説明

自動的に加工方向を切換え可能な手動加工機能を備えた数値制御装置

【課題】並行方向と垂直方向の移動方向の切換え操作を不要とする手動加工機能を備えた数値制御装置。
【解決手段】補間のためのパルス信号の出力は0か否か判断し、出力が0でない場合には自動切換えフラグFAを0とし、出力が0の場合には自動切換えフラグFAは0か否か判断し、FAが0の場合には時間カウンタをインクリメントし、FAが0でない場合には時間カウンタをクリアする(SA01〜SA05)。時間カウンタの時間は設定した時間を超過したか否か判断し、時間カウンタの時間が設定した時間以下の場合には処理を終了し、時間カウンタの時間が設定した時間を超過した場合には時間カウンタをクリアし、自動切換えフラグFAを1にし、移動方向は並行方向か否かを判断し、並行方向の場合には移動方向を垂直方向に切換え、並行方向でない,つまり,垂直方向の場合には並行方向に切換え、処理を終了する(SA06〜SA11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械を制御する数値制御装置に関し、特に試作品等を加工するための工作機械を制御するための数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御装置付き工作機械を用いて複雑な形状のワークを高速で、精度良く加工することができる。数値制御装置を使用するには、機械座標、機械原点、プログラム座標、加工原点などを正確に定義して、厳密な加工プログラムを作成する必要がある。また、多数のワークを加工する場合は対話型数値制御装置により制御される工作機械や自動プログラミング装置を用いることができる。しかし、試作品あるいは型を作成するための一部の加工では、ワークの着脱、工具の取り付け及び加工プログラムの作成等の段取り工程に要する時間が少ない汎用のフライス盤、汎用の旋盤などの工作機械が使用されている。
ところが、斜め直線加工や円弧加工等をこれらの汎用の工作機械を用いて加工することは困難である。こうした問題を対応するための、汎用の工作機械を用いて試作品などの加工を行うことができる数値制御装置がある。例えば、特許文献1には、斜め直線、円弧の形状などの指定形状を指定し、手動パルス発生器などを用いて前記指定形状に対して並行方向と垂直方向に工具の現在位置の移動を指令する手段を具備する数値制御装置の技術が開示されている。ここで、並行方向とは工具の現在位置と指定形状との距離を維持しつつ前記指定形状に沿う方向を意味し、垂直方向とは工具の現在位置から前記指定形状の法線方向に沿う方向を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−119018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される数値制御装置は、1つのハンドルと並行方向、垂直方向を切換えるスイッチを用意し、前記スイッチを切換えることで移動方向を切換えることができる。
特許文献1に開示される数値制御装置を用いて図11に示す経路のように工具の移動を行いワークの加工を行う場合、特許文献1の段落「0042」〜「0044」に記載されるように、オペレータは手動パルス発生器の選択スイッチ(特許文献1に記載される符号41bの部位)を繰り返し操作しなければならない。また、図12に示す経路でワークの加工を行うこともできるが、この場合は切換えスイッチ(特許文献1に記載される符号43の部位)を繰り返し操作することになる。このように、選択スイッチや切換えスイッチを切換える操作が頻繁に発生することはオペレータにとって操作性が悪く作業効率も向上しにくいという課題があった。
【0005】
また、特許文献1に記載されていないが、並行方向用ハンドルと垂直方向用ハンドルの2つのハンドルを用意し、操作するハンドルを変更することで移動方向を切換えることが考えられる。しかしこの方法では、初心者のオペレータにとっては操作対象物が増加し操作方法を習得するのが困難になる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、指定形状に対して並行方向と垂直方向に工具の現在位置の移動を指令する数値制御装置において、オペレータによる並行方向と垂直方向の移動方向の切換え操作を不要とすることが可能な自動的に加工方向を切換え可能な手動加工機能を備えた数値制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、少なくとも2軸以上の可動部を有し、該可動部を駆動して工具と被加工物を相対移動させることによって被加工物を加工する工作機械を制御する数値制御装置において、斜め直線又は円弧を含む指定形状を入力する指定形状入力部と、前記指定形状入力部により入力された前記指定形状を記憶する図形記憶部と、手動操作に従って補間のためのパルス信号を出力する移動指令部と、前記パルス信号を受けて、前記可動部を駆動するための補間パルスを出力する補間部と、予め設定された時間内に前記補間のためのパルス信号が出力されたか否かを監視する移動指令監視部と、前記移動指令監視部で一定時間パルス信号が出力されなかったと判断した場合には、前記指定形状に沿う工具と被加工物の相対移動と、工具の現在位置から前記指定形状の法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動とを切換える移動方向自動切換え部と、を有することを特徴とする数値制御装置である。
