説明

自動化された医療用品の取り出し/保管追跡方法および装置

医療用品キャビネットには外側センサと内側センサとが取り付けられる。外側および内側センサは、無線周波数タグが付けられ、またセンサ近傍にある在庫品目を無線で検出する。医療用品キャビネットに保管された在庫品目を追跡する方法は、在庫品目がキャビネットから取り出され、またはキャビネットに保管された場合、外側および内側センサによって検出されたタイムシーケンスに基づいて決定するステップと、在庫データベースをこれに従って更新するステップとを含む。在庫品目が許可されていないユーザによって取り出された場合、任意で警報が発せられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して在庫追跡に関し、より詳細には、医療用品キャビネットからの医療用品の取り出しおよび保管を追跡することに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、医療スタッフは、医療用品キャビネットから医療用品を取り出し、また、新しい医療用品をキャビネット内に入れるということを常に行っている。医療用品キャビネットの在庫の品目の追跡を行うべく、ある種の自動化が行われることは、一般的なことである。
【0003】
例えば、「押しボタン式(Push-to-Take)」と呼ばれるある種のシステムでは、医療関係者が医療用品キャビネットの保管スロット前面にある「保管」または「取り出し」のいずれかのボタンに触れることによって、保管スロットの品目が取り出されたのか、在庫に加えられたのかが在庫追跡システムに示される。追跡システムは、このようなボタンの押下によって受け取った入力に基づいて、在庫を更新する。
【0004】
実際には、押しボタン式には、いくつかの欠点がある。このシステムは、それぞれの在庫品目の取り出しまたは追加を正確に記録することを、基本的に人間のユーザに依存している。人為ミスにより、在庫追跡に誤りが生じる可能性がある。次に、複数の在庫品目を同一の保管スロットに追加し、そこから取り出すときに、このシステムは、人間のユーザに、保管/取り出しボタンを複数回押すことを要求する。品目の数とキーが押された回数との不一致は、このシステムの別のエラー発生源となる可能性がある。このシステムはまた、医療関係者のワークフローの連続性を断つ。なぜなら、単純にキャビネットのドアを開けて、新しい品目を保管容器に入れるか、または保管容器から品目を取り出すだけでなく、ユーザは、立ち止まってボタンを正確な回数押さなければならないからである。さらに、異なるロットおよびシリアル番号を有する同じタイプの複数の在庫品目が保管されている場合、ユーザは、入れるときに各品目のロットおよびシリアル番号情報を入力しなければならず、また、品目を取り出したときには、どの特定の品目が取り出されたかを選択しなければならない。
【0005】
別の在庫追跡システムにおいては、キャビネット保管庫内の各品目には固有の無線周波数(RF)タグが付けられる。医療用品キャビネットのドアが閉位置にあるとき、在庫追跡システムは、現在キャビネット内にある品目を検出するために、キャビネット内のRFスキャンを実行する。在庫追跡システムは、次いで、どの品目がキャビネットに追加され、どの品目がキャビネットから取り出されたかを決定すべく、この検出の結果を前回の結果と比較する。このシステムは、「オールキャビネットスキャン」システムと称されることがある。
【0006】
実際には、オールキャビネットスキャンシステムは、いくつかの欠点を有する。例えば、キャビネットスキャンは、しばしば在庫品目を見落とす可能性がある。これは、例えば、1つの在庫品目が、別の在庫品目によって隠されている場合に起こり得る。さらに、オールキャビネットスキャンシステムは、閉じられたキャビネットドアの近傍に、偶然あるいは故意に在庫品目を手にしているユーザがいると、その在庫品目を誤ってRFスキャンが在庫として誤認識して計上してしまう可能性がある。このように「誤認識すること」を避ける目的で、キャビネットドア領域近くに存在する在庫品目のスキャン処理は、感度が低く設計され得る。しかしながら、これでは、キャビネット内の利用可能な保管スペースが制限されることになる。オールキャビネットスキャンの別の欠点は、エラーの少ないスキャンを行うのに、高出力の高周波伝送が必要なことである。したがって、オールキャビネットスキャンシステムは、大量の電力を消費する。また、スキャナの高周波伝送がキャビネット周辺の他の放射線に敏感な装置に干渉することを防ぐために、キャビネットには、ファラデーケージなどの高価な電磁波シールドを取り付ける必要がある。オールキャビネットスキャンシステムの別の欠点は、スキャナの高周波伝送が、医療用品キャビネット内に保管する必要のある、高周波に敏感な医療装置(例えば、ペースメーカ)に悪影響を与える可能性があることである。また、オールキャビネットスキャンシステムは、キャビネットドアが閉じられた後に在庫チェックをするため、ユーザが期限切れの薬品を取り出した場合でも、ユーザに即時に通知することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
