説明

自励式無効電力補償装置および自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法ならびに電力蓄積装置および電力蓄積装置制御方法

【課題】複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成される自励式無効電力補償装置の、各単相電力変換器の直流側にそれぞれ接続されたコンデンサの直流電圧値を安定に制御することができる自励式無効電力補償装置およびこのコンデンサ電圧制御方法を実現する。
【解決手段】自励式無効電力補償装置1は、各単相電力変換器の直流側に設けられる全コンデンサの直流電圧平均値を算出する演算手段11と、直流電圧平均値を指令値に一致させるための第1のスイッチング指令値を生成する第1の直流コンデンサ電圧制御手段12と、各直流電圧値を直流電圧平均値に一致させるための第2のスイッチング指令値を生成する第2の直流コンデンサ電圧制御手段13−1、13−2および13−3と、を備え、第1のスイッチング指令値と第2のスイッチング指令値とを用いて各単相電力変換器内をスイッチング制御することにより各コンデンサ電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成され、各単相電力変換器の直流側にそれぞれ接続されたコンデンサを直流電圧源として用いて無効電力を生成する自励式無効電力補償装置、およびこの自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法、ならびに電力の短周期変動を平準化する電力蓄積装置および電力蓄積装置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導性負荷が多く接続された配電系統では遅れ力率となるので、配電系統には無効電力が流れ、系統電圧が不安定となる。また、将来的には様々な形で分散型電源の導入が積極的に進められていくことが予想され、これに伴う配電系統の電圧変動も大きな問題となり得る。これに対し、配電系統の安定度向上および力率改善の対策として、無効電力補償装置が提案されている。このうち、自励式無効電力補償装置(STATCOM)は、遅相から真相までの連続的な無効電力制御が可能であり、なおかつ高調波を発生しにくいという利点を有する。
【0003】
自励式無効電力補償装置は、その交流側に接続されるリアクトルと、例えば単相フルブリッジ(全波)電圧型PWMコンバータなどのような単相電力変換器と、を備えてなる。この単相電力変換器の直流側にはコンデンサが接続されており、自励式無効電力補償装置では、このコンデンサを直流電圧源として用いて無効電力を発生する。
【0004】
商用周波数変圧器(50/60Hz)を介して自励式無効電力補償装置を配電系統(例えば6.6kV系統)に接続する場合、自励式無効電力補償装置に接続される商用周波数変圧器の重量および体積は大きくならざるを得ない。特に、配電系統用の自励式無効電力補償装置は、柱上設置されることから小型軽量化が要求されている。このような事情から、商用周波数変圧器を使用する必要のない、トランスレスの自励式無効電力補償装置の開発が特に望まれている。
【0005】
トランスレスの自励式無効電力補償装置として、単相電力変換器(例えば単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータ)を複数台カスケード接続(縦続接続)して構成されたもの(以下、単に「カスケード接続型の自励式無効電力補償装置」と称する。)がある(例えば、非特許文献1参照)。図15は、一般的なカスケード接続型(Y結線)の三相自励式無効電力補償装置を例示する回路構成図である。
【0006】
カスケード接続型の自励式無効電力補償装置101は、1相あたりN台(ここで、Nは例えば2以上の自然数)の単相電力変換器(例えば単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータ)がその交流側において直列接続されるようにして構成されたものであり、多レベル電圧出力が可能である。三相交流系統にトランスレスで直結されるカスケード接続型の自励式無効電力補償装置101は、その交流側にリアクトルLacが接続され、合計N×3台の単相電力変換器を備えてなる。以下、単相電力変換器およびこれに接続されるコンデンサからなるユニットの「1相あたりの台数」を、「段数」と称する。単相電力変換器の段数が多いほど、自励式無効電力補償装置の交流側の相電圧および線間電圧のレベル数は多くなるので、高調波電流を抑制できる。
【0007】
自励式無効電力補償装置は、接続された配電系統に対して、理想的には、有効電力ではなく無効電力のみを出し入れするので、コンデンサに蓄えられた有効電力が放電してしまうことはない。しかしながら、実際の自励式無効電力補償装置では、単相電力変換器内のスイッチング損失や導通損失等により、コンデンサに蓄えられた有効電力は徐々に減少し、直流コンデンサ電圧は低下する。コンデンサが充電電圧不足に陥ると、自励式無効電力補償装置は無効電力を安定して発生することができなくなる。
【0008】
そこで、実際の自励式無効電力補償装置では、単相電力変換器における損失分に相当する有効電力を交流系統側から適宜取り込んでコンデンサに充電することにより、コンデンサが所定の直流電圧値を維持できるようにしている。
【0009】
また、大容量のモータを駆動するモータドライブとして、直流側にバッテリを有する単相電力変換器(例えば単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータ)を複数台カスケード接続(縦続接続)して構成されたものがある(例えば、非特許文献2参照)。このモータドライブはモータにトランスレスで直結される。
【0010】
【非特許文献1】J.S.ライ(J.S. Lai)、F.Z.ペン (F.Z. Peng)著、「マルチレベルコンバータ − 新しいタイプの電力変換器(Multilevel Converters − A New Breed of Power Converters)」、1996年、米国電気電子学会産業応用部門論文誌(IEEE Transactions on Industry Applications)、Vol.32、No.3、p.509−517
【非特許文献2】L.M.トルバート(L.M. Tolbert)、F.Z.ペン (F.Z. Peng)、T.G.ハベトラー(T.G. Habetler)著、「大容量電気ドライブのためのマルチレベルコンバータ(Multilevel Converters for Large Electric Drives)」、1999年、米国電気電子学会産業応用部門論文誌(IEEE Transactions on Industry Applications)、Vol.35、No.1、p.36−44
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
カスケード接続型の自励式無効電力補償装置もしくは電力蓄積装置においては、多数存在するコンデンサもしくは電力蓄積素子の全てについて均一の直流電圧値に維持するのは難しい。単相電力変換器におけるスイッチング損失や導通損失は、各単相電力変換器で異なることから、一括制御することもできない。また、配電系統に外乱が発生した際の過渡時においては、コンデンサもしくは電力蓄積素子の直流電圧値を安定に制御することは非常に困難である。各コンデンサもしくは電力蓄積素子の直流電圧値が不均一になると、自励式無効電力補償装置もしくは電力蓄積装置の交流側の電圧に歪みが発生し、当該自励式無効電力補償装置もしくは電力蓄積装置が接続された系統には高調波電流が増加してしまう。また、単相電力変換器内の半導体スイッチング素子に印加される電圧が変化するため、半導体スイッチング素子に絶縁破壊が生じやすくなる。
