説明

自動車のルーフサイド構造

【課題】サイドドリップ構造とモヒカン構造とを、部品を共用化することで容易に作り分けるようにする。
【解決手段】ボディサイドアウタパネル2を、ルーフR近傍位置で上下に分割してボディサイドアッパパネル2Uとボディサイドロアパネル2Lとで形成する。ボディサイドロアパネル2Lの上端部2Laを一体に延設したボディサイドインナパネル2Iで、ボディサイドアッパパネル2Uとの間に閉断面Cを形成する。ボディサイドインナパネル2Iの車外側部分2Ibに段部6を形成して、ボディサイドアッパパネル2Uの下端部2Uaに設けたフランジ部2UFとの間に隙間δを設ける。これにより、モヒカン構造のルーフRを、隙間δにドリップレール7を配置することでサイドドリップ構造のルーフRを形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のルーフパネルの車幅方向両側部のルーフサイド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のルーフパネルの車幅方向両側部は、車幅方向外側に突出して車体前後方向に延びるドリップレールを設けた構造と、ルーフパネルとボディサイドアウタパネルとの接合部をルーフ上に配置して該接合部に車体前後方向に延びる溝を形成した構造と、が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−59209号公報(第2頁、図7、図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来の自動車のルーフサイド構造にあっては、上記した2種類の構造相互間で、ルーフ側端部での具体的な構成が大きく異なっており、例えば、同一車種で2種の構造を選択的に提供する場合、それぞれ異なる形状のボディサイドアウタパネルやルーフパネルを用意する必要がある。このため、それぞれのボディサイドアウタパネルやルーフパネルなどの別の部品を開発・生産する必要があり、コストを低く抑えるのが困難になってしまう。
【0004】
そこで、本発明は、サイドドリップを備える構造と備えない構造とを、部品を共用化することで容易に作り分けることができる自動車のルーフサイド構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ボディサイドアウタパネルを、ルーフ近傍位置で上下に分割してボディサイドアッパパネルとボディサイドロアパネルとで形成し、ボディサイドアッパパネルの下端部に車内側に折曲するフランジ部を設けるとともに、ボディサイドロアパネルの上端部と、ルーフパネルとボディサイドアウタパネルとの接合部と、に跨って前記ボディサイドアッパパネルの車内側に位置して、該ボディサイドアッパパネルとの間に閉断面を形成するボディサイドインナパネルを設け、該ボディサイドインナパネルと前記フランジ部との車外側端部間に車外に開放する隙間を設けるとともに、ボディサイドインナパネルと前記フランジ部の車内側端部とを接合したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ルーフパネルの車幅方向両側部に、ルーフの側端部からボディサイドへと連続して形成したボディサイドアウタパネルを接合したことにより、該接合部に車体前後方向に延びる溝を備えた構造のルーフを形成することができる。
【0007】
一方、ボディサイドアウタパネルは、ルーフの近傍位置で上下に分割されて、その分割したボディサイドアッパパネルとボディサイドロアパネルとの間に隙間が形成される。従って、当該隙間にドリップレールの基端部を配置して接合することにより、ドリップレールを備えた構造のルーフを形成することができる。
【0008】
従って、ルーフパネルからボディサイドアウタパネルに至るルーフサイド部分の部品を共用化しつつ、2種の構造を容易に作り分けてコストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0010】
(第1実施形態)
図1〜図3は本発明にかかる自動車のルーフサイド構造の第1実施形態を示し、図1は本発明が適用される自動車の車体部分を示す斜視図、図2は図1中II−II線に沿った第1構造の拡大断面図、図3は前記第1構造とは異なる第2構造の図1中II−II線に対応した拡大断面図である。
【0011】
本実施形態のルーフサイド構造は、図1に示すように、ワンボックスカーとして構成される商用車1に適用した場合を示し、図2示すように、ボディサイドアウタパネル2がルーフRの側端部RsからボディサイドBsへと滑らかに連続した形状を成し、そのボディサイドアウタパネル2の上端部2aをルーフパネル3の車幅方向両側部3aに接合してある。
【0012】
このとき、ボディサイドアウタパネル2の上端部2aおよびルーフパネル3の車幅方向両側部3aをそれぞれ段差状に下方に折曲形成してあり、ルーフパネル3の車幅方向両側部3aの下側にボディサイドアウタパネル2の上端部2aを接合し、その接合部4が車体前後方向に延びる溝部5となっている。この溝部5には、図示しない樹脂などからなるモール部品で埋めて接合部4を隠すようにしている。
【0013】
従って、本実施形態における第1構造のルーフRは、ルーフパネル3とボディサイドアウタパネル2との接合部4が、ルーフRの中央寄りとなって、いわゆるモヒカン構造として構成される。