薬品キャビネットからの医療用品の保管および取り出しという医療関係者の作業を妨げずに、医療用品キャビネット内の品目を追跡する際のスキャンエラーをなくす在庫追跡システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この、および、他の要求は、開示される実施形態によって満たされる。実施形態は、ユーザがキーを押す、または、在庫追跡を容易にするために特別な方法で在庫品目を並べる必要がなくなる低電力在庫追跡システムを提供する。
【0009】
先に述べた要求および他の要求は、在庫品目の移動の方向性を決定する、医療用品キャビネットに取り付けられた内側RFセンサおよび外側RFセンサを提供する本発明の実施形態によっても満たされる。
【0010】
先に述べた要求および他の要求は、他の実施形態によっても満たされる。他の実施形態は、内側センサおよび外側センサからの信号からの時間情報を用いて在庫品目が保管されたか、または、取り出されたことを決定することによって、 在庫品目の追跡を行う方法を提供する。
【0011】
第1の実施形態において、保管装置は、複数の在庫品目を保管する保管キャビネットと、第1の検出区域を有する第1のセンサと、第2の検出区域を有する第2のセンサと、を備え、第2の検出区域よりも第1の検出区域のほうが保管キャビネットの外側方向にあり、第1のセンサおよび第2のセンサは、第1の検出区域および第2の検出区域において、それぞれ在庫品目の検出を行う。
【0012】
例示的な一実施形態において、第1のセンサおよび第2のセンサは、プロセッサへ検出メッセージを送信し、検出メッセージは、品目に依存した部分および品目と無関係な部分を有する。
【0013】
第2の実施形態において、医療用品キャビネット内の品目の在庫を追跡する方法が開示される。本方法は、コンピュータにおいて、第1のセンサからの第1の検出メッセージおよび、第1のセンサから離れた第2のセンサからの第2の検出メッセージを受信するステップと、医療用品キャビネットの品目の在庫データベースをコンピュータで更新するステップとを含み、更新するステップは、第1のセンサおよび第2のセンサの空間配置、および、在庫品目を第1のセンサおよび第2のセンサで検出した時点に応じて行われる。
【0014】
第3の実施形態において、複数の在庫品目を保管する安全な在庫管理装置は、ドアを有する医療用品キャビネットと、ドアの内側に配置される第1のセンサと、ドアと第1のセンサとの間に配置される第2のセンサと、第1のセンサおよび第2のセンサと通信可能に結合されたプロセッサとを備え、第1のセンサおよび第2のセンサは、近傍の在庫品目を検出し、プロセッサへ対応する検出メッセージを通信し、プロセッサは、ユーザのドアを開ける権限を制限し、第1のセンサおよび第2のセンサから受け取った検出メッセージに基づいて、高価な在庫品目が取り出されたかどうかを決定し、ドアを開けたユーザが、高価な在庫品目を取り出すことを許可されていない場合、警報を発する。
【0015】
添付の図面は、本明細書に組み込まれることによってその一部を構成し、本発明の様々な実施形態および態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に従う、薬品キャビネット装置を正面から見たブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に従う、薬品キャビネット装置を上面から見たブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に従う、在庫追跡方法のステップのフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に従う、安全な在庫追跡方法のステップのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に従う、在庫追跡装置のブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に従う、保管キャビネット装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施形態は、医療用品キャビネットの医療用品の在庫追跡に関する課題に取り組み、これを解決する。本実施形態は、医療分野において、例えば、医療用品キャビネットにおける医療用品を保管し追跡することに対して特定の実用性が見いだされる。特に、本開示の実施形態は、ユーザがキーを押すという必要条件および/またはキャビネットスキャンにおけるエラーに関連する従来の在庫追跡システムの限界を克服する。