説明

自動分析装置

【課題】流量計を用いずに、反応槽の排出口に配置されたフィルターの状態を単位時間あたりの排出量を用いて把握し、オペレータにフィルターの状態を知らせる機能を備えた自動分析装置を提供する。
【解決手段】反応槽17と、反応槽内に供される液体と、反応槽に配置される排出口19と、排出口に配置されるフィルター20と、反応槽内の液体の高さを検出するセンサを備える。反応槽内からフィルターと排出口を介して排出される液体の単位時間当たりの排出量を求めることによって、単位時間あたりの排出量の違いからフィルターの汚れ状態を自動的に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検査に供される、生体試料中の特定成分の定性・定量分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、臨床検査室はコストの削減を求められており、少数のオペレータが複数の検査機器を操作・管理することが一般化してきた。したがって、一人当たりのオペレータに要求される作業量は、増加している。
【0003】
一方、患者の血液,尿等の生体試料中に含まれる成分を分析する臨床検査では、試料と試薬を反応させ、反応液の色の変化を吸光度変化として測定し、目的成分の定性・定量分析をする方式が一般的である。このような臨床用分析装置では、装置構成部品に関わるメンテナンスが必要であるが、反応容器を恒温状態で維持するための反応槽を清潔に保つことも重要なメンテナンス事項のひとつである。反応槽には、液体を充填して用いることが一般的であるが、装置の周囲に浮遊する埃やゴミなどの異物が当該液体に混入する。反応槽の液体に混入した異物を除去するために排出口に、フィルターを配置している。オペレータは、定期的に当該フィルターを清掃する必要があるが、従来の自動分析装置においては、排出口に配置されたフィルターの状態を認識する手段が無かった。そのため、オペレータは反応槽の清掃周期を記録し、フィルターについても作業記録を管理する必要があった。また、当該フィルターの清掃については、オペレータによる手作業であるため、個人差が発生していた。
【0004】
一方、一般的にフィルターの状態(フィルターへの異物の付着状態)を検出する方法としては、フィルターを備えた配管上に流量センサを取り付けて、その流量に基づいてフィルターの目詰まりを検知する方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−18401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようにフィルターを通過した後の流路に流量計を設置すれば、単位時間当たりの排出量を得ることができるが、フィルターの目詰まりを検知するためだけに流量計を設置することによって装置全体のコストが増大してしまう。
【0007】
本発明の目的は、流量計を用いずに、反応槽の排出口に配置されたフィルターの状態を単位時間あたりの排出量を用いて把握し、オペレータにフィルターの状態を知らせる機能を備えた自動分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の特徴は以下の通りである。
【0009】
反応槽と、前記反応槽内に供される液体と、前記反応槽に配置され前記液体を排出する排出口と、前記排出口に配置されるフィルターと、前記反応槽内の液体の高さを検出するセンサを備えた自動分析装置において、単位時間当たりに前記反応槽から前記排出口を解して排出される液体の排出量を用いて、排出口に配置された前記フィルターの状態を判定する判定部を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成により、反応槽内からフィルターと排出口を介して排出される液体の単位時間当たりの排出量を求めることによって、単位時間あたりの排出量からフィルターの汚れ状態を検出することができる。更に、オペレータにフィルターの状態を知らせる機能を備えれば、オペレータがフィルターの清掃状態を逐次把握する手間を省いた装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した自動分析装置における構成図の一例。
【図2】本発明を適用した自動分析装置における処理フローの一例。
【図3】排出フィルターの状態の違いによる、排出開始からの経過時間と反応槽内の液体の高さ推移を示すグラフ。
【図4】排出フィルターの状態の違いによる、排出開始からの経過時間と反応槽内の液体の高さ推移を示すグラフ。
【図5】排出フィルターの状態の違いによる、排出開始からの経過時間と反応槽内の液体の高さ推移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかる実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明を適用した自動分析装置における構成図の一例である。
【0014】
図1において、自動分析装置は、3のインターフェイス,1の操作部,2の分析部によって構成されている。操作部1は、4のコンピュータ,5のハードディスク,6の入力手段,7の表示部により構成される。一方、分析部2は、8の試料容器,9の試料分注機構,10の反応セル,11の光度計,12の試薬容器,13の試薬ディスク,14の試薬分注機構,15の試薬プローブ,16の撹拌機構,17の反応槽,18の吸入流路,19の排出流路,20の排出フィルターによって構成される。
【0015】
分析部2は、インターフェイス3を介して、コンピュータ4によって制御される。
【0016】
自動分析装置の動作は、下記のように試料分注,試薬分注,撹拌,インキュベーション,測光,データ処理の順番に実施される。
【0017】
試料容器8に入っている試料は、試料分注機構9により吸引され、反応槽17に配置された反応セル10に吐出される。次に、試薬ディスク13に配置された試薬容器12から、試薬分注機構14の先端に配置され液面センサを備えた、試薬プローブ15によって、試薬が吸引され、前記反応セル10に吐出される。尚、当該試薬プローブ15は、試薬容器12と反応槽17にアクセス可能な位置に配置され、試薬容器12内の試薬の液面位置と、反応槽17内の液体の位置検出が可能である。
【0018】
次に撹拌機構16により、当該反応セル10内の試料と試薬の混合液の撹拌が実施される。撹拌後の反応セル10は、反応槽17内でインキュベーションが実施される。
【0019】
