説明

自動車のフロントバンパ構造

【課題】 フロントバンパーフェイス下部をその後方の剛性部材に安定して支持させる構造をとりつつ、エアダムスカート取付部の見映えの悪化を防止することができ、さらにラジエターの冷却性能を高めることができる自動車のフロントバンパ構造を提供する。
【解決手段】 バンパーフェイスとは別体のエアダムスカート支持部材10を備え、エアダムスカート支持部材10は、エアダムスカートを支持するエアダムスカート支持部本体20と、上記剛性部材に締結される車体取付部30と、これらを繋ぐヒンジ部15とが一体成形された部材であり、エアダムスカート支持部本体20は、バンパーフェイス締結部14と、走行風を上後方に導くエアガイド部11とを備え、車体取付部30は、エアダムスカート支持部材10が一体成形された状態から、ヒンジ部15を支点として後方に折り返された状態でエアダムスカート支持部本体20と結合されているように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントバンパ構造に関し、特にフロントバンパーフェイスより下方に突出するエアダムスカートが取付けられたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の空気抵抗低減のために、フロントバンパーフェイス(以下単にバンパーフェイスともいう)の下端から下方に突出するエアダムスカートを設ける技術が知られている。通常、エアダムスカートの材質として柔軟性のあるラバー等が選択され、路面の障害物と接触しても容易に破損しないようになっている。このエアダムスカートを、たとえばバンパーフェイスの下端面に直接支持させるように構成した場合、次のような問題が生じる。すなわち、一般的な支持構造ではエアダムスカートの上端面とバンパーフェイスの下端面とを車幅方向の複数点で結合させることになるが、エアダムスカートが柔軟性のある材質からなるため、隣接する結合点の間で撓みが生じることがある。この撓みは、自動車を正面から見たときにバンパーフェイスとエアダムスカートとの間の隙間として見えるので、見映え上好ましくない。
【0003】
そこで、この隙間が見えないような技術が考えられている。たとえば特許文献1には、バンパーフェイスの背面の、下端面よりやや上方に略水平なリブを設け、このリブにエアダムスカートの上端部を支持するようにしている。このようにすると、リブとエアダムスカートとの間に多少の隙間が生じても、その隙間はバンパーフェイスの下部に隠され、見映えの悪化が防止される。
【0004】
一方、バンパーフェイスの支持剛性を向上させるために、バンパーフェイスの下部をその後方の剛性部材に支持させることが行われている。たとえば特許文献2には、バンパーフェイス下部の後方に、車幅方向に延びる剛性部材としてフロントロアクロスメンバを設け、これらをブラケットを介して締結することによってバンパーフェイスの支持剛性を高めた構造が開示されている。
【特許文献1】実開平6−63482号公報
【特許文献2】特開2001−58580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような構造と特許文献2のような構造とは両立が困難であるという問題があった。なぜなら、特許文献1のような構造にした場合、バンパーフェイスの下端がエアダムスカートで遮断され、それより後方に延ばすことができないからである。バンパーフェイスの下端をエアダムスカートより後方に延ばすことができなければ、これをフロントロアクロスメンバ等の剛性部材と締結させることはできない。
【0006】
たとえば特許文献1には、バンパー本体(バンパーフェイスに相当)の下端付近に取付開口を設け、その取付開口にエアダムスカートを通し、バンパー本体の背面から略水平に突設したリブにエアダムスカートを取付ける構造が示されている。この構造と特許文献2の上記構造と両立させるためには、一見、バンパー本体の取付開口より後方の部分を延長してフロントロアクロスメンバ等の剛性部材と締結させれば良いように見える。しかし実際には、取付開口より後方の部分は、取付開口より前方の部分と、取付開口の車幅方向両端外側の細い部分でのみ繋がっているに過ぎず、部材としての連続性は殆ど遮断されているのである。つまり、上記取付開口より後方の部分を延長してフロントロアクロスメンバ等の剛性部材と締結させたとしても、それはバンパー本体の下部を有効に支持していることにならない。
【0007】
