説明

自動取引装置及び自動取引装置の精査方法

【課題】自動取引装置の寿命の短縮を抑制する。
【解決手段】自動取引装置1では、複数の収納手段7aからそれぞれ繰り出された紙幣の枚数を計数すると共に、繰り出された紙幣の状態を鑑別して、収納手段7aごとに紙幣の状態を対応させるようにした。これにより、繰り出された紙幣の状態に多重繰り出し・鑑別不良等の異常があった収納手段7aのみの紙幣の有り高の精査を実行するようにした。そして、収納手段7aから繰り出された紙幣の枚数及び収納手段7aの紙幣の有り高を更新するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動取引装置及び自動取引装置の精査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関等に設置されている自動取引装置(ATM(Automated Teller Machine))は利用者から受け付けた操作入力に応じて現金の預かり入れ、引き出し、振り込み、送金等の取引を実行する。また、自動取引装置は、金種ごとに紙幣を収納するスタッカと、紙幣を補充するためのカセットと、紙幣を搬送する搬送手段とが内蔵された紙幣処理ユニットを備える。このような紙幣処理ユニットは、利用者が入金した紙幣が金種に応じたスタッカに搬送手段により搬送され、また、スタッカから紙幣が利用者に出金される。そして、カセットからスタッカに紙幣が搬送される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
さらに、紙幣処理ユニットのスタッカ及びカセットには紙幣カウンタがそれぞれ設けられている。紙幣カウンタはスタッカ及びカセットから紙幣がそれぞれ繰り出されるごとに当該紙幣を1枚ずつカウント(計数)する。これにより自動取引装置は、紙幣カウンタの計数結果から繰り出された紙幣の枚数と共にスタッカ及びカセット内に収納されている紙幣の枚数の管理を行う。
【0004】
しかし、紙幣がスタッカ及びカセットから搬送手段により繰り出される際に、2枚以上が重なる場合(多重繰り出し)がある。この場合でも、紙幣カウントは1枚の紙幣が繰り出されたことをカウントしてしまう。即ち、自動取引装置が管理するスタッカ及びカセット内に収納されている紙幣の枚数(有り高)と、実際に収納されているスタッカ及びカセット内の紙幣の有り高とで差異が生じてしまう。
【0005】
このように紙幣の有り高に差異が生じる場合があるために、紙幣カウンタがカウントした紙幣の枚数に対する自動取引装置の紙幣の有り高と、自動取引装置の実際の紙幣の有り高とをオペレータは確認する必要がある。このため、自動取引装置の紙幣処理ユニットの全てのスタッカ及び全てのカセットが収納する紙幣を鑑別及び計数して、自動取引装置の紙幣の有り高の精査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−162324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、自動取引装置の紙幣処理ユニットの全てのスタッカ及び全てのカセットに収納されている紙幣を精査するにあたり、自動取引装置を一旦停止しなくてはならない。停止の間、利用者は自動取引装置を利用できなくなってしまうという問題点があった。
【0008】
また、全てのスタッカ及び全てのカセットの紙幣を精査するために、精査に多くの時間を要する。紙幣の精査に時間を要することから、自動取引装置における精査時の紙幣詰まり等の故障の発生率が向上し、自動取引装置に対する精査のための動作負担も増加することから、自動取引装置の劣化が進んでしまう。このため、自動取引装置の寿命が短縮してしまうという問題点もあった。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、寿命の短縮が抑制された自動取引装置及び自動取引装置の精査方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、紙幣を収納する収納手段に、前記収納手段から繰り出された前記紙幣の状態が対応付けられた状態情報を保持する状態情報保持手段と、前記状態情報保持手段を参照して前記紙幣の状態に応じて前記収納手段に収納されている前記紙幣の枚数を精査手段に精査させる精査実行手段と、を有する自動取引装置が提供される。
【0011】
また、上記目的を達成するために、上記自動取引装置と同様の精査を実行する方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
このような自動取引装置及び自動取引装置の精査方法により、自動取引装置の寿命の短縮が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る自動取引装置を説明するための概念図である。
【図2】第2の実施の形態に係るATMの斜視図である。
【図3】第2の実施の形態に係るATMのハードウェア構成例を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係るATMが備える紙幣処理ユニットの構成例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係るATMが備える機能を示すブロック図である。
【図6】第2の実施の形態に係るATMが備えるカウント情報及び状態情報を説明するための図である。
【図7】第2の実施の形態に係るATMが備えるカセットに収納されている紙幣のカウンタ枚数を説明するための図である。
【図8】第2の実施の形態に係るATMのスタッカにおける繰り出し処理を実行するための処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態に係るATMのカセットにおける繰り出し処理を実行するための処理手順を示すフローチャート(その1)である。
【図10】第2の実施の形態に係るATMのカセットにおける繰り出し処理を実行するための処理手順を示すフローチャート(その2)である。
【図11】第2の実施の形態に係るATMのカウント情報の更新処理を実行するための処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る自動取引装置を説明するための概念図である。
【0015】
自動取引装置1は、収納手段から繰り出された紙幣の枚数に対応する収納手段に収納されている紙幣の有り高と、収納手段に実際に収納されている紙幣の有り高とを一致させる際に、異常状態の紙幣が繰り出された収納手段のみの紙幣の精査を行うものである。
【0016】
このような自動取引装置1は、図1に示されるように、計数情報保持手段2、状態情報保持手段3、精査実行手段4、更新手段5、紙幣処理制御手段6及び紙幣処理装置7を備える。なお、少なくとも、精査実行手段4、更新手段5及び紙幣処理制御手段6は、自動取引装置1が備える図示しないCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)によって精査プログラムが実行されることにより、その処理機能が実現される。
