説明

自動車のサンルーフ用サンシェードパネル

【課題】自動車のサンルーフ用サンシェードパネルを軽量化する。
【解決手段】サンシェードパネル10には、それぞれウレタン発泡体からなる複数の基材層11,12と、複数の基材層11,12の間に接合された第1ガラス繊維補強層13と、複数の基材層の外側にそれぞれ接合された第2、及び第3ガラス繊維補強層14,15と、第2ガラス繊維補強層14の外側に接合された表皮層16と、第3ガラス繊維補強層15の外側に接合された裏面層17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサンルーフにスライド可能に設けられるサンシェードパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の天井部に透明部材を用いたサンルーフが設けられる場合、その車内側には、例えば車両の前後方向にスライド可能なサンシェードパネルが設けられる。この種のサンシェードパネルとしては、例えば、発泡ウレタンからなる半硬質層の両面にウレタン等の熱硬化性樹脂(接着剤)を含浸(塗布)させたガラス繊維マットを貼り合わせたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記のようなサンシェードパネルの剛性は、基材層としての半硬質層と、その両面に接着されたガラス繊維補強層としての役割を持つガラス繊維マットによって確保されている。すなわち、ある厚みを持った基材層の両表面に、外力によってほとんど伸び縮み出来ないガラス繊維補強層を接着剤で接着したサンドイッチ状構造体を作ることによって、基材層両面で耐変形性を確保することができ、全体剛性が保たれる。
【特許文献1】特開2003−53758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今の環境問題、とりわけ省エネルギー問題から、自動車各部品/部位に対して軽量化の要求は益々高まりつつあり、サンシェードパネルに対しても軽量化の要求は強いものがある。
【0005】
ところが、サンシェードパネルはスライド可能に設けられるため、成型天井などのように固定的に設けられる部材に比べて、例えば、3〜4倍程度の剛性が必要とされる。上記のような、従来のサンシェードパネルで剛性を高めるためには、例えば、ガラス繊維補強層を目付量の多いものにしたり、接着剤の塗布量を多くすることが考えられる。しかし、ガラス繊維補強層の目付量を多くして厚みを厚くしたり、接着剤の量を多くすると、重量の大幅な増大を招き、軽量化を図ることができない。
【0006】
また、接着剤の量を多くする場合、表皮側のガラス繊維補強層の接着剤に関しては、表皮材質により差はあるが、例えば25g/m以上になると接着剤が染み出して表皮を黄変させ、商品性を損なう結果となるので、あまり多くできない。接着剤の染み出しを防止するために、染み出し防止用のフイルムを介在させることもあるが、この場合には吸音性能が大きく損なわれる。裏面側のガラス繊維補強層の接着剤に関しては、ある程度の自由度があるが、ガラス繊維補強層の接着剤保持力に限界があり余り多くできない。また、ガラス繊維補強層からはみ出して成形設備や作業者の手等に付着した接着剤が、間接的に表皮に転移して商品性を著しく損なうおそれや、べとつき感が強く出て作業性が悪化するおそれがある。
【0007】
したがって、従来のサンシェードパネルは、軽量化を図り、しかも、吸音性能や商品性、作業性の低下等を招いたりすることなく高い剛性を確保することは困難であるという問題点を有していた。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点を考慮し、基材層の両面にガラス繊維補強層が貼り合わせたサンドイッチ構造を有するサンシェードパネルにおいて、吸音性能や商品性、作業性の低下を招いたりすることなく高い剛性を確保したうえで、軽量化を図ることが容易にできるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、サンシェードパネルにおいて、
それぞれウレタン発泡体からなる複数の基材層と、
該複数の基材層の間に接合された第1ガラス繊維補強層と、
該複数の基材層の外側にそれぞれ接合された第2、及び第3ガラス繊維補強層と、
該第2ガラス繊維補強層の外側に接合された表皮層と、
該第3ガラス繊維補強層の外側に接合された裏面層とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、
請求項1に記載のサンシェードパネルにおいて、
