説明

自動車のそばのユーザの存在を検出するための装置

【課題】 低周波信号の放射の終了後においても、自動車のノブに差し伸べられているユーザの手などの物体の存在を検出することができる存在検出装置を提供する。
【解決手段】 この存在検出装置(CAPT)は、少なくとも1つの検出部材(EA/EB)を備えており、該検出部材(EA/EB)は、各検出部材(EA/EB)の各々が位置している周囲環境に応じて変化する物理量を有し、この物理量から、可変であり、かつ物体の存在していない状態に対応する基準レベルが導出され、また、この存在検出装置(CAPT)は、低周波信号の放射中、低周波信号の放射の前に測定された基準レベルの値を保存している保存装置(LOGIC)をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの検出部材を備えている、物体の存在を検出するための存在検出装置および存在検出方法に関する。各検出部材は、検出部材が位置している周囲環境に応じて変化する物理量を伴っている。
【0002】
本発明は、自動車の分野に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
自動車用の上記のような存在検出装置は、自動車の開口部のノブに差し入れられている、自動車のユーザの手などの物体の存在を検出することができる。したがって、このような存在検出装置によって、自動車を自動的に解錠する(例えば手がノブの内側に挿入されたときに)ことができ、また、自動車を自動的に施錠する(例えば手がノブの上に触れたときに)ことができる。
これを行うために、存在検出装置には、例えば電極セットなどの検出部材が設けられ、検出部材に伴う物理量(例えば容量)が利用される。この場合、電極間の容量が変化したときに、手などの物体を、この電極セットによって検出することができる。
このような存在検出装置は、物体の存在の検出に続いて、ユーザによって保持されている識別目標に向かって、その識別目標の同一性をチェックするために、低周波信号を送るアンテナを励振することができる。これにより、識別オブジェクトは、自身の認証のために、アンテナに無線周波数信号を送る。
このような存在検出装置に関する1つの問題は、アンテナによって低周波信号が放射されているときに、物理量が、低周波信号によって乱されるということである。したがって、存在検出装置は妨害され、そのために、手などの物体のいかなる存在の検出もできなくなる。その結果、低周波信号の放射中に、ユーザが自分の手をノブの内側に置き、その後手を引っ込めないでいても、低周波信号の放射の終了後に、この手の存在は検出されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低周波信号の放射の終了後においても、自動車のノブに差し伸べられているユーザの手などの物体が存在するときに、このような物体の存在を検出することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、少なくとも1つの検出部材を備えている、物体の存在を検出するための存在検出装置を提供するものである。各検出部材は、検出部材が位置している周囲環境に応じて変化する物理量を伴っている。この存在検出装置は、次の特徴を有している。
− 物理量から、可変であり、かつ物体の存在していない状態に対応する基準レベルが導出される。
− 存在検出装置は、低周波信号の放射中、この低周波信号の放射の前に測定された基準レベルの値を保存している保存装置をさらに備えている。
【0006】
以下に詳細に示すように、保存された基準レベルの値は、低周波信号の放射の終了後において、物体を検出するための基準として働く。したがって、手などの物体が、低周波信号の放射の終了後に存在している場合には、この基準レベルの値に対する物理量の偏差が、明らかに認識される。したがって、低周波信号の放射の終了後においても、物体の存在は、常に検出される。
【0007】
非限定的な実施例においては、この存在検出装置は、さらに次の特性を有する。
【0008】
− 保存装置は、さらに次のことを行うことができる。
・検出部材に伴う物理量を測定する。
・物理量と、基準レベルの保存されている値とを比較する。
【0009】
− 保存装置は、さらに、基準レベルの変更を一時停止させることができる。したがって、これにより、周囲環境だけによるものではない物理量の測定値によって変更されることなく、基準レベルの値を固定することができる。
【0010】
− 基準レベルの変更の一時停止は、物体の存在が検出されるとすぐに、または低周波信号が放射されるとすぐに行われる。これによって、物体の検出の前に、または低周波信号の放射の前に、基準レベルの値を保存することができる。
【0011】
− 保存装置は、低周波信号の放射の終了後に、保存動作を解除することができる。これによって、物体が存在しなくなったときに、再び、物理量から、可変な基準レベルを導出することができるようになる。
【0012】
− 物理量は容量である。これによって、物体検出のためのエリアを、例えば自動車のノブの全長にわたるように広げることができる。
【0013】
− 物理量は光束である。光束を用いることによって、検出システムを、より簡単に構築することができる。
【0014】
− 存在検出装置は、低周波信号の放射の開始を検出する低周波検出素子を、さらに備えている。これによって、低周波信号の放射期間を通じて、基準レベルの値を保存していることができる。
【0015】
− 存在検出装置は、低周波信号を放射するためのアンテナと共通の電源によって電力供給される。これによって、例えば自動車の配線の数を減らすことができる。
【0016】
− 存在検出装置は、低周波信号の放射中、低周波信号を放射することができるアンテナの励振電圧によって電力供給される。これによって、低周波信号の放射のために、存在検出装置への連続電力供給が断たれたときに、存在検出装置に電力を供給することができる。
【0017】
− 存在検出装置は、入力電圧から電力供給されるように構成されており、この入力電圧からの電気エネルギーを蓄える入力キャパシタをさらに備えている。これによって、検出部材を働かせることができる。
【0018】
− 存在検出装置は、検出部材が物体の存在を検出したときに、出力電気量を発生させるために、検出部材に組み合わされた測定手段をさらに備えている。
【0019】
− 存在検出装置は、測定手段を、いかなる出力電気量も発生させないように機能停止させるための機能停止手段をさらに備えている。
【0020】
− 測定手段の第1の実施形態において、測定手段は、検出部材の各々に1つずつ組み合わされた電流発生器を有し、出力電気量は発生器出力電流である。
【0021】
− 測定手段の第2の実施形態において、測定手段は、検出部材の全てに組み合わされた単一の電流発生器を有し、出力電気量は、発生器出力電流である。
【0022】
− 測定手段の第3の実施形態において、測定手段は、検出部材の各々に1つずつ組み合わされた接地スイッチを有し、出力電気量は、発生器出力電圧である。
【0023】
− 測定手段の第4の実施形態において、測定手段は、検出部材の全てに組み合わされた単一の接地スイッチを有し、出力電気量は、発生器出力電圧である。
【0024】
− 非限定的な第1の実施形態によれば、低周波検出素子は、存在検出装置への連続電力供給の中断を検出するためのコンパレータを有している。このように連続電力供給の中断を検出することによって、その後に低周波信号が送られることが認識される。
【0025】
− コンパレータは、入力キャパシタの端子間電圧と、入力電圧とを比較することができる。これは、存在検出装置への連続電力供給の中断を検出するための簡単な手段である。そのような中断は、それに続く低周波信号の放射の開始を予告する。
【0026】
− 機能停止手段は、存在検出装置への連続電力供給の中断が検出されたときに、測定手段を機能停止させることができる。したがって、機能停止は、低周波信号の放射の開始前になされる。したがって、低周波信号の放射の始めから終わりまで、確実に、測定手段を機能停止させることができる。
【0027】
− 機能停止手段は、入力電圧の値が、入力キャパシタの端子間電圧から、第1の電圧閾値を差し引いた値より小さいときに、測定手段を機能停止させることができる。したがって、測定手段は、もはや出力電気量を発生させず、それによって、低周波信号の放射による、容量性の存在検出装置への妨害が防止される。さらに、第1の電圧閾値を用いているために、これによって、入力電圧上のスプリアス信号の影響を取り除くことができる。
【0028】
− 保存装置は、入力電圧の値が、入力キャパシタの端子間電圧から、第2の電圧閾値を差し引いた値より大きくなるまで、低周波信号の放射の前に測定された基準レベルの値を保存している。保存動作が解除されると、自動車のコントローラは、存在検出装置によって消費される電流によって、再び、存在検出装置の状態、したがって物体の存在を認識することができる。
【0029】
− 存在検出装置は、連続電力供給の中断の経過時間を観測し、経過期間が第1のあらかじめ定められた時間より長くなった場合にのみ、低周波信号の放射の前に測定された基準レベルの値が保存されることを許可する第1の時間フィルタをさらに備えている。これによって、供給電圧の電圧降下の際に、いかなる不必要な保存も避けられる。
【0030】
− 存在検出装置は、第2のあらかじめ定められた時間より長い期間、入力電圧が、入力キャパシタの端子間電圧に等しいときに、低周波信号の放射の前に測定された基準レベルの値の保存動作を解除させるための第2の時間フィルタをさらに備えている。これによって、アンテナによる低周波信号の放射と、存在検出装置への入力電圧による電力の再供給との混同が防止される。したがって、測定手段は、低周波信号の放射中、再作動することはない。
【0031】
− 非限定的な第2の実施形態によれば、低周波検出素子は、低周波信号の放射を表わす共振信号を検出するためのコンパレータを有している。これによって、共振回路であるアンテナによる、そのような低周波信号の放射を検出することができる。このような共振信号は、アンテナへの供給電圧より相当に高い。
【0032】
− 低周波検出素子は、共振信号からピークレベルを検出するためのピークレベル検出器を有している。ピークレベル検出を実行することは容易であり、また、それによって、低周波信号の放射を検出することができる。
【0033】
− コンパレータは、低周波信号を放射することができるアンテナによって生成される共振電圧と、基準電圧とを比較することができる。これは、共振信号を検出する簡単な手段である。
【0034】
− 共振信号は、低周波信号を放射することができるアンテナを流れる共振電流のイメージ電圧である。これは、共振信号を検出する簡単な手段である。
【0035】
− 機能停止手段は、低周波信号の放射が検出されたときに、測定手段を機能停止させることができる。これによって、存在検出装置による低周波信号の放射への妨害が防止される。
【0036】
− 非限定的な第3の実施形態によれば、低周波検出素子は、低周波信号の放射を表わす、パルス信号化された入力信号を検出するためのコンパレータを有している。このパルス信号化された入力信号を観察することは容易である。
【0037】
− 低周波検出素子は、パルス信号化された入力信号からピークレベルを検出するためのピークレベル検出器を有している。ピークレベル検出を実行することは容易であり、また、それによって、低周波信号の放射を検出することができる。
【0038】
− 低周波検出素子は、さらなるキャパシタをさらに有している。これによって、入力信号が再び連続的になったときに、測定手段の不時の機能再停止の発生が防止される。さらに、これによって低周波信号の放射を、より迅速に検出することができる。
【0039】
− 低周波検出素子は、1つのキャパシタと組み合って、低周波信号の放射の終了後における検出の再開を可能にするさらなる抵抗を有している。これによって、ピークレベル検出器のキャパシタを放電させることができ、したがって、存在検出装置の測定手段の機能停止を作動させないようにすることができる。
【0040】
− 低周波検出素子は、このフィルタの充電時間を制御することによって、低周波信号の放射を検出するまでの遅れ時間を最小にするように定められた時定数を有する。したがって、低周波信号の放射が、より迅速に検出される。それによって、基準レベルの値を、より迅速に保存することができる。また、存在検出装置のいかなる不時の再初期化も避けるために、存在検出装置の測定手段を、より迅速に機能停止させることができる。したがって、保存された基準レベルの損失が避けられる。
【0041】
− 低周波検出素子は、充電されるときに、パルス信号化された入力信号に、スプリアスな過渡的妨害ピークが形成されないように定められた時定数を有する。これによって、存在検出装置の測定手段の好ましくない機能停止が防止される。
【0042】
本発明は、次のものを備えていることを特徴とする、物体の存在を検出するためのユニットを提供するものである。
− 上述の特性のいずれか1つを有する存在検出装置と、
− 低周波信号を放射するためのアンテナ。
【0043】
さらに、本発明は、検出部材に伴う物理量に基づいて、物体の存在を検出する存在検出方法を提供するものである。物理量は、検出部材が位置している周囲環境に応じて変化する。この存在検出方法は、次のステップを含むことを特徴としている。
− 物理量から、可変であり、かつ物体の存在していない状態に対応する基準レベルを導出するステップと、
− 低周波信号の放射中、低周波信号の放射の前に測定された基準レベルの値を保存しているステップ。
【0044】
非限定的な実施形態によれば、この存在検出方法は、さらに次の特徴を有する。
【0045】
− 存在検出方法は、さらに次のステップを含んでいる。
・ 検出部材に伴う物理量を測定するステップと、
・ 物理量と、基準レベルの保存されている値とを比較するステップ。
【0046】
− 存在検出方法は、基準レベルの変更を一時停止させるステップをさらに含んでいる。
【0047】
− 存在検出方法は、低周波信号の放射の終了後に、保存動作を解除するステップをさらに含んでいる。
【0048】
− 基準レベルの変更の一時停止は、物体の存在が検出されるとすぐに、または低周波信号が放射されるとすぐに行われる。
【0049】
さらに本発明は、情報処理ユニットによって実行可能な1つ以上の命令列を有するコンピュータプログラム製品であって、これらの命令列を実行することによって、上述の特性のいずれか1つを有する存在検出方法を遂行することができるコンピュータプログラム製品を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による存在検出装置、およびそれに組み合わされたアンテナを有する存在検出ユニットの非限定的な一実施形態のブロック図である。
【図2】図1の存在検出装置の動作を説明するための2つのグラフである。
【図3】測定手段の非限定的な第1の実施形態を有する、図1の存在検出装置の詳細なブロック図である。
【図4】図1の存在検出装置の非限定的な第1の実施形態の詳細なブロック図である。
【図5】次の各項を示すグラフである。 − 図4の存在検出装置への入力電圧、および存在検出装置に組み合わされたアンテナによる低周波信号の放射中の、存在検出装置の入力キャパシタの端子間電圧、 − 図4の存在検出装置の低周波検出素子の出力、 − 図4の存在検出装置の基準レベルの固定状態、 − 図4の存在検出装置の電流発生器の機能停止状態 − 図4の存在検出装置の第2のキャパシタの充電状態、 − 自動車のノブの内側における、ユーザの手の存在の、図4の存在検出装置による検出、 − 図4の存在検出装置を備える、図1の存在検出ユニットによって消費される電流との時間経過。
【図6】次の各項を示すグラフである。 − 従来の存在検出装置の入力電圧、 − 自動車のノブに差し伸べられたユーザの手の存在の、従来の存在検出装置による検出、 − 従来の存在検出装置の入力キャパシタの端子間電圧、 − 従来の存在検出装置の第2のキャパシタの充電状態、 − 従来の存在検出装置を備える存在検出ユニットによって消費される電流との時間経過。
【図7】図1の存在検出装置の非限定的な第2の実施形態の第1の変形実施例の詳細なブロック図である。
【図8】図1の存在検出装置の非限定的な第2の実施形態の第2の変形実施例の詳細なブロック図である。
【図9】図1の存在検出装置の非限定的な第3の実施形態の詳細なブロック図である。
【図10】図9の低周波検出素子の詳細な回路図である。
【図11】図10の低周波検出素子内の2つの出力信号の概略図である。
【図12】次の各項に関するグラフである。 − 図9の存在検出装置への入力電圧、および存在検出装置に組み合わされたアンテナによる低周波信号の放射中の、存在検出装置の入力キャパシタの端子間電圧、 − 図9の存在検出装置の低周波検出素子の出力、 − 図9の存在検出装置の基準レベルの固定状態、 − 図9の存在検出装置の電流発生器の機能停止状態、 − 図9の存在検出装置の第2のキャパシタの充電状態、 − 自動車のノブの内側におけるユーザの手の存在の、図9の存在検出装置による検出、 − 図9の存在検出装置を備えた、図1の存在検出ユニットによって消費される電流との時間経過。
【図13】測定手段の非限定的な第2の実施形態を有する、図1の存在検出装置のブロック図である。
【図14】測定手段の非限定的な第3の実施形態を有する、図1の存在検出装置のブロック図である。
【図15】測定手段の非限定的な第4の実施形態を有する、図1の存在検出装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
添付図面を参照して、非限定的な以下の説明を読むことによって、本発明の他の特徴および利点を、よりよく理解しうると思う。
【0052】
本発明による存在検出装置CAPTを有する、物体Oの存在を検出するための存在検出ユニットPSUを、図1の非限定的な実施形態をもって説明する。
【0053】
この存在検出ユニットPSUを、非限定的に、自動車に応用するものとして説明する。したがって、自動車のユーザの手などの物体Oを、一例としてあげる。
【0054】
存在検出ユニットPSUは、次のものを備えている。
− 自動車の開口部のノブPに差し伸べられている(触れていようといまいと)、自動車のユーザの手の存在を検出するための、自動車V用の少なくとも1つの存在検出装置CAPT。存在検出装置CAPTは、入力電圧Vinによって駆動される。非限定的な一例において、自動車Vは、対応するノブPを有する3〜5個の開口部(ドア、トランク)を備えている。少なくとも1つの存在検出装置CAPTが、各ノブPに組み合わされている。非限定的な一例において、各ノブPは、2つの存在検出装置CAPTを有している。
− 自動車のユーザによって保持されている識別オブジェクトIDに向けて、その識別オブジェクトIDが、実際に、その自動車Vに専用のものであるか否かをチェックするために、低周波信号BFを放射するアンテナTX。低周波信号BFの放射は、定期的になされる(ポーリング方式)か、または、ノブPに差し伸べられている手の存在することが、存在検出装置CAPTによって検出されたときになされる。アンテナTXは、非限定的な一例において、ノブP内に配置されている。非限定的な一例において、アンテナTXは、インダクタL(フェライト磁心による)およびキャパシタCを有している。このようなアンテナは、当業者には公知であるから、本明細書においては、これ以上詳細に説明しない。
【0055】
存在検出装置CAPTとアンテナTXとは、互いに近接して配置されていること(接続線が長くなりすぎないようにするために)、およびそれらを、同一の電子モジュールに搭載してもよいし、異なる電子モジュールに搭載してもよいことは理解しうると思う。
【0056】
存在検出ユニットPSUは、コントローラECU(この例においては、自動車Vの客室コントローラ)に接続されている。これによって、以下に詳細に述べるように、存在検出ユニットPSUによって消費された共通電流IPSUを測定することにより、存在検出装置CAPTの状態を検出することができる。
