説明

自動車のジャッキ固定構造

【課題】 部品点数の増加を招くことなくジャッキを的確にフロアパネルに固定できる自動車のジャッキ固定構造を提供する。
【解決手段】 チャイルドシート10を固定するための固定部材14の固定バー13として、係止部33を備えるものを用意する。そして、ジャッキ25を所定の設置位置に配置した上で、ジャッキ25を伸長動させ、係止部33にジャッキ25の係合溝31を係合させ、係止部33とフロアパネル2とでジャッキ25を挟持する。これにより、部品点数が増加することを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のジャッキ固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、自動車においては、チャイルドシートの取付けに対して考慮が払われている。例えば、ISO−FIX方式のチャイルドシートにおいては、自動車側に設けられた専用固定バーにチャイルドシートのコネクタを差し込むだけで取付けられることになっており、この方式を利用することにより、自動車において、誰でもが簡単にチャイルドシートを着脱可能に取付けることができることになる。
【0003】
ところで、自動車においては、用具としてジャッキが常備されており、このジャッキは、非使用時においては、自動車内に的確に固定(保持)しておく必要がある。このため、自動車においては、ジャッキの固定構造が設けられており、そのジャッキの固定構造として、例えば特許文献1に示すように、車両シートの下方におけるフロアパネルにジャッキ格納ブラケットを固設し、そのジャッキ格納ブラケットにジャッキを保持した状態で格納するもの等が提案されている。
【特許文献1】特開2002−160589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ジャッキ固定構造においては、ジャッキを自動車内に的確に固定するために、固定用具としてジャッキ格納ブラケットが特別に必要となり、その固定用具なしには、ジャッキを自動車に固定することはできない。このため、このような固定構造においては、ジャッキ格納ブラケット等の固定用具が部品点数の増加を招いている。
【0005】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、部品点数の増加を招くことなくジャッキを的確にフロアパネルに固定できる自動車のジャッキ固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)においては、
車体後部に設けられた荷室前方に、シートが車幅方向に延びるようにして設けられ、前記フロアパネルに、前記シートの後側近傍において、該シートに対してチャイルドシートを着脱可能に固定するための固定部材が固定され、前記フロアパネル上にジャッキが着脱可能に固定される自動車のジャッキ固定構造であって、
前記固定部材に、前記荷室側において前記ジャッキに係合するための係止部が備えられ、
前記ジャッキに、前記係止部が係合するための係合部が備えられている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2以下の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載された発明によれば、チャイルドシートを固定するための固定部材として、係止部を備えるものが用いられていることから、その係止部とジャッキの係合部とを係合させて、ジャッキをフロアパネル上に固定できることになる。このため、部品点数の増加を招くことなくジャッキを的確にフロアパネルに固定できる自動車のジャッキ固定構造を提供できることになる。
【0008】
請求項2に記載された発明によれば、固定部材が、チャイルドシートを固定するためのチャイルドシート固定部を有している一方、該チャイルドシート固定部よりも車体後方側において係止部を有し、その係止部のうち、ジャッキの係合部に対して係合する係止部分が、フロアパネルを基準として、ジャッキの最大伸長高さよりも低く、且つ該ジャッキの最小伸長高さよりも高くなるように設定されていることから、シートの後側において、ジャッキの伸長動を利用することにより、係止部分とジャッキの係合部とを係合させて、係止部とフロアパネルとによりジャッキを挟持できることになる。このため、この場合にも、部品点数の増加を招くことなくジャッキを的確にフロアパネルに固定できることになる。
【0009】
