説明

自動分析装置

【課題】低コストで分析精度を確保することができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】検体の分析項目毎に、キャリブレーション処理の実行を設定する設定手段としての入力部32と、キャリブレーション処理の実行に関する設定情報を記憶する設定情報記憶部34aと、読取部14b,16bが読み取った試薬容器14a,16aに貼付された試薬情報と設定情報記憶部34aが記憶する設定情報とに応じて、キャリブレーション処理を実行するか否かを判定する実行判定部35aと、実行判定部35aの判定結果に応じて、キャリブレーション処理とブランク処理との中から実行する実行指令を受付する受付部35cと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応容器に分注し、この反応容器内で反応した反応液の吸光度を測定することによって検体を分析する自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体と試薬とを反応容器に分注し、この反応容器内で反応した反応液の吸光度を測定することによって検体を分析する自動分析装置が知られている。この自動分析装置は、検体の分析項目毎に、既知の結果を示すキャリブレータに対して分析項目に応じて設定される試薬を用いて実際に分析し、この分析結果をもとに測定処理の基準となる検量線を設定するキャリブレーション処理を行う。その後、この自動分析装置は、キャリブレーション処理を行った試薬に対して、イオン交換水や生理食塩水などのブランク試料を用いて分析し、この分析結果をもとにキャリブレーション処理において設定された検量線を補正するブランク処理を行うことによって、分析精度を確保している。
【0003】
また、キャリブレーション処理とブランク処理との結果に対して精度管理上の有効期限をそれぞれ設定し、どちらか一方の有効期限が過ぎた場合、自動的にキャリブレーション処理とブランク処理とを併せてセットで受付し、キャリブレーション処理とブランク処理とを実行する自動分析装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−170191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動分析装置が行う特定の分析項目、たとえば、酵素項目においては、試薬が補充された場合であっても、キャリブレーション処理による検量線がほぼ同じ結果になる。このため、ブランク処理のみを行うことによって、分析精度を十分に確保することができるにも関わらず、キャリブレーション処理も行わなければならないため、コストが増加してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストで分析精度を確保することができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体の分析項目毎にキャリブレータを分析するキャリブレーション処理とブランク試料を分析するブランク処理とを行うことによって検量線を設定し、該検量線を用いて反応容器内で前記検体と試薬とを反応させた反応液の吸光度を測定値に換算して前記検体を分析する自動分析装置において、前記検体の分析項目毎に、前記キャリブレーション処理の実行を設定する設定手段と、前記設定手段が設定した前記キャリブレーション処理の実行に関する設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、前記試薬を収容した試薬容器に貼付され、該試薬の分析項目とボトル番号とロット番号とを含む試薬情報を記憶した記憶媒体から前記試薬情報を読み取る読取手段と、前記読取手段が読み取った前記試薬情報と前記設定情報記憶手段が記憶する前記設定情報とに応じて、前記キャリブレーション処理を実行するか否かを判定する実行判定手段と、前記実行判定手段の判定結果に応じて、キャリブレーション処理およびブランク処理の中から実行すべき処理の実行指令を受付する受付手段と、を備え、前記受付手段は、前記実行判定手段が前記キャリブレーション処理を実行しないと判定した場合、前記キャリブレーション処理の実行指令の受付を停止することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、実行済の前記ブランク処理に使用された試薬の前記試薬情報を記憶するブランク情報記憶部と、前記ブランク情報記憶部が記憶する実行済の前記ブランク処理に使用された試薬の前記試薬情報と前記読取手段が読み取った前記試薬情報とが一致するか否かを判定する試薬情報判定手段と、を備え、前記受付手段は、前記試薬情報判定手段による判定結果が不一致である場合、前記ブランク処理の実行指令を受付することