説明

臨床検体中の病原性マイコバクテリアを検出する方法

本発明は、唾液、脳脊髄液、胃洗浄物および組織生検などの臨床検体中の病原性マイコバクテリアの検出に関係する。DNAの新規領域は、ミコール酸メチルシンターゼ遺伝子mmaA1とmmaA2との間の遺伝子間領域ならびにmmaA1およびmmaA2遺伝子の隣接領域に存在する。この検査は、臨床検体から標的DNAを特異的に増幅する一組のオリゴヌクレオチドプライマーを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液、脳脊髄液、胃洗浄物および組織生検などの臨床検体中の病原性マイコバクテリアの検出に関する。この検出では、ミコール酸メチルシンターゼ(methyl mycolic acid synthase)遺伝子mmaA1とmmaA2との間の遺伝子間領域ならびにmmaA1およびmmaA2遺伝子の隣接領域に存在するDNAの新規領域を検出する。本発明は、臨床検体から標的DNAを特異的に増幅するよう設計された一組のオリゴヌクレオチドプライマーを使用する。
【背景技術】
【0002】
結核は、最も高い死因の病気である。毎年、結核は単独の感染症により最も多くの人命を奪っている。世界保健機関(WHO)の報告によれば、毎年800万人以上の結核患者および290万人以上の死者が報告されている(Dolin et al., 1995)。結核による死者数は、強力な抗結核薬が利用可能になったことにより90年代初めまで次第に減少していた。しかし、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)との重感染による相乗効果(Hopewell, P. C et al., 1992)、ヒト型結核菌マイコバクテリウム・テュバキュローシス(M. tuberculosis)の多剤耐性(MDR)菌の出現(Bloom, B. R, and C. L. Murray., 1992)およびいわゆる非結核性マイコバクテリアの関与により、結核患者および死者の数は再び増加してきている。
【0003】
70種以上のマイコバクテリアが知られているが、その多くはヒトにとって非病原性である。結核は、マイコバクテリウム・テュバキュローシスによる感染によって引き起こされるが、まれにウシ型結核菌マイコバクテリウム・ボビス(M. bovis)により引き起こされることもある。これらの微生物は、遺伝学的に非常に近縁であり、結核菌群(mycobacterium tuberculosis complex:MTC)微生物と呼ばれる。人体の肺やその他の器官で結核に似た感染を引き起こす病原性マイコバクテリアは、他にも数多く存在する。これらの微生物は、結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)または非結核性マイコバクテリア(NTM)と呼ばれる。エイズが蔓延した結果、これらのいわゆる非結核性マイコバクテリアが重要となってきており、HIVに重感染している多数の結核患者から単離されている。
【0004】
初期の結核は、それ以外の点では健康である人には気づかれないことが多い。臨床検体中のマイコバクテリウム・テュバキュローシスおよびその他の病原因子を特異的に検出することができる簡単で迅速な信頼できる検査法が無いことは、個々の患者の管理ならびに適切な感染対策および公共の保健対策の実施の両面で甚大な問題を生じさせている。
【0005】
古典的な診断方法として、抗酸マイコバクテリアについて顕微鏡下で唾液塗布物を検査する方法、および肺のレントゲン写真を検査する方法がある。しかし、多くの場合、唾液塗布検査は病気の初期段階ではマイコバクテリアに対して陰性であり、レントゲン写真では肺の変化は感染後数ヶ月までわからない。抗酸病原菌(AFB)用に塗布物を染色するのに2時間近くかかるが、感度は不十分であり、場合によっては非特異的なこともある(Ebersole, L. L. 1992)。さらに、AFB染色で陽性の結果が出たとしても、マイコバクテリアの種を分類できない。
【0006】
現在、唯一の確実に信頼できる診断方法は、臨床検体からマイコバクテリウム・テュバキュローシスを培養し、形態学的および生化学的にマイコバクテリウム・テュバキュローシスを特定することである。マイコバクテリウム・テュバキュローシスおよびその他の関連微生物の培養は、感度がよく特異的であるが、煩雑である。固体培地で培養する場合6〜12週間、液体培地で培養する場合3〜6週間かかり、その間に患者の症状が重くなったり、他の人に病気が感染する可能性がある。したがって、マイコバクテリウム・テュバキュローシスの存在を確実に検出できる迅速な検査法が、早期発見、治療および患者の管理において不可欠である。
【0007】
マイコバクテリウム・テュバキュローシスを迅速に検出および特定するために、いくつかの分子検査法が近年開発されてきた。民間の検査であるジェンプローブ社の「増幅マイコバクテリウム・テュバキュローシス直接検査(Amplified Mycobacterium Tuberculosis Direct Test)」が、Abe et al.およびMiller et al.により評価されている。この検査は、呼吸器検体からマイコバクテリウム・テュバキュローシスの16SリボソームRNAを増幅し、化学発光プローブを使って増幅産物を約91%の報告された感度で検出する。その他の民間の検査として、リガーゼ連鎖反応(LCR)(アボット・ラボラトリーズ社)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(ロシュ・ダイアグノステックス・システムズ社、イーストマン・コダック社、ジョンソン・エンド・ジョンソン社)、Q−ベータレプリカーゼ(ジーン・トラック社)およびストランド置換増幅(strand displacement amplification:SDA法)(ベクトン・ディッキンソン社)に基づく検査が、フォーブスのレビューで検討されている。
【0008】
非培養法で、マイコバクテリウム・テュバキュローシスの感染を免疫学的に検出するその他の方法として、ラテックス凝集法、放射性免疫測定法および酵素結合免疫吸着(ELISA)法などがある。これらの方法の主な欠点は、感度および/または特異性が不足していることである(Kandival, G. V. et al., 1986; 1984; Yenez, M. A. et al., 1986)。臨床条件設定によっては血清学的方法が有効である場合もあるが、感度および/または特異性がよくないためにこの方法は通常制限される(Daniel, T. M. and S. M. Debanne, 1987)。
【0009】
少量の核酸試料からDNAを増幅して検出することを可能にするポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の開発(Saiki et al.)は、臨床検体中のマイコバクテリウム・テュバキュローシスに特有の核酸の検出を可能にした。初期の報告のいくつかは、16SリボソームRNAまたはその遺伝子の検出に基づいていた。マイコバクテリウム・テュバキュローシスおよび関連微生物の検出は、まず、すべての細菌で保存されているプライマーを用いてDNAの一部を増幅し、次に、種に特異的なプローブを用いてマイコバクテリアの種を検出する。この方法の大きな欠点は、手間がかかり、完了するのに24時間以上かかることである。増幅産物中の種ごとに異なる配列を検出するために使用される種特異的なプローブは、わずか数個の塩基が異なるにすぎない。ハイブリダイゼーションをベースとする方法による増幅されたDNAの分析は、理想的な条件に満たない状態で行われると、偽陽性の検査結果となってしまう。
【0010】
IS6110挿入因子の発見(Cave et al., Thierry et al.)とこの因子が結核菌群(マイコバクテリウム・テュバキュローシス、マイコバクテリウム・ボビス、アフリカ型結核菌マイコバクテリウム・アフリカナム(M.Africanum)およびネズミ型結核菌マイコバクテリウム・ミクロティ(M.microti))にだけ存在するであろうという考えが、一連の迅速な診断方法を生み出した(Brisson-Noel et al., Clarridge et al., al., Forbes et al., Hermans et al., Kolk et al., Kox et al., Zambardi et al.)。これらの検査法は、唾液からDNAを抽出するために様々な方法を採用している。抽出したDNAからIS6110DNA配列を増幅するために、PCRが用いられる。このDNAの増幅は、マイコバクテリウム・テュバキュローシス感染の指標となると考えられている。米国特許第5168039号および米国特許第5370998号は、IS6110ベースの結核の検出についてCrawford et al.に付与されている。別の米国特許第5731150号は、チバ・コーニング・ダイアグノスティックス社(Gurpreet. S et al.)に付与されている。欧州特許第0461045号は、IS6110ベースの結核の検出についてGuesdon. J. L に付与されている。IS6110因子は、マイコバクテリウム・テュバキュローシス、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・ボビス−BCG、マイコバクテリウム・アフリカナム、マイコバクテリウム・ミクロティに、それぞれ10個、2個、1個、5個、5個のコピーが存在すると報告されている(Spargo et al.)。IS6110ベースおよびその他のPCRベースの結核の検出を用いた報告のほとんどは、75%以上の感度と100%近くの特異性を主張している。
【0011】