【0014】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、ボディサイドアウタパネル2を、ルーフR近傍の所定位置で上下に分割してボディサイドアッパパネル2Uとボディサイドロアパネル2Lとで形成する。
【0015】
そして、ボディサイドアッパパネル2Uの下端部2Uaに車内側(図中左側)に折曲するフランジ部2UFを設けるとともに、ボディサイドロアパネル2Lの上端部2Laと、ルーフパネル3とボディサイドアウタパネル2との接合部4と、に跨ってボディサイドインナパネル2Iを設ける。
【0016】
ボディサイドインナパネル2Iは、ボディサイドロアパネル2Lの上端部2Laを一体に延設して形成し、その上端部2Laから車内側に折曲した後に上方に折曲して、その上端部2Iaを上述の接合部4の下側に接合してある。これにより、ボディサイドインナパネル2Iは、ボディサイドアッパパネル2Uとの間に閉断面Cを形成している。
【0017】
また、ボディサイドインナパネル2Iがフランジ部2UFの車外側端部2UFaに対向する車外側部分2Ibに段部6を形成して、ボディサイドインナパネル2Iとフランジ部2UFとの車外側端部間に車外に開放する所定幅の隙間δを設けてある。また、ボディサイドインナパネル2Iとフランジ部2UFの車内側端部2UFbとを接合してある。
【0018】
そして、本実施形態では、ルーフRをモヒカン構造として構成する場合は、前記隙間δの車外側端部にシール材Sを充填する。
【0019】
以上の構成により、本実施形態の自動車のルーフサイド構造によれば、ルーフパネル3の車幅方向両側部3aに、ルーフRの側端部RsからボディサイドBsへと連続して形成したボディサイドアウタパネル2を接合したことにより、基本的にモヒカン構造のルーフRを形成することができる。
【0020】
このとき、ボディサイドアウタパネル2は、ルーフR近傍の所定位置で上下に分割されて、その分割したボディサイドアッパパネル2Uとボディサイドロアパネル2Lとの間に、ボディサイドインナパネル2Iに設けた段部6によって所定幅の隙間δを形成してある。
【0021】
従って、図3に示すように、上述の隙間δにドリップレール7の基端部を配置して接合、つまり、本実施形態では段部6の上面に接合することにより、ドリップレール7を備えた第2構造としてサイドドリップ構造のルーフRを形成することができる。
【0022】
尚、ドリップレール7は、ルーフRの側端部Rsに沿って車体前後方向に連続しており、取付部を兼ねたほぼ水平な平坦部分7aと、その平坦部分7aの先端部に設けた堰部7bと、を設けてある。そして、平坦部分7aの先端部分を段部6の上面に接合した状態で、その平坦部分7aの反対側を車外側に所定量突出させることにより、その突出部分で雨水を受け止めて流すようになっている。
【0023】
また、ドリップレール7を取り付けた場合にも、隙間δの車外側端部にシール材Sを充填してあり、更には、堰部7bの立ち上げ部分内側にもシール材Sを塗布してある。
【0024】
従って、サイドドリップ構造とモヒカン構造との2種の構造を作り分けるにあたって、ルーフパネル3からボディサイドアウタパネル2に至るルーフサイド部分の部品、つまり、ボディサイドアッパパネル2U、ボディサイドロアパネル2Lおよびボディサイドインナパネル2Iを共用化できる。これにより、本実施形態のルーフサイド構造によれば、サイドドリップ構造とモヒカン構造との2種の構造の作り分けを容易にし、かつ、コストを低く抑えることができる。
【0025】
即ち、モヒカン構造(図2参照)は、ドリップレール7が無いので見栄えが良いが、該モヒカン構造とした場合には、ドリップレール7を用いて取り付ける汎用タイプのルーフラックを取り付けることができなくなる。このため、多くの商用車のユーザはルーフR上に梯子などを積載するため、汎用のルーフラックを取り付けることができないモヒカン構造では結果的に商用車の使い勝手を低下させることになる。
【0026】
これに対して、サイドドリップ構造(図3参照)は、ドリップレール7が設けられるため、そのドリップレール7を用いて汎用ルーフラックを取り付けることができる反面、そのドリップレール7により見栄えが悪化するために、乗用車として用いる場合にはサイドドリップ構造を採用するには難点がある。
【0027】
そこで、本実施形態のルーフサイド構造では、サイドドリップ構造とモヒカン構造との作り分けが容易になるため、同一車種の自動車であってもユーザの希望に応じたタイプを安価で提供し易くなる。
【0028】
尚、本実施形態ではボディサイドインナパネル2Iを、ボディサイドロアパネル2Lから一体に延設して形成した場合を示したが、これに限ることなくボディサイドインナパネル2Iをボディサイドロアパネル2Lと別体に形成したものを接合して一体化させてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、段部6とフランジ部2UFとの間の車外側端部にシール材Sを充填して隙間δを埋めたことにより、ルーフRをモヒカン構造として構成する場合は、隙間δ内に雨水や誇りが侵入するのを防止することができる。
【0030】
勿論、隙間δにドリップレール7を取り付けてサイドドリップ構造とした場合にも、隙間δの車外側端部や堰部7bの立ち上げ部分内側にシール材Sを充填することにより、隙間δや堰部7b内に雨水や誇りが侵入するのを防止することができる。
【0031】