【0012】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成される自励式無効電力補償装置もしくは電力蓄積装置の、各単相電力変換器の直流側にそれぞれ接続されたコンデンサもしくは電力蓄積素子の直流電圧値を、定常時のみならず過渡時においても安定にかつ確実に制御することができる自励式無効電力補償装置およびこの自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法ならびに電力蓄積装置および電力蓄積装置制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を実現するために、本発明の第1の態様においては、複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成される自励式無効電力補償装置の、無効電力を生成するのに用いられる直流電圧源として各単相電力変換器の直流側に設けられる全コンデンサの直流電圧値の総和をとって直流電圧平均値を算出し、この直流電圧平均値が所定の指令値と一致し、なおかつ各直流電圧値が直流電圧平均値と一致するよう、各単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することで、各コンデンサの直流電圧値を制御する。
【0014】
すなわち、本発明の第1の態様による自励式無効電力補償装置は、各単相電力変換器の直流側に設けられる全てのコンデンサの直流電圧値の総和をとって直流電圧平均値を算出する演算手段と、直流電圧平均値を所定の指令値に一致させるための第1のスイッチング指令値を生成する第1の直流コンデンサ電圧制御手段と、各直流電圧値を直流電圧平均値に一致させるための第2のスイッチング指令値を、各単相電力変換器別に生成する第2の直流コンデンサ電圧制御手段と、を備え、第1のスイッチング指令値と第2のスイッチング指令値とを用いて各単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、各コンデンサの直流電圧値を制御する。
【0015】
特に、交流側がカスケード接続された単相電力変換器の組を三相分備えて三相交流系統にトランスレスで直結される自励式無効電力補償装置において、上記第1の直流コンデンサ電圧制御手段は、所定の指令値と演算手段が各相別に算出した直流電圧平均値との差と、自励式無効電力補償装置の交流側の三相電流値をdq座標変換して算出されるd軸電流値と、を用いて、各相別の第1のスイッチング指令値を生成するのが好ましい。
【0016】
また、本発明の第2の態様においては、複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成される電力蓄積装置の、交流側に電力を供給するのに用いられる直流電圧源として各単相電力変換器の直流側にそれぞれ設けられる電力蓄積素子の直流電圧値の総和をとって直流電圧平均値を算出し、この直流電圧平均値が所定の指令値と一致し、なおかつ各直流電圧値が直流電圧平均値と一致するよう、各単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することで、各電力蓄積素子の直流電圧値を制御する。
【0017】
すなわち、本発明の第2の態様による電力蓄積装置は、各単相電力変換器の直流側にそれぞれ接続された全ての電力蓄積素子の直流電圧値の総和をとって直流電圧平均値を算出する演算手段と、直流電圧平均値を所定の指令値に一致させるための第1のスイッチング指令値を生成する第1の電力蓄積素子電圧制御手段と、各直流電圧値を直流電圧平均値に一致させるための第2のスイッチング指令値を、各単相電力変換器別に生成する第2の電力蓄積素子電圧制御手段と、を備え、第1のスイッチング指令値と第2のスイッチング指令値とを用いて各単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、各電力蓄積素子の直流電圧値を制御する。
【0018】
特に、本発明の第2の態様による電力蓄積装置は、電力蓄積装置の交流側の各相電流と同位相を有する第3のスイッチング指令値を生成する有効電力制御手段をさらに備えるのが好ましく、第1のスイッチング指令値、第2のスイッチング指令値および第3のスイッチング指令値を用いて各単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、電力蓄積装置の交流側に供給すべき電力を制御しながら各電力蓄積素子の直流電圧値を制御する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成される自励式無効電力補償装置もしくは電力蓄積装置の、各単相電力変換器の直流側にそれぞれ接続されたコンデンサもしくは電力蓄積素子の直流電圧値を、定常時のみならず過渡時においても安定かつ確実に制御することができ、無効電力出力もしくは有効電力出力についても安定に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、直流コンデンサ電圧制御ブロックを示す原理ブロック図である。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。また、図2は、本発明の第1の実施例における自励式無効電力補償装置における、システム全体の概略ブロック図である。各コンデンサの直流電圧値VDu1,VDu2,VDu3,VDv1,VDv2,VDv3,VDw1,VDw2およびVDw3は、直流電圧検出器30によって検出される。また、図3は、本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、無効電力制御ブロックおよび直流コンデンサ制御ブロックからなる制御部を示すブロック図である。この図3に示す制御部は、図2において参照符号2で示されるDSPとして構成される。また、図4は、本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、単相電力変換器の回路構成を示す回路図である。この図4には、図2において参照符号4で示されるブロックである「単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータ、コンデンサおよびリアクトル」の具体的な回路構成が示されている。
【0021】