PCRベースの診断の標的としてのこの配列の使用に関する詳細な調査により、いくつかの欠点が明らかされた。Noordhoek et al.により著された七つの主要研究所における盲検比較調査で、偽陽性率が3〜77%、感度が2〜90%と報告され、大きな関心を引き起こした。この調査では、IS6110を特定するための独自の検出方法の使用を、参加したすべての研究所に許した。しかし、その最終的結果は、既存の方法は感度と特異性の両面で著しく不十分であることを明瞭に示していることから、この調査は大きな意味を有するものであった。
【0012】
Lee et al.(1994)による別の調査は、結核性髄膜炎の患者から得た脳脊髄液試料の分析について、62%の偽陽性率を報告した。ある程度の偽陽性については、同じ試験室でそれまでに処理された試料に由来する増幅されたIS6110DNAによる検体汚染によるものと説明してもよいが、多くの研究所は汚染を避けるために優れた検体封じ込め手順を維持しているので、このことは誤りの主原因ではない。この多数の偽陽性は、マイコバクテリウム・テュバキュローシス以外の微生物中にIS6110に類似の配列が存在することによる。IS6110は転移可能な挿入因子であり(Calos and Miller)、DNAのこれらの断片は「移動性」という性質をもつ。また、IS6110は他の微生物に由来する(または他の微生物に転移した)可能性があり、DNAの一部の領域は進化の過程においてこれらの微生物間で保存されたままであろう。Mariani et al.により発表された報告でも、マイコバクテリウム・テュバキュローシスIS6110因子に関連した配列の微生物間での水平移動を論じている。これにより、文献で報告された偽陽性の検査結果の一部を説明できるであろう。さらに、Kent et al.は、マイコバクテリウム・テュバキュローシス以外のマイコバクテリアからIS6110に関連した配列を増幅することができた。これは、IS6110に類似の配列は他の微生物にも存在し、マイコバクテリウム・テュバキュローシスを検出するように設計されたIS6110に特異的なプライマーを用いて行ったPCRで、この配列が検出されうるのではないかという疑いに裏づけを与えた。この問題に取り組むために、ジェンバンク(GenBank)に保管された核酸配列の系統的分析が行われ、マイコバクテリウム・テュバキュローシス以外の微生物においてIS6110に相似した配列の領域が発見された。これらの微生物の多くは、臨床検体中で見られる。
【0013】
結核の検出のための標的としてIS6110は不適切だとする別の事実は、ある一部のマイコバクテリウム・テュバキュローシス分離株はゲノムにIS6110配列を欠いていることがあり、それにより偽陰性の結果が引き起こされることをいくつかの最近の報告が示したことである。アジア分離株についての研究は、分離株の少なくとも一部でこの配列が欠失している可能性があることを報告した(Yuen, L. K, et al. 1993)。
【0014】
結核の検出、分類および治療の別の非常に重要な側面は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の出現である。結核の疫学および病因学は、後天性免疫不全症候群(エイズ)の病原因子であるHIVの増加後、大転換を受けた。結核の発生率は、エイズの出現後大幅に増加した(Bafica, A. et al.)。エイズによる死者のうち、30%以上が結核によるものである。1991年以来、HIVに感染した結核患者の数は3%から10%以上に増加している。エイズ患者にとっては、マイコバクテリウム・テュバキュローシスおよびマイコバクテリウム・ボビスのみが結核の病原因子ではない。いわゆる非結核性マイコバクテリアが、免疫不全症の結核患者では重要な病原菌になってきている。様々な研究所が、非結核性マイコバクテリアと呼ばれるその他の病原性マイコバクテリアを、HIVに重感染した患者由来の臨床検体から単離した。
【0015】
それらのうちで最も重要なものは、トリ型結核菌マイコバクテリウム・アビウム(M. avium)およびその近縁種から成るマイコバクテリア群、すなわち、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M. intracellulare)やマイコバクテリウム・ケロナエ(M. chelonae)である。これらの微生物は、マイコバクテリウム・アビウム−イントラセルラーレ群(MAI群)微生物として知られている。MAI群微生物は、結核と見分けのつかない症状を引き起こす。これらのMAI群は、多数の患者、特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者において、播種型疾患だけでなく肺疾患の原因になっている。肺疾患結核患者由来の30%の臨床検体から、および播種型結核患者からはさらに高い割合で、トリ型結核菌(M. avium)が単独で単離された。マイコバクテリウム・カンサシー(M. kansassi)およびマイコバクテリウム・スクロフラセウム(M. scrofulaceum)は、結核にかかった相当数のエイズ患者から単離された、その他の非結核性マイコバクテリアである。これ以外の非結核性マイコバクテリアもエイズ患者由来の臨床検体から単離されている。非結核性マイコバクテリアの単離が比較的少ない理由は、様々な種類の非結核性マイコバクテリアを単離し、分類するための、簡単で正確な信頼できる検査法が利用できないためであろう。これらの発見は、エイズの出現の結果、非結核性マイコバクテリアが重要な病原体になったことを示唆する。
【0016】
IS6110はマイコバクテリウム・テュバキュローシスに特有なものでなく、多くの分離株で欠失しているという情報、および非結核性マイコバクテリアが特にHIVに重感染した患者における結核の病原因子であるという事実とともに、公表された報告から、IS6110およびその他の標的配列に基づく既存の方法は臨床診断検査で必要とされるレベルの信頼を提供しないことは明らかである。
【0017】
このことは、結核の検出方法における変革への必要性を強調する。これは、結核菌群の微生物のみを検出するのではなく、臨床検体中のすべての病原性マイコバクテリアを検出できる新しい標的を見出すことを要求する。理想的には、結核菌群の細菌のみを検出するのではなく、臨床検体中の非結核性マイコバクテリアを含むすべての病原性マイコバクテリアを検出する診断方法があるべきなのである。
【0018】
臨床検体中の様々な病原性マイコバクテリアを検出後、本発明に関する分析法において説明するようなPCR−RPLF法により、様々な種類の病原性マイコバクテリアを種ごとに分類することができる。NTMのみに感染した患者または結核菌群の微生物と合わせてNTMに感染した患者は、HIVへの重感染の可能性についてすぐに参照でき、HIV感染や集団における伝染に関する優れた指標となりうる。臨床検体中の病原性マイコバクテリアの検出および分類を共に行える、利用可能な検査方法はそれほど多くはない。
【0019】
「マイコバクテリウム・テュバキュローシスの直接検査法」がAbe et alおよびMiller et alによって評価された。この検査法は、呼吸器検体中からマイコバクテリウム・テュバキュローシス16SリボソームRNAを増幅し、化学発光プローブを使って増幅生成物を約91%の報告された感度で検出する。この検査法は複雑であり、完了するのに24時間以上かかり、異なるマイコバクテリアを特定するのに複数のプローブを使用する。各プローブはわずか数個の塩基が異なるにすぎず、ストリンジェントな条件に少しでも満たない条件で行われた場合、偽陽性の結果となってしまう。
【0020】
PCRベースの分析方法は、いくつかの要因に依存する。中でも最も重要なのは、PCRで処理しやすい良質の核酸の抽出、病原体に特異的なPCRプライマーの設計、および単離したDNAから標的の配列を特異的に増幅するPCR条件である。
【0021】
マイコバクテリアの検出に現在利用可能なPCRベースの分析方法の主な弱点は、容易で効率的でユーザに対する安全を保証する核酸抽出法が無いことである。臨床検体由来のマイコバクテリアを溶菌し、多くの臨床検体に存在することが知られている不純物を同時に純化することなく核酸を純化することは、PCRベースの分析方法の重要なステップである。公表されている実験方法の主な欠点は、核酸抽出に使用される多くの方法がすべての種類の検体に容易に使用できるわけではないことである。煩雑で非効率的なDNA純化を必要するような核酸抽出は、検査の速度と感度を低下させる。さらに、異なる種類の試料に対して異なる抽出手順を実行しなければならない場合には、全処理工程は高価になり遅くなる。生きているマイコバクテリウム・テュバキュローシスを含む試料を扱う場合、作業者の安全も主要な懸案事項である。これまでに記述されてきた様々なDNA抽出手順の詳細に分析した結果、これらの手順は非常に非効率であるか、または多くの臨床検体中に存在する不純物を除去することができないかのいずれかであることが明らかとなった(Boom, R. C)。このように、PCRベースの分析法の感度と再現性を確保するために、様々な種類の臨床検体から用意に効率的に着実に核酸を抽出する方法が求められていた。
【0022】
