説明

膨張機および冷凍装置

【課題】副吸入通路の切換機構を簡素化し、部品点数の低減を図ると共に、省スペース化を図る。
【解決手段】膨張機(40)は、膨張室(52)の主吸入通路(46)と、主吸入通路(46)の膨張室(52)の開口位置よりピストン(51)の回転方向に進んだ位置に開口する膨張室(52)の副吸入通路(70)と備えている。副吸入通路(70)には、副吸入通路(70)に連通する1次側室(87)の1次側圧力と冷媒回路(11)の所定圧の冷媒が導入される2次側室(88)の2次側圧力との差圧に基づいて副吸入通路(70)を開閉し、膨張室(52)への高圧冷媒の供給および遮断を行う切換弁(80)が設けられている。さらに、副吸入通路(70)には、切換弁(80)より上流側に位置し、切換弁(80)が副吸入通路(70)の開閉動作を行うように副吸入通路(70)を開閉する制御弁(75)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張機および該膨張機を備えた冷凍装置に関し、特に、膨張機の吸入容積の制御対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍装置には、特許文献1に示すように、冷媒回路に膨張機を接続し、膨張機において冷媒の動力を回収するようにしたものがある。この冷凍装置は、膨張機において、高圧冷媒から動力を回収し、この動力を圧縮機の駆動に利用している。
【0003】
ところで、上記冷凍装置の冷媒回路は、閉回路であるため、単位時間当たりに圧縮機を通過する冷媒の循環量(質量流量に相当、以下同じ)と膨張機を通過する冷媒の循環量とが常に一致していなければならない。
【0004】
しかし、膨張機をある設計仕様点、例えば、暖房定格で設計すると、その設計仕様点から外れた条件で運転した場合には、圧縮機での循環量と膨張機での循環量との間に過不足が生じる。具体的には、例えば、暖房定格時に上記圧縮機と膨張機との循環量が一致するように設計すると、圧縮機の吸入圧力が高くなる冷房定格時には、最適な膨張機の吸入容積は暖房定格時の場合よりも大きくなるため、膨張機の冷媒が不足して過膨張が生じることになる。
【0005】
そこで、上記特許文献1の冷凍装置の膨張機は、主吸入通路と別個に切換機構である切換弁を有する副吸入通路をシリンダに形成している。上記副吸入通路は、一端が主吸入通路に接続され、他端が主吸入通路の膨張室の開口位置よりピストンの回転方向に進んだ位置に開口し、上記膨張室に主吸入通路から高圧冷媒を供給している。
【0006】
そして、上記膨張機は、例えば、圧縮機の吸入圧力が高くなる運転条件において、切換弁を開口し、高圧冷媒が副吸入通路を通じて膨張室に導入される。これにより、膨張機の流出側の冷媒の圧力が圧縮機の吸入圧力に近づき、過膨張の発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−228568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した膨張機の切換弁は、弁体の背圧である2次側圧力として膨張機の入口側の高圧冷媒圧力と、膨張機の出口側の低圧冷媒圧力とを利用し、この高圧冷媒圧力と低圧冷媒圧力とを切り換えて開閉させるようにしているので、部品点数が多いなどの問題があった。
【0009】
つまり、上記切換弁には、高圧冷媒を導く高圧側背圧通路と、低圧冷媒を導く低圧側背圧通路とを接続する必要があると共に、高圧側背圧通路および低圧側背圧通路を開閉する高圧側制御弁と低圧側制御弁とを設ける必要がある。したがって、従来の膨張機は、2つの背圧通路と2つの制御弁とを設ける必要があるので、部品点数が多くなり、高価であるという問題があると共に、制御弁等の設置スペースが必要であり、大きなスペースを要するという問題があった。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、副吸入通路の切換機構を簡素化し、部品点数の低減を図ると共に、省スペース化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、回転部材(51)の回転より膨張室(52)で冷媒回路(11)の高圧冷媒を膨張させて冷媒の動力を回収する膨張機である。
【0012】
そして、第1の発明は、上記膨張室(52)に高圧冷媒を供給する主吸入通路(46)と、該主吸入通路(46)の膨張室(52)の開口位置より回転部材(51)の回転方向に進んだ位置に開口し、上記膨張室(52)に高圧冷媒を供給する副吸入通路(70)と、該副吸入通路(70)に設けられ、上記副吸入通路(70)に連通する1次側室(87)の1次側圧力と上記冷媒回路(11)の所定圧の冷媒が導入される2次側室(88)の2次側圧力との差圧に基づいて上記副吸入通路(70)を開閉し、上記膨張室(52)への高圧冷媒の供給および遮断を行う切換弁(80)と、上記副吸入通路(70)に設けられ、上記切換弁(80)より上流側に位置し、上記切換弁(80)が上記副吸入通路(70)の開閉動作を行うように上記副吸入通路(70)を開閉する制御弁(75)とを備えていることを特徴としている。
【0013】
上記第1の発明においては、制御弁(75)が副吸入通路(70)を閉鎖すると、切換弁(80)が副吸入通路(70)から膨張室(52)への高圧冷媒の供給を遮断する。この結果、高圧冷媒が主吸入通路(46)からのみ膨張室(52)に供給される。一方、上記制御弁(75)が副吸入通路(70)を開放すると、切換弁(80)が副吸入通路(70)から膨張室(52)への高圧冷媒の供給を許容する。この結果、高圧冷媒が主吸入通路(46)と副吸入通路(70)の双方から膨張室(52)に供給される。
【0014】
このように、主吸入通路(46)と副吸入通路(70)との閉じ切り点が異なるので、膨張比が調節され、圧縮機と膨張機との冷媒循環量がバランスし、過膨張の発生が防止される。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、上記切換弁(80)は、上記冷媒回路(11)の高圧冷媒を2次側室(88)に導く背圧通路(71)が接続されていることを特徴としている。
【0016】
上記第2の発明においては、切換弁(80)の2次側室(88)に高圧冷媒が導入され、上記切換弁(80)は1次側圧力と2次側圧力との差圧によって切り換わる。