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、実行済の前記キャリブレーション処理に使用された試薬の前記試薬情報を記憶するキャリブレーション情報記憶部を備え、前記試薬情報判定手段は、前記キャリブレーション情報記憶部が記憶する実行済の前記キャリブレーション処理に使用された試薬の前記試薬情報と前記読取手段が読み取った前記試薬情報とが一致するか否かを判定し、前記受付手段は、前記試薬情報判定手段による判定結果が不一致である場合、前記キャリブレーション処理の実行指令を受付することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記ブランク処理の実行指令とともに、精度管理試料を分析する精度管理処理の実行指令を受付することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる自動分析装置は、試薬を収容した試薬容器に貼付された記憶媒体から読み取った試薬情報と検体の分析項目毎に設定されたキャリブレーション処理の実行に関する設定情報とに応じて、キャリブレーション処理を実行するか否かを判定し、キャリブレーション処理を実行しないと判定した場合、キャリブレーション処理の実行指令の受付を停止することによって、必要な検体の分析項目の場合のみキャリブレーション処理の実行を受付するため、低コストで分析精度を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態にかかる自動分析装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、第1試薬庫および第2試薬庫に収納された試薬の試薬情報を示す試薬情報テーブルを示す図である。
【図3】図3は、第1試薬庫および第2試薬庫に収容された試薬に対してブランク処理および精度管理処理の実行を設定する選択画面を示す図である。
【図4】図4は、検体の分析項目毎に、キャリブレーション処理の実行を設定するキャリブレーション処理用分析項目選択画面を示す図である。
【図5】図5は、自動分析装置の受付処理部による受付処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、第1試薬庫および第2試薬庫に収容された試薬に対してブランク処理および精度管理処理の実行を設定する選択画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明にかかる自動分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によって発明は限定されるものではない。また、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態にかかる自動分析装置の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明にかかる一実施の形態にかかる自動分析装置1は、試薬と検体とを反応させ、この反応液の吸光度を測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3と、を備える。自動分析装置1は、これら二つの機構が連携することによって複数の検体の分析を自動的に行う。
【0015】
まず、測定機構2について説明する。図1に示すように、測定機構2は、血液や尿等の液体である検体を収容した複数の検体容器11aを保持する検体ラック11bを図中の矢印方向に順次移送する検体移送部11と、検体移送部11上の検体吸引位置P1で停止した検体容器11aから反応容器に検体を分注する検体分注機構12と、反応容器13内に分注される第1試薬が収容された試薬容器14aを複数収容する第1試薬庫14と、第1試薬庫14の試薬吸引位置P2で停止した分注対象の試薬容器14aから反応容器13に第1試薬を分注する第1試薬分注機構15と、反応容器13内に分注される第2試薬が収容された試薬容器16aを複数収容する第2試薬庫16と、第2試薬庫16の試薬吸引位置P3で停止した分注対称の試薬容器16aから反応容器13に第2試薬を分注する第2試薬分注機構17と、反応容器13に分注された液体を攪拌する攪拌部18と、反応容器13に分注された液体の吸光度を測定する測光部19と、測光部19による測定が終了した反応容器13を洗浄する洗浄部20と、反応容器13への検体や試薬の分注、攪拌、測光および洗浄を行うために反応容器13を所定の位置まで搬送する反応槽21と、を備える。
【0016】
