説明

自動分析装置及びそのキャリブレーション方法

【課題】自動分析装置のキャリブレーションの容易化を図ることができる技術を提供する。
【解決手段】実施形態の自動分析装置は、複数の標準試料からなる標準試料セットを用いてキャリブレーションを行う第1モード用の識別子と、標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行う第2モード用の識別子とを作成する作成部と、特定の標準試料セットに関する情報と当該特定の標準試料セットを用いる複数の測定項目とを入力するための入力部と、入力された情報及び測定項目を関連付ける関連付け部と、特定の標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行う第2モード用の識別子を作成するときに、当該特定の標準試料セットに関する情報と関連付けられた測定項目毎に異なる識別子を作成するよう作成部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動分析装置及びそのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、被検試料中の被測定物質又は酵素の濃度/活性を測定する装置である。具体的には、反応管内にヒトの血液や尿などの被検試料と試薬とを分注し、攪拌混和後、一定温度にて反応させ、この反応によって生ずる変化を測定する。
【0003】
自動分析装置は、被検試料と試薬の反応による反応液の吸光度を光度計により測定し、測定された吸光度を、予め求められた吸光度−濃度曲線(検量線)に基づいて濃度に換算している。
【0004】
検量線は、測定項目毎に予め設定された標準試料の吸光度を測定して求める。このように、標準試料を測定することを「キャリブレーション」という。
【0005】
キャリブレーションには、予め設定された標準試料の吸光度を、異なる濃度(複数の標準試料からなる標準試料セット)で測定する「フルキャリブレーション」と、水等の標準試料の吸光度を測定する「ブランク補正キャリブレーション」とがある。ブランク補正キャリブレーションに用いられる標準試料は、フルキャリブレーションに用いられる標準試料セットのうちの1つである。
【0006】
フルキャリブレーションで得られた測定結果により、検量線を求めることができる。ブランク補正キャリブレーションで得られた測定結果により、検量線のベースライン調整を行う。
【0007】
一般的には、ブランク補正キャリブレーションは、フルキャリブレーションよりも行われる頻度が高い。例えば、フルキャリブレーションは週1回行えばよいのに対し、ブランク補正用キャリブレーションは毎日行われる。これは、検量線の曲線自体に変化がなくともベースラインは装置の使用条件や外部要因(温度)等に起因して変化するためである。
【0008】
また、標準試料セットは、それぞれの標準試料が入った反応管に付されたバーコードラベル等を用いて識別される。自動分析装置は、バーコードリーダーによりバーコードラベルを読み取ることで、用いられる標準試料を識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−292525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、酵素や脂質等の測定項目によっては、異なる測定項目であっても同じ標準試料を使用することがある。
【0011】
この場合、同じ標準試料の採血管には同じバーコードラベルが貼られているため、その標準試料を使用する項目のうち、特定の項目のみを測定しようとする場合、あるいは特定の項目のみを測定しないようにする場合、検査者は、バーコードラベルを読み取る前に、モニタ上で今回の測定項目を選択・設定等しなければならず煩わしかった。
【0012】
一方、測定項目毎に異なるバーコードラベルを付す(つまり同じ標準試料であっても測定項目毎に異なるバーコードラベルを付す)ことも考えられる。この場合、測定項目の数に応じて大量の試験管(標準試料)を準備する必要が生じる。また、標準試料には価格が高いものもあるため、大量の標準試料を準備することは費用面でも望ましいものではなかった。
【0013】
実施形態は、前述の問題点を解決するためになされたもので、自動分析装置のキャリブレーションの容易化を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
