説明

自動分析装置

【課題】臨床検査用の自動分析装置に係わり、試薬保冷庫と、試薬保冷庫に備わる試薬ボトルのデータ読み取り窓に結露防止用のヒータを有した臨床検査用の自動分析装置において、試薬保冷庫とデータ読み取り窓に十分な間隔が無く、断熱材による十分な断熱作用が得られない場合に関して、試薬保冷庫内部へヒータからの熱影響を低減する。
【解決手段】試薬保冷庫とデータ読み取り窓の接触面にペルチェ素子を取り付け、ペルチェ素子の熱輸送効果を利用することで、試薬保冷庫側からデータ読み取り窓側へ熱輸送し、試薬への熱影響を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に試薬保冷庫と、試薬保冷庫に備わる試薬ボトルのデータ読み取り窓に、結露防止用のヒータを有した自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査用の自動分析装置では、装置内部に試薬を保管するユニットを有する。保管する試薬は、試薬の劣化を防ぐために低温で保管することを必要とし、当該ユニットは一般的に試薬保冷庫と称される。試薬保冷庫はこれらユニットの外周をスポンジなどの断熱材で覆い、外部からの熱影響を低減している。
【0003】
試薬保冷庫の内部には試薬ボトルを収納する回転可能な試薬収納ディスクを有し、さらに試薬保冷庫の外周の一部には試薬ボトルに書かれた試薬情報、例えばバーコードなどを読み取るためのデータ読み取り窓が設けられている。試薬ボトル収納ディスクが回転することで各試薬ボトルがデータ読み取り窓へ移動し、試薬保冷庫の外部に設置されたデータ読み取り装置、例えばバーコードリーダなどを用い、データ読み取り窓を通して、試薬情報を読み取る。
【0004】
このデータ読み取り窓は試薬保冷庫内の冷気で低温となり、外気との温度差で結露が発生する。データ読み取り窓に結露が発生するとデータ読み取り装置による試薬情報の読み取り動作に障害が起こるため、例えば特許文献1に示すようにデータ読み取り窓の外周を電熱線ヒータなどで加熱し、結露を防止する。
【0005】
従来の自動分析装置ではデータ読み取り窓と試薬保冷庫の接触面にスポンジなどの断熱材を挟み込み、相互の熱影響の低減を図っている。しかし、試薬保冷庫の外周の一部に設けられるデータ読み取り窓は試薬保冷庫の冷却性能に影響を及ぼすため、できるだけ小さくする必要がある。またデータ読み取り窓から試薬情報を読み取るための十分な視野を確保するには、データ読み取り窓と試薬ボトルを近接して設置する必要があり、データ読み取り窓と試薬保冷庫は大きな間隔を取ることができない。このためデータ読み取り窓と試薬保冷庫の接触面に十分な厚みを持つ断熱材を設置することができず、効果的な断熱作用を得ることができない。
【0006】
ここで、データ読み取り窓付近の試薬への熱影響を避けるため、従来の自動分析装置で実施している対策例を挙げる。
(1)試薬ボトル収納ディスクを一定の時間間隔で一定角度回転させ、特定の試薬の昇温を防ぐ。
【0007】
しかしながらこの対策方法では、操作者の安全を考慮し、操作者が試薬保冷庫内にアクセスする場合、回転動作を強制的に止める機構、例えば試薬保冷庫のカバーが空いたことを検知する機構が必要となるため、装置構成が複雑化してしまう。
【0008】
また、試薬ボトル収納ディスクを回転するための必要な制御機構を常時稼動状態にしておかなければならず、電流を消費するため不経済である。
(2)試薬ボトル収納ディスクの収納スペースに一部空きスペースを設け、装置のスタンバイ状態など、長時間、試薬ボトル収納ディスクが回転動作しない場合、試薬ボトル収納ディスクの空きスペースをデータ読み取り窓の位置で待機させ、発熱しているデータ読み取り窓から試薬ボトルを遠ざける。
【0009】
ところが、この対策方法の場合では、試薬ボトル収納ディスクに空きスペースを設けるため、試薬ボトルの収納数が減少し、自動分析装置の同時測定項目に関する仕様の低下を招くこととなる。
【0010】
また、何らかの外乱により試薬ボトル収納ディスクの位置が所定の位置から変化した場合、この状態を装置が検知し、自動修正できなければ、データ読み取り窓に位置する特定の試薬が昇温してしまう。
【0011】
【特許文献1】特開平08−211066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明では、係る問題に関して、試薬保冷庫と、試薬保冷庫に備わる試薬ボトルのデータ読み取り窓に結露防止用のヒータを有した自動分析装置に関し、データ読み取り窓と試薬保冷庫の接触部に十分な厚みを持つ断熱材を設置する間隔を取ることができず、効果的な断熱作用を得ることができない場合において、ヒータ加熱による熱影響が試薬に及ぶことを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために本発明では、データ読み取り窓と試薬保冷庫間に熱輸送部を設ける。熱輸送部にて熱が輸送される間に周囲に熱を放散するものは本発明の目的としてはあまり適さないため、ペルチェ素子などの電子冷却装置を用いることが好適である。ペルチェ素子の熱輸送作用を利用し、データ読み取り窓のヒータ加熱による熱影響が試薬保冷庫内部に及ぶことを効果的に低減することができる。また、銅,アルミなどの高熱伝導材を熱輸送する部材間に橋渡しし、かつ該ブリッジの周囲に熱が放散しないように断熱材を設けることでも良い。断熱材としては他に真空断熱のために熱伝導材の外側を覆う部材を設け、熱伝導材と覆いの間を真空とすることでも良い。