また、試薬容器14aおよび試薬容器16aには、内部に収容する試薬を識別する試薬情報が記憶された記憶媒体(図示せず)がそれぞれ貼付されている。記憶媒体は、バーコードまたは2次元コード等によって実現され、試薬に関する試薬情報を記憶する。また、第1試薬庫14および第2試薬庫16の外周部には、記憶媒体を光学的に読み取る読取部14bおよび読取部16bがそれぞれ設けられている。読取部14b,16bは、バーコードリーダ等によって実現され、記憶媒体に対して赤外光または可視光を発し、記憶媒体からの反射光を処理することによって、記憶媒体に記憶された試薬に関する試薬情報を読み取る。読取部14b,16bは、読み取った試薬情報を制御機構3に出力する。ここで、試薬情報とは、少なくとも試薬の分析項目、ボトル番号、ロット番号、種類、液量、ボトルの形状、有効期限および開封後有効期限などをいう。
【0017】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、CPU等によって実現され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する制御部31と、キーボード、マウス、入出力機能を備えたタッチパネル等によって実現され、検体の分析に必要な情報や自動分析装置1の操作情報が入力される入力部32と、測光部19によって測定された吸光度の測定結果に基づいて検体の成分分析等を行う分析部33と、ハードディスクやメモリ等によって実現され、自動分析装置1の各部の処理および動作にかかる各種プログラムや検体の分析に関する情報を含む各種情報を記憶する記憶部34と、検体の分析項目毎にキャリブレーション処理の実行とブランク処理との実行を受付する受付処理部35と、ディスプレイやプリンタ等によって実現され、検体の分析に関する情報等を出力する出力部36と、を備える。
【0018】
また、入力部32は、検体の分析項目毎にキャリブレータを分析するキャリブレーション処理の実行を設定するとともに、試薬の試薬情報毎にブランク試料を分析するブランク処理の実行および/または精度管理試料を分析する精度管理処理の実行を設定する設定手段として機能する。
【0019】
また、記憶部34は、設定情報記憶部34a、試薬情報記憶部34b、キャリブレーション情報記憶部34cおよびブランク情報記憶部34dを有する。設定情報記憶部34aは、操作者が入力部32に入力したキャリブレーション処理の実行に関する設定情報とともに、ブランク処理の実行および/または精度管理処理の実行に関する設定情報を記憶する。試薬情報記憶部34bは、読取部14b,16bが試薬容器14a,16aに貼付された記憶媒体から読み取った試薬情報を記憶する。キャリブレーション情報記憶部34cは、実行済のキャリブレーション処理に使用された試薬の試薬情報および分析結果を記憶する。試薬情報記憶部34bは、実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報および分析結果を記憶する。ここで、実行済のキャリブレーション処理に使用された試薬の試薬情報および分析結果とは、自動分析装置1に電源が投入された状態で検体の分析処理が停止している場合において、分析処理に伴う前処理あるいは後処理のときに、キャリブレーション処理の実行に使用された試薬の最新の試薬情報および分析結果をいう。また、実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報および分析結果とは、自動分析装置1に電源が投入された状態で検体の分析処理が停止している場合において、分析処理に伴う前処理あるいは後処理のときに、ブランク処理の実行に使用された試薬の最新の試薬情報および分析結果をいう。
【0020】
また、受付処理部35は、実行判定部35a、試薬情報判定部35bおよび受付部35cを有する。実行判定部35aは、読取部14b,16bが試薬容器14a,16aに貼付された記憶媒体から読み取った試薬情報と設定情報記憶部34aが記憶する設定情報とに応じて、キャリブレーション処理を実行するか否かを判定する。試薬情報判定部35bは、読取部14b,16bが読み取った試薬情報とブランク情報記憶部34dが記憶する実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報とが一致するか否かを判定する。試薬情報判定部35bは、読取部14b,16bが読み取った試薬情報とキャリブレーション情報記憶部34cが記憶する実行済のキャリブレーション処理に使用された試薬の試薬情報とが一致するか否かを判定する。受付部35cは、実行判定部35aの判定結果に応じて、キャリブレーション処理およびブランク処理の中から実行すべき処理の実行指令を受付する。受付部35cは、実行判定部35cがキャリブレーション処理を実行しないと判定した場合、キャリブレーション処理の実行指令の受付を停止する。また、受付部35cは、試薬情報判定手段が読取部14b,16bが読み取った試薬情報と実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報とが不一致と判定した場合、ブランク処理の実行指令を受付する。さらに、受付部35cは、試薬情報判定手段が読取部14b,16bが読み取った試薬情報と実行済のキャリブレーション処理に使用された試薬の試薬情報とが不一致と判定した場合、キャリブレーション処理の実行指令を受付する。
