説明

自動ねじ締め機

【課題】高速低トルク駆動および低速高トルク駆動によるねじ締めを1つのモータで実現し、かつねじ締め完了時にドライバビットを逆回転させてねじとの食い付きを解除することが可能な自動ねじ締め機を提供する。
【解決手段】回転駆動源3の駆動に伴って回転する伝達軸4と、この伝達軸4の回転に伴って回転する出力軸13と、前記伝達軸4に直結して出力軸13へ回転伝達する高速低トルク伝達系と、前記伝達軸4からの回転を減速手段5を介して出力軸13へ回転伝達する低速高トルク伝達系と、これら双方の伝達系による差動回転を許容する双方向クラッチ10と、前記伝達軸4あるいは出力軸13に所定の負荷トルクが作用すると、高速低トルク伝達系を遮断するトルクリミッタ9とを備える自動ねじ締め機1による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ部品を高速低トルクで仮締めした後、低速高トルクで本締めを行う自動ねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記技術分野に属するねじ締め機としては、特許文献1に示すものがある。このねじ締め機は、高速低トルク用モータと、低速高トルク用モータとを備えており、仮締め段階では、高速低トルク用モータの駆動がドライバビットへ伝達される。そして、ねじ部品が着座してその衝撃トルクが検出されると、低速高トルク用モータの駆動に切り替わり、本締め段階へと移行してねじ締めが完了する。このねじ締め機によれば、ねじ締め時間は短縮されるものの、モータを2個備える構成のため、装置が大型になるばかりか、コスト面においても問題があった。
【0003】
そこで、上記問題を解決する従来のねじ締め機としては、特許文献2に示すものがある。このねじ締め機に用いるモータは、高速低トルク駆動および低速高トルク駆動が可能であり、かつ正逆転駆動が可能である。また、このねじ締め機の駆動伝達機構としては、入力が減速機を介して出力される駆動経路と、入力が減速機を介させずに出力される駆動経路との2系統で構成されている。そして、伝達経路上に複数の一方向クラッチを配置することにより、モータの正転時には出力が減速機を介さずに高速低トルクが出力される一方、モータの逆転時には出力が減速機を介して低速高トルク駆動が伝達されるように構成されている。この構成により、モータが1個の構成でありながらも、高速低トルクによる仮締めと、低速高トルクによる本締めとを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−006560号公報
【特許文献2】特開2008−114303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に示すねじ締め機では、モータの正逆転駆動により、高速低トルク駆動および高速低トルク駆動を切り替えている。このため、ねじ締め完了時に、ドライバビットを逆転させることができず、ドライバビットとねじ部品との食付きを解除することができない。また、複数の一方向クラッチを用いる構成のため、部品点数が多くなり、コスト面においても問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品供給装置は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、回転駆動源の駆動に伴って回転する伝達軸と、この伝達軸の回転に伴って回転する出力軸と、前記伝達軸に直結して出力軸へ回転伝達する高速低トルク伝達系と、前記伝達軸からの回転を減速手段を介して出力軸へ回転伝達する低速高トルク伝達系と、これら双方の伝達系による差動回転を許容する回転伝達手段と、前記伝達軸あるいは出力軸に所定の負荷トルクが作用すると、高速低トルク伝達系を遮断する切り替え手段とを備える。
【0007】
また、前記回転伝達手段が、双方向クラッチであることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動ねじ締め機においては、高速低トルク伝達系および低速高トルク伝達系の双方による差動回転を許容する回転伝達手段を備えている。これにより、一方向クラッチを複数用いなくても、高速低トルク伝達系および低速高トルク伝達系の2系統を構成することができる。そのため、部品点数が少なくなり、経済的に安価で、かつ小型の自動ねじ締め機を提供することができる。しかも、高速低トルク駆動から低速高トルク駆動への切り替えの際、逆転駆動が不要となる。そのため、モータを逆転駆動させてドライバビットを逆転方向へ回転させることが可能となり、ねじ締め完了時に食い付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の自動ねじ締め機を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は自動ねじ締め機であり、ハウジング2に取り付けられた回転駆動源の一例であるサーボモータ3(以下、単にモータという)を有している。このモータ3の駆動軸3aには、伝達軸4が連結されており、駆動軸3aの回転に伴って回転するよう構成されている。
【0011】
前記伝達軸4の先端の周囲には、減速手段の一例である遊星歯車機構5が配置されている。そこで、伝達軸4の先端部分にはその周面に外歯が形成されており、すなわち太陽歯車6が形成されている。また、この太陽歯車6を中心にしてその周囲には複数の遊星歯車7が噛合させてあり、内歯が形成された内歯歯車8に噛合して公転するよう構成されている。
【0012】
前記伝達軸4の先端は遊星歯車7の回転底面から突出しており、ここには切り替え手段の一例であるトルクリミッタ9が連結してある。また、このトルクリミッタ9には双方向クラッチ10の入力軸11が接続されている。さらに、この双方向クラッチ10の出力軸12には、ドライバビット(図示せず)を先端に備える出力軸13が連結されている。このように、双方向クラッチ10の入力軸11が伝達軸4に直結して回転駆動を伝達する構成により、高速低トルク系を成している。
【0013】
