説明

自動販売機

【課題】缶飲料などの商品を冷却あるいは加温して販売する自動販売機に関し、冷却加温システムを用いて加温する場合の冷媒循環量の増大を抑制することで、圧縮機の耐久性低下を防止することを目的とする。
【解決手段】室外熱交換器13から圧縮機12に帰還する配管経路内に抵抗器30を設置するという構成で、室外熱交換器13での蒸発温度を維持して着霜や結露を防止しながら、商品収納室10を加温する際の吸入圧力を抑制することができ、圧縮機12の耐久性低下を防止することができる。また、商品収納室10を加温する場合には、圧縮機12の潤滑油内に冷媒が寝込むことによって生じる起動特性の低下を抑制することができ、商品収納室10を冷却する場合には、室内熱交換器11への高温冷媒の流入を抑制して室内の冷却負荷の増大を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶飲料などの商品を加温または冷却して販売する自動販売機において、圧縮機で圧縮された冷媒が凝縮する際に生じる潜熱を利用して冷却および加温を行う冷却加温システムを有した自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動販売機に対する消費電力量削減の要求が高まってきており、消費電力量削減手段として、冷却によって生じる廃熱あるいは外気の熱を利用して商品が保管された貯蔵庫を加温するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら従来の自動販売機を説明する。
【0004】
図6は従来の自動販売機の冷媒回路図、図7は従来の自動販売機における加温時の圧縮機と開閉弁の動作を示すタイミングチャート、図8は従来の自動販売機における冷却時の圧縮機と開閉弁の動作の関係を示すタイミングチャートである。
【0005】
図6に示すように、従来の自動販売機は、商品収納室1,2に設けた蒸発器3,4と、商品収納室下部の機械室に配置された冷却用圧縮機5、凝縮器6、膨張弁7,8からなる冷却システムと、商品収納室10に設けた室内熱交換器11と、商品収納室下部の機械室に配置された圧縮機12、室外熱交換器13からなる冷却加温システムとを備えている。
【0006】
ここで、商品収納室1,2は冷却システムを用いて商品を冷却して保管するものであり、商品収納室10は冷却加温システムを用いて商品を冷却あるいは加温して保管するものである。また、冷却システムの凝縮器6と冷却加温システムの室外熱交換器13は一体で形成されている。
【0007】
冷却加温システムにおける室内熱交換器11と室外熱交換器13は、2本の並列する配管で結ばれており、一方の接続配管経路には冷却用膨張弁14と冷却用逆止弁15、ドライヤ16が直列に設置され、他方の接続配管経路には加温用膨張弁17と加温用逆止弁18が直列に設置されている。
【0008】
ここで、冷却用逆止弁15は室外熱交換器13から室内熱交換器11に冷媒が流れる方向を正とし、加温用逆止弁18は室内熱交換器11から室外熱交換器13に冷媒が流れる方向を正とし、どちらも逆方向には冷媒が流れない。
【0009】
また、圧縮機12の吐出側配管と室外熱交換器13との接続配管には開閉弁20、圧縮機12の吐出側配管と室内熱交換器11との接続配管には開閉弁21、圧縮機12の吸入側配管と室内熱交換器11との接続配管には開閉弁22、圧縮機12の吸入側配管と室外熱交換器13との接続配管には開閉弁23をそれぞれ設置して、商品収納室10の冷却と加温に応じて流路を切り換える。
【0010】
以上のように構成された従来の自動販売機の動作について説明する。
【0011】
商品収納室1,2を冷却する冷却システムにおいて、圧縮機5で圧縮された冷媒は凝縮器6で外気と熱交換を行って凝縮した後に、それぞれ膨張弁7,8で減圧されて蒸発器3,4に供給される。そして、それぞれ商品収納室1,2の室内空気と熱交換しながら蒸発した後に、圧縮機5へ還流する。この結果、商品収納室1,2の室内空気を4℃程度に冷却しながら、排熱を外気に放出する。