【0057】
この存在検出ユニットPSUは、また、自動車Vへのキーレスアクセスを可能にするハンズフリーシステムSYSの一部分を形成している。このハンズフリーシステムSYSは、存在検出ユニットPSUに入力電圧Vinを供給することができる電源を備えている。
非限定的な一例においては、この入力電圧Vinは、自動車のバッテリから供給されるバッテリ電圧Vbat(例えば12ボルトの)である。当然ながら、他の値の電圧を供給することもできる。
【0058】
非限定的な一実施形態において、アンテナTXと存在検出装置CAPTとは、図1に示すように、並列に(2本の同じ線で)接続されている。これによって、存在検出装置CAPTに、アンテナTXと共通の電源から電力を供給することができる。アンテナTXと存在検出装置CAPTに対し、同一の電源設備が用いられる(したがって、入力電圧Vinは共通電圧である)。これによって、別々の電源を用いる場合に比して、電力供給に必要な線数を減らすことができる。したがって、自動車Vに搭載される線数が減少する。
【0059】
非限定的な一実施形態においては、存在検出装置CAPTは、低周波信号BFの放射(BF放射とも呼ばれる)中、アンテナTXによって発生した共振電圧によって電力を供給される。これによって、低周波信号の放射のために、存在検出装置CAPTへの連続電力供給が断たれたときに、特に共通電源の場合に、存在検出装置CAPTに電圧を供給することができる。
【0060】
自動車への応用の場合には、存在検出装置CAPTは、自動車に何らかの作用を及ぼそうとしているユーザの意図を検出することができる。特に、存在検出装置CAPTは、ユーザの手を、自動車の開口部のノブP上に置く(したがって、ノブに触れて)ことによって/自動車の開口部のノブPの内側に置く(ノブに触れていようと、いまいと)ことによって、それぞれ、自動車の施錠/解錠を行おうとするユーザの意図を検出することができる。したがって、存在検出装置CAPTは、より具体的には以下に詳細に示すように、自動車の開口部のノブに差し伸べられている手を検出することができる。
【0061】
存在検出装置CAPTは、特に、次のものを備えている。
− ノブPに差し伸べられている手の存在を検出するための、保存装置LOGICに接続された、少なくとも1つの検出部材EA/EB。非限定的な一例において、存在検出装置CAPTは、図1に示すように、2つの検出部材EA/EBを備えている。各検出部材EA/EBに、1つの物理量CEが伴っている。
− 低周波信号BFの放射中、この低周波信号BFの放射の前に測定された物理量CEの基準レベルREFの値を保存するための保存装置LOGIC。
【0062】
非限定的な一例においては、保存装置LOGICは、制御集積回路である。
【0063】
さらに、保存装置LOGICは、次のことを行うことができる。
− 各検出部材EA/EBに伴う物理量の測定、
− それらの物理量から導出される基準レベルの変化の取り込み、および、
− 物理量CEの値と、保存されている基準レベルREFの値との比較。
【0064】
非限定的な第1の例において、存在検出装置CAPTは容量性である。各検出部材EA/EBは、キャパシタを形成する一組の電極から成る電極セットである。各電極セットに伴う物理量は、容量である。そのため、自動車への応用の場合には、ノブP全体をカバーする、かなり大きな検出エリアを有することができる。
【0065】
非限定的な第2の例においては、存在検出装置CAPTは光学的である。各検出部材EA/EBに伴う物理量は、光束である。
【0066】
各検出部材EA/EBに伴う物理量CEの値は、次のものによって変化する。
− a)検出部材が位置している周囲環境、および、
− b)検出部材の近傍における物体Oの存在。
【0067】
a)の場合には、ユーザの手などの物体Oの存在と結びついていない、例えば湿気の多い空気や外部電波などの妨害要素によって、検出部材EA/EBの周囲環境が、完全には安定していないために、検出部材EA/EBに伴う物理量CEは、この周囲環境によって発生する微小な変化を示す。これらの微小な変化は、時間的にゆっくりした変化でもある。すなわち、これらの微小な変化は、検出部材EA/EBの周囲環境の性質を表わす。したがって、この場合には、各検出部材EA/EBに伴う物理量CEは、可変で、かつ物体Oが存在していない状態に対応する基準レベルREFを与える。このように、基準レベルREFには、これらの微小変化が考慮に入れられる。したがって、基準レベルREFは、この微小変化に対して自己適合する。
各検出部材EA/EBが電極セットである例においては、物理量CEは、このような周囲環境中に位置する電極セットの電極間の容量である。
【0068】
b)の場合には、物体Oが、物理量CEを乱すほどに検出部材EA/EBに接近すると、その物理量は、可変な基準レベルREFに比して、著しい変化を示す。それらの著しい変化は、時間的に非常に急激である。物体Oが存在している場合の物理量の値と、基準レベルREFの値とを比較することによって、存在検出装置CAPTは、この物体Oの存在を推定することができる。
【0069】
物理量CEの2つの例示的な変化が、図2に、次のように示されている。
− 図2の1番目のグラフは、低周波信号BFの放射の前に物体Oが存在しており、その後も継続して存在している場合を示している。
− 図2の2番目のグラフは、低周波信号BFの放射中に物体Oが出現し、その後も継続して存在している場合を示している。
【0070】
次に、これらの2つの状態における存在検出装置CAPTの動作を、説明する。
【0071】
図2の1番目のグラフに関しては、次のとおりである。
− 時刻t0〜t1の範囲において、何らの物体Oも存在していない場合には、物理量CEから、対応する検出部材EA/EBの周囲環境に応じて可変である基準レベルREFが導出される。この基準レベルREFの値Vが、あらかじめ定められた時間周期ts(非限定的な一例において、数ミリ秒の程度の)で測定されて、保存される。この例においては、3つの値V1〜V3が連続的に保存され、最後の値V3が、最新の値である。この最後の値V3が、メモリに保存されている、その前の値V2に換えて保存される。
− 時刻t2において、物体Oが、検出部材EA/EBの周囲環境を乱すほどに、検出部材EA/EBに接近すると、例えばユーザの手が、検出部材EA/EBを有している開口部のノブPに差し伸べられると、その検出部材EA/EBに伴う物理量CEも変化する。この変化は、前述の微小変化より大きい。
存在検出装置CAPTは、物体Oが存在しているときの物理量CEの測定値(図に示されている測定値VO)と、物体Oの存在が検出される前に最後に測定されて、保存された基準レベルREFの値(この場合には値V3)とを比較することによって、これらの変化を検出する。この比較によって、物体Oの存在が示される。このとき、物理量CEからの基準レベルREFの自己適応は一時停止させられる。その結果、基準レベルREFは固定され、したがって、周囲環境のみに由来するものではない、物理量CEの測定値によって変更されることはない。したがって、基準レベルREFの他の値Vがメモリに保存されることはない。
− 時刻t3において、低周波信号BFが放射される。基準レベルREFの値V3は、依然として、メモリに保存されている最後の値である。
− 時刻t4においては、低周波信号BFは、もはや放射されない。
この場合には、低周波信号BFの放射の終了後に、低周波信号BFの放射前に測定されて、保存されていた基準レベルREFの値が開放される。したがって、自己適応が再び可能になる。基準レベルREFの自己適応はもはや一時停止させられず、基準レベルREFはもはや固定されない。
しかしながら、物体Oは、依然として存在しているから、基準レベルREFの新しい値が保存されることはない。
基準レベルREFの値V3は、依然として、物体Oが存在していない状態で、かつ低周波信号BFの放射前に測定された値であり、また、低周波信号BFの放射の終了後に、時刻t4における物理量CEの測定値VO、すなわち物体Oが存在している状態での物理量CEの測定値VOと、値V3との間の比較がなされるから、存在検出装置CAPTは、低周波信号BFの放射の終了後に、物体Oの存在を検出する。
− 時刻t5においては、物体Oは、もはや検出部材EA/EBの存在する領域内になく、基準レベルREFの新しい値、すなわち値V4が保存される。したがって、低周波信号BFの放射前、かつこの場合には、物体Oの存在の検出前に測定された基準レベルREFの値は、新しい値V4によって置き換えられる。
【0072】
図2の2番目のグラフに関しては、次のとおりである。
− 時刻t0〜t2の範囲において、何らの物体Oも存在していない場合には、物理量CEから、対応する検出部材EA/EBの周囲環境に応じて可変である基準レベルREFが導出される。この基準レベルREFの値Vが、あらかじめ定められた時間周期tsで測定されて、保存される。この例においては、4つの値V1〜V4が連続的に保存され、最後の値V4が、最新の値である。
− 時刻t2において、低周波信号BFが放射される。このとき、基準レベルREFの自己適応は一時停止させられる。したがって、基準レベルREFは固定される。したがって、メモリに保存されている、基準レベルの最後の値は、最新の値V4である。
− 時刻t3において、物体Oが、検出部材EA/EBの周囲環境を乱すほどに、検出部材EA/EBに接近すると、例えばユーザの手が、検出部材EA/EBを有している開口部のノブPに差し伸べられると、その検出部材EA/EBに伴う物理量CEも変化する。この変化は、前述の微小変化よりも大きい。
【0073】
このとき、存在検出装置CAPTは、次の2つの場合において、これらの変化を検出することができないことは理解しうると思う。
すなわち、存在検出装置CAPTが容量性装置である(したがって、検出部材EA/EBとして、少なくとも1つの電極セットを有している)場合には、低周波信号BFは、容量結合および/または誘導結合によって存在検出装置CAPTを妨害し、存在検出装置CAPTが、物体Oの存在の信頼性の高い検出を行うことを妨げる。
存在検出装置CAPT(容量性であろうとなかろうと)が、その電源を、アンテナTXと共通にしている場合には、アンテナTXによる低周波信号BFの放射中、アンテナTXへの電力供給を可能にするために、存在検出装置CAPTへの連続電力供給は断たれる。それによって、後に詳細に示されるように、物体Oの存在の検出が妨げられる(アンテナTXによって発生させられる共振電圧VbFによって電力を供給されない限り)。
【0074】
− 時刻t4において、低周波信号BFは、もはや放射されない。存在検出装置CAPTは、もはや妨害されず、存在検出装置CAPTへの連続電力供給は、もはや断たれない。したがって、存在検出装置CAPTは、再び作動することができる。
この場合には、低周波信号BFの放射の終了後に、低周波信号BFの放射前に測定されて、保存されていた基準レベルREFの値が開放される。したがって、自己適応が再び可能になる。基準レベルREFの自己適応はもはや一時停止させられず、基準レベルREFはもはや固定されない。
しかしながら、物体Oは、依然として、物理量CEを乱すほど、対応する検出部材EA/EBの近傍に存在する。したがって、基準レベルREFの値が新規に保存されることはない。
基準レベルREFの値V4は、依然として、低周波信号BFの放射前に、物体Oが存在していない状態で測定された値であるから、存在検出装置CAPTは、物体Oが存在している状態での物理量CEの測定値(図示されている測定値VO)と、この値V4とを比較することによって、物理量の変化を検出する。したがって、物体Oの存在は、低周波信号BFの放射の終了後においても検出される。
− 時刻t5において、物体Oは、もはや検出部材EA/EBの存在する領域内にない。基準レベルREFの新しい値、すなわち値V5が保存される。
【0075】
したがって、物体の存在が検出される(物理量CEの大きな変化が測定されることによって)か、または低周波信号BFの放射が検出されるとすぐに、物理量CEからの基準レベルREFの自己適応が一時停止させられる(基準レベルREFの値が固定される)。したがって、保存されている基準レベルREFの値は、物体Oの検出の前、または低周波信号BFの放射の前に測定された値であり、次のようになるまで、少なくとも低周波信号BFの放射中、そのまま維持される。
− もはや、いかなる低周波信号BFの放射も存在しなくなり、かつ
− 検出部材EA/EBの近傍に、対応する物理量CEを乱す、いかなる物体Oも存在しなくなるか、またはタイムアウトTIMEOUT(例えば30秒を超過する)が発生するまで。タイムアウトTIMEOUTが発生した場合には、ユーザは、自分の手を移動させ、後述する少なくとも1つの助勢機能を再び実行したい場合には、自分の手を再びノブに戻さなければならないことは理解しうると思う。
低周波信号の放射の終了後には、保存動作が解除される。自己適応が再び可能になる。しかしながら、自己適応(基準レベルREFの新しい値の新しい保存)は、物体Oが存在していない状態でのみ実行される。したがって、低周波信号の放射の終了後に、物体Oが残っている限り、基準レベルREFの新しい値が保存されることはない(タイムアウトTIMEOUTが発生した場合以外には)。
【0076】
したがって、基準レベルREFは、検出部材EA/EBが位置している周囲環境のみ(物体Oを含まない)の変化に由来しない、物理量CEの測定量の変化によって変更されることはない。
このようにして、存在検出装置CAPTは、低周波信号BFの放射の終了後に持続する、自動車の開口部のノブに差し伸べられている手の存在を検出することができる(手を、低周波信号BFの放射の前に開口部のノブに差し伸べ始めていたのか、または放射中に差し伸べ始めたのかに関わらず)。
【0077】
存在検出装置CAPTは、さらに、低周波信号BFの放射の前に自動車の開口部のノブに差し伸べられ始めており、低周波信号BFの放射中にノブへの差し伸べを停止された手の存在を検出することができることは理解しうると思う。
【0078】
図3は、存在検出装置CAPTを、より詳細に示している。
【0079】
前述の要素に加えて、存在検出装置CAPTは、次のものを備えている。
− 非限定的な一実施形態において、検出部材EA/EBに組み合わされた電流発生器GA/GBである、少なくとも1つの測定手段。図3の場合には、2つの検出部材EA/EBに、それぞれ組み合わされた2つの電流発生器GA/GB。
− 保存装置LOGICの電圧を調整するための電圧レギュレータREG。
− 入力電圧Vinから受ける電気エネルギーを蓄えて、電圧レギュレータREGの入力電圧を安定化させるための入力キャパシタC2。非限定的な一例として、入力キャパシタC2は、同様の機能を有する別の装置であってもよい。
− 保存装置LOGICへの電力供給電圧を安定化させ、それによって供給電力の変動を防止するための第2のキャパシタC1。
− 第1の電流発生器GAの発生器出力電流IAを定めるための、第1の1対の抵抗R2、R2’。
− 第2の電流発生器GBの発生器出力電流IBを定めるための、第2の1対の抵抗R3、R3’。
【0080】
存在検出装置CAPTは、さらに、次のものを備えている。
− 低周波信号BFの放射の開始を検出するための低周波検出素子CMP。
− 測定手段(図3の場合には電流発生器GA/GB)が、出力電気量(図3の場合には発生器出力電流IA/IB)を発生させないように、測定手段を機能停止させるための機能停止手段INH。
【0081】
図1および図3に示されている入力電圧Vinによって、存在検出ユニットPSUに電圧が供給されると、存在検出ユニットPSUは、図1に示されている共通電流IPSUを消費する。この共通電流IPSUは、次のように分割される。
− 低周波信号を放射するアンテナTXを流れるアンテナ電流ITX
− 電流発生器GAおよび/またはGBが作動しているときに、電流発生器GAおよび/またはGBによって、それぞれ生成される発生器出力電流IAおよび/またはIBに分割されるセンサ電流Icapt
− 電圧レギュレータREGおよび保存装置LOGICに電力を供給するためのスタンバイ電流Iidle。このスタンバイ電流Iidleは、2つの発生器出力電流IAおよびIBより相当に小さい。
【0082】
入力電圧Vinによって、存在検出装置CAPTに電力供給されるとき、その入力電圧Vinは、連続電圧(例えば12Vの)の形態をしている。存在検出装置CAPTは、連続的な電力供給を必要とする。存在検出装置CAPTは、電力供給されると、自動車Vの開口部のノブPに差し伸べられているユーザの手の存在を検出することができる。
【0083】
次のいずれかのやり方で、ユーザの手を、ノブPに差し伸べることができる。
− 手を、ノブPの内側に置く(検出部材EAを形成している電極セットがアクティブになる(電極間の容量が変化する))。
− 手を、ノブP上に置き、したがって、ノブPに接触する(検出部材EBを形成している電極セットがアクティブになる)。
ノブPに差し伸べられているユーザの手の存在が検出がなされると、アクティブになった各電極セットから成る検出部材EA、および/またはEBに組み合わされた、存在検出装置CAPTの電流発生器GA、および/またはGBが作動する。したがって、検出部材EA/EBのアクティブ化に基づいて作動した、それらに組み合わされた電流発生器GA/GBに、発生器出力電流IA/IBが発生する。
【0084】
したがって、このときには、電源からの共通電流IPSUは、発生している発生器出力電流IAおよび/またはIBと、スタンバイ電流Iidleとの和に等しい。共通電流IPSU(したがって、発生器出力電流IAおよび/またはIB)によって、自動車VのコントローラECUは、ノブPに差し伸べられているユーザの手の存在状態をチェックすることができることに注意されたい。
実際、自動車VのコントローラECUは、この消費された共通電流IPSUを測定し、その値に応じて、次のいずれが生じているかを特定することができる。
− 1)手は、接触していようといまいと、ノブPの内側に位置している(IPSU=IA+Iidle)。
− 2)手は、ノブP上に位置している(IPSU=IB+Iidle)。
− 3)手は、ノブPの内側、かつノブP上に位置している(IPSU=IA+IB+Iidle)。
− 4)いかなる手も、存在していない(IPSU=Iidle)。
したがって、共通電流IPSUの測定結果に応じて、コントローラECUは、なされた検出に対応する、自動車の施解錠に関するコマンドを、次のように実行することができる。
− 第1の場合1)においては、開錠する。
− 第2の場合2)においては、施錠する。
− 第3の場合3)においては、開錠と施錠との間の優先度を特定し、その優先度関数に応じたコマンドを実行する。
− 第4の場合4)においては、何も行わない。
【0085】
したがって、測定手段(この例においては、電流発生器GA/GB)は、検出部材EA/EBの状態(アクティブになっているか否か)に関する情報を与えることができる。
さらに、手がノブPに差し伸べられている期間に応じて、コントローラECUは、後述する少なくとも1つの助勢機能を実行することができる。
アンテナTXは、ユーザによって保持されている識別オブジェクトIDの識別/認証を可能にするために、また自動車へのアクセスを可能にするために、低周波信号BFを放射する(この放射は、手の検出後に開始されるものであっても、または「ポーリング」方式によって定期的に行われているものであってもよい)。識別オブジェクトIDの識別によって、そのシリアル番号および認証番号を知ることができ、それによって、単純になされる(識別オブジェクトによってなされる)か、相補的になされる(識別オブジェクトと自動車とによってなされる)かにかかわらず、識別オブジェクトIDが、その自動車へのアクセス権を有しているか否かをチェックすることができるようになることに注意されたい。認証は暗号化技術を介して行われる。
