説明

自動分析システム

【課題】本発明は、異なる検体容器の栓体の開栓処理と閉栓処理を可能とし、栓体の管理と供給が可能な栓体搬送機構を備えた自動分析システムを提供することが目的である。
【解決手段】本発明は、栓体を有する検体容器を搬送する搬送機構を備えた自動分析システムにおいて、前記検体容器に収容された検体を所定量分注する検体分注機構と、前記検体容器の栓体を取り外す栓体開閉機構と、前記検体容器と当該検体容器の栓体との対応関係を記憶する制御部と、前記検体分注機構での検体分注を終えた検体容器に対し、前記制御部に記憶された対応関係に基づいて、当該検体容器の前記栓体を再度閉栓する栓体開閉機構と、前記栓体開閉機構が、開栓位置で取り外した栓体を、閉栓位置まで搬送する栓体搬送機構と、を備えたことを特徴とする自動分析システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの生体試料を分析する自動分析システムに係り、特に収容する容器の開栓・閉栓ユニットを備えた自動分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析システムは、測定対象(例えば、血清や尿などの生体試料、或いは、それらと試薬との混合液)の物性を測定することにより生体試料の分析を行う自動分析装置を含むシステムであり、試料が入った容器の開栓行程,分注工程,容器閉栓工程,攪拌工程,分析工程など種々の工程を実行する処理ユニットを備えている。
【0003】
このような自動分析システムの容器開栓行程において、検体容器や試薬容器の開栓,閉栓(以下、開栓処理,閉栓処理と称する)を行う開閉装置の従来技術として、例えば、特許文献1〜6に記載の開閉手段がある。
【0004】
特許文献1に記載の開閉手段は、予め栓体が取り付けられた試験管を栓操作位置に搬送し、この栓操作位置でチャックにより栓を両側から挟むように把持した後に、チャック部を上方に移動することにより開栓を行っていた。次いで、栓体を把持し続けた状態で試験管に試薬などを混入させてから、栓を把持したチャック部を下方に移動することで試験管に栓を取り付けるものであった。
【0005】
特許文献2では、試薬容器の蓋体を開栓・閉栓する手段を備えた自動分析装置が提供されている。この方式では、蓋が一体化された容器を用いた場合に、蓋の開閉を確実に行うことが可能であった。
【0006】
特許文献3に記載の閉栓装置は、試験管の搬送位置決め装置と複数の栓を1つずつ供給する栓供給手段を備え、閉栓位置の上方にチャック部を配置し、栓を上面から押さえることにより試験管に閉栓をするものであった。試験管に連続的に効率よく栓をすることを可能とするとともに、一対のチャック部を水平移動させないのでスペースの狭い場所でも使用できるようにしたものであった。
【0007】
特許文献4に記載の閉栓装置は、容器の上部開口部を閉栓する場合において、全体として比較的簡易な機構をもって確実に閉栓を行えるようにすることにある。栓の搬送から押込みまでの一連の閉栓過程を複数の機構によって分担実施させ、これによって合理的な閉栓を実現でき、また、互いに異なる押圧方式を組み合わせて簡便かつ確実な閉栓を実現できるものであった。
【0008】
一方、特許文献5,6では、種々異なる試験管サイズが混在していても、開栓処理を可能とする開栓手段が提供されている。
【0009】
特許文献5では、異なる試験管サイズと、異なる種類の栓体(押込み式のゴム栓やコルク栓,ねじ込み式のスクリュー栓)が装着されていても、その栓を迅速かつ的確に取り外すことができる試験管栓取り外し手段が提供されている。
【0010】
特許文献6では、異なる高さ(あるいは栓の形状,径の太さ)の検体容器が同一の検体ラック上に混在していても、開栓が可能な開栓ユニットを含む検体前処理システムを提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3−186354号公報
【特許文献2】特許第2955613号
【特許文献3】特開平7−31890号公報
【特許文献4】特開2003−98179号公報
【特許文献5】特開2005−271991号公報
【特許文献6】特開2009−36511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の開栓,閉栓機構では、試料や試薬を密封している容器の栓体の開栓処理と閉栓処理は、別々の機構によって行われることが一般的であった。そして、容器から取り外された栓体は廃棄され、検体容器に予め備えられた再栓用の栓体が取り付けられていた。
