説明

自動排尿便処理装置

【課題】漏洩に強く、簡単に装着することができ、装着したときのフィット感を向上し、苦痛無く使用でき、全体構造を簡略化することができる人体仰臥用便器を備える自動排尿便処理装置を提供する。
【解決手段】人体仰臥用便器Aは、寝具用ベッド11に形成した装着孔12とU字状切欠空間42を有する尻載せパッド41を載置した支持枠体31と、尻載せパッドのU字状切欠空間位置に遊嵌した略L字形状の排尿便処理体51とよりなり、排尿便処理体は、内部を舟型とし、底部に設けたノズルからの排水により排尿便を外部へ排出するように構成した横部材52と、尻部や局部を洗浄した後に送風により乾燥を行うノズルを前面に設けた縦部材53とより構成し、排尿便処理体の横部材の終端は、排出パイプを介して貯留タンクと連通連結し、横部材及び縦部材に設けた各種ノズルは、送水や送風の制御を行うべく構成したノズル操作部を介して洗浄水供給部を連通連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝たきりの患者や老人等が寝たままで他人の介助無しに排尿便を処理できる自動排尿便処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寝たきりの患者や老人等が寝たままで他人の介助無しに排尿便をしてその処理をも行えるようにするオムツや装置は種々考案されている。例えば、特許文献1には側面視略L字状の排尿便処理体に大便検知センサーと共に各種ノズルを備えた技術が開示されている。
【0003】
この技術は、排尿便する場合は、まず患者等が排尿便処理体の立ち上がり部を人体股間で挟圧しながら腰臀部を排尿便処理体上に載置するものであり、用便後は近接センサーから成る大便検知センサーで大便を感知して自動的に各種ノズルから洗浄水を噴出して局所を洗浄し、また排尿便処理体内も洗浄するものであり、大便は汚物吸入ホースから外部に排出し、このように自動的に寝たきりの患者の排便処理が行えるようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2に記載の装置は、略L字形状の前後方向に長い箱型構造のオムツ状ケーシングと、排泄物を検知する複数のセンサーと、排泄物に洗浄水を射出して所定の洗浄を行う複数のノズルと、各種ノズルを取付けるオムツフレームとを備えた自動排便処理装置であり、前記オムツ状ケーシングに連設された複数のノズルは、肛門付近を洗浄する肛門用ノズル、局部を洗浄するビデ用ノズル、お尻付近を洗浄する尻用ノズル及び排尿便を粉砕し、外部へ押し流す大便用ノズルとよりなるものであり、さらに各ノズルには、尻部や局部の乾燥を兼用して行う機能を有していた。上記各センサーには、排泄された大便を検知する大便検知センサーや、排泄された小便を検知する小便検知センサーとより構成していた。
【特許文献1】特開平8−322868号公報
【特許文献2】特願2006−209168号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した自動排便処理装置には、以下のような課題があった。第1に自動排便処理装置では、オムツ状ケーシングを寝具ベッドに直接装着する構造のため、寝具ベッドとオムツ状ケーシングとの間に洗浄水や尿便等の漏洩が生じると寝具ベッド裏面に漏水が広がり寝具ベッドを濡らしてしまう虞があった。第2に患者にとってオムツ状ケーシングを股間部に装着するのが非常に煩わしい構造であった。第3にオムツ状ケーシングを股間部に装着したときに十分にフィットすることができなかった。第4に仰臥状態で股間部にオムツ状ケーシングを装着すると、オムツ状ケーシング外の尻部が十分に安定しないため、尻部及び股間部に苦痛が生じていた。第5にオムツフレームを別途設けており、オムツ状ケーシングの構造が複雑になっていた。
【0006】
そこで、本願発明は、漏洩に強く、簡単に装着することができ、装着したときのフィット感を向上し、苦痛無く使用することができ、全体構造を簡略化することができる人体仰臥用便器を備える自動排尿便処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、人体仰臥用便器は、寝具用ベッドの略中央に略矩形状に形成した装着孔と装着孔に嵌着し中央にU字状切欠空間を有する尻載せパッドを上面に載置した支持枠体と、尻載せパッドのU字状切欠空間位置に遊嵌した略L字形状の排尿便処理体とよりなり、排尿便処理体は、内部を舟型とし、底部に設けたノズルからの排水により排尿便を外部へ排出するように構成した横部材と、尻部や局部を洗浄した後に送風により乾燥を行うノズルを前面に設けた縦部材とより構成し、しかも、排尿便処理体の横部材の終端は、排出パイプを介して貯留タンクと連通連結し、横部材及び縦部材に設けた各種ノズルは、送水や送風の制御を行うべく構成したノズル操作部を介して洗浄水供給部を連通連結したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の自動排尿便処理装置において、尻載せパッドの略U字状中央のU字状切欠空間には、支持枠体の中央に設けたガイド壁が嵌着されるように構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の自動排尿便処理装置において、支持枠体のガイド壁により形成されるガイド通路には、排尿便処理体の横部材を遊嵌させたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動排尿便処理装置において、排尿便処理体は、尻載せパッドのU字状切欠空間に嵌着する略長手楕円形状とした支持ケースと支持ケース中に嵌入した略L字形状の処理部本体とより構成し、処理部本体は、内部を舟型に形成した排尿便受け部と、その下手側に立設した洗浄ノズル保持体とにより略L字形状に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、人体仰臥用便器は、寝具ベッドの装着孔に支持ケースを装着し、支持ケース上に尻載せパッドを載置し、次に、患者を寝具ベッドに仰臥させて、尻載せパッドのU字状切欠空間位置に略L字形状の排尿便処理体を遊嵌すると共に、患者の股間部に排尿便処理体を装着することにより容易に着脱可能な構造となっており、患者が自力で排尿便処理体を装着できない状態でも、上記手順を踏むことで1人の介助者で容易に患者に排尿便処理体を装着することができる効果がある。患者から排尿便処理体を脱着する場合には、排尿便処理体の外にはみ出した尻部が尻載せパッドに当接しており、尻載せパッドで患者の尻部の重みを支えているため、排尿便処理体を患者から容易に引き離すことが可能である。排尿便処理体を患者の股間部で挟持して装着したとき、排尿便処理体の外にはみ出した尻部を尻載せパッドで支えて尻部付近の重心の安定を図ると共に、患者の股間部を排尿便処理体に密着することで患者にフィット感を与えることができる。さらに、寝たきりの患者に長期間使用しても尻部の床ずれの発生を防ぐことが可能となる効果がある。排尿便処理体より洗浄水が漏水した場合には、排尿便処理体の下部の支持枠体内に漏水が一旦貯留され、寝具ベッドの裏面を直接浸水させることがなくなる効果がある。排尿便処理体は、内部を舟型とし、底部に設けたノズルからの排水により排尿便を外部へ排出するように構成した横部材と、尻部や局部を洗浄した後に送風により乾燥を行うノズルを前面に設けた縦部材とより構成するので、上記排尿便処理体では、従来の各ノズルが取付けられるオムツフレームを用いることなく、各ノズルを横部材及び縦部材に直接取付ける単純な構造のため、短時間で組立て分解作業を行うことができる。しかも、排尿便処理体の横部材の終端は、排出パイプを介して貯留タンクと連通連結し、横部材及び縦部材に設けた各種ノズルは、送水や送風の制御を行うべく構成したノズル操作部を介して洗浄水供給部を連通連結したので、仰臥状態の患者の排尿便の処理及び患者の局部や尻部の洗浄乾燥処理をノズル操作部で制御しつつ自動で行う効果がある。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、尻載せパッドの略U字状中央のU字状切欠空間には、支持枠体の中央に設けたガイド壁が嵌着されるように構成したので、尻載せパッドのU字状切欠空間がガイド通路と一体となる効果がある。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、支持枠体のガイド壁により形成されるガイド通路には、排尿便処理体の横部材を遊嵌させたので、支持枠体のガイド通路が排尿便処理体の横部材と一体となる効果がある。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、排尿便処理体は、尻載せパッドのU字状切欠空間に嵌着する略長手楕円形状とした支持ケースと支持ケース中に嵌入した略L字形状の処理部本体とより構成するので、介助者が仰臥した患者に人体仰臥用便器を使用する場合において、支持ケースに尻載せパッドを載置し、介助者が患者の尻部を尻載せパッド上に載せ、その後、排尿便処理体を尻載せパッドのU字状切欠空間に嵌着すると共に患者の股間部や尻部に当接できる効果を奏す。また、処理部本体は、内部を舟型に形成した排尿便受け部と、その下手側に立設した洗浄ノズル保持体とにより略L字形状に一体的に構成したので、患者の尻部及び股間部から荷重が排尿便受け部や洗浄ノズル保持体に印加されても形状変形を起こすことなく長期に渡り使用することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0016】