該第2ガラス繊維補強層が、該第1及び第3ガラス繊維補強層よりも薄いことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、
請求項1に記載のサンシェードパネルにおいて、
該第2ガラス繊維補強層と、該表皮層とが、直接接合されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、
請求項1に記載のサンシェードパネルにおいて、
少なくとも該第2ガラス繊維補強層が、ガラス繊維マットからなり、
該ガラス繊維マットが該基材層とウレタン系接着剤で接合されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、
請求項1に記載のサンシェードパネルにおいて、
少なくとも該第2ガラス繊維補強層が、ガラス繊維織物体からなり、
該ガラス繊維の織物体が該基材層とウレタン系接着剤で接合され、
該ガラス繊維織物体を構成するガラス糸の表面が、シラン系処理剤、又はシラン系処理剤と他の表面処理剤との混合剤によって被覆されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、
請求項1に記載のサンシェードパネルにおいて、
少なくとも該第2ガラス繊維補強層が、ガラス繊維フィラメントのガラスペーパーからなり、
該ガラスペーパーの処理剤として、シラン、又はウレタンエマルジョンとミックスされたシラン混合剤からなるシラン系処理剤が使われており、
該ガラスペーパーがウレタン系接着剤で該基材層に接着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、複数の基材層が設けられ、これらの基材層の間、及び外側に、ガラス繊維補強層が接合されることによって、単一の層からなる基材層の両面にガラス繊維補強層が接合される場合に比べて、相対的に剛性を高めることができる。それゆえ、ガラス繊維補強層を薄く(目付量を少なく)したり、接着剤の量を減らすなどして、大幅に軽量化することなどが容易にできる。しかも、接着剤の量が少ないと、表皮層などに接着剤が染み出すのを容易に防止できるので、染み出し防止用のフィルムなどを設ける必要がない。それゆえ、吸音性能を向上させたり、染み出し防止用のフィルムを設ける場合のような、成型時にガスや水蒸気が抜けにくくなることによる弊害を回避することも容易にできる。
【0016】
請求項2の発明では、第2ガラス繊維補強層を第1及び第3ガラス繊維補強層よりも薄くすることによって、表皮層側に接着剤が染み出すのをより確実に防止できる。
【0017】
請求項3の発明では、第2ガラス繊維補強層と、該表皮層とが、直接接合されていることによって、成型時にガスや水蒸気が抜けにくくなることによる弊害が生じることはない。
【0018】
請求項4の発明では、比較的入手しやすいガラス繊維マットを用いてサンシェードパネルを容易に製造することができる。
【0019】
請求項5の発明では、ガラス繊維織物は、ガラス繊維マットに比較して、どの部位をとっても略均一な層となっており、接着剤も略均一に付着できるので、ガラス繊維織物を基材層と略均一に一体化させることが、より容易にできる。また、表面処理剤がシラン系処理剤またはシラン系処理剤と他の表面処理剤との混合剤からなるので、ガラス繊維織物のガラス糸とのからみ性に優れ、且つウレタン系接着剤とのからみ性に優れるので、基材層とガラス繊維織物とが確実に一体化されたものが得られる。
【0020】
請求項6の発明では、ガラスペーパーは、ガラスマットに比較して、どの部位をとっても略均一な層となっており、接着剤も略均一に付着できるので、ガラスペーパーを基材層と略均一に一体化させることが、やはりより容易にできる。さらに、シラン系処理剤でガラスペーパーを製造しているので、ウレタン系接着剤(イソシアネート系接着剤)とガラスペーパーのガラスフィラメントとが良く絡んで接着されるようにすることが容易にできる。
【0021】
上記のような基材層とガラス繊維補強層との積層構造は、特に限定されないが、例えば同じ厚さの2枚のウレタン発泡体の間と両面側とに合計3枚のガラス繊維マット、ガラス繊維織物、又はガラスペーパー等を積層して形成することができる。
【0022】
本発明のガラス繊維織物体の目付量は、少ないと補強層としての強度が不足し、多いと軽量化できない。そこで、具体的には、例えば、チョップドストランドのガラス繊維マットが用いられる場合には、表皮層側は100g/m程度、基材層の間と裏面層側は150g/m程度などとすることができる。