標的の配列の特異的および非特異的な増幅は、PCRベースの分析方法の成功を左右する別の重要な因子である。最適条件からわずかにずれた条件では、たとえ特異的なプライマーであっても、正しい大きさのバンドの非特異的な増幅を引き起こす可能性があり、それにより偽陽性の結果が生じることがある(Gurpreet, S et al.)。これは、実用的で費用効率のよい方法で対処しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の主目的は、臨床検体中の病原性マイコバクテリアを検出する方法を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、唾液、脳脊髄液、胃洗浄物、血液、骨髄穿刺液および組織生検など様々な臨床検体において、遺伝子群の一部を増幅することによりDNAの一領域を検出することで、マイコバクテリアに起因する感染を特定する分析方法の設計と構成に関係する。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、すべてのタイプの臨床検体からDNAを抽出する効率的な方法を開発することに関係する。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、ポリメラーゼ連鎖反応において遺伝子の一部を特異的に増幅することができる一組のオリゴヌクレオチドプライマーを設計することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、標的の特異的な増幅を可能にするポリメラーゼ連鎖反応の方法を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、マイコバクテリアの様々な種を分類する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、唾液、脳脊髄液、胃洗浄物および組織生検などの臨床検体中の病原性マイコバクテリアの検出に関係する。本発明の新規性は、ミコール酸メチルシンターゼ遺伝子mmaA1とmmaA2との間の遺伝子間領域ならびにmmaA1およびmmaA2遺伝子の隣接領域に存在するDNAの新規領域にある。この検査は、臨床検体から標的DNAを特異的に増幅する一組のオリゴヌクレオチドプライマーを使用する。本発明は、従来の方法よりも安全でより多くのDNAを産出する、臨床検体からのDNA抽出方法について説明する。また、本発明は、高価な試薬を使用せずに目的のアンプリコン(単位複製配列)の特異的増幅をもたらすことで検査を経済的にするDNA増幅方法について説明する。本発明は、増幅されたPCR産物の制限断片長多型(RFLP)分析により臨床検体中の病原性マイコバクテリアの様々な種を分類する方法について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本研究の目的は、迅速に、安全に、かつ特異的に、結核を引き起こすマイコバクテリアを検出することを可能にする包括的な技術を開発することである。PCRベースの診断で制限となっているステップは、臨床検体からのDNA抽出、標的配列を特異的に増幅することができるPCRプライマーの設計、および標的配列の特異的な増幅のみを許すPCR条件の開発である。利用可能な検査の深刻な制限は、マイコバクテリアを検出しても、多様なマイコバクテリアの種を分類できなかったことである。
【0031】
様々な核酸抽出方法、およびマイコバクテリアを溶菌し、臨床検体から核酸を純化するための様々な試薬混合物が、多くの利用可能な実験手順に記載されている。多くの方法において、溶菌は、アルカリ、有機溶媒、カオトロピック剤、界面活性剤またはこれらの混合物を用いて検体を処理することによりなされる。より容易な方法のいくつかは、アルカリやPCR緩衝液中で、または普通の水の中でさえ沸騰することで溶菌を達成すると主張している。これらの方法は、容易で、純粋培養では通常よく働くが、臨床検体にはそれほど有効ではない。PCR反応は着実であり、粗野な溶菌方法で遊離された核酸でもPCR反応に直接使用できる、という一般に広まっている観念は正しくない。これらの方法は、使用するには容易であるが、臨床検体中に存在するすべてのマイコバクテリアを殺菌できないことがあり、ユーザにとって危険である。このような調製液はPCR反応を容易に抑制しうる多くの不純物を含んでしまうことが報告されている。このような調製液は、DNAを数倍希釈しても増幅を生じさせない場合があることが観察されている。純粋なDNAの抽出は、PCRベースの分析方法にとって極めて重要であるという事実。
【0032】
発明者は、核酸純化のすべてのステップについて入念に最適化し、容易で着実で効率的であり、作業者に対して完全な安全を保証する方法を開発した。さらに、唾液などの汚染されている検体を刺激の少ないアルカリや粘液溶解薬によって処理することは、多くの汚染物質を除去することを助け、より純粋な核酸調製液を得ることができる。このステップは、唾液や胃洗浄物などの汚染されている試料に存在するその他の汚染微生物を除去するのにも役立つ。唾液は、最も一般的に集められ、肺疾患結核のために提出される臨床検体であり、PCR反応の抑制因子となりうるいくつかの汚染物質を含むことが知られている。
【0033】
本発明で開発された改変溶解緩衝液(modified lysis buffer)は、強力なカオトロピック剤、すなわちグアニジンイソチオシアネートを使用する。これは、臨床検体中に存在するすべてのマイコバクテリアを不活性化し、強固なマイコバクテリア細胞を溶解し、ならびにタンパク質の変性および除去を助け、その結果、より純粋なDNA調製液(表1)を作り出すとともに作業者の安全を保証する。改変溶解緩衝液中で検体を加熱することにより、胞子やバキュロウイルス多角体のような最も強固な細胞および物体でも容易に溶解される。当グループによる以前の報告において、バキュロウイルス多角体やマイコバクテリアなどの強固な物質から核酸を溶解し純化するためにグアニジンイソチオシアネートを使用することが開示されている(Das et. al; Bose. M et al)。
【0034】
表1:1〜3番はここで述べたように調製された試料であり、4〜6番はGurpreet et. al.の方法により調製された試料である。
【表1】

【0035】
この試薬を用いることの別の利点は、ほとんどのタンパク質がこの緩衝液中で変性されるため、検体に存在するマイコバクテリアが完全に溶菌されることである。他の方法でもこの試薬を使用することが報告されている(Gurpreet, S et al.)。本方法は、それらの方法とはいくつかの点で異なっている。本方法における改変溶解緩衝液は、より完全な溶菌を達成し、よりタンパク質を除き、微量のDNAでもその沈降を助けるような組成を有する。その結果、より純粋なDNA調製液を向上した収量で得ることができる。溶菌のためにグアニジンイソチオシアネート−トリス−フェノールを使用する代わりに、本発明の溶解緩衝液は、界面活性剤N−ラウリルサルコシル、200mMのNaClおよび10mMの2'メルカプトエタノールを4Mのグアニジンイソチオシアネートとともに含む。非常に爆発しやすく危険なフェノールは、改変溶解緩衝液には含まれない。これらの改変は、本発明の改変溶解緩衝液を完全でより強力なものとしている。界面活性剤は、細胞壁の脂質およびタンパク質の可溶化を助け、それにより様々な種類の複合的な脂質が豊富にあるマイコバクテリア細胞壁の完全な溶解をもたらす。NaClの使用は、微量に存在する核酸の沈降を助け、その結果、Gurpreet et alにより記載された方法に比べてDNA収量が約1.4〜1.5倍向上する。これは、特に、試料1ml当りにごく少数のマイコバクテリアしかいない臨床検体を扱う場合に重要である。マイコバクテリア細胞は、改変溶解緩衝液中で消化、除染(decontaminated)された試料を85℃で20分間加熱することにより不活性化され、溶解される。いくつかの方法で記載されている沸騰(不必要であり、キャップが飛んだり、試験管が破裂したりしかねない)に比べて、これは安全である。溶解物は、アルカリ性フェノールを用いて一度抽出される。アルカリ性フェノールを用いた抽出によるタンパク質除去は、多くのプロトコルで主張されているように不必要なものではないことを見出した。この容易なステップは、DNAに強固に結合したものも含むすべてのタンパク質の除去をもたらすため、より純粋な核酸調製液をもたらす。これは、特に、唾液や胃洗浄物のような汚れている試料を扱う場合に、分析の再現性を高める。核酸は、同量のイソプロパノールを用いて水相から沈降される。
【0036】
次のステップでは、病原性マイコバクテリアに特異的な一組のオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。この配列が他の病原性微生物またはヒトには確実にないように注意を払った。もしそのような微生物やヒトの細胞があったとすれば、臨床検体から除外できないからである。マイコバクテリアのアクセッション番号MTCY20H10.23c〜MTCY20H10.26cの遺伝子群mmaA1〜mmaA4(図1)がこの目的で使用された。この遺伝子群は、様々な長さの3つのスペーサー領域により分離された4つの遺伝子を含む(図1)。これらの遺伝子メトキシミコール酸シンターゼ(methoxy-mycolic acid synthases)は、病原性マイコバクテリア中に存在する複合末端ミコール酸(complex terminal mycolic acids)の合成と修飾を担う。これらのミコール酸はマイコバクテリアの病原性にかかわる。フォワードプライマーA(配列番号3)は、mmaA2遺伝子の1番目から9番目までの塩基に位置する。このオリゴヌクレオチドプライマーの11塩基対(bp)は、遺伝子mmaA2とmmaA1の間の167塩基対のスペーサー領域に位置する。リバースプライマーD(配列番号4)は、mmaA1遺伝子の688番目から705番目までの塩基に位置する(図1および図2)。これらのプライマー配列は、「プライマー・セレクト」というソフトウェア(レーザージーン、DNAスター社)を用いて設計されたもので、マイコバクテリウム・テュバキュローシスおよびマイコバクテリウム・ボビス以外の微生物の配列との相同性を示さない。
【0037】
