説明

自動的なファイル分配

【課題】自動的なファイル分配の方法を提供する。
【解決手段】ピアツーピア・ネットワーク・サービス128のメンバーは、分配すべき署名付き更新ファイル112を更新サービス108から受信し、ピアツーピア・ネットワーク・サービス128を介して他のメンバーへ分配される。ピアツーピア・ネットワーク・サービス128のメンバーは、他のメンバーに関連する信頼レベル又は評判に基づいて、そのメンバーから署名付き更新ファイル112を受信するかどうかを選択する。信頼レベルは、メンバー間の分離度に基づく。署名付き更新ファイル112はファイルに関連するデジタル署名を検証することによって確認される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ウェブをベースとする製品サービスの操作に関連するコストは、当該サービスにユーザーが追加されるにつれて大幅に増大し得る。こうしたコストは帯域幅、電気及び設備を含み得る。多くの製品サービスの1つの重要な要素は、ユーザーによって可能な最高品質の経験を維持するための、製品又はサービスに関連するファイルの更新である。典型的には、更新サービスは、関連した製品及びサービスの最新のファイルをダウンロードすることができるオンライン・サービスを提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
更新ファイルを分配するコストの低減は、こうした多くのユーザーにとって有益である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この要約は、以下の詳細な説明において更に記述される「概念の選択」を簡単な形で導入するために提供される。この要約は、特許請求される主題の重要な特徴又は必須の特徴を識別することを意図してはおらず、また、特許請求される主題の範囲を決定する際の助けとして用いられることを意図してもいない。
【0004】
自動的なファイル分配のための技術が記述される。ピアツーピア・ネットワーク内で、ユーザーの社会的ネットワークの第1のレベルが、ユーザーに関連するコンタクト・リストにおいて識別される他のユーザーに基づいて決定される。そうしたユーザーに関連するコンタクト・リストは、ユーザーの社会的ネットワークの追加のメンバーを識別するのに用いられる。社会的ネットワークは、任意の数のそうした相互作用に制限される。
【0005】
信頼レベルは、ユーザーの社会的ネットワークの一部であるピアツーピア・ネットワークのメンバーに割り当てられる。信頼レベルは、少なくとも部分的に、特定のメンバーが社会的ネットワーク内のユーザーからどれだけ隔たっているかに基づいている。
【0006】
ファイルは、ピアツーピア・ネットワークの種々のメンバーに関連する信頼レベルに少なくとも部分的に基づいて、ピアツーピア・ネットワークのメンバー間で分配される。ユーザーにとって、ピアツーピア・ネットワークの他のメンバーからのファイルが利用可能であるとき、他のメンバーに関連する信頼レベルが評価され、ユーザーがファイルを受信するかどうかが決定される。ファイルが受信されると、ファイルの確認が実行され(例えば、デジタル署名を検証し)、ファイルが改竄されていなかったことが確認される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】自動的なファイル分配が実施される例示のネットワーク環境を示す概念図である。
【図2】特定のユーザーに関連する例示のピアツーピア・ソーシャル・ネットワークを示すブロック図である。
【図3】図2に示すソーシャル・ネットワークの要素に対して信頼レベルが適用される例示の方法を示すブロック図である。
【図4】例示のピアツーピア・ネットワーク・サービスの選択要素を示すブロック図である。
【図5】ピアツーピア・ネットワークを介してファイルを分配するための例示の方法を示すフロー図である。
【図6】ピアツーピア・ネットワークを介してファイルを受信するための例示の方法を示すフロー図である。
