説明

自動綾巻きワインダの作業部

【課題】ロータリマガジンに貯えられていた精紡コップが、操作高さに配置されたロータリマガジンから、床面近傍に配置された作業部の繰出し位置へ迅速かつ穏やかに移送され得るような廉価な作業部を提供する。
【解決手段】作業部2が、定位置の載置部18により規定された中間ステーション5と、該中間ステーションに給糸ボビン4を確保する休止位置27と引渡し位置8との間で調節可能なローディングシュート7とを有しており、さらに作業部2が巻き管エジェクタ9を有しており、該巻き管エジェクタは、該巻き管エジェクタが一方では空の巻き管をエジェクトし、他方では給糸ボビン4を引渡し位置8の範囲で引き取って、該給糸ボビンを繰出し位置6に位置固定するために設けられた巻き管収容装置10へ引き渡すように旋回可能に支承されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動綾巻きワインダの作業部、つまり糸巻返し部であって、多数の給糸ボビンを貯えておくための円形のロータリマガジンと、該ロータリマガジンの下方に配置された、1つの給糸ボビンを一次的に貯えておくための中間ステーションと、該中間ステーションから繰出し位置へ給糸ボビンを移送するための装置とが設けられている形式の作業部に関する。
【背景技術】
【0002】
自動綾巻きワインダの作業部(「糸巻返し部」とも呼ばれる)は、種々の構成が知られており、多数の特許出願に詳細に記載されている。このような作業部では、給糸ボビン、有利にはリング精紡機において製作された、比較的少ない糸材料しか有しない精紡コップが巻き返されて、大容積の綾巻きパッケージを形成する。この場合、巻返しプロセスの間、場合によっては生じる糸欠陥も除去される。
【0003】
作業部に繊維機械固有の精紡コップ・巻き管搬送装置を介して連続的に給糸ボビンが供給されるような自動綾巻きワインダも、その多数の作業部の範囲において、多数の給糸ボビンを貯えておくための、操作高さに配置された作業部固有のそれぞれ1つのタレット式のロータリマガジン(Rundmagazin)を有するような自動綾巻きワインダも知られている。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4322952号明細書には、たとえば、作業部がそれぞれ給糸ボビンを貯えておくための、操作高さに配置されたこのようなロータリマガジンを備えているような自動綾巻きワインダが記載されている。これらの作業部では、ロータリマガジンの下方に、それぞれコップシュート(Kopsrutsche)が配置されており、このコップシュートは開閉旋回可能なシュートフラップを備えている。コップシュートは機能的には、巻取りプロセス中に給糸ボビンを位置固定するボビン挿嵌心棒に接続されている。コップシュートとボビン挿嵌心棒とは、選択的に引渡し位置もしくは引取り位置と繰出し位置との間で旋回可能である。
【0005】
コップシュートがその引渡し位置に位置決めされていると同時にシュートフラップが閉じられていると、コップシュートは、それまでロータリマガジン内に貯えられていた給糸ボビンを、引取り位置に位置決めされたボビン挿嵌心棒へ確実に移送するための各1つの案内・センタリング手段を形成する。すなわち、コップシュートは必要に応じて、ロータリマガジンから解放された給糸ボビンがボビン挿嵌心棒に整然とした状態で位置決めされることを配慮する。
【0006】
一般に精紡コップとして形成されている給糸ボビンがボビン挿嵌心棒に装着された後に、コップシュートとボビン挿嵌心棒とは繰出し位置へ旋回させられる。この繰出し位置において、コップシュートは定位置に配置された背面部分と相まって、負圧をかけられる精紡コップ用の繰出し室を形成する。この繰出し室内で精紡コップは引き続きオーバヘッド式に繰り出され、この場合、糸は糸巻き返し過程の間、汎用通りに、糸欠陥についても同時に監視される。糸欠陥は場合によっては除去される。
【0007】