【0017】
第3の発明は、第1の発明において、上記切換弁(80)は、上記冷媒回路(11)の低圧冷媒を2次側室(88)に導く背圧通路(71)が接続されていることを特徴としている。
【0018】
上記第3の発明においては、切換弁(80)の2次側室(88)に低圧冷媒が導入され、上記切換弁(80)は1次側圧力と2次側圧力との差圧によって切り換わる。
【0019】
第4の発明は、第2の発明において、上記切換弁(80)は、弁室(81)を1次側室(87)と2次側室(88)とに区画すると共に、上記弁室(81)の内部を直動して上記膨張室(52)に連通する高圧出口(85)を開閉する弁体(82)と、該弁体(82)を開弁方向に付勢する付勢部材(83)とを備え、上記1次側室(87)の冷媒圧力に付勢部材(83)の付勢力を加えた1次側圧力と上記2次側室(88)の高圧冷媒圧力よりなる2次側圧力との差圧によって弁体(82)が高圧出口(85)を開閉するように構成されていることを特徴としている。
【0020】
上記第4の発明においては、1次側室(87)に高圧冷媒が導入されると、付勢部材(83)の付勢力によって弁体(82)を開弁方向に移動し、弁体(82)が高圧出口(85)を開放する。一方、上記1次側室(87)への高圧冷媒の導入が遮断されると、2次側室(88)の高圧冷媒圧力よって弁体(82)を閉弁方向に移動し、弁体(82)が高圧出口(85)を閉鎖する。
【0021】
第5の発明は、第3の発明において、上記切換弁(80)は、弁室(81)を1次側室(87)と2次側室(88)とに区画すると共に、上記弁室(81)の内部を直動して上記膨張室(52)に連通する高圧出口(85)を開閉する弁体(82)と、該弁体(82)を閉弁方向に付勢する付勢部材(83)とを備え、上記1次側室(87)の冷媒圧力よりなる1次側圧力と上記2次側室(88)の低圧冷媒圧力に付勢部材(83)の付勢力を加えた2次側圧力との差圧によって弁体(82)が高圧出口(85)を開閉するように構成されていることを特徴としている。
【0022】
上記第5の発明においては、1次側室(87)に高圧冷媒が導入されると、この高圧冷媒圧力によって弁体(82)を開弁方向に移動し、弁体(82)が高圧出口(85)を開放する。一方、上記1次側室(87)への高圧冷媒の導入が遮断されると、2次側室(88)の低圧冷媒圧力と付勢部材(83)の付勢力とよって弁体(82)を閉弁方向に移動し、弁体(82)が高圧出口(85)を閉鎖する。
【0023】
第6の発明は、第1〜第5の何れか1の発明において、上記背圧通路(71)は、膨張機本体(43)に形成されていることを特徴としている。
【0024】
上記第6の発明においては、上記切換弁(80)の2次側室(88)に、膨張機本体(43)に形成された背圧通路(71)から冷媒が導入される。
【0025】
第7の発明は、第1〜第6の何れか1の発明の膨張機(40)を備えていることを特徴とする冷凍装置。
【0026】
上記第7の発明においては、冷凍装置が膨張機(40)によって動力を回収する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、副吸入通路(70)を切換弁(80)によって開閉し、膨張比を調節することができるので、圧縮機(32)と膨張機(40)との冷媒循環量をバランスさせることができる。その結果、例えば、冷凍装置の運転条件が変化しても、膨張機(40)の流出側で過膨張が発生することを回避でき、逆トルクの発生を抑制することができるので、膨張機(40)での動力回収効率の向上を図ることができると共に、機械的信頼性の向上を図ることができる。
【0028】
また、上記切換弁(80)の切換えによって吸入容積を可変とすることができるので、膨張機運転エリアを拡大することができる。
【0029】
また、上記切換弁(80)の背圧通路(71)は、1つ形成しているのみであるので、従来のように2つの背圧通路を形成する必要がなく、また、上記切換弁(80)を切り換えるための制御弁(75)は、副吸入通路(70)に1つのみ設けているので、部品点数を削減することができると共に、構成の簡素化を図ることができる。
【0030】
また、上記切換弁(80)を膨張室(52)の近傍に設けているので、死容積を小さくすることができる。つまり、上記副吸入通路(70)に制御弁(75)のみを設けた場合、制御弁(75)を冷媒回路(11)に接続される補助配管に設けることになり、制御弁(75)から膨張室(52)までの間が冷媒膨張に寄与しない閉空間の死容積となる。本発明は、制御弁(75)の他に切換弁(80)を設けているので、該切換弁(80)を膨張室(52)の近傍に配置することができることから、死容積をほぼ無くすことができる。これにより、例えば、死容積が形成された場合には、死容積に起因して動力回収量(仕事量)が小さくなってしまうのに対し、本発明では、動力回収量が低減することがなく、所望とする動力回収効率を得ることができる。
【0031】
また、上記副吸入通路(70)を切換弁(80)によって切り換えるので、逆止弁とは異なり、吸入時のチャタリングを防止することができ、開口状態を確実に維持させることができることから、圧力損失を小さくすることができると共に、振動による騒音の低減を図ることができる。
【0032】
また、第6の発明によれば、上記背圧通路(71)を膨張機本体(43)に形成しているので、副吸入通路(70)を冷媒回路(11)から導くことができ、副吸入通路(70)の断面積を十分に確保することができる。この結果、上記副吸入通路(70)の抵抗を小さくすることができることから、効率の向上を図ることができる。さらに、上記副吸入通路(70)の抵抗を低減することができることから、冷媒流量の制御幅を大きくすることができ、より運転エリアの拡大を図ることができる。
【0033】
つまり、従来、副吸入通路が膨張機本体に形成されていたために、副吸入通路の形成が制約され、十分な断面積を確保することができず、副吸入通路の圧力損失が大きかった。この結果、性能が低下すると共に、流量制御幅の低下による運転エリアの縮小という問題があった。
【0034】
