説明

自動コード読取装置

【課題】 正確にコードを読み取ることができ、鋼片との衝突の恐れもなく、短時間でコードの読み取りが終了し、しかも、コンパクトであり、製造コストを抑えられる自動コード読取装置を提供する。
【解決手段】 搬送台14上を順次搬送される鋼片12の端面12aに貼り付けられたラベル16を撮像して、そのラベル16に記された二次元コードを自動的に読み取る自動コード読取装置において、ラベル16を撮像するためのエリアセンサカメラ28の焦点を決定するために鋼片12の端面12aまでの距離を測定する装置としてレーザ距離計26を用い、それらレーザ距離計26とエリアセンサカメラ28を搬送台14の側面に平行な平面内でのみ移動可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼片の端面に貼り付けられたラベルに記されたコードを自動的に読み取る自動コード読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼片の検査工程では、搬送テーブル上を順次搬送されてくる鋼片の端面に貼り付けられたラベルに記されたコードを読み取ることにより、鋼片を認識するようになっている。この検査工程は、鋼片を搬送テーブルに設けられたストッパに突き当たるまで移動させて、その位置でコード読取装置によりラベルに記されたコードを読み取るものであるが、鋼片の長さは一定ではなく、たとえば、5m〜12m程度範囲のものが混在しており、また、ストッパに突き当たったときの鋼片の位置自体もばらついている。従って、鋼片の端面とコード読取装置との間の距離は、鋼片毎にばらついている。そのため、コード読取装置には、鋼片の端面との距離を測定する距離測定手段が必要となる。
【0003】
上記コード読取装置として、距離測定手段としての超音波センサと、鋼片の端面の画像を撮影して、その端面におけるバーコードラベルの貼付位置および貼付方向を認識するためのエリアセンサとを備え、それら超音波センサおよびエリアセンサカメラが3つの移動テーブルによりX方向、Y方向、Z方向の3方向に移動可能とされた装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
上記特許文献1に記載の装置では、超音波センサにより目的の鋼片の端面までの距離を検出した後、移動テーブルによりエリアセンサカメラをX、Y、Z方向に移動させて、エリアセンサカメラと目的の鋼片の端面との距離を合わせ、次いで、エリアセンサカメラの焦点を端面に合わせた後に、鋼片の端面の画像を撮像している。そして、撮像した画像を処理することにより、バーコードラベルの貼付位置および貼付方向を決定し、次いで、バーコードリーダを走査してバーコードラベルの内容を読み取っている。
【特許文献1】特開平7−234914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の技術では、まず、超音波センサで目的の鋼片の端面までの距離を計測しているが、超音波センサでは、隣接する鋼片の端面が目的の鋼片の端面よりも超音波センサに近い場合に、その隣接する鋼片の端面までの距離を、目的の端面までの距離として誤って計測してしまう場合があり、目的の端面までの距離の計測を誤ると、正確なコードの読み取りが困難になる。また、目的の鋼片の端面までの距離を計測した後、エリアセンサカメラをX、Y、Zの3方向に移動させているので、その移動に時間がかかり、従って、コードの読み取りに要する時間が比較的長いという問題もある。また、3方向に移動させる装置は、比較的大きく、複雑であり、且つコストも大きい。さらに、鋼片の端面に接近する方向にもエリアセンサカメラを移動させるので、隣接する鋼片の端面が目的の鋼片の端面よりもエリアセンサカメラ側に突き出ている場合、エリアセンサカメラがその隣接する鋼片と衝突して破損する恐れもある。この衝突を避けるためには、他の鋼片よりも著しく読取装置側に突き出している鋼片を、その端面が他の鋼片の端面と揃う程度にその鋼片の位置を矯正することが考えられるが、矯正をするための装置は高価であり、コードの読み取りのためにそのような高価な装置を導入することは現実的ではない。