請求項3に記載された発明によれば、係止部が、係止部分に至る立ち上がり部を有し、その立ち上がり部が、係止部分側に向うに従って上方に向って延びるように傾斜されていることから、ジャッキが、係止部よりも低い高さ状態で、適正な設置位置よりも車体前後方向に多少ずれて配置されたとしても、ジャッキを伸長させるに伴い、係止部の立ち上がり部によりジャッキが案内されて、ジャッキは係止部分に移動することになり、固定部材の係止部とジャッキの係合部とが係合するときにおいて、ジャッキをフロアパネル上の適正な設置位置に位置させることができることになる。
【0010】
請求項4に記載された発明によれば、ジャッキに、その上部において荷受け台部が備えられていると共に、該荷受け台部にシート側において係合部として引っ掛け部が形成されており、係止部の係止部分が、引っ掛け部を下方に向けて押圧するための押圧部と、該押圧部よりも先端側において該引っ掛け部を上方側から包み込むように下方側に折曲される折曲部と、を備えていることから、ジャッキの伸長動を利用することにより、係止部分の押圧部を引っ掛け部に上側から当接させて該押圧部とフロアパネルとでジャッキを挟持できると共に、引っ掛け部が車体後方側に移動することを折曲部により規制できることになり、ジャッキをフロアパネルに的確に固定できることになる。
しかも、係止部(押圧部及び折曲部)がシート側における引っ掛け部に係止させることとしていることから、係止部がシートから荷室側に張り出すことを極力抑制できることになる。
【0011】
請求項5に記載された発明によれば、ジャッキに、その上部において荷受け台部が備えられていると共に、該荷受け台部の上面に、係合部として、係合溝が該荷受け台部全体を横切るようにして形成され、係止部の係止部分が、係合溝内に嵌合される嵌合部と、該嵌合部の延び方向両側から折曲された一対の折曲部と、を備えていることから、単純な構造によって、ジャッキの伸長動を利用して、ジャッキの係合溝に係止部分の嵌合部を嵌合して、その嵌合部とフロアパネルとでジャッキを的確に挟持できるばかりか、一対の折曲部によりジャッキが車体前後方向に移動すること及び係止部を中心に回動することを規制できることになる。このため、ジャッキを一層、確実にフロアパネルに固定できることになる。
【0012】
請求項6に記載された発明によれば、フロアパネルの下面に、固定部材の真下を通るようにしてクロスメンバが設けられていることから、チャイルドシート及びジャッキの支持剛性を高めることができ、さらには、走行時においてジャッキの振動を抑制できることになる。
【0013】
請求項7に記載された発明によれば、シートは、起倒伏可能なシートバッグを備え、係止部の係止部分は、前方への倒伏状態にある前記シートバッグよりも低くされていることから、前方への倒伏状態にあるシートバッグから係止部の係止部分が上方に突出することはなく、その係止部分が、前方への倒伏状態にあるシートバッグの上方空間を含む荷室において、収納性を悪化させることを防止できることになる。
【0014】
請求項8に記載された発明によれば、フロアパネル上に、シートバッグを起倒伏可能に支持するシートブラケットが突設され、シートブラケットが、車幅方向において、ジャッキの配設空間に隣接した状態で配置されていることから、ジャッキがシートブラケット側に移動しても、そのシートブラケットをストッパとして機能させて、そのジャッキの移動を規制できることになる。
【0015】
請求項9に記載された発明によれば、フロアパネルに、ジャッキの配設位置において、該ジャッキの下部を収納できる凹所が形成されていることから、ジャッキをフロアパネル上の設置位置に的確に位置決めできるばかりか、ジャッキの固定時において、その凹所にジャッキの下部を収納して、ジャッキ、係止部の係止部分の設定高さをそれぞれ低くできることになる。これにより、荷室空間におけるジャッキ等の占める空間を減らし、荷室の使用可能空間の拡大を図ることができることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1、図2は、車体の後部構造を示している。この車体の後部構造において、左右一対のサイドフレーム1上にフロアパネル2が配置されている。そのフロアパネル2上には、シートとしてのリヤシート3が車幅方向に延びるようにして設けられており、このリヤシート3は、車室内を、該リヤシート3の前方側の乗員室4と該リヤシート3後方側の荷室5とに区画している。
【0017】
前記リヤシート3は、既知の如く、図1,図2に示すように、シートクッション6とシートバック7とからなる。このうち、シートバック7は、その内部においてフレーム8を内蔵しており、そのフレーム8の下部は、車幅方向の複数個所において、シートブラケット9に回動可能に連結されている。これにより、シートバック7は、シートクッション6に対して起倒伏可能とされ、前方側への倒伏状態においては、シートバック7の背面7aが、略水平状態となることになっている。
