説明

自動取引装置

【課題】暗証番号の確認に加えて別の方法で顧客認証を行う際に必要な機器を備えるためのコストを低減するための手段を提供する。
【解決手段】顧客の操作によって取引を行う自動取引装置1において、体重センサ10と体脂肪計11とを有し、顧客認証を行う際、体重センサ10と体脂肪計11とで顧客の体重データと体脂肪率を取得して、ホストコンピュータ15から過去体重データと過去体脂肪率、体重許容範囲値、体脂肪許容範囲値を受信し、体重データと過去体重データとの差を過去体重データで割った値が体重許容範囲値外である、あるいは体脂肪率と過去体脂肪率との差が体脂肪許容範囲値外の場合に、顧客との取引を中止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体重や体脂肪率等の身体指標を測定する測定機器を用いた顧客認証を行う自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動取引装置は、指紋読取装置で顧客の指から指紋情報を取得し、顧客のICカードに予め記憶されている登録指紋情報を読み取り、上記の指紋情報と登録指紋情報とを比較することで顧客本人の指紋であることを確認し、次に顧客に暗証番号を入力させてその入力された暗証番号をホストコンピュータに送信し、ホストコンピュータでの暗証番号の照合結果を受け取ることによって顧客認証を行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
近年の顧客認証においては、第3者の覗き込み等による暗証番号が知られてしまうという問題があるため、顧客認証は上記のように暗証番号の確認に加えて指紋情報等の確認を合わせて行うようにしている。
【特許文献1】特開2002−133491号公報(段落「0014」−段落「0016」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、暗証番号の確認以外での顧客の確認のために指紋情報の確認を行う場合には、自動取引装置に指紋情報を取得するための指紋読取装置を設け、顧客に対して登録指紋情報を記憶したICカードを配布しなくてはならなく、このような顧客認証を実施するために必要なコストが大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、顧客の操作によって取引を行う自動取引装置において、顧客固有の身体上の数値を測定する測定機器を有し、顧客認証を行う際、前記測定機器によって数値を取得して、上位装置から前回の取引で測定された数値と許容範囲値を受信し、取得した数値と受信した数値との差が前記許容範囲値外の場合に、顧客との取引を中止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようにして、本発明は、顧客から測定した体重データと体脂肪率等の顧客固有の身体上の数値と上位装置から受信した前回の取引で顧客から取得した数値との差が許容範囲値外であるか否かに応じて顧客を認証する顧客認証を行うため、顧客に対しては新たにICカードを発行する必要がなく、自動取引装置側に測定機器を設けるだけですむので、暗証番号確認以外の顧客確認に必要な機器を備えるためのコストを低減することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明による自動取引装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は実施例1の自動取引装置を示す説明図である。
図1において、1は銀行や等の金融機関の営業店やコンビニエンスストア等の店舗に設置される自動取引装置であり、顧客との間で現金の入出金等の取引を自動で行う。
2は自動取引装置1の制御部であり、記憶部3に格納される制御プログラムに従って自動取引装置1の各部を制御して各種の取引を遂行する機能を有しており、その遂行に当たっては通信部4によって専用回線等の通信回線13を介してホストコンピュータ(上位装置)15と通信を行い、必要な情報の授受を行うものとなっている。
【0010】
記憶部3は、自動取引装置1の制御プログラムを格納する他、制御部2による処理結果等を記憶する。
5は表示操作部であり、自動取引装置1正面の接客面に露出させて設けられており、表示面を上に向けたCRTディスプレイまたは液晶ディスプレイ等の表示部と、表示部上に配置したタッチパネル等の入力部により構成され、各種取引における顧客の操作を誘導するメッセージを配した画面やそのための入力キーを表示し、その入力キーをタッチパネル上から指で押下することにより、入力キーに定義された情報を入力できるものとなっており、入力された情報の表示等も行うようになっている。
【0011】
6はカードリードライト部であり、顧客の磁気カード(取引カード)の磁気ストライプに記録されている口座番号、支店番号、口座科目等のカード情報の読取及び書込みを行う機能を有する他、顧客との取引結果を明細票に印刷する機能を有し、そのカード挿入返却口および明細票印刷口は前記接客面に設けられている。
また、自動取引装置1は上記各部の他に、取引に伴う現金の入出金処理を行う現金入出金部や顧客の通帳を受け入れてその磁気ストライプに対して磁気データの読取り及び書込み処理を行う通帳処理部等を備える。
【0012】
