説明

自動注射器

本発明は、液体薬剤(M)の用量を投与するための自動注射器(1)に関し、ここで自動注射器(1)は、中空針(4)、及びシリンジ(3)をシールし、薬剤(M)を移動するためのストッパ(6)を備えたシリンジ(3)を含備えたように配置された細長いハウジング(2)(ここで、ハウジング(2)は、遠位端(D)、及び注射サイトに対して適用されるように意図されたオリフィスを備えた近位端(P)を有し、ここで、シリンジ(3)はハウジング(2)に対して摺動可能に配置される);起動の際、以下のことが可能なばね手段(8):ハウジング(2)の内部の被覆位置から前進位置に、オリフィスを通して、そして近位端(P)を通過して針(4)を押すこと、薬剤(M)の用量を供給するためにシリンジ(3)を操作すること、及び薬剤(M)送達後、針(4)を備えたシリンジ(3)を被覆位置へと後退させること;及び手動操作前、ばね手段(8)を加圧状態においてロックするように、そして手動操作の際に、注射するためにばね手段(8)を開放できるように配置される起動手段(20);を含んでなる。ばね手段(8)は、針(4)を前進させるため、そして薬剤(M)の用量を注射するためにプランジャー(9)を介して、ハウジング(2)中の遠位端(8.1)に基礎を置かれるように配置された単一ばね手段(8)であり、そしてここで、圧縮ばね(8)は、シリンジ(3)を後退させるために、その近位端(8.2)に切り替えられたハウジング(2)中のその基礎を有するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルによる自動注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
注射薬の投与は、使用者及び健康管理専門家に対して、多くの精神的及び肉体的両方のリスク及び課題を供するプロセスである。
【0003】
注射デバイス(つまり、薬剤容器から薬剤を送達することが可能なデバイス)は典型的には二つのカテゴリに分けられ得る:手動デバイス及び自動デバイス。
【0004】
手動デバイスにおいて、使用者は、針を通して流体を駆動するために機械的エネルギを供さなければならない。これは、典型的には、注射中に使用者によって連続して押されなければならない幾つかの形態のボタン/プランジャによってなされる。この方法から使用者に対して多くの不利益な点がある。もし、使用者がボタン/プランジャを押すことは停止するならば、注射も停止するであろう。これは、もしデバイスが適切に使用されないならば(つまり、プランジャがその端部位置へと完全に押されないならば)、使用者が過少用量を送達できることを意味する。使用者にとって、特に、もし、患者が老齢者であるか手先の器用さに問題がある場合、注射する力は高過ぎるかもしれない。
【0005】
ボタン/プランジャを伸ばすことはあまりにも大変であり得る。従って、完全に伸ばされたボタンに達することは使用者にとって不便であり得る。注射する力及びボタン伸長の組合せによって、手の震え/振動が引き起こされ得て、次いでそれによって挿入された針が動くため不快感が増すことになる。
【0006】
自動注射器デバイスは、注射される治療薬の自己投与を患者にとってより容易にすることを目的とする。自己投与注射器を用いて送達される現在の治療薬には、糖尿病用薬物(インスリン及びより新しいGLP−1クラスの薬物の両方)、偏頭痛、ホルモン治療薬、抗凝血剤などのための薬物が挙げられる。
【0007】
自動注射器は、標準のシリンジから非経口薬物送達に関わる活動を完全に又は部分的に代替するデバイスである。これらの活動には、保護シリンジキャップの取り外し、患者の皮膚内への針の挿入、薬剤の注射、針の取り外し、針のシールド、及びデバイスの再使用の防止が挙げられ得る。これによって、手動デバイスの多くの不利益な点が克服される。注入力/ボタン伸長、手の振動及び不完全な用量の送達の可能性が低減される。トリガは多くの手段、例えば、トリガボタン又はその注射深さに到達する針の活動によって実行され得る。幾つかのデバイスにおいて、流体の送達エネルギはばねによって供される。
【0008】
特許文献1には、張力ばねが開放されるとき、液体薬剤の事前に測られた量を自動的に注射する自動注射デバイスが開示されている。張力ばねによって、それが開放されるとき、アンプル及び注射針が保存位置から展開位置へと動かされる。その後、アンプルの内容物が、ピストンをアンプル内部に前方に向かって無理に押す張力ばねによって排出される。液体薬剤が注射された後、張力ばね中に蓄えられた張力が開放され、そして注射針が自動的に後退されてその元の保存位置へと戻される。
【0009】
特許文献2には、以下の点で自動化されている注射器が開示されている:使用者又は介護者の助けを借りて針が注射部位(例えば、患者の皮膚)内に挿入される;針の挿入の際に送達が自動的に開始される;そして送達の終了後、針が自動的に後退される。好ましくは、針は注射の前、注射中又は注射後、使用者によって見られない。使用者又は医療提供者に対する如何なる潜在的な怪我又は健康リスクをも避けるよう、注射の前及び後に、針はデバイス中に隠される。注射器は、ハウジング及びハウジングに対して滑るように配置されたシールド、及び薬物送達中に動いているドライバを含む。ハウジング及びシールドはカートリッジ囲いを形成する。カートリッジは送達が完了した後、シールドされそしてロックされる。針ロック機構は、如何なる数のペン状注射器又は安全針においても使用され得る。
【0010】
特許文献3には、自動注射デバイスが開示されており、使用者によって起動される際に、それによって針付きシリンジは自動的に伸ばされ、薬剤が針を通して送達され、そして針が後退されるため、針は見えないように隠される。全ての動きは張力ばね及びカムプロファイルを用いて達成される。
【0011】
特許文献4には、患者への薬物の注射による送達において使用するのに適するシリンジ用の自動注射器が開示されている。自動注射器は、シリンジを受け取るように配置されたハウジング空洞を画成しているハウジング;及び液体薬物製剤の投与中に、それを通してシリンジの針の先端が突き出る針送達開口部を含む。自動注射器は、シリンジのバレルに連結してそれと歩調をあわせて可動のバレル連結エレメント;中空針がハウジング内にある休止位置から、針の先端が針送達開口部を通して突き出る使用位置へと、それらと歩調をあわせてシリンジ及びバレル連結エレメントを動かすためのシリンジアドバンサー;液体薬物製剤を投与するために、シリンジのバレル内に該プランジャを突っ込むことによってシリンジを作動させるためのシリンジアクチュエータ;使用位置から中空針がハウジング内にある後退位置へと、それらと歩調をあわせて、シリンジ及びバレル連結エレメントを後退させるためのシリンジ後退器;並びにバレル連結エレメント及び後退位置においてそれに連結されるシリンジをロックするためのシリンジロック;を更に含む。