図1に示すように、Aは、人体仰臥用便器を示すものであり、患者が仰臥した股間に本発明の人体仰臥用便器Aを挟んで排尿・排便を行い、人体仰臥用便器Aから自動的に尿便を収納タンクに送り、患者の尻部、局部等を洗浄し、その後、送風により乾燥も行うように構成したものである。
【0017】
図2に示すように、人体仰臥用便器Aは、患者が仰臥できるだけの面積を有したウレタン製の寝具ベッド11の中央に装着孔12を形成し、装着孔12の一側は、寝具ベッド11に形成したパイプ通路13に連通している。
【0018】
図2及び図4に示すように、装着孔12は、略矩形状に形成し、該装着孔12には、中央に装着孔12に対応した孔22を有したおしめ21を敷き、その孔22と装着孔12とを対応させて、おしめ21の下手側に延設した股間覆い部23と上手側に延設した折り返し部24とが装着孔12の外周にはみ出している状態とする。
【0019】
また、装着孔12には、以下に述べる略矩形状の支持枠体31を嵌着し、支持枠体31にはウレタン製の略U字型の尻載せパッド41を載置し、尻載せパッド41の中央のU字状切欠空間42には、略L字形状の排尿便処理体51の横部材52を遊嵌し、略L字形状の排尿便処理体51の縦部材53が尻載せパッド41上面より上方に突出した状態とする。
【0020】
患者は、寝具ベッド11に仰臥し尻部を尻載せパッド41上に載置し、図9に示すように、排尿便処理体51の略L字状の縦部材53を股間に挟んで略L字状の横部材52の舟型内部に排尿、排便を行い、横部材52の頭部に設けた射水ノズル105からの排水により尿便を排尿便処理体51外に排出し、排尿便処理体51の縦部材53に設けた洗浄ノズル203、ビデノズル202から洗浄水により尻部や局部を洗浄し、また、排尿便処理体51の横部材52に設けた尻ノズル104から洗浄水により尻部を洗浄し、その後、乾燥ノズル204,送気ノズル205からの送風により尻部や局部を乾燥するものである。
【0021】
(i)装着孔12の周辺に敷設するおしめ21について説明する。
【0022】
図2及び図4に示すように、おしめ21は、中央に装着孔12に対応した孔22を形成し、その孔22の下手側には、股間を覆うための股間覆い部23を延設し、同孔22の上手側には、左右に張出した折り返し部24を延設した形状としている。
【0023】
かかるおしめ21は、寝具ベッド11の装着孔12の周辺を囲む状態で拡げて載置される。なお、おしめ21の股間覆い部23中央には、切断線25が形成されジッパーにより合体離反自在に構成され、同ジッパーの他端は、股間覆い部23の中途で終止している。従って、股間覆い部23が切断線25を中心に左右に拡開し、後述する排尿便処理体51の装着時に排尿便処理体51がおしめ21と干渉せずに寝具ベッド11の装着孔12に嵌着した後述する略U字状の尻載せパッド41のU字状切欠空間42を容易に通過できるように構成している。
【0024】
ここで、おしめ21の患者への装着手順について説明する。
【0025】
図2ないし図4に示すように、寝具ベッド11の装着孔12には、中央に装着孔12に対応した孔22を有したおしめ21を敷き、その孔22と装着孔12とを対応させて、おしめ21の下手側に延設した股間覆い部23と上手側に延設した折り返し部24とが装着孔12の外周にはみ出している状態とする。
【0026】
次に、おしめ21の孔22に支持枠体31を装着し、支持枠体31に尻載せパッド41を載置し、ここで介助者が患者の尻部を尻載せパッド41上に載せ、仰向けの患者を寝具ベッドに仰臥させた状態とする。
【0027】
次に、おしめ21の切断線25を中心に左右に拡開し、この左右に拡開した開口より排出パイプ103を連設した人体仰臥用便器Aを挿通し、人体仰臥用便器Aを尻載せパッド41のU字状切欠空間42に装着すると共に患者の股間部で人体仰臥用便器Aを挟持し、さらに、患者の局部を覆体59上方より隠した状態とする。このとき、股間部は着用センサーIの電極端子120,120に一定圧で密着した状態となる。
【0028】
次に、おしめ21の左右の折り返し部24を患者の腹部に折り畳むように巻きつけ、両折り返し部24のテープ同士を固着する。覆体59をおしめ21の股間覆い部23で覆った後、股間覆い部23の終端部のテープを腹部の折り返し部24に固着し、人体仰臥用便器Aの装着固定を完了する。
【0029】
(ii)支持枠体31について説明する。
【0030】
図2及び図5に示すように、支持枠体31は、装着孔12の略矩形状に合致した上方開口の箱型としている。すなわち、外形は装着孔12に遊嵌自在の形状としており、底板32の外周縁には外周壁33が少なくとも後述する尻載せパッド41の厚みより低い状態で立設されている。更に底板32の中央には、長手方向に沿って帯状のガイド通路34が設けられており、両側にはガイド壁35が設けられている。
【0031】
ガイド通路34は、下手側の外周壁33を突き抜けて底板32の下手終端より突出し、突出部36の終端は開放状としており、従って、支持枠体31を寝具ベッドの装着孔12に装着する場合は、ガイド通路34の突出部36は装着孔12に連通したパイプ通路13に嵌入させておく。
【0032】
以上のように構成された支持枠体31においては、外周壁33と帯状のガイド通路34との間に形成される空間を略U字状のU字空間37に形成することになり、このU字空間37に後述する略U字状の尻載せパッド41が嵌着支持される。
【0033】
(iii)尻載せパッド41について説明する。
【0034】
図2及び図6に示すように、尻載せパッド41は、支持枠体31に形成された略U字状のU字空間37に嵌着できるように同じく略U字状に形成しており、中央のU字状切欠空間42に支持枠体31のガイド通路34のガイド壁35が嵌着できる構成としている。
【0035】
尻載せパッド41の素材は、ウレタン等の柔軟な材料を封入したものを使用し患者の尻部の載置安定が良好で尻部の皮膚面に優しい感触のものとする。特に、防水性、撥水性、吸水性に優れていると共に湿気を保持しない通気性のよいことが必要であり、患者の床づれを防止できる材料と感触を有していることが必要である。
【0036】
また、尻載せパッド41の厚みは、少なくとも寝具ベッド11の装着孔12と同等で、支持枠体31の外周壁33より高くしている。
【0037】
かかる尻載せパッド41を支持枠体31のU字空間37に嵌着した装着孔12に嵌入装着した場合には、尻載せパッド41の略U字状中央のU字状切欠空間42には支持枠体31のガイド通路34のガイド壁35が嵌着されるため略U字状の尻載せパッド41はガイド通路34を囲繞する状態した状態となる。従って、尻載せパッド41を支持枠体31のU字空間37に嵌着した状態では、尻載せパッド41のU字状切欠空間42がガイド通路34と一体となる。
【0038】
また、支持枠体31の後述するU字空間37は、排尿便処理体51内より漏洩した洗浄水が尻載せパッド41の周面より浸透しても漏水を貯留させ、寝具ベッド11裏面を濡らすことを防止する効果がある。
【0039】
(iv)排尿便処理体51について説明する。
【0040】
図2及び図8に示すように、排尿便処理体51は、支持枠体31のガイド通路34、すなわち、尻載せパッド41のU字状切欠空間42に嵌着する略長手楕円形状とした支持ケース55と、同支持ケース55中に嵌入して内蔵される略L字形状の処理部本体56とより構成される。処理部本体56では、患者の自重により排尿便処理体51が歪曲しないように所定の剛性を有している。
【0041】
図8及び図9に示すように、支持ケース55は、周辺に周壁を形成し、その内部に後述する処理部本体56が収納されるように舟形に形成されており、同支持ケース55の左右両側壁は、中央部分を山型に隆起させ、この隆起部55a及び支持ケース55の後半部開口縁には、更に縦ケース57を嵌着連設可能に構成しており、縦ケース57は、後述する略L字状の処理部本体56の縦部材後方と処理部本体56の上面の一部をケーシングすることができるように横断面半円弧状で側面視略L字状に形成している。
【0042】
更には、支持ケース55と縦ケース57との組付けで形成される下手側端部開口には、筒状のカップリング58が連結されおり、該カップリング58内には、後述する処理部本体56の下手端部に設けられた尿便の排出通路81及びそれに連通した排出パイプ103(図1参照)が挿入される。
【0043】
また、処理部本体56の縦部材80後方をケーシングする縦ケース57の上端縁には患者の局部を上方から覆うための覆体59が開閉自在に枢着されている。
【0044】
覆体59は、ドーム形状とし、基端を断面半円弧状の縦ケース57上端にピン59aを介して枢着されており、患者が処理部本体56を股間に挟んだ状態で局部上方を開閉自在に覆うことができるように構成している。
【0045】
従って、処理部本体56は、上記した支持ケース55と、縦ケース57と、カップリング58と、覆体59とによって、必要な排尿便処理機能を果たすノズル突設部分を除いて、すべてケーシングされることになる。
【0046】
かかる処理部本体56は、内部を舟型に形成した横部材としての排尿便受け部82と、その下手端部に立設した縦部材としての洗浄ノズル保持体61とにより略L字状に形成されている。
