説明

自動分析装置

【課題】自動分析装置の小型化を実現しつつ、試薬庫と恒温槽の温度調整を行うことができる構成を提供する。
【解決手段】実施形態に記載の自動分析装置は、試薬を保管する試薬庫、及び反応管が配置される恒温槽を有する。また第1温度検出部は、試薬庫内の温度を検出する。また第2温度検出部は、恒温槽内の温度を検出する。また温度調整部は、媒体の温度調整を行う。また流路部は、温度調整部により温度調整された媒体を、試薬庫側又は恒温槽側まで導く。温度制御部は、第1温度検出部または第2温度検出部による検出結果に基づき、温度調整部の動作を制御する。また流量調整部は、流路部に設けられ、媒体の流量を調整する。また流量制御部は、第1温度検出部または第2温度検出部による検出結果に基づき、流量調整部の動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、生化学検査や免疫血清検査等に用いられる装置である。
【0003】
自動分析装置を用いて分析を行う場合には、まず、生体から採取された血液等の被検試料と被検試料の検査項目に該当する試薬とを反応管に分注する。そして、その混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を光学的に測定することにより、被検試料中の様々な成分の濃度や酵素活性を求めることができる。
【0004】
この測定に用いられる試薬は、その性質に合わせて所定の温度範囲内での保管(保冷)が必要である。このため、試薬は試薬ボトル等の容器に入れられた状態で保冷機能を有する試薬庫内に格納されている。ここで、試薬庫の保冷は、例えばコンプレッサ式冷却機のような冷却手段によって発生される冷気を用いて行う。
【0005】
また、被検試料と試薬の混合液が入った反応管は、温水等の液体で満たされた恒温槽に入った状態で光学的な測定がなされる場合がある。このとき、反応に適した温度で測定を行うために恒温槽内の液体は所定の温度に保たれている。ここで恒温槽内の温度調整は、例えば恒温槽内の液体をヒータ等の加熱手段で加熱することで行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−2236
【特許文献2】特開2010−48695
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
試薬庫の冷却をコンプレッサ式冷却機により行う場合、試薬庫を冷却することしかできない。従って、夜間等、自動分析装置の未使用時に外気温が試薬保冷温度以下になった場合に保冷温度を調整することができない。よって試薬が保管温度を超えて冷却されたり、試薬が凍結たりして使用できなくなる可能性がある。
【0008】
また、恒温槽内の液体を加熱手段で加熱する場合においては、外気温または恒温槽の周囲温度が所定の温度以上になったときに、恒温槽内の温度を下げることができない。よって反応に適した温度を保つことができないため、測定に影響を与える可能性がある。
【0009】
更に、試薬庫の冷却機能と恒温槽の加熱機能を別々に設ける場合、独立した2つの構成が必要となることから自動分析装置が大型化するという問題があった。
【0010】
よって実施形態では、上記課題を解決するために、自動分析装置の小型化を実現しつつ、試薬庫と恒温槽の温度調整を行うことができる構成について説明を行う。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、実施形態に記載の自動分析装置は、試薬を保管する試薬庫、及び反応管が配置される恒温槽を有する。また第1温度検出部は、試薬庫内の温度を検出する。また第2温度検出部は、恒温槽内の温度を検出する。また温度調整部は、媒体の温度調整を行う。また流路部は、温度調整部により温度調整された媒体を、試薬庫側又は恒温槽側まで導く。温度制御部は、第1温度検出部または第2温度検出部による検出結果に基づき、温度調整部の動作を制御する。また流量調整部は、流路部に設けられ、媒体の流量を調整する。また流量制御部は、第1温度検出部または第2温度検出部による検出結果に基づき、流量調整部の動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態及び第2実施形態に係る自動分析装置の外観図である。