巻返し過程の後に、コップシュートは所属のボビン挿嵌心棒およびこのボビン挿嵌心棒に配置されている空管と共に再び引取り位置へ戻し旋回させられ、コップシュートのシュートフラップが開放旋回させられ、巻き管エジェクタ(Huelsenauswerfer)によってボビン挿嵌心棒から空管が持ち上げられる。持ち上げられた空管は、たとえば機械長さの搬送装置に引き渡され、この搬送装置は空管を廃棄する。
【0008】
前記公知の作業部においては、操作高さに配置されたロータリマガジンから、床面近傍に配置されたボビン挿嵌心棒へ到達するために精紡コップが克服しなければならない比較的大きな落下高さが不都合になるだけでなく、精紡コップをボビン挿嵌心棒に整然とした状態で位置決めし、精紡コップを有するボビン挿嵌心棒を作業部の繰出し位置へ旋回させ、かつ位置決めし、そして引き続き、繰り出された空管を再び信頼性良く廃棄するためにその都度必要となる著しい切換手間も不都合となる。
【0009】
ロータリマガジンとボビン挿嵌心棒との間の比較的大きな間隔は、しばしば精紡コップの巻き体に対する著しい機械的負荷を招くだけでなく、精紡コップの、プラスチックあるいはまた厚紙から成る巻き管に対しても著しい機械的負荷を招く。すなわち、繰出し位置への精紡コップの移送の途中では精紡コップの巻き体および/または精紡コップの巻き管が損傷される危険が常に存在しているわけである。
【0010】
それゆえに、このように構成された作業部では、とりわけ精紡コップ巻き管の状態の増幅された監視が推奨されるか、もしくは損傷された精紡コップ巻き管の比較的頻繁な交換が必要となる。
【0011】
このような作業部においてロータリマガジンからボビン挿嵌心棒への整然とした精紡コップ移送を保証し、かつ引き続き問題なしの空管廃棄を保証するために必要となる比較的高い切換手間も、全体的には自動綾巻きワインダの効率に不都合な影響を与える。なぜならば、自動綾巻きワインダの作業部はこのような切換過程の実施の間、生産を行うことができなくなるからである。
【0012】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3333414号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第3334778号明細書に基づき、巻取り機と関連してさらに、ロータリマガジン内に貯えられていた給糸ボビンが、繰出し位置に位置決め可能なボビン挿嵌心棒へのその最終的な移送の前にまず、ロータリマガジンの下方に配置された中間位置に準備されるような作業部も公知である。
【0013】
上記ドイツ連邦共和国特許出願公開第3333414号明細書に記載の作業部では、たとえばロータリマガジンの下方に、可動に支承されたそれぞれ2つのアームエレメントが配置されており、両アームエレメントは、1つのばねエレメントにより結合されている。これらのアームエレメントには、ロータリマガジンから送出された精紡コップが、ボビン挿嵌心棒による引取りのために準備され得る。両アームエレメントは閉じられた状態で、いわゆる「重力シュート」を形成する。すなわち、両アームエレメントは、ロータリマガジンから解放されかつ定位置のガイドを介して供給された精紡コップが、両アームエレメントの間に形成された開口内へ滑り込み、このときに精紡コップが引き続き、旋回可能に支承された別個のボビン挿嵌心棒によって引き取られ得るように位置決めされるように形成されている。有利には精紡コップの確実な位置決めのための支持部を備えているアームエレメントは、下方から前記開口内へ進入旋回したボビン挿嵌心棒による精紡コップ引取りの際に互いに離れる方向へ押し開かれ、この場合、精紡コップの巻き管が滑り落ちてボビン挿嵌心棒に被さり、精紡コップは引き続き、さらに旋回するボビン挿嵌心棒により、作業部の繰出し位置へ移送され得る。
【0014】
