説明

自動二輪車の操作レバーの連結支持構造

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動二輪車の操作レバーの連結支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、図3に示すように、自動二輪車のハンドル端部に設けられるクラッチレバー105は、レバーホルダー103に形成された凹溝103aに嵌め込まれ、該クラッチレバー105の回動平面に直交するボルト106によってレバーホルダー103に回動自在に連結支持されている。
【0003】ところで、クラッチレバー105は不図示のワイヤーによって図3の矢印方向の力Fを受けるため、これのボルト挿通孔105aの内周面の一部(図3のA部分)に過大な摩擦力が作用し、この摩擦力がクラッチレバー105の円滑な回動を妨げる。特に、クラッチレバーの微妙な操作を必要とする半クラッチを多用する自動二輪車にあっては、クラッチレバーの円滑な作動が望まれる。
【0004】ところで、クラッチレバー等の操作レバーの回動を円滑にする目的で、レバーホルダーと操作レバーの間(図3に示す例では、レバーホルダー103とクラッチレバー105の上下面との間)に合成樹脂被膜等の摩擦低減部材を介在させる提案がなされている(実開昭51−162452号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記提案に係る技術によっても、図3に示すA部分に作用する摩擦力を効果的に低減させることは不可能であって、操作レバーには依然大きな摩擦力が作用してその円滑な作動が妨げられる。これを改善するものとして、操作レバーの基部に穿設した孔に2個のラジアルボールベアリングを嵌入し、基部を二股状のレバーホルダーの二股間に挿入し、ボルトを二股に穿設した孔とラジアルボールベアリングの内輪とに貫通し、操作レバーをラジアルボールベアリングを介してレバーホルダーに支持せしめる操作レバー装置が提案されている(実開昭60−62394号公報参照)。
【0006】上記提案に係る操作レバー装置によれば、摩擦力が低減するとともに、ボールベアリングの内外輪は操作レバーの孔とボルトの外周に隙間なく嵌合するため、ボルトの軸線方向にガタ付きを生じず、操作レバーを円滑に作動させることができる。
【0007】しかしながら、内外輪付きのボールベアリングは一般に高速回転にも耐えるよう製作されており、しかも、2個使用されるためにコスト的に不利である。又、自動二輪車のように操作レバーが外部に露出するものでは、いくらボールベアリングで摩擦力を小さくしても、侵入する埃や水による銹は作動を悪くするため、特殊仕様のシール付きボールベアリングを使用する必要があり、一層コストの増大を招くことになる。
【0008】本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、コストの増大を防ぎつつ操作レバーに作用する摩擦力を低減するとともに、ガタ付きや埃等の侵入を防いで操作レバーの円滑な作動を可能とする自動二輪車の操作レバーの連結支持構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、操作レバーの基部を、該操作レバーの回動平面に直交する軸によって回動自在にレバーホルダーに連結支持する自動二輪車の操作レバーの連結支持構造において、前記レバーホルダーに側方に開口する凹溝を形成して二股部を設け、該二股部の対向面の間に前記操作レバーの基部を嵌め込み、レバーホルダーの二股部に穿設された孔と操作レバーに穿設された挿通孔に前記軸を貫通せしめ、操作レバーの挿通孔と軸の外周との間に、操作レバーの基部よりも幅寸法の小さい内輪無し外輪両鍔付きニードルベアリングを1個嵌入するとともに、該ニードルベアリングの両鍔の外側面と該外側面にそれぞれ対向するレバーホルダーの二股部の対向面との間に、軸の外周に嵌合するOリングを介装し、該Oリングを軸の軸線方向に弾性変形させてニードルベアリングの両鍔の外側面とレバーホルダーの二股部の対向面及び軸の外周に当接させたことを特徴とする。
【0010】
【作用】本発明によれば、操作レバーは揺動するだけであるため、内輪無し外輪両鍔付きニードルベアリングを操作レバー基部の挿通孔と軸の外周との間に1個嵌入するだけで操作レバーの摩擦力を十分低減することができ、ボールベアリングを2個使用するものに比してコスト的に有利となる。又、Oリングを弾性変形させてこれをニードルベアリングの両鍔の外側面とレバーホルダーの二股部の対向面及び軸の外周に当接させたために摩擦力が増えたとしても、ニードルベアリングの作用によって操作レバーの円滑な回動が確保される。
