説明

自動倉庫用移動装置

【課題】一対の駆動ベルトのテンション調整を、簡易な構成でかつ簡易な調整作業で行えるようにすること。
【解決手段】昇降移動装置50は、物品の移動経路に沿って移動可能に支持された可動部と、移動経路を周回するように配設され、可動部を移動経路に沿って移動させる一対の駆動ベルト60と、移動経路の一端部で一対の駆動ベルト60を周回走行可能に支持する上側支持部70と、移動経路の他端部で一対の駆動ベルト60を周回走行可能に支持する下側支持部68とを備える。上側支持部70は、相互に偏心する一対の副軸部74A、74Bを有する軸部72と、一対の副軸部74A、74Bのそれぞれに回転可能に支持され、一対の駆動ベルト60が巻掛けられる一対の上側プーリー80A、80Bと、一対の上側プーリー80A、80Bを回転可能に支持する軸部支持部材90と、軸部72を一定の回転位置に位置決めした状態で支持するねじ96とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動倉庫において物品を移動させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫における昇降装置として、特許文献1に開示のものがある。
【0003】
特許文献1に開示の昇降装置では、マストの上端部に取付けられたアッパープーリーとマストの下端部に取付けられたロアプーリーとに、ループ状のタイミングベルトが巻き掛けられている。また、昇降移動可能な荷台がタイミングベルトに固定されている。そして、昇降用モータによってタイミングベルトを回転駆動させることによって、荷台が昇降駆動されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−84006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような昇降装置において、タイミングベルトの切断時等における動作不具合を抑制するためには、上記タイミングベルトを一対設け、一対のタイミングベルトを同期駆動させて荷台を昇降駆動させるとよい。
【0006】
ところが一対のタイミングベルトによって荷台を昇降駆動させる際には、一対のタイミングベルトが荷台に対してなるべく均等に移動力を及すことができるように、一対のタイミングベルトに対して、なるべく同じテンションが加わるように調整する必要がある。
【0007】
そのためのテンションの調整機構としては、例えば、プーリーを回転可能に支持するブラケットに長孔を形成し、この長孔にねじを挿通させてねじ締め固定する構成を、一対のタイミングベルトそれぞれに適用すること等が考えられる。この場合、一対のタイミングベルトそれぞれのテンションが一定となるように、一対のプーリーの位置を調整してねじ締め固定することとなる。
【0008】
ところがこの場合、一対のタイミングベルトに対応するそれぞれのプーリーに対して別々に上記調整機構を組込む必要があり、構成が複雑化する。しかも、一対のタイミングベルトのテンションのバランスを取るように、一対の調整機構の双方で調整作業を行う必要があるため、テンション調整作業が複雑化する。
【0009】
そこで、本発明は、自動倉庫用移動装置に設けられた一対の環状走行部材のテンション調整を、簡易な構成でかつ簡易な調整作業で行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の態様は、自動倉庫において物品を移動させる自動倉庫用移動装置であって、物品の移動経路に沿って移動可能に支持された可動部と、前記移動経路を周回するように配設され、前記可動部を前記移動経路に沿って移動させる一対の周回走行部材と、前記移動経路の一端部で、前記一対の周回走行部材を周回走行可能に支持する第1支持部と、前記移動経路の他端部で、前記一対の周回走行部材を周回走行可能に支持する第2支持部とを備え、前記第1支持部及び前記第2支持部のうちの少なくとも一方が、相互に偏心する一対の副軸部を有する軸部と、前記一対の副軸部のそれぞれに回転可能に支持され、前記一対の周回走行部材が巻掛けられる一対の巻掛部材と、前記軸部を回転可能に支持する軸部支持部材と、前記軸部を一定の回転位置に位置決めした状態で支持する回転位置決め部材とを有する。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係る自動倉庫用移動装置であって、前記一対の副軸部の回転軸の両方が、前記軸部の中心軸に対して偏心している。