【0018】
このリヤシート3には、図3に示すように、ISO−FIX方式に基づき、チャイルドシート10を取付けることができることになっている。このため、チャイルドシート10には、その下部両側面において、コネクタ11がそれぞれ設けられていると共に、その上部において、上部テザーストラップ12が設けられている。一方、車体側においては、フロアパネル2に、固定専用の固定バー13を主要部品とする固定部材14が、その固定バー13をリヤシート3のシートクッション6とシートバック7との間から前方側に現わすことができるように配置した状態で設けられ、車体上部にはテザーアンカーブラケット15が設けられている。これにより、チャイルドシート10をリヤシート3上に取付けるに際しては、固定バー13にチャイルドシート10のコネクタ11を押し込めば、チャイルドシート10の下部が車体側に連結されることになり、チャイルドシート10の上部テザーストラップ12を車両上部のテザーアンカーブラケット15に差し込めば、チャイルドシート10の上部が車体側にワンタッチで連結されることになる。
【0019】
前記固定部材14は、本実施形態においては、2つのチャイルドシート10を取付けることができるようにすべく、図1に示すように、リヤシート3の後側近傍において、4つ設けられている。この4つの固定部材14は、そのうちの2つの固定部材14を一組として用いることにより1つのチャイルドシート10が取付けられることになっており、各組の2つの固定部材14は、車幅方向に、チャイルドシート10の幅に対応した長さをもって離間されている。
【0020】
前記各固定部材14は、図4〜図7に示すように、前述の固定バー13と共に、ブラケット16を備えている。ブラケット16は、フロアパネル2に固定されるフランジ部17と、そのフランジ部17から膨出した形状をもって支持面18を形成する支持部19とを備えている。支持部19における支持面18は、車体前方に向うに従って高くなるように傾斜されており、その支持面18における車体前方側端部は、その支持面18の車体後方側端部よりも高くなっている。この支持面18には、一対の突部20が設けられており、その一対の突部20は、一定間隔だけ離間された状態をもって平行に、支持面18に沿いつつ車体前方側に向って延びている。
【0021】
前記固定バー13は、図4〜図7に示すように、基本的に、対向する一対の支持軸部21と、その一対の支持軸部21を支持面18よりも車体前方側において連結する連結軸部22とを有しており、これらにより、略コ字形状に形成されている。この固定バー13は、一対の支持軸部21の間に前記一対の突部20を挟むようにしつつ、連結軸部22を支持面18よりも車体前方側に突出するように配設されており、その状態は、各支持軸部21を各突部20に溶接等(符号40をもって示す)により固定することにより保持されている。これにより、固定バー13は、車体前方に向うに従って上方に傾斜し、その固定バー13の連結軸部22は、車幅方向に延びるように配置されることになり、その連結軸部22に対して、前述のチャイルドシート10のコネクタ11が連結できることになっている。これら一対の支持軸部21、連結軸部22がチャイルドシート固定部を構成することになる。
【0022】
前記フロアパネル2には、図1,図2,図4〜図7に示すように、比較的浅い凹所23が形成されている。この凹所23は、後述のパンダグラフ形式のジャッキ25の下部を収納して、その長手方向がリヤシート3に沿うように位置決めると共に、その凹所23内に収納されるジャッキの高さを引くして荷室5の使用可能空間をできるだけ拡大することを目的としている。このため、凹所23は、リヤシート3の後側近傍の所定位置において、ジャッキ25の下部に対応して収納可能な形状に形成されている。但し、本実施形態においては、凹所23は、車体前方側において凹所壁を有しておらず、凹所23の底面はそのままフロアパネル2に連なることになっている(図6,図7参照)。この凹所23は、前記複数の固定部材14のうちの固定部材14Aの車体後方側において隣接するように配置されており、凹所23内は、車体前方側において固定部材14Aに臨むことになっている。
【0023】
尚、本実施形態においては、車体右側壁から2番目の固定部材14に隣接して凹所23が形成されているが、これは、パンダグラフ形式のジャッキ25が、車体側壁に干渉せず、しかも、荷室5におけるスペアタイヤ収納凹所24からのスペアタイヤの出し入れに支障を来さないようにする観点から選択されている。
【0024】