【0021】
以上のように構成された自動分析装置1では、反応槽21上で順次移送される複数の反応容器13に対して、第1試薬分注機構15が第1試薬庫14の試薬吸引位置P2で停止した分注対象の試薬容器14aから第1試薬を分注後、検体分注機構12が検体吸引位置P1で停止した検体容器11aから検体を分注し、第2試薬分注機構17が第2試薬庫16の試薬吸引位置P3で停止した分注対象の試薬容器16aから第2試薬を分注する。その後、測光部19が第1試薬、検体および第2試薬を反応させた状態の反応液の吸光度を測定し、この測定結果もとに分析部33が分析することによって、検体の成分分析等が自動的に行われる。その後、洗浄部20が測光部19によって測定が終了した後に搬送される反応容器13を搬送させながら洗浄する。その後、洗浄された反応容器13を再利用する。
【0022】
ここで、図2を参照して、第1試薬庫14および第2試薬庫16が収容する試薬について説明する。図2は、第1試薬庫および第2試薬庫に収容された試薬の試薬情報を示す試薬情報テーブルの一例を示す図である。
【0023】
図2に示す試薬情報テーブルR1は、第1試薬庫14および第2試薬庫16に収容された試薬の試薬情報がそれぞれ記載されている。第1試薬庫14には、たとえば、分析項目が「ALT」、ロット番号が「1000」およびボトル番号が「0001」という情報が記載されている。一方、第2試薬庫16には、たとえば、分析項目が「ALT」、ロット番号が「3000」およびボトル番号が「1001」という情報が記載されている。
【0024】
つぎに、図3を参照して、第1試薬庫14および第2試薬庫16に収容された試薬に関する試薬情報に基づいて、ブランク処理および精度管理処理の設定について説明する。図3は、第1試薬庫および第2試薬庫に収容された試薬に対してブランク処理および精度管理処理の実行を設定する選択画面の出力部のディスプレイにおける表示例を示す図である。
【0025】
図3に示す選択画面W1には、第1試薬庫14および第2試薬庫16に収容された試薬に対してブランク処理および精度管理処理の実行を設定する設定テーブルR2が表示されている。操作者は、入力部32のマウス等を用いて分析項目に応じて設定される試薬のボトル番号に対応するチェックボックスの中から所望のチェックボックスにカーソルY1を移動し、マウスのクリック等で選択する。これにより、チェックボックスには、チェック記号「レ」が表示される。その後、操作者は、OKボタンB1にカーソルY1を移動し、マウスをクリックすることによってブランク処理および精度管理処理の実行の設定を確定する。このようにして、図3では、たとえば、第1試薬のロット番号が「1000」およびボトル番号が「0001」であり、第2試薬のロット番号が「3000」およびボトル番号が「1001」である分析項目「ALT」では、チェックボックスCG11,CG21にブランク処理および精度管理処理の実行が設定されている。また、第1試薬のロット番号が「2000」およびボトル番号が「0001」であり、第2試薬のロット番号が「4000」およびボトル番号が「1001」である分析項目「AST」では、チェックボックスCG14にブランク処理の実行が設定されている。一方、第1試薬のロット番号「2000」およびボトル番号が「0001」であり、第2試薬のロット番号「4000」およびボトル番号が「1001」である分析項目「AST」では、精度管理処理の実行が設定されていない。設定テーブルR2において設定された内容に対応するブランク処理および精度管理処理の実行に関する設定情報は、入力部32から制御部31を介して設定情報記憶部34aに出力され記憶される。
【0026】
本発明の一実施の形態にかかる自動分析装置1においては、検体の分析項目毎に、キャリブレーション処理の実行とブランク処理の実行とを別けて設定する。なお、キャリブレーション処理を行って検量線を設定した場合には、ブランク処理を併せて行い、設定した検量線の補正を行うことが望ましい。
【0027】
図4を参照して、検体の分析項目毎に、実行するキャリブレーション処理の設定について説明する。図4は、検体の分析項目毎に、キャリブレーション処理を実行する分析項目を選択するキャリブレーション処理用分析項目選択画面の出力部のディスプレイにおける表示例を示す図である。
【0028】
