説明

自動車のドアミラー取付け構造

【課題】本発明は、ドアミラーを低コストで堅固にフロントドアの窓枠の前端位置に取付けられるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る自動車のドアミラー取付け構造では、インナパネルの上端縁の前部には、上方に突出形成されて窓ガラスGのガイド部材24を室内側から支持可能なガラス支持部位123と、ドアミラー30が取付けられるミラー支持部位121とを備える突出パネル部12zが設けられており、アウタリインフォースの上端には、ガラス支持部位123の反対側から窓ガラスGのガイド部材24を支持可能なフレーム22が溶接されており、フレーム22の一部22fはミラー支持部位121に重ねられて、そのミラー支持部位121とフレーム22との重複部位にドアミラー30がボルト止めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアミラーをフロントドアの窓部の前端位置に取付ける自動車のドアミラー取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関する従来の自動車のドアミラー取付け構造が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載のフロントドア100は、図6に示すように、アウタパネル101とインナパネル104とが端縁部分で互いに接合されることにより構成されている。アウタパネル101には、窓部Wの前端位置にドアミラーのミラーベース120の突起部が挿入される開口102が形成されている。また、インナパネル104には、アウタパネル101に形成された開口102の延長線上の位置にドアミラー取付け板106が固定されている。そして、アウタパネル101の開口102に通されたミラーベース120の突起部がドアミラー取付け板106にボルト止めされるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平07−223490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したドアミラー取付け構造では、インナパネル104にドアミラー用のドアミラー取付け板106を専用に設ける必要があるため、コストアップとなる。
さらに、一枚の平板状のドアミラー取付け板106にミラーベース120を取付ける構成のため、支持強度を確保するためにはドアミラー取付け板106の厚み寸法を大きくする必要があり、コスト高となる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ドアミラーを低コストで堅固にフロントドアの窓枠の前端位置に取付けられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、ドアミラーをフロントドアの窓部の前端位置に取付ける自動車のドアミラー取付け構造であって、前記フロントドアは、インナパネルとアウタパネルとから構成されて、そのインナパネルの上端縁とアウタパネルの上端縁との間に形成された隙間内を窓ガラスが上下スライド可能に構成されており、前記インナパネルの上端縁の前部には、上方に突出形成されて前記窓ガラスのガイド部材を室内側から支持可能なガラス支持部位と、前記ドアミラーが取付けられるミラー支持部位とを備える突出パネル部が設けられており、前記アウタパネルの上端縁は、前記フロントドアの前後方向に延びるアウタリインフォースによって内側から支持される構成であり、前記アウタリインフォースの上端には、前記突出パネル部のガラス支持部位の反対側から前記窓ガラスのガイド部材を支持可能なフレームが溶接されており、前記フレームの一部は前記突出パネル部のミラー支持部位に重ねられて、その突出パネル部のミラー支持部位と前記フレームとの重複部位に前記ドアミラーがボルト止めされる構成であることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、ドアミラーは、インナパネルの上端縁に設けられた突出パネル部のミラー支持部位と、アウタリインフォースに溶接されたフレームとの重複部位にボルト止めされる。このため、従来のように、前記ドアミラーを一枚の平板状のドアミラー取付け板にボルト止めする構成と比較してドアミラーの取付け強度を容易に高くできる。
また、前記ドアミラーの取付け用にインナパネルとは別部材であるドアミラー取付け板等を設ける必要がないためコストアップとならない。
【0008】
請求項2の発明によると、ドアミラー取付け用のボルトが通されるフレームの貫通孔は、そのフレームとアウタリインフォースとの溶接箇所から離れた位置に形成されていることを特徴とする。
このため、フレームの貫通孔が溶接の影響で歪む等の不具合を防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ドアミラーを低コストで堅固にフロントドアの窓枠の前端位置に取付けられるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施形態1]