【0013】
特許文献1に記載のあるように、検体容器から取り外した栓を、同じ検体容器に戻すことを基本とした開栓,閉栓機構では、開栓から閉栓までのサイクルに要する時間で処理能力が決定されていた。すなわち、開栓から閉栓までのサイクルに要する時間が10秒である場合は、3600秒/10秒=360処理/時間の処理速度となっていた。
【0014】
一方、自動分析装置の処理速度は中型機で1000テスト/時間が標準となりつつあり、360処理/時間の処理速度では、システム全体のスループットが低下する懸念があった。
【0015】
本発明の目的はシステム全体のスループットを低下させることなく、検体容器の栓体の開栓処理と閉栓処理を確実に行うことができる栓体開閉機構を備えた自動分析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0017】
栓体を有する検体容器を搬送する搬送機構を備えた自動分析システムにおいて、前記検体容器に収容された検体を所定量分注する検体分注機構と、前記検体容器の栓体を取り外す栓体開閉機構と、前記検体容器と当該検体容器の栓体との対応関係を記憶する制御部と、前記検体分注機構での検体分注を終えた検体容器に対し、前記制御部に記憶された対応関係に基づいて、当該検体容器の前記栓体を再度閉栓する栓体開閉機構と、前記栓体開閉機構が開栓位置で取り外した栓体を前記閉栓機構に搬送する栓体搬送機構と、を備えたことを特徴とする自動分析システム。
【0018】
自動分析システムとは、自動分析装置での検体の分析を行うための、遠心分離,子検体分注,開栓,閉栓,バーコードラベル貼り付けなどの各種前処理を行う前処理装置を含む分析システムを意味する。
【0019】
自動分析装置をシステム内に含んでいても良いが、システムとしては最低限,開栓,閉栓,分注機構、それらの間で検体を搬送する搬送機構を備えていれば良い。
【0020】
栓体とは、ゴムやプラスチックなどで成型され、検体容器に収容された検体が漏れ出さないようにしているものであり、ねじ込み式であっても良いし、圧入されているだけのものであっても良い。
【0021】
検体容器とは、測定対象の試料を封入した容器で、ラックに架設されていてもホルダに架設されていても、移送が可能であれば良い。
【0022】
栓体開閉機構とは、栓体を取り外す開栓処理と、栓体を取り付ける閉栓処理ができるものであればどんなものでも良い。開栓処理から閉栓処理において、栓体を保持し、管理ができるものでも良い。
【0023】
また、自動分析システムにおいて、前記栓体搬送機構は、前記栓体開閉機構で取り外した栓体を複数個保持可能であることを特徴としている。
【0024】
また、自動分析システムにおいて、前記栓体搬送機構は、前記栓体開閉機構が、開栓位置で取り外した栓体を複数個保持し、かつ任意の栓体を閉栓位置まで搬送する栓体保持機構を備えたことを特徴としている。栓体保持機構とは、取り外した栓体を複数個保持し栓体を閉栓機構まで搬送できるものであればどのようなものでも良い。ベルトコンベア状のもの、ターンテーブル状のもの、ロボットアームにより空中を搬送するものなどが一般的である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、自動分析システムの移送路上において、検体容器の開栓処理と閉栓処理を確実に行うことができる。それゆえに、安定した検体分注を行うことが可能となり、信頼性の高い分析測定結果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施例に係るもので、検体容器の栓体開閉機構を備えた自動分析システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例に係るもので、ラックに載設された複数の検体容器を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るもので、ホルダに載設された複数の検体容器を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係るもので、検体容器と栓体の識別処理を示す概略図である。
