説明

自動分析装置

【課題】試薬が試薬容器に収容された状態で搬送される場合、試薬容器の搬送速度が速い場合等には、試薬が試薬容器内で攪拌され液面が泡立つことがある。泡立ちが発生すると、分析に必要な所定量の試薬の吸引を正確に行うことができず、分析性能が低下する恐れがあった。
【解決手段】試薬の泡立ち易さに応じて試薬容器の搬送速度をコントロールする。例えば、泡立ち易い試薬を試薬保管庫の泡立ち難い位置へ設置を優先とし、泡立ち難い試薬は試薬保管庫の泡立ちやすい位置への設置とすることや、泡立ち易い試薬の搬送速度を遅くするよう、試薬搬送装置の搬送速度を制御する。これによって、分析装置内の試薬容器の移動による試薬の泡立ちを減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿等の生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液,尿等の生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置では、複数の分析項目を分析するため、それぞれの分析項目に対応する試薬を試薬容器にいれ、この試薬容器を試薬保管庫に設置する。分析時には、試薬保管庫を動作させ試薬吸引位置まで試薬容器を移動し試薬ノズルで試薬を吸引する。これらの動作を分析項目毎に実施する。
【0003】
多数の分析項目に対応している自動分析装置や、分析処理スピードが高い自動分析装置においては、装置上に多数の試薬容器を設置していることが望ましい。自動分析装置上の限られたスペース内に効率よく試薬容器を設置するため、試薬保管庫を2つ以上用意し、試薬容器を2つ以上の試薬保管庫に分けて設置する装置もある。
【0004】
例えば、特許文献1には複数の試薬保管庫を多重同心円状に設置することで、限られたスペース上に多数の試薬容器を設置する自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3300704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試薬吸引のため試薬保管庫に設置した泡立ち易い試薬容器を、試薬吸引位置まで勢い良く移動させることで、試薬容器内の試薬が攪拌され泡立ちが発生することがあった。液面検知機構などを設けて試薬液面高さを検出し、試薬を吸引している自動分析装置においては、試薬液面に泡立ちが生じると、あたかも泡立ち部分が試薬の液面であるかのように誤検知してしまい、正確な量の試薬を吸引できなくなり、誤った分析結果を出力してしまう問題があった。泡立ちやすさは試薬の種類により異なるが、従来の自動分析装置では試薬の泡立ち特性を考慮せずに、試薬保管庫へ試薬設置をしていたために、試薬液面の泡立ちによって測定結果の正確性に影響する可能性があった。
【0007】
本発明の目的は、泡立ちを抑制した試薬保管庫内への試薬容器の設置方法を備えた自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0009】
複数の試薬容器を架設する試薬保管庫と、当該試薬保管庫内の試薬を移送する試薬保管庫移送手段と、を備え、該試薬保管庫中の任意の試薬を分注して試料と混合させる自動分析装置において、試薬種別毎の試薬に関する情報と、前記試薬保管庫のポジションに関する情報と、を記憶する記憶手段と、前記試薬に関する情報と前記試薬保管庫のポジションに関する情報とに基づいて、試薬容器毎に前記試薬保管庫内でのポジションを決定する決定手段を有する。
【0010】
ここで、自動分析装置とは血液,尿等の生体サンプルの定性・定量分析を行う装置である。この装置は比色分析に限定されることなく、サンプルの測定対象成分と特異的に結合する物質に標識を設けた試薬を用いる、所謂免疫分析装置をも対象とする。このような装置は通常、サンプルと試薬を反応させる反応手段,反応を測定する測定手段などを備える。
【0011】
また、測定に必要な試薬を吸引するために、試薬吸引位置まで試薬容器を移動する必要がある。移動の方法は円周上に設置した試薬保管庫ごと試薬容器を回転させる方法があるがこれに限られず、直線的な並行移動や上下移動させる場合も含む。
【0012】
また、試薬ごとに発泡性パラメータを設定可能にしても良い。泡立ちやすい試薬の発泡性パラメータを“強”とし、泡立ちしにくい試薬の発泡性パラメータを“弱”とする。これは、オペレータによって設定可能にしても良いし、予め試薬毎に設定してある情報を試薬容器に貼付されたバーコードをバーコードリーダによって読み取る方法や、ネットワークから取得する方法によって取得するようにしても良い。