【0012】
特許文献5には、挿入針の自動的な挿入及び自動的な後退を確保する、挿入針及びばねユニットを含む点滴セットのための挿入器具が開示されている。医療デバイス用の挿入器具は以下を含む:ハウジング;ハウジングに対して動き得て、挿入方向を向いている貫通手段を含む第一の本体;やはりハウジングに対して動き得る第二の本体;並びに第一の本体及び第二の本体を各々、ハウジングに対して動かす駆動手段(ここで、駆動手段は第一の本体を挿入方向に動かし、そして第二の本体を挿入方向とは異なる方向に動かす)。
【0013】
特許文献6には、挿入針の自動的な挿入及び自動的な後退を確保する、挿入針及びばねユニットを含む点滴セットのための挿入器具が開示されている。医療デバイス用の挿入器具は以下を含む:ハウジング;ハウジングに対して動き得て、挿入方向を向いている貫通手段を含む第一の本体;やはりハウジングに対して動き得る第二の本体;並びに第一の本体及び第二の本体を各々、ハウジングに対して動かす駆動手段(ここで、駆動手段は第一の本体を挿入方向に動かし、そして第二の本体を挿入方向とは異なる方向に動かす)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願、2002/0095120A1号公報
【特許文献2】米国特許出願、2007/0112310A1号公報
【特許文献3】米国特許第5,267,963号公報
【特許文献4】WO 2009/081103A1号公報
【特許文献5】WO 2008/155377号公報
【特許文献6】ドイツ特許出願 10 2005 038 933A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、改良された自動注射器を供することである。
【0016】
本目的は請求項1による自動注射器によって達成される。
【0017】
本発明の好ましい実施態様は従属請求項において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、液体薬剤の用量を投与するための自動注射器は以下を含む:
−中空針、及びシリンジをシールし、薬剤を移動させるためのストッパを備えたシリンジを含有するように配置された細長いハウジング(ここで、ハウジングは、遠位端、及び注射サイトに対して適用されるように意図されたオリフィスを備えた近位端を有し、ここで、シリンジはハウジングに対して摺動可能に配置される)、
−起動の際、以下のことが可能なばね手段、
−ハウジングの内部の被覆位置から前進位置に、オリフィスを通して、そして近位端を通過して針を押すこと、
−薬剤の用量を供給するためにシリンジを操作すること、及び
−薬剤送達後、針を備えたシリンジを被覆位置へと後退させること、
−手動操作前、ばね手段を加圧状態においてロックするように、そして手動操作の際に、注射するためにばね手段を開放できるように配置される起動手段。
【0019】
この特許出願の文脈において、用語「近位」は、注射中に患者に向かって指し示している方向を言及しており、一方、用語「遠位」は、患者から離れて指し示している反対方向を言及している。
【0020】
本発明によると、ばね手段は、針を前進させるために、そして薬剤の用量を注射するためにハウジング中の遠位端に基礎を置くように配置された単一ばね手段である。圧縮バネの力は、プランジャを介して、針及び/又はシリンジに送られる。圧縮ばねは、薬剤の注射が少なくともほぼ完了するとき、シリンジを後退させるために、その近位端に切り替えられたハウジング中のその基礎を有するように配置される。
【0021】
単一圧縮ばねは、針を挿入し、シリンジを完全に空にし、そしてシリンジ及び針を注射後に安全な位置に後退させるために使用される。このように、シリンジを前進させそして用量を注射するのと比べて反対の動きである、シリンジ及び針を引くための第二のばねは必要でない。圧縮ばねの遠位端が置かれる一方、近位端は、針を挿入するためにシリンジを前方に向かって動かし、そしてストッパ上を押すことによって注射を実行する。注射が少なくともほぼ終了したとき、圧縮ばねはその近位端でボトムアウト(bottom out)し、その結果、近位端がハウジング中に置かれる。同時に、圧縮ばねの遠位端はハウジング中そのグラウンド(ground)から開放される。ここで圧縮ばねはシリンジを反対方向に引いている。
【0022】
本発明による自動注射器は、殆どの従来の自動注射器と比較して特に低い部品数を備えた。たった一つの圧縮バネの使用によって必要な金属の量が低下し、その結果、重量及びコストが低下する。
【0023】
本発明の好ましい実施態様において、後退スリーブはハウジング中に軸方向に可動に配置される。少なくとも一つのラッチは、後退スリーブを最近位位置に軸方向に固定するために設けられる。圧縮ばねは、その遠位端を後退スリーブの遠位端面に重みがかかり、そしてその近位端を連結解除手段のスラスト面に重みがかかる。連結解除手段は、近位方向にほぼ最近位位置へと動かされるとき、ラッチを連結解除するように配置される。連結解除されるとき、後退スリーブは遠位方向に動くこと、そしてもはやその遠位端に置かれないばねの力を用いて針を後退させることが可能になる。
【0024】
好ましくは、プランジャはシリンジ及び/又はヅトッパを近位方向に押すように配置される。少なくとも二つの弾力連結解除アームが連結解除部材に配置される。連結解除アームは、近位方向Pに、プランジャの第一のショルダに重みがかかる内部傾斜表面を示す。弾力連結解除アームは、連結解除アームが外側に向かって曲げられること、及び第一のショルダを滑って通過することを防ぐように、後退スリーブの内壁によって支持可能である。この状態において、プランジャは、針を挿入するためにそして用量を注射するために第一のショルダに抗して押している連結解除部材によって、近位方向に押され得る。少なくとも一つの開口部が後退スリーブ中に配置されて、連結解除アームが第一のショルダによって外側に向かって曲げられることが可能になり、そのようにして第一のショルダが連結解除アームを通って近位方向に滑ることが可能になる。これは、注射が少なくともほぼ完了されるときに生じ得る。連結解除プランジャによって、それがもはや連結解除部材に重みがかからない故に、シリンジ及び針が後退されることが可能になる。
