説明

自動原稿搬送装置、原稿読取装置及び分離部ユニット

【課題】分離部材及び弾性部材のメンテナンス作業を迅速かつ容易に行うことができる自動原稿搬送装置を提供する。
【解決手段】ADFは、原稿を案内するためのインナーガイド19と、原稿を1枚ずつ分離するためにインナーガイド19に配置される対向ローラ37と、対向ローラ37を押圧するためのバネと、を備える。また、ADFは、対向ローラ37とバネとを支持するとともに、インナーガイド19に対して着脱可能に構成されるユニットフレーム81を備える。また、ユニットフレーム81は、対向ローラ37を押圧するバネの押圧力を調整するための調整機構を有する。ユニットフレーム81は、調整機構を保護するために着脱可能に取り付けられる調整カバー92を有する。前記調整機構は、押圧力を調整するための調整部分が、調整カバー92を取り外すことで露出するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動原稿搬送装置に関するものであり、詳細には、原稿を1枚ずつ分離するための分離部ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原稿又は記録媒体等を搬送するための搬送装置において、分離ローラと、この分離ローラに対向配置されるローラ又はパッド等で構成される分離部材と、によって、原稿を1枚ずつ分離する構成が知られている。分離部材は、原稿との摩擦によって摩耗し、分離性能が低下してしまうので、定期的に新しい部品に交換する必要がある。そこで、分離部材の交換作業を容易にするために、分離部材を着脱可能に構成したものが知られている。この種の用紙搬送装置を開示するものとして、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1は、以下の構成の用紙搬送装置を開示している。即ち、用紙搬送装置は、給紙トレイと排出トレイとを接続し、一対の用紙搬送ガイドを備えて湾曲した搬送路を備える。また、用紙搬送装置は、開閉可能な上部フレームに支持されたセパレートローラと、前記一対の用紙搬送ガイドの一方の用紙搬送ガイド内側に前記搬送路側の一部に突出し、かつ前記セパレートローラに圧接するように配置された着脱自在な分離パッドと、を備える。前記分離パッドは、前記用紙搬送ガイドを取り外すことにより交換可能に構成されている。
【特許文献1】特開2002−128305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成の分離部材は、用紙に適切に接圧させるために、バネ等の弾性部材によって用紙側に付勢されている。分離部材が用紙に適切に接圧していない場合、ダブルフィード等の原因となるため、弾性部材の交換及び調整を行って原稿への押圧力を調整する必要がある。また、原稿を搬送する自動原稿搬送装置では、厚み及び弾性等が異なる様々な紙質の原稿を扱うため、原稿に応じて、分離部材の押圧力の調整を行わなければならない場合がある。この点、特許文献1では、分離パッドの交換は容易に行うことができるものの、分離部材の原稿への押圧力の調整を行う場合には、分離パッドとは別に弾性部材を装置から取り外す等の手間がかかり、メンテナンス作業の効率化という観点から改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、分離部材及び弾性部材のメンテナンス作業を迅速かつ容易に行うことができる自動原稿搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下のように構成される自動原稿搬送装置が提供される。即ち、この自動原稿搬送装置は、ガイド部と、分離部材と、弾性部材と、支持体と、を備える。前記ガイド部は、原稿を案内する。前記分離部材は、原稿を1枚ずつ分離するために前記ガイド部に配置される。前記弾性部材は、前記分離部材を押圧する。前記支持体は、前記分離部材と前記弾性部材とを支持するとともに、前記ガイド部に対して着脱可能に構成される。
【0008】
これにより、分離部材、弾性部材及び支持体をユニット単位でまとめてガイド部から取り外すことができる。従って、分離部材と弾性部材の交換を容易に行うことができ、メンテナンス作業の効率性を向上させることができる。
【0009】
前記の自動原稿搬送装置においては、前記支持体は、前記分離部材を押圧する前記弾性部材の押圧力を調整するための調整機構を有することが好ましい。
【0010】
これにより、搬送する原稿の種類に応じて適切な押圧力を付与することができる。また、着脱可能な支持体が調整機構を備える構成なので、支持体の着脱を行っても押圧力の調整を再度行う必要がなく、メンテナンス作業を効率化できる。