【0023】
基材層とガラス繊維補強層とを接合するためにガラス繊維補強層に塗布等する接着剤の目付量は、例えば、ガラス繊維補強層としてチョップドストランドのガラス繊維マットが用いられる場合には、表皮層側は15g/m程度、基材層の間と裏面層側は20g/m程度などとすることができる。また、接着剤は、ガラス繊維補強層に塗布するのに限らず、基材層の側に塗布(例えば、スプレー塗布)して、ガラス繊維補強層を積層するようにしてもよい。
【0024】
表皮層としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド系の織布または不織布、トリコットとスラブウレタンのラミネート表皮、編物、プラスチックシート、ビニールレザー、ダブルラッセルが挙げられる。
【0025】
基材層としてのウレタン発泡体はシート状であってよく、その厚さは、例えば、4.5mm程度のものを2枚用いることができる。
【0026】
製造方法としては、従来のサンシェードパネルに比べて、材料や枚数が異なるが、各材料を積層し、その積層体を加熱した成形型内に配置して加熱加圧により一体成形する点では、大きな差異はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るサンシェードパネルが用いられる例のサンルーフを示す自動車の天井部の縦断面図である。図2は、サンシェードパネルの積層状態を説明する模式的縦断面図である。
【0029】
サンシェードパネルが用いられるサンルーフの形態は特に限定されないが、図1の例では、ガラス部材が固定的に設けられたサンルーフの例を示している。すなわち、自動車のルーフパネル1に形成された開口部1aには、ガラス部材2が嵌め込まれている。ガラス部材2の周囲の下方側には、サンルーフフレーム3が設けられている。サンシェードパネル10は、ルーフパネル1とサンルーフフレーム3との間に形成される空間内に、図示しないガイドに案内されて、同図に2点鎖線で示す位置との間でスライド可能に設けられる。
【0030】
サンシェードパネル10は、図2に示すような積層構造を有している。すなわち、2層の基材層11,12が設けられ、基材層11,12の間、及び両側には、ガラス繊維補強層13〜15が積層されている。さらに、これらの表面側(図2及び車両の下方側)には、表皮層16が積層されている。一方、裏面側には、裏面層17が積層されている。
【0031】
上記基材層11,12としては、発泡ウレタン(熱成形可能な硬質ウレタンフォームシート)からなるものなどを用いることができる。
【0032】
ガラス繊維補強層13〜15としては、ガラス繊維マットや、ガラス繊維織物、又はガラスペーパー等からなるものなどを用いることができる。
【0033】
より詳しくは、上記ガラス繊維マットとしては、例えば、一般的に知られているように、約10〜15μの直径からなるガラスフィラメントを約80本程度束ねて、収束剤を使って0.8〜1.5mmの繊維束(所謂ロービング)とし、これを50mm程度の長さに切断してチョップドストランドを製造し、マット状にばら撒いて、バインダーを使ってマット形状に形成したものなどが用いられる。
【0034】
ガラス繊維織物としては、例えば次のようにして作製したものなどが用いられる。すなわち、まず、10μ前後のガラス繊維(フィラメント)を数10本束ねてより合わせヤーン(糸)にする。そして、ガラス糸の滑りを良くするための処理としてデンプン系滑り剤を被覆する。このように滑り材を被覆したガラス糸の絡み織り工程に入る。絡み織りについては、知られている織り方であり、この絡み織りの説明は省略するが、具体的には、例えばJIS規格のEL13の絡み織りからなるガラス繊維織物を使用することができる。次に、このガラス糸に滑り剤が被覆されたままで織り込まれたガラス繊維織物を表面処理剤の溶液に浸けて、表面に表面処理剤を被覆する。この表面処理剤としては、ガラス繊維と基材とを接着するウレタン系接着剤及びガラス繊維織物体のガラス糸と相性が良く、両者に良く絡むことが出来れば、特に材料を特定しなくても良いが、例えば、基材がウレタン系フォームからなるサンシェードパネルでは、表面処理剤としてはシラン系表面処理剤、或いはシラン系表面処理剤とウレタン系エマルジョンとの混合剤とすることが好ましい。
【0035】
また、ガラスペーパーとしては、通常にペーパーを製造するように抄紙機を使って湿式で製造したものなどが用いられる。具体的には、例えば、11μ前後の直径で、繊維長が25mm前後のガラスフィラメントを散在させて漉くって紙状に作り、シラン系処理剤で処理してガラスペーパーとして製造する。