【0025】
シリンジは、後退スリーブ中に摺動可能に配置されるシリンジホルダと一緒に軸方向に動くように配置され得る。シリンジホルダに、遠位に配置された少なくとも二つの弾力シリンジホルダアームが備えられ、ここでシリンジホルダアームは、第一のショルダから近位でプランジャに配置される第二のショルダに重みがかかるための各傾斜した表面を備えた。シリンジホルダアームは、それらが外側に向かって曲げられること防ぐためにハウジングの内表面によって支持可能である。このように、トリガボタンが押されるとき、プランジャによって送られるばねの力は、まだストッパに抗して押していないが、それを送るためにシリンジに抗して押す。その結果、所謂、注射液漏れが避けられる、つまり、針が挿入される前に中空針から液体薬剤が漏れていない。シリンジホルダが最近位位置にほぼ到達したとき、シリンジホルダアームが外側に向かって曲がることを可能にするために拡幅された部分がハウジング中に供され、そのようにして第二のショルダがシリンジホルダアームを通して滑ること、そして圧縮ばねの負荷をシリンジからストッパに切り替えることが可能になる。これによって、薬剤の注射を始める瞬間を定義することが可能になる。
【0026】
スタッドはプランジャの遠位端に配置され得る。後退スリーブは、端面から遠位で、スタッドを保持するために二つ又はそれ以上の弾力アームを備えた。スタッド及び/又は弾力アームは、傾斜路機能を備えた。このように、プランジャが近位端に動かされるとき、弾力アームはスタッドによって押されて離され得る。起動手段は、自動注射器の遠位端に配置されたトリガボタンを含む。トリガボタンは、軸方向に可能であり、トリガボタンが最遠位位置にあるとき、弾力アームが外側に向かって曲げられることを防止するために、少なくとも二つの剛性の保持体を備えた。近位方向にトリガボタンを押す際に、圧縮ばねによって近位方向に付勢されたスタッドによって弾力アームが外側に曲げられることを可能にするように、保持体は近位方向に移動する。従ってスタッドが、針の挿入/注射/後退サイクルを始めるための圧縮バネの負荷の下で、近位方向に弾力アームを通過して滑ることを可能にする。このトリガ機構の主な利点は、その単純さ、少ない部品数及び高い信頼性である。
【0027】
自動注射器を意図せずにトリガするリスクを少なくするために、安全ボタンはハウジングに縦方向に配置される。安全ボタンは、トリガボタンが押されることを防ぐためにインターロックを備えた。安全ボタンは、操作されるとき、インターロックを外側に向かって引くように配置され、そのようにしてトリガボタンが押されることが可能になる。この目的のために、安全ボタンがハウジング中で旋回され得るか、または中ほどで幾らか旋回されるように、それがハウジングと一体物にキャスト成形され得て、その結果、一端を内側に向かって押すことにより他の端が外側に向かって引かれることになる。
【0028】
その結果、自動注射器が無意識に操作され得ないように、トリガボタンを操作するために、安全ボタンが最初に押される必要がある。縦方向の安全ボタンの別の利点は、自動注射器を悪い向きに操作するリスク及び親指内に注射するリスクが下がることである。
【0029】
本発明の好ましい実施態様において、遅延ボックスは後退スリーブの動きを減速するために配置される。ラッチは、ストッパがシリンジ中の最近位位置に達する前に、連結解除手段によって係合解除されるように配置される。開口部は、ストッパが後退スリーブの動きを用いてその最近位位置に達した後、連結解除アームに出会うように配置される。ギャップは、それらの各最近位位置において、後退スリーブの前面とシリンジホルダの間に設けられる。ギャップは、シリンジホルダを後退させる前に、後退スリーブが距離を走行することを可能にし、その結果、連結解除アームが開口部に出会った後、シリンジホルダは後退させられる。
【0030】
ストッパが正確にその走行の最後に達するときに、後退をトリガすることはシリンジ及びストッパの製造時の許容誤差のせいで、問題である。これらの許容誤差のせいで、その走行の最後でのストッパの正確な位置の再現性はない。その結果、幾つかの場合、ストッパは早めにボトムアウトするであろうし、その結果、後退は全くトリガされないであろう。他の場合において、後退はストッパがボトムアウトされる前にトリガされるであろうし、その結果、残留薬剤がシリンジ中に留まる。
【0031】
ストッパがシリンジ中にボトムアウトする前に、或る時間又は走行距離で、ハウジングから後退スリーブを開放することによって、シリンジの端部を早めに打つストッパによって後退を失速させるリスクが回避される。遅延ボックスのせいで、後退スリーブの減速された後方への動きによって、プランジャ及びストッパがそれらの前進走行を完了することが可能になり、その結果、シリンジが完全に空になる。ここで反対方向に動いている後退スリーブ及び連結解除アームの開口部は、ストッパ及びプランジャが、連結解除部材をプランジャから連結解除するために止まった後に出会う。前面とシリンジホルダの間の空隙のせいで、後退スリーブは、後方に戻るよう動き始めるとき、シリンジを遠位方向に直ぐには引き戻していない。空隙を閉じるために十分遠くに後退スリーブが走行して戻ったとき、ストッパは既にボトムアウトしており、そしてプランジャは連結解除部材から連結解除されている。空隙が閉じられるや否や、シリンジホルダ、シリンジ、中空針及びプランジャは遠位方向に引きずられて戻る。
【0032】
このように、両方の問題が解決され、そして中空針が高い信頼性で安全な位置に後退され、そしてシリンジを完全に空にするが、それは、高価な薬物を用いる際に、特に、望ましい。シリンジを空にすることは用量の正確さにとっても重要である。
【0033】
遅延ボックスは、ハウジングに取り付けられた後方カラーを備えた円周状外壁、及び後退スリーブに取り付けられた前方カラーを備えた周辺内壁を含み得る。ボリュームは外壁と内壁の間で画成され、そのボリュームは後方カラー及び前方カラーによってシールされ、粘性流体で持たされている。後退スリーブの動きのせいでボリュームが減少するにつれて、粘性流体が押し出されるのを可能にするために、少なくとも一つの孔が遅延ボックスに配置されている。これは、後退スリーブの後方への運動を減速するために、特に、簡単でそしてコスト効率的である。