【0047】
図8及び図13に示すように排尿便受け部82の前端には、前端ノズルブラケット60が設けられており、該前端ノズルブラケット60には、排尿便受け部82に貯留された尿便を下手側方向に押しやるべく射水するための射水ノズル105が設けられており、該射水ノズル105の近傍には隣接して患者尻部下面及び腰部を乾燥するための送気ノズル205が配設されている。
【0048】
図9に示すように、排尿便受け部82の下手側終端には、排出口102aが設けられており、同排尿便受け部82に貯留された尿便を外部の貯留タンク300に排出パイプ103を介して排出する。
【0049】
また、図9及び図12に示すように、洗浄ノズル保持体61には、洗浄ノズル203、ビデノズル202、乾燥ノズル204が設けられており、いづれも患者の局部あるいは肛門に向って、水や空気を送ることができるように構成されている。
【0050】
これらの各ノズルに通じるパイプ基端は、図8ないし図10に示すように、洗浄ノズル保持体61の裏面に突出し、洗浄ノズル保持体61の裏面に装着した分配器62の所要の分岐パイプ62aに連通されている。更に、分配器62の裏側においては、処理部本体56の縦部材としての洗浄ノズル保持体61上面にヒーター部63を装着しており、分配器62に通じるエアパイプをヒーター部63を介して加熱するように構成している。
【0051】
ヒーター部63は、吸入口63aと噴射口63b(図8参照)とを備え、吸入口63aより送気した空気をエアパイプで温め噴射口63bより温風の空気として送気するように構成している。ヒーター部63の吸入口63aは、吸入ポンプ400より送気される空気を通気する乾燥ノズルパイプ608に連通連結し、ヒーター部63の噴射口63bは、分配器62の表側の送気孔に連通連結している。このようにして吸入ポンプ400より供給される空気を温めて、快適な温風の空気として乾燥ノズル204から人体の局部に噴射し乾燥するようにしている。
【0052】
図8ないし図10に示すように、舟型に形成した排尿便受け部82と、その下手側に立設した洗浄ノズル保持体61とにより全体略L字状に形成した処理部本体56は、処理部本体56の開口部83と洗浄ノズル保持体61のノズル突出側とは互いに相対して形成されているため、処理部本体56の開口縁84と洗浄ノズル保持体61の側縁とは、連続した側面視略L字状の側縁部85を構成していることになる。
【0053】
そして、かかる左右の側縁部85,85は、排尿便受け部82の前端縁部86を含んで一体に連続させているため、L字状とU字状を組み合わせた形状となっており、この部分を人体当接縁部とし、患者が排尿便処理体51を股間部に挟んだ状態において、股間部及び尻部が人体当接縁部に密着して、排尿便受け部82及び洗浄ノズル保持体61の内部が可及的に高気密性となるようにしており、そのために上記した人体当接縁部には、縁部をカバーするためのL字状とU字状を組合せた縁部モール体64を被覆するようにしている。
【0054】
すなわち、縁部モール体64は、縁部の下端連続面を凹状に形成し、人体当接縁部に嵌着できるように合成樹脂製としており、その表面には、人体に優しい樹脂コーティングのウレタンでカバーリングしている。210は、縁部モール体64の前端に延設した舌片であり、該縁部モール体を人体当接部に装着した場合に、その周辺に配した尻載せパッド41に重なるようにして患者の尻部が境目で不用意な刺激と違和感を感じないようにしている。
【0055】
図8及び図9に示すように、上記した排尿便受け部82の排出口102aと排出パイプ103基端側との間には、排泄物や臭気の逆流を防止する断面八角形の中空状の逆止弁ケース66が介設されており、逆止弁ケース66(図11参照)には、ケース天井面に上端を枢支した逆流防止弁66aを開閉自在に垂設しており、逆流防止弁66aは、自重で常に閉弁方向に付勢されている。尿便の排泄物は自重付勢に抗して流通力とより円滑に流通し、貯留タンク300及び排出パイプ103からの臭気は閉弁により流入が防止される。
【0056】
また、図9に示すように、支持ケース55底面略中央部には、断面山型の係合爪67を突設すると共に、支持ケース55を嵌着する支持枠体31のガイド通路34内底面下手部には多段の断面山型の係合溝68(図5参照)を形成しており、支持ケース55を後方から前方方向に向ってガイド通路34にスライド装着した場合、係合爪67と係合溝68との係合により支持ケース55中の処理部本体56が患者の股間部に入りすぎるのを防止し、排尿便処理体51と患者の大腿部分との前後方向の装着位置を最適な密着位置に固定することができ、常に排尿便処理体51と患者の大腿部分とにおける密着度を向上することができる。なお、股間部に排尿便処理体51を挟持したとき患者が圧迫感を感じる場合には、排尿便処理体51を上方へ持上げることで係合爪67が係合溝68から離脱状態となり、処理部本体56をガイド通路34に沿って摺動させて係合爪67の係合位置をガイド通路34の後方位置へ微調整し、再度、係合溝68に係合して最適な係合位置とすることができ、患者の圧迫感を緩和することができる。そして、患者から排尿便処理体51を取外す場合には、上方に排尿便処理体51を持ち上げることにより、排尿便処理体51の係合爪67が係合溝68から離脱状態となり、患者から排尿便処理体51を簡単に取外すことができるようにしている。
【0057】
支持枠体31のガイド通路34内の上手側と支持ケース55の上手側外底面との間には、排尿便処理体51の上手側底面を押上げる略Z形状の板ばね71とその上面に載置した略半円状の押上受板72とが介設されている。すなわち板ばね71の上面の平坦部に連設すると共に同押上受板72の下手縁部は、ガイド通路34に枢着し、同枢着部を中心に板ばね71により押上受板72を上方に付勢し、同板ばねの付勢力によって支持ケース55を介して排尿便処理体51をガイド通路34から持ち上げて患者の大腿部に押圧して密着できる構成としている。また、排尿便処理体51の上手側を押上受板72により常に上手側から下手側に向って下り勾配となすことができ、排尿便受け部82内の排泄物や洗浄水を排出口102aに集めることができる効果がある。
【0058】
(v)排尿便処理体51の各種ノズル及び各種センサーについて詳述する。
【0059】
図1及び図9に示すように、排尿便処理体51には、人体の各部位を洗浄するため洗浄水を噴射する尻ノズル104,射水ノズル105,ビデノズル202,洗浄ノズル203と、洗浄後に人体の局部及び外部尻部を乾燥するため空気を噴射する乾燥ノズル204、送気ノズル205が各所に配置されている。また、排尿便処理体51には、人体の大腿部が当接したことを感知し、また、排出通路81内に排出された大便等の汚物を感知して排便がなされたことを感知し、その後の電気的制御を介して各種の制御作動、例えば、上記各種ノズルの尻ノズル104,射水ノズル105,ビデノズル202,洗浄ノズル203からの洗浄水の噴射や汚物の排出等の作動をなすための着用センサーI、大便センサーG,小便センサーH,水位センサーJが各所に配置されている。
【0060】
このように、排尿便処理体51は、処理部本体56に、各種ノズルの尻ノズル104,射水ノズル105,ビデノズル202,洗浄ノズル203や各種センサーの着用センサーI、大便センサーG,小便センサーH,水位センサーJを設置している。なお、各種ノズルの尻ノズル104,射水ノズル105,ビデノズル202,洗浄ノズル203や各種センサーの着用センサーI、大便センサーG,小便センサーH,水位センサーJ等は排尿便処理体51内部へ露出するように構成されている。各種センサー類の着用センサーI、大便センサーG、小便センサーH、水位センサーJの詳細については、後述する。
【0061】
(v−1)各種ノズルについて詳細に説明する。
【0062】
図9及び図12に示すように、排尿便処理体51は、前面凹部113の底面の下端部に配設された洗浄ノズル203と、前面凹部113の底面の、洗浄ノズル203より上方の位置に配設されたビデノズル202とを有している。また、排尿便処理体51は、排出通路81の、排出部102と反対側の端部に配設された射水ノズル105と、排出通路81の、排出部102と反対側の端部における、射水ノズル105より上方の位置に配設された尻ノズル104とを有している。図1に示すように、尻ノズル104,射水ノズル105,ビデノズル202,洗浄ノズル203には、それぞれ尻ノズルパイプ602c、射水ノズルパイプ604、ビデノズルパイプ602b、洗浄ノズルパイプ603が接続されており、各種ノズルの尻ノズル104,射水ノズル105,ビデノズル202,洗浄ノズル203には、それぞれ各ノズルパイプの尻ノズルパイプ602c,射水ノズルパイプ604,ビデノズルパイプ602b,洗浄ノズルパイプ603を介して、処理操作部Cから洗浄水が供給される構成となっている。
【0063】
また、これら各種パイプは、束ねて外観ホース73内に挿入され、外観ホース73(図8参照)は、一端部を排尿便処理体51の排出部の端部に連通連設し、他端部を貯留タンク300に連通連結している。かかる外観ホース73は、外部から与えられる衝撃や圧力から内包した各種パイプを保護し、各種パイプの形状及び機能を維持するようにしている。
【0064】
