説明

自動化された位置依存型の自然災害予測のための方法およびシステム

本発明は、予測システム(5)および自動化された位置依存型の自然災害影響予測に係る方法に関する。自然災害事象は、設置された計測所(401〜422)により測定される。自然災害に関連付けられた特定の地殻構造、地形、または気象に係る条件についての位置依存型の測定パラメータが定められ、当該測定パラメータの臨界値がトリガとされて、注目する地域内における災害事象の影響に係る専用の事象信号が生成される(31/32)。具体的には、当該注目する地域内で影響を受ける人口や物体に基づいて信号生成が行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動化された位置依存型の自然災害予測ならびに災害影響予測のための方法およびシステムに関する。具体的には、設置された計測所によって自然災害事象が測定され、その自然災害と関連付けられた特定の地殻構造条件、地形条件または気象条件について位置依存型の測定パラメータが定められる。当該測定パラメータの臨界値がトリガとされ、特定の災害条件について専用の事象信号を生成する。当該事象信号は、災害事象または注目する地域内において予測される災害事象の影響に関連付けられる。とりわけ本発明は、あらゆる種類の熱帯低気圧、地震、洪水、火山噴火、および津波に関する。また上記専用の事象信号は、特にあらゆる種類の自動警報システムおよび損害補償システム(例えば保険および再保険産業など)のために生成される。
【背景技術】
【0002】
毎年、自然災害(ハリケーン、台風、熱帯性暴風のような熱帯低気圧、地震、洪水、火山噴火、津波などを指す)が、世界の様々な地域で甚大な被害を引き起こしている。このような災害事象の発生の大部分は、長期間にわたって予測することが不可能ではないにしても困難である。時間的に近接する事象について移動点の正確な位置(または、例えば発生中のサイクロン等のように移動する事象の正確な軌跡)でさえ、数時間または数日にわたって予測することはたいてい困難である。2008年には、自然惨禍により、世界全体で234,800名の人命が失われ、被害総額はほぼ2590億米ドルになった。しかしながら、保険によって賄われるのは自然惨禍で生じる被害総額の数分の一のみである(2008年は447億米ドル)。被害額が多額になる可能性があることから、発達した保険市場においてさえ補償対象外とされている部分が多くあるためである。資金不足の大部分は公的部門が引き受ける。(i)非常時の出費のための支払い(シェルタ、緊急通報受理機関、緊要補給品など)、(ii)重要な資産/インフラの再構築のための支払い、(iii)経済活動を再開するための税金による奨励金の提供などがそれに含まれる。しかしながら、このような重要な活動は、赤字と、これら非常時のコストとしてどれくらいの資金を調達すべきかという政府のジレンマをもたらす。選択肢は、他の必要経費を削った予算資源と、内部財政上の対策(すなわち、より高い税)と、外部財政上の対策(すなわち市債)である。莫大な影響を伴う自然災害事象においては、これら全ての対策について更に新たな問題が付随することは明らかである。
【0003】
したがって、経済的損害額と保険が適用される損害額の間のこの大きな格差のため、リスク移転のための新たな解決策が少なからず必要となる。パラメトリックなリスク移転システムを用いると、この問題に解決策を提供することができる。パラメトリックな保険では、透明性の高い条件を用いて、多額の払戻不可能な資金を保険購入者に引き渡す。この仕組みの利点は、資金の迅速な受け渡しにより流動性と資本金がもたらされること、固定的な割増金により予算設定が確実になること、契約を複数年にして法律制定手続きを支援できること、借金と異なり契約に資本回収もなく信用取引について否定的影響がないことである。パラメトリックな保険は州政府の要求を満たしうることも重要である。
【0004】
本明細書では、特に熱帯低気圧と地震を例として扱う。この種の自然災害は、毎年最大の人的・物的被害を生み出すためである。ハリケーンは、「熱帯低気圧」として知られる最も深刻な類の気象現象である。全ての熱帯低気圧と同様に、ハリケーンは、既存の気象外乱、熱帯の温暖な海洋、湿気、および比較的弱い上層風により生ずる。適当な条件が十分長く持続し、重なることによって、この気象現象に付随する激しい風、非常に大きな波、豪雨、および洪水を引き起こす可能性がある。すなわち熱帯低気圧の形成およびそのハリケーンなどへの成長には、以下の条件が必要である。1)既存の気象外乱、2)深度約45mまでの少なくとも26℃の海洋温度、3)大気の厚み全体にわたって比較的弱い風(低ウィンドシア)。一般に、熱帯性暴風およびハリケーンは、その熱源および湿気源が遮断されると(陸地を越えて移動するとき等)、あるいは強いウィンドシアに出会うと弱まる。しかしながら勢力が弱まったハリケーンは、より好適な条件の地域に入ることにより、再び勢力を強める可能性がある。したがって上陸したハリケーンの名残も、かなりの被害を引き起こす可能性がある。毎年、平均10個の熱帯性暴風雨が大西洋、カリブ海、およびメキシコ湾全体にわたって発達する。これらの多くは海洋上に留まる。このような暴風雨のうち6個は毎年ハリケーンになる。平均3年間のうちに、ほぼ5個のハリケーンが、合衆国の海岸線地域などを襲い、テキサス州からメイン州までのあらゆる場所でほぼ50〜100名の人命を奪う。このうち2つが典型的な大型ハリケーンである(風が110mphを越える)。熱帯低気圧の強さは、一般に相対的なものである。より低いカテゴリの暴風雨が、どこを襲うか、他のどの気象的特徴と相互作用するか、もたらされる特定の危険、およびどのくらい低速で移動するかに応じて、より高いカテゴリの暴風雨よりも大きな被害を与える可能性があるためである。実際、熱帯性暴風雨は、主に洪水により、かなりの被害および人命の損失をもたらす可能性もある。通常、このような暴風雨による風が34ノットに達すると、その低気圧には名前が付けられる。公知技術として、熱帯低気圧の風を予測するために様々なシステムがある。非特許文献1または非特許文献2に一つの可能性が示されている。いずれも、サイクロンの経路および強度をモンテカルロ法で生成することにより、ある位置および時刻について特定の強さの風の発生確率が得られる旨を記載している。