【0011】
前記の自動原稿搬送装置においては、以下のように構成されることが好ましい。前記支持体は、前記調整機構を保護するために着脱可能に取り付けられるカバー部材を有する。前記調整機構は、押圧力を調整するための調整部分が、前記カバー部材を取り外すことで露出するように構成される。
【0012】
これにより、カバー部材を取り外すだけで調整機構の調整を行うことができ、調整機構へのアクセス性を向上させることができる。従って、メンテナンス作業を迅速に行うことができ、作業性をより向上させることができる。また、カバー部材を支持体に取り付けた状態では、原稿を案内するガイドとしてカバー部材を機能させることもできる。
【0013】
前記の自動原稿搬送装置においては、前記弾性部材はバネで構成されることが好ましい。
【0014】
これにより、押圧力の調整が行い易いバネを利用するので、原稿に付与する押圧力を容易かつ精密に調整することができる。
【0015】
前記の自動原稿搬送装置においては、前記支持体を前記ガイド部に取り付けるための取外し可能な嵌込み部を備えることが好ましい。
【0016】
これにより、支持体を嵌め込むことで取付作業を容易に行うことができ、製造作業及びメンテナンス作業を効率化できる。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、前記自動原稿搬送装置を備える原稿読取装置が提供される。
【0018】
これにより、メンテナンス性に優れた原稿読取装置を提供することができる。
【0019】
本発明の第3の観点によれば、以下のように構成される分離部ユニットが提供される。即ち、この分離部ユニットは、分離部材と、弾性部材と、支持体と、を備える。前記分離部材は、原稿を1枚ずつ分離する。前記弾性部材は、前記分離部材を押圧する。前記支持体は、前記分離部材と前記弾性部材とを支持する。また、前記支持体は、原稿をガイドするために自動原稿搬送装置に備えられるガイド部に対して着脱可能に構成される。
【0020】
これにより、分離部材、弾性部材及び支持体を分離部ユニットとしてまとめてガイド部に対して着脱できる。従って、分離部材と弾性部材の交換を容易に行うことができ、メンテナンス作業の効率性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動原稿搬送装置を備えた原稿読取装置としてのイメージスキャナ装置10を含む、コピーファクシミリ複合機(複合機)20の外観斜視図である。図2は、本実施形態の自動原稿搬送装置及びイメージスキャナ装置の構成を示した正面断面図である。
【0022】
図1に示すコピーファクシミリ複合機20は、ブックスキャナ及びオートドキュメントフィードスキャナとして機能するイメージスキャナ装置10を、当該複合機20の上部に備えている。また、複合機20は、コピー部数、ファクシミリ送信先及び原稿読取等を指示するための操作パネル77を備える。
【0023】
更に、複合機20は、記録媒体としての用紙に画像を形成する画像形成部等を内蔵した本体78と、前記用紙を順次供給する給紙カセット79と、を備えている。この本体78は、通信回線を介して画像データを伝送するための図略の送受信部等を備える。
【0024】
次に図2を参照して、前記複合機20が備えるイメージスキャナ装置10について説明する。図2に示すように、イメージスキャナ装置10は、プラテンガラス22と原稿台カバー21とを備えている。この原稿台カバー21には自動原稿搬送装置(オートドキュメントフィーダ、ADF)25が備えられている。また、イメージスキャナ装置10は、原稿の画像を読み取るための第1スキャナユニット50及び第2スキャナユニット60を備えている。
【0025】
このイメージスキャナ装置10をオートドキュメントフィードスキャナとして使用する場合は、前記ADF25によって原稿を1枚ずつ搬送する。そして、原稿の表側の面(第1面)の画像は第1スキャナユニット50によって読み取られ、原稿の裏側の面(第2面)の画像は第2スキャナユニット60によって読み取られる。
【0026】
一方、イメージスキャナ装置10をブックスキャナとして使用する場合は、読み取るべきブック原稿をユーザがプラテンガラス22上に載置して、その上から原稿台カバー21によって押圧して、ブック原稿が動かないように固定する。この状態で、第1スキャナユニット50によって原稿の画像を読み取ることができるようになっている。
【0027】
