説明

自動二輪車駐車システム

【課題】利用者の安全性に優れ、重量を軽減できると共に剛性が高く、自動二輪車を簡単に駐車できる自動二輪車駐車システムを提供する。
【解決手段】建物s内に複数個の車両用パレット52を格納し、各車両用パレット52に自動車を駐車させる駐車システム51において、車両用パレット52上に自動二輪車mを駐車するための自動二輪車駐車ゾーンz1,z2を形成し、自動二輪車駐車ゾーンz1,z2上に、自動二輪車mの前輪fを係留するための係留ホルダ部3を搬入・搬出方向に移動自在に設けると共に、係留ホルダ部3の搬入・搬出時、自動二輪車駐車ゾーンz1,z2上を自動二輪車mの後輪bが回転するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内に複数個の車両用パレットを格納し、各車両用パレットに自動車を駐車させる駐車システムに係り、特に、自動二輪車を車両用パレットに駐車するための自動二輪車駐車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物内に複数個の車両用パレットを格納し、各車両用パレットに自動車を駐車させる立体駐車設備としては、建物外の搬入搬出ゾーンに臨む建物内に車両用パレットを配置し、この車両用パレット上に乗り入れた自動車を車両用パレットごと昇降装置で昇降させたのち所定の格納位置に横行させるエレベータ方式の立体駐車設備や、建物内で垂直循環する無端チェーンに車両用パレットを備えたケージを吊り下げる垂直循環方式の立体駐車設備がある。
【0003】
図6に示すように、本発明者らは先に、上述の立体駐車設備の車両用パレット72上に自動二輪車専用パレット73を搬入・搬出方向にスライド移動自在に設け、自動二輪車専用パレット73上に自動二輪車mを格納して駐車できるようにした駐車システム(未公開)71を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−242278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この駐車システムは、自動二輪車専用パレット上にバイク全体を乗り込ませ、前論、後輪、車体を固定するものであった。このため、自動二輪車専用パレットが大きくなって重量が過大となり、使用が困難になるだけでなく、自重から発生するモーメントから剛性が不足し、耐えられなくなり、自動二輪車専用パレットのパレットフレームに歪が発生する原因ともなった。
【0006】
また、自動二輪車全体を車両用パレットより一段高い自動二輪車専用パレット上に載せるものであるため、自動二輪車の乗降や搬入・搬出作業が不安定になりやすく、パレットフレームに歪が発生すると、さらに不安定になりやすいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、利用者の安全性に優れ、装置重量を軽減できると共に剛性が高く、自動二輪車を簡単に駐車できる自動二輪車駐車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、建物内に複数個の車両用パレットを格納し、各車両用パレットに自動車を駐車させる駐車システムにおいて、上記車両用パレット上に自動二輪車を駐車するための自動二輪車駐車ゾーンを形成し、その自動二輪車駐車ゾーン上に、自動二輪車の前輪を係留するための係留ホルダ部を搬入・搬出方向に移動自在に設けると共に、該係留ホルダ部の搬入・搬出時、上記自動二輪車駐車ゾーン上を自動二輪車の後輪が回転するように構成した自動二輪車駐車システムである。
【0009】
上記車両用パレット上には、上記搬入・搬出方向に延び上記係留ホルダ部を走行させるためのレールが設けられ、上記係留ホルダ部が、駐車される自動二輪車の前輪を載置するための係留台と、該係留台に設けられ上記レールに沿って走行する走行輪とを備えるとよい。
【0010】
上記係留ホルダ部は、上記係留台に設けられ係留台を搬入・搬出方向に移動させるためのハンドルを備えるとよい。
【0011】
上記係留ホルダ部には、係留ホルダ部を上記車両用パレットに対して施錠・解除するためのロック機構が設けられるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、利用者の安全性に優れ、装置重量を軽減できると共に剛性を高くでき、自動二輪車を簡単に駐車できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の好適実施の形態を示す自動二輪車駐車システムの平面図、図1(b)はその側面図である。
【図2】図1に示した自動二輪車駐車システムの正面図である。
【図3】図1の3A−3A線断面図である
【図4】図4は垂直循環方式の立体駐車設備の正面断面図である。
【図5】図5はエレベータ方式の立体駐車設備の正面断面図である。
【図6】図6は自動二輪車専用パレットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0015】
図4に示すように、駐車システム51は、建物s内に複数個の車両用パレット52を格納し、建物s外の搬入搬出ゾーンから各車両用パレット52に自動車を駐車させるものである。駐車システム51は、建物s内に上下に離間して設けられたスプロケット(図示せず)に無端チェーン53を巻回し、無端チェーン53に複数のケージ54を取り付けると共にケージ54の下部に車両用パレット52を形成した垂直循環方式の機械式立体駐車設備からなる。