【0036】
また、表皮層16としては、不織布等からなる表皮材などを用いることができる。
【0037】
裏面層17としては、不織布とPP(ポリプロピレン)フイルムとの通常のラミネート製裏面材(裏面紙)等からなるものなどを用いることができる。
【0038】
次に、実施形態1のサンシェードパネルの製造方法について説明する。
【0039】
まず、基材層11,12としての2枚の硬質ウレタンフォームシート等を用意する。また、ガラス繊維補強層13〜15としてのガラス繊維マット、ガラス繊維織物、又はガラスペーパー等を用意する。さらに、裏面層17としての裏面紙、及び表皮層16としての表皮材を用意する。
【0040】
これらの成形材を使って、次のような工程でサンシェードパネルを製造する。
【0041】
基材層11,12の間、及び両側に、ガラス繊維補強層13〜15に接着剤を塗布して積層し、次いで、ガラス繊維補強層14の外側に表皮層16、ガラス繊維補強層15の外側に裏面層17を積層し、しかる後、この積層体を加熱した成形型内に配置して加熱加圧により一体成形する。なお、接着剤は、基材層11,12の方に塗布してもよい。
【0042】
ここで、上記ガラス繊維補強層13〜15に塗布される接着剤としては、例えばウレタン系接着剤や、イソシアネート系接着剤などを用いることができる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明に係るサンシェードパネルを製造した場合の実施例について説明する。
【0044】
(実施例1)
実施例1では、基材層11,12用に、単位面積重量150g/m程度の連続気泡を有する熱成形可能な硬質ウレタンフォームシート(厚さ4.5mm)を用意する。
【0045】
基材層11の表面側のガラス繊維補強層14用には、直径0.5mm以下、長さ30〜50mmのガラス繊維を約100g/mの目付で均一に散布し、バインダーで互いに接着したガラス繊維マットを用意する。このガラス繊維マットには、ウレタン系樹脂の接着剤を15g/mの目付けで塗布する。
【0046】
一方、基材層11,12の間、及び基材層12の裏面側のガラス繊維補強層13,15用には、直径0.5mm以下、長さ30〜50mmのガラス繊維を約150g/mの目付で均一に散布し、バインダーで互いに接着したガラス繊維マットを用意する。これらのガラス繊維マットには、ウレタン系樹脂の接着剤を要求される剛性によって20〜60g/m程度の目付けで塗布する。
【0047】
さらに、表皮層16用に、トリコットとスラブウレタンとのラミネート製表皮材、裏面層17用に、目付け30g/mの不織布とPP(ポリプロピレン)フイルムとのラミネート製裏面材を用意する。
【0048】
上記のように用意した各素材を、成形型内に、表皮材−ガラス繊維補強層14用のガラス繊維マット−基材層11用のウレタンフォームシート−ガラス繊維補強層13用のガラス繊維マット−基材層12用のウレタンフォームシート−ガラス繊維補強層15用のガラス繊維マット−裏面材の順で配置して積層する。成形型内で加圧成形するとともに、互いを接着させる。成形接着後、成形品を成形型から取り出し、総厚が10mmとなったサンシェードパネルを製造した。
【0049】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と主に異なるのは、ガラス繊維補強層13〜15として、ガラス繊維マットに代えて、ガラス繊維織物を用いた点である。具体的には、ガラス繊維織物として、EL08Aを用意する。より詳しくは、ガラス糸の滑りを良くするための処理としてデンプン系滑り剤が被覆されて、絡み織りされたJIS規格のEL08Aの絡み織りからなるガラス繊維織物体を用意する。これらガラス繊維織物体を表面処理剤の溶液に浸けて、表面に表面処理剤を被覆する。この表面処理剤としては、シラン系表面処理剤とウレタン系エマルジョンとの混合剤を使用した。これらのガラス繊維織物の目付量は、基材層11の表面側のガラス繊維補強層14用は、23.9g/m、基材層11,12の間、及び基材層12の裏面側のガラス繊維補強層13,15用は、28.9g/mであった。ガラス繊維織物に塗布するウレタン系樹脂の接着剤を12g/mの目付けで塗布する。なお、ガラス繊維補強層14用には接着剤の量を他より少なくしてもよい。
【0050】
また、表皮材としては、70g/mの目付の不織布を用いた。
【0051】
その他は、実施例1と同様な方法で、サンシェードパネルを成形した。
【0052】
(実施例3)