【0017】
計数情報保持手段2は、紙幣を収納する収納手段7aに対して入出する紙幣に応じて増減される収納手段7aに収納されている紙幣の枚数の情報を保持する。例えば、計数情報保持手段2は収納手段7aに収納されている紙幣の枚数(有り高)の情報を保持している。自動取引装置1が利用者からの操作入力に応じて紙幣を出金する場合、収納手段7aから紙幣が1枚ずつ繰り出されるごとに、計数情報保持手段2が保持する紙幣の有り高が1枚ずつ減少する。
【0018】
状態情報保持手段3は、収納手段7aに、収納手段7aから繰り出された紙幣の状態が対応付けられた状態情報を保持する。例えば、収納手段7aから繰り出された紙幣が重なった状態である場合には当該紙幣が繰り出された収納手段7aに対して紙幣が多重繰り出し状態であることが対応付けられる。また、同様に繰り出された紙幣が鑑別不良の状態である場合には当該紙幣が繰り出された収納手段7aに対して紙幣が鑑別不良状態であることが対応付けられる。
【0019】
精査実行手段4は、状態情報保持手段3を参照して状態に応じて収納手段7aに収納されている紙幣の枚数を精査手段7bに精査させる。
更新手段5は、精査実行手段4が精査させた収納手段7aに収納されている紙幣の枚数に基づき計数情報保持手段2が保持する紙幣の枚数を更新する。
【0020】
紙幣処理制御手段6は、後述する紙幣処理装置7を動作させるための制御信号を紙幣処理装置7に通知し、紙幣処理装置7からの処理に応じた信号を受信する。また、紙幣処理制御手段6は、後述する計数手段7cの計数結果を計数情報保持手段2に反映させる。
【0021】
紙幣処理装置7は、紙幣処理制御手段6からの制御信号に基づいて紙幣の入金の受け付け、出金等の取引を実行する。さらに、紙幣処理装置7は、収納手段7a、精査手段7b、計数手段7c及び鑑別手段7dを備えている。
【0022】
収納手段7aは紙幣を金種ごとに用意されており、金種に応じて紙幣を収納する。収納手段7aは、例えば、スタッカ(万円券、五千円券、二千円券、千円券)、カセット等であり、紙幣処理制御手段6からの制御信号に応じて、スタッカから紙幣が繰り出されて外部に出金され、または、スタッカとカセットとの間で紙幣が搬送される。
【0023】
精査手段7bは、収納手段7aが保持する紙幣の枚数を精査する。例えば、金種ごとに紙幣を収納するスタッカから収納用のカセット等の収納庫に一度紙幣を全て搬送し、再び収納庫から紙幣を後述する鑑別手段7dが鑑別し数えながらスタッカに紙幣を格納することにより精査処理を実施している。
【0024】
計数手段7cは、収納手段7aから紙幣が繰り出されるごとに、また、収納手段7aに紙幣が収納されるごとに、繰り出され収納された紙幣の通過を検知することで、繰り出され収納された紙幣の枚数を計数する。
【0025】
鑑別手段7dは、収納手段7aから繰り出された紙幣を鑑別する。例えば、繰り出された紙幣が多重繰り出し状態、鑑別不良等であることを鑑別する。
紙幣処理装置7は、このように計数手段7cが計数した情報、鑑別手段7dが鑑別した情報をそれぞれ紙幣処理制御手段6に通知する。
【0026】
このような構成を有する自動取引装置1で行われる精査処理について説明する。
紙幣処理装置7では、複数の収納手段7aからそれぞれ紙幣が繰り出され、また、収納されると、繰り出され収納された紙幣の枚数を計数手段7cがそれぞれ計数する。計数手段7cが計数した紙幣の枚数を紙幣処理装置7は紙幣処理制御手段6に通知する。紙幣処理制御手段6は通知された紙幣の枚数の情報を計数情報保持手段2が保持する各収納手段7aの紙幣の有り高の情報に反映させる。
【0027】
さらに、このようにして複数の収納手段7aからそれぞれ繰り出された紙幣は鑑別手段7dにより鑑別される。繰り出された紙幣の鑑別情報を紙幣処理装置7は紙幣処理制御手段6に通知する。紙幣処理制御手段6は通知された当該鑑別情報を収納手段7aごとに対応させて状態情報保持手段3に保持させる。
【0028】
ここで、ある収納手段7aから繰り出された紙幣が、例えば2枚が重なった多重繰り出しの状態であることを鑑別手段7dが鑑別する。このような鑑別結果は紙幣処理装置7から紙幣処理制御手段6を介して状態情報保持手段3に保持される。
【0029】
この時、収納手段7aから繰り出された紙幣は実際は2枚であるが、計数手段7cは1枚の紙幣が繰り出されたことを計数する。即ち、計数手段7cのこのような計数結果を計数情報保持手段2に反映すると、収納手段7aの実際の紙幣の有り高と、計数情報保持手段2の収納手段7aの紙幣の有り高とは一致しないことになる(実際の紙幣の有り高の方が少ない)。それぞれの紙幣の有り高を一致させるために多重繰り出し状態の紙幣が繰り出された収納手段7aに収納されている紙幣の枚数を精査する必要がある。
【0030】
そこで、精査実行手段4は、状態情報保持手段3を参照して複数の収納手段7aから上記の多重繰り出し状態の紙幣が繰り出された収納手段7aの紙幣の枚数の精査要求を紙幣処理制御手段6に通知する。紙幣処理制御手段6はこのような精査要求を紙幣処理装置7に通知する。
【0031】
紙幣処理装置7は精査要求に基づいて精査対象となる収納手段7aのみの紙幣の枚数の精査を実行し、精査した紙幣の枚数を紙幣処理制御手段6に通知する。
更新手段5は、紙幣処理制御手段6から精査実行手段4を介して精査による紙幣の枚数の情報を取得して、当該紙幣の枚数に基づいて計数情報保持手段2の対象となる収納手段7aに対する繰り出した紙幣の枚数を更新する。
【0032】
以上の処理を実行することにより、計数情報保持手段2が保持する計数情報が更新されて、計数情報保持手段2が保持する収納手段7aの紙幣の有り高と、収納手段7aの紙幣の実際の有り高とが一致するようになる。
【0033】
このような自動取引装置1では、複数の収納手段7aに対してそれぞれ入出した紙幣の枚数を計数すると共に、繰り出された紙幣の状態を鑑別して、収納手段7aごとに繰り出された紙幣の状態を対応させるようにした。
【0034】
これにより、繰り出された紙幣の状態に多重繰り出し、鑑別不良等の異常があった収納手段7aのみの紙幣の有り高の精査を実行するようにした。そして、収納手段7aから繰り出された紙幣の枚数を更新でき、収納手段7aの紙幣の有り高が収納手段7aの実際の紙幣の有り高と一致するようになる。
【0035】
したがって、全ての収納手段7aの紙幣の枚数の精査を実行する必要が無くなるため、自動取引装置1の停止時間が短縮される。また、紙幣処理装置7の精査時の紙幣詰まり等の故障の発生率の向上、また、紙幣処理装置7の劣化の進行がそれぞれ抑制される。この結果、自動取引装置の寿命の短縮が抑制される。
【0036】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態をより具体的に説明する。