10は体重センサ(測定機器)であり、顧客が自動取引装置1を利用するときの立ち位置に配置されて自動取引装置1とデータ通信可能に接続し、自動取引装置1を利用する顧客の体重データ(身体上の数値)を測定する機能を有する。
この体重センサ10は、例えば顧客が乗る位置が分かるように足跡型の目印が描かれて、顧客から視認できるようになっている。また体重センサ10を設置する際には、顧客がつまずかないように床面と同じ高さに設置するようにするとよい。
【0013】
11は体脂肪計(測定機器)であり、自動取引装置1正面の接客面に設けられており、顧客の両手が置かれることによって顧客の体脂肪率(身体上の数値)を測定する機能を有する。
体重データや体脂肪率を用いた顧客認証を利用する顧客は、口座開設時に窓口で事前登録を行うものとし、そのときに窓口で顧客の体重データと体脂肪率を測定し、さらに体重データに対する体重許容範囲値と、体脂肪率に対する体脂肪許容範囲値を設定しておく。
【0014】
このときに設定された体重許容範囲値と体脂肪許容範囲値は後述するデータベース16の顧客口座情報に記憶され、測定された体重データと体脂肪率は顧客口座情報に関連づけられる顧客状態履歴情報に記憶される。
15はホストコンピュータであり、金融機関のセンタに設置されて自動取引装置1と通信回線13を介して接続され、自動取引装置1との間で必要な情報の授受を行うものとなっている。
【0015】
また、ホストコンピュータ15は口座を開設している顧客の氏名、口座番号、登録暗証番号および口座残高、体重許容範囲値、体脂肪許容範囲値等を顧客口座情報として記憶したデータベース16を有している。
このデータベース16は、顧客が自動取引装置1を利用したときに体重センサ10および体脂肪計11によって測定された体重データおよび体脂肪率を顧客状態履歴情報として記憶される。
【0016】
顧客状態履歴情報は、過去1年分の体重データと体脂肪率を蓄積するものとし、上記の顧客口座情報に関連づけられて記憶されるものである。
なお、上記自動取引装置1の記憶部3には体重センサ10で顧客から測定した体重データと前回の取引で測定された体重データを比較すると共に、体脂肪計11で顧客から測定した体脂肪率と前回の取引で測定された体脂肪率とを比較し、それぞれの結果から顧客を認証するための制御プログラムを格納している。
【0017】
本実施例では、体重許容範囲値は基準となる体重データの前後10パーセントの値の範囲内とし、体脂肪許容範囲値は基準となる体脂肪率に5パーセントを加えた値および差し引いた値の範囲内として設定する。
上述した構成の作用について、図2に示す実施例1の自動取引装置の動作を示すフローチャートを用い、Sで示すステップに従って説明する。
【0018】
S1、自動取引装置1の制御部2は、表示操作部5に出金取引や入金取引等の取引選択ボタンを表示した取引選択画面を表示して待機する。
S2、顧客が取引選択画面から出金取引の選択ボタンを押下すると、制御部2はその押下を認識して、表示操作部5に取引カードの挿入を促す文言やイラスト等を配した画面を表示する。顧客はこれに従って取引カードをカードリードライト部6のカード挿入返却口に挿入する。
【0019】
S3、カードリードライト部6が挿入された取引カードからカード情報を読み取ると制御部2は、前記カード情報を通信部4によって通信回線13を介してホストコンピュータ15に送信する。
S4、制御部2は、カード情報をホストコンピュータ15に送信している間に、表示操作部5に体重データと体脂肪率の測定を行う旨の案内と、先ず体重センサ10上に立つことを促す画面を表示する。
【0020】
そして体重センサ10によってその上に立つ顧客の体重データを測定し、次に表示操作部5に顧客の両手を体脂肪計11に置くことを促す画面を表示し、体脂肪計11によって顧客の体脂肪率を測定して、測定した体重データおよび体脂肪率を記憶部3に記憶する。
一方、ホストコンピュータ15は、自動取引装置1から受信したカード情報をもとにデータベース16に記憶している顧客口座情報の登録暗証番号と体重許容値、体脂肪許容値を読み出し、さらに顧客口座情報に関連づけられている顧客状態履歴情報から前回の取引での体重データ(過去体重データ)および体脂肪率(過去体脂肪率)を読み出す。
【0021】
ホストコンピュータ15は、読み出した登録暗証番号と体重許容値、体脂肪許容値、過去体重データ、過去体脂肪率を自動取引装置1に送信する。
S5、制御部2は、ホストコンピュータ15から受信した登録暗証番号と体重許容値、体脂肪許容値、過去体重データ、過去体脂肪率を記憶部3に記憶しておき、上記ステップS4で体重データと体脂肪率の取得が完了していれば、表示操作部5に顧客の暗証番号の入力を促すメッセージや暗証番号の入力欄、テンキー等を配した暗証番号入力画面を表示する。
【0022】
顧客は、暗証番号入力画面に従って暗証番号を入力する。
S6、制御部2は、記憶部3に記憶されている登録暗証番号を読み出し、顧客によって入力された暗証番号と読み出した登録暗証番号とを比較することで、両暗証番号の一致を確認する。
S7、制御部2は、記憶部3に記憶している体重データと体脂肪率、過去体重データ、過去体脂肪率、体重許容値、体脂肪許容値を読み出し、体重データと過去体重データとの差(体重変化値)、また体脂肪率と過去体脂肪率(体脂肪変化値)との差をそれぞれ算出する。
【0023】
そして、制御部2は体重変化値を過去体重データで割ることでその割合が10パーセント以内である、つまり体重許容範囲値以内であることを確認し、また体脂肪率変化値が5パーセント以内である、つまり体脂肪許容範囲値以内であることを確認する。