本発明の第1の実施例では、1相あたり3段の単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータで自励式無効電力補償装置1を構成する。本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置1は、交流側がカスケード接続された3段の単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータの組を三相分備えて三相交流系統にトランスレスで直結される。各単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータの直流側には、無効電力を生成するための直流電圧源となるコンデンサがそれぞれ接続される。自励式無効電力補償装置1の交流側にはリアクトルLacが設けられる。単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータ内の半導体スイッチング素子には、例えばIGBTが用いられる。なお、段数を3段としたこと、単相電力変換器を単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータとしたこと、および半導体スイッチング素子としてIGBTを用いたことはあくまでも一例であって本発明を限定するものではなく、その他の段数、その他のコンバータ、その他の半導体スイッチング素子であってもよい。また、本発明の第1の実施例ではY結線としたが、Δ結線であってもよい。
【0022】
本発明による直流コンデンサ電圧制御ブロック10は、図3に示すように、無効電力制御ブロック20とともに、DSP2内にディジタル制御システムとして構成される。ここで、直流コンデンサ電圧制御ブロック10について図1を参照して説明すると次の通りである。
【0023】
図1に示す演算手段11は、各相別に、各単相電力変換器の直流側に設けられる全コンデンサの総和から直流電圧平均値を算出するものである。例えばu相について言えば、演算手段11は、各段のコンデンサの直流電圧値VDU1、VDU2、およびVDU3の総和(VDU1+VDU2+VDU3)から、直流電圧平均値VDUave(=(VDU1+VDU2+VDU3)/3)を算出する。
【0024】
図1に示す第1の直流コンデンサ電圧制御手段12は、演算手段11が各相別に算出した直流電圧平均値を所定の指令値VDrefに一致させるための第1のスイッチング指令値SAu、SAv、およびSAwを生成する「相別直流コンデンサ電圧制御」を行う。このとき、自励式無効電力補償装置の交流側の三相電流値をdq座標変換して算出されるd軸電流値をさらに用いて第1のスイッチング指令値SAu、SAv、およびSAwを生成するのが好ましい。例えばu相について言えば、第1の直流コンデンサ電圧制御手段12は、所定の指令値VDrefと直流電圧平均値VDUaveとの差と、自励式無効電力補償装置1の交流側の三相電流値をdq座標変換して算出されるd軸電流値idとを用いて、第1のスイッチング指令値SAを生成する。なお、自励式無効電力補償装置1が設置される配電系統の相電圧の位相基準をsinωtとしたとき、第1のスイッチング指令値SAは、sinωtの位相成分を有するように作成される。なお、第1のスイッチング指令値については、電力蓄積装置の交流側の各相電流を検出してこれに適切なゲインをかけることによって生成してもよい。
【0025】
図1に示す第2の直流コンデンサ電圧制御手段13−1、13−2および13−3は、各直流電圧値を直流電圧平均値に一致させるための第2のスイッチング指令値を、各単相電力変換器別に生成する「段間直流コンデンサ電圧制御」を行う。すなわち、段間直流コンデンサ電圧制御は、段ごとにバラバラであったコンデンサの電圧値を、同一の直流電圧値(特に直流電圧平均値)に一致させようとする制御である。例えばu相について言えば、次の通りである。すなわち、第2の直流コンデンサ電圧制御手段13−1は、直流電圧値VDU1と直流電圧平均値VDUaveとの差を用いて、第2のスイッチング指令値SBu1を生成する。また、第2の直流コンデンサ電圧制御手段13−2は、直流電圧値VDU2と直流電圧平均値VDUaveとの差を用いて、第2のスイッチング指令値SBu2を生成する。また、第2の直流コンデンサ電圧制御手段13−3は、直流電圧値VDU3と、演算手段11がこの直流電圧値VDU3を平均演算処理に用いることで得られた直流電圧平均値VDUaveとの差を用いて、第2のスイッチング指令値SBu3を生成する。なお、自励式無効電力補償装置1が設置される配電系統の相電圧の位相基準をsinωtとしたとき、第2のスイッチング指令値SBu1、SBu2およびSBu3は、cosωtの位相成分を有するように作成される。
【0026】
図3のDSP2内の直流コンデンサ電圧制御ブロック10では、上述のようにして生成された第1のスイッチング指令値と第2のスイッチング指令値とを加算することにより、各段のコンデンサの直流電圧値を制御するための単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータに対するスイッチング指令値が生成される。例えばu相について言えば、3段の直流コンデンサ電圧制御のために、スイッチング指令値Su1、Su2およびSu3が生成されることになる。
【0027】
一方、無効電力制御のための単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータに対するスイッチング指令値については、図3のDSP2内の無効電力制御ブロック20において、A/D変換器8から入力される三相電流値および三相電圧値と、PLL(Phase Locked Loop)(参照符号7)から入力される電源同期情報と、から公知の方法によって生成すればよい。
【0028】
図2に示すように、DSP2において、直流コンデンサ電圧制御のためのスイッチング指令値と無効電力制御のためのスイッチング指令値とが重畳されて、フルブリッジ電圧型PWMコンバータ内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御するための最終的なスイッチング指令値が生成される。本発明の第1の実施例では1相あたり3段の単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータで自励式無効電力補償装置1が構成されるので、単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータが9台存在し、したがってDSP2は、最終的なスイッチング指令値を9種類生成する。
【0029】
DSP2で生成された上記スイッチング指令値は、PWM発生器3へ入力される。PWM発生器3は例えばFPGAで構成される。9台の単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータ内には半導体スイッチング素子が合計36個が存在することから、PWM発生器3は、これら36個の半導体スイッチング素子をスイッチング制御するための、合計36種類のPWM信号を生成する。
【0030】
図5は、本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置の始動方法について説明する回路図である。上述のように、本発明の第1の実施例では、IGBTをスイッチング素子とする単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータで自励式無効電力補償装置1を構成している。単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータの全ゲートを開放状態にすると、交流側から見れば、単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータは単相フルブリッジダイオード整流器とみなせる。本発明の第1の実施例では、自励式無効電力補償装置1の始動前において、各単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータの全ゲートを開放状態にして該単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータを単相フルブリッジダイオード整流器として動作させて交流系統電圧を整流し、これによって得られた直流電圧を用いて各コンデンサを初期充電する。カスケード接続型の自励式無効電力補償装置は必然的にコンデンサの数が多くなるので、各コンデンサの初期充電のための独立電源を別途設けるとコストおよび装置の体積の点で好ましくないが、本発明の第1の実施例では、このような独立電源は必要ない。