図2は、第2の実施の形態に係るATMの斜視図である。
【0037】
ATM10は、前面にカード挿入/排出口40aを有するカード処理ユニット、通帳挿入/排出口50aを有する通帳処理ユニット、硬貨入出金部60aを有する硬貨処理ユニット、及び紙幣入出金部70aを有する紙幣処理ユニットを有する。さらに、ATM10は、利用者からの操作入力及び表示のための表示部30aを有する表示ユニットを有する。
【0038】
図3は、第2の実施の形態に係るATMのハードウェア構成例を示す図である。
ATM10は、ATM10で行われる所定の処理を実行する制御ユニット20、利用者からの操作入力及び出力結果を表示する表示ユニット30を有する。さらに、ATM10には、図2で説明した、カード挿入/排出口40aを有するカード処理ユニット40、通帳挿入/排出口50aを有する通帳処理ユニット50、硬貨入出金部60aを有する硬貨処理ユニット60及び紙幣入出金部70aを有する紙幣処理ユニット70を有する。
【0039】
制御ユニット20は、CPU20a、RAM(Random Access Memory)20b、HDD(Hard Disk Drive)20c、グラフィックインタフェース20d、ホスト通信制御部20e及び入出力インタフェース20fを備えており、これらの各部はバス20gで相互に接続されている。
【0040】
CPU20aは、HDD20c等の記憶媒体に記憶された各種プログラムを実行することにより、このATM10全体を統括的に制御する。
RAM20bには、CPU20aに実行させるOS(Operating System)並びにプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM20bには、CPU20aによる処理に必要な各種データが格納される。
【0041】
HDD20cには、ATM10上のOS及びアプリケーションのプログラムが格納される。また、HDD20cには、CPU20aによる処理に必要な各種データが格納される。
【0042】
グラフィックインタフェース20dには、表示ユニット30が接続されている。グラフィックインタフェース20dは、CPU20aからの命令に従って、画面を表示ユニット30の表示部30aに表示させる。また、グラフィックインタフェース20dは、表示ユニット30の入力検知部30bで検知された操作入力に応じた情報を取得する。
【0043】
ホスト通信制御部20eは、様々な場所に設置したATM10の管理を行う管理センターのホストコンピュータ(図示を省略)と通信可能に例えばLAN(Local Area Network)で接続されており、ホストコンピュータと送受信信号の通信を行うことができる。
【0044】
入出力インタフェース20fには、カード処理ユニット40、通帳処理ユニット50、硬貨処理ユニット60、及び紙幣処理ユニット70が接続されている。また、入出力インタフェース20fは、カード処理ユニット40、通帳処理ユニット50、硬貨処理ユニット60、及び紙幣処理ユニット70が相互に通信可能に接続されており、バス20gを介してCPU20aと相互に信号の送受信を行う。
【0045】
表示ユニット30は、取引に関する画面を表示して、利用者からの操作入力を受け付けることができるものであり、表示部30aと、入力検知部30bとを備える。
表示部30aは、ATM10の処理に応じ画面情報に基づいて画面を表示する、例えばLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)である。
【0046】
入力検知部30bは、表示部30aが表示する画面に対する利用者のタッチを検知する。具体的には、利用者のタッチによる操作入力によって赤外線ビームが遮光された赤外線LED(Light Emitting Diode)とフォトトランジスタとから操作入力の位置情報を検出して、当該位置情報を制御ユニット20に送信する。なお、制御ユニット20のCPU20aにより、検知したタッチ位置に該当する画面に表示されている処理内容を識別して、当該処理を実行する。
【0047】
カード処理ユニット40は、カード挿入/排出口40aから挿入された利用者のカードの実行指示に応じて所定の処理の処理結果を記録する。また、カード処理ユニット40は、処理結果の記録が完了したカードを、カード挿入/排出口40aから排出して、利用者に返却する。
【0048】
通帳処理ユニット50は、通帳挿入/排出口50aから挿入された利用者の通帳を所定位置まで搬送し、利用者からの実行指示に応じて所定の処理の処理結果を記録する。また、通帳処理ユニット50は、処理結果の記録が完了した通帳を搬送して、通帳挿入/排出口40aから排出して、利用者に返却する。
【0049】
硬貨処理ユニット60及び紙幣処理ユニット70は、硬貨入出金部60a及び紙幣入出金部70aから挿入された硬貨及び紙幣を受け入れて、硬貨及び紙幣をそれぞれ計数する。また、利用者の所定の実行指示に応じて、硬貨入出金部60a及び紙幣入出金部70aから処理に応じた額の硬貨及び紙幣を放出することができる。
【0050】
このようなカード処理ユニット40、通帳処理ユニット50、硬貨処理ユニット60、及び紙幣処理ユニット70は、利用者による表示ユニット30を介した操作入力に応じて、制御ユニット20のCPU20aによってそれぞれ制御される。
【0051】
なお、図3に記載したハードウェア構成以外にも、例えば、オペレータ、係員、行員等がATM10の様々な設定を管理し、設定状況を把握するための操作表示ユニット等の上位装置(図示を省略)を制御ユニット20に接続するようにしても構わない。
【0052】
次いで、ATMが備えるこのようなハードウェア構成の1つである紙幣処理ユニット70の詳細について説明する。
図4は、第2の実施の形態に係るATMが備える紙幣処理ユニットの構成例を示す図である。
【0053】
紙幣処理ユニット70には、紙幣入出金部70a、鑑別部70b、一時保留部70c、取り忘れリジェクト部70d、スタッカA,1〜3、カセットF,R、リジェクト部70kを有する。
【0054】
紙幣入出金部70aは外部から入金される紙幣を受け入れて、また、紙幣処理ユニット70から外部に出金される紙幣が払い出される。
鑑別部70bは、入出金される紙幣の真偽、金種、正損、裏表、重なり等を鑑別するもので、どちら側から搬送された紙幣も鑑別可能である。
【0055】
一時保留部70cは、入金時に利用者が入金した紙幣を一時的に保持する。
取り忘れリジェクト部70dは、出金時に紙幣入出金部70aの紙幣を利用者が取り忘れた場合にその取り忘れた紙幣を収納する。
【0056】
スタッカA,1〜3は、出金用の紙幣を金種別に収納するもので、入金時に出金用に使用できる紙幣も出金用紙幣として格納する。例えば、スタッカAは万円券、スタッカ1は五千円券、スタッカ2は二千円券、スタッカ3は千円券の紙幣をそれぞれ収納する。
【0057】