これに対し、第6の発明によれば、上記副吸入通路(70)を冷媒回路(11)から導くことができ、上記副吸入通路(70)の抵抗を小さくすることができることから、性能の向上を図ることができると共に、流量制御幅の拡大による運転エリアの拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、実施形態1に係る空気調和装置の冷媒回路の概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1の膨張機の縦断面図である。
【図3】図3は、実施形態1の膨張機を横断面で示す概略説明図であり、高圧出口の閉鎖状態を示す説明図である。
【図4】図4は、実施形態1の第1動作中の膨張機を横断面で示す概略説明図であり、偏心部の回転角90°毎の動作を説明するものである。
【図5】図5は、実施形態1の膨張機を横断面で示す概略説明図であり、高圧出口の開放状態を示す説明図である。
【図6】図6は、実施形態1の第2動作中の膨張機を横断面で示す概略説明図であり、偏心部の回転角90°毎の動作を説明するものである。
【図7】図7は、実施形態2の膨張機を横断面で示す概略説明図であり、高圧出口の閉鎖状態を示す説明図である。
【図8】図8は、実施形態2の膨張機を横断面で示す概略説明図であり、高圧出口の開放状態を示す説明図である。
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0037】
〈発明の実施形態1〉
図1〜図6に示すように、本実施形態の冷凍装置は、空気調和装置(10)を構成し、該空気調和装置(10)は、室内の冷房と暖房とを切り換えて行うヒートポンプ型空気調和装置に構成されている。
【0038】
−空気調和装置の全体構成−
上記空気調和装置(10)は、冷媒回路(11)を備え、該冷媒回路(11)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う閉回路に構成されている。上記冷媒回路(11)は、冷媒として二酸化炭素(CO)が充填されている。つまり、上記冷媒回路(11)は、二酸化炭素を臨界圧力以上まで圧縮し、いわゆる超臨界冷凍サイクルを行うように構成されている。上記冷媒回路(11)は、圧縮膨張ユニット(30)と室外熱交換器(12)と室内熱交換器(13)と四方切換弁(14)と整流回路(15)と予膨張弁(17)とを備えている。
【0039】
上記圧縮膨張ユニット(30)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(31)を備えている。該ケーシング(31)には、その下部から上部へ向かって順に、圧縮機(32)と電動機(33)と膨張機(40)が収納されている。上記圧縮機(32)と電動機(33)と膨張機(40)とは、1つの出力軸(34)によって連結されている。
【0040】
上記圧縮機(32)は、ロータリー式の容積型圧縮機であって、いわゆる揺動ピストン型に構成されている。上記圧縮機(32)で圧縮された冷媒は、吐出口を通じてケーシング(31)内に吐出される。つまり、上記圧縮膨張ユニット(30)は、ケーシング(31)の内部が高圧冷媒で満たされる、いわゆる高圧ドーム式に構成されている。
【0041】
上記電動機(33)は、ケーシング(31)の内周面に固定されるステータ(35)と、ステータ(35)の内側に位置して出力軸(34)と連結するロータ(36)とを備えている。上記電動機(33)は、インバータによって出力周波数が調節されるインバータ型可変速モータに構成されている。
【0042】
上記膨張機(40)は、いわゆる2シリンダ型の膨張機であって、第1膨張機構(41)と第2膨張機構(42)とを備えている。上記第1膨張機構(41)および第2膨張機構(42)は、ロータリー式の容積型膨張機であって、いわゆる揺動ピストン型に構成されている。上記第1膨張機構(41)と第2膨張機構(42)とは直列に接続され、第1膨張機構(41)が上流側の膨張機構を、第2膨張機構(42)が下流側の膨張機構を構成している。上記第1膨張機構(41)の押しのけ容積は、第2膨張機構(42)の押しのけ容積よりも小さくなっている。また、第1膨張機構(41)および第2膨張機構(42)は、出力軸(34)に連結されている。
【0043】
上記圧縮膨張ユニット(30)は、吸入管(21)と吐出管(22)と流入管(23)と流出管(24)とが接続されている。上記吸入管(21)は、ケーシング(31)を貫通して圧縮機(32)の吸入側に直接に接続されている。上記吐出管(22)は、ケーシング(31)を貫通して該ケーシング(31)の内部に開口している。上記流入管(23)は、ケーシング(31)を貫通して第1膨張機構(41)の吸入側(流入側)に直接に接続されている。上記流出管(24)は、ケーシング(31)を貫通して第2膨張機構(42)の吐出側(流出側)に直接に接続されている。
【0044】
上記室外熱交換器(12)および室内熱交換器(13)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ式熱交換器に構成されている。
【0045】
上記四方切換弁(14)は、4つのポートを有している。第1ポートは、吸入管(21)に連通し、第2ポートは、吐出管(22)に連通し、第3ポートは、室外熱交換器(12)の一端に連通し、第4ポートは、室内熱交換器(13)の一端に連通している。上記四方切換弁(14)は、第1のポートと第4のポートとが連通して第2のポートと第3のポートとが連通する状態(図1の実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通して第2のポートと第4のポートとが連通する状態(図1の破線で示す状態)とに切り換え自在に構成されている。
【0046】
上記整流回路(15)は、逆止弁(16)を有する4本の配管がブリッジ状に接続されて構成されている。上記整流回路(15)は、室外熱交換器(12)と室内熱交換器(13)と膨張機(40)の吸入側の流入管(23)および吐出側の流出管(24)とに接続され、四方切換弁(14)の切り換えに伴い冷媒の循環方向が変更されても、膨張機(40)に対して常に同じ方向で冷媒を流通させるように構成されている。なお、上記整流回路(15)は、四方切換弁に代えてもよい。上記予膨張弁(17)は、整流回路(15)と膨張機(40)の吸入側との間に設けられている。上記予膨張弁(17)は、開度が調節可能な流量調節弁を構成している。
【0047】