このような動作を行うために、アンテナTXは、入力電圧Vinによる電圧を供給される。このために、入力電圧Vinは、例えば−12V/0V/+12Vのパルス信号にされる。非限定的な別の例において、入力電圧Vinを、0V/+12Vまたは−12V/0Vの信号とすることもできる。インダクタLとキャパシタCから成る共振回路LCを有するアンテナTXは、このパルス信号化された入力電圧Vinを電磁場に変換して、識別オブジェクトIDと通信する(共振電圧VbFを介して)。
【0086】
次に、存在検出装置CAPTの動作を、以下に述べる各実施形態と関連付けて、より詳細に説明する。
【0087】
以下の説明においては、非限定的な一例として、容量性の存在検出装置CAPTを用いる。すなわち、検出部材として電極セットを用いる。さらに、非限定的な一例として、自動車の開口部のノブに差し伸べられている、その自動車のユーザの手などの物体Oの存在を、以下においても考察する。
第1の検出部材EA(電極セットから成り、接近電極とも呼ばれる)によって、開口部の解錠を行うために、ノブPの内側に挿入された手の存在(接触していようといまいと)を検出することができる。
第2の検出部材EB(電極セットから成り、接触電極とも呼ばれる)によって、開口部の施錠を行うために、ノブP上に置かれた手の存在を検出することができる(一般的には、例えば手がノブの外面の特定の位置上に置かれたときに)。
非限定的な一実施形態においては、各電極セットは、それぞれ、2つの電極EA1とEA2、EB1とEB2を有している。第1の電極EA1、EB1は励振電極、第2の電極EA2、EB2は測定電極と呼ばれる。第1の電極は、励振信号を出す。2つの電極間に、電気力線が形成され、第1の電極と第2の電極との間の容量結合、および/または誘導結合によって得られる信号が測定される(制御集積回路である保存装置LOGICによって)。したがって、手が、ノブPの内側に、接触することなく挿入されるか、またはノブPと接触すると、2つの電極間の容量は急激に減少する。事実、電気力線は、手の存在によって変化する(いくつかの電気力線が、地面と等価であると考えることができる手の方向にそらされる)。
非限定的な別の一実施形態において、電極セットは、地面とともに用いられる単一の電極である。この場合には、測定されるのは、電極と地面との間の容量である。上述の例と対照的に、容量は、手の存在によって急激に増加する。
このような電極セットの使用は、当業者には公知のことであるので、本明細書においては、これ以上詳細に説明しない。
【0088】
第1の実施形態
図4は、存在検出装置CAPTの第1の実施形態を示す。
この第1の実施形態は、上述の特性に加えて、次の特性を備えている。
− a)アンテナTXと存在検出装置CAPTとは、共通の電源から電力を供給される。
− b)低周波検出素子CMPは、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2と入力電圧Vinとを比較するためのコンパレータである。非限定的な一変形実施例において、低周波検出素子CMPは、ヒステリシスコンパレータである。
− c)機能停止手段INHは、入力電圧Vinの値が、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2から第1の電圧閾値Vs1を引いた値未満であるときに、電流発生器GA/GBを機能停止させる。
【0089】
非限定的な一実施例において、存在検出装置CAPTは、上述の特性に加えて、さらに次のものを有する。
− 連続電力供給の中断の経過時間TCを測定して、次のことを認可するための第1の時間フィルタTF1。
・ 経過時間TCが、第1のあらかじめ定められた期間Tp1より長くなった場合のみ、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルREFの値を保存する。
・ 経過時間TCが、第1のあらかじめ定められた期間Tp1より長くなった場合のみ、作動している一方または両方の電流発生器GA/GBを機能停止させる。
− 次のことを認可するための第2の時間フィルタTF2。
・ 第2のあらかじめ定められた期間より長い期間Tp2において、入力電圧Vinが、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2に等しいときに、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルREFの保存値を開放する。
・ 第2のあらかじめ定められた期間より長い期間Tp2において、入力電圧Vinが、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2に等しいときに、機能停止している片方または両方の電流発生器の機能停止を解除する。
【0090】
非限定的な一例において、第1のあらかじめ定められた期間Tp1は、電源電圧降下期間より長い。実際には、後に示されるように、このチェックは、第1のあらかじめ定められた期間Tp1の間、低周波検出素子CMPの出力S_CMPがハイ状態にあるか否かを調べることによって遂行される。
【0091】
非限定的な一例において、第2のあらかじめ定められた期間は、低周波信号の周期TBFに等しいか、またはこの周期の倍数に等しい。
一変形実施例において、第2のあらかじめ定められた期間より長い期間Tp2において、入力電圧Vinの値が、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2から、第2の電圧閾値Vs2を引いた値より大きいときに、第2の時間フィルタTF2は、保存動作の解除を認可する。
表現「保存動作の解除」は、第2の時間フィルタTF2が、検出部材EA/EBの対応する物理量からの基準レベルの自己適応を再び可能にすることを意味している。したがって、自己適応は、もはや一時停止の状態でなくなる。
【0092】
上述の2つの時間フィルタの機能を、単一の時間フィルタで行なうことができることは理解しうると思う。さらに、非限定的な一実施例において、第1のあらかじめ定められた期間Tp1を、第2のあらかじめ定められた期間より長い期間Tp2と等しくすることができる。このようにすると、時間フィルタリングを単純化し、それによって、時間フィルタの設計を単純化することができる。
【0093】
存在検出装置CAPTは、さらに、次のものを備えている。
− 電圧レギュレータREGへの電圧を一定値以下に抑えて、過電圧を防止するためのツェナーダイオードZ。
− 存在検出装置CAPTに電力が供給されているときに、入力電圧Vinに過電圧が発生した際、ツェナーダイオードZおよび入力キャパシタC2に流れる電流を制限するための第1の抵抗R1。
− 入力電圧Vinの反転から電圧レギュレータREGを保護するために、電圧レギュレータREGに直列に接続されている第1のダイオードD1。
− 低周波信号の放射の開始を検出するための低周波検出素子CMPを、入力電圧Vinの反転から保護するために、低周波検出素子CMPに直列に接続されている第2のダイオードD2。
【0094】
この第1の実施形態による存在検出装置CAPTは、次のように作動する。
【0095】
以下に示すように、入力電圧Vinと、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2とを比較することによって、存在検出装置CAPTへの連続電力供給の中断を検出することができる。この比較は、連続的に行ってもよいし、間欠的に(サンプリングによって)行ってもよい。
したがって、低周波信号の放射の開始は検出される(この放射は、手の検出に基づいて開始してもよいし、または「ポーリング」手法に基づいて行ってもよい)。
実際、入力電圧Vinが連続的でなくなるために、存在検出装置CAPTへの連続電力供給が断たれる。アンテナTXの作動を可能にするのはパルス電圧である。この実施形態においては、アンテナTXと存在検出装置CAPTとは、共通の電源から電力供給されることに注意されたい。
【0096】
このとき、連続電力供給のそのような中断が検出されると、検出部材EA/EBに伴う物理量CEからの基準レベルREFの値が固定される。
【0097】
さらに、作動している電流発生器GAおよび/またはGBが機能停止させられる。
【0098】
これによって、特に、次のことを行っている手の存在を検出することができる。
− 低周波信号BFの放射中にノブPに差し伸べられ始めて、その後も差し伸べられ続けている。
− 低周波信号BFの放射の前にノブPに差し伸べられ始めて、その後も差し伸べられ続けている。
【0099】
したがって、長時間、言い換えると、低周波信号の放射期間を超過して、ノブPに差し伸べられている手の存在を検出することができる。
【0100】
図5の各グラフを用いることによって、この第1の実施形態による存在検出装置CAPTの動作について、より詳細に説明することができる。
図5において、この場合には入力電圧Vinであるアンテナ励振電圧は、低周波信号BFの放射に対応している。
【0101】
− 図5の例では、時刻t0において、自動車Vの開口部のノブPに差し伸べられている手は存在していない。
存在検出装置CAPTは、図5の1番目のグラフに示されている入力電圧Vinによる電圧を供給されている。存在検出装置CAPTは作動していない(手が存在していない状態で、入力電圧Vinを供給されている)。
時刻t0においては、この入力電圧Vinは、バッテリ電圧Vbatと一致する電圧(この例においては12V)である。
入力キャパシタC2は、この入力電圧Vinから与えられた電気エネルギーを蓄えて、存在検出装置CAPTに電力を供給し、また自身を充電する。したがって、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2は、入力電圧Vinまで上昇する。図5の1番目のグラフにおいて、(Vc2=Vin)である。
第2のキャパシタC1も、図5の5番目のグラフに示すように、その端子間電圧が最大電圧Maxに達するまで充電される。
したがって、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2は、存在検出装置CAPTの入力電圧を表わすことは理解されるであろう。
【0102】
存在検出ユニットPSUによって消費される共通電流IPSUに関しては、共通電流IPSUは、図5の7番目のグラフに示すように、スタンバイ電流Iidleと等しい(いずれの電流発生器GA/GBも作動しておらず、したがって、発生器出力電流IA/IBは発生していない)。
【0103】
− 時刻t1において、ユーザは、自分の手を、自動車Vの開口部のノブPの内側に置く。存在検出装置CAPTは、そのノブPに組み合わされている検出部材EAの容量が変化したことを検出する。したがって、そのために、図5の6番目のグラフDETECT_EAに示すように、第1の電流発生器GAも作動する(オン状態になる)。
【0104】
このとき、存在検出ユニットPSUによって消費される共通電流IPSUは、図5の7番目のグラフに示すように、作動している電流発生器GAによって生成される発生器出力電流IAと、スタンバイ電流Iidleとの和に等しくなる。
【0105】
− 時刻t2において、ノブPに差し伸べられているユーザの手の存在の検出に続いて、アンテナTXが低周波信号BFを放射することができるように、アンテナTXに電力供給を行うために、入力電圧Vinがパルス信号化される。この例においては、手の検出によって、低周波信号BFの放射が引き起こされる。同じ原理を、「ポーリング」手法の場合にも当てはめることができることは明らかである。
【0106】
したがって、入力電圧Vinは、アンテナTXによる低周波信号BFの放射を開始するまでの時間に等しい、時刻t2〜t4の時間間隔の間、0まで低下している。
したがって、存在検出装置CAPTに対する連続電力供給は断たれる。
存在検出装置CAPTに電力が供給されなくなると、存在検出装置CAPTは、外部からの電気エネルギーの供給なしで、自立的に作動する。すなわち、存在検出装置CAPTは、依然として、存在検出のための十分なエネルギーを有している。
入力キャパシタC2が、図5の1番目のグラフに示されているように、放電し始める(その端子間電圧Vc2が徐々に減少し始める)。
【0107】
このとき、コンパレータである低周波検出素子CMPは、入力電圧Vinと、存在検出装置CAPTの入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2との間の電圧差を観測する。
入力電圧Vinの値が、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2から第1の電圧閾値Vs1を引いた値より小さくなるような電圧差が観測されると、低周波検出素子CMPの出力S_CMPは、図5の2番目のグラフに示すように、時刻t2において、1(オン状態)に設定される。
この第1の電圧閾値Vs1は、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2の変化(充電時および放電時の)に追随することは理解しうると思う。この第1の電圧閾値Vs1は、入力電圧Vin上のスプリアス信号より大きくなるように定められる。これらのスプリアス信号は、入力電圧Vinにリップルを発生させる場合がある。したがって、第1の電圧閾値Vs1をこのように定めることによって、低周波検出素子CMPに対するリップルの影響を無視することができる。
【0108】
− したがって、このような電圧差が観測されると、図5の3番目のグラフFRZ_REFに示されているように、存在検出装置CAPTの基準レベルREFの自己適応が一時停止させられる(オン状態)。
検出部材EAである電極セットの容量からの基準レベルREFの値が、前述のように固定される。これは、メモリに保存されている基準レベルREFの最新値が、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルの値であること、すなわちこの場合には、存在検出装置CAPTへの連続電力供給の中断の前に測定された基準レベルの値であることを意味する。
したがって、存在検出装置CAPTの設定が、そのまま固定される。
【0109】
− 時刻t3において、すなわち、時刻t2から、電圧降下期間より長い、第1のあらかじめ定められた期間Tp1の後の、低周波検出素子CMPの出力S_CMPが1(オン状態)に設定されているときに、図5の3番目のグラフに示されている非限定的な実施例では、基準レベルREFの自己適応が一時停止させられ、その結果、基準レベルREFは固定される。これによって、電圧降下と、存在検出装置CAPTへの電力供給の真の中断との混同を避けることができ、したがって、電圧降下が発生するたびに、基準レベルREFの値を固定するという事態を避けることができる。したがって、自己適応の理由のない抑制が防止される。電圧降下は、例えば電磁波による障害やコネクタ問題(コネクタの不完全な接触)によって発生し得ることに注意されたい。
【0110】
したがって、アンテナTXによる低周波信号BFの放射によって、入力電圧Vinと、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2との間の、上述のような電圧差が発生することは理解しうると思う。
存在検出装置CAPTが容量性の装置である場合には、存在検出装置CAPTが、もはや入力電圧Vinからの連続電力供給を受けなくなっているときに、存在検出装置CAPTが、十分に電力を使用し続けることができる(入力キャパシタC2および第2のキャパシタC1が、十分に充電されている)としても、すなわち自立的に作動する(存在検出装置CAPTが、依然として、ノブPに差し伸べられている手の存在を検出する)ことができるとしても、アンテナTXと容量性の存在検出装置CAPTとの間のスプリアスな容量結合および/または誘導結合のために、低周波信号BFは、存在検出装置CAPTの動作を妨害する。アンテナTXが、存在検出装置CAPTの近傍にある(一般に、両者はともにノブ内にある)から、そのようなスプリアスな容量結合および/または誘導結合は、実際に発生する。これによって、存在検出装置CAPTが自立的に作動しているとき、基準レベルREFに相当な変動が発生することがあり、さらに、自動車VのノブPに差し伸べられているユーザの手の存在の検出漏れや誤検出が発生することがある。
検出漏れは、ノブPに差し伸べられているユーザの手が存在しているときに、そのような手の存在を検出しないことであり、一方、誤検出は、ノブPに差し伸べられているユーザの手が存在していないときに、そのような手の存在を検出することであることに注意されたい。
【0111】
したがって、低周波信号BFの放射中、存在検出装置CAPTの基準レベルREFの値を固定することによって、基準レベルREFの変動および手の存在の検出漏れ/誤検出を防止することができる。したがって、これによって、低周波信号BFの放射によって発生する、容量性の存在検出装置CAPTに対する妨害は最小になる。
【0112】
存在検出装置CAPTには、もはや入力電圧Vinからの連続電力供給がなされないから、第2のキャパシタC1および入力キャパシタC2が放電しないように、存在検出装置CAPTに、できるだけ電流を流さないようにすることが重要であることは理解しうると思う。実際、基準レベルREFの値を保存することができるように、存在検出装置CAPTを自立的に作動させておくことが望ましい。したがって、作動している電流発生器(この例においては電流発生器GA)は、もはや発生器出力電流IAを発生させることができなくなるように、機能停止させられる。そのような機能停止が、図5の4番目のグラフINH_GAに示されている(オン状態)。
この機能停止動作は、基準レベルREFの値が固定されている場合のように、存在検出装置CAPTに対する電力供給停止が観測されているときに実行される。
【0113】
電流発生器の機能停止のために、非限定的な例として、次のいずれかが行われる。
− 作動している電流発生器(この場合には電流発生器GA)に対応する、存在検出装置CAPTの電流出力が停止される(出力状態が0)。この停止動作は、制御集積回路によって論理的に実行される。この場合においては、機能停止手段INHは、制御集積回路である。
− 作動している電流発生器(この場合には電流発生器GA)への電力供給自体が断たれる。非限定的な一例において、機能停止手段INHは、電流発生器GAに対する制御手段を接地するトランジスタTR2であってもよい。実際には、2つの電極を有する電極セットの場合には、測定電極が接地される。したがって、その電位は0に固定される。したがって、容量の測定値は0に抑えられる。
【0114】
したがって、電流発生器GAの機能停止のために、共通電流IPSUは、図5の7番目のグラフに示されているように、時刻t3において、スタンバイ電流Iidleのみに等しくなる。したがって、電流発生器GAは、もはや作動していない。
【0115】
このような機能停止によって、存在検出装置CAPTに連続電力供給を行う入力電圧Vinがもはや存在していないときに、第2のキャパシタC1および入力キャパシタC2の放電が防止される。
【0116】
非限定的な一実施例において、低周波検出素子CMPの出力S_CMPが1(オン状態)になると、電圧降下期間より長い、第1のあらかじめ定められた期間Tp1の後に、基準レベルREFの値が固定されるのと同様に、図5の4番目のグラフに示されているように、電流発生器GAは機能停止させられる。これによって、電圧降下と、存在検出装置CAPTに対する真の電力供給中断との混同を避けることができ、したがって、電圧降下が発生するたびに、電流発生器を機能停止させるという事態を避けることができる。したがって、理由のない機能停止が防止される。
【0117】
図5の5番目のグラフに示されているように、時刻t3において、第2のキャパシタC1は放電していないことが認識される。実際、第2のキャパシタC1は、それ自体で放電するほどに十分に放電しない(入力キャパシタC2は、それでも、それよりわずかに多く放電するかもしれないが、それは、保存装置LOGICおよび電圧レギュレータREGがそれ自体の作動のために必要な若干のエネルギーを消費するという事実によるものであって、電流発生器GAに電流を供給するためではない)。さらには、入力キャパシタC2は、アンテナ励振電圧として用いられている入力電圧Vinによって若干充電される場合もある。