【0005】
サイクロン予測システムと同様、地震予測システムまたは地震影響予測システムは、一定規模の地震が特定の場所で特定の時に(またはそれらの範囲に)発生するという予測と、どのような種の物体にどのような被害を引き起こすかという予測を生成すべきものである。地震は、一定期間にわたって蓄積された地殻内部における巨大な歪みエネルギーの突然の解放に続いて起こる地表(海底を含む)の振動である。この歪みエネルギーの解放は、一般に大地内部の割れ目(断層)に沿った巨大な岩盤のずれによって引き起こされる。より大きな地震では、より大量のエネルギーの解放、したがってより大きな断層の破壊が生じる。特定の場所における地盤振動は、地震の大きさ、震源からの距離およびその場所における局所的な土壌条件に依存する。地震は大量の人命の損失、建物およびその内容物について振動被害、事業の中断、地滑り、液状化および大火災の発生をもたらす可能性がある。MMI強度測定は、特定位置における地震の影響を一般的な語で記述する12段階の尺度である。より低い段階では一般に、人がその地震をどのように感じるかを扱う。より高い段階は、観測された構造的被害および地盤の崩壊に基づいて定まる。後者ではMMI段階VII以上のみを使用し、一般には、極めて強い(VII)、破壊的(VIII)、破滅的(IX)、壊滅的(X)、超壊滅的(XI)および破局的(XII)として記述される。この判断のために、公開されている経験的関係式を使用し、スペクトル加速度およびPGVに基づいてMMIが算出される。
【0006】
公知システムにおけるここ数年の全ての改善点にもかかわらず、科学的に再現可能な予測を行なうことは困難であり、特定の時、日、または月について予測を行なうことは未だ不可能である。かなり解明されている断層についてのみ、地震危険度評価マップにより、ある規模の地震がある地点に一定の年数にわたって影響を及ぼしている確率と、その地震がその地点にある様々な構造の物体にどのような種の被害を引き起こす可能性があるのかを推定することができる。地震が既に発生している場合においては、主要振動がある地点に到達する数秒前に警報を提供できる早期警報装置が公知である。この技術では、発生した各種振動の異なる伝播速度を利用する。大地震の後は余震の可能性もあり、地震災害対応手順は、通例その余震に備えて計画されている。したがって専門家は、地震が発生した場合、頻発するまたは大きな地震があることで知られている地域では特に、警報の有無にかかわらず負傷、死亡、および物的被害を防止するために、常に地震について備えるよう助言している。その地点に位置する物体またはその地域の住民について、発生中の地震または発生し得る地震の影響を予測する必要がある。発生中の地震の場合は、適切な信号伝達によって警報システムおよび被害修復システムを作動し、制御する必要がある。発生し得る地震の場合は、適切な備えをしうるように予測を行なう必要がある。この種の公知のシステムは、いわゆる地震の影響(または被害)の指数を用い、地震現象それ自体の物理的に測定された公的に入手可能なパラメータのみに基づいて、事前定義された人口または様々な地理的位置と関連付けられた物体について地震によって引き起こされる影響または被害(例えば建物や橋、幹線道路、送電線、通信線、製造工場、発電所などに関連した損害、ならびに事業中断評価額や偶発的事業中断評価額、被災人口などの非物理的な値も)を、定量的に概算する。このとき予測システムにより生成される信号の一部である上記影響パラメータを使用し、適切な警報または作動信号を電子的に生成することができ、この警報または信号を相関関係にあるモジュールおよび警報装置に伝達することができる。他の例として、特許文献1〜8を挙げることができる。しかしながら公知技術によっては、効率的な地震被害予測または予防システムの実現が技術的に困難である。このようなシステムは、例えば、地震の震源または震央における伝播値を生成するためのユニットと共に、地震検出ユニットまたは方法を含むことができる。震央領域内でさえ、様々な地層、大地について被災物体の拘束度合い、被災物体の内部構造および組み付けが理由で、局所的な影響および影響値にそれぞれ適切に重み付けすることが困難なことが多い。しかしながら、特定の領域内における被災物体について地震の影響を素早く知ることは、正確な作動信号または警報信号を生成し、それを例えば自動緊急装置、被害介入装置もしくはシステムや、全体的な動作不全介入装置(例えば被災物体における直接的な技術的介入のための監視装置、警報装置もしくはシステムなど)に伝達する上で重要になる可能性がある。さらに、公知の地震被害予測/予防システムは信頼性に欠け、動作が遅すぎることがしばしばである。公知技術の問題の一つは、特定の地層に関する地震分野の統計が少なく、大数の法則に基づいてシステムの信号に正しく重み付けすることがほとんどできないことにある。最後に、これらの公知システムは、実現するにはコストが高く、労働力の点からも非常に費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭60−014316号
【特許文献2】ギリシャ国特許第1003604号