以下、図1から図5に基づいて本発明の実施形態1に係るドアミラー取付け構造について説明する。本実施形態は、ドアミラーを自動車のフロントドアの前端位置に取付けるための構造に関するものである。ここで、図1は本実施形態のドアミラー取付け構造を備えるフロントドアの斜視図、図2はフロントドアの縦断面図(図1(B)のII-II矢視断面図)である。図3はフロントドアのアウタパネルを外した状態を表す正面図であり、図4は図3のIV矢視拡大図である。また、図5(A)はフレームとアウタリインフォースとの接合図、図5(B)は図4のVB-VB矢視断面図、図5(C)は図5(B)のC-C矢視断面図である。
なお、図中の前後左右及び上下は、自動車の前後左右及び上下に対応している。
【0011】
<フロントドア10の概要について>
左右のフロントドア10は、図1(A)、(B)に示すように、窓枠が存在しないタイプのドアであり、窓部の前端位置にドアミラー30のミラーベース32が取付けられるように構成されている。ここで、左右のフロントドア10は等しい構造のため、以下、代表して右側のフロントドア10について説明する。
フロントドア10は、インナパネル12とアウタパネル14とを備えており、図2に示すように、そのインナパネル12の前端縁、下端縁及び後端縁とアウタパネル14の前端縁、下端縁及び後端縁とがヘミング加工により接合されている。これにより、インナパネル12とアウタパネル14との間には、窓ガラスG、その窓ガラスGの昇降機構(図示省略)等が収納される空間が形成される。
インナパネル12は、図3に示すように、前側を構成するヒンジサイドパネル12hと、中央及び後側を構成するインナパネル本体12mとから構成されており、前記ヒンジサイドパネル12hの前側上下にヒンジ(図示省略)が固定されている。
また、インナパネル12の表面は、図1(B)に示すように、室内側から内装パネル17によって覆われている。
【0012】
インナパネル12の上端縁の内側には、図2、図3に示すように、前後方向に延びる補強用のインナリインフォース13が接合されている。また、アウタパネル14の上端縁の内側には、同じく前後方向に延びる補強用のアウタリインフォース15が接合されている。そして、インナパネル12、インナリインフォース13と、アウタパネル14、アウタリインフォース15との間には、窓ガラスGが通される隙間S(図2参照)が形成されている。窓ガラスGは、インナパネル12とアウタパネル14との間に収納された前記昇降機構の働きにより、予め決められた範囲内で昇降し、フロントドア10の窓部を開閉できるように構成されている。なお、前記隙間Sの位置にはシール材(図示省略)が設けられて、窓ガラスGとインナパネル12、アウタパネル14間をシールできるように構成されている。
また、インナパネル12とアウタパネル14との間には、図3に示すように、インパクトビーム18が前側で高くなるように傾斜した状態で前後に延びるように設けられている。
【0013】
<ドアミラー取付け構造について>
インナパネル12のヒンジサイドパネル12hには、上端位置に、図3に示すように、三角形状の突出パネル部12zが形成されている。即ち、突出パネル部12zは、図4に示すように、アウタパネル14の上端縁に対して上方に突出するように形成されている。突出パネル部12zは、図5(B)に示すように、その突出パネル部12zの後端部分が平断面形状略Z形になるように曲げ成形されてガラス支持部位123が形成されている。ガラス支持部位123は、突出パネル部12zの後端縁に沿って高さ方向に延びるように形成されており、窓ガラスGの前端縁をガイドするレール状部材24を室内側から支持できるように構成されている。また、突出パネル部12zのガラス支持部位123より前側は、図4等に示すように、ドアミラー30のミラーベース32とほぼ等しい形状に成形されており、そのミラーベース32が取付けられるミラー支持部位121となっている。
窓ガラスGをガイドするレール状部材24は、図4、図5(B)に示すように、室外側(突出パネル部12zのガラス支持部位123の反対側)からフレーム22によって支持されている。
即ち、レール状部材24が本発明のガイド部材に相当する。
【0014】
フレーム22は、図4に示すように、突出パネル部12zのガラス支持部位123に沿って上下方向に延びるように形成された帯板状部材であり、そのフレーム22の下端部がアウタリインフォース15のフランジ部15fにスポット溶接により接合されている。フレーム22は、図4、図5(A)に示すように、後板部22bと段部22dと前板部22fとにより平断面形状が略逆Z形に形成されており、そのフレーム22の後板部22bによって窓ガラスGのレール状部材24を支持できるように構成されている。また、フレーム22の前板部22fが突出パネル部12zのミラー支持部位121に重ねられるように構成されている。そして、フレーム22の前板部22fが突出パネル部12zのミラー支持部位121に重ねられた状態で、そのフレーム22の後板部22bが窓ガラスGのレール状部材24を支持できるように、前記フレーム22の段部22dの寸法等が設定されている。
【0015】
フレーム22の前板部22fは、図4に示すように、高さ方向中央位置が前方に突出しており、この突出部分にミラーベース取付け用のボルトBtが通される貫通孔22hが形成されている。また、突出パネル部12zのミラー支持部位121には、フレーム22の貫通孔22hと重なる位置に前記ボルトBtが螺合される雌ネジ孔122が形成されている。