【図2】第1実施形態に係る温度制御ユニットの構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る自動分析装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る温度制御ユニットの構成を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る自動分析装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(装置構成)
まず、図1を用いて第1及び第2実施形態に共通する自動分析装置の構成について説明する。なお、本実施形態において「媒体」とは、特に断りのない限り、液体、気体及び個体を含む概念である。
【0014】
自動分析装置は、試薬ボトル1、試薬ラック2a・2b、試薬庫3a・3b、反応管4、反応ディスク5、恒温槽5a、被検試料容器6、ディスクサンプラ7、分注アーム8a・8b、サンプリングアーム9、撹拌ユニット10、測光ユニット11、洗浄ユニット12、第1温度検出部13(図2参照)、第2温度検出部14(図2参照)、温度制御ユニット15、及び流路部16を有する。
【0015】
試薬ボトル1は、被検試料の各種成分と反応する試薬を納める容器である。試薬ラック2aは複数の試薬ボトル1を収容した状態で試薬庫3aに設置される。同様に、試薬ラック2bは複数の試薬ボトル1を収容した状態で試薬庫3bに設置される。
【0016】
反応管4は、被検試料と試薬を反応させる際に使用する容器である。反応ディスク5に設けられた恒温槽5aには温水等の液体が入っており、その液体の中に複数の反応管4が配置されている。
【0017】
被検試料容器6は、被検試料を納める容器である。ディスクサンプラ7上には、複数の被検試料容器6が配置される。
【0018】
試薬ボトル1内の試薬は、分注アーム8a又は分注アーム8bによって反応管4内に分注される。また被検試料容器6内の被検試料は、サンプリングアーム9によって反応管4内に分注される。
【0019】
被検試料と試薬が分注された反応管4は、反応ディスク5の回動により、撹拌ユニット10の位置まで移動される。撹拌ユニット10は、被検試料と試薬が入った状態の反応管4を撹拌し、被検試料と試薬を混合させるユニットである。
【0020】
撹拌された反応管4は、測光ユニット11の位置まで移動される。測光ユニット11は、反応管4に対して光を照射し、被検試料と試薬の混合液の吸光度変化等を測定することにより、被検試料の成分分析を行うユニットである。
【0021】
洗浄ユニット12は、成分分析が完了した反応管4内の混合液が廃棄された後、反応管4内の洗浄を行うユニットである。
【0022】
第1温度検出部13は、試薬庫3a、3b内に配置され、試薬庫3a、3b内の温度を検出する機能を有している(図2参照)。また第2温度検出部14は、恒温槽5a内に配置され、反応槽5a内の液体の温度を検出する機能を有している(図2参照)。第1温度検出部13、及び第2温度検出部14による検出結果は有線又は無線により、温度制御ユニット15に送られる(図1においては有線の場合を示す)。
【0023】
温度制御ユニット15は、第1温度検出部13、及び第2温度検出部14による検出結果に基づいて、試薬庫3a、3b或いは恒温槽5aの温度制御を行う。温度制御ユニット15内の構成及び機能については後述する。
【0024】
流路部16は、温度制御ユニット15内から試薬庫3a・3b及び恒温槽5aまで延出される中空の管状部材からなる。流路部16の両端はそれぞれ円状に形成されており、その円状の部分が、試薬庫3a・3b及び恒温槽5aの下部に取り付けられている(図2参照)。また円状の一部には開口部(図示なし)が設けられており、その開口部から流路部16を流れる媒体(気体)を流路部16外に排出することが可能である。
【0025】
流路部16の構成はこれに限られない。例えば流路部16の一端が試薬庫3a(3b)内部に連結され、媒体(気体)が試薬庫3a・3b内に直接流入するような構成であってもよい。或いは、流路部16内を流れる媒体(液体・気体)を還流させる構成を採用することも可能である。
【0026】
なお図1において、試薬庫3bに対する流路部16等の構成については記載を省略している。
【0027】
(第1実施形態)
図2及び図3を用いて第1実施形態に係る自動分析装置について詳述する。なお、図2においては試薬庫3aの構成のみを示す。
【0028】
図2に示すように、温度制御ユニット15は、温度調整部151、流量調整部152a・152b、送出部153a・153b、及びCPU154を有する。