【0011】そして、ニードルベアリングのニードルは軸に遊嵌されるために軸線方向に操作レバーのガタ付きを生じ易いが、本発明では、ニードルベアリングの両鍔の外側面とレバーホルダーの二股部の対向面との間に、軸の外周に嵌合するOリングを介装し、該Oリングを軸の軸線方向に弾性変形させてニードルベアリングの両鍔の外側面とレバーホルダーの二股部の対向面及び軸の外周に当接させたため、Oリングのダンパー作用とシール作用が同時に生じ、ダンパー作用によって操作レバーのガタ付きが防がれるとともに、シール作用によってニードルの転動面への埃や水の侵入が確実に防がれて操作レバーに高い作動安定性が確保される。尚、Oリングは汎用部材であって、その単価も小さいものである。
【0012】
【実施例】以下に本発明の一実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0013】図1は本発明に係るクラッチレバーの連結支持構造を示す断面図(図2のB−B線断面図)、図2は自動二輪車のクラッチレバー部の部分平面図である。
【0014】図2において、1は自動二輪車のハンドルであって、これの左端部にはライダーが把持すべきグリップ2が取り付けられている。そして、ハンドル1のグリップ2の内側にはレバーホルダー3がボルト4にて結着されている。
【0015】上記レバーホルダー3には、図1に示すように、側方に開口する凹溝3aが形成され、この凹溝3aによってレバーホルダー3には二股部3Aが形成されており、この二股部3Aの対向面3dの間(凹溝3a)にはクラッチレバー5の基部5Aが嵌め込まれている。そして、クラッチレバー5の基部5Aは、当該クラッチレバー5の回動平面に直交するボルト6によってレバーホルダー3に回動自在に連結支持されており、ボルト6の外周とクラッチレバー5の間には、クラッチレバー5の基部5Aよりも幅寸法の小さい内輪無し外輪両鍔付きニードルベアリング7が1個嵌入されている。そして、ボルト6は、レバーホルダー3に穿設された円孔3b及びクラッチレバー5に穿設されたボルト挿通孔5aを貫通し、更に、そのおねじ部6aはレバーホルダー3に形成されたねじ孔3cに螺合挿通し、おねじ部6aのレバーホルダー3の下面に突出する部分にはロックナット8が螺着されている。
【0016】そして、前記ニードルベアリング7は、ボルト6の外周とクラッチレバー5のボルト挿通孔5aとの間に嵌め込まれて設けられており、該ニードルベアリング7の両鍔の外側面と該外側面にそれぞれ対向するレバーホルダー3の二股部3Aの対向面との間には、ボルト6の外周に嵌合するOリング9がそれぞれ介装されている。そして、各Oリング9は、ボルト6の軸線方向に弾性変形せしめられ、ニードルベアリング7の両鍔の外側面とレバーホルダー3の二股部3Aの対向面及びボルト6の外周に当接されている。従って、Oリング9のシール作用に依ってニードルベアリング7内への埃等の異物の侵入が阻止され、更には同Oリング9のダンパー作用によってクラッチレバー5のガタ付きが防止される。
【0017】ところで、図2に示すように、クラッチレバー5には不図示の変速装置から導出するワイヤー10の端部が結着されており、変速操作に際してライダーがクラッチレバー5を把持してこれを図2の矢印方向に回動させれば、クラッチレバー5はワイヤー10によって引かれて図示矢印方向(ボルト6と直交する方向)の力Fを受ける。
【0018】然るに、本実施例では、前述のようにクラッチレバー5は、これを回動自在に枢着するボルト6の外周に設けられたニードルベアリング7を介して連結されているため、該クラッチレバー5に、ボルト6と直交する方向の力Fが作用しても、クラッチレバー5はニードルベアリング7の作用によってボルト6の回りに抵抗なく回動し得ることとなり、半クラッチを多用する自動二輪車1には好都合である。
【0019】ところで、クラッチレバー5はボルト6を中心として揺動(回動)するだけであるため、内輪無し外輪両鍔付きニードルベアリング7をクラッチレバー5のボルト挿通孔5aとボルト6の外周との間に1個嵌入するだけでクラッチレバー5の摩擦力を十分低減することができ、ボールベアリングを2個使用するものに比してコスト的に有利となる。
【0020】ここで、ニードルベアリング7のニードルはボルト6に遊嵌されるために軸線方向にクラッチレバー5ーのガタ付きを生じ易いが、本実施例では、ニードルベアリング7の両鍔の外側面とレバーホルダー3の二股部3Aの対向面3dとの間に、ボルト6の外周に嵌合するOリング9を介装し、該Oリング9をボルト6の軸線方向に弾性変形させてニードルベアリング7の両鍔の外側面とレバーホルダー3の二股部3Aの対向面3d及びボルト6の外周に当接させたため、Oリング9のダンパー作用とシール作用が同時に生じ、前述のようにOリング9のダンパー作用によってクラッチレバー5のガタ付きが防がれるとともに、シール作用によってニードルの転動面への埃や水の侵入が確実に防がれてクラッチレバー5に高い作動安定性が確保される。尚、Oリング9は汎用部材であって、その単価も小さいものである。