実施形態では、品目を検出すると、その品目の動きの方向を決定することによって、品目が取り出されたかまたは保管されたかを追跡する目的を有する複数のセンサを医療用品キャビネットに配置することにより、これを一部達成する。例えば、複数の実施形態において、医療用品キャビネットは、少なくとも内側センサと外側センサとを有する。在庫品目が最初に外側センサによって検出され、次いで内側センサによって検出された場合、その品目は、医療用品キャビネットに保管されたと考えられる。在庫品目が最初に内側センサによって検出され、次いで外側センサによって検出された場合、品目は、医療用品キャビネットから取り出されたと考えられる。本明細書で用いられる用語「保管」および「取り出し」はそれぞれ、在庫品目をキャビネットに「戻す」およびキャビネットから「取り出す」動作のことをいう。
【0018】
図6は、多数のキャビネットコンパートメント100を有し、それぞれのキャビネットコンパートメント100がキャビネット棚領域102を有する、医療用品キャビネット600の正面図である。キャビネットコンパートメント100は、ドア202で覆われている。いくつかの実施形態において、医療用品キャビネット600は、すべてのキャビネットコンパートメント100を覆う単一のドア202を有してよい。他の実施形態において、それぞれのキャビネットコンパートメント100は、個々のドア202を有してよい。他の実施形態には、ドアが設けられない実施形態もあるが、このような実施形態においては、安全性が低減する。医療用品キャビネット202は、近傍に制御キャビネット602を有してもよい。制御キャビネット602は、コンピュータモニタなどのユーザインターフェース604、および、キーボードなどのデータ入力装置606を有してもよい。データ入力装置およびユーザインターフェース604は、医療用品キャビネット600へのアクセスを制御するのに用いられる、コンピュータ(図示せず)の一部であってよい。
【0019】
以下の説明は、主に医療用品を背景とした様々な実施形態について説明しているが、任意のタイプの品目を保管するキャビネットにも適用されるものである。
【0020】
図1は、キャビネット棚領域102を示すキャビネットコンパートメント100の1つの正面図である。それぞれのキャビネット棚領域102は、複数の在庫品目108を保管する、1以上の保管容器106を有し得るキャビネット棚104を備える。キャビネット棚領域102には、第1のセンサ110および第2のセンサ112という少なくとも2つのセンサが取り付けられる。第1のセンサ110は、キャビネット棚領域102の開口部の近くに配置されるので、以降は外側センサ110と称す。第2のセンサ112は、外側センサ110よりもキャビネット棚領域102の内側に配置されるので、以降は内側センサ112と称す。キャビネットコンパートメント100内の他のキャビネット棚領域102(図1には示さず)にも、それら独自の内側センサおよび外側センサが取り付けられてよい。複数の例示的な実施形態において、それぞれのセンサは、キャビネット棚領域102の外周に巻きつけられたコイルである。他の実施形態において、それぞれのセンサは、単一の検出ユニットを形成する、電気的に接続された複数の検知素子であってよい。
【0021】
図2は、キャビネットコンパートメント100の部分上面図200であり、II−II線に沿った図6の上部キャビネット棚領域102に関連した構成要素を示す。内側センサ112よりも、外側センサ110のほうがキャビネットドア202の近くに配置されている。図2に示される実施形態では、医療用品キャビネットはキャビネットドア202を有するが、本発明は、キャビネットドア202を有しない実施形態において実施することも可能である。そのような実施形態においては、医療用品キャビネット装置600の前が開いており、ユーザはドアを開ける必要なしに在庫品目108にアクセスすることが可能になる。
【0022】
在庫品目108よりもセンサ110およびセンサ112の両方のほうがキャビネット棚領域102の外側方向にあるように配置される。すなわち、在庫品目108よりもセンサ110およびセンサ112のほうがキャビネットドア202に近い。このようなセンサ110およびセンサ112の配置となるのは、キャビネット棚領域102内でそれぞれの在庫品目108を取り出したり置いたりするには、センサ110およびセンサ112それぞれの近傍で在庫品目を物理的に移動させる必要があるから、ということを当業者であれば認識できるであろう。センサ110およびセンサ112の適正な配置は、実施形態によって異なってよく、キャビネット棚領域102内のどこかに置かれるか、またはどこかから取り出される品目を検出するよう、好ましくは電気的に構成されてよい。言い換えると、センサ110およびセンサ112は、在庫品目108の移動を検出するように構成されるべきであり、品目がキャビネット棚領域102の中心近くか、いずれかの側か、または、キャビネット棚領域102上部または底部から取り出されているかどうかを検出するように構成される必要がある。いくつかの実施形態において、センサ110およびセンサ112は、キャビネット棚領域102の外周に巻きつけられたコイル状であってよい。他の実施形態において、センサ110およびセンサ112は、キャビネット棚領域102の上部、底部、または、側部の1つ以上に帯状に取り付けられていてもよい。