【0012】
また、冷却加温システムを用いて商品収納室10を加温する場合、図7に示すように、圧縮機12のON/OFFに関係なく、開閉弁21と開閉弁23を開放し、開閉弁20と開閉弁22を閉塞する。圧縮機12で圧縮された冷媒は室内熱交換器11で商品収納室10の室内空気と熱交換を行って凝縮した後に、加温用膨張弁17で減圧されて室外熱交換器13に供給される。そして、外気と熱交換しながら蒸発した後に、圧縮機12へ還流する。この結果、外気の熱と冷却システムの凝縮器6からの排熱を利用して商品収納室10の室内空気を55℃程度に加温する。
【0013】
また、冷却加温システムを用いて商品収納室10を冷却する場合、図8に示すように、圧縮機12のON/OFFに関係なく、開閉弁20と開閉弁22を開放し、開閉弁21と開閉弁23を閉塞する。圧縮機12で圧縮された冷媒は室外熱交換器13で外気と熱交換を行って凝縮した後に、ドライヤ16で吸湿、冷却用膨張弁14で減圧されて室内熱交換器11に供給される。そして、商品収納室10の室内空気と熱交換しながら蒸発した後に、圧縮機12へ還流する。この結果、商品収納室10の室内空気を4℃程度に冷却しながら、排熱を外気に放出する。
【特許文献1】特開2007−149045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来の構成では、冷却加温システムを用いて商品収納室10を加温する際に加温能力過多となり、圧縮機12の耐久性が低下するという問題が発生する。これは、結露水の排水機構を持たない自動販売機においては、室外熱交換器13での着霜を抑制するために蒸発温度を外気温度に近づける必要があり、特に高外気温度では吸入ガス密度の増加に伴って冷媒循環量が増大するためである。
【0015】
この結果、圧縮機12の負荷が過大となって圧縮機12の耐久性が低下する。例えば、商品収納室10を冷却する場合には約−15℃の蒸発温度になるのに対して、商品収納室を加温する場合には約10℃の蒸発温度となり、冷媒R600aでは約2.6倍の冷媒循環量となる。
【0016】
通常この問題を解決するには、可変速圧縮機を用いて商品収納室10を加温する際の圧縮機回転数を低下させて、冷媒循環量を抑制する。しかしながら、可変速圧縮機(インバータ圧縮機)は高価であることから、外気の熱と冷却システムの排熱を利用して省エネを図る自動販売機をさらに普及させるためにはより安価な方法が求められる。
【0017】
本発明は、従来の課題を解決するもので、冷却加温システムを用いて商品収納室を冷却する場合に対して、室外熱交換器での蒸発温度を維持しながら加温する場合の冷媒循環量の増大を抑制することで、圧縮機の耐久性低下を防止する自動販売機を提供することを目的とする。
【0018】
また、上記従来の構成では、冷却加温システムを用いて商品収納室10を冷却あるいは加温する際、圧縮機12停止中に冷却加温システム内の冷媒がバランス状態となり、冷却あるいは加温効率が低下するという問題が発生する。これは、冷却する際に冷却加温システム内の冷媒がバランス状態となると、室外熱交換器13内に滞留する高温高圧の冷媒が徐々に室内熱交換器11に移動することで、室内の冷却負荷を増大させるとともに、加温する際に冷却加温システム内の冷媒がバランス状態となると、室内熱交換器11内に滞留する高温高圧の冷媒が圧縮機12の潤滑油内に冷媒が寝込むことによって起動時の冷媒量が不足して起動特性が低下するためである。通常この問題を解決するには、高温高圧の冷媒が凝縮して滞留する熱交換器の出入り口を圧縮機12停止中に閉鎖して、バランス状態になることを防止する。しかしながら、熱交換器の出入り口を閉塞するには開閉弁などを追加する必要があり、より安価な方法が求められる。
【0019】