【0012】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る自動倉庫用移動装置であって、前記軸部支持部材は、前記軸部の端部を回転可能に挿入可能な軸部支持穴部を有する一対の側方支持部を有し、前記回転位置決め部材は、前記一対の側方支持部の少なくとも一方側の外周側から前記軸部支持穴部に向けてねじ込み可能で、かつ、ねじ込まれた状態で前記軸部のうち前記軸部支持穴部に挿入された部分に当接して前記軸部を一定の回転位置に位置決めするねじとを有する。
【0013】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つに記載の自動倉庫用移動装置であって、前記軸部のうち前記一対の副軸部間の部分が、非円形断面形状に形成されている。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様によると、一対の副軸部が相互に偏心しているため、軸部を回転させると一対の副軸部及び一対の巻掛部材の相対的な位置が変る。これにより、一対の巻掛部材に巻掛けられた周回走行部材のテンションが変る。これにより、一対の周回走行部材のテンション調整を、簡易な構成でかつ簡易な調整作業で行える。
【0015】
第2の態様によると、軸部を回転させると、一対の副軸部がそれぞれ異なる方向に移動するため、テンション調整をより容易に行える。
【0016】
第3の態様によると、ねじを緩めることで、軸部が回転可能に支持され、ねじをねじ込むことで、軸部が一定の回転位置に位置決めされる。これにより、一対の環状走行部材のテンション調整を容易に行える。
【0017】
第4の態様によると、前記軸部のうち前記一対の副軸部間の部分が、非円形断面形状に形成されているため、当該非円形断面形状部分を利用して軸部を容易に回転させて、一対の環状走行部材のテンション調整を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】自動倉庫に対して物品を搬出入する部分を示す概略斜視図である。
【図2】自動倉庫の格納棚及び移動台車を示す一部破断概略斜視図である。
【図3】昇降移動装置を示す概略側面図である。
【図4】昇降移動装置を示す概略背面図である。
【図5】上側支持部を示す側面図である。
【図6】上側支持部を示す正面図である。
【図7】図5のVII−VII線断面図である。
【図8】図5のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図5のIX−IX線における断面形状を示す図である。
【図10】テンション調整作業を説明するための図である。
【図11】テンション調整作業を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係る自動倉庫用移動装置について説明する。ここでは、移動装置を、物品を昇降移動させる昇降移動装置に適用した例で説明する。
【0020】
<自動倉庫の全体構成>
まず、自動倉庫の全体構成について説明する。図1は自動倉庫10に対して物品を搬出入する部分を示す概略斜視図であり、図2は自動倉庫10の格納棚20及び移動台車30を示す一部破断概略斜視図である。
【0021】
この自動倉庫10は、格納棚20と移動台車30と仮置き棚40と昇降移動装置50と入出庫コンベア46とを備えている。概略的には、外部からの物品Wは、入出庫コンベア46、昇降移動装置50、仮置き棚40から移動台車30を経て格納棚20に格納される。また、格納棚20に格納された物品Wは、上記とは逆に、移動台車30から仮置き棚40、昇降移動装置50及び入出庫コンベア46を経て外部に搬出される。
【0022】
より具体的には、格納棚20は、間隔を有して一対設けられている。格納棚20が一対設けられていることは必須ではなく、1つであってもよい。格納棚20は、上下方向に間隔をあけて複数の棚段22を有している。ここでは、各棚段22は、縦フレーム24等によって上下方向に等間隔で支持されている。各棚段22には、物品が載置支持されるようになっている。また、それぞれの棚段22間に、移動台車30が走行可能な走行レール28が設けられている。