図2に示すように、前記原稿台カバー21が備えるADF25は、原稿台カバー21の上部に設けられた原稿トレイ23と、この原稿トレイ23の下方に設けられた排出トレイ24と、を備える。また、ADF25は、ADF本体部16と、その上側を覆うカバー部11とを備えている。このカバー部11は、カバー回転軸43を中心にして上方に回転可能であり、当該カバー回転軸43を介してADF本体部16に支持されている。
【0028】
図2に示すように、前記原稿台カバー21の内部には、原稿トレイ23と排出トレイ24とを繋ぐ湾曲状(U字状)の原稿搬送経路30が構成されている。この構成で、原稿トレイ23に重ねてセットされた原稿は、1枚ずつ分離されて前記原稿搬送経路30に沿って搬送され、排出トレイ24へ排出される。原稿の読取開始等の指示は、図1に示す操作パネル77によって行うことができる。
【0029】
次に、原稿搬送経路30に沿って、ADF25の各部の構成を詳細に説明する。
【0030】
図2に示すように、原稿トレイ23から原稿搬送経路30に原稿が供給される箇所にはピックアップローラ(繰込み部)31が配置されている。このピックアップローラ31の下流側には分離ローラ32が備えられ、この分離ローラ32に対向して対向ローラ(分離部材)37が配置されている。
【0031】
このピックアップローラ31は、分離ローラ32の回転軸を中心にして、図中で実線で示す位置から2点鎖線で示す位置まで回転可能に構成されている。通常時においては、ピックアップローラ31は実線で示す上側の位置に保持されている。一方、原稿を繰り込む際には、ピックアップローラ31が下方に回転され、原稿トレイ23に重ねてセットされている原稿のうち、最上層にある原稿の端部に接触する。この構成で、ピックアップローラ31が駆動されることによって、原稿トレイ23上の最上層の原稿がADF25内に繰り込まれる。
【0032】
また、このピックアップローラ31に対向するように、インナーガイド(ガイド部)19が配置されている。このインナーガイド19は、原稿搬送経路30においてピックアップローラ31から後述のレジストローラ39までの範囲に配置されるとともに、搬送中の原稿に接触して当該原稿の向きを案内するガイド部として形成されている。このインナーガイド19は、レジストローラ39の支軸41に支持されている。
【0033】
この構成で、原稿はピックアップローラ31の駆動によって分離ローラ32へ送られ、当該分離ローラ32と、前記インナーガイド19側に配置された対向ローラ37との間にニップされる。そして原稿は、回転駆動する分離ローラ32及び対向ローラ37によって1枚ずつ分離され、原稿搬送経路30の下流側へ搬送される。また、本実施形態の対向ローラ37は、インナーガイド19から着脱可能に構成される分離部ユニット80に備えられている。なお、この分離部ユニット80の詳細な説明は後述する。
【0034】
分離ローラ32の下流側には、前記インナーガイド19側に備えられたレジストローラ39と、このレジストローラ39と対になるレジスト対向ローラと、が配置されている。レジストローラ39は、前記レジスト対向ローラとともに、分離ローラ32によって搬送されてくる原稿の先頭側を一時的に止めて弛ませ、所定時間後に弛みを除去しつつ下流側に搬送する。これにより、原稿の斜行が矯正される。
【0035】
レジストローラ39の下流側には、複数の搬送ローラ33,34,35が設けられる。また、この搬送ローラ33,34,35のそれぞれに対向するようにローラが配置されている。前記レジストローラ39の駆動によって下流側へ搬送された原稿は、搬送ローラ33,34,35とそれらに対向するローラとによりニップされて、更に下流側へ搬送される。
【0036】
2つの搬送ローラ34,35の間には第1原稿読取位置26が設定されており、この第1原稿読取位置26にはプラテンローラ29が配置されている。そして、この第1原稿読取位置26を通過する原稿は、後述の第1スキャナユニット50によって走査され、読み取られる。
【0037】
第1スキャナユニット50について説明する。この第1スキャナユニット50は本体78側に設置されるとともに、ADF25及びプラテンガラス22の下方に配置されている。また、この第1スキャナユニット50は、光源51と、反射ミラー52,53,54と、集光レンズ55と、電荷結合素子(CCD)56と、を備えている。光源51は前記ADF25の前記第1原稿読取位置26(又はプラテンガラス22)に対して光を照射し、反射ミラー52,53,54は原稿からの反射光を反射させる。そしてこの反射光を集光レンズ55で収束させて、この収束光がCCD56の部分で結像するように構成されている。
【0038】