【0013】
また、装置に投入された試薬容器を自動で試薬保管庫へ設置する試薬容器搬送機構を備えていても良い。試薬容器投入位置に試薬容器を置くと、装置が試薬容器の種類を判別し、発泡性パラメータと試薬保管庫の空き状況とから、自動で、泡立ちやすい試薬は泡立ちしにくい位置に設置し、泡立ちしにくい試薬はそれ以外の位置に設置するようにしても良い。
【0014】
また、試薬容器搬送機構が試薬容器を搬送する速度を、試薬毎の泡立ち易さに応じて制御するようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば上記構成により、試薬の泡立ち易さに関する情報に基づいて、試薬を泡立ちなく搬送することができる。
【0016】
また、試薬容器の設置時に、自動分析装置が泡立ちやすい試薬を試薬保管庫内における泡立ちしにくい位置に設置するよう促すため、ユーザは泡立ち易さと試薬容器設置位置の関係を意識することなく、装置の指示どおりの位置に試薬容器を設置することで、試薬の泡立ちを抑えることができる。
【0017】
また、試薬容器の試薬容器搬送機構がある自動分析装置の場合、ユーザは泡立ち易さを意識せず、試薬容器を試薬容器投入位置に置くだけで、装置が自動で泡立ちしにくい位置に設置することで、試薬の泡立ちを抑えることができる。
【0018】
また、泡立ち易い試薬を検知した場合は試薬容器搬送機構の搬送速度を遅くすることで、試薬容器搬送中の試薬攪拌による試薬の泡立ちを抑えることができる。これによって、試薬分注時に試薬液面が泡立たず、正確な量の試薬吸引が可能となり、ひいては正確な測定が実施可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例の自動分析装置構成の一例を示す図。
【図2】試薬情報テーブル関連図。
【図3】試薬設置位置決定処理フロー。
【図4】試薬設置画面。
【図5】試薬再設置位置決定処理フロー。
【図6】試薬再設置画面。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳述する。
【0021】
図1は自動分析装置の基本的な装置構成図である。筐体21上の反応ディスク9には反応容器5が円周上に並んでいる。
【0022】
試薬保管庫15にはそれぞれ複数の試薬容器16が円周上に載置可能である。1つの試薬容器16には最大3種類(第1試薬〜第3試薬)の試薬が入る。
【0023】
反応ディスク9の近くにサンプル容器2を載せた検体ラック1を移動するラック搬送ライン3が設置されている。試薬保管庫15上にレール25,26が配置され、レール25にはレールと3軸方向に移動可能な試薬分注プローブ11と、試薬容器を開封するための試薬開封機構12と、投入された試薬容器を搬送するための試薬容器搬送機構14が設置されている。レール25には試薬分注プローブ13が設置されている。
【0024】
試薬分注プローブ11,13はそれぞれ図1には明示されていない試薬用ポンプと接続しており、試薬保管庫15上の試薬容器16から所望量の試薬を吸引する。
【0025】
反応容器5とラック搬送ライン3の間には、回転及び上下動可能な検体分注プローブ4が設置されている。検体分注プローブ4はそれぞれ図1には明示されていないサンプル用ポンプに接続している。
【0026】
反応ディスク9の周囲には、攪拌機構6,7、光源および検出光学装置10,容器洗浄機構8が配置されている。容器洗浄機構8は図1には明示されていない洗浄用ポンプに接続している。
【0027】
図1には明示されていないサンプル用ポンプ,試薬用ポンプ,洗浄用ポンプ,光源および検出光学装置10,反応ディスク9,試薬保管庫15,試薬分注プローブ11,13、検体分注プローブ4は、それぞれコントローラ20に接続され、制御されている。
【0028】
検体ラック1がラック搬送ライン3により分析ディスク9を有する筐体21に引き込まれる。その検体ラック1に保持された状態で、試料吸引位置に位置付けられた検体(試料)は、検体分注プローブ4にて所定量吸引され、反応ディスク9上の検体(試料)分注位置にある反応容器5に分注される。検体が分注された反応容器5は、反応ディスク9の回転により、第1試薬分注位置に移動し、そこで、その反応容器5には試薬保管庫15に保持されている試薬容器16内の第1の試薬が、一番目の試薬分注プローブ11により分注される。第1の試薬が分注された反応容器5は、攪拌位置に移動され、そこで攪拌機構6により試料と第1試薬との攪拌が行われる。