このプライマー配列が病原性マイコバクテリアに特異的であることを確かめるため、別の方法も採用した。当研究所(インスティテュート・オブ・ゲノミクス・アンド・インテグラティブ・バイオロジー)で開発された「ゲノム・カルキュレーター」というソフトウェアを用いて、オリゴヌクレオチド配列をアミノ酸(ペプチド)に変換し、多数の病原性微生物およびヒトの遺伝子全体(gene complement)と比較した。このソフトウェアは、DNA配列をアミノ酸(ペプチド)に変換し、それと、データベースで入手可能なすべての配列を短いペプチドのライブラリに変換したものとを比較する。このソフトウェアは、マイコバクテリウム・テュバキュローシスおよびマイコバクテリウム・ボビスに特異的であり、かつ、データベースで全ゲノム配列を入手可能な24種の病原性微生物またはヒトには存在しないプライマー配列を発見した。これらのプライマーを用いたPCRの結果は、病原性マイコバクテリアのゲノムDNAでは検査したすべての例について増幅が生じたが、非病原性マイコバクテリアのゲノムDNAでは増幅が生じなかった(図3および表2)。
【0038】
表2:病原性および非病原性のマイコバクテリアの様々な種からのADのPCR増幅
【表2】

【0039】
特異的なプライマーの設計後、次の重要なステップは、所望の標的のみを特異的に増幅するPCR条件を設計し、開発することであった。最適な条件に劣る条件でPCRを行うと、所望の標的に大きさが近似するDNAの他の領域を非特異的に増幅させてしまうため(Gurpreet et al.)、このステップは極めて重要である。言い換えると、上記条件は、所望の標的の増幅を減少させ、特異性および感度を低下させる。Gurpreet et, al.が彼らの発明において使用したプライマーとは異なり、本発明者のプライマーは、最適な条件に劣る場合であっても非病原性マイコバクテリアからほぼ同一の大きさのバンドの増幅を生じさせることはない(図3)。
【0040】
非特異的な増幅は、PCRのアニーリングステップにおけるオリゴヌクレオチドプライマーの非特異的なアニーリングに起因する。非特異的な増幅を回避するために最も一般的に採用されている手法は、ホットスタートPCRを行うことである。これは、反応が高温のときに重要な成分を付加することによって達成される。このために、ワックスビーズに封入した酵素が使用され、最近では新しいサーモポリメラーゼ(thermopolymerase)酵素(サーモポリメラーゼ・ゴールド、パーキン・エルマー社)が利用できるようになった。この酵素は、この酵素に対するモノクローナル抗体に結合しており、95℃で10〜15分間インキュベートされると活性化する。しかし、この方法を用いると検査のコストを10〜20%増加させてしまう。
【0041】
さらに、サイクル条件を、所望の部位以外におけるプライマーのアニーリングを阻止するように改変した。これは、PCRの最初の数サイクルをオリゴヌクレオチドプライマーの算出された融解温度よりも高いアニーリング温度で行い、次いでサイクルごとに徐々にアニーリング温度を減少させていき、次いで25サイクルを最適なアニーリング温度に保つことで達成された。初期のサイクルで特異的なアンプリコンが一度確立されれば、その後のサイクルで非特異的な産物がこれと競合することはない。このようなサイクル条件はタッチダウンPCRと呼ばれ、高価な試薬を使用せずに特異的な増幅の実現を助ける。この方法は、検査を、より費用効率よく、より使いやすくする。
【0042】
分析方法の次のステップは、増幅PCR産物の検出である。増幅PCR産物は、いくつかの異なる方法で検出されうる。アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲルによる電気泳動は、最も一般的で容易な増幅PCR産物の検出方法である。アガロースゲルの使用は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはDNA−ELISAよりも簡便である。後者は、煩雑であり、検出するのにより長く時間がかかり、より専門的な技能を要する。ポリアクリルアミドは検出に使用されるエチジウムブロマイド色素の色を弱める(quenches)ので、ポリアクリルアミドゲルはアガロースゲルに比べて感度が劣る。その上、アクリルアミドは神経毒として作用するため、ユーザにとって潜在的に危険である。PCR産物の分離には、水平アガロースゲル電気泳動法を使用した。増幅産物は、短波UVトランスイルミネータで検出される。
【0043】
最近では、ビオチンまたは蛍光色素によるPCR産物のラベル付け、およびそれに続く産物のELISAによる検出について報告されている。この方法は、本発明者のものも含むどのPCRベースの分析方法でも容易に採用できる。
【0044】
このPCRベースの検出方法は、単に、臨床検体中の様々な病原性マイコバクテリアの検出に適しているだけでなく、PCR増幅断片の制限断片長多型(RFLP)分析を用いて、それらの種を分類するのに用いることもできる。RFLPは、異なる種に対して、およびある種に属する異なる菌株に対して非常に強力なツールである。RFLPは、各DNAは一つ以上の制限エンドヌクレアーゼ部位を有するという事実に基づいている。これらの部位は、様々な細菌から得たII型制限エンドヌクレアーゼにより正確に認識される。生物の自然な進化の過程で、これらの部位のいくつかが改変されたり、または失われたりする。したがって、DNAのある領域をある酵素で切断すると、生物の種ごとに異なる断片長の多型が観察され、これは種分類と疫学の効率的なツールとして働く。ADの領域は二つの遺伝子の一部および167塩基対の遺伝子間領域を有するので、ADはマイコバクテリアの種のPCR−RFLP分析のための適切な候補である。このDNA領域は、いくつかの制限エンドヌクレアーゼについて、複数塩基離れて位置する二つの制限エンドヌクレアーゼ部位を有する。これら二つの制限エンドヌクレアーゼ部位は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析に適した大きさの範囲の断片を作り出す(表3、図4、図5、図6)。これらの部位は、遺伝子mmaA1内だけでなく遺伝子間にもある(図4、図5、図6)。切断産物は、種ごとのRFLPマッピングのために、10〜12%ポリアクリルアミドゲル上で容易に分離できる。いくつかの一般的な制限エンドヌクレアーゼ部位を含む167塩基対の遺伝子間領域の存在が、ADをPCR−RFLP分析を用いたマイコバクテリアの種分類に適する候補としている。
【0045】
表3:DNA領域のいくつかの制限エンドヌクレアーゼ部位
【表3】

【0046】
PCR試薬調製専用のクリーンルームにおいて、PCR試薬を調製し、分注した。PCR混合室には、試料、培地または純化したDNAを一度も持ち込まなかった。増幅後のDNAに一度も接触していない別の部屋で、PCR混合液に標的DNAを加えた。個別にキャップ(アキシジェン社)を装着した200μlの薄肉チューブを用いて、MJミニサーマルサイクラー(MJリサーチ社)内で増幅を行った。PCRチューブに添加した第一の溶液は、2.0μlの10×PCR緩衝液(100mMのトリス(pH8.3)、500mMのKCl、15mMのMgCl)、2.0μlのdNTP混合液(それぞれ2.0mMのdATP、dGTP、dTTPおよびdCTP)、1.0μlの配列番号5のプライマー=5’TGGATCCGTTGACCATGAGGTGTAATG3’(5ピコモル/μl)、1.0μlの配列番号6のプライマー=5’GGAATTCCACTACGCACGGACTCTC3’(5ピコモル/μl)および1単位の酵素を含む0.2μlのTaqポリメラーゼおよび11.8μlの水を含む。PCRチューブを試料調製ルームへ移し、2.0μlのDNAを加えた。チューブをタッピングにより十分に混合した後、タッチダウンPCRプログラムによる手順を実行した(図7)。このプログラムは、95℃で3分間の初期変性を行う。初期変性ステップに続き、94℃で45秒間の変性;70℃で開始し、タッチダウンサイクルごとに0.8℃ずつ温度を下げる45秒間のアニーリング;および72℃で1分間の伸長;を含むタッチダウンが14サイクル実行される。これに続き、94℃で45秒間の変性;58℃で45秒間のアニーリング;および72℃で1分間の伸長;を含む通常のサイクルが25サイクル実行される。PCRが完了したら、増幅PCR産物の分析のためにチューブを別の部屋へ移した。10μlの反応産物を2.0%アガロースゲルに載せ、別の10μlの反応産物をPCR−RFLP分析が必要となるときのために保存した。
【0047】
臨床検体中の病原性マイコバクテリアの検出のためのPCRベースの分析方法を評価するために、全部で142の臨床検体を使用した。そのうちの141が唾液試料であり、1つが脳脊髄液であった。
【0048】
抗酸塗布法(acid fast smear method)により陽性であった74の検体のうち、68はPCRでも陽性であった。これら74の検体のうちの4つは、塗布では陽性であったが、PCRでは陰性であった。これら全患者の塗布検査結果について、抗酸顕微鏡検査による報告は不十分なものであった。さらに、これらの患者からの重複した試料はPCRで陽性であった。同じ患者由来の二つの検体は、塗布では陽性であったが、PCRでは陰性であった。これらの検体からのDNAを含む反応物に純化したDNAを添加したところ、これらの試料はPCRの抑制因子を含むことがわかった。これらの検体を改変溶解緩衝液で再処理し、イソプロパノールで沈降したところ増幅が生じた。31人の患者は、抗酸顕微鏡検査では陰性であったが、PCRでは陽性となった。これらの全患者の臨床報告は、塗布法によりマイコバクテリアについて陽性であり、治療を受けていたことを示していた。塗布検査が陰性になったのは、これらの検体中の細菌の量が少ないためであった。残りの37の検体は、塗布法とPCR法のどちらも陰性であった。彼らの臨床報告を調べたところ、彼らは他の臨床的指標によっても陰性であることがわかり、また彼らは発熱や咳などの事前兆候を理由に来院していた。
【0049】
したがって、本発明の主たる実施形態は、臨床検体中の病原性マイコバクテリアを検出するための方法に関し、前記方法は以下のステップを有する。