実施例3では、実施例2と異なるのは、ガラス繊維補強層13〜15としてのガラス繊維織物をJIS規格:EL13に変更し、ウレタン系接着剤としてのイソシアネート接着剤を15g/mとした点である。
【0053】
その他は、実施例1と同様な方法で、サンシェードパネルを成形した。
【0054】
(実施例4)
実施例4では、実施例1と主に異なるのは、ガラス繊維補強層13〜15として、ガラスペーパーを用いた点である。具体的には、ガラスペーパーとして、フィラメント径:11μ、長さ:25mmのものを使い、シラン系処理剤(シランにイソシアネートを8:2でエマルジョンした処理剤)を使用して製作したガラス繊維補強材シートを用意する。これらのガラス繊維補強材シートの目付量は、基材層11の表面側のガラス繊維補強層14用は、22g/m、基材層11,12の間、及び基材層12の裏面側のガラス繊維補強層13,15用は、27g/mであった。ガラス繊維補強材シートにイソシアネート系接着剤を15g/mの目付けで塗布する。なお、ガラス繊維補強層14用には接着剤の量を他より少なくしてもよい。
【0055】
また、表皮材としては、70g/mの目付の不織布を用いた。
【0056】
その他は、実施例1と同様な方法で、サンシェードパネルを成形した。
【0057】
(実施例5)
実施例5では、実施例4と異なる点は、ガラス繊維補強層13〜15用のガラスペーパーとして、フィラメント長さ:35mmのものを使い、シラン系処理剤の目付量:52g/mで製作したガラスペーパーを用意する。
【0058】
その他は、実施例1と同様な方法で、サンシェードパネルを成形した。
【0059】
(実施例6)
実施例6では、実施例5と異なる点は、ガラスペーパーを製造する際の処理剤としてシランを使用した点である。
【0060】
その他は、実施例1と同様な方法で、サンシェードパネルを成形した。
【0061】
(実施例7)
実施例7では、実施例5において、ガラスペーパーを製作する際に、ガラスペーパーに対して、ポリエチレン樹脂の繊維を混在させた。ポリエチレン樹脂の繊維は、ガラスフィラメントと同程度の直径で同程度の長さのものを使用した。なお、目付量は、トータルの目付量を実施例5と同じく52g/mとするために、ガラスペーパーの目付量を47g/mとし、ポリエチレン樹脂の繊維の目付量を5g/mとした。
【0062】
その他は、実施例1と同様な方法で、サンシェードパネルを成形した。
【0063】
(比較例1)
比較例1として、実施例1と類似した材料を用い、基材層が単一の層からなるサンシェードパネルを作製した。より詳しくは、基材層用には、実施例1の約2倍の8〜9mmの厚さの1枚の硬質ウレタンフォームシートを用いた。硬質ウレタンフォームシートの両面には、それぞれ約300〜400g/mの目付のガラス繊維マットを用いた。このガラス繊維マットには、ウレタン系樹脂の接着剤を100g/mの目付けで塗布した。
【0064】
さらに、接着剤が表皮層や裏面層に染み出すのを防ぐため、ガラス繊維マットと表皮層及び裏面層との間には、染み出し防止用のフィルムを介在させた。
【0065】
(比較例2〜7)
比較例2〜7として、それぞれ、単一の層からなる基材層の両側にガラス繊維補強層が接合されていることを除き、実施例2〜7と同じ材料を用いて、同様の工程によりサンシェードパネルを作製した。
【0066】
実施例1と比較例1とのサンシェードパネルを対比すると、これらは同等の剛性を有していた。しかし重量に関しては、実施例1のサンシェードパネルは、比較例1に比べて、ガラス繊維補強層13〜15の厚さが薄く、またこれに伴って接着剤の量も少なくできることから、その分軽量化が図られている。
【0067】
また、接着剤の量が少ないことによって、表皮層等への接着剤の染み出し防止用のフィルムなどを設ける必要がない。このため、吸音性能を向上させることもできる。また、比較例1のように染み出し防止用のフィルムを設ける場合には、成型時にガスや水蒸気が抜けにくくなるため、プレスの工夫を必要としたり、表皮材とフィルムを後の工程で別途貼り合わせることを必要としたりすることがあるのに対し、実施例1では、そのような考慮が不要なため、製造工程の簡素化を容易に図ることができる。
【0068】
実施例2〜7と比較例2〜7とのサンシェードパネルを対比すると、基材層を2層に分割し、これらの間にもガラス繊維補強層13を設けることによって、同等以下、又はわずかな重量増加で、剛性を3〜4倍程度などと大幅に高めることができた。それゆえ、比較例2〜7に比べて、サンシェードパネルパネルとして実用化することが容易にできる。また、実施例1のようにガラス繊維補強層13〜15の厚さや接着剤の量をより低減することによって、軽量化することも可能である。