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、正確にコードを読み取ることができ、鋼片との衝突の恐れもなく、短時間でコードの読み取りが終了し、しかも、コンパクトであり、製造コストを抑えられる自動コード読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための第1発明は、(a)搬送台上を順次搬送される鋼片の端面に貼り付けられたラベルを撮像して、そのラベルに記されたコードを自動的に読み取る自動コード読取装置であって、(b)前記搬送台方向へ移動不能とされた、前記ラベルを撮像するための撮像装置と、(c)前記鋼片の端面までの距離を計測するためのレーザ距離計と、(d)そのレーザ距離計を、前記鋼片の端面に平行に二次元的に移動させる移動装置と、(e)その移動装置により前記レーザ距離計を所定の範囲内において移動させつつそのレーザ距離計から出力されるレーザ光を走査して、前記鋼片の端面までの距離を決定する端面距離決定手段と、(f)前記撮像装置の焦点をその端面距離決定手段により決定された鋼片の端面までの距離に合わせ、その撮像装置によりその鋼片の端面に貼り付けられたラベルを撮像させる撮像制御手段とを、含むことを特徴とする。
【0008】
また、第2発明は、(a)搬送台上を順次搬送される鋼片の端面に貼り付けられたラベルを撮像して、そのラベルに記されたコードを自動的に読み取る自動コード読取装置であって、(b)前記搬送台方向へ移動不能とされた、前記ラベルを撮像するための撮像装置と、(c)前記鋼片の端面までの距離を計測するためのレーザ距離計と、(d)そのレーザ距離計を回動させる回動装置と、(e)その回動装置により前記レーザ距離計を所定の範囲内において回動させつつそのレーザ距離計から出力されるレーザ光を走査して、前記鋼片の端面までの距離を決定する端面距離決定手段と、(f)前記撮像装置の焦点をその端面距離決定手段により決定された鋼片の端面までの距離に合わせ、その撮像装置によりその鋼片の端面に貼り付けられたラベルを撮像させる撮像制御手段とを、含むことを特徴とする。
【0009】
また、第3発明は、第1発明の自動コード読取装置において、前記撮像装置は、ズーム機構を備えるとともに、前記移動装置により移動可能とされており、前記撮像制御手段は、前記撮像装置の焦点を前記端面距離決定手段により決定された鋼片の端面までの距離に合わせた後、その端面におけるコードの位置を決定し、前記移動装置により前記撮像装置の光軸をその決定したコード付近に合わせるとともに前記ズーム機構を制御することによりそのコード付近を拡大して、前記ラベルのそのコード付近を撮像させるものであることを特徴とする。
【0010】
また、第4発明は、第2発明の自動コード読取装置において、前記撮像装置は、ズーム機構を備えるとともに、前記回動装置により回動可能とされており、前記撮像制御手段は、前記撮像装置の焦点を前記端面距離決定手段により決定された鋼片の端面までの距離に合わせた後、その端面におけるコードの位置を決定し、前記回動装置により前記撮像装置の光軸をその決定したコード付近に合わせるとともに前記ズーム機構を制御することによりそのコード付近を拡大して、前記ラベルのそのコード付近を撮像させるものであることを特徴とする。
【0011】
また、第5発明は、第1発明乃至第4発明のいずれかの自動コード読取装置において、前記ラベルに記されているコードが二次元コードであることを特徴とする。
【0012】
また、第6発明は、第1発明乃至第5発明のいずれかの自動コード読取装置において、前記鋼片は、前記搬送台に設けられたストッパに当接して位置決めされるものであり、前記端面距離決定手段は、そのストッパに当接した前記鋼片の端面位置のばらつきに拘わらずその端面が含まれる予め設定された範囲内において前記レーザ光を走査して、前記鋼片の端面までの距離を決定するものであることを特徴とする。
【0013】
また、第7発明は、第1発明乃至第6発明のいずれかの自動コード読取装置において、前記撮像装置により撮像された画像と、予め記憶されたコードの特徴部分の形状との比較に基づいて、前記ラベルに記されたコードを認識するコード認識手段をさらに含み、前記撮像制御手段は、そのコード認識手段により認識されたコードの所定部位の輝度が予め設定された所定範囲外である場合には、その部位の輝度がその所定範囲に入るように露光時間を補正した後、再度、前記撮像装置により前記鋼片の端面に貼り付けられたラベルを撮像させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によれば、指向性の鋭いレーザ光を用いるレーザ距離計により鋼片の端面までの距離が決定されるので、隣接する鋼片に影響されることなく正確に目的の鋼片の端面までの距離が決定できる。従って、正確なコードの読み取りが可能となる。また、レーザ距離計は、移動装置により鋼片の端面に平行に二次元的に移動させられるのみであり、撮像装置も、搬送台方向へ移動不能とされているので、レーザ距離計や撮像装置が鋼片に衝突する恐れがない。また、レーザ距離計は、二次元的に移動させられるのみであるので、三次元的に移動させられる場合に比較して、自動コード読取装置がコンパクトになり、製造コストも抑えられ、しかも、距離測定のための移動が短時間で終了し、ひいては、コードの読み取りが短時間で終了する。