【0021】尚、図示しないが、ハンドル1の反対側(右端部)に設けられるブレーキレバーに対しても本発明構造を適用すれば、上記と同様の効果が得られることは勿論である。
【0022】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明によれば、操作レバーの基部を、該操作レバーの回動平面に直交する軸によって回動自在にレバーホルダーに連結支持する自動二輪車の操作レバーの連結支持構造において、前記レバーホルダーに側方に開口する凹溝を形成して二股部を設け、該二股部の対向面の間に前記操作レバーの基部を嵌め込み、レバーホルダーの二股部に穿設された孔と操作レバーに穿設された挿通孔に前記軸を貫通せしめ、操作レバーの挿通孔と軸の外周との間に、操作レバーの基部よりも幅寸法の小さい内輪無し外輪両鍔付きニードルベアリングを1個嵌入するとともに、該ニードルベアリングの両鍔の外側面と該外側面にそれぞれ対向するレバーホルダーの二股部の対向面との間に、軸の外周に嵌合するOリングを介装し、該Oリングを軸の軸線方向に弾性変形させてニードルベアリングの両鍔の外側面とレバーホルダーの二股部の対向面及び軸の外周に当接させたため、コストの増大を防ぎつつ操作レバーに作用する摩擦力を低減するとともに、ガタ付きや埃等の侵入を防いで操作レバーの円滑な作動を確保することができるという効果が得られる。又、Oリングを弾性変形させてこれをニードルベアリングの両鍔の外側面とレバーホルダーの二股部の対向面及び軸の外周に当接させたために摩擦力が増えたとしても、ニードルベアリングの作用によって操作レバーの円滑な回動が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクラッチレバーの連結支都構造を示す断面図(図2のB−B線断面図)である。
【図2】自動二輪車のクラッチレバー部の部分平面図である。
【図3】クラッチレバーの連結支持構造の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 自動二輪車
3 レバーホルダー
3A 二股部
3a 凹溝
3b 円孔(孔)
3d 対向面
5 クラッチレバー(操作レバー)
5A クラッチレバー基部
5a ボルト挿通孔(挿通孔)
6 ボルト(軸)
7 内輪無し外輪両鍔付きニードルベアリング
9 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】 操作レバーの基部を、該操作レバーの回動平面に直交する軸によって回動自在にレバーホルダーに連結支持する自動二輪車の操作レバーの連結支持構造において、前記レバーホルダーに側方に開口する凹溝を形成して二股部を設け、該二股部の対向面の間に前記操作レバーの基部を嵌め込み、レバーホルダーの二股部に穿設された孔と操作レバーに穿設された挿通孔に前記軸を貫通せしめ、操作レバーの挿通孔と軸の外周との間に、操作レバーの基部よりも幅寸法の小さい内輪無し外輪両鍔付きニードルベアリングを1個嵌入するとともに、該ニードルベアリングの両鍔の外側面と該外側面にそれぞれ対向するレバーホルダーの二股部の対向面との間に、軸の外周に嵌合するOリングを介装し、該Oリングを軸の軸線方向に弾性変形させてニードルベアリングの両鍔の外側面とレバーホルダーの二股部の対向面及び軸の外周に当接させたことを特徴とする自動二輪車の操作レバーの連結支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3259231号(P3259231)
【登録日】平成13年12月14日(2001.12.14)
【発行日】平成14年2月25日(2002.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−281974
【出願日】平成3年10月3日(1991.10.3)
【公開番号】特開平5−92792
【公開日】平成5年4月16日(1993.4.16)
【審査請求日】平成10年9月30日(1998.9.30)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【参考文献】
【文献】実開 昭51−162452(JP,U)
【文献】実開 昭60−62394(JP,U)