【特許文献3】ギリシャ国特許出願公開第96100433号
【特許文献4】中国特許出願公開第1547044号
【特許文献5】特開2008−165327号
【特許文献6】特開2008−077299号
【特許文献7】米国特許出願公開第2009/0164256号
【特許文献8】米国特許出願公開第2009/0177500号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M. Demaria、「Estimating Probabilities of Tropical Cyclone Surface Winds」(X−002297474 EPO)
【非特許文献2】M. DemariaおよびJ. Kaplan、「An Updated Statistical Hurricane Intensity Prediction Scheme (SHIPS) for Atlantic and Eastern North Pacific Basins」(XP−008035846)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の短所を有することのない、より優れた新規の自然災害予測システムおよび方法を提供することである。とりわけ本発明の目的は、様々な地理的位置と関連付けられた人および物体について自然災害の発生および影響を予測するための、自然災害予測および影響予測を可能にすることである。また簡単に重み付けできる、信頼性のある自然災害予測信号および自然災害影響信号を生成することも目的である。適切な信号または値の生成は、自然災害の発生に先立って、あるいは自然災害の発生を機に適時に行なわれるべきである。理想的には、このシステムは、動作中に自己適応するようにされるべきである。上記影響値または信号は、様々な地理的な位置と関連付けられた特定の人口または物体について自然災害によって引き起こされる影響を示すはずである。特に本発明の目的は、人口または物体の地理的な分布を考慮して影響信号を生成するための自然災害予測システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
具体的には、これらの目的は、予測システムによる自動化された位置依存型の自然災害予測および災害影響予測のための方法により達成される。
前記予測システムは、設置された計測所によって自然災害事象が測定され、その自然災害と関連付けられた特定の地殻構造、地形、または気象に係る条件について位置依存型の測定パラメータが定められ、当該測定パラメータの臨界値がトリガにされて、注目する地域内において予測された災害事象および災害事象による影響に係る専用の事象信号を生成するものである。
前記予測システムにより過去の自然災害事象が収集され、前記過去の自然災害事象の発生を示す複数の時空間パターンが生成されるとともに、演算ユニットのメモリモジュールに保存される。
前記時空間パターンは、前記注目する地域内の地理的位置および/または事象の強さを表す複数のポイントを含むものである。
注目する地理的領域において、前記演算ユニットにより、前記時空間パターンについて地殻構造、地形、または気象に係る条件データが定められる。
当該条件データは、自然災害の伝播状態を示すものであり、当該伝播状態は、特定の移動点または軌跡からの距離に依存するものであり、当該移動点または軌跡は、特定の伝播ラインに沿った地殻構造、地形、または気象に係る構造に依存するものである。
前記災害事象の移動点または軌跡の事象パラメータを測定する、設置された計測所により、注目する地域内における自然災害の発生または発生の接近が検出されるとともに、当該事象パラメータが前記予測システムに送信される。
前記送信された事象パラメータおよび条件データに基づいて、前記事象の前記注目する領域への前記事象の伝播状態を含むフットプリント記録が生成され、前記注目する地理的領域をカバーするグリッドが前記演算ユニットにより設定されるとともに、各グリッドセルについての前記フットプリント記録に基づいて、前記検出された自然災害事象の規模値が生成される。
前記各グリッドセルにおいて、前記システムにより特定の人口の母集団が定められるとともに、自然災害事象の規模に関連付けて被災人口を設定する脆弱性曲線における複数のカーブファクタが、当該母集団に基づいて、内挿モジュールによって生成される。
前記フットプリント記録および前記生成された脆弱性曲線によって、被災人口値が、各グリッドセルについて生成されるとともに、前記自然災害事象による前記被災人口を与える参照テーブルに割り付けられる。
トリガモジュールによって、信号パルスが生成され、前記参照テーブルにおける複数の前記被災人口ファクタのうち少なくとも1つが、定義可能な閾値よりも高い値をとることで前記トリガモジュールによってトリガされた場合、前記自然災害予測システムにより、前記信号パルスが制御信号として1つ以上の警報システムに送信される。
【0011】
変形例においては、トリガモジュールによって全被災人口信号が生成される。当該全被災人口信号は、累積された全被災人口ファクタを含んでおり、前記トリガモジュールは、前記累積された全被災人口ファクタでトリガをかける。
【0012】
別の実施形態においては、各過去の事象について、第1モンテカルロモジュールによって、複数の自然災害事象を表す複数の新たな時空間パターンが生成される。前記新たな時空間パターンの複数のポイントは、移動中心から、または過去の軌跡に沿って、依存型サンプリング処理によって生成される。前記地殻構造、地形、または気象に係る条件データは、前記時空間パターンおよび前記新たな時空間パターンに基づいて、前記演算ユニットにより定められる。
【0013】
