説明

自動化されたダブルクラッチ変速機のための液圧式制御装置

【課題】簡単に低コストで且つ小型に形成され、1つの制御弁が故障した場合に安全上の問題なく出来る限り多くのギアを使用して、ダブルクラッチ変速機の設けられた自動車を依然として緊急走行駆動で走らせることのできる自動化されたダブルクラッチ変速機のための液圧式制御装置を提供する。
【解決手段】第1切換弁6は、位置Aで第1制御弁3を第1クラッチ8に接続すると共に切換システム11から切断し、位置Bで第1制御弁3を切換システム11に接続すると共に第1クラッチ8から切断し、第2切換弁7は、位置AIIで第2制御弁4を第2クラッチ10に接続すると共に切換システム11から切断し、位置BIIで第2制御弁4を切換システム11に接続すると共に第2クラッチ10から切断する。第1切換弁6が位置Bかつ第2切換弁7が位置BIIにおいて第2制御弁4と第1クラッチ8との間に接続を確立し、第2クラッチ10に圧力をかけない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動化されたダブルクラッチ変速機のための液圧式制御装置、および、
液圧式制御装置による変速機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダブルクラッチ変速機は、以前より知られており、好ましくは自動車において使用されている。ダブルクラッチ変速機は、一般的に2つの部分変速機を備え、2つの部分変速機には、それぞれ1つの別々のクラッチと、1グループのギアが割り当てられている。著しい機械的な複雑さ、すなわち、2つのクラッチの操作と双方の部分変速機のギアの切り換えとのせいで、ダブルクラッチ変速機は、たいていの場合は自動化されて形成されている。すなわち、クラッチの操作とギアの切り換えとは、割り当てられている補助ドライブによって行なわれる。なお、補助ドライブは、例えば、液圧の作用を受けるサーボポジショナーの形状で形成されていてもよく、このサーボポジショナーは、液圧式制御装置によって駆動される。
【0003】
特許文献1に、第1部分変速機を有する第1クラッチと、第2部分変速機を有する第2クラッチと、第2変速機のギアの噛み合わせ/解除のための切換システム(12)とを備える自動化されたダブルクラッチ変速機のための液圧式制御装置が記載されている。上記液圧式制御装置は、制御ユニットを備え、この制御ユニットは、第1および第2のクラッチの操作のため、および、切換システム(12)の操作のために少なくとも1つの制御可能な圧力および/または制御可能な流量を設定する。さらに、上記制御装置は、切換器を備え、この切換器は、制御ユニットとクラッチまたは切換システムとの間に配置されており、制御可能な圧力または制御可能な流量をクラッチまたは切換システムに切り換えることができる。制御ユニットは、第1制御弁と第2制御弁とからなり、一方、切換器は、第1切換弁と第2切換弁とを備えている。第1切換弁は、位置Aにおいて、第1制御弁を第1クラッチに接続すると共に第1制御弁を切換システムから切断する。逆に、位置Bにおいて、第1切換弁は、第1制御弁を切換システムに接続すると共に第1制御弁を第1クラッチから切断する。第2切換弁も、2つの位置をとることができ、この場合、第2切換弁は、位置AIIにおいて、第2制御弁を第2クラッチに接続すると共に第2制御弁を切換システムから切断する。位置BIIにおいて、第2切換弁は、第2制御弁と切換システムとの間を接続し、一方、第2制御弁を第2クラッチから切断する。したがって、特許文献1の制御装置によれば、双方の制御弁のそれぞれ一方によってギアの切り換えが可能となっている。
【0004】
緊急走行段階において1つの制御弁が故障しても双方のクラッチを操作できるように、特許文献1では、第1切換弁が位置Bにあり、且つ、第2切換弁が位置BIIにある場合に、第1制御弁が第2クラッチに接続されており、第2制御弁が第1クラッチに接続されている、ということが提案されている。例えば第1制御弁が故障した場合、第1および第2の切換弁がそれぞれ位置B,BIIにある限り第2制御弁を介して第1クラッチを駆動することができる。第2制御弁が位置AIIに切り換えられても、第2クラッチは、同じく、第2制御弁によって操作される。