【0015】
第2発明は、第1発明の場合と同様に、鋼片の端面までの距離の検出にレーザ距離計を用いているため、正確なコードの読み取りが可能となり、また、移動装置に代えてレーザ距離計を回動させる回動装置を用いている点において第1発明と異なるが、回動装置もレーザ距離計を搬送台方向へ移動するものではないので、鋼片に衝突する恐れがない。また、レーザ距離計が三次元的に移動させられる場合に比較して、装置がコンパクトになり、製造コストも抑えられ、しかも、撮像のための移動が短時間で終了し、ひいては、コードの読み取りが短時間で終了する。
【0016】
また、第3発明では、移動装置およびズーム機構によりコード付近が拡大して撮像され、また、第4発明では、回動装置およびズーム機構によりコード付近が拡大して撮像されるので、いずれの発明においても、コードの読み取り精度がさらに向上する。
【0017】
また、第5発明では、ラベルに記されているコードとして、一部分が汚れにより判別不能であっても必要な情報を全て読み出すことが可能であるという特徴を有する公知の二次元コードを用いているので、コードの読み取りが不可能となる場合が少なくなる。
【0018】
また、第6発明のようにレーザ光の走査範囲が予め設定されていると、目的の鋼片の端面までの距離の測定精度が一層向上する。従って、撮像装置の焦点をより精度良く目的の鋼片の端面に合わせることができるので、ラベルに記載されたコードの読み取り精度が一層向上する。
【0019】
また、第7発明では、撮像された画像において、コードの所定部分の輝度が予め設定された所定範囲の外にある場合には、露光時間が補正された後に、再度、鋼片の端面に貼り付けられたラベルが撮像されることから、適切な輝度の画像に基づいてコードの読み取りを行うことができるので、コードの読み取り精度がより一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明が適用された自動コード読取装置10の概略構成を示す斜視図である。
【0021】
自動コード読取装置10は、鋼片12が順次搬送されてくる搬送台14に近接する位置に設けられている。鋼片12は、矢印Aで示す方向に搬送台14上を搬送され、自動コード読取装置10により、その端面12aに貼り付けられているラベル16の内容が読み取られた後、図示しない搬送装置により搬送されて、以後の工程に送られる。
【0022】
上記自動コード読取装置10は、搬送台14の側面に平行な方向、すなわち、鋼片12の長手方向に略垂直且つ鋼片12の搬送方向に平行な水平方向(この方向をX方向とする)に配置されたX方向移動テーブル18上に、基台20、およびX方向に垂直且つ鋼片12の長手方向に垂直(この方向をY方向とする)に配置されたY方向移動テーブル22が載置されており、基台20およびY方向移動テーブル22は、X方向移動テーブル18により、一体的に、X方向に移動可能となっている。
【0023】
Y方向移動テーブル22には収容ケース24が取り付けられており、この収容ケース24は、Y方向移動テーブル22により、基台20上方においてY方向に移動可能となっている。この収容ケース24内には、レーザ距離計26、撮像装置として機能するエリアセンサカメラ28、および照明30などが収容されており、レーザ距離計26は鋼片12の端面12aに対して垂直にレーザ光を射出可能なように配置されている。なお、エリアセンサカメラ28は、光学フォーカス機構50および光学ズーム機構52(図2参照)を備えたものである。
【0024】
このように構成されているので、収容ケース24に収容されたレーザ距離計26は、X方向移動テーブル18、Y方向移動テーブル22、およびそれらのテーブル18、22を駆動する図示しないX方向駆動モータ、Y方向駆動モータにより、鋼片12の端面12aに平行に二次元的に移動可能となっている。従って、X方向移動テーブル18、Y方向移動テーブル22、X方向駆動モータ、およびY方向駆動モータにより移動装置32(図2参照)が構成される。
【0025】
上記レーザ距離計26は、所定の波長のレーザ光を射出する出力部と、反射レーザ光を受光する受光部とを備えており、上記出力部から鋼片12の端面12aに向けてレーザ光を射出し、この射出光と、受光部にて受光され、鋼片12の端面12aにて反射された反射光との位相差に基づいて、鋼片12の端面12aまでの距離を測定する。
【0026】