実施形態の自動分析装置は、標準試料を用いてキャリブレーションを行う自動分析装置であって、複数の標準試料からなる標準試料セットを用いてキャリブレーションを行う第1モード用の識別子と、前記標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行う第2モード用の識別子とを作成する作成部と、特定の前記標準試料セットに関する情報と当該特定の標準試料セットを用いる複数の測定項目とを入力するための入力部と、入力された前記情報及び前記測定項目を関連付ける関連付け部と、前記特定の標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行う前記第2モード用の識別子を作成するときに、当該特定の標準試料セットに関する情報と関連付けられた前記測定項目毎に異なる識別子を作成するよう前記作成部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、実施形態の自動分析装置のキャリブレーション方法は、入力部により、複数の標準試料からなる特定の標準試料セットに関する情報と当該特定の標準試料セットを用いる複数の測定項目とを入力するステップと、関連付け部により、入力された前記情報及び前記測定項目を関連付けるステップと、前記特定の標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行うために用いる識別子を作成するときに、作成部により、当該特定の標準試料セットに関する情報と関連付けられた前記測定項目毎に異なる識別子を作成するステップと、読取部により当該識別子を読み取るステップと、前記読取部で読み取られた前記識別子を解析部により解析するステップと、前記解析結果に基づいて、制御部により前記反応管に前記標準試料を分注するよう分注部を駆動させるステップと、前記分注部によって前記反応管に分注された前記標準試料に基づいてキャリブレーション部がキャリブレーションを行うステップと、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る自動分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る分析部の構成を示す図である。
【図3】実施形態に係る制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係る自動分析装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】実施形態に係る自動分析装置における表示画面の一例を示す図である。
【図6】実施形態に係る自動分析装置における表示画面の一例を示す図である。
【図7】実施形態に係る自動分析装置における表示画面の一例を示す図である。
【図8A】実施形態に係るラベル貼付器具の斜視図である。
【図8B】実施形態に係るラベル貼付器具を反応管に装着した図である。
【図9】実施形態に係る自動分析装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<装置構成>
図1から図3を参照して実施形態に係る自動分析装置1の構成について説明する。本実施形態における「識別子」は、バーコードデータ及びバーコードラベルを含む概念である。また、本実施形態において、フルキャリブレーションを行うモードを「第1モード」とし、ブランク補正キャリブレーションを行うモードを「第2モード」とする。
【0018】
図1に示すように自動分析装置1は、分析ユニット10、印刷ユニット20、読取ユニット30、入力ユニット40、制御ユニット50、及び表示ユニット60を含んで構成されている。
【0019】
<分析ユニット>
分析ユニット10は、標準試料や被検試料の測定を行うユニットである。
【0020】
図2に示すように、分析ユニット10は、試薬ボトル2、試薬ラック3a・3b、試薬庫4a・4b、反応管5、反応ディスク6、被検試料容器7、ディスクサンプラ8、分注アーム9a・9b、サンプリングアーム11、撹拌ユニット12、測光ユニット13、洗浄ユニット14、及び貯水部15を含んで構成されている。
【0021】
試薬ボトル2は、被検試料の各種成分と反応する試薬を納める容器である。試薬ラック3aは複数の試薬ボトル2を収容した状態で試薬庫4aに設置される。同様に、試薬ラック3bは複数の試薬ボトル2を収容した状態で試薬庫4bに設置される。
【0022】
反応管5は、被検試料と試薬を反応させる際に使用される容器である。また、反応管5には標準試料が分注される。反応ディスク6の円周上には、複数の反応管5が配置される。
【0023】
被検試料容器7は、被検試料を納める容器である。ディスクサンプラ8上には、複数の被検試料容器7が配置される。
【0024】
試薬ボトル2内の試薬は、分注アーム9a又は分注アーム9bによって反応管5内に分注される。被検試料容器7内の被検試料は、サンプリングアーム11によって反応管5内に分注される。また、分注アーム9a又は分注アーム9bは、反応管5内に標準試料を分注する。
【0025】