【図7】ピアツーピア・ネットワークを介してファイルを受信するための例示の方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に記述される実施の形態は、自動的なファイル分配のための技術を提供する。ファイル(典型的には、製品又はサービスのファイルであるが、これに限られるものではない)は、更新サービスから、ピアツーピア・ネットワークの一部をなすクライアント装置へダウンロードされる。ピアツーピア・ネットワークの一例は、マイクロソフト社のMSNメッセンジャのようなインスタント・メッセージング・ネットワークである。ダウンロードされた更新ファイルはピアツーピア・ネットワークを介して他のクライアント装置に自動的に分配される。例示の実施形態においては、分配側のユーザーに関連した評判と更新ファイルに関連するデジタル署名とを用いて、ピアツーピア・ネットワークを介しての正当な更新ファイルの受信を保証する。
【0009】
図1は、自動的なファイル分配が実施される例示のネットワーク環境を図示している。ユーザー102はクライアント装置104を用いてピアツーピア・ネットワーク106に接続する。パーソナル・コンピュータとして図示されてはいるが、クライアント装置104(及び、ピアツーピア・ネットワーク106内の他のクライアント装置のそれぞれ)は更新サービス108から更新ファイルを受信し、ピアツーピア・ネットワーク106を介して他のクライアント装置と対話することができる任意の形式のクライアント装置を表している。こうしたクライアント装置はパーソナル・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、インターネット動作可能パーソナル・デジタル・アシスタンス(PDA)、インターネット動作可能携帯電話、スマートフォン等々を含むが、これらに限定されない。
【0010】
クライアント装置104は、更新ファイルが利用可能であるかどうかを決定するために、(例えば、インターネット110等を介して更新サービス108をピングすることによって)コンテンツ分配ネットワークにアクセスするよう構成される。任意の数の形式の更新ファイル、例えば、オペレーティング・システム更新ファイル、ソフトウェア・アプリケーション更新ファイル、ウィールス・エンジン更新ファイル、ウィールス署名更新ファイル等々が利用可能であり得る。ピングに応答して、更新サービス108は、矢印114、116に示すように、更新ファイル112をクライアント装置104へ送出する。例示の実施形態においては、更新ファイル112は、例えば公開鍵インフラストラクチャ(PKI)を介して更新ファイルの信頼性が確認される機構を提供するよう、デジタル的に署名される。認証サーバー118は更新ファイルの署名及び確認をサポートするために設けられる。
【0011】
クライアント装置104が更新ファイル112を受信した後、更新ファイルは、矢印120、122、124、126によって示すように、ピアツーピア・ネットワーク106を介して、他のユーザーに関連した他の1つ以上のクライアント装置へ分配される。例示の実施形態においては、更新ファイルはピアツーピア・ネットワーク106を介してデジタル署名と共に送信されるので、ピアツーピア・ネットワーク106を介して更新ファイルを受信するクライアント装置は、受信したファイルと更新サービスから提供されたオリジナルのコピーとが同一であることを確認することができる。
【0012】
更に、ユーザー102は、クライアント装置104から分配されている更新ファイルを受信すべきかどうかを決定するためにピアツーピア・ネットワーク106内の他のユーザーが考慮すべき関連の評判を持っている。例示の実施形態においては、1つのユーザーが他のユーザーを信頼する程度は、少なくとも部分的に、ピアツーピア・ネットワーク106内のユーザー間の関係に基づいている。代替の実施形態においては、特定のユーザーを信頼し得るレベルを決定するために、第三者の評判サービスに助言を求めることができ、又は、1つ以上の評判サービスを含む任意の数の供給源から評判データの組み合わせを用いることができる。
【0013】
ピアツーピア・ネットワーク・サービス128はピアツーピア・ネットワーク106内のメンバー間の直接接続を容易にするために実装される。例示のピアツーピア・ネットワーク・サービス128の選択要素については、図4を参照して更に詳細に説明する。
【0014】
図2は、ピアツーピア・ネットワーク200内の例示の関係を示している。典型的なピアツーピア・ネットワーク(例えば、インスタント・メッセージング・ネットワーク)においては、ユーザーは、電子メール・アドレスその他の識別情報によってユーザーの友人を識別するコンタクト・リスト202(ここでは「仲間リスト」とも呼ばれる)のメンバーになるよう、他のユーザーを勧誘する。こうした友人も仲間リストを有する。例えば、ユーザーの仲間リスト202は5人の友人という特定のユーザーを識別する。これらの友人も、仲間リスト204、206、208、210、212によって表される仲間リストを有する。同様に、友人の仲間リスト204、206、208、210、212において識別される個人もまた仲間リストを有する。例えば、友人の仲間リスト204において識別される二人の友人は仲間リスト214、216によって表される仲間リストを有する。同様に、友人の仲間リスト206及び友人の仲間リスト208において識別される個人は、友人の仲間リスト218によって表される仲間リストを有する。