【0034】
通常、針を滅菌状態に維持し、そしてそれが機械的に損傷されることを防ぐための保護ニードルシールドが中空針に装備される。保護ニードルシールドは、自動注射器又はシリンジが組立てられるとき、針に取り付けられる。
【0035】
好ましくは、キャップはハウジングの近位端に設けられる。板金クリップは、ジョイント軸方向運動及び独立回転用にキャップに取り付けられる。キャップがハウジングに取り付けられるとき、板金クリップはオリフィスを通ってハウジング内に伸びるように配置される。板金クリップは、円周状のノッチ内に、又は保護ニードルシールドのショルダの後ろにパチンと閉められる少なくとも二つのかかりを含む。これによって、組立中に、板金クリップを保護ニードルシールドと自動的に係合するが可能になる。注射の準備において、キャップがハウジングから取り外されるとき、保護ニードルシールドは、自らの怪我に対するあまりにも高いリスクに使用者を曝すことなく、高い信頼性で取り外される。
【0036】
キャップはねじ連結によってハウジングに取り付けられ得る。これによって、保護ニードルシールドの低い力での取り外しが可能になる。
【0037】
ハウジングは、シリンジを検査するための少なくとも一つの覗窓を有し得る。
【0038】
自動注射器は、好ましくは、特に、鎮痛剤、抗凝血剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、Lovenox、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、蛋白質、抗体、及び複合糖質の一つを送達するための、皮下又は筋肉内の注射のために使用され得る。
【0039】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、実施態様において、薬学的に活性な化合物は、最大で1500Daまでの分子量を有し、及び/又は、ペプチド、蛋白質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、抗体、酵素、抗体、ホルモン、若しくはオリゴヌクレオチド、又は上記の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症、及び/又は、関節リウマチの治療、及び/又は、予防に有用であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の治療、及び/又は、予防のための、少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、又はその類似体若しくは誘導体、又はエキセンジン−3又はエキセンジン−4、若しくはエキセンジン−3又はエキセンジン−4の類似体若しくは誘導体を含む。
【0040】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで代替され、そして、B28位において、Lysは、Proで代替されてもよく;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0041】
ヒトインスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0042】
エキセンジン−4は、例えば、エキセンジン−4(1−39)、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドを意味する。
【0043】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下の化合物リスト:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);又は
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
ここで、基−Lys6−NH2は、エキセンジン−4誘導体のC−末端と結合してもよく;
【0044】
又は以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desMet(O)14,Asp28,Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5,desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
又は前述のいずれかのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物;
から選択される。
【0045】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン (ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどのRote Liste、2008年版、50章に表示されている脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は規制活性ペプチド及びそれらの拮抗剤である。
【0046】
多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、又は超低分子量ヘパリン、若しくはその誘導体などのグルコアミノグリカン、又はスルホン化された、例えば、上記多糖類のポリスルホン化形体、及び/又は、薬学的に許容可能なその塩がある。ポリスルホン化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例としては、エノキサパリンナトリウム塩がある。
【0047】
薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基塩がある。酸付加塩としては、例えば、HCl又はHBr塩がある。塩基塩は、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、Na+、又は、K+、又は、Ca2+から選択されるカチオン、又は、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)を備えた塩であり、ここで、R1〜R4は互いに独立に、水素;場合により置換されるC1−C6アルキル基;場合により置換されるC2−C6アルケニル基;場合により置換されるC6−C10アリール基、又は場合により置換されるC6−C10ヘテロアリール基である。薬学的に許容される塩の更なる例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences”17編、Alfonso R.Gennaro(編集),Ma