【0029】
更に、第2試薬の添加が必要な場合は、攪拌処理済みの反応容器5は、第2試薬分注位置に移動され、そこで、反応容器5には、試薬保管庫15に保持されている第1試薬と同じ試薬容器16内の第2試薬が二番目の試薬分注プローブ13によって分注される。分注済みの反応容器5は、攪拌位置に移動され、そこで、攪拌機構7により反応容器5内の検体,第1試薬及び第2試薬の攪拌が行われ、その反応液が生成される。
【0030】
検出光学装置10はこれら一連の分析過程における吸光度変化を経時的に測定し、得られた反応曲線から、生化学分析項目の分析結果が得られる。
【実施例1】
【0031】
本発明の第一の実現方法を、図2及び図3

を用いて示す。
【0032】
分析パラメータ201は、オペレータにより分析が依頼された場合に、依頼された分析項目を実行するために必要な分析条件等を示すパラメータである。この分析パラメータは、少なくとも分析項目毎に管理された分析項目コードを有しており、その他の分析項目パラメータとしては、分析項目を分析する際に使用する測定波長,分析に必要な試薬の試薬コード,分析に必要な試薬の分注量を含む。分析項目コードをキー情報として、オペレータから依頼された測定項目と記憶部に記憶された分析パラメータとをリンクさせる。
【0033】
試薬情報202は、試薬種類毎に定められた試薬コード,試薬の泡立ち易さを示す発泡性パラメータ,試薬の有効期限,試薬の液性等の情報を含む。試薬コードをキー情報として用いれば、当該試薬コードを有する試薬の発泡性や有効期限,液性等を検索することができる。
【0034】
試薬容器情報204は、試薬種類毎に定められた試薬コード,試薬の製造ロット番号,シーケンス番号,試薬容器毎の試薬残量,試薬容器に収容された試薬の使用可否情報を含む。シーケンス番号とは試薬容器16ごとに異なる番号であり試薬容器16毎の区別を可能とするものである。試薬コード,試薬の製造ロッド番号、及びシーケンス番号をキー情報として用いれば、同じ種類の試薬を収容した試薬容器が複数本、試薬保管庫内に保管されている場合にも、一義的に試薬容器を特定することができる。
【0035】
試薬容器設置情報203は、試薬保管庫内の試薬設置ポジション毎に、当該ポジションに試薬容器が設置された場合の試薬の泡立ち易さに関する情報や、当該ポジションに設置された試薬の有無に関する情報、当該ポジションに試薬が設置されている場合には、その試薬の試薬コード,製造ロッド番号,シーケンス番号を含む。
【0036】
ここで、試薬の泡立ち易さに関する情報とは、例えば、試薬保管庫が試薬吸引位置まで試薬容器を搬送する際の搬送速度によって決定される。試薬保管庫15が図1と同様に、多重同心円状試薬ディスクタイプである場合には、特定の試薬吸引ポジションまで試薬容器を搬送するにあたり、内周側の試薬保管庫に対して外周側の試薬保管庫は動く距離が長いために移送速度が速くなる。よって、この場合には内周側の試薬保管庫の試薬設置ポジションには「泡立ち難く」と、外周側の試薬保管庫の試薬設置ポジションには「泡立ち易い」との情報が付加される。
【0037】
上記分析パラメータ201,試薬情報202,試薬容器情報204,試薬容器設置情報203は装置の記憶部32中に記憶される。通常の分析を行う際には、以下の要領で各情報を参照している。
【0038】
まず、分析依頼がされた試料が検体ラック1に搭載され装置に投入されると、装置はその試料に依頼された分析項目の分析項目コードをキー情報として分析パラメータ201を検索し、依頼された分析を実施するために必要な分析条件を取得する。
【0039】
当該分析依頼を実行するために必要な試薬が試薬保管庫内に存在しているか否かを、試薬容器情報204から検索する。例えば、先に参照した分析パラメータ中にある、試薬コード情報を元にして、当該試薬コードと同じ試薬コードを有する試薬容器が試薬保管庫内に存在しているかを検索する。同じ試薬コードを有する試薬容器が複数存在する場合には、試薬容器情報中の試薬残量情報や、試薬の使用可否情報も参照して、使用する試薬容器を特定する。
【0040】
その後、当該試薬の試薬コード,試薬製造ロッド番号,シーケンス番号をキー情報として、試薬容器設置情報203から当該試薬が設置されている試薬保管庫内でのポジションを検索する。それによって使用する試薬容器を試薬分注位置に搬送するためには、試薬保管庫をどのように移送する必要があるのかを確定させることができる。
