説明

自動車のインパネ装置

【課題】インパネコアが縦壁を有する場合にも支障なく見切り部を形成でき、色分けすることができる自動車のインパネ装置を提供する。
【解決手段】車幅方向に延びる部品取付け面2′,3′を有する上部コアパネル2,下部コアパネル3とを、両者の境界縁部2e,3eを二色成形により互いに重ねて結合させて見切り部4a〜4cとして一体形成したインパネコア1を有し、前記下部コアパネル3に、前記部品取付け面3′の左,右端部を左,右のドアの内張り面に面して屈曲させてなる縦壁3cを形成し、該縦壁3cに、前記上部コアパネル2の左,右端部2cを囲むように前記部品取付け面3′を延長してなる延長面3′′を有する縦壁延長部3dを形成し、前記見切り部4a,4cは、前記左,右の縦壁間3c,3cに位置し、車幅方向に延びる横見切り部4a′,4c′と、該横見切り部に続いて前記延長面3′′に沿って延びる縦見切り部4a′′,4c′′とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色成形により樹脂成形されたインストルメントパネルコア(以下、インパネコアと記す)を有する自動車のインストルメントパネル装置(以下、インパネ装置と記す)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のインパネ装置においては、樹脂成形品であるインパネコアを、例えば上部をウインドシールドへの映り込みを防止するためにダーク色に、下部を室内を明るくするために高明度色に色分けすることが行われている。この色分け方法については、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
前記従来技術では、インパネコアの上部(フロントサイド面)と下部(シートサイド面)との境界に薄い板を当接可能の谷又は溝を設け、これによりマスキング作業を容易化し、二色塗装の作業性を向上するようにしている。
【0004】
一方、特許文献2には、インパネにエアバック膨出口を有する本体と、該膨出口をカバーするエアバックカバーとを二色成形により一体形成する点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−226160号公報
【特許文献2】特許第3240985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献1の方法では、作業性が向上しているものの、依然として二色に塗り分ける方法を採用しており、従ってマスキング作業や塗装作業等が必要であり、コスト高となる問題がある。
【0007】
一方、特許文献2の方法では、マスキングや塗装作業が不要であり、コスト削減が可能である。ところが前記二色成形では、コア型の一部をなす押切コアを後退させることにより形成された隙間に樹脂を供給することにより、本体部とカバーとの重合部を見切り部とするように構成されている。そのため、前記見切り部の形成可能範囲が押切コアの型抜き方向による制約を受けるという問題がある。
【0008】
特に本発明が対象としているインパネ装置においては、インパネコアがドア内張面に面する縦壁を有するが、この縦壁部分については、押切コアを後退させても前記隙間が殆ど形成されないため、該縦壁部分に見切り部を形成できないという問題が生じる。
【0009】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、インパネコアが縦壁を有する場合にも支障なく見切り部を形成でき、色分けすることができる自動車のインパネ装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、車幅方向に延びる部品取付け面を有する第1コアパネルと第2コアパネルとを、両者の境界縁部を互いに重ねて結合して見切り部とする二色成形により一体形成してなるインパネコアを有する自動車のインパネ装置であって、前記第1,第2コアパネルの何れか一方のコアパネルに、前記部品取付け面の左,右端部を左,右のドアの内張り面に面するように屈曲させてなる縦壁を形成し、該縦壁に、前記何れか他方のコアパネルの左,右端部を囲むように前記部品取付け面を延長してなる延長面を有する縦壁延長部を形成し、前記見切り部は、前記左,右の縦壁間に位置し、車幅方向に延びる横見切り部と、該横見切り部に続いて前記延長面に沿って延びる縦見切り部とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
車幅方向に延びる部品取付け面と、これの両端部をドア内張り面に面するよう屈曲させてなる縦壁とを有する2つのコアパネルを、二色成形により両コアパネルの境界縁部を重ねて結合させて見切り部とすることにより一体形成する場合、前記縦壁における見切り部が形成不能となる。即ち、二色成形では、押切コアを後退させることにより形成された隙間に樹脂を射出することにより見切り部を形成するのであるが、前記縦壁においては、押切コアを後退させても隙間ができず、従って見切り部が形成できない。
【0012】
本発明では、前記第1,第2コアパネルの何れか一方のコアパネルに縦壁を形成し、該縦壁に、前記何れか他方のコアパネルの左,右端部を囲むように前記部品取付け面を延長してなる延長面を形成し、前記見切り部を、車幅方向に延びる横見切り部と前記延長面に沿って延びる縦見切り部を有する構成とした。