一方、前記遊星歯車7には、この公転運動に伴い回転するよう遊星キャリア14が取り付けられている。この遊星キャリア14は、円筒を成しており、前記トルクリミッタ9を内包するようにして、前記双方向クラッチ10の外輪15に接続されている。このように、双方向クラッチ10の外輪15が遊星歯車機構5を介して伝達軸4に連結して回転駆動を伝達する構成により、低速高トルク系を成している。
【0014】
前記双方向クラッチ10は、図1および図2に示すように、既に公知のものであり、入力側である入力軸11および外輪15からの双方向の回転が従動側である出力軸12へ伝達され、出力側からの回転は入力側へ伝達されないよう構成されている。すなわち、入力軸からの高速低トルク回転及び外輪からの低速高トルク回転の双方の差動回転を許容して出力するよう構成されている。
【0015】
前記トルクリミッタ9は、ねじが着座した際、伝達軸4あるいは出力軸13に所定の負荷トルクが作用すると、伝達軸4と双方向クラッチ10の入力軸11との連結を断ち、高速低トルク伝達系を遮断するよう構成されている。そのため、低速高トルク伝達系の回転駆動だけが出力軸13へ伝達される。
【0016】
以下、本発明の自動ねじ締め機1による動作を説明する。まず、ねじが着座するまでの仮締め段階においては、トルクリミッタ9は伝達軸4と双方向クラッチ10の入力軸11とを連結している。このため、出力軸12には、高速低トルク駆動および高速低トルク駆動の双方が伝達される。ただし、双方向クラッチの入力軸11と外輪15とは、回転速度の違いから差動回転する。したがって、実際に出力される駆動は、入力軸11からの高速低トルク駆動だけである。
【0017】
その後ねじが着座すると、伝達軸4あるいは出力軸13には所定の負荷トルクを超える衝撃トルクが生じる。これを受け、トルクリミッタ9が伝達軸4と双方向クラッチ10の入力軸11との連結を遮断する。そして、本締め段階に移行する。この本締め段階では、トルクリミッタ9の作動により、低速高トルク伝達系による駆動だけが出力軸12へ伝達される。そして、ねじ締めが完了すると、モータ3には所定の値を超える負荷電流が流れるので、これを受けモータ3の駆動を停止してねじ締めが完了する。
【0018】
また、ねじ締め完了時には、ドライバビットとねじ駆動穴との食い付きを解除すべく、必要に応じて一時的にモータ3を逆転駆動させてドライバビットを逆回転させる。これにより、食い付きが解除され、ドライバビットをねじ駆動穴から抜いて取り外すことができる。
【0019】
なお、前記伝達軸4の周囲には起歪管16が配置されており、その一端はハウジング2に固定され、もう一端は前記遊星歯車機構5の内場歯車8に固定されている。これにより、トルクセンサが構成されており、出力軸13に作用する回転抵抗に応じて内場歯車8を介して起歪管16が円周方向に歪み、この歪みを起歪管16に貼付けられた歪みゲージ17が電気信号として検出するよう構成されている。そこで、ねじ締めの完了となる基準値を前述した負荷電流値によるものに代えてトルクセンサによる検出値にしてもよい。
【0020】
本発明の自動ねじ締め機1によれば、双方向クラッチ10の作用により、仮締め段階では、高速低トルク駆動と低速高トルク駆動との作動回転を許容しながら高速低トルク駆動だけが伝達される。また、本締め段階では、トルクリミッタ9の作用により、低速高トルク駆動だけが伝達される。これにより、仮締め段階および本締め段階共にモータ3は、正転駆動であるから、ねじ締め完了時に食い付きを防止すべく、モータ3を逆転駆動させてこれを解除することができる。
【0021】
また、高速トルク低トルク伝達系および低速高トルク伝達系の構成に用いるクラッチの数が、双方向クラッチだけである。そのため、部品点数が少なく、コンパクトかつ経済的に安価な自動ねじ締め機を提供することができる。
【0022】
さらに、従来のように、高速トルク低トルク駆動から低速高トルク駆動への切り替えをモータ3の逆転駆動により行う構成では、回転慣性による影響から、切り替え時にワンウェイクラッチにかかる負荷が大きく、劣化する虞がある。これに対して本発明のねじ締め機1によれば、双方向クラッチ10が双方の伝達系による回転を許容しながら、切り替え時には高速低トルク系の連結を遮断する構成により、双方向クラッチにかかる負荷も小さく耐久性に優れたものとなる。よって、仮締め段階において、回転慣性による影響を低減すべく仮締め完了前に回転数を下げる必要もなくなる。したがって、仮締め段階においても、仮締め開始から完了まで、モータ3の回転慣性に鑑みることなく高回転数でねじを締め付けること可能となるので、高速ねじ締めを実現することができる。
【0023】
1 自動ねじ締め機
2 ハウジング
3 サーボモータ
3a 駆動軸
4 伝達軸
5 遊星歯車機構
6 太陽歯車
7 遊星歯車
8 内場歯車
9 トルクリミッタ
10 双方向クラッチ
11 入力軸
12 出力軸
13 出力軸
14 遊星キャリア
15 外輪
16 起歪管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の駆動に伴って回転する伝達軸と、
この伝達軸の回転に伴って回転する出力軸と、
前記伝達軸に直結して出力軸へ回転伝達する高速低トルク伝達系と、
前記伝達軸からの回転を減速手段を介して出力軸へ回転伝達する低速高トルク伝達系と、
これら双方の伝達系による差動回転を許容する回転伝達手段と、
前記伝達軸あるいは出力軸に所定の負荷トルクが作用すると、高速低トルク伝達系を遮断する切り替え手段と
を備えることを特徴とする自動ねじ締め機。
【請求項2】
前記回転伝達手段が、双方向クラッチであることを特徴とする請求項1に記載の自動ねじ締め機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−40656(P2012−40656A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185249(P2010−185249)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】