請求項2に係る発明は、前記移動方向自動切換え部によって切換わった相対移動の方向を表示する表示部を有することを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置である。
請求項3に係る発明は、前記指定形状の法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動の1回あたりの移動量を設定する設定部を有し、前記移動方向自動切換え部で法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動に切換わった後の切換わった位置からの移動量が前記1回あたりの移動量に達した場合には、工具と被加工物の相対移動の方向を前記指定形状の法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動から前記指定形状に沿う工具と被加工物の相対移動に切換えることを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置である。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記指定形状の法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動の1回あたりの移動量は、指定形状に近づく方向と、指定形状から離れる方向でそれぞれ異なる値を設定できることを特徴とする請求項3に記載の数値制御装置である。
請求項5に係る発明は、前記指定形状の法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動の1回あたりの移動量を指定形状からの距離によって設定できることを特徴とする請求項4に記載の数値制御装置である。
請求項6に係る発明は、加工する被加工物の素材形状を入力する入力部と、工具の形状情報を入力する入力部と、前記被加工物の素材形状、工具の形状情報、工具の現在位置から工具が素材形状の領域外であるかどうか判断する判断部と、を有し、工具の現在位置が素材形状の領域外の場合のみ前記移動方向自動切換え部が有効となることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の数値制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、指定形状に対して並行方向と垂直方向に工具の現在位置の移動を指令する数値制御装置において、オペレータによる並行方向と垂直方向の移動方向の切換え操作を不要とすることが可能な自動的に加工方向を切換え可能な手動加工機能を備えた数値制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の数値制御装置の概要を説明する図である。
【図2】本発明の数値制御装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【図3】機械操作盤の一例を示す図である。
【図4】本発明に係る数値制御方法の概要を説明する図である。
【図5】本発明(請求項1、2)のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図6】本発明(請求項3)のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図7】フライス盤を用いた加工に本発明を適用した場合を説明する図である。
【図8】旋盤を用いた加工に本発明を適用した場合を説明する図である。
【図9】指定形状に対する並行移動の切削動作を繰り返し行い、指定形状を仕上げる加工を説明する図である。
【図10】本発明(請求項6)のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図11】手動パルス発生器の選択スイッチを切換えて行う従来技術の数値制御方法の概要を説明する図である。
【図12】切換えスイッチを切換えて行う従来技術の数値制御方法の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の数値制御装置の概要を説明する図である。数値制御装置1は、図形記憶部2、補間部4、軸制御回路18、サーボアンプ19、表示装置/MDIパネル25、機械操作盤40を備える。移動指令部としての機械操作盤40には工具の移動を指令するパルス信号を出力する手動パルス発生器41の移動方向を指示するハンドル41aが取付けられている。