第1スキャナユニット50の光源51及び反射ミラー52等は移動可能に構成されている。前述したようにイメージスキャナ装置10をブックスキャナとして使用する場合は、第1スキャナユニット50の光源51及び反射ミラー52等をプラテンガラス22に沿って移動させる。これによって、プラテンガラス22上に載置された原稿を読み取ることができるようになっている。
【0039】
一方、イメージスキャナ装置10をオートドキュメントフィードスキャナとして使用する場合は、光源51及び反射ミラー52等は、図2に示すように、前記第1原稿読取位置26に対向する位置まで移動させて静止させておく。この状態でADF25を駆動することにより、原稿搬送経路30を搬送されて第1原稿読取位置26を通過する原稿の表側の面を、第1スキャナユニット50が走査して読み取ることができる。
【0040】
第1スキャナユニット50において、原稿からの反射光は前述のとおりCCD56へ導かれて結像し、CCD56は原稿の画像情報に応じた電気信号を出力する。この信号は適宜変換処理され、複合機20が備える画像形成部に送信される。そして、この送信された画像情報が画像形成部によって記録媒体としての用紙に転写されることで、複合機20のコピー機能等が実現される。
【0041】
原稿搬送経路30において、前記第1原稿読取位置26の下流側(搬送ローラ35の下流側)には第2原稿読取位置27が設定されている。この第2原稿読取位置27を通過する原稿の裏面は、次に説明する第2スキャナユニット60によって走査されて読み取られる。
【0042】
第2スキャナユニット60について説明する。この第2スキャナユニット60は、U字状に構成された前記原稿搬送経路30に内側から接するように、当該原稿搬送経路30の内側に設置されている。また、第2スキャナユニット60は、ADF25の内部に保持されるスキャナフレーム12を備えている。このスキャナフレーム12は、内部の光学系を構成する部品等を支持するとともに、その外側を覆って保護するように構成されている。
【0043】
スキャナフレーム12の底部(原稿搬送経路30に接する部分)には、原稿の裏面を読み取るための読取ガラス42が備えられる。この読取ガラス42は、前記第2原稿読取位置27に対応する位置に配置される。
【0044】
また、スキャナフレーム12の前記第2原稿読取位置27に対向するように、プラテンローラ38がADF25本体部分に配置されている。この構成で、前記搬送ローラ35により搬送された原稿がプラテンローラ38の部分に差し掛かると、当該原稿はプラテンローラ38により搬送されながらその裏側の面が走査されて読み取られる。
【0045】
次に、スキャナフレーム12について説明する。スキャナフレーム12は、前記インナーガイド(フレーム支持部材)19に取り付けられている。前述したようにこのインナーガイド19は支軸41によって支持されており、第2スキャナユニット60は、このインナーガイド19を介してADF25内の所定の位置に保持されている。
【0046】
また、スキャナフレーム12の底部には、前記排出ローラ36に対向するようにして配置された接触ローラ40が備えられている。この構成で、第2スキャナユニット60で読み取られた原稿は、前記接触ローラ40と排出ローラ36との間でニップされ、排出ローラ36の駆動によって排出トレイ24へ導かれる。
【0047】
次に、第2スキャナユニット60において構成される縮小光学系について説明する。図2に示すように、第2スキャナユニット60は、光源61と、反射ミラー62,63,64,65と、集光レンズ67と、イメージセンサとしての電荷結合素子(CCD)57と、を備えている。これらの部品は、何れもスキャナフレーム12の内部に配置されている。
【0048】
光源61は読取ガラス42を臨むように配置されており、当該読取ガラス42を介して第2原稿読取位置27に光を照射することができる。反射ミラー62,63,64,65は、原稿からの反射光を更に複数回折り返すように反射させ、集光レンズ67に導くように構成されている。集光レンズ67は光を収束させてCCD57の部分に結像させ、CCD57は、第1スキャナユニット50におけるCCD56と同様に、原稿の画像情報に応じた電気信号を出力する。この信号も適宜変換処理され、複合機20が備える画像形成部に送信される。
【0049】
以上のようにして2つの原稿読取位置で表裏両面の内容を読み取られた原稿は、排出ローラ36と接触ローラ40によってニップされることにより搬送され、排出トレイ24へ排出される。このようにして、原稿搬送経路30に原稿を1回通過させるだけで両面読取が可能な構成の、いわゆるワンパス方式のイメージスキャナ装置10が構成されている。