【0069】
なお、上記実施例1等のように、表皮層16側のガラス繊維補強層14を基材層11,12間や裏面層17側のガラス繊維補強層13,15よりも薄くし、これに伴って接着剤の量を少なくする場合には、表皮層16への接着剤の染み出しや凹凸の発生などを、より確実に防止できる。しかし、これに限らず、接着剤の染み出し等を防げる範囲であれば、ガラス繊維補強層13,15と同等の厚さにするなどしてもよい。
【0070】
また、2層の基材層11,12の厚さが互いに等しい例を示したが、これに限らず、異ならせてもよい。また、通常のサンシェードパネルにおいては、基材層11,12を2層構造にすることで十分と考えられるが、基材層を分割することによる剛性向上効果は、3層以上に分割しても同様に得られる。
【0071】
また、基材層11,12として硬質ウレタンフォームシートを用いるとして説明したが、ウレタンフォームシートとしては、いわゆる半硬質と称されるものなども含む。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、自動車のサンルーフにスライド可能に設けられるサンシェードパネル等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係るサンシェードパネルが用いられる例のサンルーフを示す自動車の天井部の縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るサンシェードパネルの積層状態を説明する模式的縦断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 ルーフパネル
1a 開口部
2 ガラス部材
3 サンルーフフレーム
10 サンシェードパネル
11,12 基材層
13〜15 ガラス繊維補強層
16 表皮層
17 裏面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれウレタン発泡体からなる複数の基材層と、
該複数の基材層の間に接合された第1ガラス繊維補強層と、
該複数の基材層の外側にそれぞれ接合された第2、及び第3ガラス繊維補強層と、
該第2ガラス繊維補強層の外側に接合された表皮層と、
該第3ガラス繊維補強層の外側に接合された裏面層とを備えたことを特徴とする自動車のサンルーフ用サンシェードパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のサンシェードパネルにおいて、
該第2ガラス繊維補強層が、該第1及び第3ガラス繊維補強層よりも薄いことを特徴とするサンシェードパネル。
【請求項3】
請求項1に記載のサンシェードパネルにおいて、
該第2ガラス繊維補強層と、該表皮層とが、直接接合されていることを特徴とするサンシェードパネル。
【請求項4】
請求項1に記載のサンシェードパネルにおいて、
少なくとも該第2ガラス繊維補強層が、ガラス繊維マットからなり、
該ガラス繊維マットが該基材層とウレタン系接着剤で接合されていることを特徴とするサンシェードパネル。
【請求項5】
請求項1に記載のサンシェードパネルにおいて、
少なくとも該第2ガラス繊維補強層が、ガラス繊維織物体からなり、
該ガラス繊維の織物体が該基材層とウレタン系接着剤で接合され、
該ガラス繊維織物体を構成するガラス糸の表面が、シラン系処理剤、又はシラン系処理剤と他の表面処理剤との混合剤によって被覆されていることを特徴とするサンシェードパネル。
【請求項6】
請求項1に記載のサンシェードパネルにおいて、
少なくとも該第2ガラス繊維補強層が、ガラス繊維フィラメントのガラスペーパーからなり、
該ガラスペーパーの処理剤として、シラン、又はウレタンエマルジョンとミックスされたシラン混合剤からなるシラン系処理剤が使われており、
該ガラスペーパーがウレタン系接着剤で該基材層に接着されていることを特徴とするサンシェードパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−208607(P2010−208607A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60159(P2009−60159)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000177461)三和工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】