【0023】
一般に、センサが検出用の区域を有し、それによって検出区域内の在庫品目を正確に検出する限りにおいて、センサ110およびセンサ112の正確な形および配置は重要ではない。一実施形態において、検出は、磁界検出を用いて行われてよい。別の実施形態において、RFタグを有する在庫品目108を検出するのに無線周波数(RF)技術が用いられる。RFタグがセンサの検出区域を通過する際に検出が行われる。さらに別の実施形態において、用いられる検出技術は、国際標準化機構(ISO)のISO−14443規格に記載されているような近距離無線通信(NFC)技術を含む。Bluetooth(登録商標)、超広帯域無線(UWB)などの、他の周知の短距離通信技術が別の実施形態で採用される。外側センサ110は、図2の線210で示される外側検出区域を有する。内側センサ112は、図2の線212で示される内側検出区域を有する。検出区域210および212は、キャビネット棚領域102の上部からキャビネット棚104の下方へ広く伸び、実質的にキャビネット棚領域102の開口部全体を覆う。検出区域210および212は、ユーザからは見えないか、または、気付かれず、単に、対応するセンサの感度の範囲を示すものであるので、「仮想」区域である。例えば、検出区域210内のRFタグは、外側センサ110によって検出される。同様に、検出区域212内のRFタグは、内側センサ212によって検出される。好ましい実施形態において、検出区域210および212は、実質的に平面であり、実質的にすべてのキャビネット棚領域102の開口部を覆う。その結果、いかなる在庫品目108も、外側センサ110および内側センサ112の双方によって検出されることなくキャビネット棚領域102から取り出されるか、または、キャビネット棚領域102に保管できないようになる。
【0024】
図3は、本実施形態に係る、在庫品目の追跡方法のフローチャート300である。本方法は、センサ110およびセンサ112と通信可能に結合されるプロセッサによって実行される。プロセッサ508は、図5に図示されている。センサ110およびセンサ112は、それぞれの検出区域における在庫品目108の検出に応じて、プロセッサ508へ信号を送信する。開始(ステップ302)後、ステップ304において、プロセッサ508は、センサ110およびセンサ112を始動させる。プロセッサ508は、他のタスクを実行する一方で、センサ110およびセンサ112からの検出メッセージを含む検出信号の受信を待つ。ステップ308において、プロセッサ508は、検出信号を受信する。プロセッサ508は、検出信号を送信したセンサを特定する。ステップ310において、プロセッサ508は、内側センサ112からの検出信号かどうかをチェックする。答えが「Yes」であった場合、ステップ312において、プロセッサ508は、外側センサ110から次の信号を受信するのを待つ。外側センサ110から対応する検出信号(ステップ310の検出信号で示される在庫品目108と同一であることを示す検出信号)を受信すると、ステップ314において、プロセッサ508は、在庫品目が医療用品キャビネット600から取り出されたことを決定する。プロセッサ508は、保管される在庫品目108を示す在庫データベースを更新する。ステップ306において、プロセッサ508は、追加の検出メッセージの受信を待つ。複数の実施形態において、プロセッサ508は、取り出された在庫品目108が所定の種類であった場合に警報を発するようにプログラムされてよい。例えば、複数の実施形態において、プロセッサ508は、取り出された在庫品目108が、使用に適さないリコール品目であった場合に警報を発してよい。他の複数の実施形態において、プロセッサ508は、取り出された在庫品目108が期限切れの薬品である場合に警報を発してよい。プロセッサ508は、対応する検出信号の在庫品目108について受け取った識別情報および他の情報に基づいて、在庫品目108が所定のリストに所属しているかどうかを決定してもよい。
【0025】
検出信号は、検出メッセージを含んでよい。複数の実施形態において、検出メッセージは、品目に依存した部分と品目と無関係な部分とを有してよい。品目に依存した部分は、ロット番号、使用期限、製造者を識別できる文字列、固有のIDおよび品目の属性を含んでよい。品目と無関係な部分は、センサによる検出信号を得た時点に対応するタイムスタンプ、センサの識別、およびシステム診断にとって有益な他のデータを含んでよい。