【0050】
次に、図3及び図4を参照して、分離部ユニット80及びインナーガイド19の構成について詳細に説明する。図3は、分離部ユニット80がインナーガイド19に装着された状態を示した斜視図である。図4は、分離部ユニット80をインナーガイド19に装着する様子を示した分解組立斜視図である。
【0051】
インナーガイド19は適宜の樹脂によって形成されており、図3に示すように、前記スキャナフレーム12の上側を広範囲にわたって覆うようにカバー状に構成されている。このインナーガイド19は、爪部47によってスキャナフレーム12に取り付けられており、スキャナフレーム12はインナーガイド19とともに前記支軸41を中心にして回転可能に構成されている。
【0052】
このインナーガイド19の上側の面は、搬送される原稿を原稿搬送経路30に沿ってガイドするガイド面として形成されている。このインナーガイド19の上面には、分離部ユニット80と、レジストローラ39と、が配置されている。図4に示すように、分離部ユニット80を取り付けるための略矩形状の取付孔94がインナーガイド19の中央部分に形成されている。分離部ユニット80は、この取付孔94に嵌め込まれた状態でインナーガイド19に配置されている。
【0053】
分離部ユニット80は、ユニットフレーム(支持体)81と、対向ローラ37と、この対向ローラに接続されるトルクリミッタ82と、調整カバー(カバー部材)92と、を備えている。ユニットフレーム81は、分離部ユニット80の各部を支持するためのものである。調整カバー92は、分離部ユニット80の内部を保護するためのものであり、ユニットフレーム81に対して着脱できるように構成されている。
【0054】
ユニットフレーム81及び調整カバー92は、インナーガイド19の取付孔94に埋め込まれるようにして装着される。この状態では、ユニットフレーム81及び調整カバー92の上面は、インナーガイド19の上面とともに原稿をガイドするように構成されている。また、ユニットフレーム81及び調整カバー92は、インナーガイド19の上面との間に段差が生じないように、原稿搬送経路30側を向く面(上面)がインナーガイド19と同一面になるように形成されている。
【0055】
ユニットフレーム81は、分離部ユニット80の上流側端部に2つのスナップフィット部(嵌込み部)83を備えるとともに、下流側端部に2つの差込部84を備える。一方、インナーガイド19には、前記スナップフィット部83に嵌合可能な嵌合孔101が、インナーガイド19の上流側端部に2箇所形成されている。また、インナーガイド19の取付孔94の下流側内壁には、前記差込部84に対応した差込口102が2箇所形成されている。嵌合孔101は図3に示すように貫通状に形成されており、スナップフィット部83は、嵌合状態では、当該スナップフィット部83の爪が嵌合孔101を貫通するように構成されている。
【0056】
対向ローラ37は、ユニットフレーム81の下流側よりの中央部分に配置されており、前述したようにトルクリミッタ82に接続されている。トルクリミッタ82は対向ローラ37の回転に制動力を付与し、これによって、分離ローラ32と対向ローラ37との間で原稿を分離する。
【0057】
この分離作用を具体的に説明する。例えば、分離ローラ32と対向ローラ37の間に2枚の原稿が積層された状態でニップされたとする。この場合、上層の原稿には、分離ローラ32の回転によって原稿を下流側方向へ送る力が作用する。一方、上層の原稿の搬送につられて下流側へ搬送されようとする下層の原稿は、制動された対向ローラ37によって引き止められる。これにより、2枚の原稿が分離され、上層の原稿のみが分離ローラ32の回転力によって下流側へ搬送されることになる。
【0058】
図3の状態のインナーガイド19から分離部ユニット80を取り外すときは、嵌合孔101を貫通しているスナップフィット部83の爪を内側へ押し込み、ユニットフレーム81を上方に移動させて、スナップフィット部83を嵌合孔101から取り外す。そして、分離部ユニット80の差込部84を差込口102から引き抜くことで、分離部ユニット80をインナーガイド19から取り外すことができる。
【0059】
一方、インナーガイド19に分離部ユニット80を取り付けるときは、図4に示すように、まず分離部ユニット80の差込部84を差込口102に挿入する。次に、ユニットフレーム81の上流側を下方に押し込んで、インナーガイド19の嵌合孔101にスナップフィット部83の爪を引っ掛ける(嵌合させる)。これによって、分離部ユニット80は計4箇所で機械的に結合され、インナーガイド19に装着される。