図2は、自動コード読取装置10のシステム構成を示すブロック図である。画像処理装置34は、エリアセンサカメラ28により撮像された画像を処理して、ラベル16に記された二次元コード情報を認識するものであり、認識結果を演算装置36へ出力する。
【0027】
また、演算装置36には、レーザ距離計26における計測結果も供給され、また、演算装置36は、プロセスコンピュータ38および制御シーケンサ40と双方向の信号授受が可能に接続されている。そして、演算装置36は、画像処理装置34から供給された認識結果をプロセスコンピュータ38に供給する。その認識結果が供給されたプロセスコンピュータ38は、その認識結果を予め記憶されているデータとを比較することで、鋼片12の搬送、停止を判断し、鋼片12の搬送、停止を指示する信号を演算装置36へ出力する。この鋼片の搬送、停止を示す信号は、演算装置36から制御シーケンサ40に出力される。制御シーケンサ40は、演算装置36からの信号に基づいて、移動コントローラ42、フォーカス制御コントローラ44、ズーム制御コントローラ46、および搬送制御コントローラ48に、それぞれ制御信号を出力する。
【0028】
移動コントローラ42は、制御シーケンサ40からの制御信号に基づいて移動装置32を制御して、レーザ距離計26およびエリアセンサカメラ28を移動させる。フォーカス制御コントローラ44は、制御シーケンサ40からの制御信号に基づいて、エリアセンサカメラ28に備えられている光学フォーカス機構50を制御して、エリアセンサカメラ28の焦点を鋼片12の端面12aに合わせる。ズーム制御コントローラ46は、制御シーケンサ40からの制御信号に基づいて、エリアセンサカメラ28に備えられている光学ズーム機構52を制御して、エリアセンサカメラ28のズーム倍率を変更する。搬送制御コントローラ48は、制御シーケンサ40からの制御信号に基づいて搬送制御機構54を制御して、鋼片12を、順次、検査位置方向へ搬送させる。
【0029】
図3は、演算装置36および制御シーケンサ40の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図3において、まず、ステップSA1(以下、ステップを省略する)では、搬送制御コントローラ48に制御信号を出力することにより、鋼片12を搬送台14の所定の検査位置まで搬送させる。この検査位置とは、図4に示すように、鋼片12が搬送台14の長手方向の端部に設けられたストッパ56に当接させられる位置である。
【0030】
続くSA2では、レーザ距離計26から出力されるレーザ光を所定の走査範囲で走査させて、目的の鋼片12の端面12aを検出する。すなわち、移動コントローラ42に制御信号を出力することで移動装置32によりレーザ距離計26を移動させつつ、レーザ距離計26により鋼片12の端面12aまでの距離を逐次測定させ、走査範囲内において最短距離が検出された位置を鋼片12の端面12aの位置とする。上記走査範囲は、熱間ソー切断による端面曲がりやストッパ位置への搬送異常などによるばらつきを考慮して、検査対象の鋼片12の端面12aが必ず検出できる比較的狭い範囲として予め決定されている。具体的には、本実施例では、図4に示すSが走査範囲であり、この走査範囲Sの4隅において、鋼片12の端面12aまでの距離が測定される(なお、走査範囲Sの4隅以外の点においても、距離が測定されてもよい)。
【0031】
図4において2点差線で示す4つの端面12aは、それぞれ、正常位置に対して右上、右下、左上、左下に最もばらついた場合であり、走査範囲Sは、その4つの端面12aのいずれとも重なっているので、端面12aの位置のばらつきによらず、目的の端面12aにレーザ光が照射される。また、走査範囲S内において測定された距離のうちの最短距離が検出された位置を鋼片12の端面12aの位置とするので、鋼片12が曲がっているために、走査範囲Sの一部において鋼片12の側面までの距離が測定されたとしても、端面12aの位置を誤って検出してしまうことが少なくなる。
【0032】
続くSA3では、前記SA2で決定された鋼片12の端面12aの位置に基づいて、目的の鋼片12の端面12aまでの距離を決定する。このようにして目的の鋼片12の端面12aまでの距離を決定するので、SA2乃至SA3が端面距離決定手段に相当する。
【0033】
続くSA4では、フォーカス制御コントローラ44に制御信号を出力することで、エリアセンサカメラ28に備えられている光学レンズのフォーカスを、上記SA3で決定した距離に制御する。そして、続くSA5では、ズーム制御コントローラ46に制御信号を出力することにより光学ズーム機構52を制御して、エリアセンサカメラ28の光学レンズの視野fを、図5に例示するように、ストッパ56に当接させられている鋼片12の端面12aを十分に含むように予め定められた比較的広い視野に調整する。