上記冷媒回路(11)には、バイパス管(25)が接続されている。該バイパス管(25)は、一端が流入管(23)の予膨張弁(17)と膨張機(40)との間の配管に接続し、他端が流出管(24)に接続している。上記バイパス管(25)には、バイパス弁(18)が設けられている。該バイパス弁(18)は、開度が調節可能な流量調節弁を構成している。
【0048】
−膨張機の構成−
上記膨張機(40)は、図2、図3および図5に示すように、第1膨張機構(41)の上方に第2膨張機構(42)が配置されて構成されている。
【0049】
上記第1膨張機構(41)は、第1シリンダ(50)と第1ピストン(51)とを有し、上記第2膨張機構(42)は、第2シリンダ(60)と第2ピストン(61)とを有している。各膨張機構(41,42)は、第1部材としてのシリンダ(50,60)に対して第2部材としてのピストン(51,61)が相対的に偏心回転するように構成されている。
【0050】
上記シリンダ(50,60)は、上下の両端が開放された略筒状に形成されている。上記第1シリンダ(50)の内径および厚みは、第2シリンダ(60)の内径および厚みよりもそれぞれの寸法が短くなっている。上記第1シリンダ(50)の下端面は、フロントヘッド(43)に閉塞され、上端面は、中間プレート(44)に閉塞されている。また、上記第2シリンダ(60)の下端面は、中間プレート(44)に閉塞され、上端面は、リアヘッド(45)に閉塞されている。つまり、上記フロントヘッド(43)、中間プレート(44)およびリアヘッド(45)は、シリンダ(50,60)の端部を閉塞する閉塞部材を構成している。また、これらの閉塞部材(43,44,45)およびシリンダ(50,60)は、ケーシング(31)に固定される固定部材を構成している。そして、上記第1膨張機構(41)は、フロントヘッド(43)と第1シリンダ(50)と中間プレート(44)とを備えて構成され、上記第2膨張機構(42)は、中間プレート(44)と第2シリンダ(60)とリアヘッド(45)とを備えて構成されている。
【0051】
上記第1シリンダ(50)の内部には、環状の第1ピストン(51)が収容され、第1シリンダ(50)と第1ピストン(51)との間に第1膨張室(52)が区画形成されている。上記第2シリンダ(60)の内部には、環状の第2ピストン(61)が収容され、第2シリンダ(60)と第2ピストン(61)との間に第2膨張室(62)が区画形成されている。上記第1ピストン(51)の内径、外径、および厚みは、第2ピストン(51)の内径、外径、および厚みよりもそれぞれの寸法が短くなっている。第1ピストン(51)の内部には、出力軸(34)の第1偏心部(34a)が、第2ピストン(61)の内部には、出力軸(34)の第2偏心部(34b)がそれぞれ嵌め込まれている。
【0052】
図3に示すように、上記第1膨張機構(41)には第1ブレード(53)および一対の第1ブッシュ(54)が、上記第2膨張機構(42)には第2ブレード(63)および一対の第2ブッシュ(64)がそれぞれ設けられている。上記ブレード(53,63)は、ピストン(51,61)の外周面から径方向外側へ延びる板状に形成されている。一対のブッシュ(54,64)は、シリンダ(50,60)に形成されたブッシュ溝に設けられている。
【0053】
上記第1シリンダ(50)の第1膨張室(52)には、主吸入通路(46)の流出端が開口している。上記主吸入通路(46)は、上記第1シリンダ(50)を径方向に延びて形成され、その流入端側に上記流入管(23)が接続されている(図2を参照)。上記第1膨張室(52)には、連通路(47)の流入端が開口している。上記連通路(47)は、中間プレート(44)に軸方向に形成されている。上記第1膨張機構(41)における主吸入通路(46)の流出端と連通路(47)の流入端とは、第1ブレード(53)によって遮断され、互いに近接している。
【0054】
上記第2シリンダ(60)の第2膨張室(62)には、上記連通路(47)の流出端が開口している。また、上記第2膨張室(62)には、流出路(48)の流入端が開口している。上記流出路(48)は、第2シリンダ(60)を径方向に延びて形成され、その流出端側に上記流出管(24)が接続されている(図2を参照)。上記第2膨張機構(42)の連通路(47)の流出端と流出路(48)の流入端とは、第2ブレード(63)によって遮断され、互いに近接している。
【0055】
上記第1膨張室(52)は、第1ブレード(53)によって2つの空間に仕切られている。図3において、第1ブレード(53)の左側に仕切られる空間が、主吸入通路(46)と連通する高圧空間(52a)を構成し、右側に仕切られる空間が、連通路(47)と連通する第1膨張空間(52b)を構成する。
【0056】
上記第2膨張室(62)は、第2ブレード(63)によって2つの空間に仕切られている。図3において、第2ブレード(63)の左側に仕切られる空間が、連通路(47)と連通する第2膨張空間(62a)を構成し、右側に仕切られる空間が、流出路(48)と連通する低圧空間(62b)を構成する。
【0057】
さらに、上記第1膨張機構(41)のフロントヘッド(43)および第1シリンダ(50)には、図2、図3および図5に示すように、副吸入通路(70)が接続されると共に、上記フロントヘッド(43)には、背圧通路(71)が接続されている。
【0058】
上記副吸入通路(70)は、フロントヘッド(43)および第1シリンダ(50)に形成された副通路(72)と、該副通路(72)を冷媒回路(11)に接続する補助配管(73)とにより構成されている。上記副通路(72)は、切換弁(80)と出口通路(74)とを備えている。該出口通路(74)は、例えば、第1シリンダ(50)の下面に形成されて上記フロントヘッド(43)によって閉塞されている。そして、上記出口通路(74)の流入端は、切換弁(80)に接続される一方、上記出口通路(74)の流出端は、主吸入通路(46)の第1膨張室(52)の開口位置より第1ピストン(51)の回転方向に進んだ位置に開口している。上記補助配管(73)の一端は、切換弁(80)の流入側に接続され、上記補助配管(73)の他端は、流入管(23)の予膨張弁(17)とバイパス管(25)の接続部と間に接続されている。したがって、上記副吸入通路(70)は、冷媒回路(11)の高圧冷媒を主吸入通路(46)とは別個に第1膨張室(52)に供給するように構成されている。