(a)従来の方法により粘液を含む汚染物質から臨床検体を浄化するステップと、
(b)生きている病原性マイコバクテリアを不活性化し、プロセスをユーザにとって安全なものにするために、ステップ(a)で得た処理済臨床検体を改変溶解緩衝液で処理するステップと、
(c)DNAの収量と質を高めるように改変された方法を用いて、ステップ(b)から得た処理済臨床検体からゲノムDNAを抽出するステップと、
(d)病原性マイコバクテリアの特異的な検出のためにステップ(c)で得たDNAから配列番号4の配列を設計するステップであって、前記設計された配列はステップ(c)で得たDNAの配列番号3の選択された遺伝子間領域ならびに配列番号1の遺伝子mmaA1の一部および配列番号2の遺伝子mmaA2の一部を含む隣接領域から構成されるステップと、
(e)配列番号4のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のために、フォワードプライマーである配列番号5およびリバースプライマーである配列番号6の一組の特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、合成するステップと、
(f)ステップ(d)の配列番号4を特異的に増幅するためのPCR増幅プロセスを構築するステップであって、前記プロセスは臨床検体中の病原性マイコバクテリアの存在を検出するためにステップ(e)で設計および合成された特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いることを含むステップと、
(g)HIV重感染の迅速な評価のために病原性マイコバクテリアの種を分類するために、制限断片長多型(RFLP)分析により増幅されたPCR産物を分析するステップ。
【0050】
本発明の別の実施形態は配列番号4に関し、前記配列番号は次に示す配列を有する。
5’GAGGTGTAATGCCTTTCCGGACCCTAGGTGGCCTTTCGGTGCTTGCACGGAACGCACCGATGCTTCCCCCTCCCCGCATGCTCGAGGCATGCTATCCGATACAGGGCCGCCGCACTAAACCGCGATCGAATTTGCCCAGGTCAGGGAACGGATATGAGCGGACGAG3’
【0051】
本発明のさらに別の実施形態は、唾液、胃洗浄物、脳脊髄液、血液、組織生検、または骨髄穿刺液およびその他の体液または組織から選択される臨床検体に関する。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態は、前記ステップ(a)における汚染物質(マイコバクテリア以外の生きている微生物および粘液)からの検体の浄化は、刺激の少ないアルカリ(mild alkali)、NaOH、クエン酸三ナトリウムおよび粘液溶解薬および約0.4〜2.5Mの範囲のグアニジンイソチオシアネートを含む消化除染混合液(digestion decontamination mix)により行われ、その後、遠心分離により検体を濃縮することに関する。
【0053】
本発明のさらにもう一つの実施形態は、刺激の少ないアルカリ、NaOH、クエン酸三ナトリウムおよび粘液溶解薬および約0.5〜2.0Mの範囲のグアニジンイソチオシアネートを含む消化除染混合液に関する。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態では、前記ステップ(c)において、前記DNAは、約0.5〜8Mの範囲のグアニジンイソチオシアネート、約20〜100mMの範囲のトリス.Cl(pH7.6)、約0.5〜2%の範囲のN−ラウリルサルコシル、約0.1〜20mMの範囲のEDTA、約1〜25mMの範囲のb−メルカプトエタノールおよび約0.3M〜1Mの範囲のNHCOOHを有する成分を含む改変溶解緩衝液を用いて処理された臨床検体から抽出され、有機溶媒による完全な沈降により収量を向上させるように純化される。
【0055】
本発明の別の実施形態は、グアニジンイソチオシアネートは約4Mであり、トリス.Cl(pH7.6)は約50mMであり、N−ラウリルサルコシルは約1%であり、EDTAは約1mMであり、b−メルカプトエタノールは約10mMであり、NHCOOHは約0.7Mであることに関する。
【0056】
本発明のさらに別の実施形態は有機溶媒に関し、前記有機溶媒はフェノール/クロロホルム混合物およびクロロホルムを含む群から選択される。
【0057】
本発明のさらにもう一つの実施形態では、前記ゲノムDNAの収量は約25〜50%の範囲で増加される。
【0058】
本発明の別の実施形態では、前記ゲノムDNAの収量は約30〜40%の範囲で増加される。
【0059】
本発明のさらに別の実施形態は改変溶解緩衝液に関し、前記改変溶解緩衝液はより純粋なDNAの調製物を提供する。
【0060】
本発明の別の実施形態は、処理に関係し、4Mのグアニジンイソチオシアネートを含む前期改変溶解緩衝液を用いる前記処理は、手順が作業者にとって安全なものになるように、生きているマイコバクテリアを不活性化する。
【0061】
本発明のさらに別の実施形態では、ステップ(f)における高収量のDNAの増幅は、改変タッチダウンPCRサイクル条件により達成され、前記条件は、約62〜72℃の範囲の高温での初期アニーリングのステップと、それに続く最初の10〜25サイクルの間に、PCRサイクルごとに約0.2〜1℃の範囲ずつ温度を下げ、その後の30サイクルのPCRのために約56〜62℃の最適なアニーリング温度にするタッチダウンステップとを有する。
【0062】
本発明のさらにもう一つの実施形態では、高収量のDNAの増幅は、改変タッチダウンPCRサイクル条件により達成され、前記条件は、約70℃の高温での初期アニーリングのステップと、それに続く最初の約14サイクルの間に、PCRサイクルごとに約0.8℃ずつ、その後の25サイクルのPCRのために約58℃まで温度を下げるステップとを有する。
【0063】
本発明の別の実施形態は、臨床検体中の病原性マイコバクテリアの検出のために配列番号4の遺伝子間領域を増幅することができる前記オリゴヌクレオチドプライマーは、次の群から選択されることに関する。
a.フォワードプライマーである、5’TGGATCCGTTGACCATGAGGTGTAATG3’(配列番号5)
a.リバースプライマーである、5’GGAATTCCACTACCACGGACTCTC3’(配列番号6)
【0064】
本発明のさらにもう一つの実施形態は、オリゴヌクレオチドプライマーの長さに関し、オリゴヌクレオチドプライマーの長さは、5塩基から100塩基の間である。
【0065】
本発明の別の実施形態は、次の群から選択されるプライマーを有する、臨床検体中の病原性マイコバクテリアを検出する診断キットに関する。
(a)フォワードプライマーである、5’TGGATCCGTTGACCATGAGGTGTAATG3’(配列番号5)
(b)リバースプライマーである、5’GGAATTCCACTACGCACGGACTCTC3’(配列番号6)
【0066】
本発明のさらに別の実施形態は、病原性マイコバクテリアを検出するための配列番号5および配列番号6を有するプライマーの使用に関し、前記使用は下記のステップを有する。
a.DNAの収量と質を高めるように改変された方法を用いて、処理済臨床検体からゲノムDNAを抽出するステップと、
b.病原性マイコバクテリアの特異的な検出のためにステップ(a)で得たDNAから配列番号4の配列を設計するステップであって、前記設計された配列はステップ(a)で得たDNAの配列番号3の選択された遺伝子間領域ならびに配列番号1の遺伝子mmaA1の一部および配列番号2の遺伝子mmaA2の一部を含む隣接領域から構成されるステップと、
c.ステップ(b)の配列番号4を特異的に増幅するためのPCR増幅プロセスを構築するステップと、
d.HIV重感染の迅速な評価のために病原性マイコバクテリアの種を区別するために、制限断片長多型(RFLP)分析により増幅されたPCR産物を分析するステップ。
【0067】
本発明のさらに別の実施形態は配列番号4に関し、設計された配列番号4は次に示す配列を有する。
5’GAGGTGTAATGCCTTTCCGGACCCTAGGTGGCCTTTCGGTGCTTGCACGGAACGCACCGATGCTTCCCCCTCCCCGCATGCTCGAGGCATGCTATCCGATACAGGGCCGCCGCACTAAACCGCGATCGAATTTGCCCAGGTCAGGGAACGGATATGAGCGGACGAG3’
【0068】
本発明のさらにもう一つの実施形態は、前記臨床検体は、唾液、胃洗浄物、脳脊髄液、血液、組織生検、または骨髄穿刺液およびその他の体液または組織から選択される、使用に関する。
【0069】
本発明の別の実施形態では、前記ステップ(a)における汚染物質(マイコバクテリア以外の生きている生物および粘液)からの検体の浄化は、刺激の少ないアルカリ、NaOH、クエン酸三ナトリウムおよび粘液溶解薬および約0.4〜2.5Mの範囲のグアニジンイソチオシアネートを含む消化除染混合液により行われ、その後、遠心分離により検体を濃縮する。
【0070】
以下の実施例を用いて本発明を説明する。ここで、以下の実施例は、本発明を説明するために提示するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0071】
実施例1:試薬
トリス塩基、N−アセチル−L−システイン(NALC)、エチジウムブロマイド、アガロース、KHPO、KHPO、クエン酸ナトリウム、N−ラウリルサルコシル、EDTA、2−メルカプトエタノールは、シグマ・アルドリッチ社(米国)から購入した。サーモポリメラーゼおよびdNTPsは、ニュー・イングランド・バイオラボ社(米国)から入手した。プラスチック製品は、アキシジェン社(米国)およびコーニング−コースター社(米国)から入手した。