【0023】
移動台車30は、上記各棚段22に対応して複数設けられている。各移動台車30は、平面視略方形状の台車本体部32と、台車本体部32に設けられた車輪33とを有している。そして、走行レール28上に車輪33を配設した状態で、図示省略のモータ等によって車輪33を回転駆動させることによって、移動台車30が走行レール28上を走行して、対応する棚段22と仮置き棚40との間を往復水平移動するようになっている。
【0024】
また、この移動台車30には、対応する棚段22及び仮置き棚40に対して物品Wを取込み及び送込み可能なピッキング装置34が搭載されている。ピッキング装置34としては、例えば、棚段22及び仮置き棚40に対して出退可能なアームの先端部に物品Wに引っかけ及び当接可能な爪部を設けた構成を採用することができる。このピッキング装置34では、アーム部を棚段22或は仮置き棚40に対して進出させた状態で、爪部を物品Wに引っかけた後、アームを退避移動させることで物品Wを台車本体部32に取込むように移動させることができる。また、爪部を物品Wに当接させた状態で、アーム部を棚段22或は仮置き棚40に対して進出させることで、当該物品Wを棚段22或は仮置き棚40に押込移動させることができる。移動台車30と棚段22或は仮置き棚40間において物品Wの移動を行う構成は、上記の他、フォーク状の歯等で物品Wを持上げて移動させる構成等であってもよい。
【0025】
仮置き棚40は、上記格納棚20の一端部に隣設されている。ここでは、一対の格納棚20のそれぞれに対応して仮置き棚40が一対設けられている。仮置き棚40は、上記各棚段22に対応して設けられた仮置き棚段42を有している。仮置き棚段42は、対応する棚段22と同じ高さ位置に設けられており、仮置き棚段42とこれに対応する棚段22との間で、移動台車30によって物品Wが移載されるようになっている。また、各仮置き棚段42は、昇降移動装置50の昇降テーブル52(後述する)との間で物品Wを授受可能に構成されている。仮置き棚段42と昇降テーブル52との間における物品Wの授受は、例えば、仮置き棚段42及び昇降テーブル52のそれぞれに、複数のローラを並列状に設け、図示省略のモータによって各ローラを回転駆動させることで、載置された物品Wを、仮置き棚段42から昇降テーブル52に向けて或はその逆に搬送する構成等を採用することができる。その他、別途設けられたプッシャー等で物品Wを押して、仮置き棚段42と昇降テーブル52との間で当該物品Wを移動させる構成等であってもよい。また、本仮置き棚40が省略され、移動台車30と昇降テーブル52との間で直接的に物品Wの授受が行われてもよい。
【0026】
昇降移動装置50は、物品Wを昇降移動させる装置である。ここでは、一対の格納棚20のそれぞれの外側方位置、より具体的には、一対の仮置き棚40と一対の入出庫コンベア46との各間に設けられている。この昇降移動装置50は、各仮置き棚段42に対応する位置と入出庫コンベア46に対応する位置との間で昇降移動可能な可動部として昇降テーブル52を有している。そして、昇降テーブル52がいずれかの仮置き棚段42に対応する位置に移動した状態で、仮置き棚段42と昇降テーブルとの間で物品Wが授受されるように構成されている。さらに、昇降テーブル52が入出庫コンベア46に対応する位置に移動した状態で、昇降テーブル52と入出庫コンベア46との間で物品Wが授受されるように構成されている。
【0027】
昇降テーブル52と入出庫コンベア46との間における物品Wの授受は、例えば、上記したのと同様に、仮置き棚段42及び入出庫コンベア46のそれぞれに、複数のローラを並列状に設け、図示省略のモータによって各ローラを回転駆動させることで、載置された物品Wを、仮置き棚段42から入出庫コンベア46に向けて或はその逆に搬送する構成等を採用することができる。その他、別途設けられたプッシャー等で物品Wを押して当該物品Wを移動させる構成等であってもよい。
【0028】
この昇降移動装置50については、さらに後に詳述する。
【0029】