【図5】本発明の実施例に係るもので、検体容器の開栓から閉栓処理における動作パターン図である。
【図6】本発明の実施例に係るもので、検体容器の栓体保護機構の概略図である。
【図7】本発明の実施例に係るもので、栓体の閉栓判定処理を示す概略図である。
【図8】本発明の実施例に係るもので、栓体保持機構における動作パターン図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係るもので、検体容器の栓体開閉機構を備えた自動分析システムの全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の第一の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態に係る自動分析システムの全体構成を示す概略図である。自動分析システムは、血液や尿などの生体試料を封入した検体容器3を収容したラック1を移送する搬送機構2と、搬送機構2により移送された検体容器3の栓体5を取り外す開栓処理と、再度栓体5を取り付ける閉栓処理を行う栓体開閉機構4と、栓体の保持,搬送を行う栓体保持機構12を概略備えている。
【0029】
図2は、ラック1に収容された複数の検体容器3と複数の栓体5を示す概略図である。
【0030】
図3は、ホルダ6に収容された複数の検体容器3と複数の栓体5を示す概略図である。
【0031】
検体容器3は、生体試料を収容したり取り出したりするための開口部を有しており、異物の混入や内容物の蒸発,転倒時の生体試料のこぼれなどを抑制するために、栓体5により塞がれている。
【0032】
栓体5は、検体容器3の開口部の径よりも大きな円筒形状をしており、ゴムやプラスチックなどで成型されているが、収容された試料がこぼれないようなものであればどんなものでもよい。栓体5a〜5cは、検体容器3a〜3cの開口部に、圧入により取り付けられており、栓体5d〜5eは、検体容器3d〜3eの開口部に、螺着により取り付けられている。
【0033】
検体容器3の開口部から栓体5を取り外す時には、栓体5a〜5cは、栓体5を揺動させたり周方向に回転させて引き抜くことにより、取り外すことができる。また、栓体5d〜5eは、周方向に設けられたねじ部の嵌合部に従って回転させて引き抜くことにより、取り外すことができる。
【0034】
ラック1やホルダ6には、各々、図には明示されていない識別番号1a及び6a,6d,6eが所定の位置に予め付与されており、画像処理によって、ラック1やホルダ6の識別番号の判定を可能としている。各検体容器3a〜3eにも通常、図には明示されていないバーコードなどの識別番号が予め付与されており、画像処理にて検体容器3a〜3eの識別番号の判定が可能である。
【0035】
図1において、自動分析システムの筐体7の上には、一方向に回転可能な反応ディスク8に反応容器8aが、円周上に複数個規則的に並んでいる。筐体7の上には試薬ディスク9が、両方向に回転可能に配置され、必要な試薬が試薬プローブ9aに対して近い位置にある方向に回転するようになっている。試薬プローブ9aはそれぞれ図には明示されていない試薬用ポンプに接続している。試薬ディスク9はそれぞれ分析に使用する複数の種々の試薬を収納する試薬容器9bが円周上の全周に載置可能である。反応ディスク8の近くに検体容器3を載せたラック1を移送する搬送機構2が設置されている。反応容器8aと搬送機構2の間には、回転及び上下動可能な検体プローブ10が設置されている。検体プローブ10はそれぞれ図には明示されていない検体用ポンプに接続している。反応ディスク8の周囲には、光源14,検出光学装置14a,容器洗浄機構15,攪拌装置16、が配置されている。容器洗浄機構15は図には明示されていない洗浄用ポンプに接続している。検体プローブ10,試薬プローブ9a,攪拌装置16のそれぞれの動作範囲に洗浄ポートが設置されている。図には明示されていないサンプル用ポンプ,試薬用ポンプ,洗浄用ポンプ,検出光学装置14a,反応容器8a,試薬ディスク9,試薬プローブ9a,検体プローブ10,試薬容器保持機構17,試薬容器開栓機構17a,試薬容器読取機構18はそれぞれ制御コンピュータ25に接続している。
【0036】