【0031】
スイッチMC1は、自励式無効電力補償装置1と配電系統とを接続するスイッチであり、各相に設けられる。スイッチMC1とリアクトルLacとの間には、互いに並列接続されたスイッチMC2と電流制限抵抗Rとが設けられる。
【0032】
ここで、各コンデンサが全く充電されていない場合において、コンデンサを初期充電し、自励式無効電力補償装置を始動させる具体的動作について説明する。まず、各単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータの全ゲートを開放状態にしておいて、スイッチMC2を開放にし、スイッチMC1を閉じる。これにより、各単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータは単相フルブリッジダイオード整流器として動作し、交流電圧が整流される。得られた直流電圧により、各コンデンサが徐々に充電されていく。各コンデンサが所定の直流電圧値に達したときすなわち充電が完了したときに、MC2を閉じる。これにより、配電系統と自励式無効電力補償装置1は直結される。そして、各単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータ内のIGBTのスイッチング制御を開始すると、自励式無効電力補償装置1は無効電力補償動作を開始する。
【0033】
なお、上述のように単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータを単相フルブリッジダイオード整流器として動作させて得られた直流電圧を、自励式無効電力補償装置内の各制御回路の始動用電源として用いてもよく、このための直流電圧を蓄電するための蓄電手段を設けてもよい。
【0034】
次に、本発明の第1の実施例による三相自励式無効電力補償装置のミニモデルを用いた実験結果を示す。本実験では、三相自励式無効電力補償装置を一相あたり単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータを3段カスケード接続して構成し、その無効電力補償量を10kVA(var)、交流側に設けられるリアクトルを1.2mH、各コンデンサの容量を16400μF、直流コンデンサ電圧を60〜70Vとした。また、単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータ内の半導体スイッチング素子として定格600V、150AのIGBTを用いた。また、PWM発生器のキャリア周波数を1kHzとした。このような自励式無効電力補償装置を、50Hz、三相200V配電系統に設置した実験結果を図6〜9に示す。
【0035】
図6は、本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、初期充電動作についての実験結果を示す図である。この図では、自励式無効電力補償装置が設置された配電系統のu相電圧vu[V]、自励式無効電力補償装置に流れ込む電流i[A]、および、各コンデンサの直流電圧VD[V]が示されている。時刻0秒の時点で上述の初期充電動作を開始すると、時刻300ミリ秒過ぎにはコンデンサの充電が完了していることがわかる。
【0036】
図7は、本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、初期充電完了後の運転開始についての実験結果を示す図である。この図では、自励式無効電力補償装置が設置された配電系統のu相電圧vu[V]、自励式無効電力補償装置に流れ込む電流i[A]、無効電力量q[kVA]および、各コンデンサの直流電圧VD[V]が示されている。本実験では、無効電力指令値qrefを1kVAに設定して時刻50ミリ秒の時点で自励式無効電力補償装置の運転を開始したとき、時刻100ミリ秒過ぎには正常な無効電力補償動作ができていることがわかる。
【0037】
図8は、本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置を、リアクトル動作からコンデンサ動作に変化させたときの実験結果を示す図である。この図では、自励式無効電力補償装置が設置された配電系統のu相電圧vu[V]、自励式無効電力補償装置に流れ込む電流i[A]、無効電力量q[kVA]および、各コンデンサの直流電圧VD[V]が示されている。本実験では、無効電力指令値qrefを、リアクトル動作を指令する−10kVAから、コンデンサ動作を指令する10kVAに変化させた。リアクトル動作時およびコンデンサ動作時ともに無効電力量qは、無効電力指令値qrefに対して定常偏差なく良好に追従していることがわかる。なお、各コンデンサの直流電圧値に100Hzのリプルが存在するのは、単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータの直流側に流れ込む有効電力が、商用周波数の2倍の高調波成分を有するためである。また、図8に示すように、各コンデンサの直流電圧指令値は無効電力指令値qrefに応じて60Vから70Vへ直線的に制御されている。
【0038】
図9は、本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、直流コンデンサ電圧制御の特性についての実験結果を示す図である。この図では、各コンデンサの直流電圧VD[V]が示されている。本実験では、上述の第2の直流コンデンサ電圧制御を停止させて第1の直流コンデンサ電圧制御のみ動作させてコンデンサの直流電圧値を不均一にさせた状態において、時刻100ミリ秒の時点で上述の第2の直流コンデンサ制御の動作を開始した。時刻350ミリ秒過ぎには各コンデンサの直流電圧値が均一に制御できていることがわかる。
【0039】
上述の図6〜9の実験結果から、本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置の直流コンデンサ電圧制御方法は有効であることがわかる。
【0040】
図10は、本発明の第2の実施例による電力蓄積装置における、電力蓄積素子電圧制御ブロックを示す原理ブロック図である。また、図11は、本発明の第2の実施例における電力蓄積装置における、システム全体の概略ブロック図である。各電力蓄積装置の直流電圧値VDu1,VDu2,VDu3,VDv1,VDv2,VDv3,VDw1,VDw2およびVDw3は、直流電圧検出器30によって検出される。また、図12は、本発明の第2の実施例による電力蓄積装置における、有効電力・無効電力制御ブロックおよび直流コンデンサ/バッテリ制御ブロックからなる制御部を示すブロック図である。この図12に示す制御部は、図11において参照符号2で示されるDSPとして構成される。
【0041】