【0015】
例示的な実施形態においては、仲間リストは、勧誘によってのみユーザーが他のユーザーの仲間リストに追加され得るという信頼関係を表している。したがって、或るユーザーが他のユーザーの仲間リストにおいて識別されるならば、これら二人のユーザー間の或る種のレベルの信頼が仮定される。更に、ユーザーと友人の友人との間に或る程度の信頼が存在する。ユーザーの友人、友人の友人等はユーザーの社会的ネットワークとして考えることができる。
【0016】
また、ユーザーの仲間リストのメンバーは、ユーザーによって規定される種々の方法でグループ化され得る。例えば、ユーザーは、仕事上のつながりの仲間グループ、友人である仲間グループ、家族である仲間グループを持ち得る。
【0017】
図3は、ユーザーの社会的ネットワークの一部である仲間リストにおいて識別されるユーザーに関連する信頼レベルの例を示している。例示の実施形態においては、信頼レベルは、ユーザーに所属する仲間リストや、そのユーザーの友人や友人の友人に所属する種々の仲間リストにおいて識別されるユーザーと関連する。信頼レベルは、受信したファイルが正当であることをユーザーがどれだけ確信しているかを決定する助けとなるよう確立される。例えば、ユーザーの仲間リスト202において識別される友人から受信されたファイルの信頼度は高いけれども、更に遠くの友人の仲間リスト(例えば、友人の仲間リスト214、216又は218)において識別されるユーザーから受信されるファイルの信頼度は低い。
【0018】
例示の実施形態においては、ユーザーの社会的ネットワークは、分離度を用いて記述することができる。例えば、ユーザーの仲間リスト202において特定される友人は、ユーザーから0°だけ分離されており、ユーザーの仲間リスト202において特定される友人に所属する仲間リストにおいて特定される個人は、ユーザーから1°だけ分離されている。仲間リスト204、206、208、210、212はそれぞれ、ユーザーの仲間リスト202において識別された個人に所属しているので、それぞれはユーザーから1°だけ隔たっている。同様に、仲間リスト214、216は仲間リスト204において識別される個人に関連し、仲間リスト218は仲間リスト206及び仲間リスト208において識別される個人に関連する。したがって、友人の仲間スト214、216、218はユーザーから2°だけ隔たっている。2°の分離のみが図示されているが、特定のユーザーの社会的ネットワークに対して任意の数の分離度を定義することができる。
【0019】
例示の実施形態においては、それぞれの分離度は、それに関連した信頼レベルを有する。例えば、ユーザーの仲間リスト202において識別されるユーザーは0°だけ隔たっており、したがって100%信頼されている。したがって、信頼されたユーザーの円302はユーザーの仲間リスト202において識別されるユーザー全部を含む。点線304はユーザーから1°だけ隔たった仲間リストを表している。図の例においては、1°だけ隔たった仲間リスト(例えば、友人の仲間リスト204、206、208、210、212)において識別される個人には、50%の信頼レベルが割り当てられる。同様に、破線306はユーザーから2°だけ隔たった仲間リストを表している。図の例においては、2°だけ隔たった仲間リスト(例えば、友人の仲間リスト214、216、218)において識別される個人には、30%の信頼レベルが割り当てられる。
【0020】
ここで記述される信頼レベルは例としてのみ与えられている。認識されるように、特定の個人に関連する信頼レベルを決定するために任意の数の異なる方法を用いることができる。例えば、1つ以上の評判システム又は評判サービスを含み得る1つ以上の供給源からの評判データは、特定の個人に関連する信頼レベルを決定するのにも使用できる。また、デフォルトによって、画像や音楽のような他のファイルよりもデジタル署名付きの更新ファイルの方が信頼されるように、信頼レベルをファイル形式に対して割り当てることもできる。
【0021】