さらに別の実施形態においては、前記時空間パターンについて、第2モンテカルロモジュールによって、1つ以上のフットプリント記録が生成される。当該新たなフットプリント記録は、モンテカルロサンプリング処理によって生成されるものである。前記検出された自然災害事象の規模値は、前記フットプリント記録および前記新たなフットプリント記録に基づいて生成される。
【0014】
ある実施形態においては、前記災害事象のフットプリント記録によって、災害強度分布または気象強度情報が、前記グリッドにおける選択された複数のセルの各々について生成され、これに基づいて前記自然災害事象の規模値が当該選択された複数のセルの各々について生成される。
【0015】
別の実施形態においては、前記過去の自然災害事象の前記時空間パターンにおける定義可能な期間について、前記災害事象を強度および/または発生年により分類するスケーリングテーブルによって、分布が生成される。前記過去の自然災害事象の前記分布は、割り当てられた年に応じて、フィルタモジュールによって前記時空間パターン内に再現される。前記新たな時空間パターンの部分集合が、地殻構造、地形、または気象に係る条件データに基づいて、発生確率により選択される。
【0016】
さらに別の実施形態においては、測定された前記事象パラメータの各々について、定義可能な自然災害事象プロファイルに基づいて、前記フットプリント記録が生成される。内挿モジュールによって、前記グリッドにおける各ポイントに確率が割り当てられることによって、ある地理的位置および時における特定強度の発生確率を与える。
【0017】
ある実施形態においては、前記収集された過去の自然災害事象は、前記予測システムのフィルタモジュールによって、自然災害事象のタイプに応じてフィルタ処理される。選択された自然災害事象のタイプに基づいて、前記信号パルスが生成される。ここで選択可能な前記自然災害事象のタイプは、地震、洪水、熱帯低気圧、火山噴火、および津波を含む。
【0018】
他の実施形態においては、前記自然災害事象の強度を表す前記フットプリント記録は、前記収集された過去の自然災害事象のうち幾つかに関連付けられた、大気、地震、または地形に係るデータを含む。当該大気、地震、または地形に係るデータは、前記過去の自然災害事象についての過去のフットプリント記録を定める。
【0019】
さらに他の実施形態においては、前記グリッドにおいて選択されたセルについての前記規模値は、当該選択されたセルに関連付けられた前記フットプリント記録データと、当該選択されたセルに隣接する1つ以上のセルに関連付けられた前記フットプリント記録データの少なくとも一方から設定される。ここで選択されたセルの前記規模値は、当該選択されたセルに関連付けられたフットプリント記録データと、当該選択されたセルに隣接する1つ以上のセルに関連付けられたフットプリント記録データの重み付けされた平均から設定される。
【0020】
上記の方法に加え、本発明は予測システムおよび当該方法を実行するコンピュータプログラム製品にも適用可能である。
【0021】
本発明によれば、特に独立請求項に記載の特徴により上記の目的が達成される。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、上記の方法を実施するにあたり現在把握されている最良の態様を例示する、実施形態に係る詳細な説明を参照することにより、付加的な特徴や効果が明らかになるであろう。
【0022】
本明細書の開示について、添付の図面を参照しつつ以下説明する。これらの図面は非限定的な例を示すものに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の方法に係る一実施形態の動作全体を模式的に示す図である。
【図2】1980年〜2008年の自然惨禍による損失を示すグラフである。
【図3】最近の大きな自然災害事象の経済的損失を示す表である。
【図4】上記予測システムおよび方法で用いられる地震フットプリント(MMI)を示す図である。さらに自然災害フットプリントによって得られる、選択された都市の被災状況も示している。
【図5】予測システムおよび方法で用いられる、上陸したハリケーン「アイク」による風速のフットプリントと、そのフットプリント内部における対応する人口分布をさらに示す図である。
【図6】予測システムおよび方法で用いられる、人口密度について洪水フットプリントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の方法に係る一実施形態の動作全体を示す概略図である。自動化された位置依存型の自然災害予測および災害影響予測のための予測システム5が、設置された計測所401〜422により自然災害事象を測定する。計測所は、自然災害と関連付けられた特定の地殻構造条件、地形条件または気象条件について位置依存測定パラメータを測定する。後述するように、予測システム5は、上記測定パラメータの臨界値がトリガとされて、参照番号31および32において、注目する地域4内において予測される災害事象およびその影響について専用の事象信号を生成する。自然災害予測システム5は、被害人口トリガを備え、それがトリガとされることよって特定の注目する地域内でどのくらいの人口が自然災害による被害を受けるのかが予測されうる。参照番号11では、対象地域が予測システム5によってグリッドに分割される。参照番号12では、各グリッドセル内の人口が演算ユニットによって定められる。グリッドセルは、設置された計測所401〜422の特定測定パラメータの地殻構造条件、地形条件または気象条件等に基づいて、予測システム5により動的に定められ、または静的に定義されうる。予測システム5は、例えば国勢調査データまたはその他の適切なアクセス可能なデータ源を用いることにより、人口密度を取得することができる。参照番号13では、脆弱性曲線が予測システム5によって生成される。脆弱性曲線は、ある事象の大きさを被害人口率に対応付けるものである。この技術的手法は、予測システム5において線形的に実現することができ、その結果強い事象が検出されるほど、被災人口の母集団が大きくなる。グリッドセルの特定の地形上または人口統計上または地質学上などの構成に基づく他の手法も可能である。自然災害事象が予測システム5によって検出されると、参照番号21において当該事象のフットプリントが生成される。フットプリントは、対象地域に広がる事象の規模を表すものである。