一方、近年のエンジンの高出力化、車両の小型軽量化といった要求に応じて、ラジエターの冷却性能をより向上させることも重要な課題となっている。このため、走行風をより効率良くラジエター側に導くことができるようなフロントバンパ構造が求められていた。
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑み、フロントバンパーフェイスの下部をその後方の剛性部材に安定して支持させる構造をとりつつ、エアダムスカートの取付け部が正面視で直接見えないようにして見映えの悪化を防止することができ、さらにラジエターの冷却性能を高めることができる自動車のフロントバンパ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の自動車のフロントバンパ構造は、フロントバンパーフェイスの下端近傍に該フロントバンパーフェイスより下方に突出するエアダムスカートが取付けられるとともに、上記フロントバンパーフェイスの下部をその後方の剛性部材に支持させる自動車のフロントバンパ構造において、上記フロントバンパーフェイスとは別体であって、上記エアダムスカートを支持するエアダムスカート支持部材を備え、上記エアダムスカート支持部材は、上記エアダムスカートを取付けるエアダムスカート取付部を備えるとともに上記バンパーフェイスに締結されるエアダムスカート支持部本体と、上記剛性部材に締結される車体取付部と、上記エアダムスカート支持部本体と上記車体取付部とを繋ぐ可撓性のヒンジ部とが一体成形された部材であり、上記エアダムスカート支持部本体は、当該エアダムスカート支持部本体と上記バンパーフェイスとを締結させるために車幅方向に所定の間隔をもって並ぶ複数のバンパーフェイス締結部と、その各バンパーフェイス締結部の間に上記フロントバンパーフェイスと離間して設けられ、走行風を上後方に導くエアガイド部とを備え、上記ヒンジ部は上記エアダムスカート支持部本体の上端付近に設けられ、上記車体取付部は、上記エアダムスカート支持部材が一体成形された状態から、上記ヒンジ部を支点として上記エアダムスカート支持部本体の後方に折り返され、かつその折り返された状態で上記エアダムスカート支持部本体に結合されていることを特徴とする。
【0010】
この構成において、上記バンパーフェイス締結部は、上記エアガイド部からぞれぞれ前方に突出する略箱型のボックス部の先端付近に設けられ、上記ボックス部の上面は、前方側が開放されるとともに後方側が閉塞されているようにしても良い。
【0011】
また、上記剛性部材はラジエターを支持するシュラウドパネルであり、上記エアガイド部の車幅方向両端部に、上後方に向かう走行風を遮断するように前方に突出した遮風リブが設けられ、上記エアダムスカート支持部本体と折り返された上記車体取付部との結合部が上記遮風リブの背面付近に設けられているように構成しても良い。
【0012】
なお、当明細書における前後左右上下の方向は、運転席に着座した運転者から見た方向を指す。すなわち車幅方向とは左右方向と同義である。また正面視とは車両の前端と対向する視点から見た状態をいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動車のフロントバンパ構造によれば、エアダムスカート支持部材を介してバンパーフェイスの下部と、その後方の剛性部材(たとえばシュラウドパネル)とを有効に締結することにより、バンパーフェイスの支持剛性を高めることができる。また、エアダムスカート支持部材に取付けられたエアダムスカートの取付部を、正面視で見えないようにエアダムスカート支持部材の下部で隠すことにより見映えの悪化を防止することができる。
【0014】
さらに、エアダムスカート支持部材が、ラジエターの配設されている上後方に走行風を導くエアガイド部を備えるので、ラジエターにおいて冷却水と走行風との熱交換を効率良く行わせることができる。すなわち、ラジエターの冷却性能を高めることができる。
【0015】
ところで、このエアダムスカート支持部材を合成樹脂等で製造しようとする場合、コストや重量の増大を抑制するためには薄板状に成形することが望ましい。そのうえで必要な剛性を確保するためには、エアダムスカート支持部本体と車体取付部との間に側面視で閉断面部を設けることが効果的である。しかし、このような閉断面部を有する部材を一体成形することは難しいので、従来の一般的な製造方法によれば、まずエアダムスカート支持部本体と車体取付部とをそれぞれ別部品として成形し、その後これらを結合させるような構造をとることになる。