入出庫コンベア46は、昇降移動装置50の外側側方位置からさらに外方に向けて線状に延びるように設けられており、昇降移動装置50と外部との間で物品Wを水平方向に沿った線状の搬送経路に沿って移動させるように構成されている。かかる入出庫コンベア46としては、例えば、並列状に設けられた複数のローラは、図示省略のモータによって回転駆動させることで、載置された物品Wを線状に移動させる構成を採用することができる。入出庫コンベア46は、当該構成に限られず、いわゆるベルトコンベア等であってもよい。また、入出庫コンベア46が、上下2段に設けられていてもよい(図1の2点鎖線で示す入出庫コンベア46B参照)。さらに、入出庫コンベア46が省略され、昇降テーブル52と人手或は別途設けられたテーブルとの間で直接的に物品Wが授受される構成であってもよい。
【0030】
この自動倉庫10は、図示省略の制御ユニットによる制御下、次の格納動作を行う。
【0031】
すなわち、外部からの物品Wを、入出庫コンベア46を通じて昇降移動装置50に向けて搬送する。そして、昇降テーブル52を入出庫コンベア46に対応する高さ位置に移動させた状態で、入出庫コンベア46から昇降テーブル52に物品Wを移載する。この後、昇降テーブル52を、空き格納箇所のうちから選択された格納対象箇所に対応する棚段22に対応する位置に昇降移動させる。そして、昇降テーブル52から仮置き棚段42に物品Wを移載する。この後、移動台車30が仮置き棚段42から物品Wを取込み、移動台車30が格納対象箇所に向けて走行移動する。そして、移動台車30から棚段22の格納対象箇所に向けて物品Wを送込む。これにより、物品Wの格納動作が収容する。なお、物品Wの格納位置は、物品Wを格納する際に、当該物品Wに付与された識別符号と格納棚20における格納位置とを対応付けたテーブルを作成しておくことと等で、管理されている。
【0032】
また、物品Wの取出動作は、次のようにして行われる。
【0033】
すなわち、取出対象として指定された物品Wが存在する棚段22に対応する移動台車30を走行移動させて、当該移動台車30を取出対象として指定された物品W前に移動させる。そして、移動台車30は、棚段22から物品Wを取込んだ後、仮置き棚段42に向けて走行移動する。この後、移動台車30から仮置き棚段42に向けて物品Wを送込む。また、この仮置き棚段42と対応する高さ位置に、昇降テーブル52を昇降移動させ、仮置き棚段42から昇降テーブル52に物品Wを移載する。この後、昇降テーブル52を入出庫コンベア46に対応する高さ位置に昇降移動させ、物品Wを昇降テーブル52から入出庫コンベア46に向けて移載する。入出庫コンベア46に移載された物品Wは、入出庫コンベア46によって外部に向けて搬送される。
【0034】
<昇降移動装置>
昇降移動装置50についてより詳細に説明する。図3は昇降移動装置50を示す概略側面図であり、図4は昇降移動装置50を示す概略背面図である。
【0035】
この昇降移動装置50は、上記したように、物品Wを昇降移動させるための装置であり、可動部としての昇降テーブル52と、周回走行部材としての駆動ベルト60と、下側支持部68と、上側支持部70とを備えている。
【0036】
昇降テーブル52は、本昇降移動装置50における物品Wの移動経路に沿って移動可能に支持されている。ここでは、後述する昇降支持柱部58の立設方向である上下方向が物品Wの移動経路である。また、昇降テーブル52は、昇降支持柱部58の上端部と下端部との間を昇降移動するため、昇降支持柱部58の上側の端部及び下側の端部が、物品Wの移動経路の端部に対応している。そして、昇降テーブル52上に物品Wを載置した状態で、昇降テーブル52が昇降移動することによって、当該物品Wを昇降移動させる構成とされている。
【0037】
より具体的には、昇降テーブル52は、物品Wを載置支持可能な載置部53と、その載置部53の一側部に固定された一対の昇降ランナー部54とを有している。
【0038】
載置部53には、上記したように、複数のローラが並列状に配設されており、当該ローラの回転を停止させた状態で物品Wを載置支持し、かつ、各ローラを回転駆動させることで、仮置き棚段42或は入出庫コンベア46との間で物品Wを授受できるようになっている。
【0039】