カセットF,Rは、スタッカA,1〜3に対して補充を行う紙幣を収納すると共に、スタッカA,1〜3から収納した紙幣を収納する。
なお、スタッカA,1〜3及びカセットF,Rには図示しない繰り出し手段が設けられており、ATM10における繰り出し要求に応じて繰り出し手段はスタッカA,1〜3及びカセットF,Rから紙幣を必要枚数繰り出すことができる。
【0058】
リジェクト部70kは、スタッカA,1〜3及びカセットF,Rから繰り出された紙幣のうち、鑑別部70bが使用できないと判定した紙幣をリジェクト紙幣として収納する。
また、スタッカA,1〜3及びカセットF,Rにはカウンタ部70e〜70jが、さらにカセットF,Rには紙幣センサ70j1,70i1がそれぞれ設けられている。
【0059】
カウンタ部70e〜70jはスタッカA,1〜3及びカセットF,Rからそれぞれ繰り出され、また、スタッカA,1〜3及びカセットF,Rにそれぞれ収納される紙幣が通過する通路に設置されている。このようなカウンタ部70e〜70jはスタッカA,1〜3及びカセットF,Rから繰り出され、また、収納される紙幣が通過することで紙幣をカウントする。
【0060】
紙幣センサ70j1,70i1はカセットF,Rの紙幣の有り高が0枚になったことを検知する。
紙幣処理ユニット70に内蔵されている上記のスタッカA,1〜3及びカセットF,R等の間には搬送路が設けられており、紙幣はそれらの間の搬送路を搬送される。
【0061】
次に、ATM10が備える制御機能について説明する。
図5は、第2の実施の形態に係るATMが備える機能を示すブロック図である。
ATM10は、紙幣処理ユニット70の全てのスタッカA,1〜3及び全てのカセットF,Rの精査を行わず、異常状態の紙幣が繰り出されたスタッカA,1〜3及びカセットF,Rのみを精査することができるものである。
【0062】
このようなATM10は制御ユニット20にカウント情報保持部21、状態情報保持部22を有する。
図6は、第2の実施の形態に係るATMが備えるカウント情報及び状態情報を説明するための図である。
【0063】
なお、図6(A)はカウント情報保持部21が保持するカウント情報を、図6(B)は状態情報保持部22が保持する状態情報をそれぞれ表している。
カウント情報保持部21は、スタッカA,1〜3に収納されている紙幣のカウント枚数(有り高)を示すカウント情報を保持する。例えば、スタッカA,1〜3には図6(A)に示されるようにA,B,C,D枚の紙幣がそれぞれ収納されている。
【0064】
スタッカA,1〜3に対して入出する紙幣の枚数を後述するカウント情報管理部25がカウント情報の紙幣の有り高に反映させる。但し、スタッカA,1〜3から重なった状態、鑑別不良な状態の紙幣が繰り出された場合には、カウント情報保持部21が保持する各紙幣のカウント枚数は実際の紙幣の有り高と異なってくる。
【0065】
また、カウント情報保持部21は、カセットF,Rに収納されている紙幣のカウント枚数を示すカウント情報も保持する。例えば、カセットF,Rは図6(A)に示されるようにE,F枚の紙幣がそれぞれ収納されている。また、カセットF,RもスタッカA,1〜3の場合と同様に紙幣の入出に応じて後述するカウント情報管理部25により紙幣の有り高が変動される。
【0066】
また、スタッカA,1〜3及びカセットF,Rに搬送される紙幣は、各スタッカA,1〜3及び各カセットF,Rから繰り出されて鑑別部70bにより真であることが鑑別されたものである。したがって、スタッカA,1〜3及びカセットF,Rに搬送されカウンタ部70e〜70jが検知した紙幣の枚数は、実際に搬送される紙幣の枚数と一致することが考えられる。
【0067】
なお、カセットF,Rのカウンタ枚数の詳細については後述する。
状態情報保持部22は、紙幣処理ユニット70の各スタッカA,1〜3及び各カセットF,Rに対して、エラーフラグのON/OFFが識別されている。例えば、スタッカAから繰り出された紙幣は鑑別部70bに搬送されて、鑑別部70bで紙幣の鑑別が行われる。鑑別の結果、当該紙幣が真であるため、エラーフラグにOFFがセットされる。一方、スタッカ2から繰り出された紙幣の鑑別の結果が当該紙幣が2枚以上重なった状態、鑑別不良の状態等である場合には、図6(B)に示されるように、当該紙幣が繰り出されたスタッカ2に対してエラーフラグはONがセットされる。
【0068】
また、繰り出し要求に応じて各スタッカA,1〜3及び各カセットF,Rから紙幣を繰り出す場合に、カウンタ部70e〜70jが紙幣の繰り出しを所定時間検出できなければ、紙幣が詰まったものとみなして、エラーフラグにONがセットされる。
【0069】
ここでカセットF,Rのカウンタ枚数について説明する。
図7は、第2の実施の形態に係るATMが備えるカセットに収納されている紙幣のカウンタ枚数を説明するための図である。
【0070】
なお、図7では、カセットの動作、その動作に伴うカセットの紙幣の実際の有り高(実枚数)、カウント情報保持部21が保持するカセットのカウンタ枚数及びカセットに対するエラーフラグがそれぞれ示されている。また、図7中に記載の紙幣の枚数は一例である。
【0071】
カセットF,R(以下、カセット)は、既述の通り、様々な金種の紙幣が装填されている。このようなカセットをATM10に装着して各スタッカA,1〜3に紙幣を補充することができるものである。
【0072】
まず、100枚の紙幣が装填されたカセットをATM10に装着する(図7の番号1)。
この場合はカセット内には100枚の紙幣が収納されているが、ATM10はカセット内の紙幣の有り高を判断することができないためにカウント情報保持部21のカセットのカウンタ枚数は0枚である。したがって、カセットの実際の有り高(実枚数)と、カウント情報保持部21のカセットの有り高は異なっているためエラーフラグはONがセットされる。
【0073】
この状態においてカセットにスタッカから10枚を収納する(図7の番号2)。
この場合はカセット内には110枚の紙幣が収納され、カウント情報保持部21のカセットのカウンタ枚数は10枚がカウントされる。したがって、この場合もカセットの実際の有り高(実枚数)と、カウント情報保持部21のカセットの有り高は異なっているためエラーフラグはONがセットされたままである。
【0074】
さらに、カセットからスタッカに20枚を繰り出す(図7の番号3)。
この場合はカセット内には90枚の紙幣が収納され、カウント情報保持部21のカセットのカウンタ枚数は0枚がカウントされる。したがって、この場合もカセットの実際の有り高(実枚数)と、カウント情報保持部21のカセットの有り高は異なっているためエラーフラグはONがセットされたままである。
【0075】
再び、カセットからスタッカに90枚を繰り出す(図7の番号4)。
この場合はカセットに設けられている紙幣センサがカセット内の紙幣が全て繰り出されて有り高が0枚になったことを検知する。また、カウント情報保持部21のカセットのカウンタ枚数も0枚のままである。このため、検知されたカセットの実際の有り高と、カウント情報保持部21のカセットの有り高とが一致するため、エラーフラグはOFFがセットされる。