【0026】
なおも図3を参照すると、ステップ310において、受け取った検出信号は外側センサ110からのものであるとプロセッサ508が決定した場合(ステップ316)、ステップ318においてプロセッサ508は、対応する検出信号(ステップ316における検出メッセージと同一の在庫品目108を示す検出信号)を内側センサ112から受信するのを待つ。対応する検出信号を受信すると、ステップ320において、プロセッサ508は、在庫品目108が医療用品キャビネット600内に保管され、在庫データベースがそれに伴って更新されることを決定する。プロセッサ508は、ステップ306に戻り、さらなる検出メッセージの受信を待つ。
【0027】
なおも図3を参照すると、ステップ312およびステップ318において、予期される検出メッセージを受け取らない場合、プロセッサ508は、タイムアウトしてよい。例えば、いくつかの実施形態において、プロセッサ508は、内側センサ112からの検出メッセージを受信した後、外側センサ110からの対応する検出メッセージを得るために2秒待機し得る。プロセッサ508が予期されるメッセージを受け取らない場合、プロセッサ508は、これをエラー状態とみなす。エラー状態に応じて、ステップ322において、プロセッサ508は、エラーをユーザに報告するなどの動作を実行するか、エラーを記録するか、または、システムチェックを行うための診断ルーティンを実行してもよい。他の実施形態において、プロセッサ508は、上述されたタイムアウト方式を使用しなくてもよい。そのような実施形態では、プロセッサ508は、第2のセンサから対応するメッセージを受け取るのを事実上永遠に待つことになる。
【0028】
図4は、安全な在庫保管を提供する方法の例示的なステップを示すフローチャート400である。本実施形態は、キャビネットドア202を有する安全な医療用品キャビネット100により実現される。ドア202は、プロセッサ508の制御下にあり、プロセッサ508からの許可なしでは開けることができない。ステップ402において、ユーザは、保管キャビネットへのアクセスを制御する認証情報をプロセッサ508に提供することによりログインする。プロセッサ508は、正確なユーザネーム/パスワードの組み合わせおよび生体認証などの提示を含むが、これに限定されず、周知のユーザ認証技術を用いてもよい。複数の実施形態において、プロセッサ508は、ログイン動作の記録を保持してよい。プロセッサ508は、この記録を、保管キャビネットの安全担当である施設管理者に提供してよい。ステップ404において、ユーザが認証に成功し、安全な医療用品キャビネット100のキャビネットドア202を開く。キャビネットドア202の安全なロッキングは、例えば、ユーザがログインに成功すればキャビネットドア202のロックを解除する、というリレー構造などを用いることにより達成され得る。
【0029】
なおも図4を参照すると、ステップ406において、ユーザは、ドア202を開けた後に、キャビネット棚領域102から品目108を取り出す。上述したように、キャビネット棚領域102には、内側センサ112および外側センサ110が備えられている。上述したように、外側センサ110および内側センサ112は、近傍の在庫品目を検出し、対応する検出メッセージをプロセッサ508へ送信する。医療用品キャビネット600内に保管された在庫品目の追跡を行う上述の様々な実施形態の1つを用いて、プロセッサ508は、検出メッセージを受け取ると、取り出された在庫品目108を特定できるようになる。ステップ408において、プロセッサは、キャビネットドア202を開けているユーザが、特定の在庫品目108を取り出すことを許可されたかどうかを決定する。この決定は、様々な技術を用いて行われることが可能である。例えば、医療現場においては、一定の薬品または手術道具は、医者または手術室の看護師にのみ取り出し権限が与えられる。それぞれのユーザに、許可レベルが割り当てられる。ユーザのログインを識別することにより、プロセッサ508は、許可データベースからユーザの許可レベルをチェックするための情報を得る。さらに、それぞれの在庫品目108は、医療用品キャビネット600から当該品目108を取り出すことが可能なユーザ許可レベルに対応する最低レベルを有する。複数の実施形態において、この情報は、センサ110およびセンサ112からのプロセッサ508への検出メッセージに埋め込まれてよい。複数の実施形態において、この情報は、プロセッサ508によって、許可レベルのデータベースから生成されてよい。他の実施形態において、品目108へのアクセスは特定のユーザ許可レベルに限定されてもよいし、他のユーザ許可レベル(より高い、または、より低い)では、当該品目108を医療用品キャビネット100から取り出すことができないものとしてもよい。
【0030】