本発明は、従来の課題を解決するもので、冷却加温システムを用いて商品収納室を冷却あるいは加温する際に、冷却と加温を切り替える既存の開閉弁を用いて圧縮機停止中に冷却加温システム内の冷媒がバランス状態になることを抑制する自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の自動販売機は、室外熱交換器と圧縮機の吸入側配管とを接続する配管経路内に抵抗手段を設け、ホット/コールド切換室を冷却する場合は圧縮機から吐出された冷媒を抵抗手段を通さずに室外熱交換器から室内熱交換器を経由して圧縮機に帰還する流路にでき、ホット/コールド切換室を加温する場合は圧縮機から吐出された冷媒を室内熱交換器から室外熱交換器を経由した後に抵抗手段を通って圧縮機に帰還する流路にできるように冷媒流路切換機構を構成したものである。
【0021】
これによって、冷却加温システムを用いて商品収納室を加温する際に、室外熱交換器での蒸発温度を維持しながら吸入圧力を抑制することができ、圧縮機の耐久性低下を防止することができる。
【0022】
また、上記目的を達成するために、本発明の自動販売機は、圧縮機停止中に冷媒流路切換機構を構成する開閉弁の一部を閉塞することにより、冷却加温システム内の冷媒がバランス状態になることを抑制するものである。
【0023】
これによって、冷却加温システムを用いて商品収納室を加温する場合には、圧縮機の潤滑油内に冷媒が寝込むことによって生じる起動特性の低下を抑制することができ、冷却加温システムを用いて商品収納室を冷却する場合には、室内熱交換器への高温冷媒の流入を抑制して室内の冷却負荷の増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の自動販売機は、室外熱交換器から圧縮機に帰還する配管経路内に抵抗手段を設置するという安価で簡便な構成を用いることで、室外熱交換器での蒸発温度を維持して着霜や結露を防止しながら、冷却加温システムを用いて商品収納室を加温する際の吸入圧力を抑制することができ、圧縮機の耐久性低下を防止することができる。
【0025】
また、本発明の自動販売機は、圧縮機停止中に冷却と加温を切り替えるための冷媒流路切換機構を構成する開閉弁の一部を閉塞するという簡単な操作で、冷却加温システム内の冷媒がバランス状態になることを抑制し、冷却あるいは加温効率の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の請求項1に記載の発明は、商品を冷却状態あるいは加温状態で収納するホット/コールド切換室と、前記ホット/コールド切換室内に設置された室内熱交換器と、商品を収納する区画の外に設置された室外熱交換器と、圧縮機と、前記室外熱交換器と前記圧縮機の吸入側配管とを接続する配管経路内に設けられた抵抗手段と、冷媒流路切換機構とを備え、前記冷媒流路切換機構は、前記ホット/コールド切換室を冷却する場合は前記圧縮機から吐出された冷媒を前記抵抗手段を通さずに前記室外熱交換器から前記室内熱交換器を経由して前記圧縮機に帰還する流路にし、前記ホット/コールド切換室を加温する場合は前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室内熱交換器から前記室外熱交換器を経由した後に前記抵抗手段を通って前記圧縮機に帰還する流路にすることにより、冷却加温システムを用いて商品収納室を加温する際に、室外熱交換器での蒸発温度を維持して着霜や結露を防止しながら、吸入圧力を抑制することができ、圧縮機の耐久性低下を防止することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、圧縮機がシェル内低圧タイプの圧縮機で、ホット/コールド切換室を加温する場合、前記圧縮機停止時に前記圧縮機の吸入側配管と室外熱交換器を接続する配管経路内に設置された流路切換機構を閉塞することにより、圧縮機の潤滑油内に冷媒が寝込むことによって生じる起動特性の低下を抑制することができ、加温効率の低下を抑制することができる。
