説明

自動車のシートベルト装置

【課題】見栄えを悪化させたり、別部品を追加したりすることなく、シートベルトの車室内での垂れ下がりを防止できる自動車のシートベルト装置を提供する。
【解決手段】リヤピラー(車体側部材)5内に取り付けられ、シートベルト12を通常使用状態では移動自在に支持しつつ常時格納方向に巻き取るリトラクタ11と、前記車体側部材5内に取り付けられ、前記リトラクタ11から引き出したシートベルト12を移動自在に案内支持するベルト中継部材13とを有し、前記車体側部材5の室内側に配置された内装部材7の上縁部7aと天井部材6の側縁部6cとの境界部に、前記シートベルト12を前記ベルト中継部材13を介して車室2内に導くベルト挿通部19が形成され、前記天井部材6の側縁部6cには、該ベルト挿通部19を覆うように車外側に延びる延長部6dが形成され、該延長部6dは前記ベルト中継部材13に当接支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤシートの中央部に着座した乗員を該リヤシートに拘束可能とした自動車のシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、リヤシートの中央部に着座した乗員の拘束性能を高めるために3点式シートベルト装置を備える場合がある。
【0003】
この種の3点式シートベルト装置として、車体側部材内に配置したリトラクタから引き出したシートベルトを、前記車体側部材の車内側に配置された内装部材の挿通孔から車室内に導き、天井部材に取り付けられたベルトガイド部材を介してリヤシートの中央部に案内するようにしている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−341472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来装置では、天井部材とシートベルトとが干渉したり、挿入孔と天井端末の見栄えが悪化する問題が懸念される。このような問題を回避するには、別部材であるベルト挿通部品を付加することが考えられる。しかしベルト挿通部品を付加すると、それだけ部品点数及び組み付け工数が増加するという問題が生じる。この問題を回避するには、シートベルトが内装部材と天井部材との境界付近を挿通するよう構成することも考えられるが、このようにするとシートベルトと天井部材との高さ位置関係が近くなり、天井部材の垂れ下がりによる天井部材とシートベルトとの干渉が懸念される。
【0005】
本発明は、前記従来の実情に鑑みてなされたもので、別部品の追加や見栄えの悪化を来すことなく、天井部材の垂れ下がりによる天井部材とシートベルトとの干渉を防止できる自動車のシートベルト装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、リヤシートの車幅方向中央部に着座した乗員を該リヤシートに拘束可能とした自動車のシートベルト装置であって、車体側部材内に取り付けられ、シートベルトを通常使用状態では移動自在に支持しつつ常時格納方向に巻き取るリトラクタと、前記車体側部材内に取り付けられ、前記リトラクタから引き出したシートベルトを移動自在に案内支持するベルト中継部材とを有し、前記車体側部材の室内側に配置された内装部材の上縁部と天井部材の側縁部との境界部に前記シートベルトを前記ベルト中継部材を介して車室内に導くベルト挿通部が形成され、前記天井部材の側縁部には、該ベルト挿通部を覆うように車外側に延びる延長部が形成され、該延長部は前記ベルト中継部材に当接支持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るシートベルト装置によれば、内装部材の上縁部と天井部材の側縁部との境界部からシートベルトを車室内に導いたので、別個にベルト挿通部品を設ける必要がなく、部品点数及び組み付け工数の増加を防止できる。
【0008】
また天井部材の側縁部にベルト挿通部を覆うように延びる延長部を形成したので、ベルト挿通部から天井部材の縁部が見えるおそれがなく、見栄えの悪化を防止できる。
【0009】
さらにまた、前記延長部をベルト中継部材に当接させたので、該延長部をベルト中継部材により位置決め支持することができ、天井部材の内装部材に対する位置を安定させることができる。その結果ベルト挿通部を必要最小限の大きさにすることができ、この点からも見栄えの悪化をより一層確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1ないし図6は、本発明の一実施形態による自動車のシートベルト装置を説明するための図であり、図1,図2はリヤシートに配設されたシートベルト装置の装着状態を示す斜視図、図3は車内側から見たシートベルト装置の斜視図、図4はシートベルト装置の断面図(図3のIV-IV線断面図)、図5は車両前方から見たシートベルト装置の部品構成図、図6は天井部材の底面図である。
【0012】
図において、1は自動車の車室2に配設されたベンチ型の3人掛けリヤシートを示している。該リヤシート1は、シートクッション3と、該シートクッション3により着座位置と前倒位置との間で回動可能に支持されたシートバック4とを備えている。
【0013】