【0072】
実施例2:臨床検体の収集と処理
臨床検体は、ラーマクリシュナ・ミッションフリー結核診療所(カロルバーグ、ニューデリー、インド)において、患者からの142の唾液検体と1の脳脊髄液検体を殺菌した検体ボトルに得た。試料は、可能な場合は即座に処理し、または処理前に4℃で一晩保存した。
【0073】
(唾液)
試料はNALC−NaOH法で処理した。約1〜3mlの唾液をスクリューキャップ付きの15ml遠心管(コーニング−コースター社、米国)に移した。各試料に1〜3mlの消化除染緩衝液を加え、静かに混合し、室温で15分間静置した。試料を3倍量の0.67Mリン酸緩衝液(pH6.8)で希釈し、スイングアウトローター(レミ・セントリフュージ社、インド)を用いて3500gで15分間遠心分離した。沈殿物を300μlの滅菌蒸留水中に再懸濁した。処理した試料の3分の1を必要であれば培養に使用し、残りの3分の2をPCRに使用した。PCR用に取り分けた部分は、不活性化した後、0.5mlの溶解緩衝液を試験管に添加し、85℃で20分間加熱することで溶解させた。
【0074】
(脳脊髄液)
脳脊髄液(CSF)は、通常無菌であると考えられるので、消化および除染をする必要はない。1〜2mlの脳脊髄液(CSF)をマイクロ遠心チューブ(MCT)に移し、マイクロ遠心分離機(エッペンドルフ社、ドイツ)を用いて12000gで3分間遠心分離した。沈殿物を0.067Mリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄し、300μlの滅菌蒸留水中に再懸濁した。全ての試料をPCRに使用した。
【0075】
実施例3:塗布物の調製
染料として塩基性フクシン(basic fuschin)を使用し、Zeihl-Neelsenの染色手順により抗酸性染色を行った。唾液の粘液部分の一部を1×2cmの面に塗布した。塗布物を短時間熱定着した後、塩基性フクシン染料に浸し、ブンゼンバーナーで短時間加熱した。95%エタノールに3%の硫酸を含む酸アルコールを用いて脱色した。スライドを蒸留水で洗浄後、メチレンブルー(0.3%塩化メチレンブルー)で1〜2分間対比染色した。水で洗い流し、空気乾燥させた。スライドを400×の油浸対物レンズの下に置き、双眼顕微鏡(ツァイス、ドイツ)で観察した。塗布物をWHOのガイドラインに沿って評価した。
【0076】
実施例4:改変溶解緩衝液を用いて処理した臨床検体からのDNAの抽出
消化および浄化した試料の一部(200μl)をマイクロ遠心チューブへ移した。4Mのグアニジンイソチオシアネート、50mMのトリス.Cl(pH8.0)、1%のN−ラウリルサルコシル、1mMのEDTA、10mMの2−メルカプトエタノールおよび0.2MのNaClを含む500μlの改変溶解緩衝液を加え、転倒混和した。遠心チューブを断続的に振とうしながら85℃で20分間インキュベートし、細胞を溶解した。溶解物に200μlの2.5M酢酸アンモニウム(pH7.6)を添加し、転倒混和した。混合物を12000gで5分間遠心分離した。フェノールとクロロホルムを用いて上清を一度抽出した。0.8倍量のイソプロピルアルコールを用いてDNAを沈降した。沈殿物を70%エチルアルコールで完全に洗浄し、短時間空気乾燥させた後、30μlのTE緩衝液(10mMのトリス.Cl(pH8.3)および0.01mMのEDTA(pH8.0))に溶解し、このうちの2μlをPCR増幅に使用した。
【0077】
実施例5:プライマーの設計
病原性マイコバクテリアの必須遺伝子(essential gene)の一部を増幅する2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、プライマー選択ソフトウェア(レーザージーン社のソフトウェア「DNAスター」)を使用して設計した。ミコール酸メチルシンターゼは、mmaA1〜mmaA4の4つの遺伝子の遺伝子群である。これらの遺伝子は、ミコール酸の合成と修飾にかかわっており、病原性マイコバクテリアにのみ存在することが報告されている。フォワードプライマーの11塩基対はmmaA1とmmaA2との間の遺伝子間領域にあり、一方リバースプライマーはミコール酸メチルシンターゼ1遺伝子(mmaA1)内に位置する。これらのプライマーについて、当センターのバイオインフォマティックス部門が開発したソフトウェア「ゲノム・カルキュレーター」を使ってマイコバクテリアに対する特異性をチェックした。フォワードオリゴヌクレオチドプライマーである配列番号5の配列は、長さ27塩基対である。リバースプライマーである配列番号6の配列は、長さ25塩基対である。フォワードプライマーAはmmaA2遺伝子の1〜9番目の塩基に位置し、このオリゴヌクレオチドプライマーの11塩基対はmmaA2遺伝子とmmaA1遺伝子との間の167塩基対のスペーサー領域に存在する。リバースプライマーDである配列番号2の配列は、mmaA1遺伝子内の688〜705番目の塩基に位置する(図1および図2)。プライマー配列は、5’末端にBamHI制限エンドヌクレアーゼ部位を含む7塩基対の突出部を有する。オリゴヌクレオチドプライマーDも、5’末端にEcoRI部位を含む7塩基対の突出部を有する。これらのプライマーは、病原性マイコバクテリアの必須遺伝子のADと呼ばれる373塩基対の領域を特異的に増幅する。
【0078】
フォワードプライマー:配列番号5
5’TGGATCCGTTGACCATGAGGTGTAATG3’
リバースプライマー:配列番号6
5’GGAATTCCACTACGCACGGACTCTC3’
【0079】
実施例6:臨床検体から抽出したDNAからのADのPCR増幅
PCR反応は、上記調製により得られた2.0μlのDNA、50mMのKCl、10mMのトリス.Cl(pH8.3)、1.5mMのMgCl、10ピコモルの各オリゴヌクレオチドプライマーおよび1単位のサーモポリメラーゼを含む20μlの反応量で行った。反応は2回行い、2回目は上記DNAの10倍希釈液を2.0μl用いて行った。
【0080】
非特異的な増幅を発生させずに純粋なPCR産物を得るために、いくつかの異なるサイクル条件で実験を行った。最初は、通常のサイクル条件で実験を行った。すなわち、初期変性を95℃で3分間行い;94℃で45秒間の変性、60℃で45秒間のプライマーとのアニーリングおよび72℃で1分間の伸張のサイクルを30サイクル繰り返し;72℃で5分間の最終伸長;を行った。
【0081】
これは、純化したDNAでは十分に作用したが、臨床検体から取り出したDNAでは非特異的増幅を生じさせた。これを克服するために、新しいポリメラーゼ連鎖反応法を採用した。
【0082】
(タッチダウンPCR)
タッチダウンPCR法は、非特異的増幅を抑制するのに有効な方法であり、PCR反応の収率と効率を高めることができる。タッチダウン法では、所定のTm(融解温度)よりわずかに高い温度でオリゴヌクレオチドプライマーをアニーリングし、所望のアニーリング温度になるまでアニーリング温度Tmをサイクルごとに下げてゆく。この方法は、初期サイクル中における非特異的な産物の確立させず、PCR反応の効率を何倍も向上させるだけでなく特異的な増幅の促進に寄与する。
【0083】
(タッチダウンPCRのサイクリング条件)
このプログラムでは、95℃で3分間の初期変性に続き、タッチダウンサイクルを14サイクル行った。各タッチダウンサイクルでは、94℃で45秒間の変性;70℃で開始し、サイクルごとに0.8℃ずつ下がる、45秒間のアニーリング;72℃で1分間の伸長;を行った。タッチダウンに続き、94℃で45秒間の変性;58℃で45秒間のアニーリング;72℃で1分間の伸長;のサイクルを25サイクル行った。
【0084】
実施例7:増幅PCR産物の検出
増幅PCR産物は、アガロースゲルを用いた電気泳動により分析された。PCR産物を1.0μlの6×ゲルローディングバッファーと混合した後、混合物を1.8%アガロースゲルに乗せた。1×TAE緩衝液(0.04Mのトリス酢酸および0.001MのEDTA)中でゲルを調製し、電気泳動した。電気泳動の後、0.5μg/mlのエチジウムブロマイドを含む染色液中でゲルを染色した。イーグルアイゲル撮影システム(Eagle eye gel documentation system:ストラタジーン)を使って、ゲルを撮影し、記録した。
【0085】
本発明の利点
臨床検体中の病原性マイコバクテリアのPCRベースの検出方法は、今まで説明したように様々なものがある。しかし、どの方法をとってもそれぞれに欠点があり、完璧なものはない。主な欠点は、臨床検体からのDNA抽出の段階にある。検出のために研究室に持ち込まれる臨床試料は、これまでに示された多くの方法でDNAとともに純化され、後に続く検出ステップを阻害する様々な不純物を含む。DNA分離の本発明の方法は、分離物を除去し、PCR用に純化されたDNAを提供する。この方法の別の利点は、病原性マイコバクテリアに特異的な標的DNA領域を特異的に増幅するようにオリゴヌクレオチドプライマーを選択する点である。プライマーのうちの一方はマイコバクテリアの必須遺伝子の間の遺伝子間領域に存在し、他方はマイコバクテリアの必須遺伝子内に位置するように、一組のプライマーを設計した。したがって、この一組のプライマーは、病原性マイコバクテリアに特異的であり、病原性マイコバクテリア由来のDNA領域を特異的に増幅することができ、従来のプライマーの多くで報告されたような他のマイコバクテリア由来のDNAを増幅しない。この方法の他の利点は、特異的な増幅を達成するために、ストリンジェントな条件下で標的配列をPCR増幅するための高価な試薬を使用しないことである。このような試薬は、検査のコストを増加させる。その代わり、この方法は、標的DNAの特異的増幅を達成するための独特なサイクル条件を使用する。その結果、検査のコストは約10〜20%削減される。この方法の別の利点は、遺伝子間領域とマイコバクテリアの二つの基幹遺伝子の隣接領域とを含む増幅DNAの独特な構成によるものである。このような構成は、病原性マイコバクテリアの様々な菌株の制限断片長多型(RFLP)に基づく分類のためには理想的なものである。この方法の別の利点は、検査の初めに臨床検体中の病原性マイコバクテリアを不活性化するステップを取り入れているため、ユーザにとって安全なプロセスになっていることである。