【0034】
続くSA6では、画像の取り込み感度(露光時間)を、前記SA3で決定した距離に基づいて調整(決定)し、続くSA7では、エリアセンサカメラ28により、SA5において調整した視野fをSA6において決定した感度で撮像させ、その撮像した画像を取り込む。
【0035】
続くSA8はコード認識手段に相当し、上記SA7で読み込んだ画像から、パターンマッチングによりラベル16に記されている二次元コード58の切り出しシンボル60(図6参照)を認識する。図6は、鋼片12の端面12aの拡大図であり、上記切り出しシンボル60とは、正方形状の二次元コード58において、4隅のうちの3つの隅付近に記されている四角形状の図形であり、上記パターンマッチングとは、取り込んだ画像から予め登録(記憶)した切り出しシンボル60の図形を探し出すことである。なお、図5に示す例では、視野f内に、鋼片12の端面12aが2つ入っているので、2つの二次元コード58からそれぞれ切り出しシンボル60が認識可能であるが、このように、2つ(または、それ以上)の二次元コード58からそれぞれ切り出しシンボル60が認識できる場合には、ストッパ56に最も近い一群の切り出しシンボル60の位置を認識する。
【0036】
そして、続くSA9では、切り出しシンボル60があると認識したか否かを判断する。この判断が否定された場合には、後述するバックアップ処理ルーチン(図7)を実行する。なお、たとえば、前記SA2において検出した鋼片12の端面12aが、実際には、鋼片12の側面であった場合や、外乱によって鋼片12の端面12aまでの距離を誤って測定してしまった場合には、前記SA4においてピントを鋼片12の端面12aに適切に合わせることができないので、このSA9の判断が否定される。
【0037】
一方、SA9の判断が肯定された場合には、続くSA10において、前記SA8で認識した切り出しシンボル60の部分を抽出し、抽出したエリア内の最大輝度Bが所定の範囲内か否かを判断する。ここで、抽出したエリア内において最大輝度Bとなる部分は、切り出しシンボル60の外枠と中心との間にある白色部分であり、この部分の輝度Bが高すぎる場合には、二次元コード58全体が白くなってしまう。一方、この部分の輝度Bが低すぎる場合には、二次元コード58全体が黒くなってしまい、いずれの場合にも正確にコードの情報を読み取ることが困難となる。従って、このSA10の判断が否定された場合には、SA11において、上記最大輝度Bが所定範囲内になるように、取り込み感度、すなわち露光時間を変更した後、再度、SA7以降を実行して、画像の再取り込みを行う。
【0038】
一方、上記SA10の判断が肯定された場合には、続くSA12において、エリアセンサカメラ28の位置を、読み取るべき二次元コード58の重心に位置させる。すなわち、SA12では、前記SA8で認識した切り出しシンボル60の位置に基づいて、読み取るべき二次元コード58の重心を算出し、移動コントローラ42に制御信号を出力して、エリアセンサカメラ28をその位置に移動させる。
【0039】
続くSA13では、ズーム制御コントローラ46に制御信号を出力することにより光学ズーム機構52を制御して、エリアセンサカメラ28の光学レンズの視野fを、図6に例示するように、上記SA12で決定した二次元コード58の重心を中心とする狭い範囲とする。そして、続くSA14では、エリアセンサカメラ28により、SA13において調整した視野fをSA11において調整した感度(SA11を実行していない場合にはSA6で調整した感度)で撮像させる。なお、図3においては、SA4乃至SA7およびSA9乃至SA14が撮像制御手段に相当する。
【0040】
続くSA15では、その撮像させた画像に基づいて画像処理装置34により識別された二次元コード58の情報を読み取り、続くSA16では、その読み取った情報をプロセスコンピュータ38へ出力する。プロセスコンピュータ38は、その情報と予め記憶されているデータとを比較することで、鋼片12の搬送、停止を判断し、鋼片12の搬送、停止を指示する信号を演算装置36へ出力する。
【0041】
次に、前記SA9の判断が否定された場合に実行する、図7に示すバックアップ処理ルーチンを説明する。
【0042】
まず、SB1において、画像取り込み感度を最大に設定し、続くSB2において、ズーム制御コントローラ46に制御信号を出力することにより光学ズーム機構52を制御して、エリアセンサカメラ28の光学レンズの視野fを最大(すなわちズーム最小)に調整する。
【0043】