【0016】
しかしこのような構造では、部品点数の増大を招き、生産性の低下を招く虞がある。
【0017】
そこで本発明の構成では、エアダムスカート支持部本体の上端付近にヒンジ部を設け、このヒンジ部に繋げて車体取付部を成形するようにしている。このようにすると、このエアダムスカート支持部材の成形時における側面視の概略形状が、エアダムスカート支持部本体と車体取付部とを略直線的に繋げたような形状として容易に一体成形することができる。そして成形後に、可撓性のヒンジ部を支点にして車体取付部を後方に折り返し、エアダムスカート支持部本体と車体取付部とを結合することによって閉断面部を形成することができる。
【0018】
このように、閉断面部を設けて剛性を高めるようにした形状でありながら、ヒンジ部で折り返すように構成することによって、連続した一体品とすることができる。これにより部品点数の増大を最小限に留め、生産性の低下を抑制することができる。
【0019】
また、このエアダムスカート支持部材に、上面前方側が開放されているとともに上面後方側が閉塞されている略箱型のボックス部を設け、その先端部にバンパーフェイス締結部を設けるようにすれば、剛性の高い部分でバンパーフェイスと締結することができ、支持剛性を高めることができる。
【0020】
しかもボックス部の上面を開放することにより、その開口部を通してバンパーフェイスと締結させるためのファスナを組み付けることができるので、組み付け作業性が良く、生産性を向上させることができる。なお、上面の開放を前方側のみにとどめ、後方側を閉塞しておくことにより、エアガイド性や支持剛性の低下を効果的に抑制することができる。
【0021】
また、エアダムスカート支持部材が締結される剛性部材として、ラジエターを支持するシュラウドパネルとすれば、充分な支持剛性を得ることができる。
【0022】
そしてエアガイド部の車幅方向両端部に、上後方に向かう走行風を遮断するように前方に突出した遮風リブを設けることにより、不要な空気(導入してもラジエターの外側を通過し、冷却性能向上に寄与しない空気)を導入することによる空気抵抗の増大を防止することができる。
【0023】
この遮風リブが設けられた箇所は剛性が高くなっている。エアダムスカート支持部本体と折り返された上記車体取付部との結合部が、この遮風リブの背面付近に設けられているように構成することにより、エアダムスカート支持部材の剛性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係る自動車のフロントバンパ構造1の概略正面図である。当該自動車の前端部には、ボンネット2の下方にバンパーと一体成形された外板であるフロントバンパーフェイス(以下バンパーフェイス3と略称する)が設けられている。バンパーフェイス3の車幅方向中央の下方寄りには開口部が設けられ、フロントアンダーグリル4が嵌め込まれている。フロントアンダーグリル4はメッシュ状に成形されており、このメッシュ構造によって外部からエンジンルーム内に外気を導入し得るようになっている。
【0025】
バンパーフェイス3の下端よりさらに下方の路面と対向する位置に、ラバー等の比較的柔軟な材質からなる薄板状のエアダムスカート6が設けられている。エアダムスカート6は、車幅方向ほぼ全幅に亘りバンパーフェイス3より下方に突出して設けられ、両端はバンパーフェイス3の外形に沿って側方にまわり込んでいる。そしてこのエアダムスカート6は後述するようにバンパーフェイス3とは別体のエアダムスカート支持部材10に支持されている。
【0026】
図2はエアダムスカート支持部材10を斜め前方から見た斜視図である。また図3はエアダムスカート支持部材10を斜め後方から見た斜視図である。エアダムスカート支持部材10は左右対称形状であるため、図2および図3は何れも左半分(正面視で右半分)のみを示している。
【0027】
エアダムスカート支持部材10は、エアダムスカート6を支持するとともに、バンパーフェイス3とその後方の剛性部材であるシュラウドパネル60(図4(a)参照)とを締結させる部材である。さらにバンパーフェイス3の下方から導入された空気を、シュラウドパネル60に支持されるラジエター50(図4(a)参照)に導く部材でもある。
【0028】
エアダムスカート支持部材10は、PP(ポリプロピレン)からなる一体成形品である。図2および図3に示すように、エアダムスカート支持部材10は、前方に位置するエアダムスカート支持部本体20と、その後方で車幅方向両端付近に設けられた車体取付部30とをヒンジ部15で繋いだような概略構造となっている。