また、突出パネル部12zのミラー支持部位121の前端位置には、図4に示すように、アウタパネル14の前部上端に形成されたフランジ部14y(二点鎖線参照)がスポット溶接により接合されるようになっている。
ドアミラー30のミラーベース32を突出パネル部12zのミラー支持部位121に取付ける場合には、フレーム22の貫通孔22hを通してミラー支持部位121の雌ネジ孔122にミラーベース32のボルトBtを螺合させる。これにより、図5(C)に示すように、ミラーベース32をヒンジサイドパネル12hの突出パネル部12zに取付けることができる。
【0016】
<本実施形態に係るドアミラー取付け構造の長所>
本実施形態に係るドアミラー取付け構造によると、ドアミラー30のミラーベース32は、インナパネル12の上端縁に設けられた突出パネル部12zのミラー支持部位121と、アウタリインフォース15に溶接されたフレーム22との重複部位にボルト止めされる。このため、従来のように、ミラーベース32を一枚の平板状のドアミラー取付け板にボルト止めする構成と比較してドアミラーの取付け強度を容易に高くできる。
また、ミラーベース32の取付け用にインナパネル12とは別部材であるドアミラー取付け板を設ける必要がないためコストアップとならない。
また、ミラーベース取付け用のボルトBtが通されるフレーム22の貫通孔22hは、そのフレーム22とアウタリインフォース15との溶接箇所から離れた位置に形成されているため、フレーム22の貫通孔22hが溶接の影響で歪む等の不具合が生じない。
【0017】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、フレーム22の貫通孔22hと突出パネル部12zのミラー支持部位121の雌ネジ孔122とを一組設け、一本のボルトでミラーベース32をミラー支持部位121に取付ける例を示した。しかし、フレーム22の貫通孔22hとミラー支持部位121の雌ネジ孔122とを複数組設け、複数本のボルトでミラーベース32を取付ける構成でも可能である。
また、本実施形態では、窓枠が存在しないタイプのフロントドア10にドアミラー30を取付ける構成を例示したが、窓枠を有するフロントドアのドアミラー取付け構造に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1に係るドアミラー取付け構造を備えるフロントドアの斜視図(A図、B図)である。
【図2】フロントドアの縦断面図(図1(B)のII-II矢視断面図)である。
【図3】フロントドアのアウタパネルを外した状態を表す正面図である。
【図4】図3のIV矢視拡大図である。
【図5】フレームとアウタリインフォースとの接合図(A図)、図4のVB-VB矢視断面図(B図)及びB図のC-C矢視断面図(C図)である。
【図6】従来のドアミラー取付け構造を表す平断面図である。
【符号の説明】
【0019】
10・・・・フロントドア
12・・・・インナパネル
12z ・・・突出パネル部
13・・・・インナリインフォース
14・・・・アウタパネル
15・・・・アウタリインフォース
22・・・・フレーム
22h ・・・貫通孔
24・・・・レール状部材
30・・・・ドアミラー
32・・・・ミラーベース
G・・・・・窓ガラス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアミラーをフロントドアの窓部の前端位置に取付ける自動車のドアミラー取付け構造であって、
前記フロントドアは、インナパネルとアウタパネルとから構成されて、そのインナパネルの上端縁とアウタパネルの上端縁との間に形成された隙間内を窓ガラスが上下スライド可能に構成されており、
前記インナパネルの上端縁の前部には、上方に突出形成されて前記窓ガラスのガイド部材を室内側から支持可能なガラス支持部位と、前記ドアミラーが取付けられるミラー支持部位とを備える突出パネル部が設けられており、
前記アウタパネルの上端縁は、前記フロントドアの前後方向に延びるアウタリインフォースによって内側から支持される構成であり、
前記アウタリインフォースの上端には、前記突出パネル部のガラス支持部位の反対側から前記窓ガラスのガイド部材を支持可能なフレームが溶接されており、
前記フレームの一部は前記突出パネル部のミラー支持部位に重ねられて、その突出パネル部のミラー支持部位と前記フレームとの重複部位に前記ドアミラーがボルト止めされる構成であることを特徴とする自動車のドアミラー取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載された自動車のドアミラー取付け構造であって、
前記ドアミラー取付け用のボルトが通される前記フレームの貫通孔は、そのフレームと前記アウタリインフォースとの溶接箇所から離れた位置に形成されていることを特徴とする自動車のドアミラー取付け構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−23652(P2010−23652A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187196(P2008−187196)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】