【0041】
また、当該試薬の試薬コードをキー情報として、その試薬の発泡性や有効期限、液性といった試薬種類に基づく試薬情報202を検索する。この情報に基づいて、例えば試薬の液性に合わせて試薬の吸引速度を調整することができる。
【0042】
試薬設置位置の決定方法について図3、試薬設置位置の決定方法によって決定された試薬設置位置をユーザに推奨する表示方法について図4を使用して説明する。
【0043】
試薬容器16の登録を行うためにまず、図4の設置試薬コードの入力エリア401に、設置する試薬容器16の試薬コードを操作部31から入力する。入力方法としては、例えば試薬バーコードをバーコードリーダにて読み取る方法や、試薬容器毎に試薬コード等を手入力する方法等が考えられる。
【0044】
入力された試薬コードをキー情報として、記憶部32内に記憶されている試薬情報202を取得(ステップ301)し、試薬容器設置情報203を記憶部32から取得する(ステップ302)。
【0045】
ステップ301で取得した試薬情報202の発泡性パラメータが“強”の場合(ステップ303)、ステップ302で取得した試薬容器設置情報を検索して、試薬容器設置位置に試薬容器が設置されておらず、かつ試薬容器設置位置の泡立ち易さパラメータが”低”の設置位置を探す(ステップ304〜306)。
【0046】
一方で、ステップ301で取得した試薬情報202の発泡性パラメータが“弱”の場合(ステップ303)、ステップ302で取得した試薬容器設置情報203を検索して、試薬容器設置位置に試薬容器が設置されておらず、かつ試薬容器設置位置の泡立ち易さパラメータが“高”の設置位置を探す(ステップ312〜314)。
【0047】
条件に一致する試薬容器設置位置があった場合には、そのポジションを試薬容器設置情報203の設置試薬容器情報に上書きして、試薬容器設置位置を決定する(ステップ311)。
【0048】
一方、条件に一致する試薬容器設置位置がなかった場合には、試薬容器設置位置情報203を検索して試薬容器が設置されていないポジションを探し(ステップ308)、空きの試薬容器設置位置を見つけた場合、発泡性パラメータ,泡立ち易さのパラメータに関係なく当該ポジションを試薬容器の設置位置に決定する(ステップ311)。
【0049】
空きの試薬容器設置位置が見つからない場合、試薬容器16の設置ができないため設置できない旨を操作部31に表示する(ステップ310)。
【0050】
上記のステップで決定した試薬容器設置位置を、試薬設置画面の設置ポジション402に表示する。また、装置の試薬保管庫15をイメージした試薬保管庫403を操作部31に表示し設置ポジションの色をかえて表示していても良い。
【実施例2】
【0051】
次に第二の実現方法の詳細について図3を使用して説明する。
【0052】
装置内に投入された試薬容器を自動的に試薬ディスクへ搬送する試薬容器搬送機構14を備えた自動分析装置の場合、オペレータはまず試薬容器16を試薬容器投入口18にセットする。装置が試薬容器16をセットされたことを検出すると、試薬容器16に貼り付けられた試薬バーコードを読み取る。試薬バーコードは、試薬コード,試薬容器16の製造ロット番号,試薬の有効期限,シーケンス番号,発泡性パラメータ等の情報を持つ。
【0053】
コントローラ20は、読み取られた試薬バーコードに記憶された、試薬コードをキー情報として、記憶部32から該当する試薬情報202を取得する(ステップ301)。取得した試薬情報202中の発泡性パラメータを参照し、図3のステップ302〜311の過程を経て、試薬保管庫内の試薬容器設置位置を決定する。試薬容器設置位置が決定した試薬容器は、当該ポジションまで試薬容器搬送機構14で試薬容器16を搬送して設置する。設置完了後に、設置したポジションの試薬容器設置情報203中の設置試薬容器情報を、設置した当該試薬容器情報204の試薬コード,試薬製造ロッド番号,シーケンス番号で更新する。
【0054】
本実施例の場合には、オペレータが自ら試薬の泡立ち易さを考慮する必要なく試薬容器を最適ポジションに設置できる。
【実施例3】
【0055】