前記車室2は、リヤシート1の左,右側方に上下方向に延びるよう配設されたリヤピラー(車体側部材)5,5と、該左,右のリヤピラー5の上端間に配設された天井部材6と、下端間に配設されたフロア部材(不図示)とで囲まれた空間により構成されている。
【0014】
前記リヤピラー5の前側にはリヤドア(不図示)が配設され、後側にはバックドアが(不図示)が配設されている。またリヤピラー5の下縁部には、後輪(不図示)の上方を覆うホイールハウス部5cが形成されている(図3参照)。
【0015】
前記リヤピラー5は、車外側に配設されたアウタパネル5aと、該アウタパネル5aの内側に配設されたピラーリインホース5bとで上下方向に延びる閉断面を形成した構造を有する。
【0016】
前記リヤピラー5の車室2側には、樹脂製の内装部材7が該リヤピラー5の上半部を覆うように配設されている。該内装部材7はアウタパネル5a,ピラーリインホース5bに取り付けられている。
【0017】
前記天井部材6は、プレス成形により製造されたものであり、発泡スチロール樹脂等からなる天井基材6aに不織布等からなる表皮6bを貼着した構造を有する。
【0018】
前記天井部材6は、これの上側に配置されたルーフ部材(不図示)に取り付けられている。該天井部材6の左,右側縁部6cには、前記内装部材7の上縁部7aが該左,右側縁部6cを覆うように当接している。
【0019】
前記リヤシート1には、該リヤシート1の車幅方向中央部1aに着座した乗員を車両衝突時に該リヤシート1に拘束する3点式のシートベルト装置10が配設されている。
【0020】
前記シートベルト装置10は、リヤピラー5内の下部に取り付けられたリトラクタ11と、該リトラクタ11に出し入れ自在に巻回されたシートベルト12と、前記リヤピラー5内の上部に取り付けられ、前記リトラクタ11から引き出されたシートベルト12を移動自在に案内支持するベルト中継部材13と、前記車室2内の天井部材6に配置され、前記シートベルト12をリヤシート1の車幅方向中央部1aに案内するガイドハンガ部材14とを有する。
【0021】
また前記シートベルト装置10は、リヤシート1の車幅方向中央部1aに配置された左,右一対の第1バックル20及び第2バックル21を有し、該第1バックル20,第2バックル21は、不図示のシートフレーム又はフロア部材に固定されている。
【0022】
前記シートベルト12は、該シートベルト12の先端部に移動不能に装着された第1タングプレート8と、前記シートベルト12に移動自在に装着された第2タングプレート9とを有する。
【0023】
前記リトラクタ11は、シートベルト12を通常使用状態では自由な移動を許容しつつ、常時格納方向に巻き取り、車両の衝突によってシートベルト12に所定の加速度以上の引っ張り力が作用すると該シートベルト12を移動不能にロックする。
【0024】
前記ベルト中継部材13は、板金製のものからなり、前記天井部材6と内装部材7との境界部に臨む位置に配置されている。
【0025】
前記ベルト中継部材13は、下向きに開口する略コ字形状のものであり、詳細には、前記リヤピラー5のピラーリインホース5bの内側壁面にボルト15により固定されたベース部13aと、該ベース部13aの上縁から車内側に略平坦面をなすよう延びる上壁部13bと、該上壁部13bの内縁から下方に延びる縦壁部13cとを有する。前記ボルト15は、縦壁部13cに干渉することなく、車室2内の斜め下方から取り付けられている。
【0026】
該縦壁部13cには、シートベルト12が挿通可能な矩形状の開口13dが形成され、該開口13dの周縁部は樹脂部材16により囲まれており、該樹脂部材16にシートベルト12が摺接している。
【0027】
前記ガイドハンガ部材14は、天井部材6の車幅方向中央付近に配置されており、該天井部材6を貫通して前述のルーフ部材に固定ボルト17により固定されている。
【0028】
前記ガイドハンガ部材14は、シートベルト12をリヤシート1の車幅方向中央部1aに上下方向に移動自在に案内するベルトガイド部14aと、不使用時に前記第1タングプレート8及び第2タングプレート9を格納保持するタングプレート保持部14bとを有する。
【0029】
前記天井部材6と内装部材7との境界部には、ベルト挿通部19が形成されている。該ベルト挿通部19は、内装部材7の上縁部7aをシートベルト12が挿通可能な大きさに切り欠いて形成されたものであり、該上縁部7aと天井部材6の側縁部6cとで囲まれている。
【0030】
前記ベルト挿通部19は、前記ベルト中継部材13の開口13dと略同じ高さに位置し、かつ車幅方向に見て、該開口13dに略対向するよう配置されている。
【0031】
前記天井部材6の側縁部6cには、舌形状の延長部6dが形成されており、該延長部6dは、前記ベルト挿通部19の上側を覆うように車外側に延びている。
【0032】
前記延長部6dは、前記ベルト中継部材13の上壁部13bの上面に当接しており、該上壁部13bにより下方への移動が阻止されている。
【0033】
シートベルト12を着用するには、第1タングプレート8を、ガイドハンガ部材14から引き下ろして第1バックル20に装着するとともに、第2タングプレート9を第2バックル21に装着する。これにより乗員の肩部及び腰部はシートベルト12により移動可能に支持される。車両の衝突によってシートベルト12に所定の加速度以上の引っ張り力が作用すると、該シートベルト12が移動不能にロックされ、乗員はリヤシート1に拘束される。