【0028】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、ホット/コールド切換室を加温する場合、前記圧縮機の吸入側配管と前記室外熱交換器を接続する配管経路内に設置された流路切換機構と、前記圧縮機の吐出側配管と前記室外熱交換器を接続する配管経路内に設置された流路切換機構とを圧縮機起動直前に開放することにより、高低圧を瞬時にバランスさせて圧縮機を起動することができ、起動時に過大な負荷を掛けて圧縮機の耐久性が低下することを防止することができる。
【0029】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、ホット/コールド切換室を冷却する場合、前記圧縮機の吸入側配管と前記室外熱交換器を接続する配管経路内に設置された流路切換機構を開放し、前記圧縮機の吸入側配管と前記室内熱交換器を接続する配管経路内に設置された流路切換機構を前記圧縮機停止時に閉塞することにより、室外熱交換器内に滞留する高温高圧の冷媒を圧縮機内に開放し室内熱交換器への高温冷媒の流入を抑制して、室内の冷却負荷が増大することによる冷却効率の低下を抑制することができる。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0031】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における自動販売機の本体の正面から見た内部構成を示す構成図、図2は同実施の形態の自動販売機を左右に縦に切断して左側の断面を右から見た場合の縦断面図を示す。図3は同実施の形態における自動販売機の冷媒回路図、図4は同実施の形態の自動販売機における加温時の圧縮機と開閉弁の動作の関係を示すタイミングチャート、図5は同実施の形態の自動販売機における冷却時の圧縮機と開閉弁の動作の関係を示すタイミングチャートである。
【0032】
図1において、自動販売機100は缶飲料商品を冷却あるいは加温販売するものであり、全面に開口した断熱箱体からなる本体101と、この本体101に片側を回動自在に枢支された開閉自在の外扉102から構成されている。外扉102の下部には販売口103が配置されている。
【0033】
この外扉102の後方には、前面に断熱扉104を有する商品収納庫105が本体101内に形成されている。この商品収納庫105内は、図1のように、内部に真空断熱材が充填された区画壁106,107により左右3室に区画されており、区画壁106の左側に商品収納室1(冷却専用室)が形成され、区画壁106と区画壁107間に位置した中央に冷却と加温のいずれかを選択して切り替え可能な商品収納室2(冷却加温室)が形成され、区画壁107の右側には冷却と加温のいずれかを選択して切り替え可能な商品収納室10(冷却加温室)が形成されている。
【0034】
また、それぞれ室内1,2,10には、収納棚108が商品収納庫105の上部に吊り下げられており、商品が内部に収納されている。そして収納棚108の下部には選択された商品を搬出する搬出装置109が配置され、商品を1個ずつ下方に落下させる。搬出装置109の下方には販売口103に向かって傾斜したシュート110が配置されており、各収納棚108から排出された商品は、このシュート110上に落下し、転動して販売口103に導かれるものである。
【0035】
シュート110の下側には、商品収納室1,2,10にそれぞれ対応して冷却室111,冷却加温室112,113が備えられている。冷却室111内には商品収納室1を冷却する蒸発器3、冷却加温室内112には蒸発器4、加温時に通電する電気ヒータ114を備えている。また、冷却加温室113内には、室内熱交換器11と加温時に室内熱交換器11の補助として通電可能な電気ヒータ115を備えている。また各室1,2,10にはそれぞれ庫内ファン118があり、強制送風して庫内を強制的に循環させ、各室1,2,10それぞれに備えた庫内センサー(図示せず)によって庫内を適温に制御する。
【0036】
本体101の下方には、商品収納庫105の下部に備えた区画壁116によって区画された機械室117を形成している。
【0037】
次に機械室117内の構成について説明する。
【0038】