rk Publishing社,Easton, Pa., U.S.A.,1985 及び Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0048】
薬学的に許容可能な溶媒和物としては、例えば、水和物がある。
【0049】
遅延ボックスは他のタイプの自動注射器と共に採用され得る。
【0050】
板金ばねを備えたキャップも他の自動注射器及び注射デバイスと共に適用され得る。
【0051】
本発明の適用性の更なる範囲は以下に述べる詳細な記述から明らかになるであろう。しかしながら、この詳細な記述から、本発明の精神及び範囲内で、種々の変更及び修正が当業者には明白になるであろう故に、詳細な記述及び具体的な例は、本発明の好ましい実施態様を表していながらも、説明目的でのみ供されると理解されるべきである。
【0052】
図示のためにのみ供され、それゆえに本発明を限定するものではない、本明細書の以下に供される詳細な記述及び添付図面から、本発明はより完全に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】針を備えたシリンジを前進させ、薬剤の用量を注射し、そしてシリンジ及び針を後退させるための単一圧縮ばねを備えた、送達されたままの自動注射器の二つの縦方向断面である。
【図2】シリンジ及び針が前進した、そしてシリンジから用量が排出された自動注射器の二つの縦方向断面である。
【図3】図1の初期状態における自動注射器の斜視断面である。
【図4】図3の自動注射器の別の斜視断面図である。
【図5】遅延機構を備えた自動注射器の遠位端の詳細図である。
【図6】キャップ及び針シールド取り外し器を示している自動注射器の近位端の詳細図である。
【0054】
対応する部品には全ての図において同じ参照記号が印される。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、自動注射器1の異なる断面における二つの縦方向断面を示し、ここで、異なる断面は互いに約90度回転される。自動注射器1は伸ばされたハウジング2を含む。中空針4を備えたシリンジ3、例えば、Hypakシリンジは自動注射器1の近位部分において配置される。自動注射器1又はシリンジ3が組立てられるとき、保護ニードルシールド5は針4に取り付けられる。ストッパ6はシリンジ3を遠位でシールするために、そして液体薬剤Mを、中空針4を通して移動するために配置される。シリンジ3はチューブ状シリンジキャリア7中に保持され、そしてその近位端でその中に支持可能である。単一圧縮ばね8は自動注射器1の遠位部分に配置される。プランジャ9は圧縮ばね8のばね力を送るために配置される。
【0056】
ハウジング2の内部に、後退スリーブ10が摺動可能に配置される。図1において示されるように、注射がトリガされる前に、後退スリーブ10は最近位位置にあり、そしてハウジング2中のラッチ12の後ろに捕捉された停止部11を用いて遠位方向Dに動くことが防がれる。圧縮ばね8の遠位端は後退スリーブ10の端面13に重みがかかる。停止部11及びラッチ12のせいで、圧縮ばね8の力はこのようにハウジング2内で作用される。圧縮ばね8の近位端はプランジャ9の周りに配置された連結解除部材14に重みがかかる。端面13から遠位で、後退スリーブは、スタッド16を保持するための、そしてそれが近位方向Pに動くことを避けるための二つ又はそれ以上の弾力アーム15を有する。スタッド16はプランジャ9の遠位端に配置される。スタッド16及び弾力アーム15は、スタッド16及びプランジャ9が近位方向Pに動くことを可能にすべく、弾力アーム15を押して離すための対応する傾斜路機能を有する。
【0057】
連結解除部材14は圧縮ばね8の近位端に重みがかかるためのスラスト面17を含む。スラスト面17から近位で、二つ又はそれ以上の弾力連結解除アーム18が連結解除部材14で供され、ここで連結解除アーム18は近位方向Pにプランジャ9中で第一のショルダ19に重みがかかる内部傾斜表面を有する。弾力連結解除アーム18はこの状況において、後退スリーブ10の内壁によって支持可能であるため、それらは外側に向かって曲がり得ないし、そして第一の第一のショルダ19を通過して滑り得ない。
【0058】
トリガボタン20は自動注射器1の遠位端Dに配置される。トリガボタン20は、注射を始めるために近位方向Pに押され得る。トリガボタン20が押されない限り、弾力アーム15はトリガボタン20に配置された二つ又はそれ以上の保持体21の間に捕捉され、その結果、弾力アーム15は外側に向かって曲がり得ないし、そしてスタッド16は、圧縮ばね8によって近位で付勢されるものの、それを通して滑り得ない。
【0059】
シリンジキャリア7は、後退スリーブ10中に摺動可能に配置されるシリンジホルダ22と一緒に軸方向に動くように係合する。シリンジホルダ22には、遠位に配置された二つ又はそれ以上のシリンジホルダアーム23が供される。シリンジホルダアーム23は、第一のショルダ19から近位に配置されたプランジャ9において第二のショルダ24に重みがかかるための各々傾斜した表面を有する。図1において示された初期位置において、シリンジホルダアーム23はハウジング2の内表面によって支持可能であり、その結果、それらは外側に向かって曲がり得ないし、そして第二の第二のショルダ24はそれを通して滑り得ない。ハウジング2でシリンジホルダアーム23を支持するために、後退スリーブ10において各数の開口部が供される。
【0060】
図1は、キャップ25を自動注射器1の近位端P上にねじ込んだ、送達されたままの自動注射器1を示す。図6は、キャップ25を備えた近位端Pの詳細を示す。伸びている二つ又はそれ以上のかかり27を備えた板金クリップ26を含む。板金クリップ26は、自動注射器1の縦軸に対して一緒に軸方向に動くようにキャップ25に搭載される。しかしながら、板金クリップ26はキャップ25から独立して回転し得る。これは、そのベースにおいて穴を備えた板金クリップ26を、キャップ25から内側に向かって突き出ているピンの上に取り付けることによって、そして板金クリップ26が回転するための幾らかの空隙を可能にしながら、板金クリップ26が取り外されることを防ぐように、きのこの形をしたクロージングヘッド28を形成するためにピンを変形することによって達成され得る。キャップ25が自動注射器1の近位端P上にねじ込まれるとき、かかり27は保護ニードルシールド5の下に押され、そして保護ニードルシールド5中に又はそのショルダの背後に配置された周囲のノッチ内にパチンと嵌め込まれる。