図形記憶部2は、グラフィック制御回路15を介してガイダンス情報を表示装置16に表示する。また、図形記憶部2は、オペレータがキーボード17を操作して対話的に入力した斜め直線及び円弧等の指定形状を記憶する。なお、図形記憶部2に記憶された指定形状は必要に応じてグラフィック制御回路15を介して表示装置16に表示される。なお、キーボード17は請求項1の指定形状入力部に対応する。また表示装置16は請求項2の表示部に対応する。
【0012】
補間部4は、手動パルス発生器41等の移動指令部からのパルス信号HPを入力する。そして、補間部4は、図形記憶部2に記憶された指定形状及びパルス信号HPに基づいて補間パルスCPを出力し、軸制御回路18に送る。軸制御回路18は補間部4から出力された補間パルスCPを受けて各軸の速度指令を生成し、サーボアンプ19に送る。サーボアンプ19は工作機械20に取付けられたサーボモータを駆動し、工作機械20を制御する。工作機械20は2軸以上の可動部を備えており、該可動部は数値制御装置によって駆動制御される。工作機械20は、工具131(図4参照)とワーク200(図4参照)を相対移動させることでワーク200を加工することができる。なお、図形記憶部2及び補間部4は、後述するようにソフトウェアによって実行される。
なお本明細書において、並行方向とは工具の現在位置と指定形状との距離を維持しつつ前記指定形状に沿う方向を意味し、垂直方向とは工具の現在位置から前記指定形状の法線方向に沿う方向を意味する。
【0013】
図2は、本発明の数値制御装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。プロセッサであるCPU11はROM12に格納されたシステムプログラムに従って数値制御装置全体を制御する。図1の図形記憶部2及び補間部4は、CPU11がROM12のシステムプログラムによって実行するソフトウェアによる機能である。同様に請求項1に記載の移動指令監視部および移動方向自動切換え部、および請求項6の判断部もソフトウェアによる機能である。RAM13には入出力信号の一時的なデータが格納される。不揮発性メモリ14には電源断も保持すべきパラメータ、加工プログラム等が格納される。
グラフィック制御回路15はガイダンス情報や入力された指定形状等を表示可能な信号に変換し、表示装置16に与える。表示装置16には液晶表示装置が使用される。軸制御回路18はプロセッサ11から補間パルスCPを含む軸の移動指令を受けて、軸の移動指令をサーボアンプ19に出力制御する。
【0014】
サーボアンプ19はこの移動指令を受けて、工作機械20の図示されていないサーボモータを駆動する。なお、工作機械20はこのサーボモータの他に、移動指令を行うために操作する機械操作盤40を備えており、これは後述する。これらの構成要素はバス30を介してお互いに接続されている。
PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)22は加工プログラムの実行時に、バス30を経由してT機能信号(工具選択指令)等を受け取る。そして、この信号をシーケンス・プログラムで処理して、動作指令として信号を出力し、工作機械20を制御する。また、対話型数値制御装置では工作機械20から状態信号を受けて、シーケンス処理を行い、バス30を経由してプロセッサ11に必要な入力信号を転送する。
なお、バス30には更に、システムプログラム等によって機能が変化するソフトウェアキー23が接続されている。このソフトウェアキー23は、表示装置16、キーボード17とともに、表示装置/MDIパネル25に設けられる。
【0015】
図3は機械操作盤の一例を示す図である。工作機械20に備えられた機械操作盤40には、手動パルス発生器41、ジョグ送りボタン42が設けられている。手動パルス発生器41はハンドル41aを左回転または右回転させると、その回転に応じてパルス信号HPを出力させる。このパルス信号HPは回転方向を判別するための二相のパルスであって、バス30を介してプロセッサ11に送られ、工具を移動させる。ジョグ送りボタン42には、「+X」,「−X」,「+Y」,「―Y」,「+Z」,「−Z」の各軸についてプラス及びマイナス方向の送りボタンと、「+GJ」,「−GJ」の指定形状に対応してプラス及びマイナス方向の送りボタンとの、全部で8つのボタンが設けられている。設定スイッチ42aは、ジョグ送りボタン42をオペレータが押した際に発生する一定時間内のパルス数を設定する。具体的には、設定スイッチ42aの図示されていない水晶発振器からのパルスを分周したパルスを入力して、オペレータによって設定された目盛に応じた分周比でパルス信号JPを出力する。
【0016】