被検試料と試薬が分注された反応管5は、反応ディスク6の回動により、撹拌ユニット12の位置まで移動される。撹拌ユニット12は、被検試料と試薬が入った状態の反応管5を撹拌し、被検試料と試薬を混合させる。
【0026】
撹拌された反応管5は、測光ユニット13の位置まで移動される。測光ユニット13は、反応管5に対して光を照射し、被検試料と試薬との混合液の吸光度等を測定することにより、被検試料の成分分析を行う。
【0027】
また、キャリブレーションを行う際には、所定の標準試料が分注された反応管5が測光ユニット13の位置まで移動され、測光ユニット13が反応管5に対して光を照射し、吸光度を測定する。
【0028】
洗浄ユニット14は、成分分析が完了し混合液が廃棄された反応管5の洗浄を行う。
【0029】
貯水部15は、分析ユニット10で使用される水を蓄える。この水は、洗浄ユニット14における洗浄に使用される。また、この水は、ブランク補正キャリブレーション用の標準試料として用いられる場合もある。分注アーム9a・9b、及び貯水部15が、本実施形態における「分注部」を構成する。
【0030】
<印刷ユニット>
印刷ユニット20は、制御ユニット50(後述)により作成された識別子を出力する。本実施形態において、印刷ユニット20は自動分析装置1に設けられたプリンタである。制御ユニット50(後述)により作成されたバーコードデータに基づいて、プリンタはバーコードラベルを印刷する。なお、印刷ユニット20は自動分析装置1と別体で設けられていてもよい。
【0031】
<読取ユニット>
読取ユニット30は、反応管5に貼付された識別子を読み取る。本実施形態において読取ユニット30は、反応管5に貼付されたバーコードラベルを読み取るバーコードリーダーである。
【0032】
<入力ユニット>
入力ユニット40は、自動分析装置1に対する各種入力を行うために用いられる。入力ユニット40は、例えばキーボードやマウス等の入力手段を含んで構成されている。或いは、入力ユニット40は、表示ユニット60(後述)上に表示されたGUI(Graphical User Interface)を含んでいてもよい。
【0033】
本実施形態における入力ユニット40は、特定の標準試料セットに関する情報及び当該特定の標準試料セットを用いる複数の測定項目を入力するために用いられる。「標準試料セットに関する情報」(以下、「標準試料セット情報」という場合がある)とは、標準試料セット名、当該標準試料セットを識別するための試料ID、レベル等である。「レベル」とは、フルキャリブレーションを行う際に、濃度の異なる標準試料をいくつ用いるか(ある標準試料セットに含まれる標準試料の数)を示す値である。また、本実施形態における入力ユニット40は、第1モード用の識別子と第2モード用の識別子のいずれを作成するかの指示入力(以下、「モード選択指示」という場合がある)に用いられる。
【0034】
入力された情報は、制御ユニット50(関連付け部51)に送られる。本実施形態では、入力ユニット40が「入力部」に該当する。
【0035】
<制御ユニット>
制御ユニット50は、入力ユニット40からの指示入力等に基づいて自動分析装置1の各種制御を行う。図3に示すように、制御ユニット50は、関連付け部51、識別子データ作成部52、主制御部53、解析部54、駆動制御部55、キャリブレーション部56、及び記憶部57を含んで構成されている。本実施形態では、制御ユニット50が「制御部」に該当する。
【0036】
関連付け部51は、入力ユニット40により入力された標準試料セット情報のそれぞれ、及び当該情報と測定項目とを関連付ける。例えば、標準試料セット名として「酵素」、試料IDとして「EnzCalSet」、レベルとして「6」という情報が入力され、測定項目として酵素ALT(Alanine Transaminase)及び酵素AST(Aspartate Amino Transferase)が入力された場合、関連付け部51は、それらを関連付ける。当該関連付けにより、主制御部53は、酵素ALT及び酵素ASTが標準試料セット名「酵素」の標準試料セットを使用するものであることを認識できる。関連付け部51による関連付けの結果は記憶部57に記憶される。
【0037】
識別子データ作成部52は、標準試料セット(或いは標準試料セットのうち1つの標準試料)に対応するバーコードデータを作成する。識別子データ作成部52は、入力ユニット40により入力された標準試料セット名、任意の試料ID、レベル、及びモード選択指示に基づいて、バーコードデータを作成する。例えば標準試料セット名として「酵素」、試料IDとして「EnzCalSet」、レベルとして「6」、モードとして第1モード(フルキャリブレーション)が入力された場合、識別子データ作成部52は、バーコードデータとして「EnzCalSet−k」(k=0〜5)を作成し、印刷ユニット20に出力する。本実施形態では、印刷ユニット20及び識別子データ作成部52が「作成部」に該当する。