【0086】
配列番号1,2,3,4,5,6の配列表情報を以下に示す。
【0087】
配列表
一般事項
出願人:CSIR
発明の名称:臨床検体中の病原性マイコバクテリアを検出する方法
配列数:06
住所:インド国,デリー−110007,モールロード,インスティテュート・オブ・ゲノミクス・アンド・インテグラティブ・バイオロジー(旧センター・フォー・バイオケミカル・テクノロジー)、電話番号00−91−11−7666158、Fax番号00−91−7667471
配列番号1の情報
1.配列の特徴:
1.配列の長さ:861塩基対
2.配列の型:DNA
5’CTACTTGGTCATGGTGAACTGGGCGACGTTGATTAGGCCTCTGCGGAAGCGCTCCGCGCATCCGGTCAGATAGTGCATGAAGTTGTTGTAGACCTCTTCGGACTGTACGGCGATGGCGCGTTCGCGGGCAGCCTGTAGGTTGGCGGCCCATGCATCGAGAGTCCGTGCGTAGTGCTGCTGCAGCAGCTGGACATGCTCGATGGTGAAGCCCGCGGCCTGCGCATTGTCGACAATGTCGGGCTCCGATGGCAGCTCGCCGCCCGGGAAGATCGACTCCCGCAGGAATTTGAGGAATCGAAGGTCGCTCATCGTCAGCGCAATGCCCTGTTCGTGCAGCCACCTGCGGTCGTAGGTGAACAGGCTGTGCAGTAGCATCCGCCCGTCATCGGGCAGGATGTCGTAGGAGCGTTCGAAGAACGTCAGATACCGCTCCTTTTTGAACGCGTCGAATGCCTCAAAGCTGACGATCCGGTCGACGTTCTCTTCAAACTCTTCCCAGCCCTGCAGCCGGGCCTCGGCGCGCCGTTGCGTTCCGATTGCGGCCAGGCGGTCTTTGCTGCGTTCATAGTGATTCCGGCTGAGCGTGAGGCCGATGACATTGACGTCGTACTTCTCCACGGCCCGAACGAGCGCCCCGCCCCACCCGCAACCCACGTCGAGTAGCGTCATCCCCGGTTCGAGGTTCAGCTTGTCCAACGCCAGATCCACCTTGGCCAGTTGCGCCTCTTCCAGCGTCATATCGTCACGCTCGAAATAGGCGCAGGTGTAGACCCAGGTGGGATCGAGGAACAACGCGAAGAAGTCATCCGAAATGTCGTAAGCCGACTGTGACTCTTCGTAATATGGTCTCAGCTTGGCCAT3’
3.生物名:マイコバクテリウム・テュバキュローシス
4.現時(IMMEDIATE):自然配列
5.配列の特徴を示す記号:mmaA1
6.配列番号1
配列番号2の情報
1.配列の特徴:
1.配列の長さ:864塩基対
2.配列の型:DNA
5’CTACTTCGCCAGCGTGAACTGGTTGACGTCGATGTAGCCGACCCGGAACAGCTTGGCGCAGCCGGTCAGGTATTTCATGTACCGCTCGTAGACCTCTTCGGACTGGATCGCGATGGCCTCGCTTTTGTGTTCCTGCAGCGCCTCGGCCCACAGGTCGAGGGTCCTGGCGTAATGCGGCTGCAGCGACTGGCGGCGAGTCAGCGTGAAACCCGTCTTCGCCGACTGTTCCTCAACCATTTCAATCGTCGGAGGTTGGCCCCCCGGGAAGATTTCGGTCGCGATGAACTTGAGAAAGCGGGCCAGCCACAACGTGAGCGGCAAGCCGTGGTCGACCATCTGCTGCCTGGTCAGGCCGGTGATCGTGTGCAGCAGCAACACGCCATCGGGCGGCAGGATTTTGTGGGCCCGGGCGAAGAAGTCGGCGTGACGATCGTGGCCGAAGTGCTCGAACGCGCCGATCGACACGATGCGGTCGACGGGCTCGTTGAACTGCTCCCATCCCGCCAGCAACACTCGCCTGTCGCGCGGGGTGTCCATCTCGTCGAACGACTTCTGCACATGGGCGGCCTGGTTCTTCGACAATGTCAGGCCGACGACGTTGACGTCATACTGCGCGATCGCGCGCCGCATGGTGGCGCCCCAGCCGCAACCGATATCGAGCAGCGTCATGCCGGGCTGCAGACCTAGCTTGCCCAGCGCCAGGTCGATCTTGGCGATCTGGGCCTCTTCCAGCGTCATGTCCTCGCGTTCGAAATGCGCGCAGCTGTAGGTCTGGGTCGGATCCAGGAACAGCCGGAAGAAGTCGTCGGACAGGTCGTAGTGTGCCTGCACGTCCTCGAAGTGCGGCGTTAGGTCGTTGACCAT3’
3.生物名:マイコバクテリウム・テュバキュローシス
4.現時:自然配列
5.配列の特徴を示す記号:mmaA2
6.配列番号2
配列番号3の情報
1.配列の特徴:
1.配列の長さ:166塩基対
2.配列の型:DNA
5’GAGGTGTAATGCCTTTCCGGACCCTAGGTGGCCTTTCGGTGCTTGCACGGAACGCACCGATGCTTCCCCCTCCCCGCATGCTCGAGGCATGCTATCCGATACAGGGCCGCCGCACTAAACCGCGATCGAATTTGCCCAGGTCAGGGAACGGATATGAGCGGACGAG3’
3.生物名:マイコバクテリウム・テュバキュローシス
4.現時:自然配列
5.配列の特徴を示す記号:mmaA1とmmaA2との間の遺伝子間領域
6.配列番号3
配列番号4の情報
1.配列の特徴:
1.配列の長さ:363塩基対
2.配列の型:DNA
5’TGGATCCGTTGACCATGAGGTGTAATGCCTTTCCGGACCCTAGGTGGCCTTTCGGTGCTTGCACGGAACGCACCGATGCTTCCCCCTCCCCGCATGCTCGAGGCATGCTATCCGATACAGGGCCGCCGCACTAAACCGCGATCGAATTTGCCCAGGTCAGGGAACGGATATGAGCGGACGAGCTACTTGGTCATGGTGAACTGGGCGACGTTGATTAGGCCTCTGCGGAAGCGCTCCGCGCATCCGGTCAGATAGTGCATGAAGTTGTTGTAGACCTCTTCGGACTGTACGGCGATGGCGCGTTCGCGGGCAGCCTGTAGGTTGGCGGCCCATGCATCGAGAGTCCGTGCGTAGTGGGAATTC3’
3.生物名:マイコバクテリウム・テュバキュローシス
4.現時(IMMEDIATE):自然配列および人工配列
5.配列の特徴を示す記号:フォワードプライマー(配列番号5)とリバースプライマー(配列番号6)との間の領域
6.配列番号4
配列番号5の情報
1.配列の特徴:
1.配列の長さ:27塩基対
2.配列の型:DNA
5’TGGATCCGTTGACCATGAGGTGTAATG3’
3.生物名:人工配列
4.現時:合成オリゴヌクレオチド
5.配列の特徴を示す記号:フォワードプライマー
6.配列番号5
配列番号6の情報
1.配列の特徴:
1.配列の長さ:25塩基対
2.配列の型:DNA
5’GGAATTCCACTACGCACGGACTCTC3’
3.生物名:人工配列
4.現時:合成オリゴヌクレオチド
5.配列の特徴を示す記号:リバースプライマー
6.配列番号6
【0088】
参考文献:
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【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】マイコバクテリアのメトキシミコール酸シンターゼmmaA4〜mmaA1遺伝子群とフォワードAとリバースDの各プライマーの位置を示す概略図
【図2】mmaA2およびmmaA1遺伝子の配列と166塩基対からなる遺伝子間領域の配列(小文字で示す)、ならびにフォワードプライマーA(配列番号1)とリバースプライマーD(配列番号2)の位置。両プライマー配列は、下線を付し、イタリック体で示す。
【図3】様々なマイコバクテリアのゲノムDNAに対するプライマーAおよびDを用いたPCR増幅(レーン1〜15)。1.M.avium、2.M.bovis、3.M.chelonae、4.M.fortuitum、5.M.intracellulare、6.M.kansassi、7.M.phlei、8.100塩基対DNAラダー、9.M.marinum、10.M.scrofulaceum、11.M.smegmatis、12.M.szulgai、13.M.tuberculosis、14.ネガティブコントロール。ADは363塩基対の増幅産物を示す。
【図4】AD内のHaeIおよびMspIの制限エンドヌクレアーゼ地図を示すライン図
【図5】AD内のFmuI、CviRIおよびTaqIの制限エンドヌクレアーゼ地図を示すライン図
【図6】制限エンドヌクレアーゼAcaIVおよびHaeIIIの部位の分布を示すADの制限地図
【図7】PCR反応の各ステップを示すライン図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.従来の方法により粘液を含む汚染物質から臨床検体を浄化するステップと、