【特許文献1】欧州特許公開第1635091号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この方法では、制御弁の1つが開放位置において故障すると、緊急走行段階において深刻な問題が生じる可能性がある。その場合には、故障した制御弁は、クラッチに割り当てられている部分変速機のギアを解除することができるように該クラッチを開放することを困難にまたは不可能にする不都合な圧力をもたらす。さらに、これらの切換弁は、この方法のために多くの入力ポートと出力ポートとを必要とし、そのせいで、これらの切換弁は複雑に構成されており、相当する所要面積を有している。
【0006】
したがって、本発明の目的は、簡単に、低コストで、且つ、小型に形成されており、1つの制御弁が故障した場合に安全上の問題なく出来る限り多くのギアを使用して、ダブルクラッチ変速機の設けられた自動車を依然として緊急走行駆動で走らせることのできる自動化されたダブルクラッチ変速機のための液圧式制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、請求項1の制御装置によって達成される。好ましい形態は、請求項2から5に記載されている。さらに、請求項6において、本発明の制御装置の制御方法が記載されている。
【0008】
請求項1に記載の制御装置は、第1切換弁が位置Bにあり、且つ、第2切換弁が位置BIIにある場合に、第2制御弁と第1クラッチとが接続されており、第2クラッチには圧力がかかっていないことを特徴とする。
【0009】
本発明の制御装置によれば、開放位置において1つの制御弁が故障しても、制御弁がダブルクラッチ変速機に対する、または、ダブルクラッチ変速機の設けられた自動車に対する危険を意味するであろう切換状況になり得ることなく、安定した緊急走行駆動が可能となる。本発明の制御装置によって、第1クラッチの優先化が行なわれる。この場合、同時に、第2クラッチを条件付きでのみ使用可能である、または、第2クラッチを介して緊急走行駆動時に自動車を走行させることは不可能であるということが考えられる。しかしながら、計画的な優先化は、第1部分変速機のギアの確実な噛み合わせおよび解除と、第1クラッチの確実な係脱とを保証する。1つの制御弁の故障時に制御装置がどのように動作することが好ましいかは後に詳細に説明する。
【0010】
好ましい形態において、第1部分変速機は、第1フォワードギアとリバースギアとを備えている。したがって、1つの制御弁の故障時に自動車を操縦可能または操車可能である、ということが確実となる。この状態では、自動車を、後方へも前方へも容易に動かすことができる。
【0011】
好ましい形態では、第1制御弁または第2制御弁と切換システムとの間に、切換スイッチが設けられている。この切換スイッチにより、切換システムが第1制御弁の圧力/流量または第2制御弁の圧力/流量による作用を受ける、ということが確実となる。この切換スイッチは、切換システムと制御弁との接続を切断する機能を果たす。なお、制御弁は単に切換システムの駆動のために設けられているのではなく、または、妨害により駆動を伝達することができないようになっている。したがって、切換システムの駆動は、1つが不良である可能性のある2つの制御弁の望ましくない干渉によって侵害されることはない。
【0012】
切換スイッチは切換弁(シャトル弁)として構成されていることが好ましい。この場合、切換弁は、第1および第2の入力ポートと出力ポートとを備え、第1入力ポートは、第1制御弁と接続されており、第2入力ポートは第2制御弁と接続されている。切換スイッチの出力ポートは、切換システムと接続されている。切換弁は、出力ポートと高い圧力のかかる入力ポートとを接続し、一方、同時に出力ポートを低い圧力の入力ポートから切断する。
【0013】
制御装置は、グループ選択器を備えていることが好ましく、このグループ選択器によって、制御ユニットは、第1部分変速に割り当てられた第1グループのアクチュエータすなわちサーボポジショナー、または、第2部分変速機に割り当てられた第2グループのアクチュエータすなわちサーボポジショナーに接続される。このグループ選択器は、好ましくは2つの位置をとる弁を備えていてもよく、第1位置において、制御ユニットの制御された圧力/流量は、第1グループに、第2位置において、制御された圧力/流量は、第2グループのアクチュエータに切り換えられる。同時に、グループ選択器の弁の第1位置において、制御ユニットと第2グループのアクチュエータとの間の接続が切断される。同様に、第2位置において、第1グループのアクチュエータが制御ユニットから切断される。