また、この昇降移動装置50は、上下方向に沿って立設された一対の昇降支持柱部58(コラムとも呼ばれる)を有している。一対の昇降支持柱部58のそれぞれに、昇降ランナー部54が昇降移動可能に支持されている。昇降ランナー部54を昇降支持柱部58に沿って昇降移動させる構成としては、例えば、昇降支持柱部58に上下方向に沿ったレールを形成すると共に、昇降ランナー部54に当該レールを挟込む車輪を設けた構成等を採用することができる。
【0040】
もっとも、昇降支持柱部58が一対設けられていることは必須ではなく、1本だけであってもよい。この場合、昇降ランナー部54は1つ設けられていればよい。
【0041】
駆動ベルト60は、環状のベルトであり、昇降支持柱部58の上下端部を結ぶ直線状の移動経路を周回するように配設されている。ここでは、一対の駆動ベルト60が、一対の昇降支持柱部58の間で並列状態に配設されている。
【0042】
下側支持部68は、移動経路の一端部である下端部で、上記一対の駆動ベルト60を周回走行可能に支持するように構成されている。ここでは、下側支持部68は、一対の昇降支持柱部58の下端部間に配設された一対の下側プーリー69と、一対の下側プーリー69を並列状態で回転可能に支持する支持ブラケット68Bとを有している。そして、一対の駆動ベルト60が、一対の下側プーリー69にそれぞれ巻掛けられている。
【0043】
上側支持部70は、一対の昇降支持柱部58の上端部間に配設された一対の上側プーリー80A、80Bを有している。この一対の上側プーリー80A、80Bも並列状態で回転可能に支持されており、一対の駆動ベルト60が、一対の上側プーリー80A、80Bにそれぞれ巻掛けられている。
【0044】
そして、上記一対の駆動ベルト60が、一対の下側プーリー69及び一対の上側プーリー80A、80Bに巻掛けられることで、上下方向に沿った移動経路を周回するように走行可能に配設される。
【0045】
また、一対の昇降支持柱部58の上下方向中間部、より具体的には、一対の昇降支持柱部58の上下方向中央部より下寄りの位置に、ベルト駆動機構部64が配設されている。
【0046】
ベルト駆動機構部64は、駆動ベルト60を正逆両方向に周回走行駆動可能に構成されている。より具体的には、ベルト駆動機構部64は、モータ65と、駆動プーリー66と、補助プーリー67とを有している。
【0047】
モータ65は、一対の昇降支持柱部58に取付けられた一対のブラケット64Bの一方側に取付固定され、このモータ65の軸部65aが一対のブラケット64B間を通るように配設されている。また、モータ65の軸部65aに、一対の駆動ベルト60に対応する一対の駆動プーリー66が固着されており、モータ65の回転駆動によって一対の駆動プーリー66が同期して正逆両方向に回転できるようになっている。
【0048】
また、一対の駆動プーリー66それぞれに対応して一対の補助プーリー67が設けられている。一対の補助プーリー67は、駆動プーリー66の両側部であって昇降支持柱部58よりの位置で、上記一対のブラケット64B間で回転自在に支持されている。駆動ベルト60は、本ベルト駆動機構部64の配設箇所で、一対の補助プーリー67と駆動プーリー66との各間を取ってU字状の経路を描くようにして駆動プーリー66に巻掛けられている。そして、モータ65の駆動によって一対の駆動プーリー66を同期して正逆両方向に回転駆動させることによって、当該一対の駆動プーリー66に巻掛けられた一対の駆動ベルト60が正逆両方向に周回走行できるようになっている。また、駆動ベルト60の周回方向に応じて上記昇降テーブル52が上昇移動又は下降移動するようになっている。
【0049】
このような昇降移動装置50では、一対の駆動ベルト60を同期して正逆両方向に周回走行させることで、当該一対の駆動ベルト60に連結された昇降テーブル52を昇降移動させているため、一対の駆動ベルト60になるべく均等に負荷が加わるようにする必要がある。そこで、一対の駆動ベルト60に加わるテンションがなるべく均等となるように調整するため、上側支持部70として下記の構成を採用している。
【0050】
図5は上側支持部70を示す側面図であり、図6は上側支持部70を示す正面図であり、図7は図5のVII−VII線断面図であり、図8は図5のVIII−VIII線断面図であり、図9は図5のIX−IX線における断面形状を示す図である。
【0051】