続くSB3では、エリアセンサカメラ28により、SB2において調整した視野fをSB1において設定した最大感度で撮像させ、その撮像した画像を取り込む。そして、続くSB4では、SB3において取り込んだ画像を二値化処理する。図8は、このSB4において二値化処理した画像の一例を示す図である。
【0044】
続くSB5では、上記SB4において二値化処理された画像において白色部分を特徴部分として抽出する。そして、続くSB6では、上記SB5において抽出ができたかどうかを判断する。この判断が否定された場合には、SB7において、材料(鋼片12)がないことを示す異常信号が制御シーケンサ40に出力され、制御シーケンサ40は、搬送制御コントローラ46に搬送機構54を停止させる信号を出力して、本ルーチンを終了する。
【0045】
一方、上記SB6の判断が肯定された場合には、続くSB8において、SB5で抽出した特徴部分、すなわち、白色部分の重心位置を求める重心演算処理を実行する。この演算処理により求められる重心位置は、ラベル16の重心位置を示している。なお、前記SB2においてズーム最小とされているので、SB3において取り込んだ画像には、複数のラベル16が入っている。そのため、SB5においても、複数のラベル16の白色部分が特徴部分として抽出されるが、このSB8では、図3のSA8と同様に、その複数抽出された特徴部分のうち、最もストッパ56に近い特徴部分の重心位置を算出する。
【0046】
続くSB9では、上記SB8で算出した重心位置にレーザ距離計26からのレーザ光が照射されるように、移動コントローラ42に制御信号を出力して移動装置32によりレーザ距離計26を移動させる。そして、続くSB10では、レーザ距離計26により、鋼片12の端面12aまでの距離を測定させる。
【0047】
続くSB11では、フォーカス制御コントローラ44に制御信号を出力することで、エリアセンサカメラ28に備えられている光学レンズのフォーカスを、上記SB10で測定した距離に制御する。そして、続くSB12では、移動コントローラ42に制御信号を出力して、エリアセンサカメラ28を前記SB8で求めたラベル16の重心位置に移動させる。
【0048】
続くSB13では、ズーム制御コントローラ46に制御信号を出力することにより光学ズーム機構52を制御して、エリアセンサカメラ28の光学レンズの視野fを、前記SB5で抽出した複数の特徴部分のうちで最もストッパ56に近い特徴部分(すなわち、最もストッパ56に近いラベル16)が収まる範囲で最も狭くなるように制御する。
【0049】
そして、続くSB14乃至SB16では、図3のSA14乃至SA16と同様の処理を実行することにより、二次元コード58の情報を読み取り、そして、その読み取った情報をプロセスコンピュータ38へ出力する。
【0050】
以上、説明したように、本実施例によれば、指向性の鋭いレーザ光を用いるレーザ距離計26により鋼片12の端面12aまでの距離が決定されるので、隣接する鋼片12に影響されることなく正確に目的の鋼片12の端面12aまでの距離が決定できる。従って、正確な二次元コード58の読み取りが可能となる。また、レーザ距離計26およびエリアセンサカメラ28は、移動装置32により鋼片12の端面12aに平行に二次元的に移動させられるのみであり、搬送台14方向へ移動不能とされているので、レーザ距離計26やエリアセンサカメラ28が鋼片12に衝突する恐れがない。また、レーザ距離計26は、二次元的に移動させられるのみであるので、三次元的に移動させられる場合に比較して、自動コード読取装置10がコンパクトになり、製造コストも抑えられ、しかも、距離測定のための移動が短時間で終了し、ひいては、二次元コード58の読み取りが短時間で終了する。
【0051】
また、本実施例では、SA8において認識された切り出しシンボル60の位置に基づいて、移動装置32および光学ズーム機構52により二次元コード58付近が拡大して撮像されるので、二次元コード58の読み取り精度がさらに向上する。
【0052】
また、本実施例では、ラベルに記されているコードとして、一部分が汚れにより判別不能であっても必要な情報を全て読み出すことが可能であるという特徴を有する公知の二次元コード58を用いているので、コードの読み取りが不可能となる場合が少なくなる。
【0053】
また、本実施例では、レーザ光の走査範囲Sが、検査対象の鋼片12の端面12aが必ず検出できる範囲に設定されていることから、その鋼片12の端面12aまでの距離の測定精度が一層向上する。従って、エリアセンサカメラ28の焦点をより精度よくその鋼片12の端面12aに合わせることができる。このことによっても、二次元コード58の読み取り精度が向上する。
【0054】