【0014】
スイッチシーケンスおよびスイッチロジックを、本発明の制御装置の範囲内で任意に変更することができる。ギアの噛み合わせ/解除のために切換システムを起動する必要のある場合、通常の走行駆動において、それぞれ1つの切換弁が、位置B(BまたはBII)に切り換えられる。そうでない場合は、切換弁は、それぞれの位置A(A,AII)にあり、その結果、第1制御弁は第1クラッチと接続されており、第2制御弁は第2クラッチと接続されている。
【0015】
第1制御弁が故障した場合、本発明の方法によれば、上記制御装置によってダブルクラッチ変速機を制御するために、第1切換弁は位置Bに、第2切換弁は位置BIIに切り換えられる。これにより、第2クラッチには圧力がかからず、したがって、第2クラッチは、回転モーメントを伝達できない。双方の切換弁が位置B,BIIにあることで、第2制御弁は、第1クラッチに接続されている。これにより、第1クラッチを制御しながら係脱することができ、したがって、第1クラッチは、回転モーメントを滑りながら伝達したり滑らずに伝達したりできる。
【0016】
第1制御弁の故障時、第1制御弁が閉鎖位置において故障したとすると、第1部分変速機のギアは、第2制御弁を用いて噛み合わせられ、または、解除される。第1制御弁が開放位置において故障した場合、切り換えのための圧力は(開放された第1制御弁を通って)制御装置の給油部の主圧力制御弁によって制御される。したがって、この場合、第1切換弁は、第1制御弁と切換システムとの間に接続が確立される位置Bにある。
【0017】
しかしながら、上記のような状態にできる以前に、場合によっては噛み合わせられている第2部分変速機のギアが解除されることが好ましい。ここでもまた、制御装置の切換位置は、第1制御弁が閉鎖位置において故障したのか開放位置において故障したのかに対応している。第1制御弁が閉鎖位置において故障した場合、問題のギアは、第2圧力制御弁によって解除され、一方、開放位置では、解除のための圧力は、主圧力制御弁によって直接設定される。
【0018】
第2制御弁が故障した場合、第2切換弁は、位置AIIに保持または切り換えられる。第2部分変速機においてギアが噛み合っていない場合、第2部分変速機は、第2制御弁が閉鎖位置において故障した場合の結果として第2クラッチがつながっているかどうか、または、第2制御弁が開放位置において故障した場合の結果として第2クラッチが開放されているかどうかに関係なく、回転モーメントを伝達しない。
【0019】
第2部分変速機のギアが噛み合っている場合、第1クラッチおよび切換システムが上記のように駆動される前に、このギアは第2制御弁の故障した場合にまず解除されることが好ましい。第2制御弁が開放位置において故障した場合、ギアは主圧力制御弁を介して解除される。この場合、第2切換弁を、位置BIIにすることができる。第2制御弁が閉鎖位置において故障した場合、第1切換弁が位置Bに切り換えられることにより、第1制御弁を介してギアが解除される。制御装置における更なる制約(共通の電磁弁によるグループ選択器と第1切換弁との接続)により第1制御弁を介した解除が不可能である場合、ギアは噛み合ったままであってもよい。なぜなら、故障した第2制御弁が閉鎖位置にあることにより、第2クラッチには圧力がかからず、それゆえ開放しているからである。しかしながら、自動車の速度を噛み合うギアに合った値に制限する、ということに注意する必要がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図に示す実施形態を参照して本発明を詳しく説明する。
【0021】
図1は、全体として符号1で示す本発明の油圧式制御装置の概略図を示す。制御装置1は、第1制御弁としての圧力制御弁3と、第2制御弁としての圧力制御弁4とを有する制御ユニット2を備えている。双方の圧力制御弁3,4は、入力ポート側において、圧力給油部5に接続されている。
【0022】
第1圧力制御弁3には第1切換弁6が割り当てられており、第2圧力制御弁4には第2切換弁7が割り当てられている。第1圧力制御弁3は、第1切換弁6を介して、第1クラッチ8または経路選択器すなわちグループ選択器9に接続される。第2切換弁7を用いて、第2圧力制御弁4の制御された圧力は、グループ選択器9または第2クラッチ10へ切り換えられる。