すなわち、上側支持部70は、軸部72と、巻掛部材である上側プーリー80A、80Bと、軸部支持部材90と、回転位置決め部材であるねじ96とを有している。
【0052】
軸部72は、相互に偏心する一対の副軸部74A、74Bを有する棒状部材に形成されている。より具体的には、軸部72は、両端部に固定端部73が形成され、その内側に一対の副軸部74A、74Bが形成され、一対の副軸部74A、74B間に調整用軸部分75が形成されている。固定端部73は、中心軸Xを有する円柱状に形成され、後述する軸部支持穴部95内に挿入した状態で前記中心軸X周りに回転できるようになっている。また、固定端部73の外向き面に、ボルト締め用孔73hが形成されている。そして、固定端部73の外端部からボルト78をネジ締め固定できるようになっている。
【0053】
一対の副軸部74A、74Bは、相互に偏心しており、かつ、固定端部73の中心軸Xに対しても偏心している。ここでは、一方側の副軸部74Aの中心軸X1が固定端部73の中心軸Xに対してL1mm偏心しており、また、他方側の副軸部74Aの中心軸X2が固定端部73の中心軸Xに対して前記中心軸X1とは反対側にL2mm偏心している。従って、一対の副軸部74A、74Bの中心軸X1、X2は、(L1+L2)mm偏心している。通常、L1とL2とは同じに設定するとよく、例えば、2mm程度に設定するとよい。
【0054】
また、上記調整用軸部分75は、非円形断面形状、ここでは、円形断面形状の4方部分を平坦にカットした形状に形成されている。そして、一般的なボルト締め用のスパナ工具等を、調整用軸部分75に嵌め合わせて回転させることで、軸部72を容易に回転させることができるようになっている。調整用軸部分75は、非円形断面形状であればよく、円形断面形状の両側部を平行状にカットした形状であってもよく、三角形、正方形、六角形等の多角形形状であってもよい。
【0055】
上側プーリー80A、80Bは、上記駆動ベルト60を巻掛け可能なプーリーであり、それぞれ副軸部74A、74Bに対して軸受76A、76Bを介して回転自在に支持されている。軸受76A、76Bとしては、ボールベアリング等を用いることができる。そして、一方側の上側プーリー80Aが一方側の副軸部74Aの中心軸X1を中心として回転自在に支持され、他方側の上側プーリー80Bが他方側の副軸部74Bの中心軸X2を中心として回転自在に支持されている。
【0056】
軸部支持部材90は、上記軸部72を回転可能に支持するように構成されている。より具体的には、軸部支持部材90は、一対の側方支持部92を有している。側方支持部92は、一対の昇降支持柱部58の上端部に取付けられた天井板部に固定される基部93の中間部から下方に突出支持部94が突出する板状に形成されている。側方支持部92は、ボルト締等によって天井板部に固定するとよい。一対の側方支持部92間の間隔寸法は、軸部72の長さ寸法よりも小さく設定されている。また、一対の側方支持部92の内側部分に、軸部72の固定端部73を挿入可能な軸部支持穴部95が形成されている。軸部支持穴部95は、固定端部73を回転可能に挿入可能な円穴に形成されている。そして、軸部72の両端部に固定端部73を一対の側方支持部92の軸部支持穴部95に挿入することで、軸部72が略水平姿勢で回転可能に支持される。
【0057】
また、一対の側方支持部92のうち軸部支持穴部95の奥部から一対の側方支持部92の外側に向けて貫通するボルト挿通孔95hが形成されている。そして、ボルト78を、ボルト挿通孔95hを通って、軸部支持穴部95内に配設された固定端部73のボルト締め用孔73hに螺合させることができるようになっている。このボルト78を上記ボルト挿通孔95hに締付けると、ボルト78の頭部が側方支持部92の外面に強い力で押付けられ、軸部72の回転抑制が図られる。つまり、ボルト78が側方支持部92を通ってボルト締め用孔73hに螺合する構成は、軸部72を一定の回転位置に位置決めした状態で支持する回転位置決め部材の一例として用いられている。
【0058】