【0038】
主制御部53は、入力ユニット40によって特定の標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行う第2モード用の識別子の作成が選択された場合、当該特定の標準試料セット情報と関連付けられた測定項目毎に異なる識別子を作成するよう作成部(印刷ユニット20及び識別子データ作成部52)を制御する。すなわち、入力ユニット40により入力された複数の測定項目に基づいて、識別子データ作成部52は、標準試料の種類だけでなく、測定項目の種類も識別できるようなバーコードデータを作成する。
【0039】
以下、バーコードデータの作成についての具体例を説明する。なお、以下の具体例では、予め測定項目毎に所定の文字列が割り振られているものとする。
【0040】
標準試料セット名として「酵素」、試料IDとして「EnzCalSet」が入力された場合、ブランク補正用のバーコードデータは、「EnzCalSet−0」となる。ここで、主制御部53は、当該バーコードデータに対して、測定項目に割り振られた所定の文字列を付加するよう識別子データ作成部52を制御する。
【0041】
例えば、ある標準試料セットでキャリブレーションを行いたい酵素ASTに文字列「12」が割り振られている場合、主制御部53は、バーコードデータとして「EnzCalSet$12−0」($は試料IDとビットイメージの切れ目を示すためのものであって、この記号でなくともよい。以下同様)となるよう識別子データ作成部52を制御する。印刷ユニット20は、バーコードデータ「EnzCalSet$12−0」に基づいて、バーコードラベル「EnzCalSet$12−0」を印刷する。
【0042】
別の具体例としては、ブランク補正用のバーコードデータ「EnzCalSet−0」に対して、主制御部53は、当該バーコードデータに対して測定項目をビットイメージで表した数字(16進数)を更に付加するよう識別子データ作成部52を制御する。
【0043】
例えば、ある標準試料セットでキャリブレーションを行いたい酵素ALTと酵素ASTそれぞれに文字列「1」と「12」が割り振られていた場合、ビットイメージは、「00000000 00000000 00100000 00000001」となる。これを16進数で表すと「00 00 20 01」となるため、主制御部53は、バーコードデータとして「EnzCalSet$00002001−0」となるよう識別子データ作成部52を制御する。印刷ユニット20は、バーコードデータ「EnzCalSet$00002001−0」に基づいて、バーコードラベル「EnzCalSet$00002001−0」を印刷する。
【0044】
解析部54は、読取ユニット30で読み取った識別子を解析する。例えば、読取ユニット30で「EnzCalSet$12−0」を読み取った場合、解析部54は、「$」と「−」からデータの切れ目を特定し、各情報から各対象を解析する。すなわち、「EnzCalSet$12」部分から当該バーコードラベルが貼られた反応管5は、酵素ASTのキャリブレーションに用いられるという情報、及び「−0」の部分から当該バーコードラベルが貼られた反応管5はブランク補正用に用いられるという情報を取得する。
【0045】
駆動制御部55は、解析部54による取得結果に基づいて、反応管5内に標準試料を分注するよう分注部を駆動させる。例えば、解析部54により「EnzCalSet$12−0」のバーコードラベルが貼られた反応管5は酵素ASTのブランク補正用に用いられるという情報が得られた場合、駆動制御部55は、標準試料として貯水部15に蓄えられた水を反応管5内に分注するよう分注アーム9a(分注アーム9b)を駆動させる。分注アーム9a(分注アーム9b)は、ポンプ(図示なし)により貯水部15から水を吸い上げ、分注アーム9a(分注アーム9b)内を介して反応管5内に水を排出する。
【0046】
キャリブレーション部56は、分注部により反応管5に分注された標準試料に基づいてキャリブレーションを行う。例えば、キャリブレーション部56は、水を含む異なる濃度の標準試料が分注された複数の反応管5を測光ユニット13の光路上に順次配し、測光ユニット13による吸光度測定を行い、その結果から検量線を求める。
【0047】
記憶部57は、識別子データ作成部52により作成されたバーコードデータや、キャリブレーション部56で求められた検量線、及び自動分析装置1による測定結果等を記憶する。
【0048】
<表示ユニット>
表示ユニット60は、自動分析装置1による分析結果や入力ユニット40による入力画面を表示させるモニタ等の表示手段である。
【0049】
<動作>
図4〜図9を参照して本実施形態に係る自動分析装置1のバーコードラベルを作成する動作、及びキャリブレーション動作について説明を行う。
【0050】