【0076】
続けて、カセットがスタッカから20枚を収納する(図7の番号5)。
カセットの実際の有り高(実枚数)と、カウント情報保持部21のカセットの有り高とがそれぞれ20枚となり一致することからエラーフラグはOFFのままである。
【0077】
次いで、カセットからスタッカに10枚を収納する。但し、その中で2枚が重なった多重繰り出しが発生している(図7の番号6)。
この場合はカセット内の紙幣は12枚繰り出されて、実際の有り高は8枚となる。一方、カウント情報保持部21のカセットのカウンタ枚数は10枚がカウントされる。このように多重繰り出しが検知されるためにエラーフラグにONがセットされる。
【0078】
最後に、カセットがスタッカに10枚を繰り出す(図7の番号7)。
紙幣センサにより0枚が検知されたカセットの実際の有り高(実枚数)と、カウント情報保持部21のカセットの有り高とが一致することからエラーフラグはOFFがセットされる。
【0079】
このようにカセットについては装着直後からカセットの実際の紙幣の有り高とカウント情報保持部21が保持する紙幣の有り高とが一致するまではエラーフラグにONがセットされることがわかる。
【0080】
ATM10の制御ユニット20の構成の説明に戻る。
ATM10の制御ユニット20は、上記の他、紙幣処理ユニット制御部23、状態情報設定部24、カウント情報管理部25、精査実行部26、更新部27及び表示ユニット制御部28をさらに有する。
【0081】
紙幣処理ユニット制御部23は、ATM10に対する利用者からの操作入力等に応じて紙幣処理ユニット70の動作を制御する。例えば、出金要求に応じて要求された出金額に基づいた紙幣の枚数を各スタッカA,1〜3から1枚ずつ繰り出して、紙幣入出金部70aから払い出す。各スタッカA,1〜3に紙幣を補填する場合にはカセットF,Rから繰り出された紙幣を鑑別部70bに搬送させる。紙幣は鑑別部70bで鑑別された金種に応じたスタッカA,1〜3に搬送されて、スタッカA,1〜3に紙幣が補填される。このような処理以外にでも紙幣処理ユニット制御部23は、通帳、カード等に対する取引履歴の記録等、紙幣処理ユニット70に対して取引処理を実行させる。また、紙幣処理ユニット制御部23は、紙幣処理ユニット70の鑑別部70bが紙幣の鑑別を行った鑑別情報、カウンタ部70e〜70jが紙幣をカウントしたカウント情報等が通知される。
【0082】
状態情報設定部24は、紙幣処理ユニット制御部23が紙幣処理ユニット70から通知された繰り出された紙幣の状態情報を取得し、当該状態情報に基づいて状態情報保持部22の各スタッカA,1〜3及び各カセットF,Rに対するエラーフラグを設定する。
【0083】
カウント情報管理部25は、紙幣処理ユニット制御部23が紙幣処理ユニット70から通知された入出した紙幣の枚数の情報を取得し、当該枚数の情報をカウント情報保持部21の各スタッカA,1〜3及び各カセットF,Rの紙幣の有り高に反映させる。
【0084】
精査実行部26は、状態情報保持部22が保持する状態情報を参照してエラーフラグがONにセットされているスタッカA,1〜3、カセットF,Rの精査実行要求を紙幣処理ユニット制御部23に通知する。また、精査実行部26は、精査実行要求に応じた紙幣処理ユニット70からの精査結果が紙幣処理ユニット制御部23から通知される。
【0085】
更新部27は、エラーフラグがONにセットされているスタッカA,1〜3、カセットF,Rの精査結果が精査実行部26から通知される。更新部27は通知された精査結果に基づいてカウント情報保持部21が保持するカウント情報を更新する。
【0086】
表示ユニット制御部28は、表示ユニット30に情報を表示させる。例えば、カウント情報保持部21のカウント情報を表示ユニット30に表示して、カウント情報の更新前後を、ATM10を管理するオペレータに視認させて案内することができる。
【0087】
次に、このようなATM10で実行される繰り出し処理について説明する。
まず、スタッカA,1〜3における繰り出し処理について説明する。
図8は、第2の実施の形態に係るATMのスタッカにおける繰り出し処理を実行するための処理手順を示すフローチャートである。
【0088】
なお、図8ではATM10が引き出し要求に応じた金額を出金する場合を例に挙げて説明する。
ATM10に対して利用者から引き出し要求が受け付けられ、引き出し金額が入力されると、ATM10では以下の処理が実行される。
【0089】
[ステップS11] 紙幣処理ユニット制御部23は、引き出し要求金額に基づいた金種に対応するスタッカを選択する。
[ステップS12] 紙幣処理ユニット制御部23は、ステップS11で選択したスタッカに対して紙幣の繰り出し要求を通知する。
【0090】
[ステップS13] 紙幣処理ユニット制御部23は、時間の計測を開始する。
[ステップS14,S15] 紙幣処理ユニット制御部23は、時間計測の間に、紙幣処理ユニット70から正常に繰り出された旨の繰り出し結果を受信するとステップS17に進められ、繰り出し結果を受信せずに計測時間がタイムアウトになるとステップS16に進められる。
【0091】
なお、タイムアウトになると、紙幣が繰り出せなかったためステップS11で選択したスタッカは紙幣等の詰まりが発生しているものとみなされる。
[ステップS16] 状態情報設定部24は、状態情報保持部22のステップS11で選択したスタッカのエラーフラグにONをセットする。
【0092】
スタッカに紙幣等の詰まりが発生していることから繰り出し処理は終了される。
[ステップS17] 紙幣処理ユニット制御部23は、紙幣処理ユニット70からステップS11で選択したスタッカに設置されているカウンタ部が検知した紙幣の繰り出しの検知信号を受信する。
【0093】
カウント情報管理部25は、紙幣処理ユニット制御部23からカウンタ部から繰り出された紙幣の検知信号を受信すると、カウント情報保持部21のステップS11で選択したスタッカのカウント枚数に反映する。
【0094】
[ステップS18] 紙幣処理ユニット制御部23は、鑑別部70bが鑑別したステップS17で繰り出された紙幣の鑑別結果を紙幣処理ユニット70から受信する。
[ステップS19] 紙幣処理ユニット制御部23は、ステップS18で受信した鑑別結果を判別する。
【0095】
当該鑑別結果が紙幣の多重繰り出し状態、鑑別不良状態等のエラーである場合にはステップS11aに進められ、エラーではない場合にはステップS11bに進められる。
[ステップS11a] 状態情報設定部24は、ステップS18で取得した鑑別結果に基づいて状態情報保持部22のステップS11で選択したスタッカのエラーフラグにONをセットする。
【0096】
なお、この場合、紙幣処理ユニット70では鑑別結果がエラーであった紙幣はリジェクト部70kに搬送される。