上記ドイツ連邦共和国特許出願公開第3334778号明細書には、自動式の巻取り機の比較可能な作業部が記載されている。この公知の作業部では、ボビン挿嵌心棒による引取りのために精紡コップを準備するための中間位置が、ロータリマガジンの下方に配置されたストッパによって形成される。このストッパの、旋回可能に支承されたアーム部分の間には、同じく円錐状に形成された収容開口が位置している。中間位置を形成する前記ストッパの下方には、回転可能に支承された装置が配置されており、この装置は中間位置から繰出し位置への精紡コップの移送を可能にする。回転可能に支承されたこの装置は2つのボビン挿嵌心棒を有している。両ボビン挿嵌心棒は伝動装置によって、その全運転サイクルの間、両ボビン挿嵌心棒が規定の作業位置を維持するように制御される。
【0015】
前記伝動装置はさらに、必要に応じて「精紡コップ巻き管の解離または緊定」のためにボビン挿嵌心棒を操作する。しかし、ボビン挿嵌心棒を整然とした状態で位置調整しかつボビン挿嵌心棒を必要に応じて制御するために必要となる前記伝動装置は、その構造の点で極めて手間がかかり、相応して比較的コストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4322952号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3333414号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3334778号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上に挙げた公知先行技術を出発点として、本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた形式の自動綾巻きワインダの作業部を改良して、必要に応じて、ロータリマガジンに貯えられていた精紡コップが、操作高さに配置されたロータリマガジンから、床面近傍に配置された作業部の繰出し位置へ迅速かつ穏やかに移送され得るような廉価な作業部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題を解決するために本発明の構成では、冒頭で述べた形式の作業部において、当該作業部が、定位置の載置部により規定された中間ステーションと、該中間ステーションに給糸ボビンを確保する休止位置と引渡し位置との間で調節可能な、旋回軸線を中心にして制限された範囲で旋回可能に支承されたローディングシュートとを有しており、さらに当該作業部が巻き管エジェクタを有しており、該巻き管エジェクタは、該巻き管エジェクタが一方では空の巻き管、つまり空管をエジェクトし、他方では給糸ボビンを前記引渡し位置の範囲で引き取って、該給糸ボビンを繰出し位置に位置固定するために設けられた巻き管収容装置へ引き渡すように旋回可能に支承されているようにした。
【発明の効果】
【0019】
本発明による作業部は、定位置の載置部により規定された中間ステーションと、該中間ステーションに給糸ボビンを確保する休止位置と引渡し位置との間で移動可能となる、所定の旋回軸線を中心にして制限された範囲で旋回可能に支承されたローディングシュートとを有している。
【0020】
さらに、作業部固有の巻き管エジェクタが設けられており、この巻き管エジェクタは、一方では空の巻き管をエジェクトすることができ、他方ではこの巻き管エジェクタが、ローディングシュートから引渡し位置へ移送された給糸ボビンを引き取って、巻き管収容装置へ穏やかに引き渡し得るように位置決め可能である。巻き管収容装置は引き続きこの給糸ボビンを確実に位置固定し、次いでこの給糸ボビンと共に当該作業部の繰出し位置へ旋回する。
【0021】
このように構成された作業部を用いると、操作高さに配置されたロータリマガジンから、床面近傍に配置された作業部の繰出し位置への給糸ボビンの信頼性の良い穏やかな移送が簡単にかつ廉価に確保されていて、しかも特に精紡コップの巻き管も大切に扱われるだけでなく、作業部における「通常」の巻取り運転が、給糸ボビン交換によって比較的短時間しか妨げられないことも保証されている。このことは、自動綾巻きワインダの全効率にとって極めて好都合な影響を与える。
【0022】