図4に示す経路で工具131をワーク200に対して相対的に移動しワーク200を指定形状130に加工を行う場合において、本発明の実施形態でのハンドル41aを回す、回さないは、請求項1に記載の手動操作に従って補間のためのパルス信号を出力する移動指令がされる、されないを意味する。なお、ハンドル41aを右回転,左回転のどちらの方向で回してもハンドル41aを回したと判定する。本発明の実施形態では、時間を設定し、設定された時間内に前記補間のためのパルス信号が出力されたか否かを監視する移動指令監視部を設け、設定した時間,パルス出力がなされなかった場合は並行方向と垂直方向の工具移動の指令を切換えるというものである。すなわち、あらかじめ設定した時間以上ハンドル41aが回されない状態が続いたら、並行方向と垂直方向の工具移動の方向を切換えるというものである。
【0017】
本発明の実施形態によりオペレータは、従来技術のように切換えスイッチを操作する必要がなく、手動パルス発生器41のハンドル41aを回したり止めたりする操作だけで図4に示す経路で工具131を移動させることが可能になる。スイッチを切換える操作が繰返し発生しないので操作性が向上する。また、ジョグ送りボタン42を用い、本実施形態において、ハンドル41aをあらかじめ設定した時間内に回す,回さないの操作に替えて、機械操作盤40のジョグ送りボタン42をあらかじめ設定した時間内に押す,押さないの操作としてもよい。
【0018】
図5は本発明(請求項1、2)のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSA01]補間のためのパルス信号の出力は0か否か判断し、出力が0(つまり、YES)の場合にはステップSA02へ移行し、出力が0でない(つまり、NO)場合にはステップSA04に移行する。
●[ステップSA02]自動切換えフラグFAは0か否か判断し、FAが0(つまり、YES)の場合にはステップSA03へ移行し、出力が0でない(つまり、NO)場合にはステップSA05へ移行する。
●[ステップSA03]時間カウンタをインクリメントする。
●[ステップSA04]自動切換えフラグFAを0にする。
●[ステップSA05]時間カウンタをクリアし、処理を終了する。
●[ステップSA06]時間カウンタの時間は設定した時間を超過したか否か判断し、時間カウンタの時間が設定した時間を超過した場合(つまり、YESの場合)にはステップSA07に移行し、超過していない場合(つまり、NOの場合)には処理を終了する。
●[ステップSA07]時間カウンタをクリアする。
●[ステップSA08]自動切換えフラグFAを1にする。
●[ステップSA09]移動方向は並行方向か否か判断し、並行方向の場合(つまり、YESの場合)にはステップSA10へ移行し、並行方向ではない場合(つまり、NOの場合)にはステップSA11へ移行する。
●[ステップSA10]移動方向を垂直方向に切換え、処理を終了する。
●[ステップSA11]移動方向を並行方向に切換え、処理を終了する。
【0019】
なお、上記フローチャートを補足して説明すると、ステップSA01〜ステップSA08は移動指令監視部に相当し、ステップSA09〜ステップSA11は移動方向自動切換え部に相当する。
【0020】
上述したように、請求項1に記載の手動操作に従って補間のためのパルス信号を出力する移動指令部とは、手動パルス発生器41やジョグ送りボタン42を意味する。なお、手動パルス発生器41のハンドル41aを回した際に最初に移動する方向は並行方向、垂直方向のどちらでもよく、「自動切換えを有効にしたときの最初に移動する方向は0:並行方向、1:垂直方向」というパラメータを設けてもよい。
【0021】
また、本発明の第2の実施形態として移動方向自動切換え部によって求まった並行方向または垂直方向という相対移動の方向が画面(表示装置16)に表示されてもよい(「請求項2」に対応)。同様に、外部機器で認識できるように外部に信号で伝達されてもよい。オペレータは現在の相対移動の方向を容易に認識することが可能となる。ここで相対移動とは、工具131の位置を移動し工具131をワーク200に移動、あるいは、ワーク200の位置を移動しワーク200を工具131に移動の意味である。
【0022】
次に、1回あたりの指定形状の垂直方向への工具の相対的な移動量を説明する。図4に示す経路の加工を行う場合、一般にオペレータは垂直方向の1回あたりの工具の移動量を、工具径などの加工条件により求まる一定の範囲内の値にして、加工を行う。移動量が前記一定の範囲より大きい値の移動量で加工を行った場合、削り残しや工具破損が生じる可能性がある。
本発明の第3の実際形態(「請求項3」に対応)は、垂直方向に沿う工具移動において1回あたりの移動量が、あらかじめ設定した値に達した場合には垂直方向に沿う工具移動から並行方向に沿う工具移動に工具の移動方向を切換えるというものである。なお、工具131を移動すること、あるいは、ワーク200側を移動することにより、前記垂直方向に沿う工具移動が行われる。
前記あらかじめ設定した値は、例えばキーボード17を用いて数値制御装置1の不揮発性メモリ14に格納格納されているものとする。ここで、不揮発性メモリ14が請求項3の設定部に対応する。
【0023】