【0059】
上記背圧通路(71)は、フロントヘッド(43)に形成され、第1膨張室(52)の外周面に沿って半円弧状に径方向に延びている。さらに、上記背圧通路(71)の流入端は、主吸入通路(46)に接続される一方、上記背圧通路(71)の流出端は、副通路(72)の切換弁(80)に接続されている。上記背圧通路(71)は、例えば、フロントヘッド(43)の上面に形成されて上記第1シリンダ(50)によって閉塞されている。
【0060】
また、上記切換弁(80)は、主としてフロントヘッド(43)の膨出部(55)に設けられ、弁室(81)に弁体(82)と付勢部材である圧縮バネ(83)とを備えている。なお、図3等の横断面において、上記切換弁(80)は、副通路(72)の出口通路(74)と背圧通路(71)と同一面上に表示している。
【0061】
記弁室(81)には、高圧入口(84)と高圧出口(85)と背圧口(86)とが形成されている。上記弁室(81)の高圧入口(84)は、補助配管(73)が接続され、上記弁室(81)の高圧出口(85)は、出口通路(74)に接続される一方、上記弁室(81)の背圧口(86)には、上記背圧通路(71)の流出端が接続されている。
【0062】
上記弁体(82)は、弁室(81)の内部を直動し、補助配管(73)の冷媒が導入される1次側室(87)と、背圧である冷媒回路(11)の高圧冷媒が背圧通路(71)を介して導入される2次側室(88)とに弁室(81)を区画し、上記高圧出口(85)を開閉するように構成されている。
【0063】
上記圧縮バネ(83)は、1次側室(87)に設けられ、上記弁体(82)を開弁方向に付勢している。つまり、上記弁体(82)は、副吸入通路(70)の冷媒圧力と圧縮バネ(83)のバネ力とを加算した1次側室(87)の1次側圧力と、主吸入通路(46)の高圧冷媒圧力である2次側室(88)の2次側圧力とが作用している。そして、上記切換弁(80)は、1次側圧力と2次側圧力との差圧によって上記高圧出口(85)を開閉するように構成されている。
【0064】
上記補助配管(73)には、制御弁(75)が設けられている。該制御弁(75)は、副吸入通路(70)を開閉するように構成されている。つまり、上記制御弁(75)が閉鎖されると、図3に示すように、切換弁(80)への副吸入通路(70)の高圧冷媒の導入が停止し、1次側室(87)の1次側圧力が低下し、弁体(82)は、2次側圧力によって閉弁する。一方、上記制御弁(75)が開口されると、図5に示すように、切換弁(80)の1次側室(87)に副吸入通路(70)の高圧冷媒が導入され、弁体(82)に副吸入通路(70)の高圧冷媒圧力と圧縮バネ(83)のバネ力とを加算した1次側圧力が作用し、2次側圧力に抗して弁体(82)が開弁する。
【0065】
上記制御弁(75)は、開度調整が可能な流量調節弁(電動弁)によって構成されているが、開閉弁であってもよい。
【0066】
−空気調和装置の動作−
まず、上記空気調和装置(10)の運転動作について説明する。空気調和装置(10)は、冷房運転と暖房運転とが切り換えて行われる。
【0067】
−冷房運転−
冷房運転時には、四方切換弁(14)が図1の実線で示す状態に設定され、室外熱交換器(12)が放熱器となり、室内熱交換器(13)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0068】
圧縮機(32)で圧縮された冷媒は、圧縮膨張ユニット(30)のケーシング(31)内に吐出される。ケーシング(31)内の高圧冷媒は、吐出管(22)から室外熱交換器(12)に流れる。室外熱交換器(12)では、冷媒が室外空気へ放熱する。
【0069】
室外熱交換器(12)で放熱した高圧冷媒は、流入管(23)を経て膨張機(40)に流入する。膨張機(40)では、高圧冷媒が膨張し、高圧冷媒から動力が回収される。膨張した後の低圧冷媒は、流出管(24)を経由して室内熱交換器(13)を流れる。室内熱交換器(13)では、冷媒が室内空気から吸熱し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(13)で蒸発した冷媒は、吸入管(21)を通じて圧縮機(32)に吸入されて再び圧縮される。
【0070】
−暖房運転−
暖房運転時には、四方切換弁(14)が図1の破線で示す状態に設定され、室内熱交換器(13)が放熱器となり、室外熱交換器(12)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0071】
圧縮機(32)で圧縮された冷媒は、圧縮膨張ユニット(30)のケーシング(31)内に吐出される。ケーシング(31)内の高圧冷媒は、吐出管(22)から室内熱交換器(13)を流れる。室内熱交換器(13)では、冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。
【0072】
室内熱交換器(13)で放熱した高圧冷媒は、流入管(23)を経て膨張機(40)に流入する。膨張機(40)では、高圧冷媒が膨張し、高圧冷媒から動力が回収される。膨張した後の低圧冷媒は、流出管(24)を経て室外熱交換器(12)を流れる。室外熱交換器(12)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(12)で蒸発した冷媒は、吸入管(21)を通じて圧縮機(32)に吸入されて再び圧縮される。
【0073】
−膨張機(40)の動作−
次に、膨張機(40)の動作について説明する。膨張機(40)は、制御弁(75)の開閉状態に応じて、第1動作と第2動作とが切り換わる。第1動作と第2動作とは、外気温度の変化などに応じて適宜切り換えられる。
【0074】
−第1動作−
第1動作は、制御弁(75)が閉鎖されている。この結果、副吸入通路(70)が閉鎖されているので、副吸入通路(70)の高圧冷媒が切換弁(80)の1次側室(87)に供給されない。したがって、上記切換弁(80)の弁体(82)の作用力は、圧縮バネ(83)のバネ力が作用する1次側圧力より背圧通路(71)の高圧冷媒圧力である2次側圧力が大きくなる。よって、上記弁体(82)は、図3に示すように、高圧出口(85)を閉鎖し、高圧冷媒は、主吸入通路(46)からのみ膨張機(40)に供給される。この第1動作において、副吸入通路(70)の流出端(第1膨張室の開口)から制御弁(75)までの間は、膨張空間の圧力雰囲気、つまり、いわゆる中間圧の状態に保持される。