また、一対の側方支持部92に、その外周側から軸部支持穴部95に向けて貫通するねじ孔96hが形成され、このねじ孔96hにねじ96が螺合されるようになっている。そして、軸部支持穴部95内に軸部72の固定端部73を挿入した状態で、ねじ96をねじ孔96hに螺合させて、ねじ96の先端部をねじ孔96hから軸部支持穴部95内に突出させる。これにより、当該ねじ96の先端部を軸部支持穴部95内の固定端部73の外周面に強い力で当接させると、軸部72が一定の回転位置に位置決め固定されることとなる。このねじ96を用いた構成も、回転位置決め部材の一例として用いられている。
【0059】
もっとも、上記ボルト78を省略してもよいし、また、一方の一対の側方支持部92だけにねじ96を用いた回転止構成を採用してもよい。つまり、軸部72は、少なくとも1つの構成によって、回転規制されればよい。
【0060】
なお、この上側支持部70では、調整用軸部分75の両端部と軸受76A、76Bとの各間に管状のスペーサ88(カラーとも呼ばれる)が配設されると共に、軸受76A、76Bと一対の側方支持部92との各間にも管状のスペーサ89が配設されている。特に、管状のスペーサ89は、一対の側方支持部92の内面に対する軸受76A、76Bの姿勢を一定姿勢に維持し、もって、各上側プーリー80A、80Bの軸が傾くことを抑制する役割を有している。
【0061】
このように構成された上側支持部70を用いた駆動ベルト60のテンション調整作業について説明する。なお、以下の図10,図11では、中心軸X1、X2のずれ量を誇張して描いてある。
【0062】
まず、初期状態において、図10に示すように、上側プーリー80A、80B及び中心軸X1、X2が水平方向に位置ずれしているとする。この状態で、一対の駆動ベルト60のテンションを計測する。駆動ベルト60に加わるテンションは、テンション測定器等によって測定することができる。測定結果、上側プーリー80Aに巻掛けられた駆動ベルト60のテンションFAが、上側プーリー80Bに巻掛けられた駆動ベルト60のテンションFBよりも大きかったとする。この場合、上側プーリー80Aを下方に移動させると共に、上側プーリー80Bを上方に移動させると、テンションFAが小さくなると共に、テンションFBが大きくなり、両テンションFA,FBをなるべく同じにするように調整することができる。
【0063】
そこで、必要に応じてボルト78及びねじ96を緩めて、スパナ等の工具を軸部72の調整用軸部分75に嵌め合わせて、軸部72を中心軸X周りに回転させる。これにより、上側プーリー80Aの回転中心でもある中心軸X1が中心軸Xの斜め下方又は直下に、また、上側プーリー80Bの回転中心でもある中心軸X2が中心軸Xの斜め上方又は直上に配設され、両テンションFA,FBがなるべく同じになるように調整される。
【0064】
そして、一対の駆動ベルト60のテンションを計測して、両テンションFA,FBがほぼ同じになるように軸部72の回転量が調整された状態で、ボルト78及びねじ96を締付けて、軸部72の回転位置を固定すると、両テンションFA,FBの調整作業が終了する。
【0065】
以上のように構成された自動倉庫10における第1支持部70によると、一対の副軸部74A、74Bが相互に偏心しているため、軸部72を回転させると、一対の副軸部74A、74B及び一対の上側プーリー80A、80Bの相対的な位置が変る。これにより、一対の上側プーリー80A、80Bに巻掛けられた駆動ベルト60のテンションが変る。従って、一対の駆動ベルト60のテンション調整を簡易な構成でかつ簡易な調整作業で行える。
【0066】
なお、中心軸X1、X2の双方が、軸部72の中心軸Xに対して偏心していることは必須ではない。もっとも、中心軸X1、X2の双方が、軸部72の中心軸Xに対して偏心している構成とすることで、軸部72を回転させると、中心軸X1、X2の一方が下がり、他方が上がるという関係が成立するため、一対の駆動ベルト60のテンション調整をより容易に行うことができるというメリットがある。
【0067】
また、ねじ96を緩めることで、軸部72が回転可能な状態となり、ねじ96をねじ込むことで、軸部72が一定の回転位置に位置決めされる。これにより、一対の駆動ベルト60のテンション調整を容易に行える。
【0068】
また、一対の副軸部74A、74Bの間の部分が、非円形断面形状の調整用軸部分75に形成されているため、当該調整用軸部分75を利用して、スパナ等の工具を用いて軸部72を容易に回転させることができる。この点からも、テンション調整を容易に行える。
【0069】
{変形例}