次に第三の実現方法の詳細について図5、およびその場合にユーザに表示する表示画面について図6を使用して説明する。試薬は分注するたびに試薬残量が減っていく(ステップ501)。試薬残量が0もしくは吸引できない程度の微量になると、その試薬容器16は使用できなくなる。コントローラ20は、試薬容器情報204の試薬残量が0もしくは微量になった場合(ステップ502)、試薬容器情報204の使用可否情報を使用不可と書き換える(ステップ503)。それに伴って、図6の廃棄試薬リスト601に使用不可の試薬容器16の設置位置を追加して表示する(ステップ504)。
【0056】
次に、当該試薬容器16の試薬容器情報204から得られる試薬コード,試薬製造ロッド番号,シーケンス番号をキー情報として、記憶部32から当該試薬容器16が設置されていた試薬容器設置情報203を取得する。
【0057】
試薬容器設置情報203に、使用不可となった試薬容器16が設置されているポジションの泡立ち易さパラメータが“低”となっている場合(ステップ505)、発泡性パラメータが“強”の試薬を、使用不可となった試薬容器を設置していたポジションへ設置させるため、以下のように強発泡性の試薬容器の移動を指示する。
【0058】
まず、記憶部32を検索し、試薬容器設置情報203と試薬情報202とを参照して、移動対象となりうる強発泡性の試薬を収容した試薬容器16を検索する。検索方法としては、試薬容器設置情報203中の泡立ち易さパラメータが“高”のポジションを検索し、該当するポジションの設置試薬容器情報から試薬コードを取得する。得られた試薬コードをキー情報として、試薬情報202を検索し、試薬の発泡性パラメータが“強”の試薬容器を探す(ステップ507〜509)。
【0059】
発泡性パラメータが“強”の試薬容器16があった場合(ステップ508)、この試薬容器を使用不可となった試薬容器が設置されているポジションへ移動させるため、当該試薬が設置されている現在のポジションと使用不可となった試薬容器が設置されている移動先のポジションとを、操作部31の試薬容器入替リスト602に追加し、移動させる試薬容器16の試薬コード,試薬製造ロット,シーケンス番号と共に表示する(ステップ510)。
【0060】
一方で、使用不可となった試薬容器16が設置されているポジションの泡立ち易さパラメータが“高”となっている場合(ステップ505)、泡立ち易さパラメータが“低”のポジションに発泡性パラメータが“弱”の試薬が設置されている場合には、弱発泡性の試薬を泡立ち易さパラメータが“高”のポジションに移動して、泡立ち易さパラメータが“低”のポジションを空けるため、以下のように試薬容器16の移動を指示する。
【0061】
まず、記憶部32を検索し、試薬容器設置情報203と試薬情報202とを参照して、移動対象となりうる強発泡性の試薬を収容した試薬容器16を検索する。検索方法としては、試薬容器設置情報203中の泡立ち易さパラメータが“低”のポジションを検索し、該当するポジションの設置試薬容器情報から試薬コードを取得する。得られた試薬コードをキー情報として、試薬情報202を検索し、試薬の発泡性パラメータが“弱”の試薬容器を探す(ステップ511〜513)。
【0062】
発泡性パラメータが“弱”の試薬容器16があった場合(ステップ513)、この試薬容器を使用不可となった試薬容器が設置されているポジションへ移動させるため、当該試薬が設置されている現在のポジションと、使用不可となった試薬容器が設置されている移動先のポジションとを、操作部31の試薬容器入替リスト602に追加し、移動させる試薬容器16の試薬コード,試薬製造ロット,シーケンス番号と共に表示する(ステップ510)。
【実施例4】
【0063】
次に第四の実現方法を図5を用いて説明する。
【0064】
使用不可となった試薬容器16を試薬保管庫から排出する試薬容器搬送機構14を備える場合について、図5を用いて説明する。
【0065】
試薬は分析に使用するたびに試薬残量が減っていく(ステップ501)。コントローラ20は、試薬容器情報204の試薬残量が0もしくは吸引できない程度の微量になった場合(ステップ502)、試薬容器情報204中の使用可否情報を使用不可と書き直す(ステップ503)。使用不可になった試薬容器16は試薬容器搬送機構14で試薬保管庫から取り出され、廃棄される(ステップ504)。
【0066】
次に、廃棄された試薬容器16の試薬容器情報204から得られる試薬コード,試薬製造ロッド番号,シーケンス番号をキー情報として、記憶部32から当該試薬容器16が設置されていた試薬容器設置情報203を取得する。
【0067】