【0075】
このような状態において、膨張機(40)では、図4に示すように、冷媒が吸入される過程(吸入過程)、冷媒が膨張する過程(膨張過程)、および冷媒が吐出される過程(吐出過程)が順に繰り返される。
【0076】
吸入過程では、第1膨張機構(41)の第1膨張室(52)へ高圧冷媒が吸入される。具体的に、第1膨張機構(41)では、偏心部(34a,34b)の回転角が0°の状態(図4(A)参照)から僅かに回転すると、第1ピストン(51)と第1シリンダ(50)との接触位置が主吸入通路(46)の流出開口を通過し、主吸入通路(46)から高圧空間(52a)へ高圧冷媒が流入し始める。その後、偏心部(34a,34b)の回転角が90°(図4(B)参照)、180°(図4(C)参照)、270°(図4(D)参照)と次第に大きくなるに連れて、高圧空間(52a)へ高圧冷媒が流入してゆく。主吸入通路(46)から高圧空間(52a)への高圧冷媒の流入は、偏心部(34a,34b)の回転角が約360°に達するまで(主吸入通路(46)の流出開口が閉じられるまで)続く。
【0077】
また、上記副吸入通路(70)は、切換弁(80)の弁体(82)によって閉塞されている。従って、上記副吸入通路(70)から高圧空間(52a)へ冷媒が導入されることはない。
【0078】
次の膨張過程では、第1膨張室(52)および第2膨張室(62)で冷媒が膨張する。具体的に、第1膨張機構(41)では、偏心部(34a,34b)の回転角が360°の状態から僅かに回転すると、主吸入通路(46)と仕切られた高圧空間(52a)が連通路(47)に連通し、高圧空間(52a)が第1膨張空間(52b)となる。更に、第1膨張空間(52b)は、連通路(47)を介して第2膨張機構(42)の第2膨張空間(62a)と連通する。偏心部(34a,34b)の回転角が540°、630°と次第に大きくなるに連れ、第1膨張空間(52b)の容積が縮小するが、第2膨張空間(62a)の容積がそれ以上に拡大される。この第1膨張空間(52b)と第2膨張空間(62a)の容積の総和の拡大は、偏心部(34a,34b)の回転角が720°に達する直前まで続く。その結果、膨張過程では、冷媒が膨張して減圧されると共に、膨張した冷媒の動力がピストン(51,61)および偏心部(34a,34b)を介して出力軸(34)の回転動力に変換される。これにより、電動機(33)による圧縮機(32)の駆動動力が軽減され、空気調和装置(10)の省エネルギ化が図られる。
【0079】
次の吐出過程では、第2膨張機構(42)の第2膨張室(62)から冷媒が流出する。具体的には、偏心部(34a,34b)の回転角が720°の状態から僅かに回転すると、第2膨張空間(62a)と流出路(48)とが連通し、第2膨張空間(62a)が低圧室(62b)となる。偏心部(34a,34b)の回転角が810°、900°、990°と次第に大きくなるに連れ、低圧室(62b)の冷媒が流出路(48)へ流出してゆく。低圧室(62b)から流出路(48)への冷媒の流出は、偏心部(34a,34b)の回転角が約1080°に達するまで続く。
【0080】
−第2動作−
第2動作は、制御弁(75)が開口されている。この結果、副吸入通路(70)が開口されているので、副吸入通路(70)の高圧冷媒が切換弁(80)の1次側室(87)に供給される。したがって、上記切換弁(80)の弁体(82)の作用力は、高圧冷媒圧力と圧縮バネ(83)のバネ力とを加算した1次側圧力が背圧通路(71)の高圧冷媒圧力である2次側圧力より大きくなる。よって、上記弁体(82)は、図5に示すように、高圧出口(85)を開放し、高圧冷媒は、主吸入通路(46)から膨張機(40)に供給されると共に、副吸入通路(70)からも膨張機(40)に供給される。
【0081】
このような状態において、膨張機(40)では、図6に示すように、上記の第1動作と同様にして吸入過程、膨張過程、および吐出過程が順次繰り返される。
【0082】
吸入過程では、上述と同様にして、偏心部(34a,34b)の回転角が0°(図6(A)参照)、90°(図6(B)参照)、180°(図6(C)参照)、270°(図6(D)参照)と次第に大きくなるに連れて、主吸入通路(46)から高圧空間(52a)へ高圧冷媒が流入してゆく。ここで、偏心部(34a,34b)の回転角が所定角度、例えば、220°に達すると、高圧空間(52a)に副吸入通路(70)が連通する。したがって、第2動作の吸入過程では、主吸入通路(46)と副吸入通路(70)との双方から高圧冷媒が導入されることになる。
【0083】
さらに、上記偏心部(34a,34b)の回転角が360°に達した後から、第1膨張空間(52b)が連通路(47)を介して第2膨張空間(62a)と連通する。そして、偏心部(34a,34b)の回転角が360°の状態から僅かに回転すると、第1膨張室(52)が主吸入通路(46)と仕切られるが、副吸入通路(70)は第1膨張室(52)に連通したままで、吸入過程が継続する。
【0084】
次の膨張過程では、偏心部(34a,34b)の回転角が、例えば、580°に進と、第1膨張室(52)が副吸入通路(70)と仕切られる。その後、第1膨張空間(52b)と第2膨張空間(62b)とにおいて、上述したように冷媒が膨張する。
【0085】
次の吐出過程では、偏心部(34a,34b)の回転角が720°に達した後から、第2膨張空間(62a)と流出路(48)とが連通する。そして、偏心部(34a,34b)の回転角が810°、900°、990°、1080°と次第に大きくなるに連れ、低圧室(62b)の冷媒が流出路(48)へ流出してゆく。ここで、第2動作中に低圧室(62b)から流出する冷媒の圧力は、補助吸入路(70)からの冷媒の導入により、第1動作中よりも高くなる。
【0086】
以上のように、本実施形態の膨張機(40)では、上記第1動作と第2動作とを選択的に切り換えることで、膨張機(40)から流出する冷媒の圧力を適宜調節することができる。これにより、例えば、冷房運転と暖房運転の切り換え、または外気温度の変化などに起因して、圧縮機(32)の吸入圧力が変化した場合にも、膨張機(40)では、これに追随させて冷媒を膨張させることができ、いわゆる過膨張の発生を防止できる。
【0087】
−実施形態の効果−