本発明の実施形態により図4に示すような加工において、垂直方向に沿う工具移動、すなわち加工における1回あたりの切込み量を工具の現在位置を確認しなくても一定にすることが可能になり、さらに垂直方向から並行方向へ工具の移動の方向を切換えるために、オペレータが一旦ハンドルを回すことを止める必要もなくなることで操作性が向上する。また、結果として、削り残しや工具破損の発生を予防することも可能になる。
【0024】
図6は、本発明(請求項3)のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSB01]移動方向は垂直方向か否か判断し、垂直方向(つまり、YES)の場合、ステップSB02へ移行し、垂直方向ではない(つまり、NO)場合、処理を終了する。
●[ステップSB02]前回、移動方向自動切換え部が実行されたときの工具の位置からの工具の移動量は設定した移動量以上か否か判断し、以上の場合(つまり、YESの場合)、ステップSB03へ移行し、以上ではない場合(つまり、NOの場合)、処理を終了する。
●[ステップSB03]移動方向を並行方向に切換え、処理を終了する。
【0025】
なお、ハンドル41aを回す方向と並行方向、垂直方向の各移動における工具移動の向きの関連付けは、加工によって異なるものであり、必要に応じて関連付けを変更すればよい。例えば、図7はフライス盤を用いた加工に本発明を適用した場合を説明する図である。ハンドル41aを右に回したら並行方向の工具131はa、垂直方向はbの方向に工具が動く関連付けであると仮定する。また、並行方向でaとは反対方向に動く関連付けをcとする。aとbが関連付けされているとしてbの移動でハンドルを右に回し続けると、本発明の第3の実施形態(「請求項3」に対応)の仕組みで移動の方向が並行方向に切換わり、関連付けがaのままなので工具移動の向きはワークを削る方向とは反対方向になる。この場合、単純にハンドルを回す方向を逆にすれば、工具はワークを削る方向に向かう。もし、ハンドルを同じ方向に回し続けるだけでワーク200を削る方向に動くようにしたいのであれば、例えば、移動の方向が並行方向に切換わった時には並行方向のハンドルを回す方向と工具移動の向きの関連付けはaとcを交互に行う、という仕組みを設ければよい。
【0026】
図8は図7に類似した旋盤の加工例である。この例では工具131の都合により並行方向の切削方向は1方向のみとなる。本発明の第4の実施形態として、工具131の指定形状130に対する垂直方向の移動量は、図8のような加工で垂直方向の移動量の設定を、指定形状に近づく方向と遠ざかる方向のそれぞれに設定することができる(請求項4)。
例えば、並行方向のハンドルを回す方向と工具移動の向きの関連付けはaとcを交互に行う、同様に垂直方向はbとdを交互に行う、という仕組みを設ければ、一方向にハンドルを回したり止めたりするだけで図8の加工ができるようになる。
ここで垂直方向の移動量の設定された値は例えばキーボード17を用いて不揮発性メモリ14に予め格納しておく。
【0027】
以上のようにハンドルを回す方向と並行方向、垂直方向の各移動における工具移動の向きの関連付けは、加工によって異なるものであり、必要に応じて関連付けを変更すればよい。また、旋盤では、指定形状から遠い位置では切込みを大きくして荒加工を行い、指定形状に近づくにつれて切込み量を小さくして仕上げ加工を行う場合がある。本発明の第5の実施形態として垂直方向の1回あたりの移動量を指定形状からの距離によって変化をつけて値を設定できるようにすることにより、このような加工に対応することができる(「請求項5」に対応)。
ここでキーボード17を用いて不揮発性メモリ14に指定形状からの距離によって変化する垂直方向の1回あたりの移動量を予め格納しておく。
【0028】
図9に示す経路の加工は、指定形状130に対する並行移動の切削動作を繰返し行い、指定形状を仕上げる加工である。このような加工で切削中、すなわち工具131の現在位置が素材領域内の場合、工具131の移動指令は指定形状130に対して並行方向になる。であるから、例えば、切削中に何らかの原因でオペレータがハンドル操作を止めてしばらく時間が空いた後、加工の続きを行う場合、工具131の移動方向はハンドル操作を止めた時の並行方向の工具移動であることが好ましい。本発明の第6の実施形態(「請求項6」に対応)では、素材形状と工具情報とを認識し、請求項1の移動方向自動切換えは工具の現在位置が素材形状の領域外の時にのみ有効となる。本発明の第6の実施形態により、切削中にハンドル操作を中断しても並行方向の工具移動の方向を保つことが可能となる。なお、工具131が素材領域内であるか否かの判断は数値制御装置で用いられる干渉チェックの公知の処理技術を用いることができるので説明を省略する。
なお、工具の形状情報や加工する被加工物の素材形状は図示しないインタフェースを介して予め不揮発性メモリ14に格納しておくことができる。ここで、不揮発性メモリ14が請求項6の入力部に対応する。