【0118】
時刻t2〜t3において、すなわち、存在検出装置CAPTへの連続電力供給の中断の開始時と、存在検出装置CAPTの設定の固定の開始時との間の期間において、存在検出装置CAPTの入力キャパシタC2は、図5の1番目のグラフに示されているように若干放電するが、存在検出装置CAPTが再初期化されて、以前に保存された基準レベル値REFの値を失うほどには放電しないことは理解しうると思う。
さらに、第1のあらかじめ定められた期間Tp1は、時刻t2と、低周波信号BFの放射の開始時刻t4との間の期間より短いことは理解しうると思う。そうでなければ、アンテナTXと存在検出装置CAPTの検出部材EA/EBとの間に発生するスプリアスな結合によって、基準レベルREFの値が乱されてしまう。
【0119】
− 手の存在の検出に続く、時刻t4において、自動車Vのユーザによって保持されている識別オブジェクトIDに応答指令信号を送り、その識別オブジェクトIDが確かにその自動車Vに対応していることをチェックし、それによって、自動車Vへのアクセスを可能にするために、アンテナTXから低周波信号BFが放射される。それに応答して、識別オブジェクトIDは、その識別オブジェクトIDの識別を可能にする識別オブジェクトコード、および自動車へのその後のアクセスを可能にする認証を有効にする暗号データを含む、433MHzの一般的な周波数(限定するものではない)の無線周波数応答信号RFを送る。
無線周波数応答信号RFの返送は、ユーザが自動車の開口部を開くために、その開口部のノブPを引く前になされることは理解しうると思う。
低周波信号BFは、時刻t4〜t5の期間、通常、数マイクロ秒の定められた周期TBF(概ね125kHzに相当する)で放射される。他の周波数を用いることもできることは明らかである。
アンテナTXが、図5の1番目のグラフに示すように、パルス信号化された不連続電圧(この例においては、−12V/0V/+12Vの)で動作しているから、このとき、入力電圧Vinは、そのようなパルス電圧になっている。
【0120】
低周波信号BFが放射されているときにも、コンパレータである低周波検出素子CMPは、依然として、入力電圧Vinと、存在検出装置CAPTの入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2との間の電圧差を検出する。
したがって、入力電圧Vinが、+12V〜0V〜−12Vと変化するにつれて、低周波検出素子CMPの出力S_CMPは、図5の2番目のグラフの例に示されているように、(Vin=0V)または(Vin=−12V)のときに、1(すなわちオン状態)となり、(Vin=+12V)のときに、0(すなわちオフ状態)となる。
【0121】
図5の3番目および4番目のグラフにそれぞれ示されているように、存在検出装置CAPTの基準レベルREFは、依然として固定されており(オン状態)、また存在検出装置CAPTは、依然として自立的に動作している(オン状態)(電力供給できる入力電圧Vinは存在せず、電流発生器GAは機能停止している)。
【0122】
− 時刻t5において、アンテナTXが、低周波信号BFの送信を終え、ある待ち時間の後に、時刻t6において、入力電圧Vinによる存在検出装置CAPTへの電力の再供給が可能になる。入力電圧Vinは、図5の1番目のグラフに示されているように、再び連続的になり、この例においては12Vである。したがって、連続電力供給のいかなる中断ももはやない。
【0123】
連続的な入力電圧Vinが、存在検出装置CAPTの入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2より大きいから、コンパレータである低周波検出素子CMPの出力S_CMPは、図5の2番目のグラフに示されているように、再び、0(オフ状態)になる。
存在検出装置CAPTが、電力を再供給されるから、第2のキャパシタC1および入力キャパシタC2は、図5の5番目および1番目のグラフにそれぞれ示されているように、端子間電圧が最大電圧MAXおよび入力電圧Vinに達するまで再充電される。
存在検出装置CAPTへの連続電力供給のいかなる中断も、もはや存在しなくなると、次のことが可能になる。
− 低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルの、保存されている値を開放する、すなわち、再び自己適応(手が存在していないときに行われる)を可能にする。
− 機能停止していた電流発生器GA/GB(この例においては電流発生器GA)を再び作動させる(機能停止を解く)。
【0124】
一変形実施例として、存在検出装置CAPTに電力が再供給された(端子間電圧Vc2が入力電圧Vinに達するまで、入力キャパシタC2が充電された)にもかかわらず、それに続いて、機能停止していた電流発生器が、再び作動させられることなく、また低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルの、保存されている値が開放されることがない、言い換えると、電極セットである検出部材EAの物理量からの基準レベルREFの自己適応が、有効にされることがないという事態を想像することはできる。
実際、アンテナTXからの低周波信号BFの放射の際、パルス信号化された入力電圧Vinは、前述のように、−12V〜0V〜+12Vと変化する。コンパレータである低周波検出素子CMPは、この変化と端子間電圧Vc2とを比較することによって、上述のような出力S_CMPを示す。したがって、低周波信号BFの放射によって、存在検出装置CAPTに対して、断続的に(パルス信号化された入力電圧Vinが+12Vのときに)電力供給がなされており、したがって、上述の事態が発生すると考えられる恐れがある(実際には、そのような事態は発生しないのであるが)。
【0125】
− この恐れを解消するために、アンテナTXからの低周波信号BFの周期TBFすなわち第2のあらかじめ定められた期間より長い期間Tp2を通じて、入力電圧Vinの値が、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2から、第2の電圧閾値Vs2を引いた値より小さい場合に、または、それと等価的に、アンテナTXからの低周波信号BFの周期TBFすなわち第2のあらかじめ定められた期間より長い期間Tp2を通じて、低周波検出素子CMPの出力S_CMPが、1(オン状態)になっている場合に、第2の時間フィルタTF2が、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルREFの、保存されている値の開放を認可する、すなわち、基準レベルREFの自己適応を再び可能にする。したがって、これは、図5の3番目のグラフFRZ_REFに示されているように、時刻t7において行われる。
【0126】
したがって、時刻t7において、存在検出装置CAPTは、電極セットである検出部材EAに対応する基準レベルREFを、再び自己適応(手が存在していないときに行われる)させることを再認可される。
時刻t7においては、依然として手が検出されている(図5の6番目のグラフDETECT_EA)から、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルREFの値、より詳細には、存在検出装置CAPTに対する連続電力供給の中断の前に測定された基準レベルREFの値が、この例においては、依然として、保存されている値であることは理解されるであろう。自己適応は、実際には、手が再び存在しなくなったときにしか行われない。
【0127】
したがって、第2の時間フィルタTF2は、低周波信号BFの放射周波数を選別することを可能にする。
【0128】
同じ理由で、第2の時間フィルタTF2は、機能停止されていた電流発生器GAを、次のいずれかによって再作動させる。
− 存在検出装置CAPTの(この例においては電流発生器GAの)発生器出力電流IAを再び流す。
− 電流発生器GAへの電力供給を再開させる。
このとき、アンテナTXからの低周波信号BFの周期TBFすなわち第2のあらかじめ定められた期間より長い期間Tp2を通じて、入力電圧Vinの値は、入力キャパシタC2の端子間電圧Vc2から、第2の電圧閾値Vs2を引いた値より大きい。
【0129】
したがって、電流発生器GAの再作動は、図5の4番目のグラフINH_GAに示されているように、時刻t7において行われる。
これによって、再び、発生器出力電流IAを発生させることができる。
したがって、第2のキャパシタC1および入力キャパシタC2は、図5の5番目のグラフ(第2のキャパシタC1の端子間電圧が示されている)および1番目のグラフ(端子間電圧Vc2が示されている)にそれぞれ示されているように、端子間電圧が最大電圧MAXおよび入力電圧Vinに達するまで最大限に再充電される。
したがって、共通電流IPSUは、図5の7番目のグラフIPSUに示されているように、再び、スタンバイ電流Iidleと、作動した電流発生器GAを流れる発生器出力電流IAとの和に等しくなる。
【0130】
存在検出装置CAPTが活動しているか否かを確認するために用いられる、自動車VのコントローラECUによる共通電流IPSUの測定によって、存在検出装置CAPTが依然として活動していること、すなわち、入力電圧Vinによって、存在検出装置CAPTに電力が供給されているときに、ノブPに差し伸べられている手が依然として存在していることを確認することができる。
したがって、自動車Vのユーザが、自分の手を、長時間、すなわち低周波信号BFの放射期間を超過して、ノブPの内側に(触れていようといまいと)、またはノブP上に(したがって触れながら)置いていたとしても、ユーザの手の存在は、依然として、存在検出装置CAPTによって検出される。したがって、低周波信号BFの放射の終了後においてもノブPに差し伸べられている手の存在に関する情報の損失が防止される。このために、低周波信号BFの放射の終了後にも持続している、ノブへの手の差し伸べを検出する(「長期間支援」とも呼ばれる)ことによって、非限定的な例において、次のような助勢機能を作動させることができる。
− ノブPに差し伸べている手がなくなるまで、自動車の窓を上げる。
− 幌付きオープンカーの幌をせり上げる。
− 自動車の警報器を作動させる。
− 自動車を極度に使用不能にする、すなわち、自動車のドアを施錠した後に、内側ノブを離脱させる(これによって、泥棒が、例えば窓を破った後に、内側ノブを用いて内側から自動車のドアを開けることを防止することができる)、等々。
非限定的な一例において、この「長期間助勢」は30秒間まで続いてもよい。
【0131】
時刻t8において、自動車Vのユーザは、図5の6番目のグラフDETECT_EAに示されているように、自動車VのノブPから、自分の手を遠ざける(オフ状態)。このとき、電流発生器GAが作動しなくなる(オフ状態)から、もはや、いかなる発生器出力電流IAも流れない。共通電流IPSUは、スタンバイ電流Iidleのみと等しくなる。
自動車VのコントローラECUによる共通電流IPSUの測定によって、存在検出装置CAPTがもはや活動していないこと、すなわち、対応するノブPに差し伸べられている手は存在していないことを確認することができる。
【0132】
したがって、上述の存在検出装置CAPTは、従来技術の存在検出装置と違って、長時間持続してノブPに差し伸べられている、自動車Vのユーザの手の存在を特定することができる。
従来の存在検出装置においては、例えば図6の2番目のグラフに示されているように、時刻t7〜t12において、「長期間」にわたる手の存在が検出された場合には、入力キャパシタC2は、図6の3番目のグラフに示すように、時刻t11において完全に放電する(第2のキャパシタC1と同様に)。それによって、存在検出装置CAPTの活動は停止し、リセットされる。したがって、存在検出装置CAPTの保存装置LOGICがリセットされ、それによって、以前に保存された基準レベルREFの値が失われる。
したがって、存在検出装置は、新規に測定された基準レベルREFの値を有するようにリセットされる。その値は、手がノブPに差し伸べられているときの値である。したがって、物理量の値と、保存されている基準レベルREFの値との比較において、ほとんど等しい2つの値が比較されることになるから、ノブPに差し伸べられている手は検出されなくなる。
共通電流IPSUは、この時刻t11において、スタンバイ電流Iidleに等しくなる。
したがって、共通電流IPSUの測定によって、いずれの電流発生器GA/GBも作動していないことが示される。しかしながら、実際には、ノブに差し伸べられている手が存在しているのであるから、この例においては、電流発生器GAが作動していなければならない。
【0133】
上述より、第1の実施形態による存在検出装置CAPTは、次の顕著な利点を有する。
− アンテナTXによる低周波信号BFの放射の開始前に、存在検出装置CAPT内の作動中の電流発生器を機能停止させ、かつ存在検出装置CAPTの設定をそのまま固定することによって、確実に、存在検出装置CAPTの検出部材の物理量からの基準レベルREFの値を、低周波信号BFの放射中に変更させないようにすることができる。したがって、誤検出/検出漏れが避けられる。さらに、存在検出装置CAPTが、容量性の装置である場合には、上述のようにすることによって、低周波信号BFによる存在検出装置CAPTへの妨害が確実に防止される。
− 第1の時間フィルタTF1の作用によって、存在検出装置CAPTへの連続電圧供給の真の中断と供給電圧の電圧降下との混同を避けることができ、したがって、電圧降下の際に、基準レベルREFの自己適応が一時停止されることはなく、そのために、電圧降下の際に、基準レベルREFの値が固定されることはない。
− 第2の時間フィルタTF2の作用によって、存在検出装置CAPTに対する電力の再供給と、低周波信号BFの放射との混同を避けることができ、したがって、低周波信号BFの放射中に、基準レベルREFの自己適合が生じることはない。
− 第1の電圧閾値Vs1の作用によって、入力電圧Vinからスプリアス信号を取り除く。
− 低周波信号BFの放射の前に、電極セットである検出部材EA/EBに接近してきて、低周波信号BFの放射の終了後も、そこに置かれたままの、ユーザの手を、低周波信号BFの放射の終了時点以後も検出し続けることができる(存在検出装置CAPTが、低周波信号BFの放射の前に測定された、存在検出装置CAPTの全ての設定、特に基準レベルを、低周波信号BFの放射の前に保存するから)。
− 低周波信号BFの放射中に、電極セットである検出部材EA/EBに接近してきて、低周波信号BFの放射の終了後も、その近傍に置かれたままの、ユーザの手を、低周波信号BFの放射の終了時点以後も検出し続けることができる(存在検出装置CAPTが、低周波信号BFの放射の前に測定された、存在検出装置CAPTの全ての設定、特に基準レベルを、低周波信号BFの放射の前に保存し、放射中にも保存し続けるから)。
【0134】
第2の実施形態
存在検出装置CAPTの第2の実施形態が、図7および図8に示されている。
【0135】
この第2の実施形態によれば、存在検出装置CAPTは、第1の実施形態の場合と同様に、次のものを備えている。
− 電圧レギュレータREGへの電圧を一定値以下に抑えて、過電圧を防止するためのツェナーダイオードZ。
− 存在検出装置CAPTに電力が供給されているときに、入力電圧Vinに過電圧が発生した際に、ツェナーダイオードZおよび入力キャパシタC2に流れる電流を制限するための第1の抵抗R1。
− 供給電流の反転から電圧レギュレータREGを保護するために、電圧レギュレータREGに直列に接続された第1のダイオードD1。
【0136】
この第2の実施形態によれば、存在検出装置CAPTは、さらに、次の特性を有している。
− a)存在検出装置CAPTは、アンテナTXと共通の電源から電力を供給される。
− b)低周波信号BFの放射の開始を検出するための低周波検出素子CMPは、低周波信号BFの放射を表わす共振信号を検出する。
− c)低周波信号BFの放射中、存在検出装置CAPTは、アンテナTXによって発生する共振電圧VbFから電力を供給される。
− d)低周波信号BFの放射が検出されるとすぐに、機能停止手段INHは、電流発生器GA/GBを機能停止させる。
【0137】
特性b)に関して、共振信号は、入力電圧Vinより大きな電圧振幅を有することは理解しうると思う。したがって、共振信号は、より簡単に検出される。
【0138】
非限定的な第1の変形実施例において、共振信号は、図7に示すように、共振電圧VbFである。
この第1の変形実施例においては、共振電圧を得るために、アンテナTXが直接アクセスされる。したがって、非限定的な一例において、共振電圧VbFは、アンテナTXのインダクタLの端子間電圧である。別の例として、共振電圧VbFは、アンテナTXのキャパシタCの端子間電圧であってもよい。
低周波信号BFの放射中、パルス信号化された入力電圧Vinは、共振回路LCを介して、アンテナTXに共振を誘起させる。これによって、共振電圧VbFと呼ばれる、ほとんど正弦波電圧である共振信号が発生する。この共振電圧は、電力を供給する入力電圧Vinの最大値(この例においては12V)よりはるかに大きい最大値を有する。
実際には、要約すると、共振信号を検出するために、低周波検出素子CMPは、アンテナTXの共振電圧VbFと、基準電圧Vrefとを比較することができる。その結果、低周波信号BFの放射が検出される。共振電圧VbFのピーク検出結果電圧と基準電圧Vrefとを比較して、ピーク検出結果電圧が、基準電圧Vrefより大きい場合には、共振信号が存在しており、したがって低周波信号BFが放射されていると結論づけることができる。
【0139】
非限定的な一例において、低周波信号BFの放射の開始を検出するための低周波検出素子CMPは、次のものを備えている。
− フィルタRCと組み合わされた第3のダイオードD3。
− フィルタRC。
− 分割器ブリッジPT(非限定的な一例において抵抗性である)。
− 基準電圧Vref(非限定的な一例において0.6Vの)を供給するトランジスタTR1。
第3のダイオードD3によって、共振信号の負側の成分を取り除くことができる。
第3のダイオードD3と、フィルタRCとを組み合わせることによって、さらに、整流された共振信号のピーク検出を行い、検出されたピーク値を有する出力信号を得ることができる。この出力信号は、共振信号を表わす電圧(イメージ電圧)である。
出力信号を基準電圧Vrefと比較することができるように、分割器ブリッジによって、出力信号を分割することができる。
【0140】
第2の変形実施例において、共振信号は、共振電流IbFである。この第2の変形実施例が、図8に示されている。
共振電流IbFは、アンテナTXのための励振電圧として用いられる入力電圧Vinによって発生する電流である。
この第2の変形実施例においては、上述の第1の変形実施例の場合のように、アンテナに直接アクセスする必要はない。したがって、この第2の変形実施例は、アンテナTXへのアクセス点がない場合に有利である。
さらに、共振電流IbFは、ほとんど正弦波形状をしており、したがって、処理が容易である。
【0141】
低周波信号BFの放射中、パルス信号化された入力電圧Vinは、共振回路LCを介して、アンテナTXに共振を誘起させる。これによって、電流である共振信号が発生する。
実際には、共振信号を検出するために、低周波検出素子CMPは、共振信号(この第2の変形実施例においては、共振電流IbFである)のイメージであるイメージ電圧Viと、基準電圧Vrefとを比較することができる。その結果、低周波信号BFの放射が検出される。イメージ電圧Viのピーク検出結果電圧と、基準電圧Vrefとを比較することによって、ピーク検出結果電圧が基準電圧Vrefより大きい場合には、共振信号が存在しており、したがって、低周波信号BFが放射されていると判断することができる。