試薬容器設置情報203に、廃棄された試薬容器16が設置されていたポジションの泡立ち易さパラメータが“低”となっている場合(ステップ505)、発泡性パラメータが“強”の試薬を、廃棄された試薬容器を設置していたポジションへ再設置するため、以下のように強発泡性の試薬容器を移動させる。
【0068】
まず、記憶部32を検索し、試薬容器設置情報203と試薬情報202とを参照して、移動対象となりうる強発泡性の試薬を収容した試薬容器16を検索する。検索方法としては、試薬容器設置情報203中の泡立ち易さパラメータが“高”のポジションを検索し、該当するポジションの設置試薬容器情報から試薬コードを取得する。得られた試薬コードをキー情報として、試薬情報202を検索し、試薬の発泡性パラメータが“強”の試薬容器を探す(ステップ507〜509)。
【0069】
発泡性パラメータが“強”の試薬容器16があった場合(ステップ508)、この試薬容器は、試薬容器搬送機構14によって廃棄された試薬容器が設置されていたポジションへ移動される(ステップ510)。
【0070】
一方、廃棄された試薬容器が設置されていたポジションの試薬容器設置情報203中の泡立ち易さパラメータが“高”となっている場合(ステップ505)、発泡性パラメータが“弱”の試薬を、廃棄された試薬容器を設置していたポジションに再設置するため、以下のように弱発泡性試薬を収容した試薬容器を移動させる。
【0071】
まず、記憶部32を検索し、試薬容器設置情報203と試薬情報202とを参照して、移動対象となりうる弱発泡性の試薬を収容した試薬容器を検索する。検索方法としては、試薬容器設置情報203中の泡立ち易さパラメータが“低”のポジションを検索し、該当するポジションの設置試薬容器情報から試薬コードを取得する。得られた試薬コードをキー情報として、試薬情報202を検索し、試薬の発泡性パラメータが“弱”の試薬容器を探す(ステップ512〜514)。
【0072】
発泡性パラメータが“弱”の試薬容器があった場合(ステップ513)、この試薬容器は、試薬容器搬送機構14によって、廃棄された試薬容器が設置されていたポジションへ移動され(ステップ510)、泡立ち易さパラメータ“低”のポジションは、強発泡性の試薬が投入された場合にも対応可能なように、空き状態とされる。
【実施例5】
【0073】
次に第五の実現方法の詳細を図3を用いて説明する。
【0074】
装置内に投入された試薬容器を自動的に試薬ディスクへ搬送する試薬容器搬送機構14がある自動分析装置の場合、オペレータはまず試薬容器16を試薬容器投入口18にセットする。装置が試薬容器16をセットされたことを検出すると、試薬バーコードを読み取る。試薬容器16に貼り付けられた試薬バーコードは、試薬コード,試薬容器16の製造ロット番号,試薬の有効期限,シーケンス番号,発泡性パラメータ等の情報を持つ。
【0075】
コントローラ20は、読み取られた試薬バーコードに記憶された、試薬コードをキー情報として、記憶部32から該当する試薬情報202を取得する(ステップ301)。取得した試薬情報202中の発泡性パラメータを参照し、図3のステップ302〜311の過程を経て、試薬保管庫内の試薬容器設置位置を決定する。
【0076】
試薬容器設置位置が決定した試薬容器は、当該ポジションまで試薬容器搬送機構14で試薬容器16を搬送して設置する。試薬容器搬送機構14が搬送する試薬容器16の発泡性パラメータが“強”の場合、発泡性パラメータが“弱”の試薬容器16よりも試薬容器搬送の移動速度を遅くし、試薬容器搬送中の試薬攪拌を抑える。設置完了後に、設置したポジションの試薬容器設置情報203中の設置試薬容器情報を、設置した当該試薬容器情報204の試薬コード,試薬製造ロッド番号,シーケンス番号で更新する。
【0077】
本実施例の場合には、泡立ち易い試薬に対しては試薬容器を試薬保管庫へ設置するまでの泡立ちを抑制し、泡立ち難い試薬に対しては試薬保管庫へ設置するまでの時間を短くすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 検体ラック
2 検体(サンプル)容器
3 ラック搬送ライン
4 検体分注プローブ
5 反応容器
6,7 撹拌機構
8 洗浄機構
9 反応ディスク
11,13 試薬分注プローブ
12 試薬開封機構
14 試薬容器搬送機構
15 試薬保管庫
16 試薬容器
17 試薬バーコード読取装置
18 試薬容器投入口
20 コントローラ
31 操作部
32 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬容器を架設する試薬保管庫と、