図1から図3に示すように、本実施の形態の自動販売機は、商品収納室1,2に設けた蒸発器3,4と、商品収納室1,2,10下部の機械室117に配置された冷却用圧縮機5、凝縮器6、膨張弁7,8とを接続した冷却システムと、商品収納室10に設けた室内熱交換器11と、商品収納庫105下部の機械室117に配置された圧縮機12、室外熱交換器13とを接続した冷却加温システムとを備えている。冷却用圧縮機5および圧縮機12は商用電源周波数で駆動する一定速の圧縮機である。また冷媒はイソブタンなどの可燃性冷媒またはR134AなどのHFC冷媒を使用している。
【0039】
ここで、商品収納室1,2は、冷却システムを用いて商品を冷却して保管するものであり、商品収納室10は、冷却加温システムを用いて商品を冷却あるいは加温して保管するものである。また、冷却システムの凝縮器6と冷却加温システムの室外熱交換器13は一体で形成されている。
【0040】
冷却加温システムにおける室内熱交換器11と室外熱交換器13は、室内加温時に室内熱交換器11から室外熱交換器13へ流れる加温接続配管120と、室外熱交換器13から室内熱交換器11へ流れる冷却接続配管121との2本の並列する配管で結ばれており、冷却接続配管121の経路には冷却用膨張弁14(キャピラリチューブでもよい)と冷却用逆止弁15、ドライヤ16が直列に設置され、加温接続配管120の経路には加温用膨張弁17(キャピラリチューブでもよい)と加温用逆止弁18が直列に設置されている。
【0041】
ここで、冷却用逆止弁15は室外熱交換器13から室内熱交換器11に冷媒が流れる方向を正とし、加温用逆止弁18は室内熱交換器11から室外熱交換器13に冷媒が流れる方向を正とし、どちらも逆方向には冷媒が流れない。
【0042】
また、圧縮機12の吐出側配管と室外熱交換器13との接続配管には流路切換機構となる開閉弁20を、圧縮機12の吐出側配管と室内熱交換器11との接続配管には開閉弁21を設置し、圧縮機12の吐出側配管に対して開閉弁20と開閉弁21は並列に接続されている。圧縮機12の吸入側配管と室内熱交換器11との接続配管には開閉弁22を、圧縮機12の吸入側配管と室外熱交換器13との接続配管には開閉弁23と抵抗器30とを直列接続しており、開閉弁22と開閉弁23とは圧縮機12の吸入側配管に対して並列接続されて、商品収納室10の冷却と加温に応じて流路を切り換える。また開閉弁21〜23は開閉弁20と同様に流路切換機構である。
【0043】
ここで、抵抗器30は、内径2mm、長さ600mm程度の細径管からなり、細径管内の冷媒の流速が音速近くに達することで通過する冷媒ガスの流量を略一定に保つことができる。また、室外熱交換器13の冷媒圧力と圧縮機12の体積流量に合わせて細径管の内径と長さを調整することで、抵抗器30の圧力降下量を任意に設定することができる。
【0044】
本実施の形態の自動販売機は、商品を冷却状態あるいは加温状態で収納するホット/コールド切換室(商品収納室10)と、ホット/コールド切換室(商品収納室10)内に設置された室内熱交換器11と、商品を収納する区画の外(商品収納庫105下部の機械室117)に設置された室外熱交換器13と、圧縮機12と、室外熱交換器13から室内熱交換器11へ流れる冷却接続配管121に設置された冷却用膨張弁14、冷却用逆止弁15、ドライヤ16と、室内熱交換器11から室外熱交換器13へ流れる加温接続配管120に設置された加温用膨張弁17、加温用逆止弁18と、室外熱交換器13と圧縮機12の吸入側配管とを接続する配管経路内に設けられた抵抗手段(抵抗器30)と、冷媒流路切換機構(開閉弁20〜23)とを備える。
【0045】
そして、冷媒流路切換機構(開閉弁20〜23)は、ホット/コールド切換室(商品収納室10)を冷却する場合には、圧縮機12から吐出された冷媒が、開閉弁20、室外熱交換器13、ドライヤ16、冷却用逆止弁15、冷却用膨張弁14、室内熱交換器11、開閉弁22を順に経由して圧縮機12に帰還するように、開閉弁20,22が開放状態、開閉弁21,23が閉塞状態となり、ホット/コールド切換室(商品収納室10)を加温する場合には、圧縮機12から吐出された冷媒が、開閉弁21、室内熱交換器11、加温用膨張弁17、加温用逆止弁18、室外熱交換器13、抵抗手段(抵抗器30)、開閉弁23を順に経由して圧縮機12に帰還するように、開閉弁20,22が閉塞状態、開閉弁21,23が開放状態となるものである。