また、凹所23の近傍には、前記複数のシートブラケット9のうちのシートブラケット9Aが設けられている。このシートブラケット9Aは、車幅方向内方側において凹所23に隣接して配置されており、このシートブラケット9Aは、前記凹所23と共に、後述のジャッキ25を車幅方向において位置決めを行うと共に、そのジャッキがそのシートブラケット9A側に移動しようとしても、そのジャッキの移動を規制する機能を有している。
【0025】
前記凹所23内には、前述の如く、パンダグラフ形式のジャッキ25の下部が、その長手方向を車幅方向に向けつつ(リヤシート3に沿わせつつ)収納される(図4〜図7参照)。このパンダグラフ形式のジャッキ25は、既知の如く、基台部26と荷受け台部27との間に、リンクを用いて構成された菱形形状のパンダグラフ機構28が介在され、そのパンダグラフ機構28にねじ棒29が関連付けされて、そのねじ棒29を、そのねじ棒29に設けられるハンドルジョイント30を介して回動させることにより、パンダグラフ機構28を上下方向に伸縮動させる構成となっている。これにより、荷受け台部27は、パンダグラフ機構28の伸縮動に基づき上下方向に変位することになる。この荷受け台部27は、その上面が略平坦に形成されているが、自動車のサイドシル等のフランジ部を嵌合保持すべく、その荷受け台部27には、ジャッキ25の幅方向全体に亘って横切るように係合溝31が形成されている。この係合溝31は、上部が開口されているだけでなく、底部に関しても、下方に向けて開口されており、係合溝31内は、パンダグラフ機構28側に向けても開放されている。このため、係合溝31の底縁部は、その係合溝31の延び方向両側における溝端にのみ存在し、その両溝端底縁部32のうち、リヤシート3側に向けられるものが引っ掛け部(係合部)を構成することになる。
【0026】
前記固定部材14Aにおける固定バー13としては、図4〜図7に示すように、他の固定部材14の固定バー13とは異なり、支持軸部21の一方が延長されたものが用いられており、その延長部分を加工することにより係止部33を備えたものとなっている。この係止部33は、車幅方向において、設置位置に位置されるべきジャッキ25の係合溝31と同じ位置に位置しており(本実施形態においては、支持軸部21の延長方向)、その係止部33は、立ち上がり部34と、係止部分35とを有することになっている。
立ち上がり部34は、一方の支持軸部21から車体後方に向うに従って上方に向うように傾斜されており、立ち上がり部34は、フロアパネル2側から立ち上がることになっている。
係止部分35は、車体後方側に折曲させられた押圧部36と、その押圧部36に連続して下方側に折曲された折曲部37とを備えており、これら(係止部33)の高さは、フロアパネル2を基準として、ジャッキ25の最大伸長高さよりも低く、且つ、ジャッキ25の最小身長高さよりも高い高さに設定されている。
【0027】
このため、ジャッキ25をフロアパネル2上に固定しようとする場合には、ジャッキ25を、その長手方向を車幅方向に向けつつ設置位置に位置させ(凹所23にジャッキ25の下部収納)、その状態で、ジャッキ25を伸縮動調整すれば、係止部分35の折曲部37は、係合溝31内において、リヤシート3側の溝端底縁部32と係合してジャッキ25の車体後方側への移動を規制することになり(的確な係止確保)、押圧部36は、リヤシート3側における荷受け台部27の溝端底縁部32に当接して、フロアパネル2と協働することによりジャッキ25を挟持することになる。この結果、ジャッキ25はフロアパネル2に的確に固定されることになる。この場合、リヤシート3側の溝端底縁部32に対して係止部分35を係止させているが、これは、ジャッキ25をフロアパネル2に固定しないときに、係止部33がリヤシート3側から車体後方にできるだけ張り出すことを防止して、荷室5における収納性が低下することを抑制するためである。
【0028】
また、この係止部33における係止部分35の高さは、図1,図7に示すように、前方側に倒伏状態にあるシートバック背面7aよりも低くなるように設定されている。このため、係止部33(係止部分35)が、倒伏状態のシートバック背面7aより上方に突出して、荷室5における収納性を低下させるようなことはない。
【0029】
前記フロアパネル2の下面には、図2,図6,図7に示すように、、前記各固定部材14の真下を通るようにしてクロスメンバ41が設けられている。このクロスメンバ41は、一対のサイドフレーム8間を跨いでおり、各固定部材14の周辺の強度が高められている。このため、チャイルドシート10及びジャッキ25の支持剛性を高めることができ、さらには、走行時においてジャッキ25の振動を抑制できることになる。
【0030】
このような第1実施形態においては、ジャッキ25をフロアパネル2に固定するためには、次のように行われる。