【0029】
図10は、本発明(請求項6)のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSC01]移動指令監視部の判断結果は自動切換え実行可能か否か判断し、自動切換え可能な場合(つまり、YESの場合)、ステップSC02へ移行し、自動切換え可能ではない場合(つまり、NOの場合)、処理を終了する。
●[ステップSC02]工具の現在位置は素材形状の領域外であるか否か判断し、領域外の場合(つまり、YESの場合)、ステップSC03へ移行し、領域外ではない場合(つまり、NOの場合)、処理を終了する。
●[ステップSC03]移動方向自動切換え部の処理を実行し、処理を終了する。
【符号の説明】
【0030】
1 数値制御装置
2 図形記憶部

4 補間部

15 グラフィック制御回路
16 表示装置
17 キーボード
18 軸制御回路
19 サーボアンプ
20 工作機械
23 ソフトウェアキー
25 表示装置/MDIパネル

40 機械操作盤
41 手動パルス発生器

130 指定形状
131 工具

200 ワーク

HP パルス信号
JP パルス信号
CP 補間パルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2軸以上の可動部を有し、該可動部を駆動して工具と被加工物を相対移動させることによって被加工物を加工する工作機械を制御する数値制御装置において、
斜め直線又は円弧を含む指定形状を入力する指定形状入力部と、
前記指定形状入力部により入力された前記指定形状を記憶する図形記憶部と、
手動操作に従って補間のためのパルス信号を出力する移動指令部と、
前記パルス信号を受けて、前記可動部を駆動するための補間パルスを出力する補間部と、
予め設定された時間内に前記補間のためのパルス信号が出力されたか否かを監視する移動指令監視部と、
前記移動指令監視部で一定時間パルス信号が出力されなかったと判断した場合には、前記指定形状に沿う工具と被加工物の相対移動と、工具の現在位置から前記指定形状の法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動とを切換える移動方向自動切換え部と、
を有することを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記移動方向自動切換え部によって切換わった相対移動の方向を表示する表示部を有することを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記指定形状の法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動の1回あたりの移動量を設定する設定部を有し、
前記移動方向自動切換え部で法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動に切換わった後の切換わった位置からの移動量が前記1回あたりの移動量に達した場合には、工具と被加工物の相対移動の方向を前記指定形状の法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動から前記指定形状に沿う工具と被加工物の相対移動に切換えることを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記指定形状の法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動の1回あたりの移動量は、指定形状に近づく方向と、指定形状から離れる方向でそれぞれ異なる値を設定できることを特徴とする請求項3に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記指定形状の法線方向に沿う工具と被加工物の相対移動の1回あたりの移動量を指定形状からの距離によって設定できることを特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。
【請求項6】
加工する被加工物の素材形状を入力する入力部と、
工具の形状情報を入力する入力部と、
前記被加工物の素材形状、工具の形状情報、工具の現在位置から工具が素材形状の領域外であるかどうか判断する判断部と、を有し、
工具の現在位置が素材形状の領域外の場合のみ前記移動方向自動切換え部が有効となることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の数値制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−41468(P2013−41468A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178565(P2011−178565)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】