【0142】
これをなすために、非限定的な一例において、低周波信号BFの放射の開始を検出するための低周波検出素子CMPは、次のものを備えている。
− 測定抵抗Rsp。
− フィルタRCと組み合わされた第3のダイオードD3。
− フィルタRC
− 増幅器AV。
− 基準電圧Vref(非限定的な一例において0.6Vの)を供給するトランジスタTR1。
測定抵抗Rspを用いることによって、共振信号、すなわち共振電流IbFのイメージであるイメージ電圧Viを得ることができる。非限定的な一実施例において、測定抵抗Rspは低く(数オーム程度)、したがって、共振電流IbFの振幅に影響を与えることはない。第3のダイオードD3によって、イメージ電圧Viの半波整流を行なうことができる。
さらに、第3のダイオードD3を、フィルタRCと組み合わせることによって、整流されたイメージ電圧Viのピーク検出を行い、検出されたピーク値を有する出力信号を得ることができる。
このイメージ電圧Viのピーク値と、基準電圧Vrefとを比較することができるように、増幅器AVによって、イメージ電圧Viを増幅することができる。実際、測定抵抗Rspの値が低い場合には、得られるイメージ電圧Viのピーク値も低い(非限定的な一例において、1V未満である)。
【0143】
上述の2つの変形実施例について、すなわち、ピーク検出についてのより完全な詳細については、第3の実施形態に関する説明において言及する。
【0144】
第3の変形実施例において、アンテナTXのインダクタと外部インダクタとを結合させることができ、変圧器効果によって誘起された電流から、イメージ電圧を導き出すことができる。
【0145】
特性c)に関しては、低周波信号BFの放射中、存在検出装置CAPTへの電力供給を維持するために、共振電圧VbFが用いられる。
非限定的な一例において、この電力供給は、図7および図8に示すように、単一のダイオードD4を介して行われる。
非限定的な一実施例において、このダイオードD4は、さらに、第1の抵抗R1とともに抵抗性の分割器ブリッジを形成している抵抗R4と組み合わされている。
低周波信号BFの放射中、パルス信号化された入力電圧Vinの正の半波期間に、入力キャパシタC2は充電される。このパルス信号化された入力電圧Vinは、存在検出装置CAPTに電力を供給する。
パルス信号化された入力電圧Vinの負の半波期間に、ダイオードD4は逆方向接続になり(遮断状態になり)、したがって、入力キャパシタC2からアンテナTXへの放電が防止される。したがって、入力キャパシタC2は、常に、存在検出装置CAPTに、具体的には、保存装置LOGICおよび機能停止手段INHに電力を供給することができる。
したがって、正の半波期間に、入力キャパシタC2は、共振電圧VbFによって充電され続ける。
ダイオードD4および抵抗R4と、第1の抵抗R1との組み合わせは、パルス信号化された入力電圧Vinの正の半波期間における入力キャパシタC2の充電が、正および負の半波期間における入力キャパシタC2の放電より急速になされるように決められることは理解しうると思う。
したがって、存在検出装置CAPTへの電力供給は維持される。
【0146】
特性d)に関しては、低周波信号BFの放射が、低周波検出素子CMPによって検出されるとすぐに、機能停止手段INHが、電流発生器GA/GBを機能停止させる。
前述のように、非限定的な例において、機能停止手段INHは、次のいずれかである。
− 機能停止手段INHは、作動している電流発生器(この場合には電流発生器GA)に対応する、存在検出装置CAPTの電流出力を停止させる(出力状態を0にする)制御集積回路である。
− 機能停止手段INHは、電流発生器GAに対する制御手段を接地し、したがって、作動している電流発生器(この場合には電流発生器GA)への電力供給を断つトランジスタTR2であってもよい。
第1の実施形態において前述したように、これらの機能停止手段によって、存在検出装置CAPT、より詳細には保存装置LOGICがリセットされること、したがって、以前に保存した基準レベルの値を失うことを防止することができる。
【0147】
さらに、機能停止手段INHは、低周波信号BFの放射が、存在検出装置CAPT(この例においては、前述のように、共振電圧VbFによって電力を供給される)の側のいかなる電力消費によっても、また次のような原因によっても妨害されないようにする。
機能停止手段INHが備わっていないと、低周波信号BFの放射中、ユーザの手がノブに差し伸べられており、その結果、検出部材EAがアクティブになっていると、(IA+Iidle)に等しい共通電流IPSUが発生するために、検出部材EAの保存装置LOGICが、ユーザの手を検出する。
【0148】
入力電圧Vinが、0V/+12V(正の半波=パルス信号化された入力電圧Vinの第1の相)のときに、電流発生器GAは、発生器出力電流IAを発生させる(第1のダイオードD1は、導通状態にある)。
しかしながら、入力電圧Vinが、−12V/0V(負の半波=パルス信号化された入力電圧Vinの第2の相)のときに、電流発生器GAは、発生器出力電流IAを発生させない(第1のダイオードD1は、遮断状態にある)。
前述のように、共通電流IPSUは、センサ電流Icaptとアンテナ電流ITXとに分割される。
したがって、低周波信号BFが放射されていない状態で、存在検出装置CAPTが作動しているときには、共通電流IPSUは、(IPSU=Icapt)で与えられる。
しかしながら、低周波信号BFが放射されている状態で、存在検出装置CAPTが作動しているときには、共通電流IPSUは、(IPSU=Icapt+ITX)で与えられる。存在検出装置CAPTに、共振電圧VbFから電力が供給されるために、このようなことが起こることに注意されたい。
したがって、負の半波期間(第1のダイオードD1は遮断状態にある)においては、Icapt=0であり、正の半波期間(第1のダイオードD1は導通状態にある)においては、Icapt=(IA+Iidle)または(IB+Iidle)または(IA+IB+Iidle)である。
この共通電流IPSUは、低周波信号BFの放射中、アンテナTXによって消費される。
存在検出装置CAPTも、パルス信号化された入力電圧Vinの正の半波期間に、共通電流の一部(すなわちセンサ電流Icapt)を消費するから、その半波期間においては、アンテナTXを流れる電流は少なくなり、その結果、アンテナTXの端子に発生する共振信号は歪む。
したがって、正の半波期間には歪んだ信号が発生し、負の半波期間には正常な信号が発生する。その結果、歪んだ共振信号が生成される。
【0149】
この共振信号は、ユーザによって保持されている識別オブジェクトとの通信を可能にする電磁場を発生させるために用いられる。したがって、この通信は損なわれるか、または失われ、および/または、共振信号によって発生する電磁場の範囲が縮小される。
したがって、電流発生器GA/GB(または、この例においては、作動している電流発生器GA)を機能停止させることによって、アンテナTXによって消費されるべき共通電流を、存在検出装置CAPTが消費することを防ぐことができる。したがって、共振信号は歪まず、低周波信号BFの放射は妨害されない。
【0150】
この第2の実施形態において、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルREFの値の、低周波信号BFの放射中の保存は、少なくとも低周波信号BFの放射の終了時点まで、また少なくとも共振電圧VbFがもはや検出されなくなるまで持続されることは理解しうると思う。
【0151】
実際には、低周波信号BFの放射の終了時点とは、次のことを意味している。
− フィルタRCのキャパシタが放電し、その結果、
− 基準電圧Vrefを供給するトランジスタTR1が遮断状態になる。
したがって、低周波信号BFの放射の終了後に、物理量CEからの基準レベルREFの自己適応が再認可される。
低周波信号BFの放射の終了後に、自己適応が再び実行され、第1の実施形態において前述したように、次のいずれかのときに、基準レベルREFの新しい値が保存される。
− ユーザの手が、もはや存在しなくなったとき。
− タイムアウトTIMEOUTが発生したとき。
【0152】
したがって、この第2の実施形態は、次の利点を有している。
− 低周波信号BFの放射中でさえ、存在検出装置CAPTは、きちんと電力を供給され続ける。したがって、存在検出装置CAPTは、手などの物体の存在を検出し続けることができる。
− 存在検出装置CAPTは、容量性である場合にも、低周波信号BFの放射によって妨害されない。
− 低周波信号BFの放射の前に、電極セットである検出部材EA/EBに接近してきて、低周波信号BFの放射の終了後も、そこに置かれたままの、ユーザの手を、低周波信号BFの放射の終了時点以後も検出し続けることができる(存在検出装置CAPTが、低周波信号BFの放射の前に測定された、存在検出装置CAPTの全ての設定、特に基準レベルを、低周波信号BFの放射の前に保存するから)。
− 低周波信号BFの放射中に、電極セットである検出部材EA/EBに接近してきて、低周波信号BFの放射の終了後も、その近傍に置かれたままの、ユーザの手を、低周波信号BFの放射の終了時点以後も検出し続けることができる(存在検出装置CAPTが、低周波信号BFの放射の前に測定された、存在検出装置CAPTの全ての設定、特に基準レベルを、低周波信号BFの放射の前に保存し、放射中にも保存し続けるから)。
− 電流発生器(作動していた)を機能停止させるから、低周波信号BFの放射が、存在検出装置CAPTによる電流消費によって妨害されることはない。
【0153】
第3の実施形態
存在検出装置CAPTの第3の実施形態が、図9に示されている。
この第3の実施形態によれば、存在検出装置CAPTは、第1および第2の実施形態の場合と同様に、次のものを備えている。
− 電圧レギュレータREGへの電圧を一定値以下に抑えて、過電圧を防止するためのツェナーダイオードZ。
− 存在検出装置CAPTに電力が供給されているとき、入力電圧Vinに過電圧が発生した際に、ツェナーダイオードZおよび入力キャパシタC2に流れる電流を制限するための第1の抵抗R1。
− 供給電流の反転から電圧レギュレータREGを保護するために、電圧レギュレータREGに直列に接続された第1のダイオードD1。
【0154】
この第3の実施形態によれば、存在検出装置CAPTは、さらに、次の特徴を有している。
− a)存在検出装置CAPTは、アンテナTXと共通の電源から電力を供給される。
− b)低周波信号BFの放射の開始を検出するための低周波検出素子CMPは、低周波信号BFの放射を表わすパルス信号化された入力信号を検出する。
− c)低周波信号BFの放射が検出されるとすぐに、機能停止手段INHは、電流発生器GA/GBを機能停止させる。
【0155】
特性c)に関しては、上述の第2の実施形態に関する説明が、そのまま当てはまる。
【0156】
特性b)に関しては、非限定的な一変形実施例において、パルス信号化された入力信号は、入力電圧Vinである。したがって、低周波信号BFの放射の開始を検出するために、入力電圧Vinが、連続電圧(この例においては+12Vの)から、パルス信号化された電圧(この例においては−12V/0V/+12Vの)に変化する瞬間を特定するための探索がなされる。実際、上述のように、低周波信号BFの放射中、入力電圧Vinはパルス信号化されている。
【0157】
実際には、要約すると、パルス信号化された入力電圧Vinを直接検出するために、低周波検出素子CMPは、存在検出装置CAPTに電力を供給している入力電圧Vinと、基準電圧Vref2とを比較することができる。これによって、低周波信号BFの放射が検出される。したがって、入力電圧Vinに対して、ピーク検出が行われる。ピーク検出結果電圧と基準電圧Vref2とを比較することによって、ピーク検出結果電圧が、基準電圧Vref2より大きければ、この信号はパルス信号化されており、したがって、低周波信号BFが放射されているという特定がなされる。
【0158】
これをなすために、非限定的な一実施例において、低周波信号BFの放射の開始を検出するための低周波検出素子CMPは、図10に示すように、次のものを備えている。
− 第2のダイオードD2。
− 抵抗R4とキャパシタC5から成るフィルタ(以後、フィルタR4C5と言う)と組み合わされた第3のダイオードD3。
− フィルタR4C5。
− 第5の抵抗R9。
− 基準電圧Vref2(非限定的な一例において3Vの)を供給するトランジスタTR1。
【0159】
これらの素子について、次に、詳細に説明する。
【0160】
− 第3のダイオードD3によって、パルス信号化された入力電圧Vinから負側の成分を取り除くことができる。図11に概略的に示されている第1の出力信号S1が得られる。この第1の出力信号S1は、ピーク検出器の入力信号とも呼ばれる。
【0161】
− 第2のダイオードD2と、キャパシタC5とを組み合わせることによって、整流された第1の出力信号S1のピーク検出を行い、検出されたピーク値を有する第2の出力信号S2を得ることができる。したがって、これらの2つの部品は、ピーク検出器(以下、ピーク検出器D2C5と言う)を形成している。
【0162】
実際、パルス信号化された入力電圧Vinの正の半波(第1の出力信号S1の正の)期間中、フィルタR4C5のキャパシタC5は、第2のダイオードD2および抵抗R4を介して充電される。キャパシタC5を完全に充電するためには、時定数CT45に応じて、いくつかの正の半波期間が必要であることは理解しうると思う。
さらに、第2のダイオードD2によって、キャパシタC5の放電が防がれることも理解しうると思う。
さらに、キャパシタC5の充電電圧Vch5が、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧(基準電圧Vref2を与える)より大きいときには、電流発生器への電力供給を断つことができることは理解しうると思う。したがって、前述のように、このことによって、第2のキャパシタC1に蓄えられた電気エネルギーの使用が避けられ、したがって、存在検出装置CAPTの保存装置LOGICのリセットが避けられる。
【0163】
− 第2のダイオードD2が遮断状態にあるとき、第5の抵抗R9の存在によって、キャパシタC5は放電することができる。この第5の抵抗R9の抵抗値は、キャパシタC5の放電が、その充電よりゆっくりと行われるように決められる。したがって、非限定的な一実施例において、抵抗R4(キャパシタC5の充電を可能にする)に対する、この第5の抵抗R9の比は10〜20であり、第5の抵抗R9が抵抗R4より大きい。このようにすることによって、いかなる低周波信号BFの放射ももはやなくなったときに、キャパシタC5を完全に放電させることができる。したがって、これによって、検出機能(電流発生器GA/GBの作動を伴う)すなわちセンサ機能を再び働かせるために、電流発生器GA/GBの機能停止を作動させないようにすることができる。
この第5の抵抗R9がなければ、キャパシタC5は放電することができず、したがって、電流発生器の機能停止を作動させないようにすることはできない。
【0164】
したがって、低周波信号BFの放射中、フィルタR4C5の出力において、図11に概略的に示されている第2の出力信号S2が得られる。この第2の出力信号S2は、パルス信号化された入力電圧Vinの最大振幅を表わす電圧である。したがって、この第2の出力信号S2(キャパシタC5の充電および放電に対応する)は、低周波信号BFが放射されていることを表わす信号である。
【0165】
キャパシタC5の端子間電圧は、低周波信号BFの放射中に、定常状態になる。第2の出力信号S2の安定化後、この例においては、図11に示されている時刻t4以後、第2の出力信号S2からピーク値が抽出され、それらのピーク値が、基準電圧Vref2と比較される。ピーク値が基準電圧Vref2の値より大きければ、入力電圧Vinはパルス信号化されており、したがって、低周波信号BFが放射されていると推定することができる。この第2の出力信号S2は、以下において、出力電圧UR9とも呼ばれる(図10に示されているように)。
【0166】
− トランジスタTR1は、次のことを行うことができる。
・ ピーク検出のために、基準電圧Vref2を供給する。
・ 作動している電流発生器GA/GBを接地することによって、それらを機能停止させる。
【0167】
したがって、2つの機能に対して、単一の部品が用いられている。
機能停止動作の場合には、充電電圧Vch5が、スイッチング閾電圧(基準電圧Vref2に等しい)より大きくなると、トランジスタTR1は導通する(スイッチングする)。このとき、作動していた電流発生器(この例では電流発生器GA)は停止する(その電圧が0になる)。いかなる発生器出力電流IAももはや流れない。したがって、電流発生器GAは機能停止する。
このように、低周波信号BFが検出されるとすぐに、作動していた電流発生器は機能停止する。
【0168】
別の一実施例において、機能停止動作を行なうために、トランジスタTR1とは異なる別のトランジスタを用いることもできることは明らかである。
さらに別の一実施例において、第1および第2の実施形態において前述したように、論理的に機能停止を行なうことも可能である。
【0169】
− 第2のダイオードD2およびキャパシタC5によって、上述のように、ピーク検出を行なうことができる。
【0170】
フィルタR4C5の時定数CT45は、低周波信号BFの放射が始まったときに、迅速なピーク検出が可能になるように定められる。それによって、キャパシタC5の急速な充電が可能になり、その結果、トランジスタTR1の導通状態(0状態)への迅速なスイッチング、したがって低周波信号BFの放射の迅速な検出を得ることができる。
さらに、パルス信号化された入力電圧Vinは、例えば自動車の周囲環境、ノイズ、電磁結合、車内電気機器などに起因するスプリアスな電圧ピークを含んでいる場合があることは理解しうると思う。
これらのスプリアスな電圧ピークのために、キャパシタC5の充電電圧Vch5が上昇し、その結果、前述のようなトランジスタTR1のスイッチング、および作動している電流発生器(この例においては電流発生器GA)の機能停止が生じる場合がある。
そのような外乱を防止するために、非限定的な一実施例において、フィルタR4C5の時定数CT45は、さらに、キャパシタC5のあまりにも急速な充電を避けるように、したがって、パルス信号化された入力電圧Vin上のスプリアスな電圧ピークを取り込まないように定められる。
【0171】
したがって、時定数CT45は、低周波信号BFの放射を迅速に検出するために、キャパシタC5を急速に充電するように、しかしながら、スプリアスな電圧ピークの影響を防ぎ、したがってトランジスタTR1の不時のスイッチングを防止するために、急速に充電しすぎないように、バランスをとって定められる。非限定的な一例において、この時定数CT45は、周期TBFの1〜2倍に等しく定められることは理解しうると思う。
【0172】
キャパシタC5の値が低すぎると、キャパシタC5は、非常に急速に充放電されることは理解しうると思う。これによって、出力電圧UR9にノイズがもたらされる(出力電圧UR9が変動する)。
さらに、キャパシタC5の値を低くするということは、出力電圧UR9がより低くなるということを意味する。
【0173】
出力電圧UR9が低くなり、またノイズが導入されることによって、低周波信号BFの放射中に、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧未満への、出力電圧UR9の危険な低下によって、トランジスタTR1の不時のスイッチングが発生する危険性が生じる。したがって、キャパシタC5の大きさは、低周波信号BFの放射の検出に影響を及ぼす。