【0029】
温度調整部151は、少なくとも1つの熱伝達面を有し、発熱或いは吸熱を行う機能を有している。つまり温度調整部151は、媒体に対して温度調整を行う加熱手段又は冷却手段として機能する。この温度調整部151には、例えばペルチェ素子のような熱電素子が用いられる。
【0030】
流量調整部152a・152bは、流路部16に設けられ、その開放状態を調整することにより、流路部16内を流れる媒体の流量を調整する機能を有している。本実施形態において流量調整部152aは、流路部16の試薬庫3a側(流量調整部152a)に設けられている。また流量調整部152bは、流路部16の恒温槽5a側(流量調整部152b)に設けられている。
【0031】
流量調整部152a・152bとしては、例えば電磁弁等の調整弁が用いられる。また本実施形態においてCPU154による動作制御(後述)が行われていない場合、流量調整部152a・152bは、閉じられた状態で配置されている。
【0032】
送出部153a・153bは、流路部16に設けられ、流路部16内の媒体(空気等の気体、或いは水等の液体)を温度制御ユニット15側から試薬庫3a、3b側又は恒温槽5a側に送り出す機能を有している。本実施形態において送出部153aは、流路部16の試薬庫3a側(送出部153a)に設けられている。また送出部153bは、流路部16の恒温槽5a側(送出部153b)に設けられている。
【0033】
送出部153a・153bは、例えば、ポンプのように媒体に圧力を加えることにより送出を行うユニットや、ファンのように回転力によって媒体の流れを形成して送出を行うユニットである。
【0034】
CPU154は、温度制御ユニット15内の各部位(温度調整部151、流量調整部152a・152b、及び送出部153a・153b)を動作させる機能を有している。本実施形態においては、CPU154が、処理部154a、温度制御部154b、流量制御部154c、及び送出制御部154dとして機能する。
【0035】
処理部154aは、第1温度検出部13、及び第2温度検出部14による検出結果を処理し、温度制御部154b、流量制御部154c、及び送出制御部154dに動作の指示を送る機能を有している。
【0036】
温度制御部154bは、処理部154aによる処理結果に基づいて、温度調整部151の動作を制御する。また流量制御部154cは、処理部154aによる処理結果に基づいて、流量調整部152a・152bの動作を制御する。また送出制御部154dは、処理部154aによる処理結果に基づいて、送出部153a・153bの動作を制御する。これらの動作制御に基づく動作については後述する。
【0037】
次に図3を用いて本実施形態における自動分析装置の動作の一例について説明を行う。なお、ここでは試薬庫3aの温度制御について説明を行うが、試薬庫3bや恒温槽5aの温度制御についても同様の処理が可能である。
【0038】
まず、第1温度検出部13により一定時間間隔(例えば10分毎)で試薬庫3a内の温度検出が行われる(S10)。第1温度検出部13により検出された結果は処理部154aに送られる。
【0039】
ここで試薬庫3aに保管される試薬には保管に適した温度(例えば、10℃±2℃。以下、「保管温度」という場合がある)がある。従って、試薬庫3a内は保管温度の範囲で保たれることが望ましい。試薬の保管温度は、温度制御ユニット15内の記憶部(図示なし)等に記憶されている。
【0040】
処理部154aは、第1温度検出部13による検出結果と保管温度とを比較する処理を行う(S11)。
【0041】
試薬庫3a内の温度が保管温度の範囲内と判断された場合(S12でYの場合)には、S10に戻り、引き続き試薬庫3a内の温度検出が行われる。一方、試薬庫3a内の温度が保管温度よりも低いと判断された場合(S12でNの場合)、試薬が凍結する可能性が生じる。よって以下の制御を行う。
【0042】
処理部154aは、試薬庫3aの温度を上昇させる制御を行うよう、温度制御部154b、流量制御部154c、及び送出制御部154dに対して指示を行う(S13)。
【0043】
温度制御部154bは、流路部16内の媒体を温めるよう温度調整部151の動作制御を行う(S14)。例えば温度調整部151がペルチェ素子の場合、温度制御部154bは、流路部16と接する金属面が発熱するように電流を流す制御を行う。温度調整部151が発熱することにより流路部16内の媒体はその熱を吸収し、温められることとなる。
【0044】