図9及び図13に示すように、尻ノズル104は、噴射範囲として、患者の尻部分に付着した排泄物を洗浄水により洗浄するためのノズルである。尻ノズル104は、尻用噴射孔104aを、その噴射方向が患者の尻部を向くように複数有しており、より広範囲の洗浄を可能とするために尻部の曲面に対応して所定の曲率を持つ態様で配設されている。また、尻ノズル104は、ビデノズル202と三方弁74を介して連通連結しており、両ノズル104,202は、三方弁74からの洗浄水を同時に噴射可能とする構成としている。
【0065】
射水ノズル105は、洗浄水の噴射水圧により大便を細かく粉砕しつつ、大便を排出通路81から排出口102aへ向けて押し流す処理(以下、大便粉砕処理という。)を行うためのノズルである。射水ノズル105は、前端ノズルブラケット60内面に正面視略上方に緩やかに湾曲しつつ突設した凸部60aに配設され、同凸部60aは、尻ノズル104下方における排出通路81の前端底面側に連設されている。射水ノズル105は、大便粉砕用噴射孔105aを、その噴射方向が排出通路81の底面で、かつ、大便が最も溜まり易い人体の肛門直下へ向くように複数有している。大便粉砕用噴射孔105aは、例えば、その噴射角2〜10度の範囲としており、大便が最も溜まり易い箇所である排出通路81中央に向かって噴射されるように構成されている。かかる構成とすることで、排出通路81中央に堆積する大便が最先に粉砕され、洗浄水が排出部102へ向かって流れる流路が確保されることとなる。従って、射水ノズル105から洗浄水を噴射し始める初期段階において、大便により塞き止められた洗浄水が排出通路81から溢れ出す状態を防止し得る。また、射水ノズル105は、後述する加圧ポンプ600に連通し、温水タンク501からの温水を射水ノズル105から高水圧の洗浄水として噴射できるように構成している。
【0066】
図9及び図12に示すビデノズル202は、主な噴射範囲として、人体の局部に付着する排泄物を洗浄すると共に処理部本体の縦部材の内周面に付着した小便を洗浄するためのノズルであり、男女の別や体型の差に関わらず局部を洗浄することができるように、細幅かつ縦長の凸形状となっている。ビデノズル202は、ビデ用噴射孔202aを、その噴射方向が患者の局部を向くように列状に等間隔に穿設し複数有し、小便用噴射孔200bを、その噴射方向が処理部本体の縦部材の内周面に向くように凸形状の周面に等間隔に穿設し複数有している。例えば、図12に示すように、ビデ用噴射孔202aは、9行3列の格子状に穿設されている。また、ビデノズル202は、上述したように尻ノズル104と三方弁74を介して連通連結しており、両ノズル104,202は、三方弁74からの洗浄水を同時に噴射可能とする構成としている。かかる構成とすることで、格子状の各孔202aより面状に洗浄水を噴射することで広範囲の洗浄を可能にしつつ、洗浄水の噴射圧を適度に抑えることができ、人体中でも特にデリケートな局部に対してソフトな洗浄が可能となる。なお、ビデノズル202の小便用噴射孔200bは、排尿便処理体51内部に飛散した小便の洗浄を同時に行えるようにしている
【0067】
図9及び図12に示すように、洗浄ノズル203は、噴射範囲として、患者の肛門及び肛門周辺に付着する排泄物を洗浄するためのノズルであり、男女の体型の差に関わらず肛門及び肛門周辺を洗浄することができるように、細幅かつ縦長の形状となっている。洗浄ノズル203は、ビデノズル202より下方位置に設けており、同洗浄ノズル203の肛門用噴射孔203aを、その噴射方向が患者の肛門及び肛門周辺を向くように等間隔に穿設し複数有している。例えば、図12に示すように各肛門用噴射孔203aは、略4行3列に穿設されており左右列の上端の孔より中央列の上方の孔を上端となるように形成している。洗浄ノズル203の列同士の間隔は、ビデノズル202の列同士の間隔より狭く形成している。かかる構成とすることにより、男女の体型の差に関わらず人体の肛門及び肛門周辺を洗浄することが可能となる。各肛門用噴射孔203aより噴射される洗浄水の水圧は、ビデ用噴射孔202aより噴射される洗浄水の水圧より強くなるように設計されている。
【0068】
なお、より効果的な洗浄を可能とするために、大便粉砕用噴射孔105aや、肛門用噴射孔203aについては、オリフィス構造を採用しても良い。オリフィス構造とすることで、洗浄水の噴射範囲を広げることができ、洗浄水の水量を抑えつつ、人体の広範囲を洗浄することが可能となる。
【0069】
また、上述したビデノズル202,洗浄ノズル203,射水ノズル105,尻ノズル104には、処理操作部Cより各種ノズルパイプの尻ノズルパイプ602c,射水ノズルパイプ604,ビデノズルパイプ602b,洗浄ノズルパイプ603を介して、洗浄水が供給される構成となっている。そして、洗浄水により患者の各部位を洗浄した後、後述する乾燥ノズル204、送気ノズル205より温風、送風の空気を吹き付けることにより、乾燥させるようになっている。
【0070】
図9及び図12に示すように、乾燥ノズル204は、噴射範囲として、患者の局部、肛門及び肛門周辺を乾燥するためのノズルであり、男女の体型の差に関わらず局部、肛門及び肛門周辺を温風の空気により乾燥することができるように、細幅かつ縦長の形状のビデノズル202の略四隅位置に設けられている。乾燥ノズル204は、ビデノズル202より外側に位置し同ビデノズル202と一体的に配設されており、乾燥用噴射孔204aを、その噴射方向が患者の局部、肛門及び肛門周辺を向くように等間隔に4箇所穿設している。乾燥ノズル204には、温風の空気を噴出可能とするように吸入ポンプより供給され、ソレノイドバルブ97(図1参照)を介し乾燥ノズルパイプ608より供給される空気をヒーター部63のヒーターにより暖めて温風の空気として乾燥用噴射孔204aから噴出するようにしている。かかる構成とすることにより、男女の体型の差に関わらず人体の局部、肛門及び肛門周辺を快適な温風の空気で効率よく短時間で乾燥することが可能となる。例えば、上方に2箇所穿設した乾燥用噴射孔204a,204aは、人体の局部、肛門及び肛門周辺に温風を噴射し、下方に2箇所穿設した乾燥用噴射孔204a,204aは、肛門及び肛門周辺及び上手側の尻部に温風を噴射するようにしており、効率よく温風乾燥を行うことが可能となる。
【0071】
図9及び図13(c)に示すように、送気ノズル205は、噴射範囲として、患者の尻部周辺を乾燥するためのノズルであり、男女の体型の差に関わらず尻部周辺及び腰部を送気により乾燥することができるように、前端ノズルブラケット60の頭部外側に設けられて、上向きの孔を有している。送気ノズル205は、送気用噴射孔205aを、その噴射方向が患者の尻部周辺に向くように上向きとなるようしている。送気ノズル205には、空気を噴出可能とするように吸入ポンプより供給され、ソレノイドバルブ98(図1参照)を介し送気ノズルパイプ609より供給される空気を送気用噴射孔205aから噴出するようにしている。かかる構成とすることにより、男女の体型の差に関わらず人体の尻部周辺を送風の空気で効率よく短時間で乾燥することが可能となる。例えば、送気用噴射孔205aより送気した空気は、舌片210(図8参照)に形成した開口211を介して尻部周辺に吹付けられるようにしており、特に、排尿便受け部82の外側にはみ出した尻部から腰部周辺を乾燥することが可能となる。
【0072】
(v−2)各種センサーの構成について詳述する。
【0073】
図9に示すように、排尿便処理体51は、縁部モール体64の内側面に患者の大腿部に排尿便処理体51が一定圧で密着されたことを検知する着用センサーIが配設され、さらに、排尿便処理体51には、排出通路81の、排出部102と反対側の端部に赤外線センサーの発光部106が配設され、排出部102の下手側前縁部には赤外線センサーの受光部107が配設される。これら発光部106、受光部107は、排出通路81における大便を検知する大便センサーGとして機能する。排尿便処理体51には、他に排尿便受け部82下手側底面に小便を検知する小便センサーHが配設され、また、排尿便受け部82上手側の側縁部85に排尿便受け部82内の水位を検知する水位センサーJが配設されている。
【0074】
着用センサーIは、一対の導電性ゴムで形成した電極端子120を有しており、両電極端子120,120を患者の大腿部に一定圧で密着して、人体特有の静電容量の変化により患者の大腿部に排尿便処理体が装着されたことを検知するようにしている。両電極端子120,120は、縁部モール体64のL字状の縦部における内側面に対向するように配設していると共に処理操作部Cと図示しない導電線を介して接続されている。
【0075】
そして、患者の大腿部が縁部モール体64の縁部に一定圧で密着することで、同縁部が外方へ捲れるように湾曲することにより両電極端子120,120と大腿部とが当接し圧着状態となるため検知することが可能となる。また、電極端子120に導電性ゴムを装着したことにより、防水性に優れ、長期に渡りセンサーの信頼性を向上する効果がある。患者の大腿部が着用センサーIから離脱すると、各ノズルからの洗浄水の噴射を停止するようにしており、排尿便処理体51の周囲の寝具ベッド11等への浸水を防止することができ安全装置として機能する効果がある。例えば、図8及び図9に示すように、特に着用センサーIの両電極端子120,120の装着位置は、縁部モール体64の縦部64aの縁基端より数センチメートル上方、かつ、内縁部近傍とすることにより、一定圧で密着する着用センサーIとしての機能を果たすことが可能となる。
【0076】