【0025】
参照番号22では、上記フットプリントが、各グリッドセルにおける特定の事象規模がどのくらいであったかを識別するために使用される。災害事象または接近している災害事象のフットプリントを得るために、予測システム5で過去の災害事象を収集し、その過去の自然災害事象の発生を表す時空間パターンを生成し、それを演算ユニットのメモリモジュールに保存する。上記時空間パターンは、注目する地域内における地理的位置および/または事象強度を表す複数のポイントを含む。注目する地理的領域について、地殻構造、地形、または気象に係る条件データが、上記時空間パターンに基づいて演算ユニットにより定められる。この条件データにより、特定の伝播ラインに沿った地殻構造、地形構造、または気象構造に依存する、特定の移動点または軌跡からの距離によって定まる自然災害事象の伝播状態が得られる。
【0026】
注目する地域内における自然災害の発生または発生の接近が、予測システム5を構成する設置された計測所401〜422によって検出され、計測所は上記災害事象の移動点または軌跡の事象パラメータを測定し、その事象パラメータを予測システム5に返信する。参照番号21では、送信された事象パラメータおよび条件データに基づき、注目する地域4に広がる事象の伝播状態を含むフットプリント記録が生成される。一方、参照番号11では、注目する地域4をカバーするグリッドが演算ユニットによって設定される。予測システム5は、グリッドセルごとに、フットプリント記録に基づいて、検出された自然災害事象の規模値を生成する。
【0027】
参照番号23では、参照番号13から得た脆弱性曲線および特定の規模を使用して、各グリッドセル内での被災人口が推定される。参照番号24では、全てのグリッドセルにおける被災人口の合計(全被災人口と称する)が定められる。参照番号25では、予測システムは各値のトリガを実行中であり、全被災人口が選択された開始点を越えると(参照番号252)事象信号が生成される。この事象信号は、自動化された警報システムまたは被害復旧システムのための作動信号を含むことができる。このシステムは、例えば自動化されたポンプ、樋門、ロック、ゲート(例えば水門)などのような公知技術で利用可能な多種多様なシステムであってよい。特定の警報信号装置が専用の形で、援軍を配備、または自動装置を作動させる。これはまた、保険産業で見られるように、資金面を主体とする損害補償または損害補填のための作動信号を含むこともでき、その信号でその損害の補償の支払いが開始する。変形例として、全被災人口が約定の終了点を越えたら、保険が完全に支払われるようにトリガを実現することもできる。それ以外では保険の作動に適合した事象信号は生成されない。この被災人口トリガを含んだ予測システム5は当初、地盤振動強度(改正メルカリ)と被災人口を相互に関連付ける脆弱性曲線(図4)を使用して地震災害向けに開発された。しかしながら本予測システムは、例えばハリケーン事象などのような熱帯低気圧(図5、脆弱性曲線は風速強度と被災人口を相互に関連付ける)と、洪水災害事象(図6、脆弱性曲線は洪水深度と被災人口を相互に関連付ける)を処理するように拡張することができる。
【0028】
図1に示されているように、設置された計測所401〜422によって自然災害事象を測定することができる。計測所401〜422は、検出される災害事象に応じてあらゆる種類の機器、測定装置およびセンサを備えることができる。また計測所401〜422は、例えば大気圧を測定するためや、地震の活動を認識するためなどに、人工衛星ベースのパターン認識機能を備えることもできる。予測システム5は、自然災害と関連付けられた特定の地殻構造条件、地形条件または気象条件について位置依存値を定め、各臨界値でトリガして、注目する地域4内における災害事象の予測される影響について専用の事象信号を生成する。
【0029】
上述のように、上記予測システムは過去の災害事象を収集し、その過去の自然災害事象の発生を表す時空間パターンを生成する。収集された過去の自然災害事象は、例えば予測システムのフィルタモジュールにより、自然災害事象のタイプに従ってフィルタ処理することができる。そして選択された自然災害事象のタイプに基づいて信号パルスが生成される。この選択可能な自然災害事象のタイプは、地震、洪水、熱帯低気圧、火山噴火、および津波を含みうる。時空間パターンは演算ユニットのメモリモジュール211に保存される。災害事象の過去の軌跡または移動点を表す複数の時空間パターンを、その災害事象の発生年に割り当てることができ、そのパターンは演算ユニットのメモリモジュールに保存される。そのデータ記録は、注目する地域4内における事象の地理的な位置および/または強度を表す複数のポイントを含む。注目する地域について、地殻構造、地形、または気象に係る条件データが、上記時空間パターンに基づいて、演算ユニットにより定められる。上記条件データにより、特定の伝播ラインに沿った地殻構造、地形的構造または気象構造に依存する、特定の移動点または軌跡からの距離によって決まる自然災害事象の伝播状態が得られる。