【0023】
自動車に組み込まれているダブルクラッチ変速機は、制御装置1によって制御され、変速機の個々のギアを噛み合わせ、および/または、解除することのできる、2つの別々のクラッチ(第1および第2のクラッチ8,10と複数のサーボポジショナーすなわちアクチュエータとを有している。ダブルクラッチ変速機は、第1または第2のクラッチ8,10に割り当てられる第1および第2の部分変速機を備えている。クラッチのクラッチシリンダに圧力をかけると、クラッチはつながる。それ以外の場合はクラッチはバネ力によって開放された状態に保持されている。クラッチは、つながった状態において、自動車の駆動ユニット(例えば、燃焼機関)と付属の部分変速機との間で回転モーメントを伝達する。
【0024】
グループ選択器9は、切換システム11の一部である。切換システム11は、第1グループのアクチュエータ12と第2グループのアクチュエータ13とを備えている。第1グループのアクチュエータ12によって、第1部分変速機のギアの噛み合わせおよび解除が行なわれる。一方、第2グループのアクチュエータ13は、第2部分変速機のギアの噛み合わせおよび解除を担っている。この場合、グループ選択器9は、制御ユニット2の制御された圧力を、第1グループのアクチュエータ12または第2グループのアクチュエータ13へ導く。さらに、切換システム11は、個々のアクチュエータを目的に応じて駆動できるように、ここには図示していないが更なる開閉弁を備えている。
【0025】
図1においてはっきりと強調された矢印14は、切換装置1が特定の切換状況において第2切換弁7と第1切換弁6との間に接続を確立する、ということを明らかにしている。この接続により、第2圧力制御弁4は、制御された圧力を切換弁7,6を介して第1クラッチ8に作用できるようになる。矢印14の接続が確立されると、第2クラッチには圧力がかからなくなる。この場合、第2クラッチは、第1圧力制御弁3からも第2圧力制御弁4からも切断される。
【0026】
図2は、図1の実施形態の好ましい変形例のブロック図を示す。主圧力制御弁16と接続したポンプ15は、本質的に給油部5を形成している。
【0027】
第1切換弁6と第2切換弁7とを操作するために、電磁弁17と電磁弁18とが設けられている。電磁弁17は、信号配管19を介して、信号または信号圧力を第1切換弁6へ導く。この信号によって、切換弁6は操作されまたは切り換えられる。第2切換弁7は、電磁弁18から生成され信号配管20を介して導かれる信号または信号圧力によって切り換えられる。
【0028】
双方の圧力制御弁3,4は、2つの入力ポート21,22と出力ポート23とを有する3ポート3位置切換弁としてそれぞれ形成されている。この場合、入力ポート21は油タンク24と接続されており、入力ポート22は油圧供給部5と接続されている。各圧力制御弁3,4の出力ポート23は、それぞれ割り当てられた切換弁6,7につながっている。
【0029】
第1切換弁6は、5ポート2位置切換弁として形成されている。5ポート2位置切換弁6は、3つの入力ポート25,26,27と、2つの出力ポート28,29とを備えている。入力ポート25は、油タンク24と接続されており、一方、入力ポート26は、第1圧力制御弁3の出力ポート23と接続されている。入力ポート27については後に説明する。
【0030】
出力ポート28は、配管39を介して、切換スイッチとしてのシャトル弁(切換弁)30と接続されている。シャトル弁30は、切換システム11と接続されている。出力ポート29は、第1クラッチ8につながっている。
【0031】
第2切換弁7は、4つの入力ポート31,32,33,34と3つの出力ポート35,36,37とを有する7ポート2位置切換弁として構成されている。入力ポート31,33は、油タンク24と接続されており、一方、入力ポート32,34は、第2圧力制御弁4の出力ポート23と接続されている。出力ポート35は、配管40を介して、シャトル弁30と接続されており、一方、出力ポート36は、第2クラッチ10につながっている。第2圧力制御弁7の出力ポート37は、接続配管38を介して、上述の入力ポート27に接続されている。
【0032】