図9に示すように、大便センサーGは、発光部106より発信された赤外線が対向する受光部107で受信されたか否かに基づき、発光部106と受光部107の間、すなわち排出通路81に大便が存在するか否かを検知する。発光部106は、前端ノズルブラケット60の上方の中央に突設しており、射水ノズル105の中央の大便粉砕用噴射孔105aより上方位置、かつ、尻ノズル104の洗浄水が直接当たらない位置に連設されている。受光部107は、赤外線以外の周囲の光によって誤作動を起こすことを防止するために、周囲の光が届きにくい排出部102の上部に設置されている。発光部106より発信された赤外線は、排出通路81の何れの場所に大便が存在していても大便により遮られるので、受光部107が受信する赤外線の量は減少する。よって、大便センサーGは、患者の個々の体型差、排尿便処理体51の着用状態及び大便の量に関わらず確実に大便を検知することができる。
【0077】
また、図8及び図9に示すように、小便センサーHは、前後に隣り合うように配設された一対の電極ピン109,109を備えている。また、電極ピン109、109は、処理操作部Cと図示しない導電線を介して接続されており、処理操作部Cからいずれか一方の電極ピン109に微弱な電流を流すように設定されている。そして、小便センサーHは、電極ピン109,109間がかかる微弱な電流によって洗浄水又は小便を導体として通電した際の電流値を検知する構成となっている。ここで、一般に、洗浄水と小便とでは塩度の差が存在するために、電気伝導率の差が生じる。すなわち、小便センサーHが検知する電流値は、洗浄水と小便とで異なる値となる。
【0078】
小便は、水と比較して塩度が高いため、この塩度の差に対応して両者の尿センサーアウトプット値に大きな差が生じることとなる。したがって、小便センサーHによって、電極ピン109,109間の電流値を検知し、尿センサーアウトプット値に対して所定のしきい値を用いることで洗浄水と小便とを確実に判別することが可能となる。
【0079】
なお、電極ピン109,109は、腐食防止のため表面を金メッキし、上述の一方の電極ピン109への印加電圧の正極と負極とを交差するよう構成されている。かかる構成により、長期の使用によっていずれか一方の電極ピン109が酸化して腐食することや異物が付着することにより検知精度が低下する不具合を防止することができる。
【0080】
このような構成により、患者が排便、排尿すると、排尿便処理体51は、大便センサーG、小便センサーHにより大便、小便を検知し、その検出信号を処理操作部C(図1参照)へと送信する。かかる検出信号を受信した処理操作部Cは、ビデノズルパイプ602b,洗浄ノズルパイプ603,射水ノズルパイプ604,尻ノズルパイプ605に洗浄水を供給し、ビデノズル202、洗浄ノズル203、射水ノズル105、尻ノズル104の各々から洗浄水が排尿便処理体51内へ噴射される。これにより、患者の尻部、局部及び肛門が洗浄される一方で、排尿便が排出部102の方へ流される。このように患者の各部位と排尿便処理体51内を洗浄する洗浄工程を終えた後に、乾燥ノズルパイプ608,送気ノズルパイプ609に空気を供給し、乾燥ノズル204、送気ノズル205から温風及び送風の空気が排尿便処理体51内へ噴射される。このように患者の尻部、局部及び肛門の乾燥がなされる乾燥工程が実行される。
【0081】
水位センサーJは、図8及び図9に示すように、排尿便受け部82内の水位を検知するため、排尿便受け部82上手側の側縁部85,85に電極ピン130,130を備えている。電極ピン130,130は、処理操作部Cと図示しない導電線を介して接続されており、処理操作部C(図1参照)からいずれか一方の電極ピン130に微弱な電流を流すように設定されている。そして、水位センサーJは、電極ピン130,130間がかかる微弱な電流によって洗浄水又は小便を導体として通電した際の電流値を検知する構成となっている。
【0082】
かかる水位センサーJは、排出通路81内に残った排出物を含む洗浄水により異常に水位上昇し、その後、両電極ピン130,130が洗浄水中に沈むと、同電極ピン130,130間が導通することにより、排尿便受け部82内に洗浄水が所定の水位位置以上に溢れていることを検知できる構成としている。例えば、水位センサーは、射水ノズル105が洗浄水で大便を粉砕しているときにおいて、排尿便受け部82内に洗浄水が所定水位以上に溢れていることを検知した場合には、処理操作部Cは、射水ノズル105からの線浄水の噴射を停止し、排尿便等を含む洗浄水を優先的に排尿便受け部82の排出口102aより排出パイプ103を介して貯留タンク300への吸引作動を強制的に行うようにしている。
【0083】
(vi)採尿器具について説明する。
【0084】
図14に示すのは、本発明の自動排尿便処理装置Kの実施に際して使用し、別体で使用することができるようにした男性用の小便に際して使用する採尿器具150である。該採尿器具150は、湾曲筒状の採尿本体151とその基端に設けた平板状の取付部152と採尿本体151の先端に連設した流尿パイプ153とより構成している。
【0085】
採尿本体151は、始端を斜めに開口した局部挿入部154と湾曲筒状に形成した採尿空間部155とよりなるシリコン製の袋状に構成しており、男性の局部を局部挿入部154から挿入して採尿空間部155内に収納して放尿できるように構成している。従って、シリコン製の袋状で湾曲状に形成し局部挿入部154が下方に斜めに切断された開口縁よりなるように構成していることになり、男性の局部からの放尿方向に対応した姿勢に採尿本体151を変位あるいは変形させることができ、男性の性器の生理的な変位すなわち勃起、膨張、収縮等の身体変化に対応して順応することができるものである。
【0086】
取付部152は、採尿本体151の始端上縁部に平板状に突設しており、その裏面は、テープ等により患者のおしめ21の腹部の継目個所に貼着、離脱可能に構成しており、その取付け位置は任意に調整可能である。また、取付部152の中途には、折曲あるいは枢支自在にヒンジ部156を介設しており、取付部152を中心に採尿本体151の上下の変位に対応して取付部152が折曲変位して患者の局部にフィット可能に構成しており、患者の体型に応じて取付部152と採尿本体151とが折曲自在に構成されている。採尿本体151のシリコン材質は、マイナスイオン発生材料を添加して悪臭を消し、患者の体質にイオン改質を行うことができるようにしている。流尿パイプ153は、採尿本体151の終端に連通連結した短形パイプであり、手動によりパイプ方向を導くことができ本発明の自動排尿便処理装置Kの排尿便処理体51中に手動で誘導して尿を排出できるように構成している。
【0087】
(vii)外部処理構成としての処理操作部Cについて説明する。
【0088】
処理操作部Cは、排尿便処理体51の外部に設けられて、排尿便の処理のための各種機能を行う。図1に示すように、処理操作部Cは、排尿便処理体51の汚物を収容する排泄物収容部Dと、排尿便処理体51から股間部と同排尿便処理体51との一定圧の密着状態を示す着用信号や排便及び/又は排尿の検出信号や排尿便受け部の水位上昇を示す水位信号を受信し、その後の洗浄動作などの各種動作を遂行するノズル操作部Fと、排尿便処理体51に洗浄水を供給する洗浄水供給部Eとよりなる。
【0089】
(vii−1)
排泄物収容部Dは、貯留タンク300を有しており、貯留タンク300は、排出パイプ103を介して、排尿便処理体51の排出口102aと接続されている。貯留タンク300は、その内部の汚物を捨てる際には、処理操作部Cから取り外しができるように構成されている。貯留タンク300の底部には、貯留した汚物の重量を検知する重量センサー302を備え、所定の重量を超えると処理操作部Cへ信号を送信するようにしている。
【0090】
また、図1に示すように、ホース連結部303には、排出パイプ103と隣り合うように吸気パイプ401aが接続されている。図1に示すように、貯留タンク300は、吸気パイプ401aを介してノズル操作部Fに接続されている。貯留タンク300の内部は、後述するノズル操作部Fにおける吸入ポンプ400の作動により吸気パイプ401aを介して空気が吸入されて負圧状態が形成され、排出パイプ103を介して汚物を排尿便処理体51から吸引することができるように構成している。
【0091】
(vii−2)
洗浄水供給部Eは、図1に示すように、洗浄水としての原水を供給する原水タンク500と、排尿便処理体51内に供給する洗浄水を所定温度に加熱するための温水タンク501と、原水タンク500から温水タンク501への給水を制御するソレノイドバルブ503を備えている。温水タンク501は、原水タンク500からソレノイドバルブ503を介して供給された原水を加熱する管ヒーター502と、水位を感知する水位センサー505と、水温を感知する温度センサー506とを備えている。洗浄水供給部Eは、水位センサー505で温水タンク501内の水位が、給水を要する状態であることを検知すると、ソレノイドバルブ503を開いて、原水タンク500から温水タンク501へ所定量の原水を供給し、水位センサー505で温水タンク501内が原水で満たされて所定の水位に到達したことを検知すると、水位センサー505の検知信号に基づきソレノイドバルブ503を閉じて原水供給を遮断する。
【0092】