さらに、キャパシタC5の値が小さい場合には、ピーク検出器の出力電圧UR9とピーク検出器の入力電圧すなわち第1の出力信号S1とにほとんど差がない。したがって、存在検出装置への電力の再供給がなされるとき、存在検出装置に電力を再供給するための、入力電圧Vinの切り替え(再び連続的になるように)は、ピーク検出器の入力電圧(第1の出力信号S1)に反映され、次いで出力電圧UR9に反映される。したがって、入力電圧Vinの切り替え中に、出力電圧UR9に、ピーク電圧が観測される可能性がある。したがって、出力電圧UR9が、再び、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧を超過するという危険性がある。これは、存在検出装置に電力を再供給するときには望ましくないことである。したがって、キャパシタC5の大きさは、センサ機能の耐性に影響を及ぼす。
【0174】
さらに、キャパシタC5の値が大きすぎる(後述する第4のキャパシタC6と比較して)場合には、キャパシタC5の充電時間および放電時間が非常に長くなることは理解されるであろう。ピーク検出器の入力電圧すなわち第1の出力信号S1の変動は取り除かれて、出力電圧UR9に、全くまたはほとんど反映されない。したがって、出力電圧UR9に、ノイズはほとんどない。しかしながら、キャパシタC5の放電時間が長くなるほど、トランジスタTR1の遮断状態への復帰時間tn2は、より増加する。この復帰時間tn2は、低周波信号の放射の終了時点から、センサ機能の作動回復までの回復時間に相当する。この復帰時間tn2が長くなるほど、低周波信号の放射の終了後に、センサ機能は、作動し難くなる。実際、この復帰時間tn2中、トランジスタTR1は依然として導通しており(0状態)、したがって、存在検出装置への電力供給を阻んでいるから、存在検出装置に電力を再供給することはできない。
さらに、キャパシタC5の充電時間が長くなるほど、低周波信号の放射の検出には、より時間がかかるようになる。
実際、キャパシタC5の値が大きくなるほど、出力電圧UR9と、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧との間の比較には、より時間を要するようになる。実際、キャパシタC5の値が大きくなるほど、入力電圧Vinの変化(低周波信号の放射中の)の、出力電圧UR9への反映には、より時間がかかるようになる。
したがって、低周波信号の放射の検出には、より時間がかかるようになる(低周波信号の放射は、出力電圧UR9が、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧より大きくなることによって特定される)。したがって、低周波信号の放射の特定までにできる遅れ時間tn1は、より長くなる。
【0175】
結論として、キャパシタC5の値は、センサ機能の耐性および低周波信号の放射の検出に影響を及ぼすから、出力電圧UR9上のノイズと、センサ機能の作動回復までの最小の復帰時間tn2と、低周波信号の放射の検出までの最小の遅れ時間tn1との間で適切な妥協点を見出すように、キャパシタC5の値を決めることが重要である。
非限定的な一実施例において、復帰時間tn2はミリ秒で数えられ、他方、遅れ時間tn1はマイクロ秒で数えられる。
非限定的な一例において、復帰時間tn2は12ミリ秒以下である。この値を超過すると、ユーザがノブを押し付けているときに何も起こらなくなる、または、長い押し付けの終わったことが検出されなくなる危険性が非常に大きくなる。
別の一実施例において、復帰時間tn2は2ミリ秒である。これによって、電気エネルギーの消費を減らすことができる。
非限定的な一例において、遅れ時間tn1は128マイクロ秒である。これによって、低周波信号BFの放射の最初のビットを検出することができる。
− 電圧分割器ブリッジを形成している第5の抵抗R9と抵抗R4との比R9/R4の値は、低周波信号BFの放射中における、ピーク検出器D2C5の出力電圧UR9の平均値に影響を及ぼす。
比R9/R4の値が大きいほど、ピーク検出器D2C5の出力電圧UR9は、より高くなる。それによって、トランジスタTR1の良好なスイッチングが可能になる(出力電圧UR9は、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧である基準電圧Vref2よりずっと大きくなる)。すなわち、トランジスタTR1の1状態と0状態が、互いに明確に出現する。
比R9/R4の値を大きくするために、抵抗R4の値を小さくすることができる。
しかしながら、抵抗R4の値が小さすぎると、フィルタR4C5の時定数CT45が小さくなり、したがって、キャパシタC5の急速な充電および放電が発生する。したがって、出力電圧UR9にノイズが生じる。このノイズによって、出力電圧UR9が、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧をよぎる可能性がある。
【0176】
同様に、第5の抵抗R9の値、したがって比R9/R4の値が小さすぎると、出力電圧UR9にノイズが発生する場合があり、また出力電圧UR9が、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧に比して低すぎるようになる。
【0177】
このノイズを減少させるために、抵抗R4の値を増やし、かつ第5の抵抗R9の値を増やすことができる。
しかしながら、比R9/R4の大きさは、また、存在検出装置CAPTに電力が再供給されたとき(電力の再供給によって、センサ機能が作動可能にされる)、検出回路DETECT(図10参照)の耐性に影響を及ぼす。実際、比R9/R4の値が大きくなるほど、トランジスタTR1の遮断状態への復帰時間tn2は、より長くなる。この復帰時間tn2は、低周波信号の放射の終了時点から、センサ機能の作動回復までの間の回復時間に相当する。
この復帰時間tn2が長くなるほど、低周波信号の放射の終了後に、センサ機能が作動しにくくなる。実際、この復帰時間tn2の間、トランジスタTR1は依然として導通しており(0状態)、したがって、存在検出装置CAPTへの電力供給を阻んでいるから、存在検出装置CAPTに電力を再供給することは不可能である。
【0178】
結論として、比R9/R4の値は、センサ機能の回復までの復帰時間tn2と、出力電圧UR9上のノイズとの両方に影響を及ぼすから、センサ機能を再度呼び出すために適切な回復時間と、トランジスタTR1の再スイッチングを発生させる危険性のない十分に低いノイズとの間で適切な妥協点を見出すように、比R9/R4の値を調整することが重要である。
【0179】
非限定的な一実施例において、低周波信号BFの放射の開始を検出するための低周波検出素子CMPは、さらに、図10に示すように、第4のキャパシタC6を備えている。
− 低周波信号BFの放射の終了時点からの遷移期間に、入力電圧Vinが再び連続的になり、存在検出装置CAPTに、連続モードで電力を再供給するとき、入力電圧Vinは、この例においては0Vから12Vに戻る。
このとき、0Vから12Vへの遷移によって、キャパシタC5が充電される。この充電によって、前述のように、作動している電流発生器GAの機能停止が生じる可能性がある。したがって、この機能停止を避けること、すなわち、そのような遷移期間中に、キャパシタC5の充電電圧Vch5が、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧である基準電圧Vref2より大きくなることを避けることが重要である。
【0180】
比R9/R4の値とともに、比C6/C5の値が、この問題を解決して、上述の妥協点を得るために考慮される。
【0181】
この第4のキャパシタC6は、ピーク検出器D2C5の入力電圧(第1の出力信号S1)の平均値、したがって、その出力電圧UR9に影響を及ぼす。
第4のキャパシタC6の値が大きいほど、第1の出力信号S1の平均値がより大きくなり、出力電圧UR9のピーク値がより大きくなり、したがって、前述のように、トランジスタTR1のスイッチングはより良好に行われる(トランジスタTR1の1状態と0状態とが、互いに明確に出現する)。
さらに、出力電圧UR9と、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧との比較が迅速になる。実際、第4のキャパシタC6の値が大きいほど、入力電圧Vinの変化(低周波信号の放射中の)は、より迅速に、出力電圧UR9に反映される。
したがって、低周波信号の放射の検出は、より速くなる(低周波信号の放射は、出力電圧UR9が、トランジスタTR1のスイッチング閾電圧より大きくなることによって特定される)。したがって、低周波信号の放射の特定までに存在する遅れ時間tn1は、より短くなる。
【0182】
しかしながら、第4のキャパシタC6の値が大きいほど、存在検出装置CAPTに電力が再供給されたときの検出回路DETECTの感度がより高くなる。実際、存在検出装置CAPTへの電力の再供給は、入力電圧Vinの切り替え(その結果、再び連続的になる)によって行なわれる。入力電圧Vinの切り替えは、出力電圧UR9に電圧ピークを発生させる。
出力電圧UR9のピーク値が大きい(第4のキャパシタC6の値が大きいために)ほど、トランジスタTR1の望ましくないスイッチングが引き起こされる可能性が、より高くなる。したがって、トランジスタTR1が再び導通する(0状態になる)危険性が、より高くなる。これらの望ましくないスイッチングは、存在検出装置CAPTへの電力の再供給を阻む。
【0183】
結論として、第4のキャパシタC6の値は、低周波信号の放射の検出の遅れ時間tn1と、センサ機能の耐性(トランジスタTR1の望ましくないスイッチングが生じる危険性に対する)との両方に影響を及ぼすから、検出の適切な遅れ時間と、存在検出装置CAPTへの電力の信頼性の高い再供給との間で適切な妥協点が見出されるように、第4のキャパシタC6の値を調整することが重要である。
そうすると、検出回路DETECTが存在検出装置CAPTの働きを乱すことなく、検出機能が再開する。
したがって、この第4のキャパシタC6は、存在検出装置CAPTの機能の再開(オン状態への復帰)の際の過渡的現象に対する、より大きな強健さを与える。
【0184】
第5の抵抗R9(したがって比R9/R4)の値を大きくすれば、第4のキャパシタC6(したがって比C6/C5)の値を小さくすることができることは理解しうると思う。これによって、ピーク検出器D2C5の出力電圧UR9に対しても、センサ機能の作動復帰までの復帰時間tn2に対しても何ら不都合をもたらすことなく、存在検出装置CAPTに電力が再供給されるときの検出回路DETECTの耐性を強くすることができる。
【0185】
したがって、2つの比R9/R4とC6/C5との値の間で、妥協点が得られる。
【0186】
次の2つの表(表1、表2)は、遅れ時間tn1、復帰時間tn2、出力電圧UR9、およびセンサ機能の耐性に対する上述の部品(抵抗R4、第5の抵抗R9、第4のキャパシタC6、およびキャパシタC5)の影響を要約している。
【表1】

【表2】

【0187】
非限定的な一実施例において、これらの部品は、入力電圧Vinの励振周波数(入力電圧Vinは、アンテナTXのための励振電圧として働き、その励振周波数は、この例においては125kHzである)で作動するように設計されていることは理解しうると思う。これによって、これらの部品によるスプリアスなノイズの検出が防止され、またアンテナTXの励振によって生じる信号、すなわちアンテナTXによる低周波信号の放射を正しく検出することができる。
【0188】
図12の各グラフは、この第3の実施形態による存在検出装置CAPTの動作を、より詳細に示している。
【0189】
− 図12の例の時刻t0は、自動車Vの開口部のノブPに差し伸べられている手が存在していない場合に相当する。第1の実施形態において前述した説明が、この例においても当てはまる。記述を簡明にするために、同じ説明を繰り返さない。したがって、第1の実施形態において前述した時刻t0に関する説明を参照されたい。
【0190】
− 時刻t1において、ユーザは、自分の手を、自動車Vの開口部のノブPの内側に置く。第1の実施形態において前述した説明が、この場合にも当てはまる。記述を簡明にするために、同じ説明を繰り返さない。したがって、第1の実施形態において前述した時刻t1に関する説明を参照されたい。
【0191】
− ノブPに差し伸べられているユーザの手の存在の検出に続いて、時刻t2において、アンテナTXが低周波信号BFを放射することができるように、アンテナTXに電力を供給するために、入力電圧Vinがパルス信号化される。この例は、手の検出によって、低周波信号BFの放射が引き起こされる例を示している。同じ原理を、「ポーリング」手法の場合にも当てはめることができることは明らかである。
したがって、入力電圧Vinは、アンテナTXによる低周波信号BFの放射が開始されるまでの時間に等しい、時刻t2〜t3の時間間隔の間、0まで低下している。
したがって、存在検出装置CAPTに対する連続電力供給は断たれる。
存在検出装置CAPTに対する連続電力供給が断たれると、存在検出装置CAPTは、外部からの電気エネルギーの供給なしで、自立的に作動する。すなわち、存在検出装置CAPTは、依然として、存在検出のための十分なエネルギーを有している。
入力キャパシタC2が、1番目のグラフに示されているように、放電し始める(その端子間電圧Vc2が徐々に減少し始める)。同様に、第2のキャパシタC1が、5番目のグラフに示すように、放電し始める(その端子間電圧Vc1が徐々に減少し始める)。
【0192】
− 手の存在の検出に続いて、時刻t3において、自動車Vのユーザによって保持されている識別オブジェクトIDに応答指令信号を送り、その識別オブジェクトIDが確かにその自動車Vに対応していることをチェックし、それによって、自動車Vへのアクセスを可能にするために、アンテナTXから低周波信号BFが放射される。それに応答して、識別オブジェクトIDは、その識別オブジェクトIDの識別を可能にする識別オブジェクトコード、および自動車へのその後のアクセスを可能にする認証を有効にする暗号データを含む、433MHzの一般的な周波数(限定するものではない)の無線周波数応答信号RFを送る。
無線周波数応答信号RFの返送は、ユーザが自動車の開口部を開くために、その開口部のノブPを引く前になされることは理解しうると思う。
低周波信号BFは、時刻t3〜t5の期間、通常、数マイクロ秒(概ね125kHzに相当する)の定められた周期TBFで放射される。他の周波数を用いることもできることは明らかである。
アンテナTXが、図12の1番目のグラフに示されているように、パルス信号化された不連続電圧(この例においては、−12V/0V/+12Vの)で動作しているから、このとき、入力電圧Vinは、そのようなパルス電圧になっている。
【0193】
− 時刻t4において、コンパレータである低周波検出素子CMPは、パルス信号化された入力電圧Vinに基づいた、前述のピーク検出によって、低周波信号BFの放射を検出する。低周波検出素子CMPの出力S_CMPは、図12の2番目のグラフに示されているように、1(オン状態)に設定される。
前述のように、検出までに、時定数CT45によって決められる遅れ時間tn1(時刻t3〜t4の)があることは理解しうると思う。
【0194】
このように、低周波信号BFの放射が検出されると、存在検出装置CAPTの基準レベルREFの自己適応が、図12の3番目のグラフFRZ_REFに示されているように一時停止させられる(オン状態)。
検出部材EAである電極セットの容量からの基準レベルREFの値が固定される。これは、メモリに保存されている基準レベルREFの最新値が、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルの値であることを意味する。
したがって、存在検出装置CAPTの設定が、そのまま固定される。
【0195】
存在検出装置CAPTが容量性の装置である場合には、存在検出装置CAPTが、もはや入力電圧Vinから連続的な電力供給を受けなくなっているとき、存在検出装置CAPTが、十分に電力を使用し続けることができる(入力キャパシタC2および第2のキャパシタC1が、十分に充電されている)としても、すなわち、自立的に作動することができる(存在検出装置CAPTが、依然として、ノブPに差し伸べられている手の存在を検出することができる)としても、アンテナTXと容量性の存在検出装置CAPTとの間のスプリアスな容量結合および/または誘導結合のために、低周波信号BFの放射によって、存在検出装置CAPTの動作が妨害されることは理解しうると思う。アンテナTXが、存在検出装置CAPTの近傍にある(一般に、両者はともにノブ内にある)から、そのようなスプリアスな容量結合および/または誘導結合は、実際に発生する。これによって、存在検出装置CAPTが自立的に作動しているとき、基準レベルREFに相当な変動が発生し得るし、さらに、自動車VのノブPに差し伸べられているユーザの手の存在の検出漏れや誤検出が発生し得る。
検出漏れは、ノブPに差し伸べられているユーザの手が存在しているときに、そのような手の存在を検出しないことであり、一方、誤検出は、ノブPに差し伸べられているユーザの手が存在していないときに、そのような手の存在を検出することであることに注意されたい。
【0196】
したがって、低周波信号BFの放射中、存在検出装置CAPTの基準レベルREFの値を固定することによって、基準レベルREFの変動および手の存在の検出漏れ/誤検出を防止することができる。したがって、これによって、低周波信号BFの放射によって発生する、容量性の存在検出装置CAPTに対する妨害を最小にすることができる。
【0197】
存在検出装置CAPTには、もはや入力電圧Vinからの連続電力供給がなされないから、第2のキャパシタC1および入力キャパシタC2が放電しないように、存在検出装置CAPTに、できるだけ電流を流さないようにすることが重要であることは理解しうると思う。実際、基準レベルREFの値を保存しておくことができるように、存在検出装置CAPTを自立的に作動させておくことが望ましい。したがって、作動している電流発生器(この例においては電流発生器GA)が、もはや発生器出力電流IAを発生させることができなくなるように、機能停止させられる。そのような機能停止が、図12の4番目のグラフINH_GAに示されている(オン状態)。
この機能停止動作は、基準レベルREFの値が固定されている場合などの、低周波信号BFの放射が検出されているときに実行される。
【0198】
さらに、存在検出装置CAPTに、もはや連続電圧が供給されていないから、低周波信号の放射が乱されないように、電流発生器GA、GBによる電流を流さないようにすることが重要である。実際、存在検出装置CAPTに電流が流れると、センサ電流Icaptが増加する。これによって、アンテナ電流ITXが減少する(共通電流IPSU=Icapt+ITXであることに注意されたい)。アンテナ電流ITXが減少すると、アンテナの動作が乱される。したがって、これによって、低周波信号BFによる通信に障害が発生し、および/またはアンテナの通信範囲が狭められる場合がある。したがって、自動車Vに対応する識別オブジェクトを識別するための識別オブジェクトコードが認識されなくなる危険性、および特に、自動車Vの施錠/解錠が不可能になる危険性が発生する。電流発生器の機能停止によって、このアンテナTXの動作妨害問題を回避することができる。
【0199】
電流発生器を機能停止させるために、第1および第2の実施形態において前述した2つの変形実施例(論理的に、またはトランジスタによって)を用いることができる。
したがって、電流発生器GAの機能停止によって、共通電流IPSUは、図12の7番目のグラフに示されているように、時刻t4において、スタンバイ電流Iidleだけと等しくなる。したがって、電流発生器GAは、もはや作動しない。
【0200】
このような機能停止によって、いかなる連続的な入力電圧Vinももはや存在していないときに、第2のキャパシタC1および入力キャパシタC2の過度の放電が防止される。