請求項2に記載されているように、有利な実施態様では、ローディングシュートと巻き管エジェクタとが、それぞれ規定されて制御可能な専用の駆動装置を備えている。ローディングシュートを旋回させるため、もしくは巻き管エジェクタを運動させかつ位置決めするためのそれぞれ専用の駆動装置の使用には、これらの構成要素の、必要に応じた制御がいつでも可能となるという利点がある。すなわち、給糸コップの移送中に、ローディングシュートと巻き管エジェクタとは時間的に互いに別個に使用されるか、または同時に使用されるわけである。
【0023】
駆動装置はこの場合、個別駆動装置として形成されていると有利である。すなわち、駆動装置としては、たとえば請求項3に記載されているように、ニューマチックシリンダが使用される。このようなニューマチックシリンダは、久しく以前より機械工学において信頼性の良い駆動装置であると実証されていて、しかも廉価に入手可能である構成部分である。さらに、このようなニューマチックシリンダでは、必要となる制御手間が制限されている。すなわち、このようなニューマチックシリンダを用いると、休止位置と引渡し位置との間でのみ旋回させられるだけでよいローディングシュートまたは引渡し位置と繰出し位置との間でのみ旋回させられる巻き管エジェクタにおいて必要となるような終端位置が、制御技術的な大きな手間をかけることなく、信頼性の良く到達され得る。当然ながら、ニューマチックシリンダの代わりに別の駆動装置、たとえばステップモータまたはこれに類するものを使用することもできる。
【0024】
さらに別の有利な実施態様では、巻き管収容装置が、傾動可能に支承されていて、給糸ボビン収容位置と繰出し位置との間で調節可能である(請求項4)。すなわち、巻き管収容装置は、該巻き管収容装置が一方では、巻き管エジェクタにより供給された給糸ボビンを問題なく引き取り、他方では収容された給糸ボビンを位置固定しかつ該給糸ボビンが繰出し位置において問題なくオーバヘッド式に繰り出され得るように位置決めし得るように運動可能に支承されている。
【0025】
請求項5に記載されているように、巻き管収容装置を傾動させるための駆動装置も、ニューマチックシリンダとして形成されていると有利である。このような傾動駆動装置のニューマチックシリンダについては、前でローディングシュートのための駆動装置もしくは巻き管エジェクタのための駆動装置に関連して既に説明した利点と同じ利点が該当する。巻き管収容装置においても、傾動駆動装置として、ニューマチックシリンダの代わりに、ステップモータ等を使用することができる。
【0026】
さらに別の有利な実施態様では、定位置の載置部が、休止位置に位置決めされたローディングシュートと相まって、巻取りプロセスの開始前に、付加的な給糸ボビンのための貯え器を形成している(請求項6)。このことは、作業部1つ当たりに貯えておくことのできる給糸ボビンの数を増大させることができることを意味する。このことは、オペレータの作業負担に好都合な影響を与える。なぜならば、補充供給が修正され、これによってオペレータの負担が軽減されるからである。
【0027】
さらに、請求項7に記載されているように、ローディングシュートの幅もしくは径は、該ローディングシュート内で給糸ボビンの予め規定された傾斜位置を可能にするように給糸ボビンの直径よりも大きく形成されている。ローディングシュート内の給糸ボビンのこのような傾斜位置には、特に、給糸ボビンが既に前位置調整されているという利点がある。すなわち、給糸ボビンの巻き管は、定位置の載置部におけるその中間ステーションから巻き管エジェクタへの給糸ボビンの問題のない移送が可能となるように位置調整されている。
【0028】
請求項8に記載されているように、さらに別の有利な実施態様では、定位置の載置部が、ローディングシュート内の給糸ボビンの位置を規定する引渡し面を有しており、該引渡し面が、巻き管引渡し時に、給糸ボビン引取り位置に位置決めされた巻き管エジェクタに対する対応面を形成している。このことは、ロータリマガジンにより準備された給糸ボビンがその中間位置への進入時に、定位置の載置部の引渡し面へ自動的にスライドし、このときに給糸ボビンは、該給糸ボビンの巻き管端面が巻き管エジェクタに対して平行に位置すると同時に巻き管エジェクタと同じ高さに位置するように位置調整される。このように位置調整された給糸ボビンは、休止位置から引渡し位置へ旋回したローディングシュートによって整然とした状態で巻き管エジェクタへ移送され得る。