なお、ペルチェ素子を用いる場合には、流路部16と接する金属面が吸熱するよう、発熱させる場合とは逆向きの電流を流すことにより媒体を冷却させることも可能である。
【0045】
流量制御部154cは、流路部16の試薬庫3a側のみに温められた媒体が流れるよう流量調整部152の動作制御を行う(S15)。例えば流量調整部152が電磁弁の場合、温められた媒体が試薬庫3a側に流れるよう、流量制御部154cは流量調整部152aのみを開放する。
【0046】
送出制御部154dは、流路部16の試薬庫3a側に温められた媒体を送り出すよう、送出部153aの動作制御を行う(S16)。送出部153aは、送出制御部154dの制御を受けて、温められた媒体を一定の間隔で試薬庫3a側に送り出すように駆動する。
【0047】
なお、送出部153の駆動は、様々な方法で行わせることが可能である。例えば、送出制御部154dからの動作制御指示があった場合には、常に一定の送気(送水)量(例:10ml/s)で媒体を送るように送出部153aを駆動させることが可能である。
【0048】
或いは、処理部154aによる試薬庫3a内の温度と保管温度との比較結果に基づいて送気(送水)量を変化させるよう送出部153aを駆動させることが可能である(例:試薬庫3a内の温度と保管温度との温度差が5℃以上の場合;20ml/s。試薬庫3aと外気温との保管温度が5℃未満の場合;10ml/s)。このように温度差に基づいて送気(送水)量を変化させることにより試薬庫3a等の温度調整を迅速に行うことが可能となる。
【0049】
S16の動作を継続する間、処理部154aは、試薬庫3aの温度を測定し続ける。そして試薬庫3a内の温度が保管温度の範囲内になった場合(S17でYの場合)、処理部154aは、温度調整部151、流量調整部152a、及び送出部153aの動作を停止させるよう、温度制御部154b、流量制御部154c、及び送出制御部154dに対して指示を行う(S18)。よって試薬庫3aを保管温度内に保持することが可能となる。
【0050】
一方、試薬庫3a内の温度が試薬保管温度の範囲外の場合(S17でNの場合)、処理部154aは、引き続き温められた媒体を試薬庫3a側に送るよう温度制御部154b、流量制御部154c、及び送出制御部154dに対して指示を行う。
【0051】
なお処理部154aにより、試薬庫3a内の温度が低いだけでなく、恒温槽5a内の温度が反応管4内で反応を進行させるために適した温度(以下、「反応温度」という場合がある)よりも低くなっていると判断された場合、処理部154aは、流量調整部152aだけでなく流量調整部152bも開放するよう流量制御部154cに対して指示を行うと共に、送出部153aだけでなく送出部153bも駆動させるよう送出制御部154dに対して指示を行う。このようにすることで試薬庫3aだけでなく恒温槽5aの温度調整も同時に行うことが可能である。なお、反応温度は温度制御ユニット15内の記憶部(図示なし)等に記憶されている。
【0052】
また実施形態においては、送出部153a・153b及び送出制御部154dを有する構成で説明を行ったがこれに限られない。
【0053】
例えば、流路17内を液体で満たしておく。そして、加熱すべき側(例えば試薬庫3a側)のみの流量調整部152aを開放した状態で温度調整部151による媒体の加熱を行う。すると、開放された側の媒体(試薬庫3a側の媒体)のみに熱が伝わることから試薬庫3aを温めることが可能となる。
【0054】
(第1実施形態の作用効果)
本実施形態においては、第1温度検出部13により試薬庫3a、3b内の温度を検出し、第2温度検出部14により恒温槽5a内の温度を検出する。そして、それらの検出結果に基づいて温度制御部154bが温度調整部151の動作を制御することにより、温度調整部151は流路部16内の媒体を加熱又は冷却する。また、検出結果に基づいて流量調整部154cが流量調整部152の動作を制御することにより、流量調整部152は、流路部16内の媒体の流量を調整する。
【0055】
従って、試薬庫3a、3b内或いは恒温槽5a内の温度調整を行うことが可能となる。また温度制御ユニット15を1つ設けるだけで試薬庫3a、3bと恒温槽5aの温度調整が可能となることから自動分析装置の小型化を図ることができる。
【0056】
また、処理部154aの処理結果に基づいて、送出制御部154dが送出部153a・153bの動作制御を行うことにより、送出部153a・153bは、試薬庫3a、3b側或いは恒温槽5a側に加熱又は冷却された媒体を、試薬庫3a、3b或いは恒温槽5aが所望の温度になるまで送り出すことが可能となる。