図12の5番目のグラフに示されているように、時刻t4の時点から、第2のキャパシタC1は、放電しないことが認識される。実際、第2のキャパシタC1は、それ自体で放電するほどに十分に放電しない(入力キャパシタC2は、それでも、図12の1番目のグラフに示されているように、それよりわずかに多く放電するかもしれないが、それは、保存装置LOGICおよび電圧レギュレータREGがそれ自体の作動のために必要な若干のエネルギーを消費するという事実によるものであって、電流発生器GAに電流を供給するためではない)。さらには、入力キャパシタC2は、アンテナ励振電圧として用いられている入力電圧Vinによって若干充電される場合もある。
入力キャパシタC2は、放電したとしても、存在検出装置CAPTがリセットされて、以前に保存された基準レベルREFの値を失うほどには十分に放電しない。
【0201】
− 時刻t5において、アンテナTXが、低周波信号BFの送信を終え、入力電圧Vinによる存在検出装置CAPTへの電力の再供給が可能になる。
【0202】
入力電圧Vinは、図12の1番目のグラフに示されているように、時刻t5〜t7の遷移期間の後、再び連続的になり、この例においては12Vである。したがって、存在検出装置CAPTに対する連続電力供給のいかなる中断ももはやなくなる。
コンパレータである低周波検出素子CMPの出力S_CMPは、図12の2番目のグラフに示されているように、第5の抵抗R9と組み合わされたキャパシタC5の放電時間に基づく復帰時間tn2の後に、時刻t6において、再び、0(オフ状態)になる。
存在検出装置CAPTに、電力が再供給されるから、第2のキャパシタC1および入力キャパシタC2は、図12の5番目および1番目のグラフにそれぞれ示されているように、端子間電圧が最大電圧MAXおよび入力電圧Vinに達するまで再充電される。
アンテナTXからの、いかなる低周波信号BFの送信も、もはや存在しない場合には、遷移期間の後、次のことが可能である。
− 低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルの、保存されている値を開放する、すなわち、再び自己適応(手が存在していないときに行われる)を可能にする。
− 機能停止していた電流発生器GA/GB(この例においては電流発生器GA)を再び作動させる。
【0203】
− したがって、時刻t6において、存在検出装置CAPTは、図12の第3のグラフFRZ_REFに示されているように、再び、検出部材EAを形成している電極セットに対応する基準レベルREFの自己適応(いかなる手も存在していない状態で行われる)を可能にする(オフ状態)。
時刻t6において、依然として手が検出されている(図12の6番目のグラフDETECT_EA)から、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルREFの値が、依然として保存されている値であることは理解しうると思う。実際、再び、手が存在しなくなったときに限り、自己適応が実行される。
【0204】
したがって、さらに、時刻t6において、共通電流IPSUは、図12の7番目のグラフに示されているように、再び、スタンバイ電流Iidleと、作動している電流発生器GAを流れている発生器出力電流IAとの和に等しくなる。
【0205】
存在検出装置CAPTが活動しているか否かを確認するために用いられる、自動車VのコントローラECUによる共通電流IPSUの測定によって、存在検出装置CAPTが依然として活動していること、すなわち、入力電圧Vinによって、存在検出装置CAPTに電力が供給されているときに、ノブPに差し伸べられている手が依然として存在していることを確認することができる。
したがって、自動車Vのユーザが、自分の手を、長時間、すなわち低周波信号BFの放射期間を超過して、ノブPの内側に(触れていようといまいと)、またはノブP上に(したがって触れながら)置いていたとしても、ユーザの手の存在は、依然として、存在検出装置CAPTによって検出される。したがって、低周波信号BFの放射の終了後においてもノブPに差し伸べられている手の存在に関する情報の損失が防止される。このために、低周波信号BFの放射の終了後にも持続しているノブへの手の差し伸べを検出する(「長期間支援」とも呼ばれる)ことによって、非限定的な例において、次のような助勢機能を作動させることができる。
− ノブPに差し伸べられていた手がもはやなくなるまで、自動車の窓を上げる。
− 幌付きオープンカーの幌をせり上げる。
− 自動車の警報器を作動させる。
− 自動車を極度に使用不能にする、すなわち、自動車のドアを施錠した後に、内側ノブを離脱させる(これによって、泥棒が、例えば窓を破った後に、内側ノブを用いて内側から自動車のドアを開けることを防止することができる)、等々。
非限定的な一例において、この「長期間支援」は30秒間まで続いてもよい。
【0206】
− 時刻t8において、第2のキャパシタC1および入力キャパシタC2は、図12の5番目および1番目のグラフにそれぞれ示されているように、端子間電圧が最大電圧MAXおよび入力電圧Vinに達するまで再充電される。
【0207】
− 時刻t9において、自動車Vのユーザは、図12の6番目のグラフDETECT_EAに示されているように、自動車VのノブPから、自分の手を遠ざける(オフ状態)。このとき、電流発生器GAが作動しなくなる(オフ状態)から、もはや、発生器出力電流IAは流れない。共通電流IPSUは、スタンバイ電流Iidleのみと等しくなる。
自動車VのコントローラECUによる共通電流IPSUの測定によって、存在検出装置CAPTがもはや活動していないこと、すなわち、対応するノブPに差し伸べられている手は存在していないことを確認することができる。
【0208】
この第3の実施形態において、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルREFの値の、低周波信号BFの放射中の保存は、少なくとも低周波信号BFの放射の終了時点まで、また少なくともパルス信号化された入力電圧Vinがもはやどのようにも検出されなくなるまで持続されることは理解しうると思う。
実際には、低周波信号BFの放射の終了時点とは、次のことを意味している。
− フィルタR4C5のキャパシタが放電し、その結果、
− 基準電圧Vref2を供給するトランジスタTR1が遮断状態になる。
したがって、低周波信号BFの放射の終了後に、物理量CEからの基準レベルREFの自己適応が再認可される。
低周波信号BFの放射の終了後に、自己適応が再び実行され、第1および第2の実施形態において前述したように、次のいずれかのときに、基準レベルREFの新しい値が保存される。
− ユーザの手が、もはや存在しなくなったとき。
− タイムアウトTIMEOUTが発生したとき。
【0209】
したがって、この第3の実施形態は、特に次の利点を有している。
− 時定数CT45を考慮してキャパシタC5の充電時間を制御することによって、低周波信号BFの放射を検出するまでの遅れ時間を最小にすることができる。
− 第5の抵抗R9、キャパシタC5、および第4のキャパシタC6を考慮することによって、低周波信号BFの放射の終了時点から最小の復帰時間で、存在検出装置CAPTによる検出機能を再開させることができる。
− 時定数CT45を考慮することによって、キャパシタC5の充電時に、過渡的なスプリアス信号による障害を避けることができる。
− 低周波信号BFの放射の前に、電極セットである検出部材EA/EBに接近してきて、低周波信号BFの放射の終了後も、そこに置かれたままの、ユーザの手を、低周波信号BFの放射の終了時点以後も検出し続けることができる(存在検出装置CAPTが、低周波信号BFの放射の前に測定された、存在検出装置CAPTの全ての設定、特に基準レベルを、低周波信号BFの放射の前に保存するから)。
− 低周波信号BFの放射中に、電極セットである検出部材EA/EBに接近してきて、低周波信号BFの放射の終了後も、その近傍に置かれたままの、ユーザの手を、低周波信号BFの放射の終了時点以後も検出し続けることができる(存在検出装置CAPTが、低周波信号BFの放射の前に測定された、存在検出装置CAPTの全ての設定、特に基準レベルを、低周波信号BFの放射の前に保存し、放射中にも保存し続けるから)。
− 電流発生器(作動していた)を機能停止させるから、低周波信号BFの放射が、存在検出装置CAPTによる電流消費によって妨害されることはない。
【0210】
他の実施形態
上述の3つの実施形態が非限定的なものであることは明白であり、以下のような別の実施形態も考えられる。
− 基準レベルREFは、第1の実施形態におけるように、存在検出装置CAPTへの連続電力供給の中断が検出されるとすぐに固定されるが、自己適応の再認可は、第2または第3の実施形態におけるように、低周波信号の放射の終了時点でなされる。これと同じ原理を、電流発生器の機能停止/機能停止解除に適用することができる。
− 基準レベルREFは、第2または第3の実施形態におけるように、低周波信号の放射の開始が検出されるとすぐに固定されるが、自己適応の再認可は、第1の実施形態におけるように、存在検出装置CAPTへの連続電力供給の中断の終了時点でなされる。これと同じ原理を、電流発生器の機能停止/機能停止解除に適用することができる。
− 第1の実施形態は、さらに、低周波信号の放射中、アンテナTXによって発生する共振電圧VbFによって、前述のように電力を供給される存在検出装置CAPTを有している。
− 第3の実施形態は、さらに、低周波信号の放射中、アンテナTXによって発生する共振電圧VbFによって、前述のように電力を供給される存在検出装置CAPTを有している。等々。
【0211】
したがって、本発明による存在検出装置CAPTは、検出部材EA/EBに伴っており、かつ検出部材EA/EBが位置している周囲環境に応じて変化する物理量CEを介して、物体Oの存在を検出するための、次のステップを含む方法を実行することができる。
− 物理量CEから、可変であり、かつ物体Oの存在していない状態に対応する基準レベルREFを導出するステップと、
− 低周波信号BFの放射中、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルREFの値を保存しているステップ。
【0212】
非限定的な一実施例において、この方法は、さらに、次のステップを含んでいる。
− 検出部材に伴う物理量を測定するステップと、
− 測定された物理量と、保存されている基準レベルの値とを比較するステップ。
【0213】
非限定的な一実施例において、この方法は、さらに、基準レベルの変更を一時停止させるステップを含んでいる。
【0214】
非限定的な一実施例において、この方法は、さらに、低周波信号の放射の終了後に保存動作を解除するステップを含んでいる。
【0215】
最後に、非限定的な一実施例において、基準レベルの変更の一時停止は、物体の存在が検出されるとすぐに、または低周波信号が放射されるとすぐに行われる。
【0216】
上述の検出方法は、マイクロプログラムされた「ソフトウェア」装置、ワイヤードロジック、および/または「ハードウェア」電子部品を用いて遂行することができることは理解しうると思う。
したがって、存在検出装置CAPTは、マイクロプロセッサなどの情報処理ユニット、またはマイクロコントローラ、ASIC、コンピュータなどの処理ユニットによって実行することができ、かつ上述の方法を遂行することを可能にする1つ以上の命令列を有するコンピュータプログラム製品PGを備えていてもよい。
そのようなコンピュータプログラム製品PGは、ROMタイプの不揮発性の読み出し専用のメモリ、または、EEPROMまたはFLASHタイプの不揮発性の書き換え可能なメモリに書き込まれていてもよい。このコンピュータプログラム製品PGは、製造所においてメモリに書き込まれていてもよいし、メモリにロードされてもよいし、またはメモリにダウンロードされてもよい。命令列は、機械語列であってもよいし、または実行時に処理ユニットによって機械語列に翻訳処理されるコマンド言語列であってもよい。
非限定的な一例において、コンピュータプログラム製品PGは、存在検出装置CAPTの制御ユニットUCのメモリに書き込まれている。
【0217】
当然のことながら、本発明の存在検出装置、存在検出ユニット、および検出方法は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではない。
【0218】
例えば、存在検出装置は、次のようなものであってもよい。
− 電源を共通にして、低周波信号を放射するアンテナTXと組み合わされた容量性の存在検出装置CAPT。
− 電源を共通にして、低周波信号を放射するアンテナTXと組み合わされた非容量性の存在検出装置CAPT(非限定的な一例において、光学的な存在検出装置)。
− 電源を別々にして、低周波信号を放射するアンテナTXと組み合わされた容量性の存在検出装置CAPT。
これらの3つのうち、1番目と2番目の場合は上に説明されている。3番目の場合に関しては、この場合には、1番目と2番目の場合のようにアンテナTXに対する電力供給を可能にするためではなくて、存在検出装置CAPTと、低周波信号BFの放射との間の容量結合および/または誘導結合を回避し、それによって、存在検出装置CAPTが妨害されることを防止するために、存在検出装置CAPTへの連続電力供給が絶たれるのであるから、この存在検出装置CAPTは、より好都合に動作することは理解されると思う。このために、存在検出装置CAPTへの電力供給が断たれていても、基準レベルが、低周波信号の放射の前に測定された値に固定され、また作動していた電流発生器が機能停止しているから、低周波信号BFの放射の終了後においても、依然として、ノブPに差し伸べられている手の存在を検出することができる。
【0219】
電流発生器GA/GBに関する、存在検出装置CAPTの測定手段の上述の実施形態に加えて、他の実施形態において、測定手段は、例えば次のいずれかのものを有している。
− 単一の電流発生器GAB(測定手段の第2の実施形態)。
− 2つの接地スイッチTA/TB(測定手段の第3の実施形態)。
− 単一の接地スイッチTAB(測定手段の第4の実施形態)。
【0220】
したがって、図13に示されている、測定手段の第2の実施形態において、存在検出装置CAPTは、測定手段として、2つの検出部材EA/EBに組み合わされた単一の電流発生器GAB(単一の発生器出力電流IABを発生させることができる)を備えている。発生器出力電流IABが、第1の検出部材EA(電極セット)に対応しているか、それとも第2の検出部材EB(電極セット)に対応しているかを識別可能にするために、発生器出力電流IABは、制御集積回路である保存装置LOGICによってタイムコード化される。そうすると、自動車VのコントローラECUは、得られた電流をデコードし、コードのパルス幅を測定することによって、どちらの検出部材EA/EBがアクティブであるかを知ることができる。したがって、前述のように、手がノブの内側にあるか、またはノブ上にあるかを特定することができ、したがって、施錠機能と解錠機能のどちらを作動させなければならないかを推定することができる。
この測定手段の第2の実施形態においては、単一の出力しか存在せず、したがって、配線の数を減らすことができ、そのために、存在検出装置CAPTのサイズを小さくすることができることは理解しうると思う。これによって、存在検出装置CAPTを、自動車のノブの内部に、より容易に組み込むことができる。
さらに、電流をコード化することによって、電磁干渉に対して、より良好な耐性を得るこができる。
一変形実施例において、互いに異なる2つの発生器出力電流IAおよびIBを流すことができる、単一の電流発生器GABを設けることもできる。
【0221】
図14に示されている、測定手段の第3の実施形態において、存在検出装置CAPTは、測定手段として、検出部材EA/EBにそれぞれ組み合わされた接地スイッチTA/TBを備えている。接地スイッチTA/TBは、それぞれ発生器出力電圧UA/UBを発生させることができる。
非限定的な一実施例において、接地スイッチTA/TBは、オープンコレクタトランジスタである。この場合には、自動車VのコントローラECUは、次のものを備えている。
− 各接地スイッチTA/TBに組み合わされた抵抗R。
− 各接地スイッチTA/TBに組み合わされており、かつコントローラECUのマイクロコントローラMICROに接続されている入力インターフェイスINTF。非限定的な一例示的実施例において、この入力インターフェイスは、インバータINVである。
検出部材EA/EBがアクティブであるとき、組み合わされている接地スイッチTA/TBは、発生器出力電圧UA/UBを出力する。自動車VのコントローラECUは、抵抗Rおよびそれに組み合わされている入力インターフェイスINTFを介して、この発生器出力電圧UA/UBを測定することができ、その測定値に応じて、次のいずれの状況が生じているかを特定することができる。
1)触れていようといまいと、手がノブPの内側に置かれている(入力インターフェイスがインバータINVである場合には、発生器出力電圧UA=0Vに対応する、マイクロコントローラMICROの端子電圧INA=5V)。
2)手がノブPの上に置かれている(入力インターフェイスがインバータINVである場合には、発生器出力電圧UB=0Vに対応する、マイクロコントローラMICROの端子電圧INB=5V)。
3)手がノブPの内側、かつノブPの上にも置かれている(入力インターフェイスがインバータINVである場合には、発生器出力電圧UA=UB=0Vに対応する、マイクロコントローラMICROの端子電圧INA=INB=5V)。
4)いかなる手も存在していない(入力インターフェイスがインバータINVである場合には、発生器出力電圧UA=UB=Vbatに対応する、マイクロコントローラMICROの端子電圧INA=INB=0V)。
したがって、端子電圧の測定値に応じて、コントローラECUは、測定手段が電流発生器GA/GB、GABである場合において前述したように、なされた検出に対応する、自動車の錠に関するコマンド(解錠および/または施錠、またはコマンドなし)を実行することができる。
次のことを理解しうると思う。
− 検出部材EA/EBがアクティブなとき(手が存在しているとき)、対応する接地スイッチTA/TBは導通状態にある。このとき、発生器出力電圧UA、UBは0Vである。すなわち、マイクロコントローラMICROの対応する入力の端子電圧INA/INBは、入力インターフェイスが例えばバッファである場合には0Vであり、入力インターフェイスがインバータである場合には5Vである。
− 検出部材EA/EBがアクティブでないとき(手が存在していないとき)、対応する接地スイッチTA/TBは遮断状態にある。このとき、発生器出力電圧UA、UBはバッテリ電圧Vbatに等しい。すなわち、マイクロコントローラMICROの対応する入力の端子電圧INA/INBは、入力インターフェイスが例えばバッファである場合には5Vであり、入力インターフェイスがインバータである場合には0Vである。
【0222】
図15に示されている、測定手段の第4の実施形態において、存在検出装置CAPTは、測定手段として、2つの検出部材EA/EBに組み合わされた単一の接地スイッチTAB(単一の発生器出力電圧UABを発生させることができる)を備えている。発生器出力電圧UABが、第1の検出部材EA(電極セット)に対応しているか、それとも第2の検出部材EB(電極セット)に対応しているかを識別可能にするために、発生器出力電圧UABは、制御集積回路である保存装置LOGICによってタイムコード化される。自動車VのコントローラECUは、前述のように、抵抗Rおよびそれに組み合わされている入力インターフェイスINTF(インバータINVであってもよい)を介して、タイムコード化された発生器出力電圧UABを測定し、このタイムコード化された発生器出力電圧UABをデコードして、パルス幅を測定することによって、どちらの検出部材EA/EBがアクティブであるかを知ることができる(発生器出力電圧UABに対応する、マイクロコントローラMICROの端子電圧INABを介して)。したがって、前述のように、手がノブの内側にあるか、それともノブ上にあるかが特定され、したがって、施錠機能と解錠機能のどちらを作動させなければならないかが推定される。