【0013】
このように本発明では、何れか一方のコアパネルのみに縦壁を形成し、該縦壁に形成した延長面と他方のコアパネルとの重合部に見切り部を形成するようにしたので、インパネコアが縦壁を有する場合にも両コアパネルの境界縁部全長に渡って見切り部を形成可能であり、両コアパネルの結合剛性を高めることができる。また、縦壁を有しながら二色成形での一体化が可能であり、塗装工程を不要としながら第1,第2コアパネルを所望の色の樹脂で構成でき、色分けが可能となる。
【0014】
また、前記見切り部においては、他方のコアパネルの境界縁部の裏面に一方のパネルの押切コアスライド寸法に応じた厚さの境界縁部が重合するので、それだけ肉厚が厚くなり、補強リブを不要にしながら、十分な剛性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1による自動車のインパネ装置を示す正面斜視図である。
【図2】前記インパネ装置における横見切り部を示す図1におけるII-II線断面側面図である。
【図3】前記インパネ装置における縦見切り部を示す図1におけるIII-III線断面側面図である。
【図4】前記インパネ装置における縦見切り部の製造方法を説明するための断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1ないし図4は、本発明の実施例1による自動車のインパネ装置を説明するための図である。
【0018】
図において、1は、自動車の車室内前端部に配設されたインパネ装置の主構成部材であるインパネコアを示す。該インパネコア1は、上部に位置する上部コアパネル(第1コアパネル)2と、下部に位置する下部コアパネル(第2コアパネル)3とを樹脂の二色成形により一体形成してなるものである。上部コアパネル2は、ウンインドシールド(図示せず)への映り込みを防止するために黒や濃い茶色等のダーク色で形成されている。一方、下部コアパネル3は、車室内を明るくするためにクリーム色やベージュ色等の高明度色に形成されている。なお、何れのコアパネルも所望の色に形成できることは言うまでもない。
【0019】
前記上部コアパネル2,下部コアパネル3は、車幅方向に延びる取付け面2′,3′を有し、該取付け面2′,3′にはエアバック,ナビゲータ,メータクラスタ等の各種の部品を取りつけるための開口2a,3aや切欠き3bが形成されている。
【0020】
また前記下部コアパネル3は、前記部品取付け面3′の左,右端部を左,右のドアの内張り面(図示せず)に面するように屈曲させてなる左,右の縦壁3c,3cを有する。
【0021】
そして前記縦壁3cは、前記上部コアパネル2の部品取付け面2′の左,右端部2cを囲むように延びる縦壁延長部3dを有する。この縦壁延長部3dは前記縦壁3cを延長してなる縦延長面3c′と、下部コアパネル3の部品取付け面3′を延長してなる横延長面3′′とを有する。
【0022】
そして前記上部コアパネル2と下部コアパネル3は、それぞれの境界縁部2e,3eを前述の二色成形により互いに重ねて結合させてなる左側の見切り部4a,中央の見切り部4b,及び右側の見切り部4cを有し、該見切り部4a,4b,4cを介して互いに一体的に結合されている。
【0023】
前記中央の見切り部4bは、前記左,右の縦壁3c,3c間で、かつ中央やや右寄りに位置し、車幅方向に延びる横見切り部のみで構成されている。一方、前記左側,右側の見切り部4a,4cは、車幅方向に延びる横見切り部4a′,4c′と、これに続いて前記縦壁延長部3d,3dに沿って延びる縦見切り部4a′′,4c′′とを有する。より詳細には、この縦見切り部4a′′,4c′′は、前記縦壁延長部3dの横延長面3′′に形成されている。
【0024】
ここで前記見切り部の形成方法を図2〜図4を参照しつつ説明する。なお、図2は前記各見切り部の横見切り部4a′,4b,4c′の形成方法を示し、図3,図4は前記縦見切り部4a′′,4c′′の形成方法を示す。
【0025】
本実施例における樹脂成形金型は、コア型5と、キャビティ型6とで構成されている。前記キャビティ型6は矢印D方向(型抜き方向)に進退可能に配設されている。また前記コア型5は、固定配置された固定コア5aと、前記見切り部4a〜4cの必要な見切り部厚さに応じた寸法αだけスライド可能に配置された押切コア5bとで構成されている。前記押切コア5bのスライド方向は、ギャビティ型6の型抜き方向(D方向)と同じ方向に設定されている。
【0026】
ここで前記型抜き方向及びスライド方向は、D方向と前記見切り部4a〜4cの表面との角度θができるだけ大きくなるように設定される。この角度θが大きい程前記押切コア5bのスライド両αに対する見切り部の肉厚を厚く形成できる。本実施例のように、見切り部の一部が傾斜している場合、この傾斜部分の表面と上記D方向とのなす角度を大きくすることにより該傾斜部分の厚さdを確保できる。
【0027】
なお、前記押切コア5bのスライド方向は、必ずしも型抜き方向と同じに設定する必要はない。この押切コア5bのスライド方向は、前記見切り部として必要な厚さが確保可能な方向に設定しても良い。
【0028】
本実施例1では、先ず、図4に示すように、上部コアパネル2を樹脂成形するために、押切コア5bを前進させてその型面5cを固定コア5aの型面5dに対して連続面とする。このとき、押切コア5bの型面5cの仕切部5c′とキャビティ型6の型面6aの仕切部6a′とを当接させる。このようにして固定コア5a,押切コア5bの型面5c,5d及びキャビティ型6の型面6aで囲まれた空間がキャビティC1となり、該ギャビティC1内にダーク色の樹脂を射出することにより例えば黒色の上部コアパネル2が形成される。なお、図4において、前進位置にある押切コア5bの型面5c′′とキャビティ型6の型面6a′′とで囲まれた空間Aは、前記キャビティC1との連通が前記仕切部5c′,6a′により遮断されているので、該空間A内に樹脂が供給されることはない。図2においても同様であり、押切りコア5bを前進させた状態で上部コアパネル2を成形する。
【0029】
続いて、図3に示すように、押切コア5bをαだけ後退させることにより、該押切コア5bの型面5c,前記成形された上部コアパネル2の内面2dとで見切り部キャビティC2が形成され、また押切コア5bの型面5c′′あるいは固定コア5aの型面5d′(図2の場合)とキャビティ型6の型面6a′′とでキャビティC3形成され、これらのキャビティC2,C3に高明度色の樹脂を供給することにより例えばベージュ色の下部コアパネル3が形成される。またこの際に、見切り部キャビティC2に供給された樹脂が上部コアパネル2の内面2dに溶着し、前記見切り部4a〜4cが形成され、上部コアパネル2と下部コアパネル3とが一体化する。
【0030】
ここで、前記各見切り部4a〜4cの肉厚は、スライドコア5bのスライド量αと、該見切り部の傾斜部分の表面と前記スライド方向Dとの成す角度θとによって決定される。少ないスライド量で肉厚を厚くするには、前記角度θをできるだけ大きくする必要があり、具体的に45°以上とすることが望ましい。従って、本実施例における縦壁延長部3dでは、横延長面3c′′を下部コアパネル3の部品取付け面3′に対して可能な限り面一となるように形成し、もって前記角度θを大きく確保することが望ましい。
【0031】
このように、本実施例では、前記下部コアパネル3に左,右の縦壁3c,3cを形成し、該各縦壁3cに縦壁延長部3dを形成し、該縦壁延長部3dを、前記上部コアパネル2の左,右端部2c,2cを左,右から囲むように前記部品取付け面3′を延長してなる横延長面3′′と、縦壁3cを延長してなる縦延長面3c′とを有する構成とした。そのため、前記左側、右側の見切り部4a,4bに、前記部品取付け面3′に沿って概ね連続面をなすように延びる縦見切り部4a′′,4c′′を形成でき、縦壁部3cを形成しながら、上部,下部コアパネル2,3の境界縁部2e,3eを、これの全長に渡って結合でき、両者の結合剛性を向上できる。
【0032】
また上部,下部コアパネル2,3を二色成形によって確実に一体形成できるので、インパネコア1が縦壁3cを有する場合にも、塗装工程を不要としながら、上部,下部コアパネル2,3を所望の色の樹脂で形成でき、色分けが可能となる。
【0033】
また、前記見切り部4a〜4cにおいては、上部コアパネル2の境界縁部2eの裏面に下部コアパネル3の、前記押切コアスライド寸法αに応じた厚さの境界縁部3eが重合するので、それだけ肉厚が厚くなり、補強リブを不要にしながら、十分な剛性を確保できる。
【0034】
なお、前記実施例では、下部コアパネル3の縦壁3cに縦壁延長部3dを上方に延びるように形成し、該縦壁延長部3dの横延長面3′′と上部コアパネル2の左,右端部2cとで縦見切り部4a′′,4c′′を形成した場合を説明したが、本発明では、縦見切り部を上部コアパネル2から下方に延びるように形成しても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 インパネコア
2,3 上部,下部コアパネル(第1,第2コアパネル)
2′,3′ 部品取付け面
2c,2c コアパネルの左,右端部
2e,3e 境界縁部
3′′ 横延長面(延長面)
3c 縦壁
3d 縦壁延長部
4a〜4c 見切り部
4a′,4b,4c′ 横見切り部
4a′′,4c′′ 縦見切り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びる部品取付け面を有する第1コアパネルと第2コアパネルとを、両者の境界縁部を二色成形により互いに重ねて結合して見切り部とすることにより一体形成してなるインパネコアを有する自動車のインパネ装置であって、
前記第1,第2コアパネルの何れか一方のコアパネルに、前記部品取付け面の左,右端部を左,右のドアの内張り面に面するように屈曲させてなる縦壁を形成し、
該縦壁に、前記何れか他方のコアパネルの左,右端部を囲むように前記部品取付け面を延長してなる延長面を有する縦壁延長部を形成し、
前記見切り部は、前記左,右の縦壁間に位置し、車幅方向に延びる横見切り部と、該横見切り部に続いて前記延長面に沿って延びる縦見切り部とを有する
ことを特徴とする自動車のインパネ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−158203(P2012−158203A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17215(P2011−17215)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】