記述された実施形態においては、信頼レベルは、信頼される友人の円302に対して種々の信頼度から追加される個人に対して割り当てられる。更に、特定の個人に関連する信頼レベルは、当該個人が複数回発見される場合には上昇される。例えば、特定の個人がユーザーの仲間リスト202においては識別されないが、ユーザーから1°だけ隔たった3つの仲間リスト(例えば、友人の仲間リスト208、210、212)において識別されるならば、その特定の個人には150%(即ち、その個人が識別される1°だけ隔たった仲間リストのそれぞれに対して50%という等級が与えられるので、50%+50%+50%となる)に等しい信頼レベルが割り当てられる。
【0022】
しかし、ユーザーの仲間リスト202においては識別されない個人に100%よりも高い信頼レベルが割り当てられないように、それぞれの分離度はその関連の最大信頼レベルを有する。例えば、1°の分離は90%の最大信頼レベルを持ち、2°の分離は45%の最大信頼レベルを有する。こうした最大値が与えられると、ユーザーの仲間リスト202において識別されない個人には、90%を超える信頼レベルが割り当てられない。同様に、ユーザーの仲間リスト202又は友人の仲間リスト204、206、208、210又は212において識別されない(が、友人の仲間リスト214、216、218のうちの少なくとも1つには蓄積されている)個人には、45%よりも高い信頼レベルを割り当てることができない。
【0023】
記述される例示の実施形態においては、特定の個人に対して許容されるデフォルトの最大信頼レベルは、その個人が識別される最小の分離度によって決定される。例えば、友人の仲間リスト214、216、218において識別される個人には、45%の信頼レベルが割り当てられる(友人の仲間リスト214からの30%+友人の仲間リスト216からの30%+友人の仲間リスト218からの30%=90%であるが、2°の分離に対する最大値は45%である)。一方、友人の仲間リスト212、214、218において識別される個人には、90%の信頼レベルが割り当てられる(仲間リスト212からの50%+仲間リスト214からの30%+仲間リスト218からの30%=110%であるが、1°の分離の最大値は90%である)。
【0024】
例示の実施形態においては、ユーザーは、友人の友人から受信されたファイルを信頼し得る度合いを特定することができる。例えば、ユーザーが0°の信頼度を特定するならば、ユーザーの仲間リスト202において特定される個人から受信されるファイルのみが信頼される。ユーザーが1°の信頼度を特定するならば、ユーザーの仲間リスト202において特定される個人から受信されるファイル、又はユーザーの仲間リスト202から1°だけ隔たった仲間リスト(例えば、仲間リスト204、206、208、210、212)において特定される個人から受信されるファイルが信頼される。また、代替の実施形態においては、例えば、特定のユーザーから受信されるファイルは常に信頼される、特定のユーザーから受信されるファイルは信頼されない、特定の証明書を持つファイルは常に信頼される、特定の証明書を持つファイルは信頼されない等のように、ユーザーは、一人以上の個人又は証明書所有者に関連する信頼レベルを無効にすることが許容される。更に、代替の実施形態は、ファイルがダウンロードされた後にユーザーが同意する又は否認することができるようにする。こうして、ファイルはダウンロードされるが、ユーザーがそのダウンロードに同意するまで、ファイルはインストールされない。
【0025】
代替の実施形態においては、ユーザーから種々の度合いで隔てられている個人に対して適用されるべき信頼レベルをユーザーが特定することができる。例えば、デフォルト設定は、ユーザーから1°だけ隔たっている個人に対して50%の信頼レベルを割り当てるが、ユーザーは当該設定を無効にして、自分から1°だけ隔たっている個人に対して70%の信頼レベルを割り当てることが許容される。同様に、代替の実施形態においては、ユーザーは種々の分離度に関連する最大信頼レベルをカスタマイズすることができる。例えば、デフォルト設定は、ユーザーから1°だけ隔たっている個人に対して90%の最大信頼レベルを強制するが、ユーザーは当該デフォルトを無効にして、ユーザーから1°だけ隔たっている個人に対して99%の最大信頼レベルを割り当てることができる。また、ユーザーは或る個人に対するデフォルト信頼レベルを無効にすることを許容される。例えば、ユーザーの仲間リストにおいて識別される或る友人は、何らかの理由で極めて信頼度が低い。したがって、ユーザーはその特定の友人に対してゼロ(又は他の何らかの数字の)%の信頼レベルを指定する。