注目する地域内における自然災害の発生が、専用の計測所401〜422によって検出され、その災害事象の移動点または軌跡の事象パラメータが、各計測所401〜422によって測定される。各計測所401〜422は、適切なインターフェース、詳細には有線または無線ベースのデータ伝達用ネットワークインターフェースによって、中心システム5に結合することができる。事象パラメータは、温度、圧力、風速などのような物理的測定値を含むことができる。参照番号21では、予測システムによって、事象パラメータおよび条件データに基づいてフットプリント記録が生成される。このフットプリント記録は、対象地域に広がる事象規模の伝播状態を含んでいる。一方、注目する地域をカバーするグリッドが演算ユニットによって設定され、検出された自然災害事象の規模値が、グリッドセルごとに、フットプリント記録に基づいて生成される。各測定された事象パラメータのフットプリント記録は、例えば定義可能な自然災害事象プロファイルなどに基づいて生成されうる。ある地理的な位置および時における特定強度の発生確率を与える確率が、内挿モジュールによって上記グリッドにおける各ポイントに割り当てられる。内挿モジュールは、ソフトウェアおよび/またはハードウェアベースとして実現されうる。またグリッド内で選択されたセルについての規模値も、例えば当該選択されたセルと関連付けられた少なくとも1つのフットプリント記録データと、選択されたセルに隣接する1つ以上のセルと関連付けられたフットプリント記録データとから設定されうる。
【0030】
特定の人口タイプの母集団が、予測システム5によって、グリッドセルごとに定められる。そして特定のグリッドセルについて、脆弱性曲線の各カーブファクタが、内挿モジュールによって、上記母集団に基づいて生成される。この脆弱性曲線により、自然災害事象の規模に対する被災人口が定まる。参照番号23では、フットプリント記録および生成された脆弱性曲線によって、自然災害事象の被災人口を与える被災人口値がグリッドセルごとに生成され、参照テーブルに割り付けられる。グリッドセル内部の参照テーブルにおける1つ以上の被災人口ファクタが、定義可能な閾値よりも高い場合(参照番号252)、参照番号31または32において、トリガモジュールによって信号パルスが生成される。この信号パルスは、自然災害予測システム5によって、制御信号として1つ以上の警報システム31または32に伝達される。参照番号24では、選択されたセルに代えて、全被災人口信号がトリガモジュールによって生成されうる。この全被災人口信号は累積された被災人口ファクタを含み、トリガモジュールは、累積された全被災人口信号でトリガする。警報システム31または32に関連して、どれくらい多くの住民が被災するかに基づいて災害の影響による被害またはそれに対応する金融派生商品の購入者を補償する金融取引プロセスに、トリガモジュールを結合することができる。グリッドセル内における参照テーブルの被災人口ファクタのいずれもが、定義可能な閾値よりも高くない場合には(参照番号251)、やはりトリガモジュールによって上記信号パルスが生成され、自然災害予測システム5によって例えばピア信号等のように制御信号または運営信号として送信されうる。これにより予測システム5の機能性や技術的試運転は、外部から監視されうる。
【0031】
別の変形例として、自然災害事象の発生を表す複数の新たな時空間パターンが、第1のモンテカルロモジュールによって、過去の事象ごとに追加的に生成される。この新たな時空間パターン内の各ポイントは、上記の移動中心からのポイント、または過去の軌跡に沿ったポイントから、依存型サンプリング処理により生成される。一方、上記地殻構造、地形、または気象に係る条件データが、上記時空間パターンおよび上記新たな時空間パターンに基づいて、演算ユニットによって定められる。さらにこの時空間パターンについて、1つ以上のフットプリント記録が第2のモンテカルロモジュールによって生成されうる。この新たなフットプリント記録は、モンテカルロサンプリング処理によって生成される。一方、検出された自然災害事象の規模値が、上記フットプリント記録および新たなフットプリント記録に基づいて生成される。この災害事象のフットプリント記録によって、グリッド内の選択されたセルごとに災害強度分布または気象強度情報が生成されうる。そしてこれに基づいて、検出された自然災害事象の規模値が、グリッドセルごとまたは選択されたグリッドセルについて生成される。さらに、災害事象を発生の強度別および/または年別に分類するスケーリングテーブルを用いて、時空間パターンの定義可能な期間について過去の自然災害事象の分布をこのシステムで生成することが有用である場合がある。その過去の自然災害事象の分布は、フィルタ処理モジュールによって、割り当てられた年に対応する新たな時空間パターンの範囲内で再現される。一方、新たな時空間パターンの部分集合が、地殻構造、地形、または気象に係る条件データに基づいて、その発生確率別に選択される。自然災害事象の強度を表すフットプリント記録は、例えば、少なくともいくつかの収集された過去の自然災害事象と関連付けられる大気、地震、または地形のデータを含むことができる。これらのデータによって、過去の自然災害事象の過去のフットプリント記録が定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測システム(5)による自動化された位置依存型の自然災害予測および災害影響予測のための方法であって、
前記予測システム(5)は、設置された計測所(401〜422)によって自然災害事象が測定され、その自然災害と関連付けられた特定の地殻構造、地形、または気象に係る条件について位置依存型の測定パラメータが定められ、当該測定パラメータの臨界値がトリガにされて、注目する地域内において予測された災害事象および災害事象による影響に係る専用の事象信号を生成するものであり、
