説明

自動車の内装カーペット、自動車、および内装カーペットとフロアマットとの接合構造

【課題】自動車の内装カーペットに対するフロアマットの相対移動を効果的に防止するとともに、フロアマットによるアクセルペダル等の誤作動を確実に防止することができる内装カーペットを提供する。
【解決手段】内装カーペット11は、自動車内の床部17に敷設され、表面にパイル糸20が設けられており、表面パイル糸20の先端部分を加熱して形成される縮れ部分によって構成され、内装カーペット11の上にフロアマット12が敷かれた場合に当該フロアマット12の裏面に設けられたパイル糸27と係合する係合部28を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内装カーペット、内装カーペットが敷設された自動車、および内装カーペットとフロアマットとの接合構造に関するものであって、特に、運転時における安全性を向上させた内装カーペット、自動車、および内装カーペットとフロアマットとの接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の座席下の床には、内装カーペットが敷設されている。また、着座する乗車人の足下に相当する領域において、内装カーペットの上に敷いて用いる自動車用フロアマットが、一般的に広く普及している。内装カーペットに対するフロアマットの滑り止め効果を高める手段として、特許第4072916号公報(特許文献1)が、開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の自動車用フロアマットは、裏面側パイルの先端部分に、内装カーペットに対する滑り止め効果を高めるための係合領域を設けることによって、内装カーペットに対するフロアマットの相対移動を効果的に規制することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4072916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1に記載の手段によれば、滑り止め効果を高めるための係合領域が、フロアマット側に設けられている。この場合、使用者は、安全上の観点から、フロアマットに設けられた係合領域がアクセルペダルやブレーキペダルから十分離隔するように留意してフロアマットを敷く必要があった。フロアマットを誤ってアクセルペダルの上を覆うように置いた場合、アクセルペダルを踏み込んだ際にアクセルペダル周辺のフロアマットの裏面が床のカーペットに接着し、アクセルペダルが元の位置に戻らないということが想定されるからである。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、自動車の内装カーペットに対するフロアマットの相対移動を防止するとともに、如何なる使用状況においてもより効果的に安全性を確保することができる内装カーペットを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、自動車の内装カーペットに対するフロアマットの相対移動を防止するとともに、如何なる使用状況においてもより効果的に安全性を確保することができる内装カーペットを備えた自動車を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、自動車の内装カーペットに対するフロアマットの相対移動を防止するとともに、如何なる使用状況においてもより効果的に安全性を確保することができる内装カーペットとフロアマットとの接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自動車の内装カーペットは、自動車内の床に敷設され、表面にパイル糸が設けられた内装カーペットであって、表面パイル糸の先端部分を加熱して形成される縮れ部分によって構成され、内装カーペットの上にフロアマットが敷かれた場合に当該フロアマットの裏面に設けられたパイル糸と係合する係合部を有する。
【0010】
この構成によれば、フロアマットが内装カーペット上に敷かれると、内装カーペットの先端部分に設けられた上記係合部が、フロアマットの裏面パイルと絡み合って係合することから、内装カーペットに対するフロアマットの相対移動が、強力に規制されることとなる。したがって、運転時において、フロアマットがずれてしまうことを防止することができる。また、上記係合部は、内装カーペット表面の焼き加工のような比較的に単純な作業によって形成することが可能であることから、上記のように安全性に優れた内装カーペットを、容易に提供することができる。
【0011】
好ましくは、内装カーペットは、自動車のアクセルペダルおよびブレーキペダルに近接する第一領域と、アクセルペダルおよびブレーキペダルから離隔している第二領域とに区分され、第一領域の表面パイル糸は、係合部を有しておらず、第二領域の表面パイル糸は、係合部を有している。この構成によれば、内装カーペットの第一領域には、フロアマットと係合する上記係合部が設けられていないことから、アクセルペダルおよびブレーキペダルの近辺においては、フロアマットは、常に、内装カーペットから容易に引き離し可能な状態となっている。したがって、フロアマットを適正位置に敷いて使用している場合においては、内装カーペットの第二領域に設けられた係合部がフロアマットと係合することによって、内装カーペットに対するフロアマットの相対移動を規制することができる。それとともに、例えばフロアマットを誤ってアクセルペダルまたはブレーキペダルに覆い被せるように置いてしまった場合においても、フロアマットを内装カーペットから容易に引き離すことができるため、安全性を確保することができる。