【0026】
更に、異なるデフォルト信頼レベルを、異なる仲間グループに対して割り当ててもよい。例えば、ユーザーの業務上のコンタクト・グループは高く信頼されるが、ユーザーの友人グループの信頼度は低い。代替の実施形態においては、ユーザーの仲間リストにおいて識別される特定の個人に関連する信頼度は、当該個人から受信される証明書に基づくことができる。
【0027】
図4は、メンバーの仲間リスト格納部402とメンバー信頼度生成器404とを備える例示のピアツーピア・ネットワーク・サービス128の選択要素を示している。メンバーの仲間リスト格納部402は、ピアツーピア・ネットワークのそれぞれのメンバー毎に、各メンバーが通信したいと思うピアツーピア・ネットワークの他のメンバーを識別する仲間リストを維持する。メンバー信頼度生成器404は、ピアツーピア・ネットワークのそれぞれのメンバー毎に、ピアツーピア・ネットワークの一人以上の他のメンバーに関連する信頼レベルを決定及び/又は維持する。例示の実施形態においては、信頼レベルは、図3を参照して例示し記述したように、少なくとも部分的には、メンバー間の分離度に基づく。上述したとおり、信頼レベルは他の基準(例えば、個人に関連する証明書)にも基づいてよい。
【0028】
自動的なファイル分配を実施するための方法は、コンピューター実施可能命令という一般的な文脈で記述される。一般に、コンピューター実施可能命令は、特定の機能を実行し又は特定の要約データ形式を実施するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、手順等々を含む。また、この方法は、通信ネットワークを介してリンクされる遠隔処理装置によって機能が実行される分散型コンピューティング環境においても実行され得る。分散型コンピューティング環境においては、コンピューター実施可能命令は、メモリ記憶装置を含むローカルの及びリモートのコンピューター記憶媒体に置かれる。
【0029】
図5〜図7は、自動的なファイル分配のための例示の方法を示している。図5〜図7は自動的なファイル分配の特定の例であり、限定とみなしてはならない。方法ブロックが記述される順序は限定とみさなれるべきではなく、記述される任意の数の方法ブロックは方法を実施するために組み合わされ得る。また、方法は任意の適宜のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの組み合わせにおいて実施され得る。
【0030】
図5は、ピアツーピア・ネットワークを介してファイルを自動的に分配するための例示の方法500を示すフロー図である。ブロック502において、ピアツーピア・ネットワークとの接続が確立される。例えば、ユーザー102は、図1に示すように、クライアント装置104を用いてピアツーピア・ネットワーク106と接続する。
【0031】
ブロック504において、更新サービス(又は他のコンテンツ分配ネットワーク)がコンタクトされる。例えば、クライアント装置104は更新サービス108をピングして、新たな更新ファイルが利用可能であるかどうかを決定する。
【0032】
ブロック506において、更新ファイルが利用可能であるかどうかが決定される。例えば、更新サービスはクライアント装置104に利用可能な更新ファイルのリストを提供し、クライアント装置104はその利用可能なファイルを既にクライアント装置104に記憶されているファイルと比較し、既に記憶してあるファイルよりも任意の利用可能なファイルの方が新しいかどうかを決定する。利用可能なファイルの方が既存のファイルよりも新しいかどうかを決定するために、任意の数のファイル特徴を用いることができる。こうしたファイル特徴はファイル・チェックサム、ファイル名、ファイル・バージョン、日付/時間、ファイルの長さ及び/又はデジタル署名を含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
更新ファイルが利用可能でないと決定されるならば(ブロック506からのNOの分岐)、処理は終了し(図示せず)、又は、ブロック504を参照して上で記述したように継続する。一方、更新ファイルが利用可能であると決定されるならば(ブロック506からのYESの分岐)、ブロック508において、更新ファイルがダウンロードされる。例えば、クライアント装置104は更新ファイルを要求し、更新サービス108はインターネットを介して更新ファイルを送信する。