前記予測システム(5)により過去の自然災害事象が収集され、前記過去の自然災害事象の発生を示す複数の時空間パターンが生成されるとともに、演算ユニットのメモリモジュールに保存され、
前記時空間パターンは、前記注目する地域内の地理的位置および/または事象の強さを表す複数のポイントを含むものであり、
注目する地理的領域において、前記演算ユニットにより、前記時空間パターンについて地殻構造、地形、または気象に係る条件データが定められ、
当該条件データは、自然災害の伝播状態を示すものであり、当該伝播状態は、特定の移動点または軌跡からの距離に依存するものであり、当該移動点または軌跡は、特定の伝播ラインに沿った地殻構造、地形、または気象に係る構造に依存するものであり、
前記災害事象の移動点または軌跡の事象パラメータを測定する、設置された計測所(401〜422)により、注目する地域内における自然災害の発生または発生の接近が検出されるとともに、当該事象パラメータが前記予測システム(5)に送信され、
前記送信された事象パラメータおよび条件データに基づいて、前記事象の前記注目する領域(4)への前記事象の伝播状態を含むフットプリント記録(21)が生成され、前記注目する地理的領域(4)をカバーするグリッドが前記演算ユニットにより設定されるとともに、各グリッドセルについての前記フットプリント記録に基づいて、前記検出された自然災害事象の規模値が生成され、
前記各グリッドセルにおいて、前記システムにより特定の人口の母集団が定められる(12)とともに、自然災害事象の規模に関連付けて被災人口を設定する脆弱性曲線における複数のカーブファクタが、当該母集団に基づいて、内挿モジュールによって生成され(13)、
前記フットプリント記録および前記生成された脆弱性曲線によって、被災人口値が、各グリッドセルについて生成される(24)とともに、前記自然災害事象による前記被災人口を与える参照テーブルに割り付けられ、
トリガモジュールによって、信号パルスが生成され(25)、前記参照テーブルにおける複数の前記被災人口ファクタのうち少なくとも1つが、定義可能な閾値よりも高い値をとることで前記トリガモジュールによってトリガされた場合、前記自然災害予測システムにより、前記信号パルスが制御信号として1つ以上の警報システムに送信される(31、32)ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
トリガモジュールによって全被災人口信号が生成され(24)、
当該全被災人口信号は、累積された全被災人口ファクタを含んでおり、
前記トリガモジュールは、前記累積された全被災人口ファクタでトリガをかけることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各過去の事象について、第1モンテカルロモジュールによって、複数の自然災害事象を表す複数の新たな時空間パターンが生成され、
前記新たな時空間パターンの複数のポイントは、移動中心から、または過去の軌跡に沿って、依存型サンプリング処理によって生成され、
前記地殻構造、地形、または気象に係る条件データは、前記時空間パターンおよび前記新たな時空間パターンに基づいて、前記演算ユニットにより定められることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記時空間パターンについて、第2モンテカルロモジュールによって、1つ以上のフットプリント記録が生成され、
当該新たなフットプリント記録は、モンテカルロサンプリング処理によって生成されるものであり、
前記検出された自然災害事象の規模値は、前記フットプリント記録および前記新たなフットプリント記録に基づいて生成されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記災害事象のフットプリント記録によって、災害強度分布または気象強度情報が、前記グリッドにおける選択された複数のセルの各々について生成され、これに基づいて前記自然災害事象の規模値が当該選択された複数のセルの各々について生成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記過去の自然災害事象の前記時空間パターンにおける定義可能な期間について、前記災害事象を強度および/または発生年により分類するスケーリングテーブルによって、分布が生成され、
前記過去の自然災害事象の前記分布は、割り当てられた年に応じて、フィルタモジュールによって前記時空間パターン内に再現され、
前記新たな時空間パターンの部分集合が、地殻構造、地形、または気象に係る条件データに基づいて、発生確率により選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
測定された前記事象パラメータの各々について、定義可能な自然災害事象プロファイルに基づいて、前記フットプリント記録が生成され、
内挿モジュールによって、前記グリッドにおける各ポイントに確率が割り当てられることによって、ある地理的位置および時における特定強度の発生確率を与えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記収集された過去の自然災害事象は、前記予測システムのフィルタモジュールによって、自然災害事象のタイプに応じてフィルタ処理され、
選択された自然災害事象のタイプに基づいて、前記信号パルスが生成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