次の処理は、ステップS12に進められて、紙幣処理ユニット制御部23は、ステップS11で選択したスタッカに対して再び紙幣の繰り出し要求を通知する。
【0097】
[ステップS11b] 紙幣処理ユニット制御部23は、引き出し要求金額に基づきステップS11で選択したスタッカにおいて残りの紙幣を繰り出すべきか否かを判定する。
判定の結果、ステップS11で選択したスタッカからさらに紙幣を繰り出す必要がある場合にはステップS12に進められ、ステップS11で選択したスタッカから紙幣を繰り出す必要が無い場合にはステップS11cに進められる。
【0098】
[ステップS11c] 紙幣処理ユニット制御部23は、引き出し要求金額に基づきステップS11で選択したスタッカ以外に選択すべき残りのスタッカの有無を判定する。
判定の結果、ステップS11で選択したスタッカ以外に残りのスタッカを選択すべきである場合にはステップS11に進められ、ステップS11で選択したスタッカ以外にスタッカを選択する必要が無い場合には繰り出し処理を終了する。
【0099】
次いで、カセットにおける繰り出し処理について説明する。
図9及び図10は、第2の実施の形態に係るATMのカセットにおける繰り出し処理を実行するための処理手順を示すフローチャートである。
【0100】
なお、図9及び図10では、図8と同じ処理には図8と同じステップ番号を付しており、それらの説明は省略する。
ATM10に対して紙幣が充填されているカセットをオペレータが装着すると、図7の説明の通り、カセットに対してエラーフラグにONがセットされる。ATM10に対して、カセットからスタッカへ紙幣の補填要求をオペレータが行う。ATM10は補填要求が受け付けられ、各スタッカに対する補填枚数が入力されると以下の処理を実行する。
【0101】
[ステップS101] 紙幣処理ユニット制御部23は、補填要求に応じたカセットを選択する。
[ステップS102] 図9のステップS17後、紙幣処理ユニット制御部23は、紙幣処理ユニット70から紙幣センサによるカセットの有り高が0枚である旨の通知を受信すると、次の処理はステップS103に進められ、受信しない場合にはステップS18に進められる。
【0102】
[ステップS103] 紙幣処理ユニット制御部23は、カウント情報管理部25からカウント情報保持部21のステップS101で選択したカセットのカウント枚数の情報を受信する。
【0103】
次の処理は、当該カウント枚数が0枚である場合にはステップS104に進められ、0枚ではない場合にはステップS19に進められる。
[ステップS104] 紙幣処理ユニット制御部23は、ステップS101で選択したカセットのエラーフラグをリセット(OFF)する要求を状態情報設定部24に通知する。
【0104】
状態情報設定部24は状態情報保持部22の通知された要求に基づいてカセットのエラーフラグをOFFにセットする。次の処理は再びステップS12に進められる。
[ステップS105] 紙幣処理ユニット制御部23は、補填要求に基づきステップS101で選択したカセット以外に選択すべき残りのカセットの有無を判定する。
【0105】
判定の結果、ステップS101で選択したカセット以外に残りのカセットを選択すべきである場合にはステップS101に進められ、ステップS101で選択したカセット以外にカセットを選択する必要が無い場合には繰り出し処理を終了する。
【0106】
上記の図8〜図10のような繰り出し処理が実行されると状態情報保持部22及びカウント情報保持部21の情報が蓄積される。
次に、ATM10で実行される精査処理及びカウント情報の更新処理について説明する。
【0107】
図11は、第2の実施の形態に係るATMのカウント情報の更新処理を実行するための処理手順を示すフローチャートである。
ATM10に対してオペレータからカウント情報の更新要求が受け付けられると、以下の処理が実行される。
【0108】
[ステップS21] 精査実行部26は更新要求を受信すると状態情報保持部22から状態情報を取得する。
[ステップS22] 精査実行部26は取得した状態情報(図6(B)参照)からi=1(スタッカA)をセットする。
【0109】
なお、第2の実施の形態の場合には、i=1〜6はそれぞれスタッカA,1〜3及びカセットF,Rに対応させている。
[ステップS23] 精査実行部26は、セットされたiに対応するスタッカまたはカセットのエラーフラグにONがセットされているか否かを判定する。
【0110】
判定の結果、エラーフラグがONである場合にはステップS24に進められ、エラーフラグがONではなくOFFである場合にはステップS27に進められる。
[ステップS24] 精査実行部26は、セットされたiに対応するスタッカA,1〜3及びカセットF,Rの精査実行要求を紙幣処理ユニット制御部23に通知する。紙幣処理ユニット制御部23は紙幣処理ユニット70のセットされたiに対応するスタッカA,1〜3及びカセットF,Rの精査を実行させる。
【0111】
[ステップS25] 精査実行部26は紙幣処理ユニット制御部23から紙幣処理ユニット70におけるスタッカA,1〜3及びカセットF,Rの精査結果を受信する。
[ステップS26] 精査実行部26は精査結果を更新部27に通知する。更新部27は通知された精査結果に基づいてカウント情報保持部21のセットされたiに対応するスタッカA,1〜3及びカセットF,Rのカウント情報のカウント枚数を更新する。
【0112】
[ステップS27] 精査実行部26は、iに1を追加したi+1をセットする。
[ステップS28] 精査実行部26は、ステップS27でセットしたiが6以下であるか否かを判別する。
【0113】
判別の結果、iが6以下である場合にはステップS23に進められ、iが7以上である場合にはステップS29に進められる。
[ステップS29] 精査実行部26は、状態情報保持部22の状態情報のエラーフラグをリセットする。
【0114】
このようなフローチャートに沿って処理が実行されることによりATM10ではカウント情報が更新される。
次に、ATM10で実行される図8〜図11の処理の具体例を説明する。
【0115】
例えば、スタッカA,1〜3及びカセットF,Rには紙幣がそれぞれ30枚収納されており、ATM10から「1万二千円」を出金させる場合について説明する。
まず、繰り出し処理について説明する。
【0116】
紙幣処理ユニット制御部23は、引き出し要求金額(「1万二千円(万円券1枚、二千円券1枚)」)に基づいてスタッカAを選択して、スタッカAに対して紙幣の繰り出し要求を通知する(ステップS11,S12)。
【0117】
紙幣処理ユニット制御部23は、時間計測の間に、紙幣処理ユニット70から正常に繰り出された旨の繰り出し結果を受信する。そして、紙幣処理ユニット70からカウンタ部70eが万円券の紙幣の繰り出しの検知信号を受信する。カウント情報管理部25は、紙幣処理ユニット制御部23から検知信号を取得してカウント情報保持部21が保持するスタッカAのカウント枚数を30枚から1枚引かれた29枚に更新する(ステップS13,S14,S17)。