上記実施形態によれば、副吸入通路(70)を切換弁(80)によって開閉し、膨張比を調節することができるので、圧縮機(32)と膨張機(40)との冷媒循環量をバランスさせることができる。その結果、例えば、冷凍装置の運転条件が変化しても、膨張機(40)の流出側で過膨張が発生することを回避でき、逆トルクの発生を抑制することができるので、膨張機(40)での動力回収効率の向上を図ることができると共に、機械的信頼性の向上を図ることができる。
【0088】
また、上記切換弁(80)の切換えによって吸入容積を可変とすることができるので、膨張機運転エリアを拡大することができる。
【0089】
また、上記切換弁(80)の背圧通路(71)は、1つ形成しているのみであるので、従来のように2つの背圧通路を形成する必要がなく、また、上記切換弁(80)を切り換えるための制御弁(75)は、副吸入通路(70)に1つのみ設けているので、部品点数を削減することができると共に、構成の簡素化を図ることができる。
【0090】
また、上記切換弁(80)を膨張室(52)の近傍に設けているので、死容積を小さくすることができる。つまり、上記副吸入通路(70)に制御弁(75)のみを設けた場合、制御弁(75)を冷媒回路(11)に接続される補助配管(73)に設けることになり、制御弁(75)から膨張室(52)までの間が冷媒膨張に寄与しない閉空間の死容積となる。本実施形態は、制御弁(75)の他に切換弁(80)を設けているので、該切換弁(80)を第1膨張室(52)の近傍に配置することができることから、死容積をほぼ無くすことができる。これにより、例えば、死容積が形成された場合には、死容積に起因して動力回収量(仕事量)が小さくなってしまうのに対し、本実施形態では、動力回収量が低減することがなく、膨張機(40)で所望とする動力回収効率を得ることができる。
【0091】
また、上記背圧通路(71)を膨張機本体(43)に形成しているので、副吸入通路(70)を冷媒回路(11)から導くことができ、副吸入通路(70)の断面積を十分に確保することができる。この結果、上記副吸入通路(70)の抵抗を小さくすることができることから、効率の向上を図ることができる。さらに、上記副吸入通路(70)の抵抗を低減することができることから、冷媒流量の制御幅を大きくすることができ、より運転エリアの拡大を図ることができる。
【0092】
つまり、従来、副吸入通路が膨張機本体に形成されていたために、副吸入通路の形成が制約され、十分な断面積を確保することができず、副吸入通路の圧力損失が大きかった。この結果、性能が低下すると共に、流量制御幅の低下による運転エリアの縮小という問題があった。
【0093】
これに対し、本実施形態によれば、上記副吸入通路(70)を冷媒回路(11)から導くことができ、上記副吸入通路(70)の抵抗を小さくすることができることから、性能の向上を図ることができると共に、流量制御幅の拡大による運転エリアの拡大を図ることができる。
【0094】
また、上記副吸入通路(70)を切換弁(80)によって切り換えるので、逆止弁とは異なり、吸入時のチャタリングを防止することができ、開口状態を確実に維持させることができることから、圧力損失を小さくすることができると共に、振動による騒音の低減を図ることができる。
【0095】
〈発明の実施形態2〉
次に、本発明の実施形態2を図面に基づいて詳細に説明する。
【0096】
本実施形態は、図7および図8に示すように、実施形態1の背圧通路(71)が膨張機(40)に流入する高圧冷媒を切換弁(80)の2次側室(88)に導くようにしたのに代えて、背圧通路(71)が膨張機(40)から流出する低圧冷媒を切換弁(80)の2次側室(88)に導くようにしたものである。
【0097】
具体的に、上記背圧通路(71)の一端は、第2膨張機構(42)の流出路(48)に接続され、他端は、切換弁(80)の背圧口(86)に接続されている。そして、上記背圧通路(71)は、例えば、第2膨張機構(42)の第2シリンダ(60)から中間プレート(44)および第1膨張機構(41)の第1シリンダ(50)を介して第1膨張機構(41)のフロントヘッド(43)に亘って形成されている。
【0098】
一方、上記切換弁(80)は、圧縮バネ(83)は、2次側室(88)に設けられ、弁体(82)を閉弁方向に付勢している。つまり、上記切換弁(80)の弁体(82)は、副吸入通路(70)の冷媒圧力である2次側室(88)の2次側圧力と、流出路(48)の低圧冷媒圧力と圧縮バネ(83)のバネ力とを加算した2次側室(88)の2次側圧力とが作用している。そして、上記切換弁(80)は、1次側圧力と2次側圧力との差圧によって上記高圧出口(85)を開閉するように構成されている。
【0099】
したがって、上記膨張機(40)の第1動作は、図7に示すように、制御弁(75)が閉鎖され、副吸入通路(70)が閉鎖されているので、副吸入通路(70)の高圧冷媒が切換弁(80)の1次側室(87)に供給されない。この結果、上記切換弁(80)の弁体(82)の作用力は、背圧通路(71)の低圧冷媒圧力と圧縮バネ(83)のバネ力とを加算した2次側圧力が1次側圧力より大きくなる。よって、上記弁体(82)は、高圧出口(85)を閉鎖し、高圧冷媒は、主吸入通路(46)からのみ膨張機(40)に供給される。この第1動作において、副吸入通路(70)の流出端(第1膨張室の開口)から制御弁(75)までの間は、膨張空間の圧力雰囲気、つまり、いわゆる中間圧の状態に保持される。
【0100】
そして、上記第1動作は、実施形態1と同様に、高圧冷媒が主吸入通路(46)からのみ膨張機(40)に供給され、第1膨張機構(41)の第1ピストン(51)と第2膨張機構(42)の第2ピストン(61)とが回転して行われる。
【0101】
また、上記膨張機(40)の第2動作は、図8に示すように、制御弁(75)が開口され、副吸入通路(70)が開口されているので、副吸入通路(70)の高圧冷媒が切換弁(80)の1次側室(87)に供給される。したがって、上記切換弁(80)の弁体(82)の作用力は、高圧冷媒圧力である1次側圧力が、背圧通路(71)の低圧冷媒圧力と圧縮バネ(83)のバネ力とを加算した2次側圧力より大きくなる。よって、上記弁体(82)は、高圧出口(85)を開放し、高圧冷媒は、主吸入通路(46)から膨張機(40)に供給されると共に、副吸入通路(70)からも膨張機(40)に供給される。