図4に示すキャリブレーション処理用分析項目選択画面W2には、検体の分析項目毎に、キャリブレーション処理の実行を設定するキャリブレーション処理用分析項目選択テーブルR3が表示されている。操作者は、入力部32のマウス等を用いて検体の分析項目に対応するチェックボックスの中から所望のチェックボックスにカーソルY1を移動し、マウスをクリックすることによって選択する。これにより、チェックボックスには、チェック記号「レ」が表示される。その後、操作者は、OKボタンB2にカーソルY1を移動し、マウスをクリックすることによってキャリブレーション処理の実行の設定を確定する。このようにして、図4では、たとえば、分析項目「ALT」では、チェックボックスCG31にキャリブレーション処理の実行が設定されている。キャリブレーション処理用分析項目選択テーブルR3において設定された内容に対応するキャリブレーション処理の実行に関する設定情報は、入力部32から制御部31を介して設定情報記憶部34aに出力され記憶される。
【0029】
つぎに、図5に示すフローチャートを参照して、自動分析装置1の受付処理部35による受付処理について説明する。なお、以下では、分析項目に応じて設定される試薬を第1試薬庫14に収容した場合の一連の処理を説明する。
【0030】
まず、受付処理部35は、制御部31を介して、新たに受付した試薬があるか否かを判断する(ステップS101)。具体的には、自動分析装置1に電源が投入された状態で分析処理が停止している場合において、前処理あるいは後処理のとき、読取部14bが試薬容器14aに貼付された記憶媒体から読み取った試薬情報が試薬情報記憶部34bに記憶されているか、または操作者によって入力部32に入力された情報に基づいて新たに受付した試薬があるか否かを判断する。新たに受付した試薬がないと判断した場合(ステップS101:No)、このステップS101の判断処理を繰り返す。一方、新たに受付した試薬があると判断した場合(ステップS101:Yes)、受付処理部35は、制御部31を介して、試薬情報記憶部34bから新たに受付した試薬の試薬情報を取得する(ステップS102)。
【0031】
その後、受付処理部35は、制御部31を介して、設定情報記憶部34aに記憶された設定情報を取得する(ステップS103)。具体的には、図4に示すキャリブレーション処理用分析項目選択テーブルR3で設定されたキャリブレーション処理の実行に関する設定情報を取得する。
【0032】
その後、実行判定部35aは、受付処理部35が取得した試薬情報と設定情報とに応じて、受付した試薬に対してキャリブレーション処理を実行するか否かを判定する(ステップS104)。具体的には、試薬情報の分析項目と設定情報の分析項目とが一致するか否かを判断する。受付した試薬に対してキャリブレーション処理を実行しないと判定した場合(ステップS104:No)、ステップS105に移行する。一方、受付した試薬に対してキャリブレーション処理を実行すると判定した場合(ステップS104:Yes)、ステップS107に移行する。
【0033】
ステップS105において、試薬情報判定部35bは、受付した試薬の試薬情報とブランク情報記憶部34dが記憶する実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報とが一致するか否かを判定する。具体的には、試薬情報判定部35bは、受付した試薬の試薬情報におけるボトル番号と実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報におけるボトル番号とが一致するか否かを判定する。受付した試薬の試薬情報と実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報とが不一致すると判定した場合(ステップS105:No)、受付部35cは、受付した試薬に対してブランク処理および精度管理処理の実行指令を受付し(ステップS106)、本処理を終了する。一方、受付した試薬の試薬情報と実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報とが一致すると判定した場合(ステップS105:Yes)、本処理を終了する。
【0034】
ステップS107において、試薬情報判定部35bは、受付した試薬の試薬情報とキャリブレーション情報記憶部34cが記憶する実行済のキャリブレーション処理に使用された試薬の試薬情報とが一致するか否かを判定する。具体的には、試薬情報判定部35bは、受付した試薬の試薬情報における分析項目と実行済のキャリブレーション処理に使用された試薬の試薬情報における分析項目とが一致するか否かを判定する。受付した試薬の試薬情報と実行済のキャリブレーション処理に使用された試薬の試薬情報とが不一致すると判定した場合(ステップS107:No)、ステップS108に移行する。一方、受付した試薬の試薬情報と実行済のキャリブレーション処理に使用された試薬の試薬情報とが一致すると判定した場合(ステップS107:Yes)、ステップS111に移行する。
【0035】