【0061】
使用者が自動注射器1を操作することを望むとき、第一の工程はキャップ25のねじを外すことである。このように、かかり27は保護ニードルシールド5をシリンジ3から離して近位方向Pに、そしてオリフィスを通して引っ張り、シリンジ3を使用されるように準備する。
【0062】
安全ボタン29はハウジング2の遠位端で縦方向に配置される。安全ボタン29は、安全ボタン29が最初に押されることなしに、トリガボタン20が偶然に押されることを防ぐように、トリガボタン20とインターロックするために役立つ。
【0063】
その結果、トリガボタン20を操作するために、安全ボタン29は、安全ボタン29中に形成されるばねエレメント30の力に抗して、縦軸に対して横切るように押されることが必要である。安全ボタン29は中間において旋回されるため、安全ボタン29の近位端を内側に向かって押すことによって、トリガボタン20を妨害しているその近位端でインターロック31が外側に向かって引かれ、その結果、トリガボタン20が押され得る。
【0064】
トリガボタン20が押されるとき、保持体21は近位方向Pに押され、そのため弾力アーム15は外側に向かって曲がることが可能になる。圧縮ばね8の負荷の下で、スタッド16の傾斜した表面によって、スタッド16が滑って通過し得るまで弾力アーム15が無理やり離される。
【0065】
第二のショルダ24は、シリンジホルダ22、シリンジキャリア7及びシリンジ3を前方に向かって押し、一方、ストッパ6上には全く負荷がかけられない。中空針4は近位端Pから現われ、そして注射部位、例えば、患者の皮膚内に挿入される。
【0066】
前進運動は、シリンジホルダ22がハウジング2中の第一の接合点32でボトムアウトするまで続く(図2参照)。初期位置(図1参照)からこの点までの走行によって、注射深さ、つまり針の挿入深さが定義される。
【0067】
シリンジホルダ22がほぼボトムアウトしたとき、シリンジホルダアーム23はハウジング2の―保持体21に達しており、ここでそれらはもはやハウジング2の内壁によって支持されない。しかしながら、針4を挿入するために要求される力が比較的に小さい故に、第二のショルダ24は、近位走行が第一の接合点32で止められるまで、シリンジホルダ22を前方に向かって駆動し続けるであろう。この点で、シリンジホルダアーム23は第二のショルダ24の連続した力によって外側に曲げられ、そしてそれが滑って通過することを可能にする。ここで、プランジャ9は、薬剤Mをシリンジ3から排出し、そしてそれを患者の皮膚内に又はそれを通して注射するために、もはやシリンジホルダ22に抗して押すことはなく、ストッパ6に抗して押す。
【0068】
ストッパ6がシリンジ3中にほぼボトムアウトしたとき(図2参照)、連結解除部材14は、それが後退スリーブ10をハウジング2から連結解除するようにラッチ12に抗して押す位置に到達しているので、後退スリーブ10は遠位方向Dに滑り得る。このように、圧縮ばね8はハウジング2においてその遠位端にもはや置かれない。その代わりに、連結解除部材14が第二の接合点33でボトムアウトするや否や、圧縮ばね8の近位端はハウジング中に置くようになり、一方で、遠位端は遠位方向Dに後退スリーブ10を引いている。
【0069】
連結解除部材14が後退スリーブ10をハウジング2から連結解除する直前に、連結解除アーム18は後退スリーブ10中の開口部34に到達し(図4参照)、その結果、それらはもはや外側に向かって曲げられることを避けられない。連結解除アーム18はこのようにその傾斜した表面に抗して押している第一のショルダ19によって外側に向かって押され、その結果、第一のショルダ19は、連結解除部材14が第二の接合点33を打ったら直ぐに、遠位方向に滑って通過する。
【0070】
シリンジホルダ22は後退スリーブ10によって、例えば、前面35によって、遠位方向Dに沿って取られる。このように、シリンジ3及び針4はハウジング2の内部の安全な位置、例えば、初期位置へと後退される。もはや連結解除アーム18に重みがかからないで、プランジャ9も押し戻される。
【0071】
自動注射器1の遠位部分において、遅延ボックス36は配置される(詳細は図5を参照)。遅延ボックス36は、ハウジング2に取り付けられた後方カラー38を備えた円周状外壁37、及び後退スリーブ10に取り付けられた前方カラー40を備えた周辺内壁39を含む。外壁37と内壁39の間のボリュームはシリコーングリースのような粘性流体満たされる。後退スリーブ10が遠位方向Dに動かされるので、内壁39は外壁37に沿って滑走し、ここで後方カラー38及び前方カラー40は空洞のボリュームを増々低下させる。遅延ボックス36の一部において供された一つ又はそれ以上の(示されていない)穴によって、ボリュームが減少するとき、粘性流体が空洞から押し出されることが可能になる。これを行うために要求される力によって、後退スリーブ10の動きが遅くなる。
【0072】
後退スリーブ10は、ストッパ6がシリンジ3中にボトムアウトする前に、或る時間又は走行で、ハウジング2から連結解除部材14によって開放され、そして後退スリーブ10の遠位運動が始まる。後退スリーブ10の動きは遅延ボックス36によって減速される。前面35とシリンジホルダ22の間のギャップ41のせいで、後退スリーブ10は、シリンジを遠位方向Dにまだ引いていない。プランジャ9はストッパ6に抗してまだ押しており、そして残留薬剤Mを排出している。ストッパ6がシリンジ3の近位端を打つので、ストッパ6及びプランジャ9は止まり、一方、後退スリーブ10はまだゆっくりと遠位方向Dに動いて戻っている。ここで開口部34は連結解除アーム18に出会い、それらが外側に曲がること及びプランジャ9がクリアになる(come clear)ことを可能にする。後退スリーブ10はここでギャップ41を閉じるのに十分なだけ後方に走行したので、シリンジホルダ22、シリンジキャリア7、シリンジ3、針4及びプランジャ9は遠位方向Dに引きずられて戻る。
【0073】