なおも図4を参照すると、ステップ408において、プロセッサ508は、ユーザが在庫品目108を取り出すことを許可されていると決定した場合、在庫データベースを更新するなどの次のタスクを続けて行うべく、ステップ412に進む。プロセッサ508は、ユーザが、在庫品目108を取り出すことを許可されていないと決定した場合、警報を発し、および/または、警備員に通知してもよい。様々な実施形態において、この警報は、ユーザインターフェースにおける、信号音またはビープ音などの可聴音、または、ライトのような視覚的表示であってもよい。ライトは、在庫品目108が取り出された医療用品キャビネット上にあってもよい。警報は、「パッシブ型」であってもよく、プロセッサ508は、その後の監査チェック用に、ユーザによる未許可の品目の取り出しがあったこと、を記録するだけでもよい。複数の実施形態において、プロセッサ508は、取り出された在庫品目108が、期限切れの薬品、または、リコールされた製品など、使用に不適切なものであった場合、警報を発するようにプログラムされてもよい。プロセッサ508は、対応する検出メッセージの在庫品目108について受け取った識別情報および他の情報に基づいて、在庫品目108が使用に不適切であるかどうかの決定を行ってもよい。
【0031】
内側センサ112および外側センサ110を用いた在庫品目108の取り出しの自動検出が、在庫品目108への安全なアクセスを提供することが当業者には理解できよう。複数の実施形態において、検出メッセージは、信号品質に関する診断情報を含んでもよい。この信号品質に関する診断情報は、偽の検出メッセージの作成が最小となるように設置者がセンサを較正し、かつ、設定するのに有益であり得る。
【0032】
図5は、在庫追跡装置500を示す。第1のセンサ502および第2のセンサ504は、出入力ポート506を介して、プロセッサ508と通信可能に結合される。プロセッサ508は、データベース510と通信する。プロセッサ508およびデータベース510は、いずれもコンピュータ512の一部分であり得る。装置500は、在庫追跡システムについての情報をユーザに提供するユーザインターフェース(図5には示さず)を備えてもよい。ユーザインターフェースは、音響発生器、映像信号発生器(例えば、LEDライト)、または、コンピュータスクリーン上に書かれたメッセージなどのアラームを含んでもよい。在庫データベース510は、在庫品目108の検出の時点に関連するタイムスタンプや、在庫品(例えば、「Acme社製のステント」)の説明書のように人間が読取可能な他の有益な情報、および、医療関係者に有益な他の情報とともに受け取った在庫品の識別を記憶する。複数の実施形態において、在庫追跡装置500は、異なるエラーに対しては警報アラームのレベルを異なって上げるようオペレータ(図示せず)によってプログラムされてよい。例えば、在庫追跡装置500は、一定の薬品キャビネット棚を開けたユーザが、一定の種類の在庫品目108の取り出しまたは保管を許可されているかどうかを検証してよい。例えば、いくつかのエラー(例えば、処方薬の許可されていない取り出し)は、高い優先順位にプログラムされてよく、一方、他のエラー(例えば、注射器などの、低価格な医療用品の許可されていない取り出し)は、低い優先順位にプログラムされてよい。優先順位の低いエラーは、イベントログにログを記録されるのみでもよい。このログは、例えば、薬品キャビネットを開けたユーザの識別、および、取り出される在庫品目の説明を含む。
【0033】
本発明の実施形態は、図1−図6に1つの内側センサおよび1つの外側センサを有して示されているが、本開示と整合する他の実施形態は、内側および外側の検出機能を集合的に実行する複数のセンサを有してもよいことが当業者には理解できよう。さらに、現在公知のアンテナ設計技術を用いると、第2のセンサよりキャビネットの内側近くに配置されている第1のセンサは、第2のセンサの検出区域と比較してキャビネット外側に近い検出区域を有するということが起き得る。センサ自体の実際の配置よりも検出区域の配置が本発明の実施形態にとってはより重要であることを当業者は理解できよう。
【0034】
それぞれのキャビネット棚領域102の内側センサ110および外側センサ112は、互いの電磁干渉またはRF干渉を避けるために、適切に取り付けられ得る。複数の実施形態において、キャビネットコンパートメント100内の異なる棚104は、干渉を避ける目的で、異なる周波数で操作され得る。複数の実施形態において、キャビネット棚領域102の壁は、1つの棚領域102からのNFC信号が別の棚領域102からの信号と干渉しないように、十分な電気的遮断を提供するように設けられる。
【0035】