ステップS108において、試薬情報判定部35bは、受付した試薬の試薬情報とブランク情報記憶部34dが記憶する実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報と一致するか否かを判定する。受付した試薬の試薬情報と実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報とが不一致すると判定した場合(ステップS108:No)、受付部35cは、受付した試薬に対してキャリブレーション処理、ブランク処理および精度管理処理の実行指令を受付し(ステップS109)、本処理を終了する。一方、受付した試薬の試薬情報と実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報とが一致すると判定した場合(ステップS108:Yes)、受付部35cは、受付した試薬に対してキャリブレーション処理の実行指令を受付し(ステップS110)、本処理を終了する。
【0036】
ステップS111において、試薬情報判定部35bは、受付した試薬の試薬情報とブランク情報記憶部34dが記憶する実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報とが一致するか否かを判定する。受付した試薬の試薬情報と実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報とが不一致すると判定した場合(ステップS111:No)、受付部35cは、受付した試薬に対してブランク処理および精度管理処理の実行指令を受付し(ステップS112)、本処理を終了する。一方、受付した試薬の試薬情報と実行済のブランク処理に使用された試薬の試薬情報とが一致すると判定した場合(ステップS111:Yes)、本処理を終了する。
【0037】
本発明の一実施の形態では、実行判定部35aが、読取部14b,16bが試薬容器14a,16aに貼付された記憶媒体から読み取った試薬情報と設定情報記憶部34aが記憶する設定情報とに応じて、キャリブレーション処理を実行するか否かを判定し、実行判定部35aがキャリブレーション処理を実行しないと判定した場合、受付部35cがキャリブレーション処理の実行指令の受付を停止する。したがって、必要な検体の分析項目の場合のみキャリブレーション処理の実行を受付する。すなわち、キャリブレーション処理とブランク処理との実行を別けて設定するため、キャリブレーション処理とブランク処理とをセットで行う必要がない。この結果、キャリブレーション処理によるコスト負担を低減するとともに、分析精度を確保することができる。
【0038】
また、本発明の一実施の形態では、試薬情報判定部35bが、実行済のキャリブレーション処理に使用された試薬の試薬情報と読取部14b,16bが読み取った試薬容器14a,16aに貼付された記憶媒体に記憶された試薬情報とが一致するか否かを判定することによって、実行済のキャリブレーション処理による分析結果および実行済のブランク処理による分析結果を使用することができるので、キャリブレーション処理によるコスト負担をより低減するとともに、ブランク処理によって生じる試薬の無駄を防止することができる。さらに、実行済のキャリブレーション処理およびブランク処理による分析結果を使用することによって、キャリブレーション処理およびブランク処理に費やす時間を防止することができ、自動分析装置1全体の分析処理の効率化を図ることができる。
【0039】
また、本発明の一実施の形態では、試薬情報のボトル番号毎に、ブランク処理および精度管理の実行を設定していたが、たとえば、図6に示すように、試薬情報のロット番号毎に、ブランク処理および精度管理処理の実行を設定するようにしてもよい。この場合には、分析項目において同一のロット番号が複数あるとき、一つのロット番号のみを表示し、図6に示す設定テーブルR4に対してブランク処理および精度管理処理の実行を設定するようにしてもよい。これにより、キャリブレーション処理およびブランク処理に費やす時間を防止することができ、自動分析装置1全体の分析処理の効率化を図ることができる。
【0040】
また、本発明の一実施の形態では、選択画面W1〜W3において、キャリブレーション処理、ブランク処理および精度管理処理の実行を選択した設定情報としてチェック記号が「レ」を表示していたが、操作者が設定したことを視認することが出来ればよく、たとえば、選択した項目に対して、色や線などによって表示するようにしてもよい。
【0041】
また、本発明の一実施の形態では、ブランク処理の実行を受付した場合、精度管理処理の実行を併せて受付していたが、これに限らず、検体の分析項目、試薬のボトル番号およびロット番号毎に精度管理処理の実行指令を受付するようにしてもよい。
【0042】
また、本発明の一実施の形態では、実行済のキャリブレーション処理およびブランク処理に使用された試薬の試薬情報および分析結果に対して、精度管理上の有効期限を設け、この有効期限を過ぎた場合には、キャリブレーション処理またはブランク処理の実行指令の受付をするようにしてもよい。これによって、より高い分析精度を確保することができる。