なお、体重変化値の過去体重データに対する割合が体重許容範囲値外、あるいは体脂肪変化値が体脂肪許容範囲値外である場合、制御部2はカードリードライト部6のカード挿入返却口から挿入されている顧客の取引カードを返却して顧客との出金取引を中止して終了する。
【0024】
S8、制御部2は、顧客を確認した旨の通知を通信部4によって通信回線13を介してホストコンピュータ15に送信し、出金取引を通常通りに実行する。
このとき、ホストコンピュータ15はデータベース16に記憶している顧客口座情報に関連づけている顧客状態履歴情報から前々回の取引で測定された体重データと体脂肪率を読み出し、それらを自動取引装置1に送信する。
【0025】
そして制御部2は、受信した前々回の体重データと体脂肪率とを記憶部3に記憶する。
S9、制御部2は、記憶部3に記憶されている前回および前々回の体重データと過去体脂肪率、今回の取引で取得した体重データと体脂肪率を読み出し、カードリードライト部6によって出金取引の結果と読み出した体重データ、体脂肪率、前回および前々回の体重データおよび体脂肪率等を印刷した明細票を発行し、またカード挿入返却口から顧客の取引カードを返却して表示操作部5に出金取引が終了した旨の画面を表示して出金取引を終了する。
【0026】
なお、制御部2は出金取引が終了して顧客に取引カードを返却する前に、記憶部3に記憶している今回の取引で取得した体重データと体脂肪率とを読み出してカードリードライト部6からカード情報を読み出し、そのカード情報と読み出した体重データ、体脂肪率とを付した更新情報通知を通信部4によって通信回線13を介してホストコンピュータ15に送信する。
【0027】
ホストコンピュータ15は、受診した更新情報通知のカード情報をもとにデータベース16の顧客口座情報を読み出し、受信した体重データと体脂肪率を顧客口座情報の顧客状態履歴情報に記憶される。
以上説明したように、本実施例では、顧客認証を行うときに暗証番号確認に加えて、顧客から直接測定した体重データおよび体脂肪率と、過去体重データおよび過去体脂肪率との差が体重許容範囲値および体脂肪許容範囲値以内であるか否かによって顧客を認証する顧客認証を行うため、自動取引装置側に体重センサと体脂肪計とを設けるだけで顧客に対しては特に何も配布しないために、新たな設備を導入するために必要なコストを低減することができる。
【0028】
また明細票を発行するときに、今回の取引で顧客から測定した体重データおよび体脂肪率と、前回さらに前々回の取引での体重データおよび体脂肪率を健康状態情報として並べて印刷するので、顧客にとっては自らの健康状態を意識するきっかけになるという効果得られる。
なお、上記実施例1においては顧客の体重データと体脂肪率とを顧客認証に用いるものとして説明したが、身体指標としての心拍数や血圧値を用いるようにしてもよく、顧客認証を行う際に体重データあるいは体脂肪率の代わりに心拍数や血圧値を用いてもよく、また体重データと体脂肪率、心拍数、血圧値の4種を使って顧客認証を行うようにしてもよい。
【0029】
さらに、顧客認証に体重データや体脂肪率を用いるか否かを顧客の希望に合わせて選択可能にしてもよく、その場合は顧客本人が窓口で申告や申込等を行うことによって決定できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1の自動取引装置を示す説明図
【図2】実施例1の自動取引装置の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0031】
1 自動取引装置
2 制御部
3 記憶部
4 通信部
5 表示操作部
6 カードリードライト部
10 体重センサ
11 体脂肪計
13 通信回線
15 ホストコンピュータ
16 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の操作によって取引を行う自動取引装置において、
顧客固有の身体上の数値を測定する測定機器を有し、
顧客認証を行う際、前記測定機器によって数値を取得して、上位装置から前回の取引で測定された数値と許容範囲値を受信し、取得した数値と受信した数値との差が前記許容範囲値外の場合に、顧客との取引を中止することを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
請求項1において、
取引結果の明細票を印刷して発行する印刷部と、
上位装置から受信した前回の数値および前記測定機器で取得した数値を記憶する記憶手段とを有し、
取引結果を印刷するときに、前記記憶手段に記憶している前記数値と前回の取引での数値とを前記印刷部によって明細票に印刷して顧客に発行することを特徴とする自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−77576(P2008−77576A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259051(P2006−259051)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(591051645)沖ソフトウェア株式会社 (173)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】