【0102】
そして、上記第2動作は、実施形態1と同様に、高圧冷媒が主吸入通路(46)と副吸入通路(70)とから膨張機(40)に供給され、第1膨張機構(41)の第1ピストン(51)と第2膨張機構(42)の第2ピストン(61)とが回転して行われる。その他の構成、作用および効果は、実施形態1と同様である。
【0103】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記各実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0104】
上記各実施形態は、いわゆるロータリ式の容積型の膨張機(40)を適用しているが、本発明は、例えば、スクロール式の膨張機のように他の膨張機を適用してもよい。
【0105】
また、上記各実施形態は、圧縮機(32)と膨張機(40)が同一ケーシング(31)内で連結された一体型の圧縮膨張ユニット(30)について説明したが、本発明は、圧縮機(32)と膨張機(40)とが別のケーシングに形成されたものであってもよい。つまり、本発明は、例えば、膨張機の回収動力を膨張機に連結された発電機などで回生するシステムの膨張機であってもよい。
【0106】
つまり、圧縮機と膨張機とが別個に構成された場合、圧縮機と膨張機との回転数制御が別個に行われるので、膨張機自体の運転エリアが一体型の圧縮膨張ユニット(30)に比して広くなる。この別体型の膨張機に本発明を適用するとより運転エリアが拡張する。
【0107】
また、上記実施形態は、室内の空調を行う空気調和装置を適用しているが、本発明は、例えば、給湯機やチラーユニット、庫内の冷蔵または冷凍を行う冷却機等の冷凍装置を適用してもよい。
【0108】
また、上記実施形態は、副吸入通路(70)および切換弁(80)を1つ設けていわゆる閉じ切り点を2つ構成するようにしたが、本発明は、副吸入通路(70)および切換弁(80)を2つ以上設け、いわゆる閉じ切り点を3つ以上構成するようにしてもよい。
【0109】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明は、膨張室で膨張した冷媒の動力を回収する膨張機および該膨張機を備えた冷凍装置に関し有用である。
【符号の説明】
【0111】
10 空気調和装置(冷凍装置)
11 冷媒回路
30 圧縮膨張ユニット
32 圧縮機
40 膨張機
41 第1膨張機構
42 第2膨張機構
46 主吸入通路
50,60 シリンダ
51,61 ピストン
52,62 膨張室
53,63 ブレード
70 副吸入通路
71 背圧通路
72 副通路
73 補助配管
75 制御弁
80 切換弁
81 弁室
82 弁体
83 圧縮バネ(付勢部材)
87 1次側室
88 2次側室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材(51)の回転より膨張室(52)で冷媒回路(11)の高圧冷媒を膨張させて冷媒の動力を回収する膨張機であって、
上記膨張室(52)に高圧冷媒を供給する主吸入通路(46)と、
該主吸入通路(46)の膨張室(52)の開口位置より回転部材(51)の回転方向に進んだ位置に開口し、上記膨張室(52)に高圧冷媒を供給する副吸入通路(70)と、
該副吸入通路(70)に設けられ、上記副吸入通路(70)に連通する1次側室(87)の1次側圧力と上記冷媒回路(11)の所定圧の冷媒が導入される2次側室(88)の2次側圧力との差圧に基づいて上記副吸入通路(70)を開閉し、上記膨張室(52)への高圧冷媒の供給および遮断を行う切換弁(80)と、
上記副吸入通路(70)に設けられ、上記切換弁(80)より上流側に位置し、上記切換弁(80)が上記副吸入通路(70)の開閉動作を行うように上記副吸入通路(70)を開閉する制御弁(75)とを備えている
ことを特徴とする膨張機。
【請求項2】
請求項1において、
上記切換弁(80)は、上記冷媒回路(11)の高圧冷媒を2次側室(88)に導く背圧通路(71)が接続されている
ことを特徴とする膨張機。
【請求項3】
請求項1において、
上記切換弁(80)は、上記冷媒回路(11)の低圧冷媒を2次側室(88)に導く背圧通路(71)が接続されている
ことを特徴とする膨張機。
【請求項4】
請求項2において、
上記切換弁(80)は、弁室(81)を1次側室(87)と2次側室(88)とに区画すると共に、上記弁室(81)の内部を直動して上記膨張室(52)に連通する高圧出口(85)を開閉する弁体(82)と、該弁体(82)を開弁方向に付勢する付勢部材(83)とを備え、上記1次側室(87)の冷媒圧力に付勢部材(83)の付勢力を加えた1次側圧力と上記2次側室(88)の高圧冷媒圧力よりなる2次側圧力との差圧によって弁体(82)が高圧出口(85)を開閉するように構成されている
ことを特徴とする膨張機。
【請求項5】
請求項3において、
上記切換弁(80)は、弁室(81)を1次側室(87)と2次側室(88)とに区画すると共に、上記弁室(81)の内部を直動して上記膨張室(52)に連通する高圧出口(85)を開閉する弁体(82)と、該弁体(82)を閉弁方向に付勢する付勢部材(83)とを備え、上記1次側室(87)の冷媒圧力よりなる1次側圧力と上記2次側室(88)の低圧冷媒圧力に付勢部材(83)の付勢力を加えた2次側圧力との差圧によって弁体(82)が高圧出口(85)を開閉するように構成されている
ことを特徴とする膨張機。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項において、
上記背圧通路(71)は、膨張機本体(43)に形成されている
ことを特徴とする膨張機。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項の膨張機(40)を備えている
ことを特徴とする冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−19336(P2013−19336A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153654(P2011−153654)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)