【0029】
請求項9に記載されているように、巻き管エジェクタは、ホッパ状の収容エレメントを有しており、該収容エレメントが、給糸ボビンの巻き管のためのセンタリング溝と位置決め手段とを備えている。巻き管エジェクタのこのような構成により、空の巻き管、つまり空管が、エジェクト時に、センタリング溝によって案内されて、整然とした状態で位置調整され、他方では給糸ボビンがその中間位置からの移送時にセンタリング溝と位置決め手段とによって位置決めされて、該給糸ボビンが引き続き巻き管収容装置へ問題なく引き渡され得るようになることが確保される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】それぞれ操作高さに配置されたロータリマガジンと、旋回可能に支承されたローディングシュートと、旋回可能に支承された巻き管エジェクタと、巻き管収容装置とを備えた、自動綾巻きワインダの複数の作業部の一部を示す斜視図である。
【図2】図1に示した自動綾巻きワインダの作業部のうちの1つを、中間ステーションに準備された給糸ボビンと、休止位置に位置決めされたローディングシュートと、1つの給糸ボビンを備えた、繰出し位置に位置決めされた巻き管収容装置とを備えた状態で示す側面図である。
【図3】図2に示した作業部を、中間ステーションから巻き管収容装置への給糸ボビンの移送時に、引渡し位置に位置決めされたローディングシュートと、給糸ボビン収容位置に位置決めされた巻き管エジェクタと、給糸ボビン収容位置へ旋回された巻き管収容装置とを備えた状態で示す側面図である。
【図4】図2に示した作業部の正面図である。
【図5】図3に示した作業部の正面図である。
【図6】巻き管エジェクタへの移送前の、中間ステーションに位置決めされた、引渡し面により位置調整された給糸ボビンを示す斜視図である。
【図7】図6に示した給糸ボビンを、巻き管エジェクタへの移送後の状態で示す斜視図である。
【図8】巻き管エジェクタを、空管エジェクトの開始時の状態で示す斜視図である。
【図9】巻き管エジェクタを、空管エジェクトのあとの時点で示す斜視図である。
【図10】センタリング溝と位置決め手段とを有する巻き管エジェクタのホッパ状の収容エレメントを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0032】
図1には、自動綾巻きワインダ1の、列になって相並んで配置された複数の糸巻返し部を形成する作業部2のうちの幾つかが斜視図で図示されている。
【0033】
このような作業部2では、比較的少量の糸材料しか有しない給糸ボビン4、有利にはリング精紡機で製造された精紡コップが巻き返されて、大容積の綾巻きパッケージ20が形成される。この場合、糸は巻返し過程の間、さらに糸欠陥に関して監視される。糸欠陥は必要に応じて除去される。
【0034】
図1〜図3に図示されているように、綾巻きパッケージ20は巻取りプロセスの間、それぞれパッケージフレーム22内に自由に回転可能に保持されていて、巻取りプロセスの間、糸ガイドドラム21によって回転させられる。糸ガイドドラム21はさらに、給糸ボビン4から繰り出された糸24が、綾巻きパッケージ20への巻取り時に整然とした状態でトラバースされるように配慮する。
【0035】
これらの作業部においてそれぞれ糸走行路の範囲には、このような給糸ボビンの巻返しおよび糸欠陥の除去と関連して必要とされる糸処理・監視装置が配置されており、このような糸処理・監視装置は公知である。このような糸処理・監視装置は本発明の対象との関係においては重要ではないので、これらの自体公知の糸処理・監視装置に関する詳しい図示や説明は省略する。
【0036】