洗浄水供給部Eは、温水タンク501内の原水の温度を温度センサー506で検知して、患者が図示しない温度制御回路を介して設定した温度に維持するように、かかる原水を管ヒーター502で加熱して温水とする。かかる構成により、温水タンク501中の温水を洗浄水として排尿便処理体51へ送水する洗浄工程を実行する際には、患者へは常に適温の洗浄水が供給されるので、患者は良好な使用状態を得ることができる。温水タンク501の底部側面に設けられた出口は、送水パイプ504aを介してノズル操作部Fに接続されており、この送水パイプ504aを介して温水タンク501内で加熱された洗浄水がノズル操作部Fへ供給される。
【0093】
なお、ソレノイドバルブ503の代わりに、フロートバルブ等を用いて、機械的な動作により原水タンク500から温水タンク501への原水供給を調整するように構成しても良い。
【0094】
(vii−3)
ノズル操作部Fは、上述のように、排泄物収容部Dに吸気パイプ401aを介して接続されており、また、洗浄水供給部Eに送水パイプ504aを介して接続されている。吸気パイプ401aは、弁としての吸気バルブ409、減圧部としての真空タンク408、吸気パイプ401b、悪臭除去フィルタ407a、圧力スイッチ413、吸気パイプ401c、ソレノイドバルブ96のNOポート、ソレノイドバルブ96のCOMポート、吸気パイプ401dを経て吸入ポンプ400の吸気口402に接続されている。また、吸入ポンプ400の排気口405は、ソレノイドバルブ95のCOMポートに接続され、ソレノイドバルブ95のNOポートは、エア排出パイプ414を介して、消音器407bに接続されている。なお、消音器は、給気口及び排気口となる。
【0095】
一方、送水パイプ504aは、フィルタ507、送水パイプ504b、加圧ポンプ600、ノズルパイプ601a、各種ソレノイドバルブ91,92,93、三方弁74、各種ノズルパイプ602a,602b,602c,603,605を経て、排尿便処理体51内の尻ノズル104,射水ノズル105,ビデノズル202,洗浄ノズル203に接続されている。すなわち、洗浄水供給部Eから供給される洗浄水を加圧ポンプ600により加圧することで、洗浄水を各種ノズルの尻ノズル104,射水ノズル105,ビデノズル202,洗浄ノズル203から排尿便処理体51内へ噴射し得る構成となっている。フィルタ507は、加圧ポンプ600に異物が流入しないように、洗浄水中に混入する異物を除去することができる構成としている。
【0096】
しかし、吸入ポンプ400の吸引力だけでは、排尿便処理体51内の汚物を貯留タンク300内へ完全に吸引収容するのは困難である。そこで、吸入ポンプ400と貯留タンク300との間に、吸入ポンプ400の吸引力を増大させるための真空タンク408を配置している。真空タンク408内に真空状態を形成することにより、より強い負圧を発生させて排尿便処理体51内の汚物を効率良く吸引することができる構成となっている。
【0097】
吸入ポンプ400の排気口405は、ソレノイドバルブ95のCOMポートに接続され、ソレノイドバルブ95のNCポートは、エア供給パイプ601b、各種ソレノイドバルブ97,98、各種ノズルパイプ608,609を経て、排尿便処理体51内の乾燥ノズル204,送気ノズル205に接続されている。
【0098】
一方、吸入ポンプ400の吸気口402側には、消音器404が備えられており、消音器404は、外部エア供給パイプ415を介して、ソレノイドバルブ96のNCポートに接続され、ソレノイドバルブ96のCOMポートは、吸気口402に接続されている。
【0099】
なお、ノズル操作部Fにおいて、送水用の各種ソレノイドバルブ91,92,93と送気用の各種ソレノイドバルブ97,98は2ユニット化され、1つの流入口と4つの流出口でパイプ路を形成するソレノイドバルブユニット606を構成している。ソレノイドバルブユニット606は、4つの流出口を図示しない制御回路を介して選択的に順次開閉動作ができるように構成されている。かかる構成により、パイプ路構成を簡易化して部品点数の削減をすることができ、また、組み立て性を向上することができる。
【0100】
また、ソレノイドバルブ95,96、消音器404、2基の悪臭除去フィルタ407a,407a、消音器407bは1ユニット化されてフィルタアセンブリ607を構成している。かかる構成により、パイプ路形成を簡略化して部品点数の削減をすることができ、また、組み立て性を向上することができることに加えて、消音器404、各種フィルタ407a,407a、消音器407bの交換作業を容易化することができる。
【0101】
(viii)本実施形態の人体仰臥用便器Aを使用する場合における手順及び機能のフローを説明する。排尿便処理のプロセスを説明する。排尿便処理体51の使い方について説明する。
【0102】
まず、寝具ベッド11の装着孔12におしめ21を敷設する。そして、(i)で述べたおしめ21装着手順に従って人体仰臥用便器Aを寝具ベッド11に装着した状態で患者の股間部や局部を被覆する。この際、患者は人体仰臥用便器Aの縦部材53である洗浄ノズル保持体61を股間部に挟持した状態であり、尻部は尻載せパッド41上に載置し、患者の局部は横部材52の排尿便受け部82に対峙した状態となっており、この状態で患者の排尿便が排尿便受け部82中に行われ、その後、以下に述べる排尿便処理が行われる。
【0103】
自動排尿便処理装置Kの処理形態としては、大便、小便を大便センサーG,小便センサーHの検知により判別して、各洗浄工程を自動的に行う自動排便処理モードと、患者の操作指示があった場合に行う手動排便処理モードを有している。なお、自動排便処理モードには、大便洗浄工程、小便洗浄工程、乾燥工程の処理手順があり、順次、各フローチャートを用いて説明する。自動排尿便処理装置は、各種ノズル、各センサー、各種バルブ、各ポンプ等を制御する制御部を備え、制御部は各センサーの信号に基き、各種ノズル、各種バルブ、各ポンプ等へ信号を送信して各種機能を実行している。
【0104】
(viii−1)図15は、自動排便処理モード時の自動排尿便処理装置Kの処理手順を示すフローチャートである。
【0105】
図15に示すように、図示しない電源スイッチの操作により、本体の電源が投入されると、着用センサーIの検出信号に基いて、患者の股間部分が両電極端子120,120に一定圧で密着しているか否かを判断する(ステップS1)。この判断の結果、電極端子120,120に一定圧で密着している場合(ステップS1:YES)、次の小便センサーHの検出値に基づいて、排出通路81に小便が存在するか否かを判断する(ステップS2)に移る。なお、電極端子120,120に一定圧で密着してない場合(ステップS1:NO)は、再度、密着しているか否かの判断を繰返し実行する。
【0106】
この判断の結果、小便が存在しない場合(ステップS2:NO)、大便センサーGの検出値に基づいて、排出通路81に大便が存在するか否かを判断する(ステップS3)。この判断の結果、大便が存在しない場合(ステップS3:NO)、再度、小便が存在するか否かを判断すべく、処理手順をステップS2に戻す。一方、大便が存在する場合(ステップS3:YES)、すなわち、排出通路81に大便のみが存在する場合、大便洗浄工程を実行する(ステップS5)。
【0107】
また、ステップS2において小便が存在する場合(ステップS2:YES)、排出通路81に大便が存在するか否かを判断する(ステップS4)。この判断の結果、大便が存在する場合(ステップS4:YES)、すなわち、排出通路81に小便及び大便が存在する場合、大便を処理する大便洗浄工程を実行する(ステップS5)。
【0108】
一方、大便が存在しない場合(ステップS4:NO)、すなわち、排出通路81に小便のみが存在する場合、小便を処理する小便洗浄工程を実行する(ステップS6)。
【0109】
大便洗浄工程(ステップS5)又は小便洗浄工程(ステップS6)を終了後、自動排尿便処理装置Kは、人体及び排尿便処理体51内の乾燥をするための乾燥工程を実行する(ステップS7)。
【0110】
(viii−2)図16は、大便洗浄工程の処理手順を示すフローチャートである。
【0111】
初期状態において、各種ソレノイドバルブ91,92,93とソレノイドバルブ95,96のNCポートと、吸気バルブ409と、逆止弁411とを閉じている。また、初期状態において、ソレノイドバルブ95,96のNOポートを開けている。図16に示すように、まず、吸気バルブ409を開け(ステップS11)、吸入ポンプ400を始動(ステップS12)する。これにより、排尿便処理体51内部の大便による臭い及び大便の一部が貯留タンク300に吸引される。同時に排尿便処理体51内の悪臭を含む空気は、逆止弁ケース66、排出パイプ103、貯留タンク300、吸入ポンプ400に向かって流れ、吸気口402前の悪臭除去フィルタ407a及び排気口405後の消音器407bを経て悪臭が除去されてから外部へ放出される。外部へ空気を排出する際に、消音器407bを備えることで、空気音を消音できると共に、2基の悪臭除去フィルタ407a,407aを並列に連通連結したので悪臭除去効果を長期に維持することができる。
【0112】