【0034】
ブロック510において、更新ファイルが検証される。例えば、クライアント装置104は認証サーバー118を介して公開鍵インフラストラクチャ(PKI)を用いて、ダウンロードされた更新ファイルに関連するデジタル署名を検証し、受信されたファイルが送信期間に変更されなかったことを確認する。
【0035】
ブロック512において、ダウンロードされた更新ファイルが検証されたかどうかを決定する。更新ファイルが検証されなかったならば(ブロック512のNOの分岐)、ブロック514において、ファイルが削除され、処理は終了し(図示せず)、又はブロック504を参照して上で記述したように継続する。
【0036】
一方、更新ファイルが検証されたと決定されるならば(ブロック512のYESの分岐)、ブロック516において、ピアは更新ファイルがピアツーピア・ネットワークを介して利用可能であることを通知される。例えば、クライアント装置104はピアツーピア・ネットワーク106を介して自動的に通知を分配する。こうした通知をどのように分配するかを規定するために、任意の数のデフォルトのポリシー及び/又はユーザーにより定義されたポリシーが実施され得る。例えば、通知は、ユーザーの仲間リストにおいて識別される個人に対してのみ送出される。代わりに、通知は、ユーザーから2°、3°又は他の特定の度数までの分離度で識別される個人へ送出される。他の実施形態においては、通知は、ユーザーに関連する信頼レベルに基づいてユーザーへ送出される。代替の実施形態では、通知を送出するのではなく、この時点で、ファイルそのものがピアツーピア・ネットワークを介して一人以上の個人へ自動的に分配される。例えば、更新ファイルは特定のグループの仲間(例えば、業務上のコンタクト・グループ)のメンバーとして識別される全員へ自動的に分配される。
【0037】
ブロック518において、更新ファイルに対するピア要求が受信される。例えば、クライアント装置104はピアツーピア・ネットワーク106を介して更新ファイルに対する要求を受信する。
【0038】
ブロック520において、更新ファイルがピアツーピア・ネットワークを介して送信される。例えば、受信された要求に応答して、クライアント装置104はサイン付きの更新ファイルをピアツーピア・ネットワークを介して要求者へ送信する。代替の実施形態においては、更新ファイルは、一人以上のユーザーによる受信のために、それらのユーザーからの要求を待つことなく、ピアツーピア・ネットワークを介して自動的に送信される(即ち、ブロック518は実施形態によってはオプションである)。
【0039】
図6は、ピアツーピア・ネットワークを介して自動的に分配されるファイルを受信するための例示の方法600を示すフロー図である。ブロック602において、ピアツーピア・ネットワークとの接続が確立される。例えば、ユーザーはクライアント装置を用いてピアツーピア・ネットワーク106と接続する。
【0040】
ブロック604において、ピアツーピア・ネットワークを介して利用可能である更新ファイルが識別される。例えば、ユーザーのクライアント装置は、ピアツーピア・ネットワークを介して他のユーザーから、更新ファイルが利用可能であることを示す通知を受信する。代わりに、ユーザーのクライアント装置は、ピアツーピア・ネットワークを介して、更新ファイルが利用可能であるかどうかについて質問する他のクライアント装置へのピングに対する応答を受信する。
【0041】
ブロック606において、1つ以上の十分に信頼されたピアが識別される。信頼されたピアを識別するために任意の数の技術を実施することができ、ここで記述される例は限定とみなされるべきではない。例示の実施形態においては、第三者の評判サービスが、十分な評判を持つピアを識別するために参照される。代わりに、ユーザーの社会的ネットワーク内のユーザーが、例えば図3を参照して上で説明したように、それらユーザーに関連する信頼レベルに基づいて識別される。信頼レベル及び/又は評判に加えて、ピアは、自動的に検出されるネットワーク・トラフィック(例えば、最小のネットワーク・トラフィックを持つピアを選択する)、ピングに対する応答の待ち時間(例えば、最短の応答時間を持つピアを選択する)、IP−地形マッピングに基づく場所(例えば、最大近接度を持つピアを選択する)及び/又は他の変数に基づいて識別される。
【0042】