図1〜図5から判るように、各作業部2は複数の給糸ボビン4を貯えておくための回転可能に支承された円形のロータリマガジン3を有している。図面に図示されているロータリマガジン3は、たとえばそれぞれ精紡コップ4のための9個の収容ポケット19を有している。ただし、これらの収容ポケット19のうちの1つは従来汎用されている通りに、常に、操作高さに配置されたロータリマガジン3の投出開口もしくはエジェクト開口(図示しない)の真上に位置決めされている。
【0037】
ロータリマガジン3の下方には、旋回軸線17を中心にして制限された範囲で旋回可能に支承された状態で、ローディングシュート7が配置されている。このローディングシュート7はニューマチックシリンダ11によって選択的に休止位置27または引渡し位置8に位置決め可能である。ロータリマガジン3のエジェクト開口の下方には、さらに定位置の載置部18が配置されている。この載置部18には、巻取りプロセスの開始前に付加的な給糸ボビン4が保管され得るか、または給糸ボビン4がエジェクト開口を通じてロータリマガジン3から進出して、このときに休止位置27に位置決めされたローディングシュート7内に確保されるときに、給糸ボビン4がスライドして前記載置部18に載置される。
【0038】
各作業部2はさらに、旋回可能に支承された巻き管エジェクタ9を備えている。この巻き管エジェクタ9はニューマチックシリンダ12によって規定されて位置決め可能である。すなわち、巻き管エジェクタ9は、図3、図6および図7に図示されているように、給糸ボビン引取り位置23に位置決めされ得るか、または図2に示されているような位置、すなわち巻き管収容装置10に繰出し位置6で載置された給糸ボビン4の下方に位置する位置に位置決めされ得る。
【0039】
このような作業部2はさらに、傾動可能に支承されたそれぞれ1つの巻き管収容装置10を有している。この巻き管収容装置10は、給糸ボビン4の巻き管を収容して位置固定するための緊定クロー群(緊定つめ群)15,16を有しているか、または図7および図9に示した自体公知の巻き管挿嵌心棒を支持している。巻き管収容装置10はニューマチックシリンダ14によって、図3、図6および図7に示した給糸ボビン収容位置13と、図2に示した作業部固有の繰出し位置6との間で旋回させることができる。
【0040】
図2および図4には、それぞれ給糸ボビン4の繰出しプロセス中の前記作業部2のうちの1つが側面図もしくは正面図で図示されている。すなわち、作業部2の範囲では、繰出し位置6に位置決めされている巻き管収容装置10に1つの給糸ボビン4が位置固定されており、この給糸ボビン4からはオーバヘッド式に糸24が繰り出される。
【0041】
給糸ボビン4から繰り出された糸24は、汎用通りに種々の糸処理・監視装置(図面を見易くするために図2には図示していない)を介して作業部2の巻取り装置25へ走行する。作業部2の巻取り装置25は本実施形態では糸ガイドドラム21を有している。この糸ガイドドラム21は、パッケージフレーム22内に自由に回転可能に支承された綾巻きパッケージ20を摩擦結合式に回転させると同時に、巻き取られる糸24をトラバースさせる。
【0042】
図2および図4にさらに図示されているように、巻取りプロセスの間、ロータリマガジン3の下方に配置された、定位置の載置部18により規定された中間ステーション5には、既に新しい給糸ボビン4が中間貯えされている。すなわち、巻取りプロセスの各スタート後に、最初にロータリマガジン3に貯えられていた複数の給糸ボビン4のうちの1つが、ロータリマガジン3の下方に配置された載置部18へ直ちに移送される。この移送時に、ローディングシュート7は、ニューマチックシリンダ11によって相応して負荷されて、休止位置27に位置している。
【0043】
この給糸ボビン4は載置部18に一次的に貯えられたままとなる。すなわち、この給糸ボビン4は、図3および図5ならびに図6および図7に図示されているように、引渡し位置8へ旋回したローディングシュート7によって、給糸ボビン引取り位置23に位置決めされた巻き管エジェクタ9へ引き渡されるまで中間ステーション5に留まる。巻き管エジェクタ9はこの給糸ボビン4を引き続き、給糸ボビン収容位置13へ傾動させられている巻き管収容装置10へ移送する。
【0044】