ここでは3ポート2位置切換弁として構成されている電磁弁17は、切換弁6の上流に接続されており、油圧供給部5の圧力を電気的に励起した状態で切換弁6へ通電する。その結果、切換弁6は、バネ負荷のかかった静止状態すなわち図2に示すような位置Aから位置Bに切り換えられる。電磁弁17と同様に、切換弁7の上流に接続された電磁弁18は、3ポート2位置切換弁として構成されている。切換弁7は、静止状態において位置AIIとなっており、信号または制御圧が加わると位置BIIになる。
【0033】
第1切換弁6は、(図2に示すような)位置Aにおいて、第1圧力制御弁3と第1クラッチ8との間を接続する。第2切換弁7も、位置AIIにあり、この位置において、第2クラッチ10と第2圧力制御弁4とは互いに接続されている。この位置A,AIIにおいて、双方のクラッチ8,10は、それぞれ、制御された圧力の作用を受ける。その結果、双方のクラッチは、ある重複期間、圧力制御弁3,4の制御された圧力に応じて同時に回転モーメントを伝達することができる。
【0034】
例えば電磁弁17が電気的に操作される場合、信号または制御圧は、信号配管19を介して第1切換弁6へ切り換えられる。これにより、切換弁6は、バネ力に対抗して位置Bへ押される。この位置Bにおいては、第1クラッチ8は、圧力制御弁3から切断されており、クラッチ8に属するクラッチシリンダにおいて圧力のかかっている圧力媒体(油)は、第1切換弁6の出力ポート29と入力ポート27とを介して、接続配管38を通り、出力ポート37へ導かれる。第2切換弁7が(図2に示すように)位置AIIにある限り、第2切換弁7は、出力ポート37と入力ポート33または油タンク24との間に接続を確立している。結果として、クラッチシリンダにおける圧力は弱まり、クラッチ8は開放される。さらに、第1切換弁6の位置Bにおいて、入力ポート26は、出力ポート28と接続される。その結果、第1圧力制御弁3の制御された圧力がシャトル弁30にかかり、シャトル弁30が圧力を伝導している場合は、ギアの噛み合わせおよび解除のための切換システム11にもかかる。
【0035】
第2切換弁7が上記段落で言及したような図2に示す位置(位置AII)になく、位置BIIにある場合、第1クラッチ8は、第2圧力制御弁4に接続され、一方、同時に、第2クラッチ10は、油タンク24に切り換えられる。
【0036】
以下に、圧力制御弁3または圧力制御弁4が故障した場合にどの切換が行なわれることが好ましいかを説明する。
【0037】
図2から分かるように例えば第1圧力制御弁3が閉鎖位置において故障した場合、第1クラッチ8は、第2圧力制御弁4によって操作される。この場合、第1切換弁6は位置Bにあり、第2切換弁7は位置BIIにある。これにより、接続配管38を介した第2圧力制御弁4から第1クラッチ8への接続が確立される。したがって、第1部分領域のギアによるダブルクラッチ変速機の緊急走行駆動が可能である。なお、第1部分領域には、好ましくは第1フォワードギアとリバースギアとが属している。
【0038】
第1部分変速機のギアを、第2圧力制御弁4によって噛み合わせ、および、解除することができる。第1部分変速機のギアの噛み合わせ、または、解除のために、第1切換弁6を位置Aに切り換える。その結果、第1クラッチ8は、故障した第1圧力制御弁3に接続される。この場合、第1圧力制御弁3は、開放位置にあり、その結果、第1クラッチ8が開放される。
【0039】
第1切換弁6の位置Bにおいて、シャトル弁30は、出力ポート28と入力ポート26とを介して、開放位置における故障した第1圧力制御弁3に接続される。このときシャトル弁30にかかる圧力比により、第2圧力制御弁4と切換システム11との間に接続が確立される。これにより、制御された圧力によって、第1部分変速機のギアは噛み合う。
【0040】
これに対し、第1圧力制御弁3が開放位置において故障した場合、第1部分変速機のギアの噛み合わせまたは解除は、第2圧力制御弁4によって行なわれるのではなく、油圧供給部5の主圧力制御弁16の圧力によって行なわれる。この場合、主圧力制御弁16は、開放された圧力制御弁3および位置Bにある切換弁6を介して、シャトル弁30に接続される。この場合、シャトル弁30は、配管39と配管40との間の圧力勾配のせいで、切換システム11との接続を解除する。第1部分変速機のギアの噛み合わせまたは解除の間、制御された圧力は、第2圧力制御弁4の出力ポート23において、ゆえに、配管40において非常に小さい。なぜなら、それ以外の場合は第1クラッチ8は開放されていないであろう。したがって、配管39と配管40との間の圧力勾配が生じる。これにより、シャトル弁30は、第1切換弁6と切換システム11との間の接続を解除する。