検体容器3の移送ライン上には、検体容器3に封入された検体情報を読取るための検体情報読取機構11と、栓体5を識別するための栓体識別機構13が配置されている。検体プローブ10による試料採取位置2cの上流側にある検体情報読取機構11の近くには、検体容器3の栓体5を取り外す開栓処理と、再度栓体5を取り付ける閉栓処理を行う栓体開閉機構4と、取り外した栓体5を一時待機し、搬送処理と保管処理を行う栓体保持機構12が配置されている。
【0037】
栓体開閉機構4は、栓体チャック機構4bを3軸方向に移設を可能とする搬送アーム4aと、栓体5の把持と開閉処理を可能とする栓体チャック機構4bと、検体容器3の把持と上下方向の移設を行うクランプ4cにより、構成されている。栓体チャック機構4bとクランプ4cは、自動分析システムのスループットにあわせ、少なくとも1つ以上搬送アーム4aに組み付けられている。検体情報読取機構11と、栓体識別機構13,栓体開閉機構4,栓体保持機構12は、それぞれ制御コンピュータに接続されている。栓体開閉機構4は、栓体の種類に対応して、前記検体容器の栓体を取り外す開栓動作と、前記検体容器に栓体を取り付ける閉栓動作をそれぞれ切り替えることが可能である。
【0038】
このシステムを用いて、分析手順を説明する。
【0039】
分析に入る前に、まずメンテナンスを実施する。メンテナンスには、検出光学装置14aの点検,反応容器8aの洗浄,検体プローブ10等各種プローブの洗浄等がある。
【0040】
検体容器3は、オペレータにより血液,尿等の検査対象の試料が封入され、栓体5により塞がれた状態で、移載容器のラック1やホルダ6に載設され、検体投入部21から自動分析システムに投入される。ラック1やホルダ6は、搬送機構2によって移送される。ラック1が搬送機構2により、検体情報読取り位置2aに移送されると、検体情報読取装置11により、検体情報の読取りが行われる。
【0041】
まず、検体容器3の形状識別(径,高さ,種別)とともに、栓体識別機構13により、栓体5の有無と栓体5の形状識別(圧入式(5a〜5c),ねじ込み式(5d〜5e))が、行われる。また、検体容器3の情報として、試料の受付日付や受付番号,患者属性,病棟の区別などが、制御コンピュータ25内に記憶される。
【0042】
図4に栓体5の識別処理の実施例を示す。
【0043】
印刷処理や加工処理により、検体容器3と栓体5を1対1に関連付けさせる識別処理が行われる。この識別処理により、栓体5にロット番号やバーコード番号などの識別番号とともに、検体容器3に対する栓体5の位置決め記号13a,13bが追加される。栓体5への識別処理は、栓体5の外周面でも上端面でも、栓体5が識別できればどこでも良い。また、検体容器3や栓体5の成型加工時に予め備えられていてもよい。
【0044】
この識別処理により、検体容器3と栓体5の関連付けが行われ、栓体5の直接管理が可能となる。ラック1やホルダ6の識別番号の管理だけでなく、検体容器3の識別番号と栓体5の識別番号の対応づけと管理が可能となる。
【0045】
自動分析システムにおいて、迅速に検体容器3の測定を行いたい場合に、栓体5の開栓処理をする間に別の検体容器3の追い越しが発生し、試料採取(分注)動作と閉栓処理動作の順番が逆転する場合がある。
【0046】
検体容器3と栓体5の関連付けがされていない場合、開栓処理,試料採取(分注)処理,閉栓処理の各工程では、ファストイン,ファストアウトの処理動作が必要になる。本実施例では、検体容器3と栓体5の関連付けがされているため、各工程処理の順番が変わった場合でも、栓体5を取り外した検体容器3に間違いなく取り付けることが可能となる。このため、検体容器3の迅速処理が可能となる。自動分析システムの一部の機構が故障し、測定が一時中断された場合でも、検体容器3と栓体5の関連付けがされているために問題がない。
【0047】
次に、検体容器3は、搬送機構2により、開栓位置2bに移送される。検体情報読取位置2aと開栓位置2bは、同じ位置でも良い。開栓動作の流れを図5(A)に示す。開栓位置2bに移送された検体容器3は、栓体開閉機構4のクランプ4cにより把持された状態で、開栓位置まで持ち上げられる(図5−(A)−(1),(2))。栓体チャック機構4bにより、栓体5が取り外される(図5−(A)−(3))。このとき、栓体開閉機構4は、検体情報読取機構11と栓体識別機構13により識別判定された検体容器11と栓体5に対応した開栓処理動作が行われる。
【0048】