また、本発明の第2の実施例による電力蓄積装置における単相電力変換器の回路構成は、図4の回路図の各単相電力変換器のコンデンサを電力蓄積素子に置き換えたものであり、これ以外の回路構成要素およびその変形例は本発明の第1の実施例の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。電力蓄積素子の例としては、直流コンデンサ、電気二重層キャパシタもしくはバッテリなどがある。本発明の第2の実施例によれば、本発明の第1の実施例と同様に、1相あたり3段の単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータで電力蓄積装置が構成される。
【0042】
図10に示す演算手段11は、上述の第1の実施例の場合と同様に、各相別に、各単相電力変換器の直流側に設けられる全コンデンサの総和から直流電圧平均値を算出するものである。例えばu相について言えば、演算手段11は、各段のコンデンサの直流電圧値VDU1、VDU2、およびVDU3の総和(VDU1+VDU2+VDU3)から、直流電圧平均値VDUave(=(VDU1+VDU2+VDU3)/3)を算出する。
【0043】
図10に示す第1の直流コンデンサ/バッテリ電圧制御手段12’は、演算手段11が各相別に算出した直流電圧平均値を所定の指令値VDrefに一致させるための第1のスイッチング指令値SAu、SAv、およびSAwを生成する「相別直流コンデンサ/バッテリ電圧制御」を行う。このとき、電力蓄積装置の交流側の三相電流値をdq座標変換して算出されるd軸電流値をさらに用いて第1のスイッチング指令値SAu、SAv、およびSAwを生成するのが好ましい。例えばu相について言えば、第1の直流コンデンサ/バッテリ電圧制御手段12’は、所定の指令値Pref/VDrefと直流電圧平均値VDUaveとの差と、電力蓄積装置の交流側の三相電流値をdq座標変換して算出されるd軸電流値idとを用いて、第1のスイッチング指令値SAを生成する。なお、電力蓄積装置が設置される配電系統の相電圧の位相基準をsinωtとしたとき、第1のスイッチング指令値SAは、sinωtの位相成分を有するように作成される。なお、第1のスイッチング指令値については、電力蓄積装置の交流側の各相電流を検出してこれに適切なゲインをかけることによって生成してもよい。
【0044】
図10に示す第2の直流コンデンサ/バッテリ電圧制御手段13−1’、13−2’および13−3’は、まず上述の第1の実施例の場合と同様に、各直流電圧値を直流電圧平均値に一致させるための第2のスイッチング指令値を、各単相電力変換器別に生成する「段間直流コンデンサ/バッテリ電圧制御」を行う。すなわち、段間直流コンデンサ/バッテリ電圧制御は、段ごとにバラバラであったコンデンサの電圧値を、同一の直流電圧値(特に直流電圧平均値)に一致させようとする制御である。そしてさらに、第2の直流コンデンサ/バッテリ電圧制御手段13−1’、13−2’および13−3’は、電力蓄積装置の交流側の系統電流と同位相を有する第3のスイッチング指令値を生成する。例えばu相について言えば、次の通りである。すなわち、第2の直流コンデンサ/バッテリ電圧制御手段13−1’は、直流電圧値VDU1と直流電圧平均値VDUaveとを用いて、第2のスイッチング指令値および第3のスイッチング指令値SBu1を生成する。また、第2の直流コンデンサ/バッテリ電圧制御手段13−2’は、直流電圧値VDU2と直流電圧平均値VDUaveとを用いて、第2のスイッチング指令値および第3のスイッチング指令値SBu2を生成する。また、第2の直流コンデンサ/バッテリ電圧制御手段13−3’は、直流電圧値VDU3と直流電圧平均値VDUaveとを用いて、第2のスイッチング指令値および第3のスイッチング指令値SBu3を生成する。なお、電力蓄積装置が設置される配電系統(すなわち交流側)の相電圧の位相基準をsinωtとしたとき、第2のスイッチング指令値はcosωtの位相成分を有するように作成され、第3のスイッチング指令値はsinωtの位相成分を有するように作成される。なお、第3のスイッチング指令値については、電力蓄積装置の交流側の各相電流を検出してこれに適切なゲインをかけることによって生成してもよい。
【0045】
図12のDSP2内の直流コンデンサ/バッテリ電圧/電力制御ブロック10’では、上述のようにして生成された第1のスイッチング指令値、第2のスイッチング指令値および第3のスイッチング指令値を加算することにより、電力蓄積装置の交流側に供給すべき電力を制御しながら各段のコンデンサの直流電圧値を制御するための単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータに対するスイッチング指令値が生成される。例えばu相について言えば、3段の直流コンデンサ/バッテリ電圧/電力制御のために、スイッチング指令値Su1、Su2およびSu3が生成されることになる。
【0046】
一方、有効電力制御および無効電力制御のための単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータに対するスイッチング指令値については、図12のDSP2内の有効電力・無効電力制御ブロック20’において、A/D変換器8から入力される三相電流値および三相電圧値と、PLL(Phase Locked Loop)(参照符号7)から入力される電源同期情報と、から公知の方法によって生成すればよい。例えば、無効電力出力をゼロ(0)とするようなスイッチング指令値を作成すれば有効電力制御のみが実現されることになる。
【0047】
図11に示すように、DSP2において、直流コンデンサ/バッテリ電圧制御のためのスイッチング指令値と有効電力・無効電力制御のためのスイッチング指令値とが重畳されて、フルブリッジ電圧型PWMコンバータ内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御するための最終的なスイッチング指令値が生成される。本発明の第2の実施例では1相あたり3段の単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータで電力地区製装置が構成されるので、単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータが9台存在し、したがってDSP2は、最終的なスイッチング指令値を9種類生成する。
【0048】
DSP2で生成された上記スイッチング指令値は、PWM発生器3へ入力される。PWM発生器3は例えばFPGAで構成される。9台の単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータ内には半導体スイッチング素子が合計36個が存在することから、PWM発生器3は、これら36個の半導体スイッチング素子をスイッチング制御するための、合計36種類のPWM信号を生成する。
【0049】
次に、本発明の第2の実施例による三相電力蓄積装置のミニモデルを用いた実験結果を示す。本実験では、三相電力蓄積装置を一相あたり単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータを3段カスケード接続して構成し、その有効電力出力量を10kW、交流側に設けられるリアクトルを1.2mH、電気蓄積素子としての各直流コンデンサの容量を0.9F、コンデンサ電圧を60〜70Vとした。また、単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータ内の半導体スイッチング素子として定格600V、150AのIGBTを用いた。また、PWM発生器のキャリア周波数を1kHzとした。このような電力蓄積装置を、50Hz、三相200V配電系統に設置した実験結果を図13および14に示す。