<バーコードラベルの作成動作>
図4から図8を参照してバーコードラベルを作成する動作に関して述べる。ここでは、ある標準試料セットを2つの測定項目(酵素ALTと酵素AST)で共用する場合について説明を行う。また、酵素ALTと酵素ASTにはそれぞれ識別番号として文字列「1」と「12」が予め割り振られているものとする。
【0051】
まず、バーコードラベル作成の準備段階として、検査者は、表示ユニット60に表示された標準試料登録画面100(図5参照)に対して、入力ユニット40により標準試料セット名、試料ID、及びレベルの入力を行う。当該入力内容に基づいて、関連付け部51は、標準試料セット名、試料ID、及びレベルの関連付けを行い、その結果を記憶部57に記憶させる(S10)。本実施形態では、標準試料セット名欄101に「酵素キャリブレータ」、試料ID欄102に「EnzCalSet」、レベル欄103に「6」が入力されたものとする。
【0052】
また、検査者は、表示ユニット60に表示された酵素ALTの測定項目設定画面200(図6参照)に対して、当該画面の標準試料名セット欄201にS10で入力した標準試料セット名「酵素キャリブレータ」を入力する。当該入力内容に基づいて、関連付け部51は、標準試料セット(試料ID)と測定項目との関連付けを行い、その結果を記憶部57に記憶させる(S11)。酵素ALTと標準試料セットとの関連付けが完了した後、検査者は、酵素ASTの測定項目設定画面を表示させ、同様の動作を行う。このように、本実施形態では、酵素ALTと酵素ASTの2つの測定項目に対してS10で記憶された標準試料セット「酵素キャリブレータ」(試料ID「EnzCalSet」)を関連付けている。なお、S10及びS11における関連付けの処理は同時に行われてもよい。
【0053】
次に、検査者は、入力ユニット40等により、標準試料登録画面100のラベル印刷ボタン104を操作(クリック)する。当該操作に基づき、制御ユニット50は、ラベル印刷画面300(図7参照)を表示させる(S12)。ラベル印刷画面300には、印刷ユニット20にブランク補正用のバーコードを印刷させる指示を行うブランク補正用ボタン301が表示される。また、ラベル印刷画面300には、印刷ユニット20にフルキャリブレーション用のバーコードを印刷させる指示を行うフルキャリブレーション用ボタン302が設けられている。検査者は、キャリブレーションの態様によりいずれかのボタンを選択的に操作する。
【0054】
ここで、検査者が入力ユニット40等により、ブランク補正用ボタン301を操作した場合(S13でYの場合)、当該操作に基づいて、識別子データ作成部52は、酵素ALT用のバーコードデータ「EnzCalSet$1−0」及び酵素AST用のバーコードデータ「EnzCalSet$12−0」を作成する(S14)。
【0055】
一方、検査者が入力ユニット40等により、フルキャリブレーション用ボタン302を操作した場合(S13でNの場合)、当該操作に基づいて、識別子データ作成部52は、バーコードデータとして「EnzCalSet−k」(k=0〜5)の6枚のバーコードデータを作成する(S15)。
【0056】
S14、又はS15で作成されたバーコードデータは印刷ユニット20に送られる。印刷ユニット20は、当該バーコードデータに基づいてバーコードラベルの印刷を行う(S16)。
【0057】
印刷されたバーコードラベルは、測定項目名と共に専用のラベル貼付器具400(図8A参照)に貼り付けられた上で、反応管5に装着される(図8B参照)。ラベル貼付器具400は、反応管5が嵌め込まれる開口部401と、測定項目名を表示する嵌合部402と、バーコードラベルが貼り付けられる貼付部403とを含んで構成されている。
【0058】
このように、バーコードラベルだけでなく、測定項目名を記載したラベル貼付器具400を用いることにより、検査者はどの測定項目に対応する標準試料が反応管5に入っているかを容易に認識することができる。本実施形態では、ラベル貼付器具400が、「識別子貼付手段」に該当する。
【0059】
なお、印刷されたバーコードラベルは、反応管5の側面等に直接貼付されることでもよい。
【0060】
<キャリブレーション動作>
図9を参照してキャリブレーション動作に関して述べる。本実施形態では、酵素ASTを測定する際のキャリブレーション動作について説明を行う。
【0061】
まず、読取ユニット30で反応管5に装着されたラベル貼付器具400に貼付されたバーコードデータを読み取る(S20)。本実施形態では、読取ユニット30は、酵素AST用のバーコードデータ「EnzCalSet$12−0」を読み取る。
【0062】