選択可能な前記自然災害事象のタイプは、地震、洪水、熱帯低気圧、火山噴火、および津波を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記自然災害事象の強度を表す前記フットプリント記録は、前記収集された過去の自然災害事象のうち幾つかに関連付けられた、大気、地震、または地形に係るデータを含み、
当該大気、地震、または地形に係るデータは、前記過去の自然災害事象についての過去のフットプリント記録を定めることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記グリッドにおいて選択されたセルについての前記規模値は、当該選択されたセルに関連付けられた前記フットプリント記録データと、当該選択されたセルに隣接する1つ以上のセルに関連付けられた前記フットプリント記録データの少なくとも一方から設定されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
選択されたセルの前記規模値は、当該選択されたセルに関連付けられたフットプリント記録データと、当該選択されたセルに隣接する1つ以上のセルに関連付けられたフットプリント記録データの重み付けされた平均から設定されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記依存型サンプリング処理は、有向ランダムウォーク処理であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の新たな自然災害事象のうち幾つかは、当該新たな自然災害事象の生成に際して基礎とした前記過去の自然災害事象の開始点とは異なる開始点を有することを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
自動化された位置依存型の自然災害予測および災害影響予測のための自然災害予測・検出システム(5)であって、
自然災害または接近している自然災害に関連付けられた特定の地殻構造、地形、または気象に係る条件について位置依存型の測定パラメータを測定する、設置された計測所(401〜422)と、
前記測定パラメータの臨界値でトリガし、注目する地域(4)内において予測された災害事象および当該災害事象の影響に係る専用の事象信号を生成する、少なくとも1つのトリガモジュールとを備え、
前記予測システム(5)は、過去の自然災害事象のデータを収集し、前記過去の自然災害事象の発生を示す複数の時空間パターンを生成する手段を備え、
前記時空間パターンは、前記注目する地域内の地理的位置および/または事象の強さを表す複数のポイントを含むものであり、
前記予測システム(5)は、前記時空間パターンを保存するメモリモジュールを有する演算ユニットを備え、
前記時空間パターンに基づいて、注目する地理的領域において、地殻構造、地形、または気象に係る条件データを定めるデータ処理ユニットを、前記演算ユニットが備え、
前記条件データは、自然災害の伝播状態を示すものであり、当該伝播状態は、特定の移動点または軌跡からの距離に依存するものであり、当該移動点または軌跡は、特定の伝播ラインに沿った地殻構造、地形、または気象に係る構造に依存するものであり、
前記自然災害予測システム(5)は、設置された複数の計測所(401〜422)に複数のセンサを備え、当該センサは、前記災害事象の移動点または軌跡の事象パラメータを測定し、当該事象パラメータを前記予測システム(5)に送信するものであり、
注目する地域内における自然災害の発生または発生の接近が、前記設置された計測所(401〜422)および前記測定された事象パラメータによって検出可能とされており、
前記自然災害予測システム(5)は、前記送信された事象パラメータおよび条件データに基づいて、前記事象の前記注目する領域(4)への前記事象の伝播状態を含むフットプリント記録を生成する手段(21)を備え、
前記演算ユニットは、前記注目する地理的領域(4)をカバーするグリッドを設定するとともに、各グリッドセルについての前記フットプリント記録に基づいて、前記検出された自然災害事象の規模値を生成する手段(11)を備え、
前記各グリッドセルは、前記システムにより定められる特定の人口の母集団(12)を含んでおり、
前記予測システム(5)は、自然災害事象の規模に関連付けて被災人口を設定する脆弱性曲線における複数のカーブファクタを、当該母集団に基づいて生成する内挿モジュール(13)を備え、
前記予測システム(5)は、各グリッドセルについて前記フットプリント記録により生成される被災人口値が割り付けられることにより、前記自然災害事象による前記被災人口を与える参照テーブルを備え
前記予測システム(5)は、信号パルスを生成するトリガモジュール(25)を備え、前記参照テーブルにおける複数の前記被災人口ファクタのうち少なくとも1つが、定義可能な閾値よりも高い値をとることで前記トリガモジュールによってトリガされた場合、前記自然災害予測システム(5)により、前記信号パルスが制御信号として1つ以上の警報システムに送信される(31、32)ことを特徴とする、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−517547(P2013−517547A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548357(P2012−548357)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050595
【国際公開番号】WO2011/088891
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(505095992)スイス リインシュランス カンパニー リミテッド (24)
【Fターム(参考)】