【0050】
図13は、本発明の第2の実施例による電力蓄積装置を、放電動作から充電動作に変化させたときの実験結果を示す図である。この図では、電力蓄積装置が設置された配電系統のu相電圧vu[V]、電力蓄積装置に流れ込む電流i[A]、有効電力量p[kW]および、各コンデンサの直流電圧VD[V]が示されている。本実験では、直流電圧指令値VDrefを、20ミリ秒(1周期)で65Vから80Vにランプ状に変化させた。過渡時においても有効電力量pは良好に制御されていることがわかる。
【0051】
図14は、本発明の第2の実施例による電力蓄積装置における、直流コンデンサ/バッテリ電圧制御の特性についての実験結果を示す図である。各コンデンサの直流電圧VD[V]が示されている。本実験では、1相分の単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータのコンデンサの容量を1.1F、のこりの2相分の単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータのコンデンサの容量を0.9Fとし、意図的に容量不均一を発生させて起動した状態において、時刻2ミリ秒の時点で上述の第2の直流コンデンサ/バッテリ電圧制御の動作を開始した。およそ時刻20ミリ秒過ぎには各コンデンサの直流電圧値が均一に制御できていることがわかる。
【0052】
上述の図13および14の実験結果から、本発明の第2の実施例による電力蓄積装置制御方法は有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成される自励式無効電力補償装置もしくは電力蓄積装置(カスケード接続型の自励式無効電力補償装置もしくは電力蓄積装置)の、各単相電力変換器の直流側にそれぞれ接続されたコンデンサもしくは電力蓄積素子の直流電圧値を、定常時のみならず過渡時においても安定に制御することができる。また、定常状態および過渡状態の両方において、無効電力および有効電力についても良好に制御することができる。本発明による自励式無効電力補償装置および電力蓄積装置の有効性については実験結果に示すとおりである。
【0054】
本発明による自励式無効電力補償装置および電力蓄積装置は、商用周波数変圧器を使用することなくすなわちトランスレスに配電系統に設置することができるので、重量、体積およびコストの面で非常に有利である。また、本発明による自励式無効電力補償装置については、始動前のコンデンサの初期充電も、電圧安定化用の独立電源も必要なく低コストかつ容易に実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、直流コンデンサ電圧制御ブロックを示す原理ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例における自励式無効電力補償装置における、システム全体の概略ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、無効電力制御ブロックおよび直流コンデンサ制御ブロックからなる制御部を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、単相電力変換器の回路構成を示す回路図である。
【図5】本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置の始動方法について説明する回路図である。
【図6】本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、初期充電動作についての実験結果を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、初期充電完了後の運転開始についての実験結果を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置を、リアクトル動作からコンデンサ動作に変化させたときの実験結果を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施例による自励式無効電力補償装置における、直流コンデンサ電圧制御の特性についての実験結果を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施例による電力蓄積装置における、電力蓄積素子電圧制御ブロックを示す原理ブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施例における電力蓄積装置における、システム全体の概略ブロック図である。
【図12】本発明の第2の実施例による電力蓄積装置における、有効電力・無効電力制御ブロックおよび直流コンデンサ/バッテリ制御ブロックからなる制御部を示すブロック図である。
【図13】本発明の第2の実施例による電力蓄積装置を、放電動作から充電動作に変化させたときの実験結果を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施例による電力蓄積装置における、直流コンデンサ/バッテリ電圧制御の特性についての実験結果を示す図である。
【図15】一般的なカスケード接続型(Y結線)の三相自励式無効電力補償装置を例示する回路構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1 自励式無効電力補償装置
2 DSP
3 PWM発生器
10 直流コンデンサ電圧制御ブロック
10’ 直流コンデンサ/バッテリ電圧制御ブロック
11 演算手段
12 第1の直流コンデンサ電圧制御手段
12’ 第1の直流コンデンサ/バッテリ電圧制御手段
13−1、13−2、13−3 第2の直流コンデンサ電圧制御手段
13−1’、13−2’、13−3’ 第2の直流コンデンサ/バッテリ電圧制御手段
20 無効電力制御ブロック
20’ 有効電力・無効電力制御ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成され、各前記単相電力変換器の直流側にそれぞれ接続されたコンデンサを直流電圧源として用いて無効電力を生成する自励式無効電力補償装置であって、
全ての前記コンデンサの直流電圧値の総和をとって直流電圧平均値を算出する演算手段と、
前記直流電圧平均値を所定の指令値に一致させるための第1のスイッチング指令値を生成する第1の直流コンデンサ電圧制御手段と、
各前記直流電圧値を前記直流電圧平均値に一致させるための第2のスイッチング指令値を、各前記単相電力変換器別に生成する第2の直流コンデンサ電圧制御手段と、
を備え、
前記第1のスイッチング指令値と前記第2のスイッチング指令値とを用いて各前記単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、各前記コンデンサの直流電圧値を制御することを特徴とする自励式無効電力補償装置。
【請求項2】
交流側がカスケード接続された前記単相電力変換器の組を三相分備えて三相交流系統にトランスレスで直結される請求項1に記載の自励式無効電力補償装置であって、