【0046】
以上のように構成された本実施の形態の自動販売機の動作について説明する。
【0047】
商品収納室1,2を冷却する冷却システムにおいて、圧縮機5で圧縮された冷媒は凝縮器6で外気と熱交換を行って凝縮した後に、それぞれ膨張弁7,8で減圧されて蒸発器3,4に供給される。そして、それぞれ商品収納室1,2の室内空気と熱交換しながら蒸発した後に、圧縮機5へ還流する。この結果、商品収納室1,2の室内空気を4℃程度に冷却しながら、排熱を外気に放出する。
【0048】
また、冷却加温システムを用いて商品収納室10を加温する場合、図4に示すように、圧縮機12の運転中に、開閉弁21と開閉弁23を開放し、開閉弁20と開閉弁22を閉塞する。
【0049】
これによって、圧縮機12の運転中、圧縮機12で圧縮された冷媒は、開閉弁21を通り、室内熱交換器11で商品収納室10の室内空気と熱交換を行って凝縮した後に、加温用膨張弁17で減圧されて、室外熱交換器13に供給される。
【0050】
そして、室外熱交換器13において外気と熱交換しながら蒸発した後に、抵抗器30で圧力降下し、開閉弁23を通り圧縮機12へ還流する。
【0051】
したがって、抵抗器30によって室外熱交換器13が結露や着霜しない蒸発圧力(飽和温度で約+5℃)を維持しながら、圧縮機12の吸入圧力を飽和温度で−10℃以下に低下させて加温能力の著しい増大を抑制できる。また吸入圧力を低下させることで圧縮機12内部の吸入バルブの応力を抑制して圧縮機の信頼性を向上できる。
【0052】
また、圧縮機12の停止中に開閉弁20〜23をすべて閉塞するとともに、圧縮機12の起動直前に開閉弁20と開閉弁23とを開放する。これによって、圧縮機12の停止中、すべての開閉弁20〜23を閉じることで配管内を循環している冷媒が圧縮機12内に戻るのを防止でき、圧縮機12のシェル内は運転中と同じ低圧に保持されるので、圧縮機12内の潤滑油に冷媒が溶解するのを防止でき、次起動するときの圧縮機12の温度低下を抑制し、潤滑油内に冷媒が寝込むことによって生じる起動特性の低下を抑制することができる。
【0053】
また起動直前に、開閉弁20と開閉弁23とを開放することで、室外熱交換器13と抵抗器30を介して圧縮機12の吐出側と吸入側が直結されて圧力がバランスし、圧縮機12の起動時に高低圧バランス待ちせずに、すぐに圧縮機12を起動できる。また開閉弁20を開放することで膨張弁17を介して室内熱交換器11が直結されるため、停止時に室内熱交換器11内の冷媒が圧縮機12に戻るのを極力防ぐことができ、圧縮機12の停止中の室内の熱損失を防止することができる。これによって室内の加温負荷の増大を抑制することができ、起動時の圧縮機12への負荷を低減でき、消費電力量を低減できる。
【0054】
そして圧縮機12が起動すれば開閉弁20は閉じ、開閉弁23はそのまま開放した状態に保ち、開閉弁21を開放して、再び加温運転を行う。
【0055】
このように、外気の熱と冷却システムの凝縮器6からの排熱を利用して商品収納室10の室内空気を55℃程度に加温するとともに、圧縮機12の運転中、室外熱交換器13の蒸発温度は外気温度から5℃程度低い温度(例えば、外気温度15℃では約10℃)に保たれるとともに、抵抗器30の下流側では飽和温度約−10℃に相当する圧力となる。また、圧縮機12の停止中、そのシェル内に貯留されている潤滑油(図示せず)に冷媒が溶解することなく、圧縮機12の起動直後に冷却加温システム内を循環する冷媒が不足して加温能力が低下することが防止できる。
【0056】
ここで、外気温度15℃における抵抗器30での圧力降下量を冷媒飽和温度で15〜25℃に設定することが望ましい。この範囲で圧力降下量を調整することにより、室外熱交換器13での着霜や結露を抑制しながら、圧縮機12の吸入圧力が過大となることを防止することができる。