この測定手段の第4の実施形態においては、単一の出力しか存在せず、したがって、配線の数を減らすことができ、そのために、存在検出装置CAPTのサイズを小さくすることができることは理解しうると思う。これによって、存在検出装置CAPTを、自動車のノブの内部に、より容易に組み込むことができる。
【0223】
測定手段の第3および第4の実施形態においては、電流測定より簡単に実行される電圧測定に基づく存在検出装置CAPTを用いることができることは理解しうると思う。
【0224】
測定手段の第2の実施形態においては、第3および第4の実施形態に比して、さらに配線の数を減らすことができることは理解しうると思う。第3および第4の実施形態においては、第2の実施形態に比して、それぞれ2本および1本のさらなる配線が必要になる。
マイクロコントローラMICROの端子電圧が5Vに限定されないことは理解しうると思う。
【0225】
測定手段のこれらの実施形態においても、手がノブPに差し伸べられている期間に応じて、コントローラECUは、前述のように、少なくとも1つの助勢機能を実行することができることは明らかである。
【0226】
上述より、本発明は、特に、次の利点を有している。
− 自動車のユーザが、自分の手を、自動車の開口部のノブの上に置いているか、触れることなくノブの内側に置いているかを検出することによって、それぞれ、ユーザが、自動車に施錠しようと意図しているのか、開錠しようと意図しているのかを特定することができるだけではなく、自動車のユーザの手が、開口部のノブPに長時間差し伸べられていること(ノブP上への長時間載置、またはノブPの内側への、触っているかいないかにかかわらない長時間挿入)を検出することによって、ユーザが、助勢機能を働かせようと意図していることを特定することができる。
− 作動している電流発生器の機能停止によって、次のことを防止する。
・保存装置LOGICのリセットを引き起こす、第2のキャパシタC1および入力キャパシタC2からの電気エネルギーの損失。
・それによる、存在検出装置CAPTの検出部材EA/EBからの基準レベルREFの値のリセット。
・それによる、ノブPに差し伸べられている手の存在の検出能力の喪失。
・したがって、さらに、低周波信号の放射の終了後もノブPに差し伸べられている手の存在の検出能力の喪失。
− 存在検出装置CAPTとアンテナTXとが、互いに近接しているにもかかわらず、アンテナTXによる、容量性である存在検出装置CAPTへの妨害を防止することができる。それによって、低周波信号BFの放射中に、低周波信号BFの放射の前に測定された基準レベルREFの値を保存していることができる。したがって、自動車Vのユーザが、自分の手を、長時間すなわち低周波信号BFの放射の終了後も、ノブPの内側に置いたままにし、および/または、ノブPに触れたままにすると、その手は検出される。
− 動作している電流発生器の機能停止によって、保存装置LOGICのリセットが防止され、したがって、どの検出部材EA/EB(電極セット)がアクティブであるかという情報の損失が防止される。したがって、検出漏れ/誤検出が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0227】
上述の本発明は、上述の自動車への適用に限定されるものではないことは明白である。低周波信号の放射を用いて、検出部材の近傍の物体の存在を検出する必要のあるいかなる応用にも、本発明を適用することができる。本発明は、例えば家電製品分野、または蛇口(水噴射を開始させるために蛇口の下を通過させた手の検出)などへの応用が可能である。
【符号の説明】
【0228】
AV 増幅器
BF 低周波信号
C キャパシタ
C1 第2のキャパシタ
C2 入力キャパシタ
C5 キャパシタ
C6 第4のキャパシタ
CAPT 存在検出装置
CE 物理量
CMP 低周波検出素子
D1 第1のダイオード
D2 第2のダイオード
D3 第3のダイオード
D4 ダイオード
DETECT 検出回路
EA、EB 検出部材
ECU コントローラ
GA、GB、GAB 電流発生器
A、IB、IAB 発生器出力電流
IbF 共振電流
capt センサ電流
idle スタンバイ電流
PSU 共通電流
TX アンテナ電流
INA、INB、INAB 端子電圧
INH 機能停止手段
INTF 入力インターフェイス
L インダクタ
LOGIC 保存装置
Max 最大電圧
Micro マイクロコントローラ
O 物体
PSU 存在検出ユニット
PT 分割器ブリッジ
R、R1、R2、R2’、R3、R3’、R4、R9 抵抗
RC フィルタ
REG 電圧レギュレータ
Rsp 測定抵抗
S1 第1の出力信号
S2 第2の出力信号
SYS ハンズフリーシステム
t0〜t12 時刻
TA、TB、TAB 接地スイッチ
BF 周期
TF1 第1の時間フィルタ
TF2 第2の時間フィルタ
Tn1 遅れ時間
Tn2 復帰時間
Tp1 第1のあらかじめ定められた期間
Tp2 第2のあらかじめ定められた期間より長い期間
TR1 トランジスタ
ts あらかじめ定められた時間周期
TX アンテナ
A、UB、UAB、UR9 出力電圧
UC 制御ユニット
V1〜V5 値
Vbat バッテリ電圧
VbF 共振電圧
Vc1、Vc2 端子間電圧
Vin 入力電圧
VO 測定値
Z ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの検出部材(EA/EB)を備えている、物体(O)の存在を検出するための存在検出装置(CAPT)であって、該検出部材(EA/EB)の各々は、該検出部材(EA/EB)の各々が位置している周囲環境に応じて変化する物理量(CE)を伴っている存在検出装置(CAPT)において、
− 前記物理量(CE)から、可変であり、かつ物体(O)の存在していない状態に対応する基準レベル(REF)が導出されること、および
− 前記存在検出装置(CAPT)は、低周波信号(BF)の放射中、該低周波信号(BF)の放射の前に測定された前記基準レベル(REF)の値を保存している保存装置(LOGIC)を、さらに備えていることを特徴とする存在検出装置(CAPT)。
【請求項2】
前記保存装置(LOGIC)は、さらに、
− 前記検出部材(EA/EB)に伴う物理量(CE)を測定することができ、かつ
− 該物理量(CE)と、前記基準レベル(REF)の保存されている値とを比較することができるようになっている請求項1に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項3】
前記保存装置(LOGIC)は、さらに、
− 前記基準レベル(REF)の変更を一時停止させることができるようになっている 請求項1または2に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項4】
前記基準レベルの変更の一時停止は、前記物体の存在が検出されるとすぐに、または前記低周波信号が放射されるとすぐに行われる、請求項3に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項5】
前記保存装置(LOGIC)は、前記低周波信号(BF)の放射の終了後に、前記保存動作を解除することができるようになっている請求項1〜4のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項6】
前記物理量(CE)は容量である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項7】
前記物理量(CE)は光束である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項8】
− 低周波信号(BF)の放射の開始を検出する低周波検出素子(CMP)を、
さらに備えている、請求項1〜7のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項9】
低周波信号(BF)を放射するためのアンテナ(TX)と共通の電源によって電力供給される、請求項1〜8のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項10】
前記低周波信号(BF)の放射中、該低周波信号(BF)を放射することができるアンテナ(TX)の励振電圧によって電力供給される、請求項1〜9のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項11】
入力電圧(Vin)から電力供給されるように構成されており、該入力電圧(Vin)からの電気エネルギーを蓄える入力キャパシタ(C2)をさらに備えている、請求項1〜10のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項12】
− 前記検出部材(EA/EB)が、前記物体(O)の存在を検出したときに、出力電気量(IA/IB、UA/UB、IAB、UAB)を発生させるために、該検出部材(EA/EB)に組み合わされた測定手段(GA/GB、TA/TB、GAB、TAB)を
さらに備えている、請求項1〜11のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項13】
− 前記測定手段(GA/GB、TA/TB、GAB、TAB)を、いかなる出力電気量(IA/IB、UA/UB、IAB、UAB)も発生させないように機能停止させるための機能停止手段(INH)をさらに備えている、請求項12に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項14】
前記測定手段は、前記検出部材(EA/EB)の各々に1つずつ組み合わされた電流発生器(GA/GB)を有しており、出力電気量は、発生器出力電流(IA/IB)である、請求項12または13に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項15】
前記測定手段は、前記検出部材(EA/EB)の全てに組み合わされた単一の電流発生器(GAB)を有しており、出力電気量は、発生器出力電流(IAB)である、請求項12〜14のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項16】
前記測定手段は、前記検出部材(EA/EB)の各々に1つずつ組み合わされた接地スイッチ(TA/TB)を有しており、出力電気量は、発生器出力電圧(UA/UB)である、請求項12〜15いずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項17】
前記測定手段は、前記検出部材(EA/EB)の全てに組み合わされた単一の接地スイッチ(TAB)を有しており、出力電気量は、発生器出力電圧(UAB)である、請求項12〜16いずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項18】
前記低周波検出素子(CMP)は、前記存在検出装置(CAPT)への電力供給の中断を検出するためのコンパレータを有している、請求項8〜17のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項19】
前記コンパレータは、前記入力キャパシタ(C2)の端子間電圧(Vc2)と、前記入力電圧(Vin)とを比較することができる、請求項18に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項20】
前記機能停止手段(INH)は、前記存在検出装置(CAPT)への電力供給の中断が検出されたときに、測定手段(GA/GB、TA/TB、GAB、TAB)を機能停止させることができる、請求項18または19に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項21】
前記機能停止手段(INH)は、前記入力電圧(Vin)の値が、前記入力キャパシタ(C2)の端子間電圧(Vc2)から、第1の電圧閾値(Vs1)を差し引いた値より小さいときに、測定手段(GA/GB、TA/TB、GAB、TAB)を機能停止させることができる、請求項20に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項22】
前記保存装置(LOGIC)は、前記入力電圧(Vin)の値が、前記入力キャパシタ(C2)の端子間電圧(Vc2)から、第2の電圧閾値(Vs2)を差し引いた値より大きくなるまで、低周波信号(BF)の放射の前に測定された前記基準レベル(REF)の値を保存している、請求項18〜21のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項23】
− 前記電力供給の中断の経過時間(Tc)を観測し、該経過期間(Tc)が第1のあらかじめ定められた時間(Tp1)より長くなった場合のみ、前記低周波信号(BF)の放射の前に測定された前記基準レベル(REF)の値が保存されることを許可する第1の時間フィルタ(TF1)をさらに備えている、請求項18〜22のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項24】
− 第2のあらかじめ定められた時間(TBF)より長い期間(Tp2)、前記入力電圧(Vin)が、前記入力キャパシタ(C2)の端子間電圧(Vc2)に等しいときに、前記低周波信号(BF)の放射の前に測定された基準レベル(REF)の値の保存動作を解除することを許可する第2の時間フィルタ(TF2)をさらに備えている、請求項18〜23のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項25】
前記低周波検出素子(CMP)は、前記低周波信号(BF)の放射を表わす共振信号(VbF)を検出するためのコンパレータを有している、請求項8〜17のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項26】
前記低周波検出素子(CMP)は、前記共振信号からピークレベルを検出するためのピークレベル検出器(D2C5)を有している、請求項25に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項27】
前記コンパレータは、前記低周波信号(BF)を放射することができるアンテナ(TX)によって生成される共振信号(VbF)と、基準電圧(Vref)とを比較することができる、請求項25または26に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項28】
前記共振信号は、前記低周波信号(BF)を放射することができるアンテナ(TX)を流れる共振電流(IbF)のイメージ電圧である、請求項25または26に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項29】
前記機能停止手段(INH)は、低周波信号(BF)の放射が検出されたときに、測定手段(GA/GB、TA/TB、GAB、TAB)を機能停止させることができる、請求項25〜28のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項30】
前記低周波検出素子(CMP)は、低周波信号(BF)の放射を表わす、パルス信号化された入力信号(Vin)を検出するためのコンパレータを有している、請求項8〜17のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項31】
前記低周波検出素子(CMP)は、前記パルス信号化された入力信号(Vin)からピークレベルを検出するためのピークレベル検出器(D2C5)を有している、請求項30に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項32】
前記低周波検出素子(CMP)は、さらなるキャパシタ(C6)を、さらに有している、請求項30または31に記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項33】
前記低周波検出素子(CMP)は、キャパシタ(C5)と組み合って、前記低周波信号(BF)の放射の終了後における検出の再開を可能にする、さらなる抵抗(R9)を、さらに有している、請求項30〜32のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項34】
前記ピークレベル検出器(D2C5)が、
― 前記ピークレベル検出器(R4C5)の充電時間を制御することによって、低周波信号(BF)の放射を検出する時間を最小にするように定められた時定数(CT45)を有する、請求項30〜33のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項35】
前記ピークレベル検出器(D2C5)が、
― 前記ピークレベル検出器(R4C5)が充電されるときに、前記パルス信号化された入力信号(Vin)に、スプリアスな過渡的妨害ピークが形成されないように定められた時定数(CT45)を有する、請求項30〜34のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)。
【請求項36】
− 請求項1〜35のいずれか1つに記載の存在検出装置(CAPT)と、
− 低周波信号(BF)を放射するためのアンテナ(TX)とを備えていることを特徴とする、物体(O)の存在を検出するためのユニット(PSU)。
【請求項37】
検出部材(EA/EB)に伴う物理量(CE)に基づいて、物体(O)の存在を検出する存在検出方法であって、該物理量(CE)は、該検出部材(EA/EB)が位置している周囲環境に応じて変化する存在検出方法において、
− 前記物理量(CE)から、可変であり、かつ物体(O)の存在していない状態に対応する基準レベル(REF)を導出するステップと、
− 低周波信号(BF)の放射中、該低周波信号(BF)の放射の前に測定された前記基準レベル(REF)の値を保存しているステップとを含むことを特徴とする存在検出方法。
【請求項38】
− 前記検出部材(EA/EB)に伴う物理量(CE)を測定するステップと、
− 該物理量(CE)と、前記基準レベル(REF)の保存されている値とを比較するステップとをさらに含む、請求項37に記載の存在検出方法。
【請求項39】
− 前記基準レベル(REF)の変更を一時停止させるステップをさらに含む、請求項37または38に記載の存在検出方法。
【請求項40】
− 前記低周波信号(BF)の放射の終了後に、前記保存動作を解除するステップを、さらに含む、請求項37〜39のいずれか1つに記載の存在検出方法。
【請求項41】
前記基準レベルの変更の一時停止は、物体の存在が検出されるとすぐに、または前記低周波信号が放射されるとすぐに行われる、請求項37〜40のいずれか1つに記載の存在検出方法。
【請求項42】
情報処理ユニットによって実行可能な1つ以上の命令列を有するコンピュータプログラム製品(PG)であって、該命令列を実行することによって、請求項37〜41のいずれか1つに記載の存在検出方法を遂行することができるコンピュータプログラム製品(PG)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−540808(P2010−540808A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527397(P2010−527397)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062457
【国際公開番号】WO2009/043734
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(307005287)ヴァレオ セキュリテ アビタクル (6)
【Fターム(参考)】