b.生きている病原性マイコバクテリアを不活性化し、プロセスをユーザにとって安全なものにするために、ステップ(a)で得た処理済臨床検体を改変溶解緩衝液で処理するステップと、
c.DNAの収量と質を高めるように改変された方法を用いて、ステップ(b)から得た処理済臨床検体からゲノムDNAを抽出するステップと、
d.病原性マイコバクテリアの特異的な検出のためにステップ(c)で得たDNAから配列番号4の配列を設計するステップであって、前記設計された配列はステップ(c)で得たDNAの配列番号3の選択された遺伝子間領域ならびに配列番号1の遺伝子mmaA1の一部および配列番号2の遺伝子mmaA2の一部を含む隣接領域から構成されるステップと、
e.配列番号4のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のために、フォワードプライマーである配列番号5およびリバースプライマーである配列番号6の一組の特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、合成するステップと、
f.ステップ(d)の配列番号4を特異的に増幅するためのPCR増幅プロセスを構築するステップであって、前記プロセスは臨床検体中の病原性マイコバクテリアの存在を検出するためにステップ(e)で設計および合成された特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いることを含むステップと、
g.HIV重感染の迅速な評価のために病原性マイコバクテリアの種を分類するために、制限断片長多型(RFLP)分析により増幅されたPCR産物を分析するステップと、
を有する、臨床検体中の病原性マイコバクテリアを検出する方法。
【請求項2】
前記設計された配列番号4は次に示す配列を有する、請求項1記載の方法。
5’GAGGTGTAATGCCTTTCCGGACCCTAGGTGGCCTTTCGGTGCTTGCACGGAACGCACCGATGCTTCCCCCTCCCCGCATGCTCGAGGCATGCTATCCGATACAGGGCCGCCGCACTAAACCGCGATCGAATTTGCCCAGGTCAGGGAACGGATATGAGCGGACGAG3’
【請求項3】
前記臨床検体は、唾液、胃洗浄物、脳脊髄液、血液、組織生検、または骨髄穿刺液およびその他の体液または組織から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)における汚染物質(マイコバクテリア以外の生きている微生物および粘液)からの検体の浄化は、刺激の少ないアルカリ、NaOH、クエン酸三ナトリウムおよび粘液溶解薬および約0.4〜2.5Mの範囲のグアニジンイソチオシアネートを含む消化除染混合液により行われ、その後、遠心分離により検体を濃縮する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記消化除染混合液は、刺激の少ないアルカリ、NaOH、クエン酸三ナトリウムおよび粘液溶解薬および約0.5〜2.0Mの範囲のグアニジンイソチオシアネートを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(c)において、前記DNAは、約0.5〜8Mの範囲のグアニジンイソチオシアネート、約20〜100mMの範囲のトリス.Cl(pH7.6)、約0.5〜2%の範囲のN−ラウリルサルコシル、約0.1〜20mMの範囲のEDTA、約1〜25mMの範囲のβ−メルカプトエタノールおよび約0.3M〜1Mの範囲のNHCOOHを有する成分を含む改変溶解緩衝液を用いて処理された臨床検体から抽出され、有機溶媒による完全な沈降により収量を向上させるように純化される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
グアニジンイソチオシアネートは約4Mであり、トリス.Cl(pH7.6)は約50mMであり、N−ラウリルサルコシルは約1%であり、EDTAは約1mMであり、β−メルカプトエタノールは約10mMであり、NHCOOHは約0.7Mである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記有機溶媒は、フェノール/クロロホルム混合物およびクロロホルムを含む群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記ゲノムDNAの収量は、約25〜50%の範囲で増加される、請求項1および請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲノムDNAの収量は、約30〜40%の範囲で増加される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ステップ(f)における高収量のDNAの増幅は、改変タッチダウンPCRサイクル条件により達成され、前記条件は、約62〜72℃の範囲の高温での初期アニーリングのステップと、それに続く最初の10〜25サイクルの間に、PCRサイクルごとに約0.2〜1℃の範囲ずつ温度を下げ、その後の30サイクルのPCRのために約56〜62℃の最適なアニーリング温度にするタッチダウンステップとを有する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
高収量のDNAの増幅は、改変タッチダウンPCRサイクル条件により達成され、前記条件は、約70℃の高温での初期アニーリングのステップと、それに続く最初の約14サイクルの間に、PCRサイクルごとに約0.8℃ずつ、その後の25サイクルのPCRのために約58℃まで温度を下げるステップとを有する、請求項13記載の方法。
【請求項13】
臨床検体中の病原性マイコバクテリアの検出のために配列番号4の遺伝子間領域を増幅することができる前記オリゴヌクレオチドプライマーは、次の群から選択される、請求項1記載の方法。
a.フォワードプライマーである、5’TGGATCCGTTGACCATGAGGTGTAATG3’(配列番号5)
b.リバースプライマーである、5’GGAATTCCACTACGCACGGACTCTC3’(配列番号6)
【請求項14】
オリゴヌクレオチドプライマーの長さは、5塩基から100塩基の間である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記改変溶解緩衝液は、より純粋なDNAの調製物を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
4Mのグアニジンイソチオシアネートを含む前期改変溶解緩衝液を用いる処理は、手順が作業者にとって安全なものになるように、生きているマイコバクテリアを不活性化する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
次の群から選択されるプライマーを有する、臨床検体中の病原性マイコバクテリアを検出する診断キット。
a.フォワードプライマーである、5’TGGATCCGTTGACCATGAGGTGTAATG3’(配列番号5)
b.リバースプライマーである、5’GGAATTCCACTACGCACGGACTCTC3’(配列番号6)
【請求項18】
a.DNAの収量と質を高めるように改変された方法を用いて、処理済臨床検体からゲノムDNAを抽出するステップと、
b.病原性マイコバクテリアの特異的な検出のためにステップ(a)で得たDNAから配列番号4の配列を設計するステップであって、前記設計された配列はステップ(a)で得たDNAの配列番号3の選択された遺伝子間領域ならびに配列番号1の遺伝子mmaA1の一部および配列番号2の遺伝子mmaA2の一部を含む隣接領域から構成されるステップと、
c.ステップ(b)の配列番号4を特異的に増幅するためのPCR増幅プロセスを構築するステップと、
d.HIV重感染の迅速な評価のために病原性マイコバクテリアの種を分類するために、制限断片長多型(RFLP)分析により増幅されたPCR産物を分析するステップと、
を有する、病原性マイコバクテリアを検出するための配列番号5および配列番号6を有するプライマーの使用。
【請求項19】
前記設計された配列番号4は次に示す配列を有する、請求項18記載の使用。
5’GAGGTGTAATGCCTTTCCGGACCCTAGGTGGCCTTTCGGTGCTTGCACGGAACGCACCGATGCTTCCCCCTCCCCGCATGCTCGAGGCATGCTATCCGATACAGGGCCGCCGCACTAAACCGCGATCGAATTTGCCCAGGTCAGGGAACGGATATGAGCGGACGAG3’
【請求項20】
前記臨床検体は、唾液、胃洗浄物、脳脊髄液、血液、組織生検、または骨髄穿刺液およびその他の体液または組織から選択される、請求項18記載の使用。
【請求項21】
前記ステップ(a)における汚染物質(マイコバクテリア以外の生きている生物および粘液)からの検体の浄化は、刺激の少ないアルカリ、NaOH、クエン酸三ナトリウムおよび粘液溶解薬および約0.4〜2.5Mの範囲のグアニジンイソチオシアネートを含む消化除染混合液により行われ、その後、遠心分離により検体を濃縮する、請求項18記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−535292(P2007−535292A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511650(P2005−511650)
【出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005767
【国際公開番号】WO2005/056831
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)
【Fターム(参考)】