【0029】
エアダムスカート支持部本体20は、主にエアガイド部11、ボックス部12、センターリブ17、遮風リブ18およびエアダムスカート取付部19a(図5参照)からなる。
【0030】
エアガイド部11は、エアダムスカート支持部本体20の主たる形状をなす部分であって、エアダムスカート支持部本体20の略全幅に亘り、下前方から上後方へ切り上がる斜面を形成している。エアガイド部11の下端部は後方に折り返されている(図4(a)参照)。
【0031】
ボックス部12は、エアガイド部11から前方に突出する略箱型の部分である。当実施形態では片側3箇所のボックス部12がそれぞれ間隔をあけて形成されている(その間隔の部分にエアガイド部11が設けられている)。各ボックス部12の前端部にはバンパーフェイス3の背面側と締結するためのバンパーフェイス締結部14(貫通穴)が設けられている。また各ボックス部12の上部は、前方側が開放されてボックス開口部13を形成する一方、エアガイド部11の斜面に近い後方側は閉塞されている。
【0032】
センターリブ17は、車幅方向中央でエアガイド部11から前方に突出して上下方向に延びるリブである。
【0033】
遮風リブ18は、車幅方向両端部(最も外側のボックス部12より更に外側の部分)でエアガイド部11から前方に突出するリブであり、略水平方向に延びている。その基端側は側面視で略コ字状断面を有する遮風リブ基端部18a(図7参照)となっている。なお遮風リブ18および遮風リブ基端部18aは、バンパーフェイス3の下端よりも上方に位置するように設けられている。
【0034】
エアダムスカート取付部19aは、エアダムスカート6を直接支持する部分であるが、これについては後に図5を参照して説明する。
【0035】
次にエアダムスカート支持部材10の車体取付部30について説明する。図3に示すように、車体取付部30はエアダムスカート支持部本体20の後方に設けられ、略垂直に立設された板状体である垂直部分30aと、その下端から後方に略水平に拡がる板状体の水平部分30bとからなる。垂直部分30aと水平部分30bとの境界部分には複数の補強リブ34が立設されている。垂直部分30aの上端は、エアダムスカート支持部本体20の上端とヒンジ部15を介して繋がっている。
【0036】
垂直部分30aは、結合部31,32でエアダムスカート支持部本体20の背面側と結合されている。また水平部分30bの後端付近には、シュラウドパネル60と締結するためのシュラウドパネル締結部35a,35b(貫通穴)が設けられている。
【0037】
ヒンジ部15は、エアダムスカート支持部本体20の上端部と車体取付部30の垂直部分30aの上端部とを繋ぐ部分である。ヒンジ部15は他の部分より薄肉で可撓性を有し、いわゆるPPヒンジ構造となっている。
【0038】
図4は図1および図2のV−V線断面図であり、(a)は車載状態を示し、(b)は特にエアダムスカート支持部材10を単独で示している。図4(a)に示すように、エアガイド部11はバンパーフェイス3の後方に離間して設けられている。またエアガイド部11の前端はバンパーフェイス3の下端よりも隙間を空けた下方に位置している。
【0039】
車体取付部30の垂直部分30aは、結合部31において、ファスナ31aによってエアダムスカート支持部本体20の背面側と結合されている。この結合によって、エアガイド部11と垂直部分30aとによる閉断面部が形成されている。
【0040】
車体取付部30の水平部分30bは、後方のシュラウドパネル60の下方まで延びており、シュラウドパネル締結部35aにおいて、ファスナ61でシュラウドパネル60の下面に締結されている。なお特に図示しないが、シュラウドパネル締結部35bにおいても同様にラシュラウドパネル60の下面に締結されている。
【0041】
シュラウドパネル60にはエンジンの冷却水を熱交換させるためのラジエター50が設けられている。ラジエター50は、正面視で車幅方向中央部付近(エアダムスカート支持部本体20における遮風リブ18よりも内側の範囲)に設けられている。
【0042】
図4(b)にエアダムスカート支持部材10の単独断面形状を示すが、この図の二点鎖線で示される形状は、エアダムスカート支持部材10の成形時の形状である。すなわちエアダムスカート支持部材10は、二点鎖線で示された形状で成形された後、ヒンジ部15を支点として車体取付部30を後方に折り返し(矢印で示す)、結合部31でエアダムスカート支持部本体20の背面側と車体取付部30とを結合させた構造となっている。