解析部54は、S20で読み取ったバーコードデータ「EnzCalSet$12−0」のうち、「EnzCalSet$12」部分から、当該バーコードデータに対応する反応管5は、酵素ASTのキャリブレーションに用いられるという情報、及び「−0」の部分から当該バーコードデータに対応する反応管5はブランク補正用に用いられるという情報を取得する(S21)。当該情報は駆動制御部55に送られる。
【0063】
駆動制御部55は、S21で取得された結果に基づいて分注アーム9aを駆動させ、反応管5内に標準試料として貯水部15内の水を流入させる(S22)。S22により酵素ASTのブランク補正用の標準試料が作成されることとなる。
【0064】
その後、キャリブレーション部56は、S22で作成された標準試料に基づいて、キャリブレーション(ブランク補正用キャリブレーション)を実行する(S23)。
【0065】
<実施形態の作用・効果>
本実施形態に係る自動分析装置及び自動分析装置のキャリブレーション方法の作用及び効果について説明する。
【0066】
自動分析装置1は、標準試料セットを用いてキャリブレーションを行う第1モード用の識別子と、標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行う第2モード用の識別子とを作成する作成部(識別子データ作成部52、印刷ユニット20)を有する。入力ユニット40は、特定の標準試料セットに関する情報と当該特定の標準試料セットを用いる複数の測定項目とを入力するために用いられる。関連付け部51は、入力された特定の標準試料セットに関する情報及び測定項目を関連付ける。制御ユニット50(主制御部53)は、特定の標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行う第2モード用の識別子を作成するときに、当該特定の標準試料セットに関する情報と関連付けられた測定項目毎に異なる識別子を作成するよう作成部を制御する。
【0067】
また、自動分析装置1は、標準試料を反応管5に分注する分注部を有する。読取ユニット30は、反応管5(或いはラベル貼付器具400)に貼付された識別子を読み取る。制御ユニット50は、読取ユニット30で読み取られた識別子を解析する解析部54を有する。制御ユニット50は、解析部54による解析結果に基づいて、反応管5に標準試料を分注するよう分注部を駆動させる。
【0068】
また、自動分析装置1のキャリブレーション方法は、入力ユニット40により、複数の標準試料からなる特定の標準試料セットに関する情報と当該特定の標準試料セットを用いる複数の測定項目とを入力するステップを有する。また、関連付け部51により、入力された特定の標準試料セットに関する情報及び測定項目を関連付けるステップを有する。また、特定の標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行うために用いる識別子を作成するときに、作成部(識別子データ作成部52、印刷ユニット20)により、当該特定の標準試料セットに関する情報と関連付けられた測定項目毎に異なる識別子を作成するステップを有する。また、読取ユニット30により当該識別子を読み取るステップを有する。また、読取ユニット30で読み取られた識別子を解析部54により解析するステップを有する。また、解析結果に基づいて、制御ユニット50により反応管5に標準試料を分注するよう分注部を駆動させるステップを有する。また、分注部によって反応管5に分注された標準試料に基づいてキャリブレーション部56がキャリブレーションを行うステップを有する。
【0069】
このように、制御ユニット50の動作制御により、ブランク補正用キャリブレーション(第2モード)のバーコードラベルを作成するときに、複数の測定項目(例えば酵素ALTと酵素AST)を区別できるようなバーコードデータを得ることができる。すなわち、キャリブレーションの容易化を図ることができる。また、当該バーコードラベルを、標準試料を入れる反応管5(或いは、ラベル貼付器具400)に貼り付け、当該バーコードラベルを読み取ることにより、測定項目の設定や選択が不要となる。従って、キャリブレーション動作における煩雑さを解消することができる。なお、ブランク補正用キャリブレーションは頻繁に行われるため、より効果的である。
【0070】
<その他>
前述の実施形態では、識別子としてバーコードラベル(バーコードデータ)を例に説明を行ったが、ある情報を識別させるための機能を有するものであればこれに限られない。例えば、識別子としてRFIDを用いることも可能である。この場合、印刷ユニット20の代わりにRFIDタグを作成するユニットを設けることが望ましい。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 自動分析装置
10 分析ユニット
20 印刷ユニット
30 読取ユニット
40 入力ユニット
50 制御ユニット
51 関連付け部
52 識別子データ作成部
53 主制御部
54 解析部
