caking)する傾向が少なく、しかし、発泡(forming)して成形物を形成する時に、良好な融合性(溶接性)を示す。
【実施例】
【0076】
実施例1
yaad−His6/yaaE−His6のクローニングのための予備処理(前)処理
オリゴヌクレオチド Hal570及びHal571(Hal572/Hal573)の補助下に、ポリメラーゼ鎖反応を行った。使用したテンプレートDNAは、バクテリアバチルスサブチリスのゲノムのDNAであった。得られたPCR断片(フラグメント)は、バチルスサブチルスの遺伝子yaaD/yaaEのコード配列を含み、及び末端に、(各場合に)Ncol及びBgIII制限切断部位(restriction cleavage site)を含んでいた。このPCR部分を精製し、そして制限酵素Ncol及びBglllでカット(cut)した。このDNA部分は、「挿入(insert)」として使用され、そして、制限酵素Ncol及びBgIIIで、事前に直線化(直鎖化)されたベクターpQE60(Qiagen社より)内でクローン化された。このように得られたベクターpQE60YAAD#2/pQE60YaaE#5は、プロテイン(このプロテインは、YAAD::HIS6及びYAAE::HIS6で構成されている。)の発現に使用された。
【0077】
Hal570:gcgcgcccatggctcaaacaggtactga
Hal571:gcagatctccagccgcgttcttgcatac
Hal572:ggccatgggattaacaataggtgtactagg
Hal573:gcagatcttacaagtgccttttgcttatattcc
【0078】
実施例2
yaadハイドロホビンDewA−His6のクローン化
オリゴヌクレオチドKaM416及びKaM417でポリメラーゼ連鎖反応(chain reaction)を行った。使用したテンプレートDNAは、(糸状菌)アスペルギルスニドランス(Aspergilus nidulans)のゲノムのDNAであった。得られたPCRフラグメント(断片)は、ハイドロホビン遺伝子dewAのコード配列、及びN−末端ファクターXaプロテイナーゼ切断部位を含んでいた。このPCRフラグメントを精製し、そして制限エンドヌクレアーザ(endonucleases)BamHlでカットした。このDNAフラグメントは、「挿入」として使用され、そして、制限エンドヌクレアーザBgIIIで、事前に直線化(直鎖化)されたベクターpQE60YAAD#2内でクローン化された。
【0079】
このように得られたベクター#508は、融合プロテイン(この融合プロテインは、YAAD::Xa::dewA::HIS6で構成されている。)の発現に使用された。
【0080】
KaM416:GCAGCCCATCAGGGATCCCTCAGCCTTGGTACCAGCGC
KaM417:CCCGTAGCTAGTGGATCCATTGAAGGCCGCATGAAGTTCTCCGTCTCCGC
【0081】
実施例3
yaadハイドロホビンRodA−His6のクローン化(クローニング)
プラスミド#513を、オリゴヌクレオチドKaM434及びKaM435を使用して、プラスミド#508に類似してクローン化した。
【0082】
KaM434:GCTAAGCGGATCCATTGAAGGCCGCATGAAGTTCTCCATTGCTGC
KaM435:CCAATGGGGATCCGAGGATGGAGCCAAGGG
【0083】
実施例4
yaadハイドロホビンBASF1−His6のクローン化
プラスミド#507を、オリゴヌクレオチドKaM417及びKaM418を使用して、プラスミド#508に類似してクローン化した。テンプレートDNAは、人工的に合成したDNA配列ハイドロホビンBASF1であった(アッペンディックス参照)。
【0084】
KaM417:
CCCGTAGCTAGTGGATCCATTGAAGGCCGCATGAAGTTCTCCGTCTCCGC
KaM418:CTGCCATTCAGGGGATCCCATATGGAGGAGGGAGACAG
【0085】
実施例5
yaadハイドロホビンBASF2−His6のクローン化
プラスミド#506を、オリゴヌクレオチドKaM417及びKaM418を使用して、プラスミド#508に類似してクローン化した。テンプレートDNAは、人工的に合成したDNA配列ハイドロホビンBASF2であった(アッペンディックス参照)。
【0086】
KaM417:
CCCGTAGCTAGTGGATCCATTGAAGGCCGCATGAAGTTCTCCGTCTCCGC
KaM418:CTGCCATTCAGGGGATCCCATATGGAGGAGGGAGACAG
【0087】
実施例6
yaadハイドロホビンSC3−His6のクローン化
プラスミド#526を、オリゴヌクレオチドKaM464及びKaM465を使用して、プラスミド#508に類似してクローン化した。使用したテンプレートDNAは、Schyzophyllum commune cDNAであった(アッペンディックス参照)。
【0088】
KaM464:CGTTAAGGATCCGAGGATGTTGATGGGGGTGC
KaM465:GCTAACAGATCTATGTTCGCCCGTCTCCCCGTCGT
【0089】
実施例7
組換えE.coil菌株yaadハイドロホビンDewA−His6の発酵