【0118】
さらに、紙幣処理ユニット制御部23は、スタッカAから繰り出された紙幣が真である旨の鑑別結果を受信する(ステップS18,S19)。
紙幣処理ユニット制御部23は、スタッカAからさらに繰り出すべき紙幣が無いために、二千円を繰り出すためにスタッカ2を選択する(ステップS11b,S11c,S11)。
【0119】
紙幣処理ユニット制御部23は、スタッカ2に対して紙幣の繰り出し要求を通知する(ステップS12)。
紙幣処理ユニット制御部23は、時間計測の間に、紙幣処理ユニット70から正常に繰り出された旨の繰り出し結果を受信する。そして、紙幣処理ユニット70からカウンタ部70eが二千円券の紙幣の繰り出しの検知信号を受信する。カウント情報管理部25は、紙幣処理ユニット制御部23から検知信号を取得してカウント情報保持部21が保持するスタッカ2のカウント枚数を30枚から1枚引かれた29枚に更新する(ステップS13,S14,S17)。
【0120】
ところが、紙幣処理ユニット制御部23は、スタッカ2から二千円券が2枚重なった状態で繰り出されているとする鑑別結果を受信する(ステップS18)。
状態情報設定部24は、当該鑑別結果に基づいて状態情報保持部22のスタッカ2のエラーフラグにONをセットする(ステップS19,S11a及び図6(B))。
【0121】
そして、紙幣処理ユニット制御部23は、再び、スタッカ2に対して紙幣の繰り出し要求を通知して、上記と同様に、カウント情報管理部25は、紙幣処理ユニット制御部23から検知信号を取得してカウント情報保持部21が保持するスタッカ2のカウント枚数を29枚から1枚引かれた28枚に更新して、正常に二千円券が出金される(ステップS12〜S14,S17〜S19,S11b,S11c)。
【0122】
次いで、ATM10においてカセットFから紙幣をスタッカ2に二千円券の紙幣を搬送させる場合について説明する。なお、紙幣が充填されているカセットF,RはATM10に対して装着した直後の状態であるものとする。つまり、カセットF,Rのエラーフラグは共にONである。
【0123】
紙幣処理ユニット制御部23は、まず、カセットFを選択して、カセットFに対して紙幣の繰り出し要求を通知する(ステップS101,S12)。
紙幣処理ユニット制御部23は、時間計測の間に、紙幣処理ユニット70から正常に二千円券の紙幣が繰り出された旨の繰り出し結果を受信する。そして、紙幣処理ユニット70からカウンタ部70iから紙幣の繰り出しの検知信号を受信する。カウント情報管理部25は、紙幣処理ユニット制御部23から検知信号を取得してカウント情報保持部21が保持するカセットFのカウント枚数を30枚から1枚引いた29枚に更新する(ステップS13,S14,S17)。
【0124】
紙幣処理ユニット制御部23は、紙幣センサ70i1から有り高が0枚である旨が通知されないために、カセットFから繰り出された二千円券の紙幣が2枚重なった状態である旨の鑑別結果を受信する(ステップS102,S18,S19)。
【0125】
状態情報設定部24は、当該鑑別結果に基づいて状態情報保持部22のカセットFのONのエラーフラグのセットを維持する(ステップS19,S11a及び図6(B))。
そして、紙幣処理ユニット制御部23は、再び、カセットFに対して二千円券の紙幣の繰り出し要求を通知して、カセットFの二千円券のカウント枚数を29枚から1枚引いた28枚に更新し、カセットFから繰り出された紙幣は鑑別された紙幣の金種に対応するスタッカに搬送される(ステップS12〜S14,S17,S102〜S19,S11b,S105)。
【0126】
なお、スタッカ2にはこのように二千円券の紙幣を1枚収納したために、カウント情報保持部21のスタッカ2のカウント枚数は29枚から30枚に更新される。
次いで、このようなATM10によるカウント情報の更新処理の具体例を説明する。
【0127】
例えば、ATM10の状態情報保持部22が保持する状態情報が図6(B)に示される場合について説明する。
精査実行部26は状態情報保持部22を参照して状態情報を取得して、スタッカAのエラーフラグにONがセットされていないことを判別する(ステップS21,S22,S23)。
【0128】
精査実行部26は、1に1を追加した2をiにセットして、i=2が6以下であることを判別する(ステップS27,S28)。
精査実行部26はi=2に対応するスタッカ1のエラーフラグにONがセットされていないことを判別する(ステップS23)。
【0129】
精査実行部26は、2に1を追加した3をiにセットして、i=3が6以下であることを判別する(ステップS27,S28)。
精査実行部26はi=3に対応するスタッカ2のエラーフラグにONがセットされていることを判別する(ステップS23)。
【0130】
精査実行部26は、スタッカ2の精査実行要求を紙幣処理ユニット制御部23に通知することにより、紙幣処理ユニット制御部23は紙幣処理ユニット70のスタッカ2の精査を実行させる(ステップS24)。
【0131】
精査実行部26は、紙幣処理ユニット制御部23から紙幣処理ユニット70におけるスタッカ2の精査結果(29枚=30枚(初期値)−2枚(2枚繰り出し)+1枚(カセットFから収納))を受信する。
【0132】
更新部27は、スタッカ2のカウント枚数の30枚(=30枚(初期値)−1枚(繰り出し)+1枚(カセットFから収納))を精査結果の29枚に更新する(ステップS25,S26)。
【0133】
精査実行部26は、3に1を追加した4をiにセットして、i=4が6以下であることを判別する(ステップS27,S28)。
精査実行部26はi=4に対応するスタッカ3のエラーフラグにONがセットされていないことを判別する(ステップS21,S22,S23)。
【0134】
精査実行部26は、4に1を追加した5をiにセットして、i=5が6以下であることを判別する(ステップS27,S28)。
精査実行部26はi=5に対応するカセットFのエラーフラグにONがセットされていることを判別する(ステップS21,S22,S23)。
【0135】
精査実行部26は、紙幣処理ユニット制御部23から紙幣処理ユニット70におけるカセットFの精査結果(27枚(=30枚(初期値)−2枚(2枚繰り出し)−1枚(繰り出し)))を受信する。
【0136】
更新部27は、カセットFのカウント枚数の0枚(=0枚(初期値)−2枚(繰り出し))を精査結果の27枚に更新する(ステップS25,S26)。
精査実行部26は、5に1を追加した6をiにセットして、i=6が6以下であることを判別する(ステップS27,S28)。
【0137】
精査実行部26はi=6に対応するカセットRのエラーフラグにONがセットされていることを判別する(ステップS21,S22,S23)。
精査実行部26は、紙幣処理ユニット制御部23から紙幣処理ユニット70におけるカセットRの精査結果(30枚(初期値))を受信する。