【0043】
図5は図1および図2のIV−IV線断面図であり、ボックス部12付近の断面形状を示す。この図に示すように、ボックス部12付近ではバンパーフェイス3の背面側が延設され、ボックス部12の前端部と当接している。そしてバンパーフェイス締結部14において、ファスナ16によりバンパーフェイス3とボックス部12とが締結されている。なお特に図示しないが、他のボックス部12においても同様にバンパーフェイス3とバンパーフェイス締結部14とがファスナ16により締結されている。
【0044】
またエアダムスカート支持部本体20の背面には、その下端面よりやや上方に、エアダムスカート取付部19aが略水平に突設されている。エアダムスカート取付部19aは、各ボックス部12の設置箇所にそれぞれ設けられている。エアダムスカート6は、図示のように側面視で略L字状断面を有しており、エアダムスカート支持部本体20の下方から突出する略垂直板面を構成する垂直部分6bと、垂直部分6bの上端から後方に略水平に延びる水平部分6aとからなっている。そしてこの水平部分6aが、ファスナ19bによりエアダムスカート取付部19aに結合されている。
【0045】
図6は図1および図2のIII−III線断面図であり、センターリブ17付近の断面形状を示している。この図に示すように、センターリブ17はエアガイド部11から前方に突出する中空のリブである。またセンターリブ17付近では、バンパーフェイス3とエアダムスカート支持部本体20との間に空気導入ための隙間が設けられている。
【0046】
図7は図1および図2のVI−VI線断面図であり、遮風リブ18および結合部32付近の断面形状を示している。この図に示すように、遮風リブ基端部18aおよび遮風リブ18は、下前方から上後方に切り上がるエアガイド部11の途中から前方に突出している。そして遮風リブ18の背面付近から後方に、棒状の結合用突起32aが突設されている。この結合用突起32aは、ヒンジ部15で折り返された車体取付部30の結合部32において垂直部分30aと係合される。こうして略コ字状断面を有する遮風リブ基端部18aと、車体取付部30の垂直部分30aと、結合用突起32aとによって側面視で閉断面部が形成されている。
【0047】
次に、自動車のフロントバンパ構造1の作用について、主にエアダムスカート支持部材10の作用を中心に説明する。エアダムスカート支持部材10の主な作用は、エアダムスカート6の支持、バンパーフェイス3とシュラウドパネル60との締結およびラジエター50への導風である。
【0048】
まずエアダムスカート6の支持について説明する。図5に示すように、エアダムスカート取付部19aは、エアダムスカート6の垂直部分6bがエアダムスカート支持部本体20よりも下方に突出するようにエアダムスカート6を支持している。このエアダムスカート6の垂直部分6bが、車両底面と路面との間への走行風の流入を抑制するので、走行時の空気抵抗が低減される。またエアダムスカート6は柔軟な素材であるため、垂直部分6bが路面の障害物と多少接触しても容易に破損することがない。
【0049】
そして、エアダムスカート取付部19aがエアダムスカート支持部本体20の背面の、下端面よりやや上方に設けられているので、エアダムスカート取付部19aとエアダムスカート6との結合部がエアダムスカート支持部本体20の折り返し部で隠され、正面視で見えないようになっている。すなわち、隣接するファスナ19bとの間で、エアダムスカート6の水平部分6aに多少の撓みが生じても見映えが悪化することはない。
【0050】
次にバンパーフェイス3とシュラウドパネル60との締結について説明する。エアダムスカート支持部材10は、図5に示すようにバンパーフェイス締結部14においてバンパーフェイス3の下部の背面側と締結され、また図4(a)に示すようにシュラウドパネル締結部35a,35bにおいてシュラウドパネル60の下面と締結されている。つまりバンパーフェイス3の下部は、エアダムスカート支持部材10を介してシュラウドパネル60に支持されている。
【0051】