【0016】
図4及び図1に示すように、建物sの地上階には、車両用の出入口55が形成されると共に車両用パレット52上に車両を入出庫するための入出庫部eが形成される。出入口55に臨む屋外には、入出庫部eに車両を搬入、または、入出庫部eから車両を搬出するための搬入搬出ゾーンz12が形成されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、自動二輪車駐車システム35は、車両用パレット52上に自動二輪車mを駐車するための自動二輪車駐車ゾーンz1、z2を形成し、自動二輪車駐車ゾーンz1、z2上に、自動二輪車mの前輪fを係留するための係留ホルダ部3を搬入・搬出方向に移動自在に設けると共に、係留ホルダ部3の搬入・搬出時、自動二輪車駐車ゾーンz1、z2上を自動二輪車mの後輪bが回転するように構成してなる。自動二輪車駐車ゾーンz1、z2は、車両用パレット52の左右両側の自動車車輪用の溝26上に搬入・搬出方向に延びて形成されている。また、自動二輪車駐車ゾーンz1、z2上には、搬入・搬出方向に延びるレール27が設けられており、レール27に沿って係留ホルダ部3を走行させるようになっている。レール27は、後述する走行輪6を走行させるための走行レール部4と、係留ホルダ部3の走行方向を搬入・搬出方向に規制するためのガイドレール部5とからなる。ガイドレール部5は、搬入・搬出方向に延びると共に上方に延びるように車両用パレット52上に設けられている。
【0018】
図1及び図3に示すように、係留ホルダ部3は、駐車される自動二輪車mの前輪fを載置するための平面視矩形状の係留台10と、係留台10上の幅方向中央に設けられ自動二輪車mの前輪fを前後左右方向に動かないように保持すると共に自動二輪車mを車両用パレット52に対して垂直に保持するホルダースタンド8と、係留台10に設けられ走行レール部4上を走行する走行輪6と、係留台10に設けられガイドレール部5の左右両側に係合するガイド輪7と、ホルダースタンド8より搬入方向前方の係留台10に起立して設けられ搬入方向又は搬出方向に押し引きすることで係留台10を搬入・搬出方向に移動させるハンドル11とを備える。走行輪6は、係留台10の左右両側に搬入・搬出方向に沿って複数配設されており、自動二輪車mの前輪fが係留台10上を走行しても安定して姿勢を保つようになっている。
【0019】
また、係留ホルダ部3の搬入搬出ゾーンz12側の端部には、自動二輪車mの前輪fを係留ホルダ部3に案内するためのフラップ板9が搬入・搬出方向に延出されると共に、上下方向に回動自在に枢支されて連結されている。フラップ板9には、図示しないバネで下方に弾発付勢されるフラップ用ローラー20が揺動可能に設けられており、バネの力でフラップ板9が自動二輪車駐車ゾーンz1、z2又は搬入搬出ゾーンz12から浮上するようになっている。
【0020】
また、係留ホルダ部3には、係留ホルダ部3を車両用パレット52に対して施錠・解除するためのロック機構12が設けられている。ロック機構12は、車両用パレット52に上方に突起して設けられた突起部36と、係留台10に回動可能に設けられ突起部36に係脱可能に係止されるストッパ部材14と、ストッパ部材14を突起部36に係止する位置と突起部36から離脱する位置とに回動させる操作部37とを備えて構成される。操作部37は、ハンドル11に設けられた解除レバー13と、解除レバー13の動作をストッパ部材14に伝達するワイヤー15とを備える。突起部36は、係留ホルダ部3が搬入搬出ゾーンz12上に引き出されたときストッパ部材14に係合する位置と、係留ホルダ部3が自動二輪車駐車ゾーンz1、z2の所定の位置に移動されたときストッパ部材14に係合する位置とにそれぞれ配置されている。
【0021】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0022】
自動二輪車駐車システム35に自動二輪車mを駐車する場合、利用者は入出庫部e内に入り、空の係留ホルダ部3のハンドル11を搬出方向に引く。係留ホルダ部3はレール27に沿って走行し、搬入搬出ゾーンz12上に引き出される。係留ホルダ部3が自動二輪車駐車ゾーンz1、z2の所定の位置に移動されるとロック機構12のストッパ部材14が突起部36に係止され、係留ホルダ部3の移動がロックされる。
【0023】
この後、利用者が自動二輪車mのハンドルを手押しして搬入搬出ゾーンz12から係留ホルダ部3へ向けて走行させると、自動二輪車mの前輪fがフラップ板9の先端を押し下げ、搬入搬出ゾーンz12と係留ホルダ部3との間にフラップ板9からなるスロープが形成される。自動二輪車mをさらに押すことで前輪fはフラップ板9上を走行して係留ホルダ部3上に乗り、ホルダースタンド8に前後左右に動かないように保持されると共に自動二輪車mを車両用パレット52に対して垂直に保持される。このとき、係留ホルダ部3はロック機構12により移動をロックされているため、自動二輪車mの前輪fに押されて動くことはない。また、係留ホルダ部3上に乗るのは前輪fのみであり、後輪bは搬入搬出ゾーンz12上を走行するのみであるため、自動二輪車mの重心が極端に高くなることはなく、自動二輪車mを安定して手押しすることができる。
【0024】