【0057】
また、細径管からなる抵抗器30を用いることで、外気温度が低下するに伴い室外熱交換器13の蒸発温度がより低くなった場合に、抵抗器30の圧力降下量が減少するので、低外気温で必要以上に圧縮機12の吸入圧力が低下することを抑制することができ、圧縮機12の圧縮比を抑制できるので、信頼性を確保できる。
【0058】
一方、冷却加温システムを用いて商品収納室10を冷却する場合、図3より、圧縮機12で圧縮された冷媒は、開閉弁20を通り、室外熱交換器13で外気と熱交換を行って凝縮した後に、ドライヤ16で吸湿、冷却用膨張弁14で減圧されて室内熱交換器11に供給される。そして、商品収納室10の室内空気と熱交換しながら蒸発した後に、開閉弁22を通り圧縮機12へ還流する冷却サイクルとなる。
【0059】
これによって、圧縮機12の運転中、圧縮機12で圧縮された冷媒は、開閉弁20を通り室外熱交換器13で外気と熱交換を行って凝縮した後に、ドライヤ16で吸湿、冷却用膨張弁14で減圧されて室内熱交換器11に供給される。そして、商品収納室10の室内空気と熱交換しながら蒸発した後に、開閉弁22を通り圧縮機12へ還流する。
【0060】
この結果、商品収納室10の室内空気を4℃程度に冷却しながら、排熱を外気に放出するとともに、室内熱交換器11の蒸発温度は商品収納室10の室内空気温度から20℃程度低い温度(例えば、室内空気を4℃では約−16℃)に保たれる。
【0061】
図5に示すように、圧縮機12の停止中は、開閉弁20は開放の状態を保ち、開閉弁23を開放して、開閉弁21と開閉弁22を閉塞する。
【0062】
これによって、圧縮機12の停止中、室外熱交換器13内の高温冷媒を圧縮機12のシェル内に開放することで、室内熱交換器11を介さずに室外熱交換器13の冷媒を圧縮機に開放して圧力を下げることができ、室外熱交換器13と室内熱交換器11の圧力が速やかにバランスする。
【0063】
この結果、圧縮機12の停止中、室外熱交換器13内の高温冷媒が室内熱交換器11へ流入することを抑制して室内の冷却負荷の増大を抑制することができる。
【0064】
そして、圧縮機12の起動直後に開閉弁22を開放し、開閉弁23を閉塞して、圧縮機12の運転を行う。
【0065】
また、図5のように、圧縮機12の起動直後の開閉弁22,23の動作として、圧縮機12の運転動作よりも少し遅れて開閉弁22の開放および開閉弁23の閉塞動作をおこなってもよい。これによって、圧縮機12の起動と同時に開放および閉塞動作を行うと高低圧バランスに差圧が発生するのを抑制でき、起動時に圧縮機12にかかる負荷を低減できる。
【0066】
以上のように、本発明の実施の形態1の自動販売機においては、商品収納室10を加温する場合、室外熱交換器13での蒸発温度を外気温度付近に維持して着霜や結露を防止しながら、圧縮機12の吸入圧力を冷却運転とほぼ同じレベルに抑制することができ、過大な吸入圧力の上昇に伴う圧縮機12の耐久性低下を防止することができる。
【0067】
また、冷却加温システムを用いて商品収納室10を加温する場合には、圧縮機12の潤滑油内に冷媒が寝込むことによって生じる起動特性の低下を抑制することができ、冷却加温システムを用いて商品収納室10を冷却する場合には、室内熱交換器11への高温冷媒の流入を抑制して室内の冷却負荷の増大を抑制することができる。
【0068】
また上記のように一定速の圧縮機12で冷却加温システムを制御することが可能になり、安価な構造で省エネを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明にかかる自動販売機は、室外熱交換器から圧縮機に帰還する配管経路内に抵抗器を設置するという安価で簡便な構成を用いることで、室外熱交換器での蒸発温度を維持して着霜や結露を防止しながら、冷却加温システムを用いて商品収納室を加温する際の吸入圧力を抑制することができ、圧縮機の耐久性低下を防止することができるので、ホット飲料とコールド飲料を切り換えて保存するショーケースなどで加温運転する圧縮機にも適用できる。
