説明

自励式インバータ制御装置、自励式インバータ制御方法

【課題】ランプオープンを判定する閾値電流を固定にした自励式インバータ装置においては、インバ−タ出力がランプオープンになったということを判断することが困難であり、ノイズの影響による誤動作が起こる可能性があるという課題がある。
【解決手段】本発明の自励式インバータ制御装置100は、インバータ出力トランスに流れる管電流を検出する管電流検出回路5と、調光PWMパルスのデューティーの変化に基づき管電流の異常検出を制御する制御部6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶テレビ、液晶ディスプレイ等のバックライト用自励式インバータ制御装置、自励式インバータ制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶テレビや液晶ディスプレイ等の液晶を用いた映像機器は、冷陰極管等を用いるバックライトで発光し画像表示を行っている。インバータ回路は、バックライトを制御/駆動するための信号を作成する回路である。通常、バックライトの明るさを制御するには、インバータ回路の入力直流電圧もしくは入力電流を変化させて冷陰極管に流れる管電流を変化させて調光する電流(電圧)調光方式と、PWMパルスにより発振周波数の発振/停止を制御するバースト調光(PWM調光)方式とがある。
【0003】
前者は、インバータからのノイズ(可聴音)が小さく安定であるという利点があるものの調光範囲が狭いという欠点がある。一方後者は、調光範囲が広いという利点があり車載用ディスプレイ等広い調光範囲が要求される映像機器で主に使用されている。
【0004】
また、インバータ回路の方式には、大きく自励式インバータ回路と他励式インバータ回路がある。以前は前者の自励式インバータ回路が主に用いられてきたが、冷陰極管を多数使用する場合の経済性や安全面から現在では主に後者の他励式インバータ回路が多く用いられている。しかし現在でも一部の商品では回路の簡素化やコストの面から自励式インバータ回路が引き続き用いられている。
【0005】
他励式インバータ回路は、制御ICにてフィードバックループを構成している関係上保護機能が制御ICにて用意されており、冷陰極管への接続コネクタ−が外れたり冷陰極管が折れたりして冷陰極管が点灯しなくなった時(以下ランプオープンと称する)にインバ−タ回路の出力を強制的に停止させることが容易にできる。しかし自励式インバータ回路は、そのようなフィードバックループがないために管電流を検出してインバ−タ回路の出力を強制的に停止させるようなことが行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−134293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液晶テレビや液晶ディスプレイ等が家庭で用いられる場合は調光範囲も限られているが、車載用等として用いられる場合は、昼と夜でバックライトの明るさが大きく変わるため、調光範囲も10%以下から100%付近までと広範囲に渡る。そのため従来のようにランプオープンを判定する閾値電流を固定にした自励式インバータ装置においては、インバ−タ出力がランプオープンになったということを判断することが非常に困難であり、調光を絞った際に特に車載機器のように外来ノイズが多い機器の場合はノイズの影響による誤動作が起こる可能性があるという課題がある。
【0008】
この様子を、図6及び図7を用いて説明する。
【0009】
図6は、自励式インバータ制御回路において調光デューティーが小さい場合を重視してランプオープン判定閾値電流を設定した例で、(a)は冷陰極管が点灯している正常時の検出電流、(b)は冷陰極管が点灯していないランプオープン時の検出電流、(c’)はランプオープン判定用の閾値電流、(d’)はこの調光デューティー以上では管電流が正常時のものかランプオープン時のものかを正しく検出できない境界点である。
【0010】
図7は、自励式インバータ制御回路において調光デューティーが大きい場合を重視してランプオープン判定閾値電流を設定した例で、(a)は冷陰極管が点灯している正常時の検出電流、(b)は冷陰極管が点灯していないランプオープン時の検出電流、(c”)はランプオープン判定用の閾値電流、(d”)はこの調光デューティー以下では管電流が正常時のものかランプオープン時のものかを正しく検出できない境界点である。
【0011】
図6(b)及び図7(b)に示すようにノイズの影響でインバータトランスが無負荷(つまりランプオープン)になっても一定量の管電流が検出される。
【0012】
そのため、図6のように調光が暗い側にあわせて(調光デューティーが小さい場合を重視して)(c’)の閾値を設定すると調光が明るい場合に、(d’)以上の調光デューティーの領域では常に閾値以上の電流が流れるためランプオープン状態を正しく検出することができない。
【0013】
一方、図7のように調光が明るい側にあわせて(調光デューティーが大きい場合を重視して)(c”)の閾値を設定すると調光が暗い場合に、(d”)以下の調光デューティーの領域では常に閾値以下の電流が流れるためランプオープン状態でないにも関わらずランプオープン状態と誤検出してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明のインバータ制御装置は、調光PWMパルスに基づき冷陰極管の点灯/不点灯を制御する液晶表示装置用の自励式インバータ制御装置において、