品目の取り出しまたは保管中に、ユーザは「ためらう」ことがあり、そうすると、実際には保管または取り出し動作のどちらかしか行われていないのに、特定の在庫品目108に関する複数の検出メッセージが生成される可能性がある。このような場合、プロセッサ508は、センサ110およびセンサ112から複数の検出メッセージを受け取ってもよい。プロセッサ508は、最前の検出および最後の検出に注目し、内側および外側センサによる中間検知の効果は互いに打消しあうものとして無視することによって、在庫品目108の移動の「正味の」方向性を決定するようプログラムされる。したがって、例えば、検出のタイムシーケンスが(1)内側、(2)内側、(3)外側、(4)内側、(5)外側、であった場合、プロセッサは、第2の「内側」検出を擬似のものとして無視し、第3の読み取り(外側)および第4の検出(内側)を相殺し、品目が取り出されたと決定することができる。
【0036】
現在の技術を超える本開示の実施形態の利点は、医療用品キャビネット600の電力消費を減らす可能性があることである。本開示の医療用品キャビネット600は、センサが近傍の品目を検出することができるだけの電力しか要しないので、NFC技術などの低電力無線技術を使用することができる。近距離無線技術は、一般的に、オールキャビネットスキャン技術と比較して、非常に低出力であり、かつ消費電力が少ない。この低出力特徴は、在庫品目108が放射線に敏感な装置である場合にも有益である。さらに、これにより医療用品キャビネットによる総消費電力が減少し、それによって、複数の医療用品キャビネットを備える施設の光熱費を大幅に節約することになる。
【0037】
品目が保管されるか、または、取り出されているときに検出が行われるので、キャビネット棚104の実際の在庫品目108の位置は重要ではない。これは、在庫品目の位置確認にセンサによる「視線」を必要とする、特定の現在の技術を超える利点をもたらす。複数の実施形態において、在庫品目108は、任意の方向に積み重ねられてよい。在庫品目は、在庫追跡のエラーを心配することなく、互いを「見えなくする」ように他のものの上に積み重ねられてもよい。
【0038】
ユーザは、複数の在庫品目108を同時に取り出してもよい。医療用品キャビネット600の本開示の実施形態では、このようなケースには、同時に検出されたすべての品目についての情報を、プロセッサに送信された検出メッセージに含ませることによって対処する。上述の無線通信技術は、複数の在庫品目を同時に検出することを可能にする、十分な通信帯域、および、RFタグへの信号/RFタグからの信号の検出の分離により提供される。プロセッサ508は、ユーザが意図しないかまたは故意に複数の在庫品目を取り出した場合に、警報を発するか、ログをとってもよい。警報は、在庫品目を一度に1つずつ取り出すべきであることをユーザに通知してよい。
【0039】
本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、それらは説明および例示の目的にすぎず、本発明に対する限定として解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管キャビネット装置であって、
少なくとも、当該保管キャビネットコンパートメントにアクセスするための開口部を有する保管キャビネットコンパートメントと、
前記保管キャビネットコンパートメント内に配置され、第1の検出区域を有する第1のセンサと、
前記保管キャビネットコンパートメント内に配置され、第2の検出区域を有する第2のセンサと、を備え、
前記第2の検出区域よりも前記第1の検出区域のほうが前記保管キャビネットコンパートメントの前記開口部に近く、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサは、前記第1の検出区域および前記第2の検出区域において、それぞれ在庫品目の検出を行う、保管装置。
【請求項2】
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサと通信可能に結合されたプロセッサをさらに備え、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサは、在庫品目の検出に応じて前記プロセッサへ信号を送信する、請求項1に記載の保管装置。
【請求項3】
前記第1のセンサは、検出のために第1の無線技術を用い、前記第2のセンサは、検出のために第2の無線技術を用いる、請求項1に記載の保管装置。
【請求項4】
前記第1の無線技術および前記第2の無線技術は、ISO−14443近距離無線通信(NFC)規格を含む、請求項3に記載の保管装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサによる在庫品目の検出時の位置に応じて、前記在庫品目の保管および取り出しを決定する、請求項2に記載の保管装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサによる前記在庫品目の検出の方向に応じて、在庫データベースを更新する、請求項2に記載の保管装置。
【請求項7】