キャップ25及び遅延ボックス36は、本実施態様において示された自動注射器1と共に使用されるよう制約されるわけではない。代わりに、キャップ25は、注射の前にハウジング中に隠された針を備えた如何なる種類の自動注射器とも組み合され得る。遅延ボックスは、各自動注射器において使用されるばね手段又は駆動手段に関わらず、シリンジの内容物の完全な送達を確保するために、そして後退の信頼性あるトリガのために如何なる種類の自動注射器とも組み合され得る。
【0074】
ハウジング2はシリンジ3を検査するために、少なくとも一つの覗窓を有し得る。
【0075】
自動注射器1は、特に、鎮痛剤、抗凝血剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、Lovenox、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、蛋白質、抗体、及び複合糖質の一つを送達するために皮下注射又は筋肉内注射に対して使用され得る。
【0076】
シリンジ(3)又はストッパ(6)のどちらかにプランジャ(9)を連結するための前述の配置は、駆動部材の力をストッパ付きシリンジに送るためのプランジャを備えた如何なる自動注射器においても適用され得る。この配置の主たる利点は、針が患者に挿入されるまでは、駆動部材からの負荷が直接ストッパに移されないことを確保し、そのようにして注射液漏れが避けられることである。本配置は、シリンジホルダ(22)及び付属のシリンジホルダアーム(23)、プランジャ(9)上のショルダ(例えば、第二のショルダ24)、それらが、第一の位置で曲がることを防ぐための、内表面によるホルダアーム(23)の支持部、それらが半径方向に曲がること、そしてより近位位置にあるとき、プランジャから連結解除することを可能にするための拡幅された部分(2.1)を含む。ばね手段又は他の駆動手段、シリンジを後退させる又は注射後に針鞘を前進させる能力、及び本明細書において述べられた他の機構は、注射液漏れを防ぐためは要求されない。
【符号の説明】
【0077】
1 自動注射器
2 ハウジング
2.1 拡幅された部分
3 シリンジ
4 中空針
5 保護ニードルシールド
6 ストッパ
7 シリンジキャリア
8 ばね手段、圧縮ばね
8.1 遠位端
8.2 近位端
9 プランジャ
10 後退スリーブ
11 停止部
12 ラッチ
13 端面
14 連結解除手段
15 弾力アーム
16 スタッド
17 スラスト面
18 連結解除アーム
19 第一のショルダ
20 起動手段、トリガボタン
21 保持体
22 シリンジホルダ
23 シリンジホルダアーム
24 第二のショルダ
25 キャップ
26 板金クリップ
27 かかり
28 クロージングヘッド
29 安全ボタン
30 ばねエレメント
31 インターロック
32 第一の接合点
33 第二の接合点
34 開口部
35 前面
36 遅延ボックス
37 外壁
37.1 ショルダ
38 後方カラー
39 内壁
40 前方カラー
41 ギャップ

D 遠位端、遠位方向
M 薬剤
P 近位端、近位方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−中空針(4)、及びシリンジ(3)をシールし、薬剤(M)を移動させるためのストッパ(6)を備えたシリンジ(3)を含有するように配置された細長いハウジング(2)(ここで、ハウジング(2)は、遠位端(D)、及び注射サイトに対して適用されるように意図されたオリフィスを備えた近位端(P)を有し、ここで、シリンジ(3)はハウジング(2)に対して摺動可能に配置される)、
−起動の際、以下のことが可能なばね手段(8)、
−ハウジング(2)の内部の被覆位置から前進位置に、オリフィスを通して、そして近位端(P)を通過して針(4)を押すこと、
−薬剤(M)の用量を供給するためにシリンジ(3)を操作すること、及び
−薬剤(M)送達後、針(4)を備えたシリンジ(3)を被覆位置へと後退させること、
−手動操作前、ばね手段(8)を加圧状態においてロックするように、そして手動操作の際に、注射するためにばね手段(8)を開放できるように配置される起動手段(20)、を含んでなる、液体薬剤(M)の用量を投与するための自動注射器(1)であって、
ばね手段(8)が、針(4)を前進させるため、そして薬剤(M)の用量を注射するためにプランジャ(9)を介して、ハウジング(2)中の遠位端(8.1)に基礎を置くように配置された単一ばね手段(8)であり、そしてここで、圧縮ばね(8)は、そのばね(8)の近位端(8.2)に切り替えられたハウジング(2)中のその基礎を有するように配置され、一方、圧縮ばね(8)の遠位端(8.1)は、シリンジ(3)を後退させるためにハウジング(2)中のその基礎から開放されることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の自動注射器(1)であって、後退スリーブ(10)がハウジング(2)内に軸方向に可動に配置され、ここで、少なくとも一つのラッチ(12)は、最近位位置において後退スリーブ(10)を軸方向に固定するために設けられ、ここで圧縮ばね(8)は、遠位端面(13)に重みがかかるその遠位端を備え、そして連結解除手段(14)のスラスト面(17)に重みがかかるその近位端を備えて後退スリーブ(10)内側に配置され、ここで、連結解除部材(14)は、最近位位置の近くに近位方向(P)に移動したとき、ラッチ(12)を連結解除するように配置され、従って後退スリーブ(10)が遠位方向(D)に動くこと及び針(4)を後退させることを可能にすることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動注射器(1)であって、少なくとも二つの弾力連結解除アーム(18)が連結解除部材(14)に配置され、ここで連結解除アーム(18)は、プランジャ(9)の第一のショルダ(19)に近位方向(P)に重みがかかる内側傾斜表面を有し、ここで、弾力連結解除アーム(18)は、連結解除アーム(18)が外側に向かって曲げられ、第一のショルダ(19)を滑って通過するのを防止するように、後退スリーブ(10)の内壁によって支持可能であり、そしてここで、少なくとも一つの開口部(34)が後退スリーブ(10)中に配置されて、連結解除アーム(18)が第一のショルダ(19)によって外側に向かって曲げられることが可能になり、従って第一のショルダ(19)が連結解除アーム(