インバータ出力トランスに流れる管電流を検出する管電流検出回路と、前記調光PWMパルスのデューティーの変化に基づき前記管電流の異常検出を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、調光デューティー(明るさ)の変化に応じてランプオープン判定閾値電流を変化させることで、調光デューティーが変化してもランプオープン判定の誤検出が少ない安定した自励式インバータ制御回路及び自励式インバータ制御方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係わる自励式インバータ制御装置の一例を示したブロック図
【図2】本発明の実施例1に係わる自励式インバータ制御装置の管電流検出回路の一例を示した内部回路図
【図3】本発明の実施例1に係わる自励式インバータ制御装置の動作概念図
【図4】本発明の実施例2に係わる自励式インバータ制御装置の一例を示したブロック図
【図5】本発明の実施例2に係わる自励式インバータ制御装置の動作概念図
【図6】従来の自励式インバータ制御回路の調光デューティーが小さい場合を重視してランプオープン判定用の閾値電流を設定した場合の動作概念図
【図7】従来の自励式インバータ制御回路の調光デューティーが大きい場合を重視してランプオープン判定用の閾値電流を設定した場合の動作概念図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の自励式インバータ制御装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係わる自励式インバータ制御装置の一例を示したブロック図である。
【0019】
図1の自励式インバータ制御装置100は、調光PWMパルスに基づき自励式インバータ回路4に入力する電圧のON/OFFを制御する調光制御回路1と、液晶パネルモジュール2と、液晶パネルモジュール2を光らせるバックライト3と、バックライト3を駆動する自励式インバータ回路4と、インバ−タ出力トランスに流れる管電流を検出する管電流検出回路5と、自励式インバータ制御装置100全体を制御する制御部6と、管電流検出用抵抗器7、リモコン等のUser Interface(UI)8とで構成される。また、制御部6は、調光制御回路1に調光PWMパルスを出力するマイコン11と、マイコン11から出力された調光PWMパルスを平滑化しランプオープン判定用の閾値電流に変換する管電流閾値変換回路12と、管電流検出回路5で検出された管電流と管電流閾値変換回路12から出力されたランプオープン判定用の閾値電流とを比較し比較結果をマイコン11に出力する管電流比較回路13とで構成される。また、自励式インバータ回路4には、コレクタ共振型発振回路が用いられている。
【0020】
図2は、管電流検出回路5の構成図の一例である。管電流検出回路5は、整流ダイオード21と、平滑コンデンサ22と、分圧回路23とで構成させる。
【0021】
図3は、本発明の実施例1における自励式インバータ制御装置100の動作概念図である。
【0022】
図3において(a)は管電流検出回路5で検出される冷陰極管が点灯している正常時の電流、(b)は管電流検出回路5で検出される冷陰極管が点灯していないランプオープン時の電流、(c1)はランプオープン判定用の閾値電流である。
【0023】
以下に、自励式インバータ制御装置100の具体的な動作を説明する。
【0024】
冷陰極管が正常に点灯している場合は、自励式インバータ回路4のインバ−タトランスの出力〜バックライト3(冷陰極管)〜GND1〜GND2〜管電流検出抵抗器7〜自励式インバータ回路4のインバ−タトランスのループで管電流が流れる。管電流検出用抵抗器7の両端には交流電圧が発生し、整流ダイオード11、平滑コンデンサ12、分圧回路13からなる管電流検出回路5にて直流電圧に変換する。
【0025】
ユーザーがリモコン等のUI8を通してバックライト3の明るさの設定を変更した場合やその他昼夜等の環境情報等によりバックライト3の明るさが自動制御された場合、変更/制御された明るさ情報がUI8等からマイコン11に伝えられ、マイコン11は変更/制御された明るさ情報に基づき調光PWMパルスを発生させ、その調光デューティーを制御する。この調光デューティーに応じて調光制御回路1で自励式インバータ回路4をON/OFFしており、調光デューティーに応じて自励式インバータ回路4のインバータトランスに流れる管電流が変化することになる。すなわち調光デューティーが大きい場合(明るさが明るく設定/制御された場合)は管電流が大きく、調光デューティーが小さい場合(明るさが暗く設定/制御された場合)は管電流が小さく検出されることになる(図3(a))。
【0026】
一方、ランプオープンになった場合は、ノイズの影響により一定量の管電流が検出され、管電流検出回路5に一定電圧が出力される(図3(b))。自励式インバータは常に発振しており、その発振期間は調光PWMパルスのデューティーに比例する。そのためノイズも調光PWMパルスのデューティーに比例することになる。
【0027】
管電流検出回路5で検出された管電流が、正常時のもの(図3(a))か、ランプオープン時のもの(図3(b))かは、管電流比較回路13で管電流検出回路5の出力電圧と管電流閾値変換回路12の出力電圧とを比較し判断する。管電流閾値変換回路12は、LPFと電圧変換回路で構成され、ユーザーによるバックライト3の明るさの設定変更等に基づきマイコン11で発生された調光PWMパルスを管電流比較回路13で比較するランプオープン判定用の閾値電流に変換し出力する。つまり、ランプオープン判定用の閾値電流は、調光PWMパルスのデューティーに応じて線形的に変化する。このときこの閾値電流は、正常時の管電流とランプオープン時の管電流の中間にくるように設定すると誤動作が発生しにくくてよい(図3(c1))。