前記第1の直流コンデンサ電圧制御手段は、前記所定の指令値と、前記演算手段が各相別に算出した前記直流電圧平均値との差を用いて、各相別の前記第1のスイッチング指令値を生成し、
前記第2の直流コンデンサ電圧制御手段は、各前記直流電圧値と、この直流電圧値を前記演算手段が平均演算処理に用いることにより得られた前記直流電圧平均値との差を用いて、各前記単相電力変換器別の前記第2のスイッチング指令値を生成する自励式無効電力補償装置。
【請求項3】
交流側がカスケード接続された前記単相電力変換器の組を三相分備えて三相交流系統にトランスレスで直結される請求項1に記載の自励式無効電力補償装置であって、
前記第1の直流コンデンサ電圧制御手段は、前記所定の指令値と前記演算手段が各相別に算出した前記直流電圧平均値との差と、前記自励式無効電力補償装置の交流側の三相電流値をdq座標変換して算出されるd軸電流値とを用いて、各相別の前記第1のスイッチング指令値を生成し、
前記第2の直流コンデンサ電圧制御手段は、各前記直流電圧値と、この直流電圧値を前記演算手段が平均演算処理に用いることにより得られた前記直流電圧平均値との差を用いて、各前記単相電力変換器別の前記第2のスイッチング指令値を生成する自励式無効電力補償装置。
【請求項4】
前記単相電力変換器は、単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータである請求項1〜3のいずれか一項に記載の自励式無効電力補償装置。
【請求項5】
前記自励式無効電力補償装置の始動前において、前記単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータの全ゲートを開放状態にして該単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータを単相フルブリッジダイオード整流器として動作させることにより交流系統電圧を整流し、得られた直流電圧により前記コンデンサが初期充電される請求項4に記載の自励式無効電力補償装置。
【請求項6】
前記自励式無効電力補償装置の始動前において、前記単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータの全ゲートを開放状態にして該単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータを単相フルブリッジダイオード整流器として動作させることにより交流系統電圧を整流し、得られた直流電圧を、前記自励式無効電力補償装置の始動用電源として蓄電する蓄電手段をさらに備える請求項4に記載の自励式無効電力補償装置。
【請求項7】
複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成される自励式無効電力補償装置の、無効電力を生成するのに用いられる直流電圧源として各前記単相電力変換器の直流側にそれぞれ設けられるコンデンサの直流電圧値を制御する、自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法であって、
全ての前記コンデンサの直流電圧値の総和をとって算出された直流電圧平均値が所定の指令値と一致し、なおかつ各前記直流電圧値が前記直流電圧平均値と一致するよう、各前記単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することを特徴とする自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法。
【請求項8】
交流側がカスケード接続された前記単相電力変換器の組を三相分備える前記自励式無効電力補償装置が、三相交流系統にトランスレスで直結される請求項7に記載の自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法であって、
前記所定の指令値と各相別に算出された前記直流電圧平均値との差を用いて、各相別に第1のスイッチング指令値を生成する第1の直流コンデンサ電圧制御ステップと、
各前記直流電圧値と、この直流電圧値を前記演算手段が平均演算処理に用いることにより得られた前記直流電圧平均値との差を用いて、各前記単相電力変換器別の第2のスイッチング指令値を生成する第2の直流コンデンサ電圧制御ステップと、
を備え、
前記第1のスイッチング指令値と前記第2のスイッチング指令値とを用いて各前記単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、各前記コンデンサの直流電圧値を制御する自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法。
【請求項9】
交流側がカスケード接続された前記単相電力変換器のグループを三相分備える前記自励式無効電力補償装置が、三相交流系統にトランスレスで直結される請求項7に記載の自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法であって、
前記所定の指令値と各相別に算出された前記直流電圧平均値との差と、前記自励式無効電力補償装置の交流側の三相電流値をdq座標変換して算出されるd軸電流値と、を用いて、各相別に第1のスイッチング指令値を生成する第1の直流コンデンサ電圧制御ステップと、
各前記直流電圧値と、この直流電圧値を前記演算手段が平均演算処理に用いることにより得られた前記直流電圧平均値との差を用いて、各前記単相電力変換器別の第2のスイッチング指令値を生成する第2の直流コンデンサ電圧制御ステップと、
を備え、
前記第1のスイッチング指令値と前記第2のスイッチング指令値とを用いて各前記単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、各前記コンデンサの直流電圧値を制御する自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法。
【請求項10】
前記単相電力変換器は、単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータである請求項7〜9のいずれか一項に記載の自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法。
【請求項11】
前記自励式無効電力補償装置の始動前において、前記単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータの全ゲートを開放状態にして該単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータを単相フルブリッジダイオード整流器として動作させることにより交流系統電圧を整流し、得られた直流電圧により前記コンデンサを初期充電する初期充電ステップをさらに備える請求項10に記載の自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法。
【請求項12】
前記自励式無効電力補償装置の始動前において、前記単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータの全ゲートを開放状態にして該単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータを単相フルブリッジダイオード整流器として動作させることにより交流系統電圧を整流し、得られた直流電圧を、前記自励式無効電力補償装置の始動用電源として蓄電する蓄電ステップをさらに備える請求項10に記載の自励式無効電力補償装置におけるコンデンサ電圧制御方法。