先ず、ジャッキ25の伸長長さを、フロアパネル2と係止部33との間隔よりも短くなるように調整し、その上で、その状態のジャッキ25をフロアパネル2上の凹所23入れ込む。
【0031】
次に、ジャッキ25を伸長させて、その荷受け台部27の係合溝31に係止部33の係止部分35を入り込ませ、その係止部分35とフロアパネル2とでしっかりと挟持する。これにより、ジャッキ25は、フロアパネル2上の所定の設置位置に固定されたことになる。
この場合、ジャッキ25の固定は、上記挟持力だけで十分なものであるが、本実施形態においては、ジャッキ25の車体後方側への移動に対して、凹所23の側壁、折曲部37が規制を図ることになる。また、本実施形態においては、車体前方側において、凹所23の凹所壁が存在しないが、ジャッキ25の車体前方側への移動に関しては、立ち上がり部34が規制することになっている。
【0032】
さらに、凹所23内にジャッキ25の基台部26を収納すれば、それで、ジャッキ25の固定位置が適正な設置位置として決まることになっているが、仮に、凹所23がなく、適正な位置からずれてジャッキ25が配置されても、係止部33の立ち上がり部34により、ジャッキ25を適正な設置位置に固定することができることになる。
すなわち、ジャッキ25がリヤシート3から車体後方側に離れすぎた位置に配置された場合には、ジャッキ25に係止部分35が係止されないことから、直ちに、ジャッキ25の配置位置の誤りを判断できる。また、ジャッキ25が適正な位置から少し車体後方にずれて配置された場合には、折曲部37が押圧部36側へ向けて上方へ傾斜するように立ち上がっているので、ジャッキ25を伸長動させることに伴い、ジャッキ25は、折曲部37により車体前方に押圧されてその方向に移動することになり、係止部分35が係合溝31に適正に係止される。
一方、ジャッキ25の配置位置がシートに近づきすぎている場合には、係止部33の立ち上がり部34が荷受け台部27(溝端底縁部32)に係合し、ジャッキ25を伸長動させることに伴い、ジャッキ25は、立ち上がり部34により車体後方に押圧されてその方向に移動することになり、係止部分35が係合溝31に適正に係止されて、係止部分35とフロアパネル2とがジャッキ25を挟持したときには、ジャッキ25は、適正な設置位置に固定されることになる。
【0033】
したがって、チャイルドシート10を固定するための固定部材14における固定バー13(支持軸部21)の長さを長くして、固定バー13として、係止部33を備えるものを用いれば、特別に固定用具を用意しなくても、その係止部33の係止部分35をジャッキ25の係合溝31に係合させて、ジャッキ25をフロアパネル2上に固定できることになり、部品点数の増加を防ぐことができることになる。
【0034】
図8は第2実施形態を示す。この第2実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号(さらに、特徴部分を示す係止部及びその構成要素については、「’」符号を付す)付してその説明を省略する。
【0035】
この第2実施形態においては、係止部33’の係止部分35’が、前記係合溝31内に全体に亘って嵌合される嵌合部38と、その嵌合部38の延び方向両側から下方側に向うに従って互いに離れるように折曲された一対の折曲部39と、を備えており、その一対の折曲部39の一方が前記立ち上がり部34’に連なることになっている。
これにより、係止部分35’が係合溝31内に嵌合されると、一対の折曲部39が荷受け台部27の両溝端底縁部32に係合し、その一対の折曲部は、フロアパネル2と協働してジャッキ25を挟持すると共に、ジャッキ25の車体前後方向の移動と係止部分35’を中心とする回動を規制することになる。このため、ジャッキ25は、適正な設置位置においてフロアパネル2上に確実に固定されることになる。
【0036】
尚、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましい或いは利点として載されたものに対応したものを提供することをも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態に係る自動車後部におけるジャッキ固定構造を示す斜視図。
【図2】第1実施形態に係るリヤシート近辺の構造を示す縦断面図。
【図3】ISO−FIX方式に基づく、チャイルドシートの取付けを説明する説明図。
【図4】第1実施形態における固定部材を説明する平面図。
【図5】第1実施形態に係る固定部材を用いてジャッキを固定する状態を斜め上方から示す図。
【図6】第1実施形態に係る固定部材とジャッキとの固定関係を説明する説明図。
【図7】前倒し状態のシートバックとジャッキとの高さ関係を示す説明図。
【図8】第2実施形態に係る固定部材とジャッキとの固定関係を説明する説明図。