繰出し位置6で巻き管収容装置10に配置されている給糸ボビン4が空になるやいなや、作業部2の巻取り部コンピュータ33によって自動的に給糸ボビン交換過程が導入される。この給糸ボビン交換過程は以下のようにして行われる:
繰出しプロセスの終了後に、ニューマチックシリンダ14の相応する制御によって、まず巻き管収容装置10が繰出し位置6から給糸ボビン収容位置13へ傾動される(図3)。この傾動運動と同時に、巻き管収容装置10に設けられた切換・案内プランジャが下方へ向かって移動させられ、このときに巻き管収容装置10において切換・案内スリーブを連行する。この切換・案内スリーブの働きにより、緊定クロー群15,16が引き込まれて、繰り出された空管は無クランプ状態となる。
【0045】
しかし図9に示したように、巻き管収容装置10が巻き管挿嵌心棒を有している場合には、まずこの巻き管挿嵌心棒が、有利にはやはりニューマチック式に閉じられる。
【0046】
引き続き、ニューマチックシリンダ12によって負荷可能な巻き管エジェクタ9が、図9に示したように上方へ向かって旋回させられ、このときにクランプされていない繰り出された空管を巻き管収容装置10から持ち上げる。この空管は、図9に図示されているように、センタリング溝31によって方向付けられて、たとえば機械長さの空管搬送装置上へ落下し、そしてこの空管搬送装置によって廃棄される。
【0047】
空管の放出後に、巻き管エジェクタ9は、図3および図5ならびに図6および図7に図示されているように、給糸ボビン引取り位置23に位置決めされたままとなる。この給糸ボビン引取り位置23では、巻き管エジェクタ9が、特に図5および図6から判るように、載置部18のほぼ側方に並んで位置している。この載置部18には、中間ステーション5において、新しい給糸ボビン4が準備される。巻き管エジェクタ9はこのときにその移送縁部32(図6参照)が、定位置の載置部18の引渡し面28の側方に並んで位置するように位置決めされており、この場合、休止位置27から引渡し位置8へ旋回したローディングシュート7は、図7に図示されているように、給糸ボビン4を巻き管エジェクタ9のホッパ状の収容エレメント29内へ問題なく移送することができる。
【0048】
引き続き、ローディングシュート7が、そのニューマチックシリンダ11の相応する制御によって休止位置27から引渡し位置8へ旋回させられる。この旋回運動の過程で、新しい給糸ボビン4が巻き管エジェクタ9に移送される。すなわち、この給糸ボビン4は、その巻き管26が収容エレメント29のセンタリング溝31内に案内されて、巻き管エジェクタ9の収容エレメント29に設けられた位置決め手段30へスライドする。巻き管エジェクタ9はその後に巻き管収容装置10の方向へ戻り旋回して、新しい給糸ボビン4を巻き管収容装置10に引き渡す。この巻き管収容装置10は閉じられた緊定クロー群15,16もしくは閉じられた巻き管挿嵌心棒によって給糸ボビン収容位置13に位置決めされている。巻き管収容装置10は引き続き、新しい給糸ボビン4を装備して繰出し位置6へ戻り旋回する。それと同時に、緊定クロー群15,16が開放旋回するか、もしくは巻き管挿嵌心棒が開放されて、新しい給糸ボビン4は巻き管収容装置10に確実に位置固定される。
【0049】
新しい給糸ボビン4が繰出し位置6に位置するやいなや、新しい繰出しプロセスが開始され、そして次の給糸ボビン4がロータリマガジン3の下方の中間ステーション5へ搬送される。
【0050】
図10には、巻き管エジェクタ9のホッパ状の収容エレメント29が拡大されて図示されている。図面から判るように、この収容エレメント29はセンタリング溝31と、位置決め手段30と、いわゆる移送縁部32とを有している。巻き管エジェクタ9に位置固定可能な収容エレメント29は全体的には、繰り出された巻き管26が確実にエジェクトされかつ新しい給糸ボビン4が巻き管収容装置10への引渡しのために信頼性良く位置決めされるように構成されている。
【符号の説明】
【0051】
1 自動綾巻きワインダ
2 作業部
3 ロータリマガジン
4 給糸ボビン
5 中間ステーション