【0057】
また、温度調整部151としてペルチェ素子を用いることにより、試薬庫3a、3b内或いは恒温槽5a内の温度調整を行うための加熱冷却手段を共通化・小型化することができる。従って自動分析装置の小型化を図ることができる。
【0058】
(第1実施形態の変形)
第1実施形態の構成において、試薬庫3a、3b及び恒温槽5aの外部に配置され、外気温を検出する機能を有する第3温度検出部を設けることも可能である。
【0059】
例えば保管温度が10℃±2℃の試薬を保管している場合に、ある時点において第1検出部13及び第2検出部14により、試薬庫3a内の温度が9℃、外部温度が−10℃の検出結果が得られたとする。このとき試薬庫3a内の温度は保管温度内なので、第1実施形態の構成によれば温度調整部151による温度調整は行われない。しかし外部温度が−10℃であるため、このまま温度調整を行わなければいずれ試薬庫3a内の温度が保管温度以下になることは明らかである。
【0060】
このような場合には試薬庫3a内の温度が保管温度内であっても、予め温度調整部151を駆動させておくことが望ましい。
【0061】
そこで本変形例においては、保管温度と外気温との関係を記録したデータを記憶部(図示なし)等に記憶しておく。そして処理部154aは当該データを加味した処理を行う。
【0062】
例えば保管温度と外気温との差が±5℃以上になった場合には、試薬庫3a内の温度が保管温度の範囲内であっても温度調整部151を駆動させるような処理を処理部154aが行う。温度調整部151を駆動させた後の動作は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0063】
このように、試薬庫3a内の温度及び保管温度に対して、外部温度が一定温度以下(或いは以上)の場合には、試薬庫3a内の温度が保管温度内であっても予め温度調整を行うことにより、第1実施形態の効果に加え、外部温度の変化を加味して試薬庫3a等の温度調整を行うことができるという効果を奏する。
【0064】
(第2実施形態)
次に、図4及び図5を用いて第2実施形態に係る自動分析装置について詳述する。第1実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。また、図4においては試薬庫3aの構成のみを示す。なお、本実施形態において「媒体」とは、特に断りのない限り、液体、気体及び個体を含む概念である。
【0065】
図4に示すように、本実施形態における流路部16は、温度制御ユニット15内で流路部16a(第1流路部)及び流路部16b(第2流路部)の2つの流路部に分かれている。また温度制御ユニット15は流量調整部152a・152bの他に、流量調整部152c・152dを有している。
【0066】
流路部16aは、温度調整部151の一方の熱伝達面に接している。また流路部16bは、温度調整部151の他方の熱伝達面(流路部16aが接する面とは異なる面)に接している。流路部16aの一端と流路部16bの一端、及び流路部16aの他端と流路部16bの他端は温度制御ユニット15内でそれぞれ連結され、試薬庫3a及び恒温槽5aまで延出されている。
【0067】
流量調整部152a・152bは、流路部16aに設けられ、流路部16a内を流れる媒体の流量を調整する機能を有している。本実施形態において流量調整部152aは、流路部16aの試薬庫3a側(流量調整部152a)に設けられている。また流量調整部152bは、流路部16aの恒温槽5a側(流量調整部152b)に設けられている。
【0068】
また流量調整部152c・152dは、流路部16bに設けられ、流路部16b内を流れる媒体の流量を調整する機能を有している。本実施形態において流量調整部152cは、流路部16bの試薬庫3a側(流量調整部152c)に設けられている。また流量調整部152dは、流路部16bの恒温槽5a側(流量調整部152d)に設けられている。
【0069】
本実施形態においてCPU154による動作制御(後述)が行われていない場合、流量調整部152a〜152dは、いずれも閉じられた状態で配置されている。
【0070】
送出部153a・153bは、流路部16aと流路部16bが連結された部分よりも試薬庫3a側、及び恒温槽5a側に設けられ、流路部16a・16b内の媒体(空気等の気体、或いは水等の液体)を温度制御ユニット15側から試薬庫3a側又は恒温槽5a側に送り出す機能を有している。送出部153a・153bは、例えば、ポンプのように媒体に圧力を加えることにより送出を行うユニットや、ファンのように回転力によって媒体の流れを形成して送出を行うユニットである。