【請求項13】
複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成され、各前記単相電力変換器の直流側にそれぞれ接続された電力蓄積素子を直流電圧源として用いて交流側に電力を供給する電力蓄積装置であって、
全ての前記電力蓄積素子の直流電圧値の総和をとって直流電圧平均値を算出する演算手段と、
前記直流電圧平均値を所定の指令値に一致させるための第1のスイッチング指令値を生成する第1の電力蓄積素子電圧制御手段と、
各前記直流電圧値を前記直流電圧平均値に一致させるための第2のスイッチング指令値を、各前記単相電力変換器別に生成する第2の電力蓄積素子電圧制御手段と、
を備え、
前記第1のスイッチング指令値と前記第2のスイッチング指令値とを用いて各前記単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、各前記電力蓄積素子の直流電圧値を制御することを特徴とする電力蓄積装置。
【請求項14】
前記電力蓄積装置の交流側の各相電流と同位相を有する第3のスイッチング指令値を生成する有効電力制御手段をさらに備え、
前記第1のスイッチング指令値、前記第2のスイッチング指令値および前記第3のスイッチング指令値を用いて各前記単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、前記電力蓄積装置の交流側に供給すべき電力を制御しながら各前記電力蓄積素子の直流電圧値を制御する請求項13に記載の電力蓄積装置。
【請求項15】
交流側がカスケード接続された前記単相電力変換器の組を三相分備えて三相交流系統にトランスレスで直結される請求項13に記載の電力蓄積装置であって、
前記第1の電力蓄積素子電圧制御手段は、前記所定の指令値と、前記演算手段が各相別に算出した前記直流電圧平均値との差を用いて、各相別の前記第1のスイッチング指令値を生成し、
前記第2の電力蓄積素子電圧制御手段は、各前記直流電圧値と、この直流電圧値を前記演算手段が平均演算処理に用いることにより得られた前記直流電圧平均値との差を用いて、各前記単相電力変換器別の前記第2のスイッチング指令値を生成する電力蓄積装置。
【請求項16】
交流側がカスケード接続された前記単相電力変換器の組を三相分備えて三相交流系統にトランスレスで直結される請求項13に記載の電力蓄積装置であって、
前記第1の電力蓄積素子電圧制御手段は、前記所定の指令値と前記演算手段が各相別に算出した前記直流電圧平均値との差と、前記電力蓄積装置の交流側の三相電流値をdq座標変換して算出されるd軸電流値とを用いて、各相別の前記第1のスイッチング指令値を生成し、
前記第2の電力蓄積素子電圧制御手段は、各前記直流電圧値と、この直流電圧値を前記演算手段が平均演算処理に用いることにより得られた前記直流電圧平均値との差を用いて、各前記単相電力変換器別の前記第2のスイッチング指令値を生成する電力蓄積装置。
【請求項17】
前記単相電力変換器は、単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータである請求項13〜16のいずれか一項に記載の電力蓄積装置。
【請求項18】
前記電力蓄積素子は、直流コンデンサ、電気二重層キャパシタもしくはバッテリである請求項13〜16のいずれか一項に記載の電力蓄積装置。
【請求項19】
複数の単相電力変換器の交流側が互いにカスケード接続されて構成される電力蓄積装置の、交流側に電力を供給するのに用いられる直流電圧源として各前記単相電力変換器の直流側にそれぞれ設けられる電力蓄積素子の直流電圧値を制御する電力蓄積装置制御方法であって、
全ての前記電力蓄積素子の直流電圧値の総和をとって算出された直流電圧平均値が所定の指令値と一致し、なおかつ各前記直流電圧値が前記直流電圧平均値と一致するよう、各前記単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することを特徴とする電力蓄積装置制御方法。
【請求項20】
交流側がカスケード接続された前記単相電力変換器の組を三相分備える前記電力蓄積装置が、三相交流系統にトランスレスで直結される請求項19に記載の電力蓄積装置制御方法であって、
前記所定の指令値と各相別に算出された前記直流電圧平均値との差を用いて、各相別に第1のスイッチング指令値を生成する第1の電力蓄積素子電圧制御ステップと、
各前記直流電圧値と、この直流電圧値を前記演算手段が平均演算処理に用いることにより得られた前記直流電圧平均値との差を用いて、各前記単相電力変換器別の第2のスイッチング指令値を生成する第2の電力蓄積素子電圧制御ステップと、
を備え、
前記第1のスイッチング指令値と前記第2のスイッチング指令値とを用いて各前記単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、各前記電力蓄積素子の直流電圧値を制御する電力蓄積装置制御方法。
【請求項21】
交流側がカスケード接続された前記単相電力変換器のグループを三相分備える前記電力蓄積装置が、三相交流系統にトランスレスで直結される請求項19に記載の電力蓄積装置制御方法であって、
前記所定の指令値と各相別に算出された前記直流電圧平均値との差と、前記電力蓄積装置の交流側の三相電流値をdq座標変換して算出されるd軸電流値と、を用いて、各相別に第1のスイッチング指令値を生成する第1の電力蓄積素子電圧制御ステップと、
各前記直流電圧値と、この直流電圧値を前記演算手段が平均演算処理に用いることにより得られた前記直流電圧平均値との差を用いて、各前記単相電力変換器別の第2のスイッチング指令値を生成する第2の電力蓄積素子電圧制御ステップと、
を備え、
前記第1のスイッチング指令値と前記第2のスイッチング指令値とを用いて各前記単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、各前記電力蓄積素子の直流電圧値を制御する電力蓄積装置制御方法。
【請求項22】
前記電力蓄積装置の交流側の各相電流と同位相を有する第3のスイッチング指令値を生成する有効電力制御ステップをさらに備え、
前記第1のスイッチング指令値、前記第2のスイッチング指令値および前記第3のスイッチング指令値を用いて各前記単相電力変換器内の半導体スイッチング素子をスイッチング制御することにより、前記電力蓄積装置の交流側に供給すべき電力を制御しながら各前記電力蓄積素子の直流電圧値を制御する請求項20または21に記載の電力蓄積装置制御方法。
【請求項23】
前記単相電力変換器は、単相フルブリッジ電圧型PWMコンバータである請求項19〜22のいずれか一項に記載の電力蓄積装置制御方法。
【請求項24】
前記電力蓄積素子は、直流コンデンサ、電気二重層キャパシタもしくはバッテリである請求項19〜22のいずれか一項に記載の電力蓄積装置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−280358(P2007−280358A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4630(P2007−4630)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】