そしてエアダムスカート支持部材10は、PP製の板状成形品にもかかわらず全体の剛性が高められている。すなわち、エアダムスカート支持部本体20においては、センターリブ17、ボックス部12、遮風リブ基端部18aおよび遮風リブ18によって剛性が高められ、車体取付部30においては補強リブ34によって剛性が高められている。またエアダムスカート支持部本体20と車体取付部30とを結合させる結合部31,32においては、図4(a)および図7に示すように閉断面部の形成により剛性が高められている。さらに図7に示すように、遮風リブ18によって剛性が高められているエアダムスカート支持部本体20の背面側に結合部32が設けられているので、より一層エアダムスカート支持部材10の剛性が高められている。
【0052】
バンパーフェイス3の下部は、このように剛性の高いエアダムスカート支持部材10を介して剛性部材であるシュラウドパネル60に支持されることにより、高い支持剛性が得られている。
【0053】
次にラジエター50への導風について説明する。まずエアガイド部11においては、図2および図4(a)に白抜き矢印で示すように、バンパーフェイス3の下端とエアガイド部11の前端との隙間から第1走行風W1が導入される。この第1走行風W1はエアガイド部11の斜面に沿って上後方に導かれる。一方、フロントアンダーグリル4からは第2走行風W2が導入される、この第1走行風W1と第2走行風W2とが合流し、後方においてシュラウドパネル60に支持されたラジエター50に導かれる。そしてラジエター50において第1走行風W1および第2走行風W2と冷却水との熱交換が効果的になされるため、優れた冷却性能が得られる。
【0054】
一方、センターリブ17付近では、図6の白抜き矢印に示すように、導入された第1走行風W1がセンターリブ17によって一旦遮られるが、両脇のエアガイド部11側にまわり込んで上後方に導かれる。なおセンターリブ17の側壁は、第1走行風W1が車幅方向に乱れて流れることを規制する整流作用も有している。特に図示しないがボックス部12の側壁も同様の整流作用を有している。
【0055】
そして遮風リブ18付近では、図7の白抜き矢印に示すように、導入されてエアガイド部11の斜面を上り始めた第1走行風W1が、遮風リブ基端部18aおよび遮風リブ18によって遮断される。遮風リブ18が設けられているエアダムスカート支持部本体20の両端付近は、正面視でラジエター50の外側となっている。したがって第1走行風W1を導入しても利点が少なく、却って徒に空気抵抗を増大させることになる。そこで遮風リブ18によって第1走行風W1を遮断することにより、その空気抵抗の増大を防止している。
【0056】
なお、遮風リブ18は正面視でバンパーフェイス3の下部に隠されている。したがって、正面視では遮風リブ18の設置箇所においてもエアガイド部11の斜面が続いているように見え、見映えが良くなっている。
【0057】
次に自動車のフロントバンパ構造1の生産性について、エアダムスカート支持部材10を中心に説明する。図4(b)および図7に示すように、エアダムスカート支持部材10は図の二点鎖線で示す形状で成形される。この二点鎖線で示す形状は、エアダムスカート支持部本体20と車体取付部30とを略直線的に繋いだような形であり、前後方向(図示の状態では左右方向)に無理なく型抜きすることができる。したがって容易に一体成形することができる。そして成形後、ヒンジ部15を支点にして車体取付部30が後方に折り返され、閉断面形状が形成されている。つまり閉断面形状を有する剛性の高い部材でありながら、一体成形品とすることによって部品点数の増大が抑制され、生産性の低下が防止されている。
【0058】
また図5に示すように、バンパーフェイス締結部14においてバンパーフェイス3とボックス部12とを締結する際、ボックス部12の上部にボックス開口部13が設けられているので、図中の矢印で示すように、ここからファスナ16を入れて容易に締結させることができる。つまりバンパーフェイス3とボックス部12との締結作業性が良く、生産性が高められている。
【0059】
しかもボックス開口部13は、バンパーフェイス締結部14に近い前方側に設けられ、エアガイド部11に近い後方側は閉塞されている。これによって、エアガイド部11に導かれた走行風がボックス開口部13を経由してボックス部12の内部に流入する(つまりエアダムスカート支持部本体20の背面側に抜ける)ことが効果的に防止されている。またボックス部12の剛性向上効果がボックス開口部13によって目減りすることが最小限に抑制されている。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の変形を行っても良い。例えば、エアダムスカート支持部材10の材質は必ずしもPPである必要はない。但しPPは合成樹脂の中でも繰返し曲げに強く、ヒンジ特性が高いので、PP製とすることによってヒンジ部15の強度を確保し易いという利点がある。