【0071】
流量制御部154cは、処理部154aによる処理結果に基づいて、流量調整部152a〜152dの動作を制御する。
【0072】
次に図5を用いて本実施形態における自動分析装置の動作の一例について説明を行う。なお、ここでは試薬庫3a及び恒温槽5aの温度制御について説明を行うが、試薬庫3bの温度制御についても同様の処理が可能である。
【0073】
まず、第1温度検出部13により試薬庫3a内の温度検出が行われると共に、第2温度検出部14により恒温槽5a内の温度検出が行われる(S20)。第1温度検出部13、及び第2温度検出部14により検出された結果は処理部154aに送られる。
【0074】
ここで、第1実施形態で述べたように、試薬庫3a内は保管温度に保たれることが望ましい。また恒温槽5a内は反応温度に保たれることが望ましい。
【0075】
処理部154aは、第1温度検出部13による検出結果と保管温度とを比較する処理を行う。また処理部154aは、第2温度検出部13による検出結果と反応温度とを比較する処理を行う(S21)。
【0076】
試薬庫3a内の温度が保管温度の範囲内と判断され、且つ恒温槽5a内の温度が反応温度であると判断された場合(S22でYの場合)には、S20に戻り、引き続き試薬庫3a内、及び恒温槽5aの温度検出が行われる。一方、試薬庫3a内の温度が保管温度よりも低いと判断された場合、或いは恒温槽5a内の温度が反応温度よりも高いとされた場合(S22でNの場合)、試薬が凍結する可能性や、反応が上手く進行しない可能性が生じる。よって以下の制御を行う。
【0077】
ここで、例えば試薬庫3a内の温度が保管温度よりも低く、恒温槽5a内の温度が反応温度よりも高いと判断された場合、処理部154aは、試薬庫3aの温度を上昇させると共に、恒温槽5aの温度を下降させる制御を行うよう温度制御部154b、流量制御部154c、及び送出制御部154dに対して指示を行う(S23)。
【0078】
温度制御部154bは、流路部16a内の媒体を温めると共に、流路部16b内の媒体を冷やすよう温度調整部151の動作制御を行う(S24)。例えば温度調整部151がペルチェ素子の場合、温度制御部154bは、流路部16aと接する金属面が発熱するように電流を流す制御を行う。温度調整部151が発熱することにより流路部16a内の媒体はその熱を吸収し、温められることとなる。一方、流路部16bと接する金属面は流路部16b内の媒体の熱を吸収する。従って、流路部16b内の媒体は冷却されることとなる。
【0079】
なお本実施形態においては、流路部16a内の媒体を温め、流路部16b内の媒体を冷却する構成について説明をしたが、ペルチェ素子に流す電流の向きを逆にすることで流路部16a内の媒体を冷却し、流路部16b内の媒体を温めることも可能である。
【0080】
流量制御部154cは、流路部16aの試薬庫3a側のみに温められた媒体が流れるよう流量調整部152の動作制御を行う。また流量制御部154cは、流路部16bの恒温槽5a側のみに冷却された媒体が流れるよう流量調整部152の動作制御を行う(S25)。例えば流量調整部152が電磁弁の場合、温められた媒体が試薬庫3a側に流れるよう、流量制御部154cは流量調整部152aのみを開放状態とする制御を行う。また冷却された媒体が恒温槽5a側に流れるよう、流量制御部154cは流量調整部152dのみを開放状態とする制御を行う。
【0081】
送出制御部154dは、流路部16aの試薬庫3a側に温められた媒体を送り出すよう、送出部153aの動作制御を行うと共に、流路部16bの恒温槽5a側に冷却された媒体を送り出すよう、送出部153bの動作制御を行う(S26)。送出部153aは、送出制御部154dの制御により、一定の間隔で温められた媒体を試薬庫3a側に送り出すように駆動する。また送出部153bは、送出制御部154dの制御により、一定の間隔で温められた媒体を恒温槽5a側に送り出すように駆動する。
【0082】