反応槽17内は、インキュベーションに必要な恒温状態を維持するために必要な流体で満たされている。当該流体は、吸入流路18から反応槽17に供給され、排出フィルター20を経由して、排出流路19に排出される。通常、吸入・排出の動作は、循環用のポンプで実施する。
【0020】
光度計11は、光軸を通過する反応セル10の吸光度を測光し、当該吸光度を用いて、コンピュータ4は、濃度演算などのデータ処理を行う。データ処理の結果は、表示部7に出力される。
【0021】
図2は、本発明を適用した自動分析装置における処理フローの一例である。
【0022】
ステップ1は、初期液面高さの検出である。すなわち、反応槽内の液体の液面高さを液面センサにより検出する。
【0023】
ステップ2は、反応槽内の液体の排出開始である。
【0024】
ステップ3は、排出時間の計測である。
【0025】
ステップ4は、判定用液面高さの検出である。すなわち、排出開始から所定時間経過後、反応槽内の液体の液面高さを液面センサにより検出する。
【0026】
ステップ5は、単位時間あたりの排出量の算出である。すなわち、ステップ1で求めた「初期液面高さ」と、ステップ4で求めた「判定用液面高さ」の差を、ステップ3の「排出時間」で除することにより求める。
【0027】
ステップ6は、判定である。すなわち、ステップ5で求めた「単位時間あたりの排出量」と、予め求めてある「正常なフィルター状態での単位時間あたりの排出量」を比較し、フィルターの状態を判定する。判定の結果、「単位時間あたりの排出量」が「正常なフィルター状態での単位時間あたりの排出量」を下回る場合には、フィルターは汚れた状態(異常状態)であるとの判断を下し、ステップ7に示すアラームを発生させる。
【0028】
図3は、排出フィルターの状態の違いによる、排出開始からの経過時間と反応槽内の液体の高さ推移を示すグラフである。
【0029】
図3において、縦軸は、反応槽内の液体の液面高さを表す。横軸は、排出開始からの経過時間を表す。排出フィルターが汚れている場合は、排出フィルターが正常な場合と比較して、ゆるやかな右下がりのグラフになる。すなわち、T1のタイミングにおける反応槽内の液面高さは、排出フィルターが汚れている場合は、L2となり、排出フィルターが正常な場合は、L1となる。したがって、L2>L1の関係が成立する。
【0030】
図4は、排出フィルターの状態の違いによる、排出開始からの経過時間と反応槽内の液体の高さ推移を示すグラフである。
【0031】
図4を用いて、反応槽内の液体の置換作業、すなわち、排出後の吸入を行う場合を説明する。
【0032】
図4において、Lsは排出開始前の反応槽内の液体高さ、Leは排出後の吸入開始を行うのに適した反応槽内の液体の高さである。Leが適切な高さよりも高い状態で、吸入を開始すると、反応槽内の液体が置換えされる割合が低下してしまう。そこで、T1における反応槽内液体高さが、L2の場合、すなわち排出フィルターが汚れている場合には、T3のタイミングで吸入を開始する。T1における反応槽液体高さが、L1の場合、すなわち排出フィルターが正常な場合には、T2のタイミングで吸入を開始する。尚、T1=T2としても良い。
【0033】
図5は、排出フィルターの状態の違いによる、排出開始からの経過時間と反応槽内の液体の高さ推移を示すグラフである。
【0034】
図5において、Lsは排出開始前の反応槽内の液体高さ、Leは排出後の吸入開始を行うのに適した反応槽内の液体の高さである。T4のタイミングで、反応槽内液体の排出を停止し、反応槽内液体の吸入を開始した場合、排出フィルターが汚れている場合は、T5のタイミングで、排出フィルターが正常な場合は、T6のタイミングで反応槽内液体の高さが初期の高さになる。そこで、Δ(T5−T4)とΔ(T6−T4)を比較することにより、排出フィルターの状態を判定する。
【符号の説明】
【0035】
1 操作部
2 分析部
3 インターフェイス
4 コンピュータ
5 ハードディスク
6 入力手段
7 表示部
8 試料容器
9 試料分注機構
10 反応セル
11 光度計
12 試薬容器
13 試薬ディスク
14 試薬分注機構
15 試薬プローブ
16 撹拌機構
17 反応槽
18 吸入流路
19 排出流路
20 排出フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽と、
前記反応槽内に供される液体と、
前記反応槽に配置され前記液体を排出する排出口と、
前記排出口に配置されるフィルターと、
前記反応槽内の液体の高さを検出するセンサを備えた自動分析装置において、
単位時間当たりに前記反応槽から前記排出口を介して排出される液体の排出量を用いて、排出口に配置された前記フィルターの状態を判定する判定部を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記フィルターの状態を判定の結果、異常であると判定した場合にアラームを発生させるアラーム発生手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記反応槽内の液体の入れ替え動作において、単位時間当たりに前記反応槽から前記排出口を介して排出される液体の排出量から前記反応槽内への液体の排出タイミング、または液体の吸入タイミングの少なくともいずれかを制御する制御部を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
反応槽内の液体の高さを検出する前記センサが試薬プローブであることを特徴とした自動分析装置。
【請求項5】
反応槽と、
前記反応槽内に供される液体と、
前記反応槽に配置され前記液体を排出する排出口と、
前記排出口に配置されるフィルターと、
前記反応槽内に液体を供給する供給口と、
前記反応槽内の液体の高さを検出するセンサを備えた自動分析装置において、
前記排出口を介して反応槽内の液体を一定時間排出した後前記供給口を介して液体を供給開始する場合に、供給開始から前記センサが前記反応槽内の液面を検知するまでの時間を用いて、排出口に配置された前記フィルターの状態を判定する判定部を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記判定部が判定するフィルターの状態は、当該フィルターの汚れの状態であることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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