栓体開閉機構4と栓体識別機構13は、検体容器3から栓体5が取り外されたことを、図には明示されていない検知器4e,13aにより判定する。検体容器3から栓体5が取り外されていない場合には、再度開栓処理を行うリトライ動作が実行される。取り外された栓体5は、搬送アーム4aにより、栓体保持機構12の栓体保持部12aに移載され、栓体5は一時保管される(図5−(A)−(4),(5))。
【0049】
ラック1上にある全ての検体容器3に対して、前記開栓処理が、繰り返し行われる。開栓処理をオペレータにより設定された任意の回数分行っても、開栓が不完全であると判定された検体容器3は、制御コンピュータ25から出力が行われるとともに、再検検体収納部24に収納され、オペレータにより処理される。オペレータは、検体容器3と栓体5の外観状態を確認する。問題のない場合には検体投入部21から、再投入することが可能となる。
【0050】
次に、検体容器3は搬送機構2により、試料の採取位置2cに搬送される。検体情報読取位置2aと開栓位置2bと試料採取位置2cは、同じ位置でも良い。
【0051】
分注動作の流れを図5(B)に示す。試料の採取位置2cに移送された検体容器3から、検体プローブ10が試料を採取する。このとき、取り外された栓体5は、栓体保持部12aに保持されている。検体プローブ10によって採取された試料は、反応ディスク8に並べられている反応容器8aに一定量分注され、一定量の試薬が試薬ディスク9に設置された試薬容器9bから試薬プローブ9aによって分注され、攪拌装置16にて攪拌し、一定時間反応した後、検出光学装置14aにより反応容器8aの吸光度,スペクトル等が測定され、測定結果として、制御コンピュータ25に出力される。測定項目がさらに依頼されている場合は前記試料採取動作を繰り返す。ラック1上にある全ての検体容器3内に封入された試料について、設定されている測定項目の試料採取動作が終了するまで繰り返される。
【0052】
次に、試料採取が終了した検体容器3は、搬送機構2により検体情報読取位置2dまで移送される。検体情報読取位置2aと開栓位置2bと試料採取位置2cと検体情報読取位置2dは、同じ位置でも良い。検体情報読取機構11と制御コンピュータ25により、検体容器3に対応している栓体5の識別処理が行われる。制御コンピュータ25により識別された栓体5に対して、栓体保持機構12から搬出要求が発行される。
【0053】
検体容器3は、搬送機構2により、閉栓位置2eに移送される。検体情報読取位置2aと開栓位置2bと試料採取位置2cと検体情報読取位置2dと閉栓位置2eは、同じ位置でも良い。検体容器3に対応した栓体5が栓体保持機構12から搬出され、栓体5の閉栓処理が行われる。
【0054】
閉栓動作の流れを図5(C)に示す。閉栓位置2eに移送された検体容器3は、栓体開閉機構4のクランプ4cにより把持され(図5−(C)−(1))、持ち上げられる。栓体5は、搬送アーム4aにより、検体容器3の上部同心軸上に移送され、栓体チャック機構4bの閉栓処理により、栓体5が取り付けられる。(図5−(C)−(2),(3),(4))。このとき、栓体開閉機構4は、検体情報読取機構11と栓体識別機構13により識別判定された検体容器11と栓体5に対応した閉栓処理動作が行われる。
【0055】
図6に、栓体5aに栓体保護機構19を螺合した概略図を示す。栓体保護機構19は、金属やプラスチックで成型された円筒状のクロージャ19aの天蓋内側面に、円錐状の突起を有し、ピアス19bが取り付けられている。栓体5aの上部に栓体保護機構19を取り付けることにより、栓体5aが栓体保護機構19を介して、栓体チャック機構4bにより把持可能となる。栓体開閉機構4は、開栓または閉栓する栓体に適合する栓体保護機構を用いて開栓処理または閉栓処理を行うことができる。
【0056】
例えば、栓体5aが、ゴムで成型されたような弾性体であった場合に、栓体チャック機構4bの把持力により、栓体5aが変形してしまう可能性がある。栓体保持機構19を栓体5に螺合することにより、開栓処理,閉栓処理が,円滑に行われる。また、栓体5aを検体容器3に取り付けた後に、検体容器3の内部温度が高まった場合などに、検体容器3の内部圧力が変化し、栓体5が外れてしまう可能性がある。栓体保持機構19を栓体5に螺合することにより、検体容器3の内部圧力の調整が可能となり、開栓処理,閉栓処理が、円滑に行われる取り付けられた栓体5は、栓体識別機構13により、閉栓状態が確認される。
【0057】