55 駆動制御部
56 キャリブレーション部
57 記憶部
60 表示ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準試料を用いてキャリブレーションを行う自動分析装置であって、
複数の標準試料からなる標準試料セットを用いてキャリブレーションを行う第1モード用の識別子と、前記標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行う第2モード用の識別子とを作成する作成部と、
特定の前記標準試料セットに関する情報と当該特定の標準試料セットを用いる複数の測定項目とを入力するための入力部と、
入力された前記情報及び前記測定項目を関連付ける関連付け部と、
前記特定の標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行う前記第2モード用の識別子を作成するときに、当該特定の標準試料セットに関する情報と関連付けられた前記測定項目毎に異なる識別子を作成するよう前記作成部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記標準試料を反応管に分注する分注部と、
前記反応管に貼付された前記識別子を読み取る読取部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記読取部で読み取られた前記識別子を解析する解析部を有し、
前記解析部による解析結果に基づいて、前記反応管に前記標準試料を分注するよう前記分注部を駆動させることを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記標準試料を反応管に分注する分注部と、
前記識別子を貼付する貼付部を有し、前記反応管に装着される識別子貼付手段と、
前記識別子貼付手段に貼付された前記識別子を読み取る読取部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記読取部で読み取られた前記識別子を解析する解析部を有し、
前記解析部による解析結果に基づいて、前記反応管に前記標準試料を分注するよう前記分注部を駆動させることを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記分注部は、
水を蓄える貯水部を有し、
前記制御部は、
前記標準試料として前記貯水部に蓄えられた内部水を前記反応管内に配置するよう前記分注部の動作制御を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記分注部により前記反応管に分注された前記標準試料に基づいてキャリブレーションを行うキャリブレーション部を有することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記標準試料セットに関する情報は、標準試料名、試料ID、及び前記標準試料セットとしていくつの標準試料を準備するかを示す値であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記第1モードはフルキャリブレーションを行うモードであり、前記第2モードは、ブランク補正キャリブレーションを行うモードであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項8】
入力部により、複数の標準試料からなる特定の標準試料セットに関する情報と当該特定の標準試料セットを用いる複数の測定項目とを入力するステップと、
関連付け部により、入力された前記情報及び前記測定項目を関連付けるステップと、
前記特定の標準試料セットのうち1つの標準試料を用いてキャリブレーションを行うために用いる識別子を作成するときに、作成部により、当該特定の標準試料セットに関する情報と関連付けられた前記測定項目毎に異なる識別子を作成するステップと、
読取部により当該識別子を読み取るステップと、
前記読取部で読み取られた前記識別子を解析部により解析するステップと、
前記解析結果に基づいて、制御部により前記反応管に前記標準試料を分注するよう分注部を駆動させるステップと、
前記分注部によって前記反応管に分注された前記標準試料に基づいてキャリブレーション部がキャリブレーションを行うステップと、
を備えることを特徴とする自動分析装置のキャリブレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2012−220431(P2012−220431A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88866(P2011−88866)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】