【発明の効果】
【0014】
臨床検査用の自動分析装置に関し、特に試薬保冷庫と、試薬保冷庫に備わる試薬ボトルのデータ読み取り窓に、結露防止用のヒータを有した自動分析装置において、ペルチェ素子を用いヒータ加熱による熱影響が試薬に及ぶことを低減したことで、試薬劣化などを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
本発明の実施例を示す。自動分析装置は検体を設置する回転可能な検体ディスク1と、試薬ボトルを収納する試薬保冷庫2と、検体および試薬を分注する分注機構3と、分注した検体および試薬を反応容器4で混合・反応させる反応器5を持つ。反応容器内の反応液は反応液吸引機構6により測定装置7へ送られ分析する。反応容器4は反応容器収納部8に収納され、反応容器搬送機構9により反応器5へと移動する。
【0017】
また、分析終了後の反応容器4は、反応容器搬送機構9で所定の廃棄コンテナ10に投棄される。試薬保冷庫2は保冷庫内部に回転可能な試薬ボトル収納ディスク11を持ち、試薬ボトル収納ディスク11上に試薬ボトル12を試薬保冷庫2の円周方向に沿って配置する。
【0018】
試薬保冷庫2はその底面に取り付けられた冷却ユニット13で冷却され、外周は断熱材14で覆われている。試薬保冷庫2の外周の一部には試薬ボトル12の試薬情報17を読み取るため、データ読み取り窓15が設置されている。試薬ボトル収納ディスク11が回転することで各試薬ボトル12がデータ読み取り窓15の前に移動し、試薬保冷庫2の外部に設置されたデータ読み取り装置16を用い、データ読み取り窓15を通して試薬情報17を読み取ることができる。
【0019】
試薬保冷庫2の外周の一部に設けられたデータ読み取り窓15は、試薬保冷庫内の冷気で低温となり、外気との温度差でデータ読み取り窓15に結露が発生する。結露が発生するとデータ読み取り機能に障害が起こるため、データ読み取り窓15の外周に電熱線ヒータ18を取り付け、データ読み取り窓15を加熱し、結露発生を抑制し、試薬情報読み取りにおける信頼性を向上させる。
【0020】
データ読み取り窓15と試薬保冷庫2の接触面には、ヒータ加熱による熱影響が試薬に及ぶことを低減するためペルチェ素子19を中間層として取り付ける。ペルチェ素子19の吸熱面を試薬保冷庫側に、また放熱面をデータ読み取り窓側とし、試薬保冷庫側からデータ読み取り窓側へ熱輸送を行う。なおペルチェ素子両面の接触面には熱伝導性能を向上させるため熱伝導性グリースを塗布する。
【0021】
また、データ読み取り窓15およびペルチェ素子19は断熱性の固定カバー20により固定する。固定には固定用ネジ21を利用するが、締め付け時、ペルチェ素子19に過度の圧力が加わることを避けるため、固定用ネジ21と固定カバー20の間にバネ22を設け、適度な圧力で固定できるように調整する。
【0022】
また最適な条件でペルチェ素子19を駆動させるため、ペルチェ素子19の両面、および試薬保冷庫内のデータ読み取り窓付近に温度センサ23を取り付ける。各センサからの温度情報をもとに最適な熱輸送量を算出し、ペルチェ素子19の印加電流を制御する。
【0023】
これにより、電熱線ヒータの熱が試薬保冷庫側に流入するのを防ぐことができ、ひいては試薬への熱影響を低減し、試薬情報読み取り性能を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】臨床検査用の自動分析装置について、各機構の配置を示した図である。(実施例)
【図2】試薬保冷庫とデータ読み取り窓、およびデータ読み取り装置の位置関係を示した図である。(実施例)
【図3】データ読み取り窓の周辺部の詳細を示した図である。(実施例)
【符号の説明】
【0025】
1…検体ディスク、2…試薬保冷庫、3…分注機構、4…反応容器、5…反応器、6…反応液吸引機構、7…測定装置、8…反応容器収納部、9…反応容器搬送機構、10…廃棄コンテナ、11…試薬ボトル収納ディスク、12…試薬ボトル、13…冷却ユニット、14…断熱材、15…データ読み取り窓、16…データ読み取り装置、17…試薬情報、18…電熱線ヒータ、19…ペルチェ素子、20…固定カバー、21…固定用ネジ、22…バネ、23…温度センサ、24…試薬保冷庫カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を収容した試薬容器を複数載置可能な試薬保冷庫と、
該試薬保冷庫内の試薬容器に貼付された識別情報を該試薬保冷庫外から読み取るための光学的透過性を備えた窓部と、
該窓部を加熱するヒータと、
を備えた自動分析装置において、
該窓部に試薬容器を載置する側から試薬保冷庫外へ熱を輸送する熱輸送部を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記熱輸送部はペルチェ素子の熱輸送作用を利用したものであることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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