次いで、ソレノイドバルブ93を開けた後に(ステップS13)、加圧ポンプ600を所定時間だけ稼動する(ステップS14)。これにより、温水タンク501内の温水が、射水ノズルパイプ604に送水されて射水ノズル105から洗浄水として噴射され、大便粉砕処理を実行する。大便粉砕処理によって粉砕され、排出通路81方向に押しやられた大便は、汚物貯留空間Sで過流現象により洗浄水と十分に混合される(以下、過流現象による混合動作という)。なお、射水ノズル105から洗浄水が噴射されるとき、水位センサーJは、排尿便受け部82内における水位が一定水位以上か否かを検知して、一定水位以上である場合、強制的に射水ノズル105よりの噴射を停止し、排尿便受け部82内の汚物を排出パイプ103を介して貯留タンク300内へ吸引、収容される。
【0113】
次に、真空タンク408内を真空状態とするために吸気バルブ409を閉じて真空形成を開始する(ステップS15)。圧力スイッチ413に基づく内部圧力の検出値が最大真空圧(例えば、600mmHg)に到達するまで待った後(ステップS16:YES)、圧力スイッチ413からの検知信号に基づき図示しない制御装置を介して加圧ポンプ600を稼動し(ステップS17)、吸気バルブ409を開く(ステップS18)。この瞬間、真空タンク408に形成された最大真空圧により、排尿便受け部82において、大便を含む洗浄水の流れが滞り、大便を含む洗浄水が上下に旋回するような渦巻き状の流れを生じる過流現象となり、混合動作後の大便は、一層細かく粉砕されて洗浄水と十分に混合されると同時に、排尿便処理体51内で特に汚物が付着しやすい排出部102付近が十分に洗浄されて、排出部102から逆止弁ケース66、排出パイプ103を介して貯留タンク300に一気に吸入収容される(以下、真空吸入動作という)。なお、逆止弁ケース66は、大便の吸入時に逆流防止弁66aが自重に抗して開弁して大便や臭気等を吸入収容し、吸入終了後は、自重により閉弁して大便やその臭気を遮断することで常に排尿便処理体内の衛生状態が向上することとなる。
【0114】
そして、加圧ポンプ600を停止し(ステップS19)、再び大便センサーGの検出値に基づいて、排出通路81内に残便がないか否かを判断する(ステップS20)。この判断の結果、残便が存在する場合(ステップS20:YES)、再度、過流現象による混合動作及び真空吸入動作を繰り返すべく、処理手順をステップS15に戻す。そして、過流現象による混合動作及び真空吸入動作を、大便センサーGが大便を検知することがなくなるまで繰り返す。
【0115】
次に、排出通路81内に残便が検知されなくなると(ステップS20:NO)、ソレノイドバルブ93を閉じ(ステップS21)、次いで、ソレノイドバルブ91を開け(ステップS22)、加圧ポンプ600を所定の時間だけ稼動する(ステップS23)。これにより、温水タンク501から温水が、パイプ602aに送水され三方弁74によりビデノズルパイプ602bと尻ノズルパイプ602cに分けて送水される。一方、ビデノズルパイプ602bに送水された温水は、ビデノズル202から洗浄水として噴射され、患者の局部付近に付着した大便を洗浄する(以下、ビデ洗浄動作という)。他方、尻ノズルパイプ602cに送水された温水は、尻ノズル104から洗浄水として噴射され、患者の尻付近に付着した大便を洗浄する(以下、お尻洗浄動作という)。このとき、ビデ洗浄とお尻洗浄を同時に実行できることにより洗浄時間を短縮することが可能となる。
【0116】
次に、ソレノイドバルブ91を閉じ(ステップS24)、次いで、ソレノイドバルブ92を開け(ステップS25)、加圧ポンプ600を所定の時間だけ稼動する(ステップS26)。これにより、温水タンク501から温水が、洗浄ノズルパイプ603に送水されて洗浄ノズル203から洗浄水として噴射され、患者の肛門付近に付着した大便を洗浄する(以下、肛門の洗浄動作という)。ソレノイドバルブ92を閉じ(ステップS27)、さらに、お尻の洗浄動作及び肛門の洗浄動作を洗浄回数が2回に到達するまで繰り返す(ステップS28:YES)。これにより、患者のお尻及び肛門付近の洗浄を完璧に遂行することが可能となる。
【0117】
次に、洗浄回数が2回に到達すると(ステップS28:NO)、吸入ポンプ400を停止し(ステップS29)、吸気バルブ409を閉じ、大便洗浄工程を終了する。なお、大便洗浄工程において、各種ノズルから洗浄水が噴射されるとき、水位センサーJは、排尿便受け部82内における水位が一定水位以上か否かを常時検知しており、一定水位以上である場合、強制的に各種ノズルからの洗浄水の噴射を停止し、排尿便受け部82内の汚物を排出パイプ103を介して貯留タンク300内へ強制的に吸引、収容するように実行されるものである。
【0118】
(viii−3)図17は、小便洗浄工程の処理手順を示すフローチャートである。
【0119】
まず、吸気バルブ409を開き(ステップS41)、吸入ポンプ400を始動し(ステップS42)、次いで、ソレノイドバルブ91を開いた後(ステップS43)、加圧ポンプ600を所定時間だけ稼動する(ステップS44)。これにより、小便が貯留タンク300に吸引され、同時に、お尻の洗浄動作及びビデの洗浄動作が実行される。
【0120】
次に、ソレノイドバルブ91を閉じ(ステップ45)、ソレノイドバルブ93を開き(ステップS46)、次いで、吸気バルブ409を閉じた後(ステップS47)、吸入ポンプ400を稼動する(ステップS48)。これにより、真空タンク408内の真空形成を開始する。
【0121】
そして、所定時間経過後に、加圧ポンプ600を稼動し、原水タンク500中の温水タンク501から送水された温水を、射水ノズルパイプ604を介して射水ノズル105から洗浄水として噴射し、小便を排出通路81方向に押しやる(ステップ49)。そして、ほぼ同時に、吸気バルブ409を開く(ステップS50)。この瞬間、真空タンク408に形成された最大真空圧により、小便は、排出口102aから逆止弁ケース66、排出パイプ103を介して貯留タンク300に一気に吸入収容される。
【0122】
その後、加圧ポンプ600を停止し(ステップS51)、吸入ポンプ400を停止し(ステップS52)、次いで、ソレノイドバルブ93を閉じた後(ステップS53)、吸気バルブ409を閉じ(ステップS54)、小便洗浄工程を終了する。
【0123】
なお、上述の大便洗浄工程及び小便洗浄工程において、逆止弁ケース66、悪臭除去フィルタ407a,407a、及び消音器407bを介して貯留タンク300に吸入収容される汚物から発する悪臭が可及的に吸入ポンプ400外に排出されないようにしている。なお、小便洗浄工程において、各種ノズルから洗浄水が噴射されるとき、水位センサーJは、排尿便受け部82内における水位が一定水位以上か否かを常時検知しており、一定水位以上である場合、強制的に各種ノズルからの洗浄水の噴射を停止し、排尿便受け部82内の汚物を排出パイプ103を介して貯留タンク300内へ強制的に吸引、収容するように実行されるものである。
【0124】
(viii−4)図18は、乾燥工程の処理手順を示すフローチャートである。
【0125】
吸気バルブ409を閉じ(ステップS71)、ソレノイドバルブ97、ソレノイドバルブ95,96のNCポートを開いた後(ステップS72)、吸入ポンプ400を所定時間稼動する(ステップS73)。消音器404から取り込まれた空気を、一方、エア供給パイプ601b、ソレノイドバルブ97、乾燥ノズルパイプ608を経てヒーター部63で温め温風の乾燥空気として乾燥ノズル204から送り出して、乾燥空気で人体の局部、尻部及び排尿便処理体51内の乾燥を行うようにしている。吸入ポンプ400を所定時間だけ稼動すると、ソレノイドバルブ97、ソレノイドバルブ95,96のNCポートを閉じる(ステップS74)。
【0126】
ソレノイドバルブ98、ソレノイドバルブ95,96のNCポートを開いた後(ステップS75)、吸入ポンプ400を所定時間稼動する(ステップS76)。消音器404から取り込まれた空気を、エア供給パイプ601b、ソレノイドバルブ98、送気ノズルパイプ609を経て、送風の乾燥空気として送気ノズル205から送り出して、乾燥空気で人体の尻部及び腰部の乾燥を行うようにしている。吸入ポンプ400を所定時間だけ稼動すると、ソレノイドバルブ98、ソレノイドバルブ95,96のNCポートを閉じ(ステップS77)乾燥工程を終了する。これにより、消音器404から取り込まれた空気を、乾燥空気として乾燥ノズル204及び送気ノズル205から送り出し、人体の局部、尻部、外部の腰部及び排尿便処理体51内の乾燥を短時間で行うことができる。
【0127】
そして、図15に示すように、一連の処理により、人体及び排尿便処理体51内の洗浄工程(ステップS3又はステップS4)及び乾燥工程(ステップS7)を終了すると、再度、大便及び小便の検知を実行すべく、処理手順をステップS2に戻す。
【0128】
ところで、上述したように、本実施形態の自動排尿便処理装置Kは、動作モードとして自動排便処理モードの他に、患者の操作指示があった場合に行う手動排便処理モードを有する。この手動排便処理モードにおいては、自動排尿便処理装置Kは、大便センサー及び小便センサーによるセンシングを行わず、患者から大便洗浄工程及び小便洗浄工程のいずれか一方を行うための操作指示を受け付けた場合にだけ、排便処理を実行する。なお、患者は、自動排尿便処理装置Kの所定の場所に設けられた操作パネルや、リモートコントローラを用いて操作指示を行う。以下、この手動排便処理モード時の動作について説明する。
【0129】
(viii−5)図19は、手動排便処理モード時の自動排尿便処理装置Kの処理手順を示すフローチャートである。
【0130】