当該試薬保管庫内の試薬を移送する試薬保管庫移送手段と、を備え、
該試薬保管庫中の任意の試薬を分注して試料と混合させる自動分析装置において、
試薬種別毎の試薬に関する情報と、前記試薬保管庫のポジションに関する情報と、を記憶する記憶手段と、
前記試薬に関する情報と前記試薬保管庫のポジションに関する情報とに基づいて、試薬容器毎に前記試薬保管庫内でのポジションを決定する決定手段と、を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記決定手段で決定された試薬保管庫内でのポジションを画面表示する表示装置を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記記憶手段は前記試薬保管庫中に架設されている試薬の使用可否に関する情報を記憶し、
使用不可と判断された試薬が発生した場合には、前記表示装置は当該試薬容器が架設されていたポジションへ再配置を推奨する試薬容器に関する情報を表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記決定手段で決定された試薬保管庫内でのポジションへ試薬容器を搬送する試薬容器搬送手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項4記載の自動分析装置において、
前記記憶手段は前記試薬保管庫中に架設されている試薬の使用可否に関する情報を記憶し、
使用不可と判断された試薬容器が発生した場合には、前記試薬容器搬送手段は、当該試薬容器を前記試薬保管庫から排出し、当該試薬が架設されていたポジションへ他の試薬容器を搬送することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記試薬に関する情報は、試薬の泡立ち易さに関する情報であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記試薬保管庫は、
回転中心位置を同じくする複数の円盤の円周上に試薬容器を設置可能な試薬ディスクであり、
前記試薬保管庫のポジションに関する情報は、前記試薬保管庫移送手段による試薬容器の移送速度によって定められる情報であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
試薬容器を搬送する試薬容器搬送手段を備え、
当該試薬容器内の試薬を分注して試料を混合して分析する自動分析装置において、
試薬種別毎の試薬に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記試薬に関する情報に基づいて前記試薬容器搬送手段が試薬を搬送する速度を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
試薬容器に収容された試薬について泡立ち易さを含む情報を取得するステップと、
試薬保管庫内の空いているポジションについての情報を取得するステップと、
取得した情報に基づいて試薬保管庫内への当該試薬容器の架設ポジションを決定するステップと、
を有することを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項10】
請求項9記載の自動分析装置の制御方法において、
決定した試薬容器の架設場所を画面表示するステップを有することを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項11】
請求項9記載の自動分析装置の制御方法において、
決定した試薬容器の架設場所へ当該試薬容器を搬送するステップを有することを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項12】
試薬容器に収容された試薬の、使用可否を含む情報を取得するステップと、
使用不可と判定された試薬容器を試薬保管庫から排出するステップと、
前記使用不可と判定された試薬容器が架設されていたポジションに関する情報を取得するステップと、
取得した前記ポジションに関する情報に基づき、試薬保管部に保管された試薬容器の再配置を行うステップと、
を有することを特徴とする自動分析装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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