図7に、閉栓確認の流れを示す。開栓前に、栓体識別機構13により、識別処理された栓体5の位置決め記号13a,13bをもとに、栓体5が検体容器3に取り付けられたときの嵌合寸法(Z)と、周方向の螺合寸法(X)が測定される。この測定値(Z,X)と、あらかじめ設定された閾値との差を、制御コンピュータ25により判定し、閉栓処理の成否が確認される。制御コンピュータ25により、閉栓が不完全と判定された場合には、再度閉栓処理を行うリトライ動作(図5−(C)−(4),(5))が実行される。ラック1上にある全ての検体容器3に対して、前記閉栓処理が終了するまで、繰り返し行われる。閉栓処理をオペレータにより設定された任意の回数分行っても、閉栓が不完全であると判定された検体容器3は、制御コンピュータ25から出力が行われるとともに、再検検体収納部24に収納され、オペレータにより処理される。
【0058】
閉栓が終了したラック1は、検体収納部20に移送される。
【0059】
次に、図8を使用して、栓体保持機構12の動作の流れを示す。開栓位置2bで、栓体開閉機構4により取り外された栓体5は、栓体開閉機構4の搬送アーム4aにより、栓体保持機構12の栓体搬入位置22aに移載される。このとき、栓体5の保持エリアが、制御コンピュータ25により、栓体保持機構12の栓体保持部(No.2)12aに割り付けが行われた場合の実施例を示す。栓体保持機構12の栓体保持部(No.2)12aの位置に栓体5が移載される。移載された栓体5は、制御コンピュータから搬出要求があるまで、栓体保持機構12の栓体保持部(No.2)12aに保持されたまま待機する。このとき、栓体保持機構12は、栓体5の乾燥や温度変化による影響を防止するために、温度制御機構12bと保湿機構12cを備えている。検体容器5の閉栓要求が発生し、制御コンピュータ25から、栓体5の搬出要求が発生すると、栓体保持機構12の栓体保持部(No.2)12aが、栓体搬出位置22bまで回転駆動し、栓体開閉機構4により栓体5が搬出される。この搬出処理は、ファストイン,ファストアウトの処理のみではなく、制御コンピュータからの要求に基づいて選択された検体5が搬出される。栓体5は、栓体開閉機構4の搬送アーム4aにより、閉栓位置2dまで移送され、検体容器3に取り付けられる。栓体5が保持されていた栓体容器保持部(No.2)12aは、栓体5の排出後に、栓体洗浄機構23で洗浄,乾燥され、次の栓体5の移載要求があるまで、待機される。
【0060】
図9に、本発明の第二の実施形態を示す。
【0061】
図9の構成は、栓体開閉機構4と栓体保持機構12を試料採取位置2cの周囲に配置した場合の実施例である。栓体5の開栓処理を行う栓体チャック機構4bを、少なくても一つ試料採取位置4cの上流側に備え、栓体5の閉栓処理を行う栓体チャック機構4bを、少なくても一つ試料採取位置4cの下流側に備える構成が理想的であるが、開栓位置2bと閉栓位置2dを試料採取位置2cと同じ位置にすることも可能である。
【0062】
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0063】
従来技術においては、採血管の開栓処理から閉栓処理にともなう、試料や試薬の分注処理を行う際に、栓体を把持し続けなければいけなく、時間のロスが大きいと考えられた。試験管を連続的に効率よく開栓処理し、閉栓処理を行うには不向きであった。
【0064】
また、他の従来技術においては、複数の栓を1つずつ供給する栓供給手段を備え、栓を上面から押さえ試験管に栓を取り付けることにより、試験管に連続的に効率よく栓をすることを可能としているが、閉栓待ちの検体容器に適合する栓を前記待機場所から選択的に取り出して、閉栓処理を行うことが不可能であった。栓体の再利用を行い、検体容器の開栓処理と閉栓処理を確実に行うことはできなかった。
【0065】
上記目的を達成するために、本発明の実施の形態においては、検体容器から取り外した栓を検体容器に供給すべく管理システムを備え、栓を保持し待機する保持手段と前記閉栓待ち検体容器に適合する栓を前記待機場所から選択的に取り出して、閉栓動作を実行できるように構成したので、栓体の再利用を確実に行うことができ、検体容器の開栓処理と閉栓処理を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ラック
2 搬送機構
3 検体容器
4 栓体開閉機構
5 栓体
6 ホルダ