15mlGreinerチューブにおける、yaadハイドロホビンDewA−His6発現Ecoil菌株を使用した、3mlのLB液体媒体の接種(植え付け)。200rpm、37℃で、シェーカー上で8時間にわたり培養。各場合、バッフル(baffle)が設けられた21l(21リットル)のErlenmeyerフラスコを使用し、そして、250mlのLB媒体(+100μ/ml アンピシリン(ampicillin))に、1mlの前培養(preculture)を接種し、そして、シェーカー上において、180rpm、37℃で9時間培養した。20lの発酵器(fermenter)において、13.5lのLM媒体(+100μg/ml アンピシリン(ampicillin))に、0.5lの前培養(OD600nm1:10、H2Oに対して測定)で接種した。〜3.5のOD60nmで、140mlの100mM IPTGを付加した。3時間後、発酵器を10℃にまで冷却し、そして、遠心分離により、発酵器のブロース(培養液)を除去した。
【0090】
実施例8
組換えハイドロホビン融合プロテインの精製(C末端His6tagを有する、ハイドロホビン融合プロテインの精製)
100gのセルペレット(100〜500mgのハイドロホビン)を、50mMナトリウムホスフェート緩衝液(バッファー)、pH7.5で、合計体積が200mlとし、そして、懸濁させた。懸濁を、Ultraturrax type T25(Janke and Kunkel;IKA−Labortechnik)で10分間処理し、そして、次に、核酸を分解(degrade)するために、500単位のベンゾナーゼ(benzonase)(Merk,Darmstadt;order No.1.01697.0001)で、室温で1時間培養した。セル破壊の前に、ガラスカートリッジ(P1)を使用して、濾過を行った。セルの破壊と残っているゲノムDNAのせん断を目的として、1500バールでホモナイザー器(Microfluidizer M−110EH;Microfluidics Corp.)を2回作動させた。ホモジェネートを遠心分離(Sorvall RC−5B,GSA Rotor、250ml遠心ブレーカー、60分、4℃、12000rpm、23000g)し、上澄液(supernatant)を氷上に置き、そして、ペレットを100mlのナトリウムホスフェート緩衝液、pH7.5中に懸濁させた。遠心分離と懸濁を3回繰り返し、ここで、ナトリウムホスフェート環緩衝液は、3回目の繰り返し時に、1%SDSを含んでいた。再懸濁の後、この溶液を1時間攪拌させ、次に最終的な遠心分離を行った(Sorvall RC−5B,GSA Rotor,250ml遠心分離ブレーカー、60分、4℃、12000rpm、23000g)。SDS−PAGE分析に従い、ハイドロホビンは、最終的な遠心分離の後、上澄液中に存在した(図1)。実験から、ハイドロホビンは、おそらく、対応するE.coil中に、封入体(inclusion body)の状態で存在していると考えられる。50mlのハイドロホビン含有上澄液を、50mlのnickel−Sepharose High Performance 17−5268−02カラム(Amersham)に導入し、これを、50mM Tris−Cl緩衝液、pH8.0と平衡させた。カラムを50mM Tris−Cl緩衝液、pH8.0で洗浄し、そして次に、ハイドロホビンを、200mMのイミダゾールを含む、50mM Tris−Cl緩衝液、pH8.0で溶出(elute)した。イミダゾールを除去するために、この溶液を、50mM Tris−Cl緩衝液、pH8.0に対して透析した。
【0091】
図1は、このように製造されたハイドロホビンHP1の精製を示している。
【0092】
レーン1: ニッケル−セファロース(nickel−Sepharose)カラム(1:10希釈)に供給した溶液
レーン2: 流通=洗浄工程の溶出
レーン3〜5: 溶出(elution)部分のOD280ピーク
図1に示したハイドロホビンは、分子量が約53kDである。小さなバンドが、ハイドロホビンの分解生成物(減生生成物)を、部分的に示している。
【0093】
実施例9
技術試験;ガラス上での水滴の接触角度を変化させることによるハイドロホビンの特徴付
基体(substrate)
ガラス(ウィンドウガラス、南ドイツガラス、マンハイム、ドイツ):
ハイドロホビン濃度:100μg/mL
50mMナトリウムアセテート(pH4)+0.1%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノロレート(sorbitan monolaurate)(Tween(登録商標)20)中で、一晩(温度80℃)、ガラス板について培養、
次に、被覆、蒸留水での洗浄、
次に、培養:10分/80℃/1質量%の水性ナトリウム−ドデシルスルフェート(SDS)溶液(蒸留水中)、
蒸留水での洗浄。
【0094】
試料は、空気乾燥(室温)されて、そして室温で、5μlの水滴の接触角(度)の測定に付された。
【0095】
接触角度の測定は、Dataphysics Contact Angle System OCA15+,Software SCA20.2.0.(2002年11月)で行った。測定は、製造者の指導に従い行われた。
【0096】
未処理のガラスは、接触角度が30±5°であり;実施例8の機能性(官能性:functional)ハイドロホビン(yaad−dewA−his6)での被覆では、接触角度が67±5°であった。