【符号の説明】
【0038】
2 フロアパネル
3 リヤシート
7 シートバック
9A シートブラケット
10 チャイルドシート
13 固定バー
14 固定部材
23 凹所
25 ジャッキ
27 荷受け台部
31 係合溝(係合部)
32 溝端底縁部(引っ掛け部、係合部)
33 係止部
33’ 係止部
34 立ち上がり部
34’ 立ち上がり部
35 係止部分
35’ 係止部分
36 押圧部
37 折曲部(立ち上がり部)
38 嵌合部
39 折曲部
41 クロスメンバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に設けられた荷室前方に、シートが車幅方向に延びるようにして設けられ、前記フロアパネルに、前記シートの後側近傍において、該シートに対してチャイルドシートを着脱可能に固定するための固定部材が固定され、前記フロアパネル上にジャッキが着脱可能に固定される自動車のジャッキ固定構造であって、
前記固定部材に、前記荷室側において前記ジャッキに係合するための係止部が備えられ、
前記ジャッキに、前記係止部が係合するための係合部が備えられている、
ことを特徴とする自動車のジャッキ固定構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記固定部材が、チャイルドシートを固定するためのチャイルドシート固定部を有している一方、該チャイルドシート固定部よりも車体後方側において前記係止部を有し、
前記係止部のうち、前記ジャッキの係合部に対して係合する係止部分が、前記フロアパネルを基準として、前記ジャッキの最大伸長高さよりも低く、且つ該ジャッキの最小伸長高さよりも高くなるように設定されている、
ことを特徴とする自動車のジャッキ固定構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記係止部が、前記係止部分に至る立ち上がり部を有し、
前記立ち上がり部が、前記係止部分側に向うに従って上方に向って延びるように傾斜されている、
ことを特徴とする自動車のジャッキ固定構造。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記ジャッキに、その上部において荷受け台部が備えられていると共に、該荷受け台部に前記シート側において前記係合部として引っ掛け部が形成され、
前記係止部の係止部分が、前記引っ掛け部を下方に向けて押圧するための押圧部と、該押圧部よりも先端側において該引っ掛け部を上方側から包み込むように下方側に折曲される折曲部と、を備えている、
ことを特徴とする自動車のジャッキ固定構造。
【請求項5】
請求項2又は3において、
前記ジャッキに、その上部において荷受け台部が備えられていると共に、該荷受け台部の上面に、前記係合部として、係合溝が該荷受け台部全体を横切るようにして形成され、
前記係止部の係止部分が、前記係合溝内に嵌合される嵌合部と、該嵌合部の延び方向両側から折曲された一対の折曲部と、を備えている、
ことを特徴とする自動車のジャッキ固定構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記フロアパネルの下面に、前記固定部材の真下を通るようにしてクロスメンバが設けられている、
ことを特徴とする自動車のジャッキ固定構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記シートは、起倒伏可能なシートバッグを備え、
前記係止部の係止部分は、前方への倒伏状態にある前記シートバッグよりも低くされている、
ことを特徴とする自動車のジャッキ固定構造。
【請求項8】
請求項7において、
前記フロアパネル上に、前記シートバッグを起倒伏可能に支持するシートブラケットが突設され、
前記シートブラケットが、車幅方向において、前記ジャッキの配設空間に隣接した状態で配置されている、
ことを特徴とする自動車のジャッキ固定構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記フロアパネルに、前記ジャッキの配設位置において、該ジャッキの下部を収納できる凹所が形成されている、
ことを特徴とする自動車のジャッキ固定構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−306311(P2006−306311A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132820(P2005−132820)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】