【0041】
第2部分変換器のギアが依然として噛み合っている場合、ダブルクラッチ変速機が緊急走行駆動において第1クラッチ8のみを介して操作される前に、解除に必要な圧力を用意することにより第2部分変換器のギアは解除される。解除に必要な圧力は、第1圧力制御弁3が閉鎖位置において故障した場合は第2圧力制御弁4によって用意される。第1圧力制御弁3が開放位置において故障した場合は、ギアの解除は、主圧力制御弁16によって行なわれる。
【0042】
第2圧力制御弁4が故障した場合、第2切換弁7は、位置AIIに切り換えられ、その結果、第2圧力制御弁4は、切換システム11および第1クラッチ8から切断される。第1部分変速機のギアは、第1圧力制御弁3を介して噛み合わせられ、および、解除され、第1クラッチ8を操作する。その結果、第1部分変速機の対応するギアによる第1クラッチを介したダブルクラッチ変速機の対応する緊急走行駆動が可能である。
【0043】
この場合、第2圧力制御弁4が(図2に示すように)開放位置において故障した場合、第2クラッチ10は、位置AIIにおける切換弁7を介して、油タンク24に接続されており、圧力がかかっていない。したがって、回転モーメントは、ドライブと第2部分変速機との間を伝達され得ない。したがって、第2部分変速機の場合によっては噛み合うギアを、ダブルクラッチ変速機の緊急走行駆動のために必ずしも解除する必要はない。しかしながら、噛み合うギアによって過剰な負荷が第2部分変速機にかからないように、車両速度が適切に制限されているよう注意する必要がある。
【0044】
あるいは、第2部分変速機の噛み合うギアは、第1圧力制御弁3によって解除されてもよい。しかしながら、第1圧力制御弁3を介した解除は、第2圧力制御弁4が閉鎖位置において故障した場合のみ可能である。第2圧力制御弁4が開放位置において故障した場合は、第2部分変速機におけるギアは、主圧力制御弁16によって解除される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態の概略図である。
【図2】図1の実施形態の好ましい変形例のブロック図である。
【符号の説明】
【0046】
1 制御装置
2 制御ユニット
3 第1圧力制御弁(第1制御弁)
4 第2圧力制御弁(第2制御弁)
5 油圧供給部
6 第1切換弁
7 第2切換弁
8 第1クラッチ
9 グループ選択器
10 第2クラッチ
11 切換システム
12 第1グループのアクチュエータ
13 第2グループのアクチュエータ
14 矢印
15 ポンプ
16 主圧力制御弁
17 電磁弁
18 電磁弁
19 信号配管
20 信号配管
21 入力ポート
22 入力ポート
23 出力ポート
24 油タンク
25 入力ポート
26 入力ポート
27 入力ポート
28 出力ポート
29 出力ポート
30 シャトル弁(切換スイッチ)
31 入力ポート
32 入力ポート
33 入力ポート
34 入力ポート
35 出力ポート
36 出力ポート
37 出力ポート
38 接続配管
39 配管
40 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分変速機を有する第1クラッチ(8)と、第2部分変速機を有する第2クラッチ(10)と、前記2つの部分変速機のギアの噛み合わせ/解除のための切換システム(11)とを有する自動化されたダブルクラッチ変速機のための油圧式制御装置(1)であって、
前記第1および前記第2のクラッチ(8,10)を操作するため、および、前記切換システム(11)を操作するために少なくとも1つの制御可能な圧力および/または制御可能な流量を設定する制御ユニット(2)と、
前記制御ユニット(2)と前記クラッチ(8,10)または前記切換システム(11)との間に配置されており、前記制御可能な圧力または前記制御可能な流量を前記クラッチ(8,10)または前記切換システム(11)に切り換えることのできる切換装置とを備え、
前記制御ユニット(2)は、第1制御弁(3)と第2制御弁(4)とを有し、
前記切換装置は、第1切換弁(6)と第2切換弁(7)とを有し、