【0060】
次に分離部ユニット80の内部構造について図5、図6及び図7を参照して説明する。図5は、分離部ユニット80の内部を裏側から見た様子を示した斜視図である。図6は、分離部ユニット80の構成を装置正面側から示した断面図である。図7は、分離部ユニット80の調整カバー92を取り外した様子を示した拡大平面図である。
【0061】
図5に示すように、分離部ユニット80は、対向ローラ37及びトルクリミッタ82を支持するローラカバー(分離部材カバー)85を内部に備える。図6に示すように、このローラカバー85は、対向ローラ37の軸方向に見て円弧状に構成されており、対向ローラ37及びトルクリミッタ82の周面の下方部分を覆うようにカバー状に形成されている。また、ローラカバー85は、ユニットフレーム81が備えるカバー支持軸91に対して回転可能に取り付けられており、ローラカバー85が回転することで前記対向ローラ37の位置がほぼ上下方向に変位するように構成されている。
【0062】
また、分離部ユニット80は、ローラカバー85を介して対向ローラ37を押圧するためのバネ88と、このバネ88の押圧力を調整するための調整機構93と、を備える。調整機構93は、バネ圧を調整するためのネジ87と、このネジ87を支持するネジ支持部89と、を有している。ネジ支持部89は、細長い板状部材を折り曲げて形成されており、ユニットフレーム81に固定されている。このネジ支持部89の端部にはネジ孔が切られており、ネジ87は、頭部を上方に向けながら前記ネジ孔に捩じ込まれた状態でネジ支持部89に支持されている。前記ネジ87の頭部の周囲には、鍔状のバネ支持部90が形成されている。このバネ支持部90は、バネ88の下端に接触可能に構成されている。
【0063】
また、ローラカバー85は、バネ88の押圧を受けるためのバネ受け部86を有している。バネ受け部86は、ローラカバー85の端部から突出するように一体的に形成されており、図6に示すように、バネ88の上端部を保持するために下方へ凸状に形成された部分を有している。このバネ受け部86には、上方からドライバー等の工具を差し込むための挿通孔95が形成されている。
【0064】
バネ88は、バネ支持部90に下端を支持される一方、上端がバネ受け部86の鍔部分に接触するように配置される。これによって、ローラカバー85は、バネ受け部86を介してバネ88の押圧を受け、上方に付勢される。バネ受け部86がバネ88によって付勢されることによって、ローラカバー85に支持される対向ローラ37が分離ローラ32に近づく向きに押し付けられる。
【0065】
また、本実施形態の調整機構93は、ドライバー等の工具を前記挿通孔95に上方から挿入し、その工具の先端をネジ87の頭部の溝に差し込むことができるように構成されている。従って、ネジ87の回転によりバネ支持部90を上下方向にネジ移動させ、バネ支持部90とバネ受け部86との間隔を調整することができる。これによって、バネ受け部86とバネ支持部90との間に配置されるバネ88の長さを伸縮させてバネ力を調整することができる。このように、バネ力は調整機構93によって調整することができるので、対向ローラ37は、原稿に対して適切な押圧力で接触することができ、原稿の分離を良好に行うことができる。
【0066】
図5に示すように、調整カバー92は、ユニットフレーム81に当該調整カバー92を取り付けるための調整カバースナップフィット部103を備えている。一方、ユニットフレーム81内部には、この調整カバースナップフィット部103に対応する嵌合片が配置されている。この構成で、調整カバースナップフィット部103と前記嵌合片が嵌合することでユニットフレーム81に調整カバー92が固定される。
【0067】
また、ユニットフレーム81は、調整カバー92の位置決めを行うための位置決めピン104を備えている。この位置決めピン104は、ユニットフレーム81に一体成形されている。一方、調整カバー92には図3及び図4に示すように、当該位置決めピン104により位置決めされるピン孔105が調整カバー92の表面に形成されている。
【0068】
調整カバー92をユニットフレーム81に取り付けるときは、ユニットフレーム81に略矩形状に形成される調整カバー取付孔106に調整カバー92を嵌め込み、調整カバースナップフィット部103をユニットフレーム81の嵌合片に嵌合させる。この状態で、ユニットフレーム81側の位置決めピン104を調整カバー92側のピン孔105に合わせる。これによって、ユニットフレーム81に調整カバー92を適切な位置で取り付けることができる。また、調整カバー92をユニットフレーム81から取り外すときは、調整カバースナップフィット部103の嵌合を解除して調整カバー92をユニットフレーム81から取り外す。