18)を通して近位方向(P)に滑ることが可能になり、ここで、プランジャ(9)がシリンジ(3)及び/又はストッパ(6)を近位方向(P)に押すように配置されることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の自動注射器(1)であって、シリンジ(4)が、後退スリーブ(10)中に摺動可能に配置されるシリンジホルダ(22)とのジョイント軸方向運動用に配置され、ここで、シリンジホルダ(22)に、遠位に配置された少なくとも二つの弾力シリンジホルダアーム(23)が備えられ、ここでシリンジホルダアーム(23)は、第一のショルダ(19)から近位にプランジャ(9)に配置される第二のショルダ(24)に重みがかかるためのそれぞれの傾斜表面を有し、ここでシリンジホルダアーム(23)は、それらが外側に向かって曲げられることを防止するためにハウジング(2)の内表面によって支持可能であり、そしてここで、シリンジホルダ(22)が最近位位置にほぼ到達したとき、シリンジホルダアーム(23)は外側に向かって曲がることを可能にするように、拡幅された部分(2.1)がハウジング(2)内に設けられ、従って第二のショルダ(24)がシリンジホルダアーム(23)を通して滑り、そして圧縮ばね(8)の負荷をシリンジ(3)からストッパ(6)に切り替えるのを可能にすることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、スタッド(16)がプランジャ(9)の遠位端に配置され、ここで、後退スリーブ(10)は、端面(13)から遠位方向にスタッド(16)を保持するための二つ又はそれ以上の弾力アーム(15)を有し、ここで、スタッド(16)及び/又は弾力アーム(15)は、傾斜路機能を有し、プランジャ(9)が近位方向(P)に移動したとき、弾力アーム(15)がスタッド(16)によって押されて離され得、ここで、起動手段は、自動注射器(1)の遠位端(D)に配置されたトリガボタン(20)を含み、ここで、トリガボタン(20)は、軸方向に可動であり、トリガボタン(20)が最遠位位置にあるとき、弾力アーム(15)が外側に向かって曲げられることを防止するために、少なくとも二つの剛性の保持体(21)を有し、そしてここで、近位方向(P)にトリガボタン(20)を押す際に、圧縮ばね(8)によって近位方向(P)に付勢されたスタッド(16)によって弾力アーム(15)が外側に曲げられることを可能にするように、保持体(21)は近位方向(P)に移動し、従ってスタッド(16)が近位方向(P)に弾力アーム(15)を通過して滑ることを可能にすることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の自動注射器(1)であって、安全ボタン(29)がハウジング(2)に横方向に配置され、ここで、安全ボタン(29)は、トリガボタン(20)が押されることを防止するためのインターロック(31)を有し、ここで安全ボタン(29)は、操作するとき、インターロック(31)を外側に向かって引くように配置され、従ってトリガボタン(20)を押すのを可能にすることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、遅延ボックス(36)が後退スリーブ(10)の運動を遅くするために配置され、ここで、ラッチ(12)は、ストッパ(6)がシリンジ(3)の最近位位置に達する前に、連結解除手段(14)によって係合解除されるように配置され、ここで、開口部(34)は、ストッパ(6)が後退スリーブ(10)の運動によってその最近位位置に達した後、連結解除アーム(18)に出会うように配置され、そしてここで、ギャップ(41)は、それぞれの最近位位置において、後退スリーブ(10)の前面(35)とシリンジホルダ(22)の間に設けられ、ここで、ギャップ(41)は、シリンジホルダ(22)を後退させる前に、後退スリーブ(10)が距離を走行することを可能にし、その結果、連結解除アーム(18)が開口部(34)に出会った後、シリンジホルダ(22)は後退することを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の自動注射器(1)であって、遅延ボックス(36)が、ハウジング(2)に取り付けられた後方カラー(38)を備えた円周状外壁(37)、及び後退スリーブ(10)に取り付けられた前方カラー(40)を備えた円周状内壁(39)を含み、ここで、ボリュームは外壁(37)と内壁(39)の間に画成され、ここで、ボリュームは、後方カラー(38)及び前方カラー(40)によってシールされ、そして粘性流体で満たされ、そしてここで、少なくとも一つの孔は、後退スリーブ(10)の軸方向運動に起因してボリュームが減少するにつれて、粘性流体が押し出されることが可能であるように遅延ボックス(36)中に配置されることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、キャップ(25)がハウジング(2)の近位端(P)に設けられ、ここで、板金クリップ(26)は、ジョイント軸方向運動及び独立回転用にキャップ(25)に取り付けられ、キャップ(25)がハウジング(2)に取り付けられたとき、板金クリップ(26)はオリフィスを通ってハウジング(2)内に伸びるように配置され、ここで、板金クリップ(26)は、円周状のノッチ内に、又は中空針(4)に取り付けられた保護ニードルシールド(5)のショルダの後ろにパチンと閉められる少なくとも二つのかかり(27)を含むことを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項10】
キャップ(25)がねじ連結によってハウジング(2)に取り付け可能であることを特徴とする、請求項9に記載の自動注射器(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−519474(P2013−519474A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553303(P2012−553303)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052301
【国際公開番号】WO2011/101379
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】