この後、利用者が解除レバー13を操作してロック機構12によるロックを解除し、係留ホルダ部3のハンドル11を搬入方向に手押しすることで係留ホルダ部3がレール27に沿って搬入方向に走行すると共に自動二輪車mの後輪bが係留ホルダ部3に追従して走行し、自動二輪車mが車両用パレット52の自動二輪車駐車ゾーンz1、z2に入庫される。
【0025】
自動二輪車駐車システム35から自動二輪車mを搬出する場合、上述と同様の手順で車両用パレット52上の係留ホルダ部3を搬入搬出ゾーンz12上に引き出したのち、自動二輪車mのハンドルを搬出方向に引いて自動二輪車mを後退させる。後輪bは搬入搬出ゾーンz12上を走行するため、自動二輪車mの重心は極端に高くはなく、自動二輪車mを安定して後退できる。
【0026】
このように、車両用パレット52上に自動二輪車mを駐車するための自動二輪車駐車ゾーンz1、z2を形成し、自動二輪車駐車ゾーンz1、z2上に、自動二輪車mの前輪fを係留するための係留ホルダ部3を搬入・搬出方向に移動自在に設けると共に、係留ホルダ部3の搬入・搬出時、自動二輪車駐車ゾーンz1、z2上を自動二輪車mの後輪bが回転するように構成したため、自動二輪車mの後輪bを乗せない分だけ自動二輪車駐車システム35を小型化できると共に重量を軽減できる。そして、自動二輪車mが載る部分を小型化できるため、係留ホルダ部3が自重で歪むのを防ぐことができ、十分な剛性にできる。また、自動二輪車mの重心が極端に高くなるのを防ぐことができ、自動二輪車駐車システム35に自動二輪車mを安定して安全に、かつ、簡単に駐車できる。
【0027】
車両用パレット52上には、搬入・搬出方向に延び係留ホルダ部3を走行させるためのレール27が設けられ、係留ホルダ部3が、駐車される自動二輪車mの前輪fを載置するための係留台10と、係留台10に設けられレール27に沿って走行する走行輪6とを備えるものとしたため、係留ホルダ部3を安定して搬入・搬出方向に走行できると共に、自動二輪車mを確実に車両用パレット52上の所定の位置に搬入できる。
【0028】
係留ホルダ部3は、係留台10に設けられ係留台10を搬入・搬出方向に移動させるためのハンドル11を備えるものとしたため、係留ホルダ部3の移動を容易にできる。
【0029】
また、係留ホルダ部3には、係留ホルダ部3を車両用パレット52に対して施錠・解除するためのロック機構12が設けられるものとしたため、係留ホルダ部3に自動二輪車mの前輪fを乗降させるとき係留ホルダ部3を停止させておくことができ、自動二輪車駐車システム35に自動二輪車mを簡単に駐車できる。
【0030】
なお、駐車システム51が垂直循環方式の機械式立体駐車設備である場合について説明したがこれに限るものではない。図5に示すように、駐車システム61は建物s内に形成され車両用パレット52を昇降させるための昇降路64と、昇降路64に沿って複数段に設けられ車両用パレット52を格納するための格納棚65とを備えたエレベータ方式の機械式立体駐車設備(エレベータパーキング)であってもよく、地下式、二多段式の機械式駐車場等の他のタイプのものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
3 係留ホルダ部
6 走行輪
10 係留台
12 ロック機構
27 レール
35 自動二輪車駐車システム
51 駐車システム
52 車両用パレット
s 建物
m 自動二輪車
f 前輪
b 後輪
z1 自動二輪車駐車ゾーン
z2 自動二輪車駐車ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に複数個の車両用パレットを格納し、各車両用パレットに自動車を駐車させる駐車システムにおいて、上記車両用パレット上に自動二輪車を駐車するための自動二輪車駐車ゾーンを形成し、その自動二輪車駐車ゾーン上に、自動二輪車の前輪を係留するための係留ホルダ部を搬入・搬出方向に移動自在に設けると共に、該係留ホルダ部の搬入・搬出時、上記自動二輪車駐車ゾーン上を自動二輪車の後輪が回転するように構成したことを特徴とする自動二輪車駐車システム。
【請求項2】
上記車両用パレット上には、上記搬入・搬出方向に延び上記係留ホルダ部を走行させるためのレールが設けられ、上記係留ホルダ部が、駐車される自動二輪車の前輪を載置するための係留台と、該係留台に設けられ上記レールに沿って走行する走行輪とを備える請求項1記載の自動二輪車駐車システム。
【請求項3】
上記係留ホルダ部は、上記係留台に設けられ係留台を搬入・搬出方向に移動させるためのハンドルを備えた請求項2記載の自動二輪車駐車システム。
【請求項4】
上記係留ホルダ部には、係留ホルダ部を上記車両用パレットに対して施錠・解除するためのロック機構が設けられた請求項2又は3記載の自動二輪車駐車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157758(P2011−157758A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21383(P2010−21383)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【出願人】(000227043)日精株式会社 (68)
【出願人】(000228523)日本ケーブル株式会社 (96)
【出願人】(598117975)株式会社ワイズギア (18)