前記第1切換弁(6)は、
a)位置Aにおいて、前記第1制御弁(3)を、前記第1クラッチ(8)と接続すると共に前記切換システム(11)から切断し、
b)位置Bにおいて、前記第1制御弁(3)を、前記切換システム(11)と接続すると共に前記第1クラッチ(8)から切断し、
前記第2切換弁(7)は、
c)位置AIIにおいて、前記第2制御弁(4)を、前記第2クラッチ(10)と接続すると共に前記切換システム(11)から切断し、
d)位置BIIにおいて、前記第2制御弁(4)を、前記切換システム(11)と接続すると共に前記第2クラッチ(10)から切断するように構成され、
前記第1切換弁(6)が位置Bにあり、且つ、前記第2切換弁(7)が位置BIIにある場合に、前記第2制御弁(4)と前記第1クラッチ(8)との間に接続が確立されており、前記第2クラッチ(10)には本質的に圧力がかかっていないことを特徴とする油圧式制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置(1)において、
前記第1部分変速機は、第1フォワードギアとリバースギアとを備えることを特徴とする制御装置(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置(1)において、
前記第1切換弁(6)または前記第2切換弁(7)と前記切換システム(11)との間に切換スイッチ(30)が設けられており、
前記切換スイッチ(30)は、前記切換システム(11)が前記第1制御弁(3)の前記圧力/流量、または、前記第2制御弁(4)の前記圧力/流量の作用を受けるようにすることを特徴とする制御装置(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置(1)において、
前記切換スイッチが、シャトル弁(30)として構成されていることを特徴とする制御装置(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置(1)において、
グループ選択器(9)を備え、
前記グループ選択器(9)によって、前記制御ユニット(2)は、前記第1部分変速機に割り当てられている第1グループのアクチュエータ(12)、または、前記第2部分変速機に割り当てられている第2グループのアクチュエータ(13)に接続されることを特徴とする制御装置(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置(1)によるダブルクラッチ変速機の制御方法において、
前記第1制御弁(3)の故障時に、前記第1切換弁(6)を位置Bに切り換え、前記第2切換弁(7)を位置BIIに切り換えることを特徴とする制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記第1部分変速機の前記ギアを、前記第1制御弁(3)の故障時に、
閉鎖位置においては前記第2制御弁(4)によって、
開放位置においては油圧供給部(5)の主圧力制御弁(16)によって、
噛み合わせる、および、解除することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法において、
前記第2部分変速機の噛み合うギアを、前記第1制御弁(3)の故障時に、
前記閉鎖位置においては前記第2制御弁(4)によって解除し、
開放位置においては前記主圧力制御弁(16)によって解除することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第2制御弁(4)の故障時に、前記第2切換弁(7)を、位置AIIに切り換える、または、保持することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記第2切換弁(7)を位置BIIに切り換えることにより前記第2部分変速機の噛み合うギアをまず解除し、
この場合において、前記噛み合うギアは、前記第2制御弁(4)の故障時に、
前記閉鎖位置においては前記第1制御弁(3)によって、
開放位置においては前記主圧力制御弁(16)によって、
解除されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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