【0097】
実施例10及び11
pQE60+YaaD+Xa+dewA+HIS6を使用してのEPSビーズの被覆
被覆剤:
実施例8(50mM NaH2PO4、pH7.5、ハイドロホビンの濃度:6.08g/l)に従い予備処理されたハイドロホビンpQE60+YaaD+Xa+dewA+HIS6(SEQ ID NO:19)の水溶液。
【0098】
懸濁重合(Styropor(登録商標)F315/N)を使用して製造された、ビーズ径が0.7〜1.0mmの範囲の、被覆されていない、膨張可能なポリスチレン(EPS)ビーズを乾燥させ、そして以下のように被覆した:
スクリューカップを使用して、50gのEPSビーズを500mlのグラスに計量導入し、それぞれ、10ml及び20mlのハイドロホビン溶液と混合し、そして、室温で24時間、ローラーミキサー上で攪拌した。次に、ハイドロホビンで被覆されたEPSビードをフィルターペーパー上に置き、そして、室温で5時間乾燥させた。
【0099】
比較試験V1
ハイドロホビン溶液の代わりに、10mlの蒸留水を使用した点が異なること以外は、実施例10を繰り返した。
【0100】
実施例10及び11及び、比較試験の被覆ESPを、それぞれ、予備膨張器(Rauscher)内で、100℃で、2分間、予備発泡させ、これにより、ポリスチレンフォームビーズを得、そして、3日間の保管の後、融合(溶接)して成形物とした。この成形物(molding)は、2日間の保管の後、半分に割って、融合の品質を評価した。
【0101】
予備発泡(prefoam)され、そして乾燥されたポリスチレンフォームビードの表面抵抗(surface resistance)を測定して、静電防止特性(帯電防止特性)を評価した。
【0102】
【表1】

【0103】
配列ネームのDNAへの割当及び配列リスト中のポリペプチド配列
【0104】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】ハイドロホビンHP1の精製を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロホビンを含む被膜を有する、膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子。
【請求項2】
前記被膜が、ハイドロホビンを、前記熱可塑性ポリマーに対して、1〜5000ppm含むことを特徴とする請求項1に記載の膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリスチレン又はポリオレフィンから成ることを特徴とする請求項1に記載の膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子。
【請求項4】
平均粒子径が0.05〜5mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子。
【請求項5】
前記被膜が、一般式(II)
n−C1−X3-25−C2−X0-2−C3−X5-50−C4−X2-35−C5−X2-15−C6−X0-2−C7−X3-35−C8−Xm (II)
(但し、
Xが、20種の天然由来のアミノ酸の何れか、
nとmが0〜500の範囲の数、
Cがシステイン、
である。)
のハイドロホビンを含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子。
【請求項6】
前記被膜が、一般式(III)
n−C1−X5-9−C2−C3−X11-39−C4−X2-23−C5−X5-9−C6−C7−X6-18−C8−Xm (III)
のハイドロホビンを含むことを特徴とする請求項4に記載の膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子。
【請求項7】
前記被膜が、dewA、rodA、hjypA、hypB、sc3、basf1又はbasf2タイプのハイドロホビンを含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子。
【請求項8】
ポリマー粒子の表面が、ハイドロホビンを含む溶液と接触されることを特徴とする、膨張可能な又は膨張した熱可塑性ポリマー粒子を被覆する方法。
【請求項9】
使用される、ハイドロホビンを含んだ溶液が、水溶液であり、且つハイドロホビンの濃度が1〜100g/lで、及びpHが5〜9の範囲であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記表面が、0℃〜140℃の範囲の温度で、前記ハイドロホビンを含んだ溶液と接触されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−545867(P2008−545867A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515222(P2008−515222)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063037
【国際公開番号】WO2006/131555
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】