【0061】
ヒンジ部15は当実施形態のように車体取付部30の全幅に亘って連続して設ける必要はなく、部分的あるいは断続的に切り欠いた形状であっても良い。
【0062】
センターリブ17は必ずしも設けなくても良い。またボックス部12およびセンターリブ17の位置および数は適宜変更しても良い。
【0063】
シュラウドパネル締結部35a,35bの締結先は必ずしもシュラウドパネル60である必要はなく、必要な支持剛性が確保できる適宜剛性部材として良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車のフロントバンパ構造の概略正面図である。
【図2】エアダムスカート支持部材の斜め前方から見た斜視図である。
【図3】エアダムスカート支持部材の斜め後方から見た斜視図である。
【図4】図1のV−V線断面図であり、エアガイド部付近の断面形状を示す。(a)は車載状態を示し、(b)はエアダムスカート支持部材単体について示す。
【図5】図1のIV−IV線断面図であり、ボックス部付近の断面形状を示す。
【図6】図1のIII−III線断面図であり、エアダムスカート支持部本体の車幅方向中央部付近の断面形状を示す。
【図7】図1のVI−VI線断面図であり、遮風リブ付近の断面形状を示す。
【符号の説明】
【0065】
1 自動車のフロントバンパ構造
3 フロントバンパーフェイス
6 エアダムスカート
10 エアダムスカート支持部材
11 エアガイド部
12 ボックス部
14 バンパーフェイス締結部
15 ヒンジ部
18 遮風リブ
19a エアダムスカート取付部
20 エアダムスカート支持部本体
30 車体取付部
32 結合部
50 ラジエター
60 シュラウドパネル(剛性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントバンパーフェイスの下端近傍に該フロントバンパーフェイスより下方に突出するエアダムスカートが取付けられるとともに、上記フロントバンパーフェイスの下部をその後方の剛性部材に支持させる自動車のフロントバンパ構造において、
上記フロントバンパーフェイスとは別体であって、上記エアダムスカートを支持するエアダムスカート支持部材を備え、
上記エアダムスカート支持部材は、上記エアダムスカートを取付けるエアダムスカート取付部を備えるとともに上記バンパーフェイスに締結されるエアダムスカート支持部本体と、上記剛性部材に締結される車体取付部と、上記エアダムスカート支持部本体と上記車体取付部とを繋ぐ可撓性のヒンジ部とが一体成形された部材であり、
上記エアダムスカート支持部本体は、当該エアダムスカート支持部本体と上記バンパーフェイスとを締結させるために車幅方向に所定の間隔をもって並ぶ複数のバンパーフェイス締結部と、その各バンパーフェイス締結部の間に上記フロントバンパーフェイスと離間して設けられ、走行風を上後方に導くエアガイド部とを備え、
上記ヒンジ部は上記エアダムスカート支持部本体の上端付近に設けられ、
上記車体取付部は、上記エアダムスカート支持部材が一体成形された状態から、上記ヒンジ部を支点として上記エアダムスカート支持部本体の後方に折り返され、かつその折り返された状態で上記エアダムスカート支持部本体に結合されていることを特徴とする自動車のフロントバンパ構造。
【請求項2】
上記バンパーフェイス締結部は、上記エアガイド部からぞれぞれ前方に突出する略箱型のボックス部の先端付近に設けられ、
上記ボックス部の上面は、前方側が開放されるとともに後方側が閉塞されていることを特徴とする請求項1記載の自動車のフロントバンパ構造。
【請求項3】
上記剛性部材はラジエターを支持するシュラウドパネルであり、
上記エアガイド部の車幅方向両端部に、上後方に向かう走行風を遮断するように前方に突出した遮風リブが設けられ、
上記エアダムスカート支持部本体と折り返された上記車体取付部との結合部が上記遮風リブの背面付近に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の自動車のフロントバンパ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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