【0034】
シートベルト12を格納するには、第1バックル20と第2バックル21のロック解除ボタン(不図示)を押して第1タングプレート8と第2タングプレート9を外し、該各タングプレート8,9をガイドハンガ部材14のタングプレート保持部14bに格納する。この場合、ベルト挿通部19が天井部材6と略同じ高さに位置するためリトラクタ11により巻き取られたシートベルト12は、天井部材6に近接した位置にて緊張状態に保持されることとなる。そのためシートベルト12がベルト不使用時に車室2内に垂れ下がるのを防止でき、シートベルトが後方視界の邪魔になったり、見栄えを悪化させたりすることを回避できる。
【0035】
本実施形態では、内装部材7の上縁部7aと天井部材6の側縁部6cとの境界部からシートベルト12を車室2内に導いたので、別個にベルト挿通部品を設ける必要がなく、部品点数及び組付け工数の増加を防止できる。
【0036】
また本実施形態では、天井部材6の側縁部6cにベルト挿通部19の上側を覆うように車外側に延びる延長部6dを形成したので、ベルト挿通部19から天井部材6の縁部が見えることはなく、見栄えの悪化を防止できる。これにより別部品で天井部材6の縁部を覆い隠す必要がなく、部品点数や組み付け工数の増加を回避できる。
【0037】
本実施形態では、前記延長部6dをベルト中継部材13の上壁部13bに当接させることにより、該延長部6dの下方への移動を阻止したので、該延長部6dをベルト中継部材13により位置決め支持することができ、ひいてはベルト挿通部19をシートベルト12が挿通可能な必要最小限の大きさにすることができ、見栄えの悪化をより一層確実に防止することができる。
【0038】
即ち、天井部材6と内装部材7との取付け位置は通常互いに依存関係がないことから、内装部材7に対する天井部材6の高さ位置がばらつく場合がある。このような天井部材6と内装部材7の間の取付け位置のばらつきを吸収するためには、ベルト挿通部19の開口面積を大きくすることが必要となる。これに対して、本実施形態では、天井部材6の延長部6dをベルト中継部材13に支持させたので、天井部材6の側縁部6cと内装部材7の上縁部7aと位置精度を高めることができ、それだけベルト挿通部19の開口寸法を小さくできる。
【0039】
本実施形態では、ベルト中継部材13を、下方に開口するコ字形状とし、該ベルト中継部材13のベース部13aをピラーリインホース5bにボルト15により固定したので、ベルト中継部材13を天井部材6に干渉することなく容易に取り付けることができる。即ち、天井部材6を組み付けた後に、ベルト中継部材13を取り付けるには、該ベルト中継部材13を下方から挿入して延長部6dに当接させた状態でボルト15により固定することができる本実施形態のような形状とすることが必要となる。
【0040】
なお、ベルト中継部材を、天井部材の組付け前に取り付ける場合には、該ベルト中継部材の形状を自由に選択できる。例えば、ベース部を上壁部の外縁から上方に延びるよう形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態による自動車のシートベルト装置の着用状態の斜視図である。
【図2】前記シートベルト装置の着用状態の斜視図である。
【図3】車内側から見た前記シートベルト装置の斜視図である。
【図4】前記シートベルト装置の断面図(図3のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記シートベルト装置の部品構成図である。
【図6】前記実施形態の天井部材の底面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 リヤシート
2 車室
5 リヤピラー(車体側部材)
6 天井部材
6c 側縁部
6d 延長部
7 内装部材
7a 上縁部
10 シートベルト装置
11 リトラクタ
12 シートベルト
13 ベルト中継部材
19 ベルト挿通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤシートの車幅方向中央部に着座した乗員を該リヤシートに拘束可能とした自動車のシートベルト装置であって、
車体側部材内に取り付けられ、シートベルトを通常使用状態では移動自在に支持しつつ常時格納方向に巻き取るリトラクタと、
前記車体側部材内に取り付けられ、前記リトラクタから引き出したシートベルトを移動自在に案内支持するベルト中継部材とを有し、
前記車体側部材の室内側に配置された内装部材の上縁部と天井部材の側縁部との境界部に、前記シートベルトを前記ベルト中継部材を介して車室内に導くベルト挿通部が形成され、
前記天井部材の側縁部には、該ベルト挿通部を覆うように車外側に延びる延長部が形成され、該延長部は前記ベルト中継部材に当接支持されていることを特徴とする自動車のシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−29289(P2009−29289A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196007(P2007−196007)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】