ブロック608において、識別された1つ以上のピアから更新ファイルが要求される。ブロック610において、更新ファイルが受信される。例えば、ユーザーのクライアント装置はピアツーピア・ネットワークを介して送信された更新ファイルを受信する。ブロック612において、受信された更新ファイルが検証される。例えば、例示の実施形態においては、受信されたファイルは、更新ファイルを検証するのに用いることができるデジタル署名又は他の形式のデータを含む。
【0043】
ブロック614において、更新ファイルが検証されたかどうかが決定される。更新ファイルが成功裡に検証されるならば(ブロック614からのYESの分岐)、処理はブロック604を参照して上で説明したように継続する。一方、更新ファイルが成功裡に検証されないならば(ブロック614からのNOの分岐)、ブロック616において、受信された更新ファイルが削除され、処理はブロック604を参照して上で説明したように継続する。
【0044】
図7は、ピアツーピア・ネットワークを介して自動的に分配されるファイルを受信するための例示の方法700を示すフロー図である。ブロック702において、ピアツーピア・ネットワークとの接続が確立される。例えば、ユーザーはクライアント装置を用いてピアツーピア・ネットワーク106と接続する。
【0045】
ブロック704において、ピアツーピア・ネットワークを介して送信されている更新ファイルが識別される。例えば、ユーザーのクライアント装置は、送信されていてクライアント装置が受信するのに利用可能な更新ファイルを検出する。ブロック706において、更新ファイルの送信者が識別される。例えば、ユーザーのクライアント装置は、送信されている更新ファイルに関連するデータを検査して、更新ファイルを送出している個人を識別する。
【0046】
ブロック708において、更新ファイルの送信者が十分に信頼されるかどうかを決定する。例えば、図3を参照して上で説明したように、ユーザーの社会的ネットワーク内の個人に対して種々の信頼レベルが割り当てられる。更新ファイルの送信者がユーザーの社会的ネットワーク内にいるかどうかに依存して、また、ユーザーの社会的ネットワーク内にいる場合にはユーザーの社会的ネットワーク内における送信者のポジションに依存して、送信者は十分に信頼されるとみなされ、又はみなされない。代替の実施形態においては、送信者の信頼は、例えば、第三者認証機関、送信者を評定するユーザーからのフィードバック又は機械評価、或いは、ユーザーの評判を表すものを提供する送信者評判サービス等の他の特徴に基づく。
【0047】
送信者が十分信頼されないと決定されるならば(ブロック708からのNOの分岐)、処理はブロック704を参照して上で説明したように継続する。一方、送信者が十分信頼されると決定されるならば(ブロック708からのYESの分岐)、ブロック710において、更新ファイルが受信される。例えば、ユーザーのクライアント装置は、ピアツーピア・ネットワークを介しての更新ファイルを含む送信を受け入れる。例示の実施形態においては、ファイル・ダウンロードが生じようとしていることを示す通知がユーザーに対して提示され、ユーザーには、ダウンロードをキャンセルしてファイルを受信しないオプションが与えられる。また、ユーザー・インターフェースは、こうした通知をどのように提示すべきか又は提示すべきかどうかをユーザーが特定する設定領域を含む。
【0048】
ブロック712において、受信された更新ファイルが検証される。例えば、例示の実施形態においては、受信されたファイルは、更新ファイルを検証するために用いられるデジタル署名又は他の形式のデータを含む。
【0049】
ブロック714において、更新ファイルが検証されたかどうかが決定される。更新ファイルが成功裡に検証されるならば(ブロック714からのYESの分岐)、処理はブロック704を参照して上で説明したように継続する。一方、更新ファイルが成功裡に検証されないならば(ブロック714からのNOの分岐)、ブロック716において、受信された更新ファイルが削除され、処理はブロック704を参照して上で説明したように継続する。
【0050】
自動的なファイル分配の実施の形態について、構造的特徴及び/又は方法に特有の用語で説明してきたが、理解されるとおり、特許請求の範囲の主題は、説明した特定の特徴又は方法に限定される訳ではない。むしろ、特定の特徴及び方法は、自動的なファイル分配の例示の実施形態として開示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクライアント装置を含むピアツーピア・ネットワーク内の任意の第1のクライアント装置によって実施される方法であって、