小便洗浄指示があった場合には(ステップS101:YES)、上述した自動排便処理モードの小便洗浄工程と同じ手順にて小便洗浄工程を実行する(ステップS104)。また、小便洗浄指示がなく(ステップS101:NO)、大便洗浄指示があった場合には(ステップS102:YES)、上述した自動排便処理モードの大便洗浄工程と同じ手順にて大便洗浄工程を実行する(ステップS103)。一方、小便洗浄指示がなく(ステップS101:NO)、かつ、大便洗浄指示もない場合には(ステップS102:NO)、指示があるまで待機する。
【0131】
そして、大便洗浄工程(ステップS103)又は小便洗浄工程(ステップS104)を終了後、人体の局部、尻部、腰部及び排尿便処理体51内の乾燥をするために、上述した自動排便処理モードの乾燥工程と同じ手順にて乾燥工程を実行し(ステップS105)、手動排便処理モードを終了する。
【0132】
本実施形態の自動排尿便処理装置によれば、人体仰臥用便器Aは、寝具ベッド11の装着孔12に支持ケース55を装着し、支持ケース55上に尻載せパッド41を載置し、次に、患者を寝具ベッド11に仰臥させて、尻載せパッド41のU字状切欠空間位置に略L字形状の排尿便処理体51を遊嵌すると共に、患者の股間部に排尿便処理体51を装着することにより容易に着脱可能な構造となっており、患者が自力で排尿便処理体51を装着できない状態でも、上記手順を踏むことで1人の介助者で容易に患者に排尿便処理体51を装着することができる効果がある。患者から排尿便処理体51を脱着する場合には、排尿便処理体51の外にはみ出した尻部が尻載せパッド41に当接しており、尻載せパッド41で患者の尻部の重みを支えているため、排尿便処理体51を患者から容易に引き離すことが可能である。排尿便処理体51を患者の股間部で挟持して装着したとき、排尿便処理体51の外にはみ出した尻部を尻載せパッド41で支えて尻部付近の重心の安定を図ると共に、患者の股間部を排尿便処理体51に密着することで患者にフィット感を与えることができる。さらに、寝たきりの患者に長期間使用しても尻部の床ずれの発生を防ぐことが可能となる効果がある。排尿便処理体51より洗浄水が漏水した場合には、排尿便処理体51の下部の支持枠体31内に漏水が一旦貯留され、寝具ベッド11の裏面を直接浸水させることがなくなる効果がある。排尿便処理体51は、内部を舟型とし、底部に設けたノズルからの排水により排尿便を外部へ排出するように構成した横部材52と、尻部や局部を洗浄した後に送風により乾燥を行うノズルを前面に設けた縦部材53とより構成するので、上記排尿便処理体51では、従来の各ノズルが取付けられるオムツフレームを用いることなく、各ノズルを横部材52及び縦部材53に直接取付ける単純な構造のため、短時間で組立て分解作業を行うことができる。しかも、排尿便処理体51の横部材52の終端は、排出パイプ103を介して貯留タンク300と連通連結し、横部材52及び縦部材53に設けた各種ノズルは、送水や送風の制御を行うべく構成したノズル操作部Fを介して洗浄水供給部Eを連通連結したので、仰臥状態の患者の排尿便の処理及び患者の局部や尻部の洗浄乾燥処理をノズル操作部Fで制御しつつ自動で行う効果がある。
【0133】
本実施形態の自動排尿便処理装置によれば、尻載せパッド41の略U字状中央のU字状切欠空間42には、支持枠体31の中央に設けたガイド壁35が嵌着されるように構成したので、尻載せパッド41のU字状切欠空間42がガイド通路34と一体となる効果がある。
【0134】
本実施形態の自動排尿便処理装置によれば、支持枠体31のガイド壁35により形成されるガイド通路34には、排尿便処理体51の横部材52を遊嵌させたので、支持枠体31のガイド通路34が排尿便処理体51の横部材52と一体となる効果がある。
【0135】
本実施形態の自動排尿便処理装置によれば、排尿便処理体51は、尻載せパッド41のU字状切欠空間42に嵌着する略長手楕円形状とした支持ケース55と支持ケース55中に嵌入した略L字形状の処理部本体56とより構成するので、介助者が仰臥した患者に人体仰臥用便器Aを使用する場合において、支持ケース55に尻載せパッド41を載置し、介助者が患者の尻部を尻載せパッド41上に載せ、その後、排尿便処理体51を尻載せパッド41のU字状切欠空間42に嵌着すると共に患者の股間部や尻部に当接できる効果を奏す。また、処理部本体56は、内部を舟型に形成した排尿便受け部82と、その下手側に立設した洗浄ノズル保持体61とにより略L字形状に一体的に構成したので、患者の尻部及び股間部から荷重が排尿便受け部82や洗浄ノズル保持体61に印加されても形状変形を起こすことなく長期に渡り使用することができる効果がある。
【0136】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の実施形態にかかる自動排尿便処理装置の構成を示す図である。
【図2】自動排尿便処理装置の外観斜視図である。
【図3】寝具ベッドの斜視図である。
【図4】寝具ベッドにおしめを装着ときの斜視図である。
【図5】(a)支持枠体の正面図である。(b)図5(a)の断面図である。
【図6】排尿便処理体の斜視図である。
【図7】排尿便処理体を支持枠体に装着したときの構成図である。
【図8】排尿便処理体の分解斜視図である。
【図9】排尿便処理体の断面図である。
【図10】処理部本体の斜視図である。
【図11】逆止弁ケースの断面図である。
【図12】各種ノズルの正面図である。
【図13】(a)前端ノズルブラケットの斜視図である。(b)前端ノズルブラケットの正面図である。(c)前端ノズルブラケットの背面図である。
【図14】(a)採尿器具の斜視図である。(b)採尿器具の断面図である。
【図15】自動排便処理モード時の自動排尿便処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】大便洗浄工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】小便洗浄工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】乾燥工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】手動排便処理モード時の自動排尿便処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0138】
A 人体仰臥用便器
C 処理操作部
D 排泄物収容部
E 洗浄水供給部
F ノズル操作部
G 大便センサー
H 小便センサー
I 着用センサー
J 水位センサー
K 自動排尿便処理装置
11 寝具ベッド
12 装着孔
21 おしめ
22 孔
31 支持枠体
32 底板
33 外周壁
34 ガイド通路
35 ガイド壁
41 尻載せパッド
42 U字状切欠空間
51 排尿便処理体
52 横部材
53 縦部材
55 支持ケース
57 縦ケース
58 カップリング
59 覆体
60 前端ノズルブラケット
64 縁部モール体
66 逆止弁ケース74 三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体仰臥用便器は、寝具用ベッドの略中央に略矩形状に形成した装着孔と装着孔に嵌着し中央にU字状切欠空間を有する尻載せパッドを上面に載置した支持枠体と、尻載せパッドのU字状切欠空間位置に遊嵌した略L字形状の排尿便処理体とよりなり、
排尿便処理体は、内部を舟型とし、底部に設けたノズルからの排水により排尿便を外部へ排出するように構成した横部材と、尻部や局部を洗浄した後に送風により乾燥を行うノズルを前面に設けた縦部材とより構成し、
しかも、排尿便処理体の横部材の終端は、排出パイプを介して貯留タンクと連通連結し、横部材及び縦部材に設けた各種ノズルは、送水や送風の制御を行うべく構成したノズル操作部を介して洗浄水供給部を連通連結した
ことを特徴とする自動排尿便処理装置。
【請求項2】
尻載せパッドの略U字状中央のU字状切欠空間には、支持枠体の中央に設けたガイド壁が嵌着されるように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の自動排尿便処理装置。
【請求項3】
支持枠体のガイド壁により形成されるガイド通路には、排尿便処理体の横部材を遊嵌させた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動排尿便処理装置。
【請求項4】
排尿便処理体は、尻載せパッドのU字状切欠空間に嵌着する略長手楕円形状とした支持ケースと支持ケース中に嵌入した略L字形状の処理部本体とより構成し、
処理部本体は、内部を舟型に形成した排尿便受け部と、その下手側に立設した洗浄ノズル保持体とにより略L字形状に構成した
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動排尿便処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−183421(P2009−183421A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25772(P2008−25772)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(506230219)
【出願人】(506262380)株式会社サンヨーテック (15)
【Fターム(参考)】