【0069】
図7に示すように、調整カバー92を外した状態では、対向ローラ37及びトルクリミッタ82とともに、調整機構93の一部であるネジ87の頭部が挿通孔95を通じて露出している。バネ88の弾性力を調整するためのネジ87の頭部が上方を向いた状態で露出しているので、ユーザは、ユニットフレーム81を取り外すことなく、挿通孔95にドライバー等を差し込んでネジ87を所望の方向に回転させて容易にバネ力を調整することができる。なお、バネ力を調整するための調整機構93は、調整カバー92を取り外した状態で調整を行うことができる構成であれば、適宜変更することができる。
【0070】
以上に示したように、本実施形態のADF25は、インナーガイド19と、対向ローラ37と、バネ88と、ユニットフレーム81と、を備える。インナーガイド19は、原稿を案内する。対向ローラ37は、原稿を1枚ずつ分離するためにインナーガイド19に配置される。バネ88は、対向ローラ37を押圧する。ユニットフレーム81は、対向ローラ37とバネ88とを支持するとともに、インナーガイド19に対して着脱可能に構成される。
【0071】
これにより、対向ローラ37、バネ88及びユニットフレーム81をユニット単位でまとめてインナーガイド19から取り外すことができる。従って、各部品をバラバラに分解することなく対向ローラ37とバネ88の交換を容易に行うことができ、ADF25(イメージスキャナ装置10)のメンテナンス作業を効率良く行うことができる。
【0072】
また、本実施形態のADF25において、ユニットフレーム81は、対向ローラ37を押圧するバネ88の押圧力を調整するための調整機構93を有する。
【0073】
これにより、搬送する原稿の種類に応じて適切な押圧力を付与することができる。また、着脱可能なユニットフレーム81側に調整機構93を備える構成なので、ユニットフレーム81からインナーガイド19を取り外し、再び取り付けた場合に、取外し前の押圧力を容易に再現できる。従って、押圧力の調整を再度行う必要がなく、メンテナンス作業を効率化できる。
【0074】
また、本実施形態のADF25において、ユニットフレーム81は、調整機構93を保護するために着脱可能に取り付けられる調整カバー92を有する。調整機構93は、押圧力を調整するための調整部分であるネジ87の頭部が、調整カバー92を取り外すことで露出するように構成される。
【0075】
これにより、調整カバー92を取り外すだけで調整機構93の調整を行うことができ、調整機構93へのアクセス性を向上させることができる。従って、メンテナンス作業を迅速に行うことができ、作業性をより向上させることができる。また、調整カバー92をユニットフレーム81に取り付けた状態では、調整カバー92の上面が原稿を案内するガイド面として機能する。これによって、原稿の搬送性が向上する。
【0076】
また、本実施形態のADF25において、対向ローラ37を押圧するための弾性部材がバネ88で構成される。
【0077】
これにより、押圧力の調整が行い易いバネ88を弾性部材として利用するので、原稿に付与する押圧力を容易かつ精密に調整することができる。
【0078】
また、本実施形態のADF25は、ユニットフレーム81をインナーガイド19に取り付けるための取外し可能なスナップフィット部83を備える。
【0079】
これにより、スナップフィット部83を嵌め込むことで取付作業を容易に行うことができ、製造作業及びメンテナンス作業を効率化できる。また、分離部ユニット80がインナーガイド19に装着されている状態のときは、嵌合孔101から露出するスナップフィット部83の端部を押し込んで嵌合を解除することで、分離部ユニット80をインナーガイド19から容易に取り外すことができる。
【0080】
以上に本発明の好適な実施形態について説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0081】
上記実施形態では、ユニットフレーム81をインナーガイド19に取り付けたまま調整機構93によって押圧力を調整する構成であるが、この構成を変更することができる。例えば、分離部ユニットが、ユニットフレームの裏側から押圧力を調整するための調整部分を備え、押圧力の調整は、ガイド部からユニットフレームを取り外した状態で行う構成に変更することもできる。このような構成では、分離部ユニットのカバー手段を取り外すことなく押圧力の調整が行われるので、カバー手段を取り外す機構を省略することができ、分離部ユニットの構成を一層簡易なものとすることができる。