6 繰出し位置
7 ローディングシュート
8 引渡し位置
9 巻き管エジェクタ
10 巻き管収容装置
11 ニューマチックシリンダ
12 ニューマチックシリンダ
13 給糸ボビン収容位置
14 ニューマチックシリンダ
15,16 緊定クロー群
17 旋回軸線
18 載置部
19 収容ポケット
20 綾巻きパッケージ
21 糸ガイドドラム
22 パッケージフレーム
23 給糸ボビン引取り位置
24 糸
25 巻取り装置
26 巻き管
27 休止位置
28 引渡し面
29 収容エレメント
30 位置決め手段
31 センタリング溝
32 移送縁部
33 巻取り部コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動綾巻きワインダの作業部であって、多数の給糸ボビンを貯えておくためのロータリマガジンと、該ロータリマガジンの下方に配置された、1つの給糸ボビンを一次的に貯えておくための中間ステーションと、該中間ステーションから繰出し位置へ給糸ボビンを移送するための装置とが設けられている形式の作業部において、当該作業部(2)が、定位置の載置部(18)により規定された中間ステーション(5)と、該中間ステーション(5)に給糸ボビン(4)を確保する休止位置(27)と引渡し位置(8)との間で調節可能な、旋回軸線(17)を中心にして制限された範囲で旋回可能に支承されたローディングシュート(7)とを有しており、さらに当該作業部(2)が巻き管エジェクタ(9)を有しており、該巻き管エジェクタ(9)は、該巻き管エジェクタ(9)が一方では空の巻き管をエジェクトし、他方では給糸ボビン(4)を前記引渡し位置(8)の範囲で引き取って、該給糸ボビン(4)を繰出し位置(6)に位置固定するために設けられた巻き管収容装置(10)へ引き渡すように旋回可能に支承されていることを特徴とする、自動綾巻きワインダの作業部。
【請求項2】
ローディングシュート(7)と巻き管エジェクタ(9)とが、それぞれ規定されて制御可能な専用の駆動装置(11;12)を備えている、請求項1記載の作業部。
【請求項3】
前記駆動装置(11;12)がニューマチックシリンダとして形成されている、請求項2記載の作業部。
【請求項4】
巻き管収容装置(10)が、傾動可能に支承されていて、給糸ボビン収容位置(13)と繰出し位置(6)との間で調節可能である、請求項1記載の作業部。
【請求項5】
巻き管収容装置(10)が、ニューマチックシリンダとして形成された駆動装置(14)によって傾動可能である、請求項4記載の作業部。
【請求項6】
定位置の載置部(18)が、休止位置(27)に位置決めされたローディングシュート(7)と相まって、巻取りプロセスの開始前に、付加的な給糸ボビン(4)のための貯え器を形成している、請求項1記載の作業部。
【請求項7】
ローディングシュート(7)は、該ローディングシュート(7)内で給糸ボビン(4)の予め規定された傾斜位置を可能にするように給糸ボビン(4)の直径を上回っている幅を有している、請求項6記載の作業部。
【請求項8】
定位置の載置部(18)が、ローディングシュート(7)内の給糸ボビン(4)の位置を規定する引渡し面(28)を有しており、該引渡し面(28)が、巻き管引渡し時に、給糸ボビン引取り位置(23)に位置決めされた巻き管エジェクタ(9)に対する対応面を形成している、請求項7記載の作業部。
【請求項9】
巻き管エジェクタ(9)が、ホッパ状の収容エレメント(29)を有しており、該収容エレメント(29)が、給糸ボビン(4)の巻き管(26)のためのセンタリング溝(31)と位置決め手段(30)とを備えている、請求項1記載の作業部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−166953(P2012−166953A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−28422(P2012−28422)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】