【0070】
また、本発明の自動販売機は、圧縮機停止中に冷却と加温を切り替える開閉弁の一部を閉塞するという簡単な操作で、冷却加温システム内の冷媒がバランス状態になることを抑制し、冷却あるいは加温効率の低下を抑制することができるので、ホット飲料とコールド飲料を切り換えて保存するショーケースなどの加温および冷却運転時の省エネルギー化が要求される用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態1における自動販売機の本体の内部構成を示す構成図
【図2】同実施の形態の自動販売機を左右に縦に切断した場合の縦断面図
【図3】同実施の形態における自動販売機の冷媒回路図
【図4】同実施の形態の自動販売機における加温時の圧縮機と開閉弁の動作の関係を示すタイミングチャート
【図5】同実施の形態の自動販売機における冷却時の圧縮機と開閉弁の動作の関係を示すタイミングチャート
【図6】従来の自動販売機の冷媒回路図
【図7】従来の自動販売機における加温時の圧縮機と開閉弁の動作を示すタイミングチャート
【図8】従来の自動販売機における冷却時の圧縮機と開閉弁の動作の関係を示すタイミングチャート
【符号の説明】
【0072】
10 商品収納室
11 室内熱交換器
12 圧縮機
13 室外熱交換器
20 開閉弁
21 開閉弁
22 開閉弁
23 開閉弁
30 抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を冷却状態あるいは加温状態で収納するホット/コールド切換室と、前記ホット/コールド切換室内に設置された室内熱交換器と、商品を収納する区画の外に設置された室外熱交換器と、圧縮機と、前記室外熱交換器と前記圧縮機の吸入側配管とを接続する配管経路内に設けられた抵抗手段と、冷媒流路切換機構とを備え、
前記冷媒流路切換機構は、前記ホット/コールド切換室を冷却する場合は前記圧縮機から吐出された冷媒を前記抵抗手段を通さずに前記室外熱交換器から前記室内熱交換器を経由して前記圧縮機に帰還する流路にし、前記ホット/コールド切換室を加温する場合は前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室内熱交換器から前記室外熱交換器を経由した後に前記抵抗手段を通って前記圧縮機に帰還する流路にすることを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
圧縮機がシェル内低圧タイプの圧縮機で、ホット/コールド切換室を加温する場合、前記圧縮機停止時に前記圧縮機の吸入側配管と室外熱交換器を接続する配管経路内に設置された流路切換機構を閉塞することを特徴とする請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
ホット/コールド切換室を加温する場合、前記圧縮機の吸入側配管と前記室外熱交換器を接続する配管経路内に設置された流路切換機構と、前記圧縮機の吐出側配管と前記室外熱交換器を接続する配管経路内に設置された流路切換機構とを圧縮機起動直前に開放することを特徴とする請求項1または2に記載の自動販売機。
【請求項4】
ホット/コールド切換室を冷却する場合、前記圧縮機の吸入側配管と前記室外熱交換器を接続する配管経路内に設置された流路切換機構を開放し、前記圧縮機の吸入側配管と前記室内熱交換器を接続する配管経路内に設置された流路切換機構を前記圧縮機停止時に閉塞することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−110219(P2009−110219A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281188(P2007−281188)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】