【0138】
更新部27は、カセットRのカウント枚数の0枚(=0枚(初期値)−0枚(繰り出し))を精査結果の30枚に更新する(ステップS25,S26)。
精査実行部26は、6に1を追加した7をiにセットして、i=7が6以下ではないことを判別する(ステップS27,S28)。
【0139】
精査実行部26は、状態情報保持部22の状態情報のエラーフラグをリセットして、全てOFFにする(ステップS29)。
以上の処理を実行することにより、カウント情報保持部21が保持するカウント情報が更新されて、スタッカA,1〜3、カセットF,Rに収納されている紙幣の有り高と、スタッカA,1〜3、カセットF,Rの紙幣の実際の有り高とが一致するようになる。
【0140】
このようなATM10では、複数のスタッカA,1〜3、カセットF,Rからそれぞれ入出した紙幣の枚数を計数すると共に、繰り出された紙幣の状態を鑑別して、スタッカA,1〜3、カセットF,Rごとに紙幣の状態を対応させるようにした。
【0141】
これにより、繰り出された紙幣の状態に多重繰り出し、鑑別不良等の異常があったスタッカA,1〜3、カセットF,Rのみの紙幣の有り高の精査を実行するようにした。そして、スタッカA,1〜3、カセットF,Rから繰り出された紙幣の枚数及びスタッカA,1〜3、カセットF,Rの紙幣の有り高を更新するようにした。
【0142】
したがって、全てのスタッカA,1〜3、カセットF,Rの紙幣の枚数の精査を実行する必要が無くなるため、ATM10の停止時間が短縮され、紙幣処理ユニット70の精査時の紙幣詰まり等の故障の発生率の向上、また、紙幣処理ユニット70の劣化の進行がそれぞれ抑制される。この結果、ATM10の寿命の短縮が抑制する。
【0143】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、自動取引装置1及びATM10が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記憶装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等がある。磁気記憶装置には、ハードディスク装置、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ等がある。光ディスクには、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD(Compact Disc)−ROM/RW(Re-Writable)等がある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disk)等がある。
【0144】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0145】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、ネットワークを介して接続されたサーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0146】
また、上記の処理機能の少なくとも一部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)等の電子回路で実現することもできる。
【符号の説明】
【0147】
1 自動取引装置
2 計数情報保持手段
3 状態情報保持手段
4 精査実行手段
5 更新手段
6 紙幣処理制御手段
7 紙幣処理装置
7a 収納手段
7b 精査手段
7c 計数手段
7d 鑑別手段
10 ATM
20 制御ユニット
20a CPU
20b RAM
20c HDD
20d グラフィックインタフェース
20e ホスト通信制御部
20f 入出力インタフェース
20g バス
21 カウント情報保持部
22 状態情報保持部
23 紙幣処理ユニット制御部
24 状態情報設定部
25 カウント情報管理部
26 精査実行部
27 更新部
28 表示ユニット制御部
30 表示ユニット
30a 表示部
30b 入力検知部
40 カード処理ユニット
40a カード挿入/排出口
50 通帳処理ユニット
50a 通帳挿入/排出口
60 硬貨処理ユニット
60a 硬貨入出金部
70 紙幣処理ユニット
70a 紙幣入出金部
70b 鑑別部
70c 一時保留部
70d 取り忘れリジェクト部
70e,70f,70g,70h,70i,70j カウンタ部
70k リジェクト部
70i1,70j1 紙幣センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を収納する収納手段に、前記収納手段から繰り出された前記紙幣の状態が対応付けられた状態情報を保持する状態情報保持手段と、
前記状態情報保持手段を参照して前記紙幣の状態に応じて前記収納手段に収納されている前記紙幣の枚数を精査手段に精査させる精査実行手段と、
を有することを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記収納手段に対する前記紙幣の入出に応じて増減される前記収納手段に収納されている前記紙幣の枚数の情報を保持する計数情報保持手段と、
前記精査実行手段が精査させた前記収納手段に収納されている前記紙幣の枚数に基づき前記計数情報保持手段が保持する前記紙幣の枚数を更新する更新手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記状態情報保持手段が保持する前記状態情報は、前記収納手段に前記収納手段から繰り出された前記紙幣の異常状態の有無が対応付けられている、
ことを特徴とする請求項2記載の自動取引装置。
【請求項4】
前記更新手段は、前記状態情報保持手段を参照して異常状態がある前記紙幣が繰り出された前記収納手段に収納されている前記紙幣の枚数に基づいて更新する、
ことを特徴とする請求項3記載の自動取引装置。
【請求項5】
前記収納手段から繰り出された前記紙幣の状態を鑑別する鑑別手段、
をさらに有することを特徴とする請求項3記載の自動取引装置。
【請求項6】
前記状態情報保持手段の前記紙幣の異常状態は、前記鑑別手段で鑑別された前記紙幣が重なって繰り出されている状態である、
ことを特徴とする請求項5記載の自動取引装置。
【請求項7】
前記状態情報保持手段の前記紙幣の異常状態は、前記鑑別手段で鑑別された前記紙幣が鑑別不良の状態である、
ことを特徴とする請求項5記載の自動取引装置。
【請求項8】
紙幣を収納する収納手段に、前記収納手段から繰り出された前記紙幣の状態が対応付けられた状態情報を参照して、状態に応じて前記収納手段に収納されている前記紙幣の枚数を精査手段に精査させる、
ことを特徴とする自動取引装置の精査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate