自動車のカウル構造
【課題】溝部からの排水を調整しながら、カウルトップカバーの溝をなす部分がフロントガラスに設けられた突起部と干渉するのを抑制することが可能な自動車のカウル構造を得る。
【解決手段】カウルトップカバー1の上端縁に形成された溝部9をなす後壁部11に、フロントガラスの位置決め部材を回避すべく切欠部15が形成され、カウルトップカバー1に、当該切欠部15の後側および下側を囲むように後壁部11から後方に膨出された水受カバー16が一体に形成されるとともに、この水受カバー16に水抜孔17が形成される。
【解決手段】カウルトップカバー1の上端縁に形成された溝部9をなす後壁部11に、フロントガラスの位置決め部材を回避すべく切欠部15が形成され、カウルトップカバー1に、当該切欠部15の後側および下側を囲むように後壁部11から後方に膨出された水受カバー16が一体に形成されるとともに、この水受カバー16に水抜孔17が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルームの後部上方にカウルトップカバーが架設されている自動車がある。この場合、カウルトップカバーの上端部はフロントガラスを支持するとともに、その下端部はエンジンルームを覆うフードの下方に配置されて隔壁の一部として機能している。
【0003】
かかる構成では、カウルトップカバーの上端部に、フロントガラスを支持する溝部が形成される場合がある。この場合、フロントガラスの下端縁が溝部内に挿入される。
【0004】
この溝部は、フロントガラスの下端縁を挟持する機能の他、水を排水する機能を担う場合があり、カウルトップカバーの下方に配置された部品が被水しないようにした構成が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】実開平2−40675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フロントガラスの裏面(車室内側の面;後面)の下端縁近傍には、当該フロントガラスを組み付ける際の位置決めに供するため、小さな突起部を有する位置決め部材が固定されている場合がある。
【0006】
この場合、位置決め部材がカウルトップカバーの溝部をなす後壁部に干渉しないようにするには、当該後壁部に切欠を形成すればよい。
【0007】
しかしながら、このような切欠を形成すると、当該切欠から溝内の水が漏れて、カウルトップカバーの下方に配置された部品が被水してしまう虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、溝部からの排水を調整しながら、カウルトップカバーの溝をなす部分がフロントガラスに設けられた突起部と干渉するのを抑制することが可能な自動車のカウル構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明にあっては、車幅方向に架設されるカウルトップカバーの後縁の上部に、車幅方向に沿って上方に開口する溝部が形成され、該溝部内にフロントガラスの下端縁が挿入され、上記溝部を形成する後壁部の上縁に、フロントガラスに固定された位置決め部材との干渉を回避する切欠部が形成される自動車のカウル構造において、上記カウルトップカバーに、上記切欠部の後側および下側を囲むように上記後壁部から後方に膨出された水受カバーが一体に形成され、上記水受カバーに水抜孔が形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明にあっては、上記水受カバーをなす側壁部の車幅方向両端部にスリットが形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明にあっては、上記後壁部に、上記切欠部より深い排水用切欠が形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明にあっては、上記排水用切欠が、上記後壁部のうち上記水受カバーによって覆われる部分の車幅方向両端部に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明にあっては、上記水受カバーをなす底壁部の一部が下方に向けて膨出されて下側膨出部が形成され、上記水抜孔が上記下側膨出部に形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明にあっては、上記下側膨出部の上記カウルトップカバーとの接続端部に、第2のスリットが形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明にあっては、上記水抜孔の開口方向が、上記カウルトップカバーの表裏の型抜き方向と略一致していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、切欠部から漏出した水を水受カバーで受けて、適切な位置に形成した水抜孔から排出させることができるため、カウルトップカバーの下方に配置された部品が被水するのを抑制することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、スリットを設けた分、カウルトップカバーの剛性を低くすることができる。カウルトップカバーの剛性が高いと、溝部をなす壁部から当該溝部に挿入されたフロントガラスに局所的に外力(摩擦力等)が作用して(すなわちカウルトップカバーが突っ張って)、フロントガラスの内部応力を増大させる場合があるが、本発明によれば、このような状態となるのが抑制されて、フロントガラスの内部応力が増大するのが抑制される。
【0018】
請求項3の発明によれば、切欠部より深く切り欠かれた排水用切欠によって、溝部から水受けカバー内により確実に水を導入することができる上、排水用切欠を形成した分、カウルトップカバーの剛性をより一層低くすることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、車幅方向両側から水受カバーに向けて到来する水を、より確実に当該水受カバー内に導入することができる上、排水用切欠を形成する区間が増大して、カウルトップカバーの剛性をより一層低くすることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、水受カバーに導入された水を下側膨出部に集めて、水抜孔から排出することができるため、水受カバー内に導入された水を所定経路でより確実に排出することができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、第2のスリットが形成されている分、カウルトップカバーの剛性をさらに低くすることができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、カウルトップカバーを成形する際に、水抜孔を比較的容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)図1は、第1実施形態にかかるカウルトップカバーの斜視図、図2は、図1のSA−SA断面図、図3は、カウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方から見た斜視図、図4は、カウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方の図3とは別の角度(より低い位置)から見た斜視図、図5は、溝部および水受カバーをそれらの開口方向から見た斜視図、図6は、図7のSB−SB断面図、図7は、カウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方から見た側面図、図8は、図6のSC−SC断面図、図9は、図7のSD−SD断面図、図10は、図7のSE−SE断面図、図11は、図7のSF−SF断面図、図12は、図7のSG−SG断面図である。なお、各図中、FRは車両前方、RRは車両後方、UPは上方を示す。
【0024】
カウルトップカバー1は、フロントガラス2と、エンジンルームを覆うフード(図示せず)との間で車幅方向に延設される略帯状の部材である。このカウルトップカバー1は、比較的剛性の高い樹脂材料(例えばABS樹脂、変性PPO樹脂等)によって成形されている。なお、このカウルトップカバー1の前端縁には立壁3が形成されており、カウルトップカバー1の一般部には、外気を車内に導入するための空気導入孔4が形成されており、また、その右側と中央の二カ所にはワイパーモータ5用の開口部6が形成されている。
【0025】
カウルトップカバー1の一般部は前下がりの姿勢で設置されている。そして、このカウルトップカバー1の後縁部7には、その後面側に断面L形の張出壁部8が車幅方向に沿って形成されており、後縁部7と張出壁部8とで上方に開口して車幅方向に沿って伸びる溝部9が形成されている。この張出壁部8は、底壁部10と後壁部11とから構成されており、カウルトップカバー1の一般部が前下がりの姿勢であるため、後壁部11は溝部9の下側に位置することになる。そして、この溝部9内にフロントガラス2の下端縁が挿入され、シール材12によってシールされる。
【0026】
この溝部9は、上述したようにフロントガラス2の下端縁を支持する機能の他、カウルトップカバー1の後縁部7とフロントガラス2との隙間から侵入した水Wを捕捉して適宜に排水させる排水路としての機能も担っている。
【0027】
ところで、溝部9に支持されるフロントガラス2の下端縁近傍の裏面(後面)には、組み付けの際の位置決め等に利用される例えば樹脂製の位置決め部材13が固定されている。この位置決め部材13は、下端縁に沿って長い長円状の台座部13aと、台座部13aから垂直に伸びるピン部14とを有している(図2,図8参照)。
【0028】
そして、溝部9をなす後壁部11のうち、位置決め部材13の台座部13aに対応する範囲の後縁(上縁)には、当該台座部13aとの干渉を回避するための切欠部15が形成されている。
【0029】
本実施形態では、この切欠部15が開口部6の上方に位置している。したがって、何らの対策を施さなければ(すなわち水受カバー16を設けなければ)、溝部9を流れる水が切欠部15から漏れ、開口部6近傍に配置されるワイパーモータ5が被水する虞がある。
【0030】
その対策として、本実施形態にかかるカウルトップカバー1には、切欠部15の後側および下側を囲むように後壁部11から後方に膨出された水受カバー16が一体に形成されている。
【0031】
水受カバー16は、底壁部16aと側壁部16bとを有している。底壁部16aは溝部9の底壁部10と連なるように設けられており、かつ側壁部16bは切欠部15の後方を平面視で略U字状に覆っており、かかる構成によって、水受カバー16内に、溝部9と略平行で車幅方向に細長く上方(かつ後方)に開口する内部空間が形成されている。
【0032】
また、後壁部11の水受カバー16によって覆われる部位には、排水用切欠20が形成されており、水が、溝部9からこの排水用切欠20を経て水受カバー16内に導入されるようになっている。
【0033】
さらに、この排水用切欠20に対応する位置で底壁部16aの一部が下方に向けて膨出されて下側膨出部19が形成されており、水抜孔17は、この下側膨出部19の下端部(側壁部16bの下端部かつ後端部)に形成されている。かかる構成により、水受カバー16に導入された水が、所定経路でより確実に排出される。
【0034】
この水抜孔17の開口方向は、カウルトップカバー1の型抜き方向A(図6,図11参照)を指向しており、これにより、水抜孔17を、専用のスライド型等を用いることなく、カウルトップカバー1の本体部と同時に比較的容易に形成することができる。なお、水受カバー16や溝部9等は、スライド型を用いて成形される。
【0035】
また、この水抜孔17(すなわち下側膨出部19、ならびに排水用切欠20)は、図3および図6に示すように、開口部6の直上方に対して車幅方向にずらして配置されており、これにより、開口部6に対応して配置されるワイパーモータ5が被水することなく排水できるようになっている。
【0036】
また、本実施形態では、下側膨出部19は、溝部9の底壁部10の一部が下方に向けて凹設された凹設部18と一体的に連設されており、溝部9内の水が、直接的に凹設部18内すなわち下側膨出部19内に導入されるようになっている。
【0037】
ところで、カウルトップカバー1に水受カバー16を一体に形成すると、水受カバー16周辺でカウルトップカバー1の剛性が高くなるが、剛性が高くなりすぎると、溝部9をなす後縁部7および後壁部11から当該溝部9に挿入されたフロントガラス2に局所的に外力(摩擦力等)が作用して(すなわちカウルトップカバー1が突っ張って)、フロントガラス2の内部応力を増大させる場合がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、水受カバー16をなす側壁部16bの車幅方向両端部に切欠状のスリット21,21を形成し、剛性の低減を図っている。さらに、本実施形態では、後壁部11に排水用切欠20を形成することによっても、後壁部11ひいてはカウルトップカバー1の剛性の低減を図っている。このようにカウルトップカバー1の剛性を低くすることで、フロントガラス2の内部応力が増大するのを抑制することができる。
【0039】
以上の本実施形態によれば、切欠部15から漏出した水を水受カバー16で受けて、適切な位置に形成した水抜孔17から排出させることができるため、カウルトップカバー1の下方に配置された部品(ワイパーモータ5等)が被水するのを抑制することができる。
【0040】
(第2実施形態)図13は、第2実施形態にかかるカウルトップカバーの図6相当の断面図である。なお、本実施形態にかかるカウル構造は、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、以下では重複する説明を省略する。
【0041】
本実施形態では、後壁部11に、切欠部より深い排水用切欠20,24が複数形成されている。しかも、これら排水用切欠20,24は、水受カバー23の車幅方向両端部に形成されている。
【0042】
このように排水用切欠20,24を複数設けることで、溝部9からの排水性を向上させることができる上、後壁部11の剛性、ひいてはカウルトップカバー1の剛性をより一層低下させることができる。
【0043】
また、排水用切欠20,24を水受カバー16の車幅方向両端部に設けることで、水受カバー23の車幅方向両側から到来した水をより確実に水受カバー23に導入し、排出することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、排水用切欠20,24の端縁に、水受カバー16側に突出するフランジ部25,25を設けてあり、水が溝部9からこのフランジ部25,25を伝ってより確実に水受カバー16内に導入されるようにしてある。なお、本実施形態では、図13に示すように、フランジ部25,25は、各排水用切欠20,24につき、水の流入量が多い車幅方向一方側の端縁(排水用切欠20については図13の左側の端縁)のみに設けてある。
【0045】
また、フランジ部25,26は、スリット21を覆い隠すことになるため、当該スリット21からの漏水を抑制できるという効果も得られる。
【0046】
なお、本実施形態では、二つの排水用切欠20,24の間に後壁部11を残存させてあり、これにより、必要最低限の排水性を確保しながら、切欠部15が形成された部分におけるフロントガラス2の支持剛性が確保されるようにしている。
【0047】
(第3実施形態)図14は、第3実施形態にかかるカウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方から見た斜視図、図15は、図14のSH−SH断面図、図16は、図14のSI−SI断面図である。なお、本実施形態にかかるカウル構造は、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、以下では重複する説明を省略する。
【0048】
本実施形態では、後壁部11と、水受カバー27の下側膨出部28に連設されて溝部9を下方に凹設して形成された凹設部29との境界に、略C字状のスリット30が形成されており、このスリット30の側外方を隙間を空けた状態で覆うフランジ部32が形成されている。
【0049】
かかる構成によれば、スリット30を設けた分だけ、カウルトップカバー1の剛性をより一層低下させることができ、ひいては、フロントガラス2の内部応力の増大をより一層抑制することができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるカウルトップカバーの斜視図である。
【図2】図1のSA−SA断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるカウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方から見た斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるカウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方の図3とは別の角度(より低い位置)から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかるカウルトップカバーの溝部および水受カバーをそれらの開口方向から見た斜視図である。
【図6】図7のSB−SB断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかるカウルトップカバーのカウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方から見た側面図である。
【図8】図6のSC−SC断面図である。
【図9】図7のSD−SD断面図である。
【図10】図7のSE−SE断面図である。
【図11】図7のSF−SF断面図である。
【図12】図7のSG−SG断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態にかかるカウルトップカバーの図6相当の断面図である。
【図14】第3実施形態にかかるカウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方から見た斜視図である。
【図15】図14のSH−SH断面図である。
【図16】図14のSI−SI断面図である。
【符号の説明】
【0052】
A 型抜き方向
W 水
1,31 カウルトップカバー
2 フロントガラス
7 後縁部
9 溝部
11 後壁部
13 位置決め部材
15 切欠部
16,23,27 水受カバー
17 水抜孔
18,29 凹設部
19,28 下側膨出部
20,24 排水用切欠
21 スリット
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルームの後部上方にカウルトップカバーが架設されている自動車がある。この場合、カウルトップカバーの上端部はフロントガラスを支持するとともに、その下端部はエンジンルームを覆うフードの下方に配置されて隔壁の一部として機能している。
【0003】
かかる構成では、カウルトップカバーの上端部に、フロントガラスを支持する溝部が形成される場合がある。この場合、フロントガラスの下端縁が溝部内に挿入される。
【0004】
この溝部は、フロントガラスの下端縁を挟持する機能の他、水を排水する機能を担う場合があり、カウルトップカバーの下方に配置された部品が被水しないようにした構成が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】実開平2−40675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フロントガラスの裏面(車室内側の面;後面)の下端縁近傍には、当該フロントガラスを組み付ける際の位置決めに供するため、小さな突起部を有する位置決め部材が固定されている場合がある。
【0006】
この場合、位置決め部材がカウルトップカバーの溝部をなす後壁部に干渉しないようにするには、当該後壁部に切欠を形成すればよい。
【0007】
しかしながら、このような切欠を形成すると、当該切欠から溝内の水が漏れて、カウルトップカバーの下方に配置された部品が被水してしまう虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、溝部からの排水を調整しながら、カウルトップカバーの溝をなす部分がフロントガラスに設けられた突起部と干渉するのを抑制することが可能な自動車のカウル構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明にあっては、車幅方向に架設されるカウルトップカバーの後縁の上部に、車幅方向に沿って上方に開口する溝部が形成され、該溝部内にフロントガラスの下端縁が挿入され、上記溝部を形成する後壁部の上縁に、フロントガラスに固定された位置決め部材との干渉を回避する切欠部が形成される自動車のカウル構造において、上記カウルトップカバーに、上記切欠部の後側および下側を囲むように上記後壁部から後方に膨出された水受カバーが一体に形成され、上記水受カバーに水抜孔が形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明にあっては、上記水受カバーをなす側壁部の車幅方向両端部にスリットが形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明にあっては、上記後壁部に、上記切欠部より深い排水用切欠が形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明にあっては、上記排水用切欠が、上記後壁部のうち上記水受カバーによって覆われる部分の車幅方向両端部に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明にあっては、上記水受カバーをなす底壁部の一部が下方に向けて膨出されて下側膨出部が形成され、上記水抜孔が上記下側膨出部に形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明にあっては、上記下側膨出部の上記カウルトップカバーとの接続端部に、第2のスリットが形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明にあっては、上記水抜孔の開口方向が、上記カウルトップカバーの表裏の型抜き方向と略一致していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、切欠部から漏出した水を水受カバーで受けて、適切な位置に形成した水抜孔から排出させることができるため、カウルトップカバーの下方に配置された部品が被水するのを抑制することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、スリットを設けた分、カウルトップカバーの剛性を低くすることができる。カウルトップカバーの剛性が高いと、溝部をなす壁部から当該溝部に挿入されたフロントガラスに局所的に外力(摩擦力等)が作用して(すなわちカウルトップカバーが突っ張って)、フロントガラスの内部応力を増大させる場合があるが、本発明によれば、このような状態となるのが抑制されて、フロントガラスの内部応力が増大するのが抑制される。
【0018】
請求項3の発明によれば、切欠部より深く切り欠かれた排水用切欠によって、溝部から水受けカバー内により確実に水を導入することができる上、排水用切欠を形成した分、カウルトップカバーの剛性をより一層低くすることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、車幅方向両側から水受カバーに向けて到来する水を、より確実に当該水受カバー内に導入することができる上、排水用切欠を形成する区間が増大して、カウルトップカバーの剛性をより一層低くすることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、水受カバーに導入された水を下側膨出部に集めて、水抜孔から排出することができるため、水受カバー内に導入された水を所定経路でより確実に排出することができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、第2のスリットが形成されている分、カウルトップカバーの剛性をさらに低くすることができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、カウルトップカバーを成形する際に、水抜孔を比較的容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)図1は、第1実施形態にかかるカウルトップカバーの斜視図、図2は、図1のSA−SA断面図、図3は、カウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方から見た斜視図、図4は、カウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方の図3とは別の角度(より低い位置)から見た斜視図、図5は、溝部および水受カバーをそれらの開口方向から見た斜視図、図6は、図7のSB−SB断面図、図7は、カウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方から見た側面図、図8は、図6のSC−SC断面図、図9は、図7のSD−SD断面図、図10は、図7のSE−SE断面図、図11は、図7のSF−SF断面図、図12は、図7のSG−SG断面図である。なお、各図中、FRは車両前方、RRは車両後方、UPは上方を示す。
【0024】
カウルトップカバー1は、フロントガラス2と、エンジンルームを覆うフード(図示せず)との間で車幅方向に延設される略帯状の部材である。このカウルトップカバー1は、比較的剛性の高い樹脂材料(例えばABS樹脂、変性PPO樹脂等)によって成形されている。なお、このカウルトップカバー1の前端縁には立壁3が形成されており、カウルトップカバー1の一般部には、外気を車内に導入するための空気導入孔4が形成されており、また、その右側と中央の二カ所にはワイパーモータ5用の開口部6が形成されている。
【0025】
カウルトップカバー1の一般部は前下がりの姿勢で設置されている。そして、このカウルトップカバー1の後縁部7には、その後面側に断面L形の張出壁部8が車幅方向に沿って形成されており、後縁部7と張出壁部8とで上方に開口して車幅方向に沿って伸びる溝部9が形成されている。この張出壁部8は、底壁部10と後壁部11とから構成されており、カウルトップカバー1の一般部が前下がりの姿勢であるため、後壁部11は溝部9の下側に位置することになる。そして、この溝部9内にフロントガラス2の下端縁が挿入され、シール材12によってシールされる。
【0026】
この溝部9は、上述したようにフロントガラス2の下端縁を支持する機能の他、カウルトップカバー1の後縁部7とフロントガラス2との隙間から侵入した水Wを捕捉して適宜に排水させる排水路としての機能も担っている。
【0027】
ところで、溝部9に支持されるフロントガラス2の下端縁近傍の裏面(後面)には、組み付けの際の位置決め等に利用される例えば樹脂製の位置決め部材13が固定されている。この位置決め部材13は、下端縁に沿って長い長円状の台座部13aと、台座部13aから垂直に伸びるピン部14とを有している(図2,図8参照)。
【0028】
そして、溝部9をなす後壁部11のうち、位置決め部材13の台座部13aに対応する範囲の後縁(上縁)には、当該台座部13aとの干渉を回避するための切欠部15が形成されている。
【0029】
本実施形態では、この切欠部15が開口部6の上方に位置している。したがって、何らの対策を施さなければ(すなわち水受カバー16を設けなければ)、溝部9を流れる水が切欠部15から漏れ、開口部6近傍に配置されるワイパーモータ5が被水する虞がある。
【0030】
その対策として、本実施形態にかかるカウルトップカバー1には、切欠部15の後側および下側を囲むように後壁部11から後方に膨出された水受カバー16が一体に形成されている。
【0031】
水受カバー16は、底壁部16aと側壁部16bとを有している。底壁部16aは溝部9の底壁部10と連なるように設けられており、かつ側壁部16bは切欠部15の後方を平面視で略U字状に覆っており、かかる構成によって、水受カバー16内に、溝部9と略平行で車幅方向に細長く上方(かつ後方)に開口する内部空間が形成されている。
【0032】
また、後壁部11の水受カバー16によって覆われる部位には、排水用切欠20が形成されており、水が、溝部9からこの排水用切欠20を経て水受カバー16内に導入されるようになっている。
【0033】
さらに、この排水用切欠20に対応する位置で底壁部16aの一部が下方に向けて膨出されて下側膨出部19が形成されており、水抜孔17は、この下側膨出部19の下端部(側壁部16bの下端部かつ後端部)に形成されている。かかる構成により、水受カバー16に導入された水が、所定経路でより確実に排出される。
【0034】
この水抜孔17の開口方向は、カウルトップカバー1の型抜き方向A(図6,図11参照)を指向しており、これにより、水抜孔17を、専用のスライド型等を用いることなく、カウルトップカバー1の本体部と同時に比較的容易に形成することができる。なお、水受カバー16や溝部9等は、スライド型を用いて成形される。
【0035】
また、この水抜孔17(すなわち下側膨出部19、ならびに排水用切欠20)は、図3および図6に示すように、開口部6の直上方に対して車幅方向にずらして配置されており、これにより、開口部6に対応して配置されるワイパーモータ5が被水することなく排水できるようになっている。
【0036】
また、本実施形態では、下側膨出部19は、溝部9の底壁部10の一部が下方に向けて凹設された凹設部18と一体的に連設されており、溝部9内の水が、直接的に凹設部18内すなわち下側膨出部19内に導入されるようになっている。
【0037】
ところで、カウルトップカバー1に水受カバー16を一体に形成すると、水受カバー16周辺でカウルトップカバー1の剛性が高くなるが、剛性が高くなりすぎると、溝部9をなす後縁部7および後壁部11から当該溝部9に挿入されたフロントガラス2に局所的に外力(摩擦力等)が作用して(すなわちカウルトップカバー1が突っ張って)、フロントガラス2の内部応力を増大させる場合がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、水受カバー16をなす側壁部16bの車幅方向両端部に切欠状のスリット21,21を形成し、剛性の低減を図っている。さらに、本実施形態では、後壁部11に排水用切欠20を形成することによっても、後壁部11ひいてはカウルトップカバー1の剛性の低減を図っている。このようにカウルトップカバー1の剛性を低くすることで、フロントガラス2の内部応力が増大するのを抑制することができる。
【0039】
以上の本実施形態によれば、切欠部15から漏出した水を水受カバー16で受けて、適切な位置に形成した水抜孔17から排出させることができるため、カウルトップカバー1の下方に配置された部品(ワイパーモータ5等)が被水するのを抑制することができる。
【0040】
(第2実施形態)図13は、第2実施形態にかかるカウルトップカバーの図6相当の断面図である。なお、本実施形態にかかるカウル構造は、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、以下では重複する説明を省略する。
【0041】
本実施形態では、後壁部11に、切欠部より深い排水用切欠20,24が複数形成されている。しかも、これら排水用切欠20,24は、水受カバー23の車幅方向両端部に形成されている。
【0042】
このように排水用切欠20,24を複数設けることで、溝部9からの排水性を向上させることができる上、後壁部11の剛性、ひいてはカウルトップカバー1の剛性をより一層低下させることができる。
【0043】
また、排水用切欠20,24を水受カバー16の車幅方向両端部に設けることで、水受カバー23の車幅方向両側から到来した水をより確実に水受カバー23に導入し、排出することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、排水用切欠20,24の端縁に、水受カバー16側に突出するフランジ部25,25を設けてあり、水が溝部9からこのフランジ部25,25を伝ってより確実に水受カバー16内に導入されるようにしてある。なお、本実施形態では、図13に示すように、フランジ部25,25は、各排水用切欠20,24につき、水の流入量が多い車幅方向一方側の端縁(排水用切欠20については図13の左側の端縁)のみに設けてある。
【0045】
また、フランジ部25,26は、スリット21を覆い隠すことになるため、当該スリット21からの漏水を抑制できるという効果も得られる。
【0046】
なお、本実施形態では、二つの排水用切欠20,24の間に後壁部11を残存させてあり、これにより、必要最低限の排水性を確保しながら、切欠部15が形成された部分におけるフロントガラス2の支持剛性が確保されるようにしている。
【0047】
(第3実施形態)図14は、第3実施形態にかかるカウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方から見た斜視図、図15は、図14のSH−SH断面図、図16は、図14のSI−SI断面図である。なお、本実施形態にかかるカウル構造は、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、以下では重複する説明を省略する。
【0048】
本実施形態では、後壁部11と、水受カバー27の下側膨出部28に連設されて溝部9を下方に凹設して形成された凹設部29との境界に、略C字状のスリット30が形成されており、このスリット30の側外方を隙間を空けた状態で覆うフランジ部32が形成されている。
【0049】
かかる構成によれば、スリット30を設けた分だけ、カウルトップカバー1の剛性をより一層低下させることができ、ひいては、フロントガラス2の内部応力の増大をより一層抑制することができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるカウルトップカバーの斜視図である。
【図2】図1のSA−SA断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるカウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方から見た斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるカウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方の図3とは別の角度(より低い位置)から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかるカウルトップカバーの溝部および水受カバーをそれらの開口方向から見た斜視図である。
【図6】図7のSB−SB断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかるカウルトップカバーのカウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方から見た側面図である。
【図8】図6のSC−SC断面図である。
【図9】図7のSD−SD断面図である。
【図10】図7のSE−SE断面図である。
【図11】図7のSF−SF断面図である。
【図12】図7のSG−SG断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態にかかるカウルトップカバーの図6相当の断面図である。
【図14】第3実施形態にかかるカウルトップカバーの水受カバーが形成される部位を後方かつ側方から見た斜視図である。
【図15】図14のSH−SH断面図である。
【図16】図14のSI−SI断面図である。
【符号の説明】
【0052】
A 型抜き方向
W 水
1,31 カウルトップカバー
2 フロントガラス
7 後縁部
9 溝部
11 後壁部
13 位置決め部材
15 切欠部
16,23,27 水受カバー
17 水抜孔
18,29 凹設部
19,28 下側膨出部
20,24 排水用切欠
21 スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に架設されるカウルトップカバーの後縁の上部に、車幅方向に沿って上方に開口する溝部が形成され、該溝部内にフロントガラスの下端縁が挿入され、前記溝部を形成する後壁部の上縁に、フロントガラスに固定された位置決め部材との干渉を回避する切欠部が形成される自動車のカウル構造において、
前記カウルトップカバーに、前記切欠部の後側および下側を囲むように前記後壁部から後方に膨出された水受カバーが一体に形成され、
前記水受カバーに水抜孔が形成されることを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項2】
前記水受カバーをなす側壁部の車幅方向両端部にスリットが形成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車のカウル構造。
【請求項3】
前記後壁部に、前記切欠部より深い排水用切欠が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車のカウル構造。
【請求項4】
前記排水用切欠が、前記後壁部のうち前記水受カバーによって覆われる部分の車幅方向両端部に設けられることを特徴とする請求項3に記載の自動車のカウル構造。
【請求項5】
前記水受カバーをなす底壁部の一部が下方に向けて膨出されて下側膨出部が形成され、
前記水抜孔が前記下側膨出部に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つに記載の自動車のカウル構造。
【請求項6】
前記下側膨出部の前記カウルトップカバーとの接続端部に、第2のスリットが形成されることを特徴とする請求項5に記載の自動車のカウル構造。
【請求項7】
前記水抜孔の開口方向が、前記カウルトップカバーの表裏の型抜き方向と略一致していることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一つに記載の自動車のカウル構造。
【請求項1】
車幅方向に架設されるカウルトップカバーの後縁の上部に、車幅方向に沿って上方に開口する溝部が形成され、該溝部内にフロントガラスの下端縁が挿入され、前記溝部を形成する後壁部の上縁に、フロントガラスに固定された位置決め部材との干渉を回避する切欠部が形成される自動車のカウル構造において、
前記カウルトップカバーに、前記切欠部の後側および下側を囲むように前記後壁部から後方に膨出された水受カバーが一体に形成され、
前記水受カバーに水抜孔が形成されることを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項2】
前記水受カバーをなす側壁部の車幅方向両端部にスリットが形成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車のカウル構造。
【請求項3】
前記後壁部に、前記切欠部より深い排水用切欠が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車のカウル構造。
【請求項4】
前記排水用切欠が、前記後壁部のうち前記水受カバーによって覆われる部分の車幅方向両端部に設けられることを特徴とする請求項3に記載の自動車のカウル構造。
【請求項5】
前記水受カバーをなす底壁部の一部が下方に向けて膨出されて下側膨出部が形成され、
前記水抜孔が前記下側膨出部に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つに記載の自動車のカウル構造。
【請求項6】
前記下側膨出部の前記カウルトップカバーとの接続端部に、第2のスリットが形成されることを特徴とする請求項5に記載の自動車のカウル構造。
【請求項7】
前記水抜孔の開口方向が、前記カウルトップカバーの表裏の型抜き方向と略一致していることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一つに記載の自動車のカウル構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−247224(P2008−247224A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91470(P2007−91470)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]