また、本実施例は、SA7で取り込んだ画像において、二次元コード58の切り出しシンボル60の白色部分の輝度が所定範囲外にある場合には、SA11において露光時間が補正された後に、再度、鋼片12の端面12aに貼り付けられたラベル16が撮像されることから、適切な輝度の画像に基づいて二次元コード58の読み取りを行うことができる。このことによっても、二次元コード58の読み取り精度が向上する。
【0055】
次に、本発明の第2実施例を説明する。図9は、図1とは別の自動コード読取装置70の概略構成を示す斜視図である。図9の自動コード読取装置70は、前述の実施例の移動装置32に代えて、水平回動機構72と垂直回動機構74からなる回動装置76が備えられている点において、前述の実施例と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0056】
図9に示す自動コード読取装置70は、下ケース78を備えており、その下ケース72内に前記水平回動機構72が収容されている。この水平回動機構72は、大ギヤ80、その大ギヤ80と噛み合う小ギヤ82、および、小ギヤ82を回転させる図示しないモータからなる。その大ギヤ74の中心に一端が固定された垂直軸84の他端には、外ケース86が固定されている。そのため、外ケース86は、水平回動機構72により水平面内(XZ平面内)で回動させられる。この外ケース80内には、X方向に平行な軸心C回りに外ケース86に対して相対回転可能に内ケース88が収容されている。この内ケース88は、水平回動機構78と同様な機構である前記垂直回動機構74により軸心C回りに駆動させられる。
【0057】
図9には図示しないが、この内ケース88には、第1実施例の収容ケース24と同様に、照明30、レーザ距離計26、エリアセンサカメラ28等が収容されている。
【0058】
この第2実施例も、第1実施例の場合と同様に、鋼片12の端面12aまでの距離の検出にレーザ距離計26を用いているため、正確なコードの読み取りが可能となり、また、移動装置32に代えてレーザ距離計26を回動させる回動装置76を用いている点において第1実施例の自動コード読取装置10と異なるが、回動装置76もレーザ距離計26を搬送台方向14へ移動するものではないので、鋼片12に衝突する恐れがない。また、レーザ距離計26が三次元的に移動させられる場合に比較して、装置がコンパクトになり、製造コストも抑えられ、しかも、撮像のための移動が短時間で終了し、ひいては、二次元コード58の読み取りが短時間で終了する。
【0059】
以上、本発明の一実施例を説明したが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0060】
たとえば、前述の実施例では、コードとして二次元コード58を用いている例を説明したが、コードとしてバーコードを用いてもよい。
【0061】
また、前述の実施例では、エリアセンサカメラ28はズーム機構を備えていたが、ズームをしなくても(すなわちコード部分を大きく撮像しなくても)コードの読み取り精度が十分な場合には、ズーム機構は備えていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明が適用された自動コード読取装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の自動コード読取装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】演算装置および制御シーケンサの制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図4】レーザ距離計の走査範囲Sを説明する図である。
【図5】エリアセンサカメラの視野fを説明する図である。
【図6】鋼片の端面の拡大図である。
【図7】図3のSA9が否定された場合に実行するバックアップ処理ルーチンを説明する図である。
【図8】図7のSB4において二値化処理した画像の一例を示す図である。
【図9】図1とは別の自動コード読取装置の概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
10:自動コード読取装置、 12:鋼片、 14:搬送台、 16:ラベル、 18:X方向移動テーブル、 22:Y方向移動テーブル、 26:レーザ距離計、 28:エリアセンサカメラ(撮像装置)、 32:移動装置、 58:二次元コード、 70:自動コード読取装置、 76:回動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送台上を順次搬送される鋼片の端面に貼り付けられたラベルを撮像して、該ラベルに記されたコードを自動的に読み取る自動コード読取装置であって、