【0028】
管電流比較回路13は、管電流検出回路5から出力された管電流が管電流閾値変換回路12から出力されたランプオープン判定用の閾値電流よりも大きい場合は、通常点灯していると判断する。逆に、管電流検出回路5から出力された管電流が管電流閾値変換回路12から出力されたランプオープン判定用の閾値電流よりも小さい場合は異常状態として調光制御回路1をOFF状態とし、自励式インバ−タ回路5の出力を強制的に停止させる。
【0029】
以上の構成により、本実施例1の自励式インバータ制御回路100によれば、調光デューティー(明るさ)の変化に応じて、ランプオープン判定用の閾値電流を変化するように管電流閾値変換回路12で変換することで、調光デューティーが変化してもランプオープン判定の誤検出が少ない安定したインバータ制御回路を提供することできる。
【実施例2】
【0030】
図4は、本発明の実施例2における自励式インバータ制御回路の構成図の一例である。実施例1と同じ構成のものには同じ番号を付しており、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0031】
図5は、本発明の実施例2における自励式インバータ制御回路の動作概念図である。
【0032】
図5において(a)は管電流検出回路5で検出される冷陰極管が点灯している正常時の検出電流、(b)は管電流検出回路5で検出される冷陰極管が点灯していないランプオープン時の検出電流、(c2)はランプオープン判定用の閾値電流である。
【0033】
実施例1では、調光PWMパルスを管電流閾値変換回路12にて変換し、ランプオープン判定用の閾値電流を作成していたが、マイコン11では調光情報を持っているので、調光情報を基に直接D/Aコンバータにて管電流閾値を出力する。
【0034】
なお、図4ではマイコン内蔵のD/Aコンバータを使用しているが、外付けD/Aコンバータを用いてもよい。
【0035】
このような構成にすると図5(c2)のランプオープン判定用の検出電流閾値は、マイコンから自由に設定することができるため、図5(c2)に示すような略指数関数的に非線形にも設定ができる。非線形にできると調光PWMパルスのデューティーが小さい時と大きい時でノイズに対する誤検出の判定マージンを変えることができ、調光デューティーが変化してもランプオープン判定の誤検出がより少ない安定したインバータ制御回路を提供することできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の自励式インバータ制御装置、自励式インバータ制御方法によれば、調光デューティー(明るさ)の変化に応じてランプオープン判定閾値電流を変化させることで、調光デューティーが変化してもランプオープン判定の誤検出が少ない安定した自励式インバータ制御回路及び自励式インバータ制御方法を提供することできるので、自励式インバータ制御に有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 調光制御回路
2 液晶パネルモジュール
3 バックライト
4 自励式インバータ回路
5 管電流検出回路
6、16 制御部
7 管電流検出用抵抗器
8 User Interface(UI)
11、31 マイコン
12 管電流閾値変換回路
13 管電流比較回路
21 整流ダイオード
22 平滑コンデンサ
23 分圧回路
100、200 自励式インバータ制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光PWMパルスに基づき冷陰極管の点灯/不点灯を制御する液晶表示装置用の自励式インバータ制御装置において、
インバータ出力トランスに流れる管電流を検出する管電流検出回路と、
前記調光PWMパルスのデューティーの変化に基づき前記管電流の異常検出を制御する制御部と
を備える自励式インバータ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記調光PWMパルスの調光デューティーが増加するに従い、前記管電流の異常検出の閾値電流を線形的に増加させることを特徴とする請求項1記載の自励式インバータ制御回路。
【請求項3】
前記制御部は、
前記調光PWMパルスの調光デューティーが増加するに従い、前記管電流の異常検出の閾値電流を指数関数的に増加させることを特徴とする請求項1記載の自励式インバータ制御回路。
【請求項4】
調光PWMパルスに基づき冷陰極管の点灯/不点灯を制御する液晶表示装置用の自励式インバータ制御方法において、
インバータ出力トランスに流れる管電流を検出するステップと、
前記調光PWMパルスのデューティーの変化に基づき前記管電流の異常検出を制御するステップと
を備える自励式インバータ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−14435(P2011−14435A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158719(P2009−158719)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】