【0082】
また、上記実施形態の対向ローラ37に代えて、分離部材を分離パッド等の異なる形状のものに変更することもできる。
【0083】
また、上記実施形態から調整機構93を省略する構成とすることもできる。例えば、押圧力の調整を以下のように行う構成とすることができる。即ち、原稿の種類に応じて押圧力が調整された分離部ユニットを交換用として予め複数用意しておく。そして、押圧力の調整を行うときは、現在装着されている分離部ユニットを取り外すとともに、適切な押圧力に調整された分離部ユニットを選択して取り付ける。この方法によって、分離部ユニットを交換するだけで押圧力の調整を行うことができる。
【0084】
前記コピーファクシミリ複合機20に代えて、例えば、コピー機、ファクシミリ装置等にも、本発明のADF25を適用することができる。
【0085】
上記実施形態ではイメージスキャナ装置10は複合機20の一部として備えられているが、この構成に代えて、単体のイメージスキャナ装置として構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態に係るADF及びイメージスキャナ装置を含むコピーファクシミリ複合機の様子を示した外観斜視図。
【図2】本実施形態のADF及びイメージスキャナ装置の構成を示した正面断面図。
【図3】分離部ユニットが装着された状態の分離部ユニット及びインナーガイドの様子を示した斜視図。
【図4】分離部ユニットが取り外されている状態の分離部ユニット及びインナーガイドの様子を示した斜視図。
【図5】分離部ユニットの内部を裏側から見た様子を示した斜視図。
【図6】分離部ユニットの構成を装置正面側から示した断面図。
【図7】分離部ユニットの調整カバーを取り外した様子を示した拡大平面図。
【符号の説明】
【0087】
10 イメージスキャナ装置(原稿読取装置)
19 インナーガイド(ガイド部)
25 ADF(自動原稿搬送装置)
37 対向ローラ(分離部材)
80 分離部ユニット
81 ユニットフレーム(支持体)
83 スナップフィット部(嵌込み部)
88 バネ(弾性部材)
92 調整カバー(カバー部材)
93 調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を案内するためのガイド部と、
原稿を1枚ずつ分離するために前記ガイド部に配置される分離部材と、
前記分離部材を押圧するための弾性部材と、
前記分離部材と前記弾性部材とを支持するとともに、前記ガイド部に対して着脱可能に構成される支持体と、
を備えることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記支持体は、前記分離部材を押圧する前記弾性部材の押圧力を調整するための調整機構を有することを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記支持体は、前記調整機構を保護するために着脱可能に取り付けられるカバー部材を有し、
前記調整機構は、押圧力を調整するための調整部分が、前記カバー部材を取り外すことで露出するように構成されることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記弾性部材はバネで構成されることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記支持体を前記ガイド部に取り付けるための取外し可能な嵌込み部を備えることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の自動原稿搬送装置を備えることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項7】
原稿を1枚ずつ分離するための分離部材と、
前記分離部材を押圧するための弾性部材と、
前記分離部材と前記弾性部材とを支持するとともに、原稿をガイドするために自動原稿搬送装置に備えられるガイド部に対して着脱可能に構成される支持体と、
を備えることを特徴とする分離部ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−64798(P2010−64798A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229633(P2008−229633)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】