前記搬送台方向へ移動不能とされた、前記ラベルを撮像するための撮像装置と、
前記鋼片の端面までの距離を計測するためのレーザ距離計と、
該レーザ距離計を、前記鋼片の端面に平行に二次元的に移動させる移動装置と、
該移動装置により前記レーザ距離計を所定の範囲内において移動させつつ該レーザ距離計から出力されるレーザ光を走査して、前記鋼片の端面までの距離を決定する端面距離決定手段と、
前記撮像装置の焦点を該端面距離決定手段により決定された鋼片の端面までの距離に合わせ、該撮像装置により該鋼片の端面に貼り付けられたラベルを撮像させる撮像制御手段と
を、含むことを特徴とする自動コード読取装置。
【請求項2】
搬送台上を順次搬送される鋼片の端面に貼り付けられたラベルを撮像して、該ラベルに記されたコードを自動的に読み取る自動コード読取装置であって、
前記搬送台方向へ移動不能とされた、前記ラベルを撮像するための撮像装置と、
前記鋼片の端面までの距離を計測するためのレーザ距離計と、
該レーザ距離計を回動させる回動装置と、
該回動装置により前記レーザ距離計を所定の範囲内において回動させつつ該レーザ距離計から出力されるレーザ光を走査して、前記鋼片の端面までの距離を決定する端面距離決定手段と、
前記撮像装置の焦点を該端面距離決定手段により決定された鋼片の端面までの距離に合わせ、該撮像装置により該鋼片の端面に貼り付けられたラベルを撮像させる撮像制御手段と
を、含むことを特徴とする自動コード読取装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、ズーム機構を備えるとともに、前記移動装置により移動可能とされており、
前記撮像制御手段は、前記撮像装置の焦点を前記端面距離決定手段により決定された鋼片の端面までの距離に合わせた後、該端面におけるコードの位置を決定し、前記移動装置により前記撮像装置の光軸を該決定したコード付近に合わせるとともに前記ズーム機構を制御することにより該コード付近を拡大して、前記ラベルの該コード付近を撮像させるものであることを特徴とする請求項1の自動コード読取装置。
【請求項4】
前記撮像装置は、ズーム機構を備えるとともに、前記回動装置により回動可能とされており、
前記撮像制御手段は、前記撮像装置の焦点を前記端面距離決定手段により決定された鋼片の端面までの距離に合わせた後、該端面におけるコードの位置を決定し、前記回動装置により前記撮像装置の光軸を該決定したコード付近に合わせるとともに前記ズーム機構を制御することにより該コード付近を拡大して、前記ラベルの該コード付近を撮像させるものであることを特徴とする請求項2の自動コード読取装置。
【請求項5】
前記ラベルに記されているコードが二次元コードであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかの自動コード読取装置。
【請求項6】
前記鋼片は、前記搬送台に設けられたストッパに当接して位置決めされるものであり、
前記端面距離決定手段は、該ストッパに当接した前記鋼片の端面位置のばらつきに拘わらず該端面が含まれる予め設定された範囲内において前記レーザ光を走査して、前記鋼片の端面までの距離を決定するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの自動コード読取装置。
【請求項7】
前記撮像装置により撮像された画像と、予め記憶されたコードの特徴部分の形状との比較に基づいて、前記ラベルに記されたコードを認識するコード認識手段をさらに含み、
前記撮像制御手段は、該コード認識手段により認識されたコードの所定部位の輝度が予め設定された所定範囲外である場合には、該部位の輝度が該所定範囲に入るように露光時間を補正した後、再度、前記撮像装置により前記鋼片の端面に貼り付けられたラベルを撮像させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかの自動コード読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−92263(P2006−92263A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276816(P2004−276816)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【出願人】(504360107)オーメックス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】