7 筐体
8 反応ディスク
8a 反応容器
9 試薬ディスク
9a 試薬プローブ
10 検体プローブ
11 検体情報読取機構
12 栓体保持機構
12a 栓体保持部
13 栓体識別機構
14 光源
14a 検出光学装置
15 容器洗浄機構
16 攪拌装置
17 試薬容器保持機構
18 試薬容器読取機構
19 栓体保護機構
20 検体収納部
21 検体投入部
22 栓体搬入・搬出位置
23 栓体洗浄機構
24 再検検体収納部
25 制御コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栓体を有する検体容器を搬送する搬送機構を備えた自動分析システムにおいて、
前記検体容器に収容された検体を所定量分注する検体分注機構と、
前記検体容器の栓体を取り外す栓体開閉機構と、
前記検体容器と当該検体容器の栓体との対応関係を記憶する制御部と、
前記検体分注機構での検体分注を終えた検体容器に対し、前記制御部に記憶された対応関係に基づいて、当該検体容器の前記栓体を再度閉栓する栓体開閉機構と、
前記栓体開閉機構が、開栓位置で取り外した栓体を、閉栓位置まで搬送する栓体搬送機構
を備えたことを特徴とする自動分析システム。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析システムにおいて、
前記栓体搬送機構は、前記栓体開閉機構で取り外した栓体を複数個保持する栓体保持機構
を備えたことを特徴とする自動分析システム。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記検体容器の栓体を識別する栓体識別機構を備え、
当該栓体の種類に対応して、前記検体容器の栓体を取り外す開栓動作及び/又は前記検体容器に栓体を取り付ける閉栓動作を切り替え可能とする栓体開閉機構
を備えたことを特徴とする自動分析システム。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記栓体開閉機構で取り外した栓体と、該栓体を取り外した検体容器とを識別する第一の識別機構と、
前記栓体開閉機構で閉栓する栓体と該栓体を取り付ける検体容器とを識別する第二の識別機構と、
を備えたことを特徴とする自動分析システム。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記栓体保持機構は、前記栓体開閉機構で取り外した栓体を複数個保持し、
前記検体容器識別機構と、前記栓体識別機構からの識別結果に対応して選択された任意の栓体を前記栓体開閉機構に搬送する栓体搬送機構
を備えたことを特徴とする自動分析システム。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記第一の識別機構または第二の識別機構は、
検体容器の種類,高さ,径と栓体の種類,色,栓体の有無,栓体の位置記号を識別可能であること
を特徴とする自動分析システム。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記栓体開閉機構は、
開栓または閉栓する栓体に適合する栓体保護機構を用いて開栓処理または閉栓処理を
行うことを特徴とする自動分析システム。
【請求項8】
請求項1に記載の自動分析システム装置において、
前記栓体開閉機構での開栓状態を判定する開栓識別機構と、
前記栓体開閉機構での閉栓状態を判定する閉栓識別機構と
を備えたことを特徴とする自動分析システム。
【請求項9】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記栓体保持機構は、栓体の温度制御機構と、栓体の乾燥を防ぐ栓体加湿機構と、栓体洗浄機構の全て、または、一部
を備えたことを特徴とする自動分析システム。
【請求項10】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記栓体開閉機構での開栓または閉栓処理に失敗した検体容器を排出する排出機構と、
前記排出機構から排出された検体容器を収納する再検検体収納機構
を備えたことを特徴とする自動分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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