S26の動作を継続する間、処理部154aは、試薬庫3a及び恒温槽5aの温度を測定し続ける。そして試薬庫3a内の温度が保管温度の範囲内になった場合(S27でYの場合)、処理部154aは、温度調整部151、流量調整部152a、及び送出部153aの動作を停止させるよう、温度制御部154b、流量制御部154c、及び送出制御部154dに対して指示を行う(S28)。一方、試薬庫3a内の温度が保管温度の範囲外にある場合(S27でNの場合)、処理部154aは、引き続き温められた媒体を試薬庫3a側に送るよう温度制御部154b、流量制御部154c、及び送出制御部154dに対して指示を行う。よって試薬庫3aを保管温度内に保持することが可能となる。
【0083】
同様に、恒温槽5a内の温度が反応に適した温度になった場合(S27でYの場合)、処理部154aは、温度調整部151、流量調整部152d、及び送出部153bの動作を停止させるよう、温度制御部154b、流量制御部154c、及び送出制御部154dに対して指示を行う(S28)。一方、恒温槽5a内の温度が反応に適した温度になっていない場合(S27でNの場合)、処理部154aは、引き続き冷却された媒体を恒温槽5a側に送るよう温度制御部154b、流量制御部154c、及び送出制御部154dに対して指示を行う。よって恒温槽5aを反応温度に保持することが可能となる。
【0084】
なお、試薬庫3aと恒温槽5aのいずれか一方が先に温度条件(適正温度)を満たした場合、流量制御部154cは、条件を満たした側の流量調整部のみを閉鎖する。また流量制御部154cは、他方の流量調整部の開放状態を保つことにより他方の温度条件も満たすように調整することが可能となる。
【0085】
(第2実施形態の作用効果)
本実施形態においては、温度調整部151の一面に接し、試薬庫3a・3b、及び恒温槽5aへ温度調整部151により温度調整された媒体を導くための流路部16aを有する。また温度調整部151の他面に接し、試薬庫3a・3b、及び恒温槽5aへ温度調整部151により温度調整された媒体を導くための流路部16bを有する。
【0086】
従って、試薬庫3a(3b)内と恒温槽5a内とで異なる温度調整(一方を加熱し、他方を冷却する)を同時に行うことが可能となることから温度調整の効率化を図ることができる。また温度制御ユニット15を1つ設けるだけで試薬庫3a、3bと恒温槽5aの温度調整が可能となることから自動分析装置の小型化を図ることができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
3a 試薬庫
5a 恒温槽
13 第1温度検出部
14 第2温度検出部
15 温度制御ユニット
16 流路部
151 温度調整部
152a、152b 流量調整部
153a、153b 送出部
154 CPU
154a 処理部
154b 温度制御部
154c 流量制御部
154d 送出制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を保管する試薬庫、及び反応管が配置される恒温槽を有する自動分析装置において、
前記試薬庫内の温度を検出する第1温度検出部と、
前記恒温槽内の温度を検出する第2温度検出部と、
媒体の温度調整を行う温度調整部と、
前記温度調整部により温度調整された媒体を、前記試薬庫側又は前記恒温槽側まで導く流路部と、
前記第1温度検出部または前記第2温度検出部による検出結果に基づき、前記温度調整部の動作を制御する温度制御部と、
前記流路部に設けられ、前記媒体の流量を調整する流量調整部と、
前記第1温度検出部または前記第2温度検出部による検出結果に基づき、前記流量調整部の動作を制御する流量制御部と、
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記流路部に設けられ、前記媒体を前記試薬庫側又は前記恒温槽側に送り出す送出部と、
前記第1温度検出部または前記第2温度検出部による検出結果に基づき、前記送出部の動作を制御する送出制御部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記流路部は、第1流路部と第2流路部とを有し、
前記第1流路部は、前記温度調整部の一方の熱伝達面と接し、前記第2流路部は、前記温度調整部の他方の熱伝達面と接しており、
更に前記流量調整部は、前記第1流路部及び前記第2流路部それぞれに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記温度調整部はペルチェ素子であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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