前記信号は、品目に依存した部分および品目と無関係な部分を有するメッセージを含む、請求項2に記載の保管装置。
【請求項8】
前記品目に依存した部分は、前記在庫品目の識別を含む、請求項7に記載の保管装置。
【請求項9】
前記識別は、文字列を含む、請求項8に記載の保管装置。
【請求項10】
前記品目と無関係な部分は、タイムスタンプを含む、請求項9に記載の保管装置。
【請求項11】
医療用品キャビネット内の品目の在庫を追跡する方法であって、
第1のセンサからの第1の検出メッセージ、および、前記第1のセンサから離れた第2のセンサからの第2の検出メッセージをプロセッサで受信するステップと、
前記医療用品キャビネットの品目の在庫データベースを前記プロセッサで更新するステップと、を含み、
前記更新するステップは、前記在庫品目を前記第1のセンサおよび前記第2のセンサで検出した時点に応じて行われる、方法。
【請求項12】
前記無線技術は、近距離無線通信(NFC)技術を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のセンサよりも、前記第2のセンサのほうが、前記医療用品キャビネットにユーザがアクセスするための開口部の近くに配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記在庫品目の検出のタイムシーケンスを前記第1のセンサおよび前記第2のセンサで決定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のセンサでの前記在庫品目の検出が前記第2のセンサでの前記在庫品目の検出の前に起こった場合、前記更新するステップは、前記在庫データベースから前記在庫品目を取り出すことを含み、
前記第1のセンサでの前記在庫品目の検出が前記第2のセンサでの前記在庫品目の検出の後に起こった場合、前記更新するステップは、前記在庫データベースに前記在庫品目を追加することを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複数の在庫品目を保管する安全な在庫管理装置であって、
ドアを有する医療用品キャビネットと、
前記ドアの内側に配置される第1のセンサと、
前記ドアと前記第1のセンサとの間に配置される第2のセンサと、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサと通信可能に結合されたプロセッサと、を備え、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサは、近傍の在庫品目を検出し、前記プロセッサへ対応する検出メッセージを送信し、
前記プロセッサは、
ユーザの前記ドアを開ける権限を制限し、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサから受け取った検出メッセージに基づいて、所定の在庫品目が取り出されたかどうかを決定し、
前記ドアを開けた前記ユーザが、前記所定の在庫品目を取り出すことを許可されていない場合、警報を発する、装置。
【請求項17】
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサは、ISO−14443近距離無線通信(NFC)技術を含む検出技術を用いる、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記警報は、可聴音、可視信号またはコンピュータログの1以上を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
正確なユーザネーム/パスワードの組み合わせをユーザが提示した場合のみ、前記プロセッサは、前記ユーザが前記ドアを開けることを許可する、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記所定の品目は、期限切れまたはリコールされた薬品である、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記更新するステップにおいて取り出される前記在庫品目が所定の種類である場合、警報を発するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−533118(P2012−533118A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519624(P2012−519624)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/040936
【国際公開番号】WO2011/005697
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(511227130)ケアフュージョン 303、インコーポレーション (5)
【Fターム(参考)】