上記自動倉庫は、コンテナ等の一般的な物流品を格納するものの他、自動貸金庫システムにおける下記金庫ボックス等を格納するものであってもよい。
【0070】
なお、本実施形態では、周回走行部材が環状の駆動ベルト60であり、巻掛部材がプーリー66、67、69、80A、80Bプーリーである例で説明したが、必ずしもその必要はない。周回走行部材としてチェーンを用い、巻掛部材としてスプロケットを用いてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、テンション調整用の構成を、上側支持部70に組込んだ例で説明したが、下側支持部68に組込んでもよいし、また、下側支持部68及び上側支持部70の双方に組込んでもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、格納棚20の一端部の固定位置に配設された昇降移動装置50への適用例で説明したが、必ずしもその必要はない。昇降移動装置が格納棚の前方を水平方向に沿って移動可能な台車に搭載され、昇降移動装置が直接的に各棚段との間で物品を授受する構成にも適用できる。
【0073】
さらには、本実施形態では、物品Wを昇降移動させる装置に適用した例で説明したが、物品Wを水平方向に移動させる構成であってもよい。この場合でも、当該物品に移動力を及す可動部を、一対の環状ベルト等の周回走行部材で移動させる構成であれば、上記テンション調整用の構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 自動倉庫
20 格納棚
50 昇降移動装置
52 昇降テーブル
60 駆動ベルト
68 下側支持部
69 下側プーリー
70 上側支持部
72 軸部
73 固定端部
74A、74B 副軸部
75 調整用軸部分
78 ボルト
80A、80B 各上側プーリー
90 軸部支持部材
92 側方支持部
95 軸部支持穴部
95h ボルト挿通孔
96 当ねじ
96h ねじ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動倉庫において物品を移動させる自動倉庫用移動装置であって、
物品の移動経路に沿って移動可能に支持された可動部と、
前記移動経路を周回するように配設され、前記可動部を前記移動経路に沿って移動させる一対の周回走行部材と、
前記移動経路の一端部で、前記一対の周回走行部材を周回走行可能に支持する第1支持部と、
前記移動経路の他端部で、前記一対の周回走行部材を周回走行可能に支持する第2支持部と、
を備え、
前記第1支持部及び前記第2支持部のうちの少なくとも一方が、
相互に偏心する一対の副軸部を有する軸部と、
前記一対の副軸部のそれぞれに回転可能に支持され、前記一対の周回走行部材が巻掛けられる一対の巻掛部材と、
前記軸部を回転可能に支持する軸部支持部材と、
前記軸部を一定の回転位置に位置決めした状態で支持する回転位置決め部材と、
を有する、自動倉庫用移動装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動倉庫用移動装置であって、
前記一対の副軸部の回転軸の両方が、前記軸部の中心軸に対して偏心している、自動倉庫用移動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動倉庫用移動装置であって、
前記軸部支持部材は、前記軸部の端部を回転可能に挿入可能な軸部支持穴部を有する一対の側方支持部を有し、
前記回転位置決め部材は、前記一対の側方支持部の少なくとも一方側の外周側から前記軸部支持穴部に向けてねじ込み可能で、かつ、ねじ込まれた状態で前記軸部のうち前記軸部支持穴部に挿入された部分に当接して前記軸部を一定の回転位置に位置決めするねじとを有する、自動倉庫用移動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動倉庫用移動装置であって、
前記軸部のうち前記一対の副軸部間の部分が、非円形断面形状に形成されている、自動倉庫用移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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