図4は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図4は図2に対応したモヒカン構造の拡大断面図である。
【0032】
本実施形態のルーフサイド構造は、基本的に第1実施形態と同様に、ボディサイドアウタパネル2を、上下に分割したボディサイドアッパパネル2Uとボディサイドロアパネル2Lとで形成してあり、かつ、ボディサイドアッパパネル2Uの車内側に閉断面Cを形成するボディサイドインナパネル2Iを設けてある。勿論、ボディサイドインナパネル2Iの車外側部分2Ibに段部6を形成して、フランジ部2UFとの間に所定幅の隙間δを設けてある。
【0033】
ここで、本実施形態が第1実施形態と主に異なる点は、ボディサイドインナパネル2Iの車内側に、上端部8aをルーフパネル3とボディサイドアウタパネル2との接合部4に接合し、下端部8bをボディサイドロアパネル2Lの内面に接着剤Aを介して接着するルーフサイドインナパネル8を設けたことにある。
【0034】
従って、本実施形態のルーフサイド構造によれば、ボディサイドインナパネル2Iの車内側でルーフサイドインナパネル8を、接合部4とボディサイドロアパネル2Lとに跨って設けたことにより、ボディサイドアッパパネル2Uとボディサイドロアパネル2Lとの接合部を補強できるため、ボディサイドアウタパネル2の分割部分(隙間δ部分)の強度を高めることができる。
【0035】
勿論、本実施形態にあっても、基本構造がモヒカン構造となるが、第1実施形態と同様にボディサイドアッパパネル2Uとボディサイドロアパネル2Lとの間の隙間δにドリップレール7を取り付けることにより、サイドドリップ構造として構成することができる。
【0036】
ところで、本発明の自動車のルーフサイド構造は前記第1・第2実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。例えば、本実施形態では商用車1に本発明を適用したが、これ以外にも通常の乗用車にあっても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明が適用される自動車の車体部分を示す斜視図である。
【図2】図1中II−II線に沿ったモヒカン構造の拡大断面図である。
【図3】本発明のサイドドリップ構造として構成した図1中II−II線に対応した拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる図1中II−II線に対応したモヒカン構造の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 商用車(自動車)
2 ボディサイドアウタパネル
2U ボディサイドアッパパネル
2Ua ボディサイドアッパパネルの下端部
2UF ボディサイドアッパパネルのフランジ部
2UFa フランジ部の車外側端部
2UFb フランジ部の車内側端部
2L ボディサイドロアパネル
2La ボディサイドロアパネルの上端部
2I ボディサイドインナパネル
2Ib ボディサイドインナパネルの車外側部分
3 ルーフパネル
4 ルーフパネルとボディサイドアウタパネルとの接合部
7 ドリップレール
8 ルーフサイドインナパネル
8a ルーフサイドインナパネルの上端部
8b ルーフサイドインナパネルの下端部
R ルーフ
Rs ルーフの側端部
Bs ボディサイド
C 閉断面
δ 隙間
S シール材
A 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルの車幅方向両側部に、ルーフの側端部からボディサイドへと連続して形成したボディサイドアウタパネルを接合した自動車のルーフサイド構造において、
前記ボディサイドアウタパネルを、ルーフの近傍位置で上下に分割してボディサイドアッパパネルとボディサイドロアパネルとで形成し、
前記ボディサイドアッパパネルの下端部に車内側に折曲するフランジ部を設けるとともに、
前記ボディサイドロアパネルの上端部と、前記ルーフパネルと前記ボディサイドアウタパネルとの接合部と、に跨って前記ボディサイドアッパパネルの車内側に位置して、該ボディサイドアッパパネルとの間に閉断面を形成するボディサイドインナパネルを設け、
前記ボディサイドインナパネルと前記ボディサイドアッパパネルのフランジ部との車外側端部間に車外に開放する隙間を設けるとともに、
前記ボディサイドインナパネルと前記フランジ部の車内側端部とを接合したことを特徴とする自動車のルーフサイド構造。
【請求項2】
前記隙間に、該隙間から車外側に先端が突出するドリップレールの基端部を固定したことを特徴とする請求項1に記載の自動車のルーフサイド構造。
【請求項3】
前記隙間にシール材を充填したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車のルーフサイド構造。
【請求項4】
前記ボディサイドインナパネルの車内側に、上端部を前記ルーフパネルと前記ボディサイドアウタパネルとの接合部に接合し、下端部を前記ボディサイドロアパネルの内面に接合するルーフサイドインナパネルを設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動車のルーフサイド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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