前記ピアツーピア・ネットワークを介して、前記第1のクライアント装置と前記ピアツーピア・ネットワーク内の他のクライアント装置との間に接続を確立するステップと、
前記接続の確立に応答して、ファイルが、前記他のクライアント装置のうちの少なくとも1つの第2のクライアント装置から利用可能であることを識別するステップと、
前記第1のクライアント装置のユーザーの前記他のクライアント装置のユーザーに対する信頼レベルを識別するために、前記第1のクライアント装置に予め保持された社会的ネットワーク・リストに基づいて、直接に、識別された前記第2のクライアント装置のユーザーが信頼できるユーザーであることを識別するステップと、
識別された前記第2のクライアント装置から、前記ファイルを受信するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記信頼レベルが、前記他のクライアント装置のユーザーの前記第1のクライアント装置のユーザーに対する分離度に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信頼レベルが、評判サービスからの評判データに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
識別された前記第2のクライアント装置に対して、前記ピアツーピア・ネットワークを介して、前記ファイルに対する要求を送信するステップを更に備える、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
受信された前記ファイルを検証するステップを更に備える、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
受信された前記ファイルを検証する前記ステップが、該ファイルに関連するデジタル署名を確認するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のクライアント装置のユーザーを信頼できるユーザーであると識別する前記ステップが、前記第1のクライアント装置と前記他のクライアント装置との間のネットワーク・トラフィックに基づいて、信頼できるユーザーであることを識別するステップを含む、請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記第2のクライアント装置のユーザーを信頼できるユーザーであると識別する前記ステップが、ネットワーク待ち時間に基づいて、信頼できるユーザーであることを識別するステップを含む、請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
複数のクライアント装置を含むピアツーピア・ネットワーク内の任意の第1のクライアント装置によって実施される方法をコンピューターに実行させるための命令を記憶したコンピューター読み取り可能記憶媒体であって、
前記方法が
前記ピアツーピア・ネットワークを介して、前記第1のクライアント装置と前記ピアツーピア・ネットワーク内の他のクライアント装置との間に接続を確立するステップと、
前記接続の確立に応答して、ファイルが、前記他のクライアント装置のうちの少なくとも1つの第2のクライアント装置から利用可能であることを識別するステップと、
前記第1のクライアント装置のユーザーの前記他のクライアント装置のユーザーに対する信頼レベルを識別するために、前記第1のクライアント装置に予め保持された社会的ネットワーク・リストに基づいて、直接に、識別された前記第2のクライアント装置のユーザーが信頼できるユーザーであることを識別するステップと、
識別された前記第2のクライアント装置から、前記ファイルを受信するステップと、
を備えるコンピューター読み取り可能記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−22693(P2012−22693A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176562(P2011−176562)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2008−553235(P2008−553235)の分割
【原出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(500046438)マイクロソフト コーポレーション (3,165)
【Fターム(参考)】