【0043】
また、本発明の一実施の形態では、キャリブレーション処理用分析項目選択画面W2を介して、検体の分析項目毎にキャリブレーション処理の実行を設定していたが、これに限らず、予め検体の分析項目毎にキャリブレーション処理の実行を設定していてもよい。この場合には、記憶部34にキャリブレーション処理の実行に関する設定情報を記憶するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 自動分析装置
2 測定機構
3 制御機構
11 検体移送部
11a 検体容器
11b 検体ラック
12 検体分注機構
13 反応容器
14 第1試薬庫
14a,16a 試薬容器
14b,16b 読取部
15 第1試薬分注機構
16 第2試薬庫
17 第2試薬分注機構
18 攪拌部
19 測光部
20 洗浄部
21 反応槽
31 制御部
32 入力部
33 分析部
34 記憶部
34a 設定情報記憶部
34b 試薬情報記憶部
34c キャリブレーション情報記憶部
34d ブランク情報記憶部
35 受付処理部
35a 実行判定部
35b 試薬情報判定部
35c 受付部
36 出力部
R1 試薬情報テーブル
R2,R4 設定テーブル
R3 キャリブレーション処理用分析項目選択テーブル
W1,W3 選択画面
W2 キャリブレーション処理用分析項目選択画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の分析項目毎にキャリブレータを分析するキャリブレーション処理とブランク試料を分析するブランク処理とを行うことによって検量線を設定し、該検量線を用いて反応容器内で前記検体と試薬とを反応させた反応液の吸光度を測定値に換算して前記検体を分析する自動分析装置において、
前記検体の分析項目毎に、前記キャリブレーション処理の実行を設定する設定手段と、
前記設定手段が設定した前記キャリブレーション処理の実行に関する設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、
前記試薬を収容した試薬容器に貼付され、該試薬の分析項目とボトル番号とロット番号とを含む試薬情報を記憶した記憶媒体から前記試薬情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段が読み取った前記試薬情報と前記設定情報記憶手段が記憶する前記設定情報とに応じて、前記キャリブレーション処理を実行するか否かを判定する実行判定手段と、
前記実行判定手段の判定結果に応じて、キャリブレーション処理およびブランク処理の中から実行すべき処理の実行指令を受付する受付手段と、
を備え、前記受付手段は、前記実行判定手段が前記キャリブレーション処理を実行しないと判定した場合、前記キャリブレーション処理の実行指令の受付を停止することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
実行済の前記ブランク処理に使用された試薬の前記試薬情報を記憶するブランク情報記憶部と、
前記ブランク情報記憶部が記憶する実行済の前記ブランク処理に使用された試薬の前記試薬情報と前記読取手段が読み取った前記試薬情報とが一致するか否かを判定する試薬情報判定手段と、
を備え、前記受付手段は、前記試薬情報判定手段による判定結果が不一致である場合、前記ブランク処理の実行指令を受付することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
実行済の前記キャリブレーション処理に使用された試薬の前記試薬情報を記憶するキャリブレーション情報記憶部を備え、
前記試薬情報判定手段は、前記キャリブレーション情報記憶部が記憶する実行済の前記キャリブレーション処理に使用された試薬の前記試薬情報と前記読取手段が読み取った前記試薬情報とが一致するか否かを判定し、
前記受付手段は、前記試薬情報判定手段による判定結果が不一致である場合、前記キャリブレーション処理の実行指令を受付することを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記受付手段は、前記ブランク処理の実行指令とともに、精度管理試料を分析する精度管理処理の実行指令を受付することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−137641(P2011−137641A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295967(P2009−295967)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】