【0012】
好ましくは、係合部は、鈎状に形成される。この構成によれば、内装カーペットとフロアカーペットとの係合をより強固とすることができるため、内装カーペットに対するフロアマットの相対移動をより効果的に規制することができる。
【0013】
好ましくは、内装カーペットは、タフテッドカーペットである。この構成によれば、例えばフロアマットの裏面パイル糸がニードルパンチパイルによって構成された場合、内装カーペットとフロアマットとを、より強力に係合させることが可能となる。したがって、内装カーペットに対するフロアマットの相対移動をさらに効果的に規制することができる。
【0014】
本発明の他の局面において、本発明に係る自動車は、請求項1〜4のいずれかに記載の内装カーペットが敷設されている。この構成によれば、内装カーペットに対するフロアマットの相対移動を防止するとともに、如何なる使用状況においてもより効果的に安全性を確保することができる内装カーペットを備えた自動車を提供することができる。
【0015】
本発明のさらに他の局面において、本発明に係る接合構造は、自動車内の床に敷設され、表面にパイル糸が設けられた内装カーペットと、内装カーペットの上に敷かれて用いられ、裏面にパイル糸が設けられたフロアマットとの接合構造であって、内装カーペットは、表面パイル糸の先端部分を加熱して形成される縮れ部分によって構成された係合部を有し、フロアマットが内装カーペット上に敷かれた場合に、内装カーペットに設けられた係合部が、フロアマットの裏面パイルと係合することによって、フロアマットの内装カーペットに対する相対移動が規制される。
【0016】
この構成によれば、フロアマットが内装カーペット上に敷かれると、内装カーペットの先端部分に設けられた上記係合部が、フロアマットの裏面パイルと絡み合って係合することから、内装カーペットに対するフロアマットの相対移動が、強力に規制されることとなる。したがって、運転時において、フロアマットがずれてしまうことを防止することができる。また、上記係合部は、内装カーペット表面の焼き加工のような比較的に単純な作業によって形成することが可能であることから、上記のように安全性に優れた内装カーペットを、容易に提供することができる。
【0017】
好ましくは、内装カーペットは、自動車のアクセルペダルおよびブレーキペダルに近接する第一領域と、アクセルペダルおよびブレーキペダルから離隔する第二領域とに区分され、第一領域の表面パイル糸は、係合部を有しておらず、第二領域の表面パイル糸は、係合部を有している。この構成によれば、フロアマットを適正位置に敷いて使用している場合においては、内装カーペットの第二領域に設けられた係合部がフロアマットと係合することによって、内装カーペットに対するフロアマットの相対移動を規制することができる。それとともに、例えばフロアマットを誤ってアクセルペダルまたはブレーキペダルに覆い被せるように置いてしまった場合においても、フロアマットを内装カーペットから容易に引き離すことができるため、安全性を確保することができる。
【0018】
好ましくは、係合部は、鈎状に形成される。この構成によれば、内装カーペットとフロアカーペットとの係合をより強固とすることができるため、内装カーペットに対するフロアマットの相対移動をより効果的に規制することができる。
【0019】
好ましくは、フロアマットの裏面に設けられたパイル糸は、ニードルパンチパイルである。さらに好ましくは、内装カーペットは、タフテッドカーペットである。この構成によれば、内装カーペットとフロアマットとを、より強力に係合させることが可能となる。したがって、内装カーペットに対するフロアマットの相対移動をさらに効果的に規制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、運転時において、フロアマットがずれてしまうことを防止することができる。また、上記係合部は、内装カーペット表面の焼き加工のような比較的に単純な作業によって形成することが可能であることから、上記のように安全性に優れた内装カーペットを、容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る内装カーペットが敷設された自動車の床部分を示す外観図である。
【図2】図1からフロアマットを省略した外観図を示す。
【図3】図1に示す自動車内の床部分の内、運転席の床部分を上方から見て拡大した拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る内装カーペットの断面図であって、図3中のIV−IV領域の断面図を示す。
【図5】本発明の一実施形態に係るフロアマットの断面図を示す。
【図6】本発明の他の実施形態に係る内装カーペットの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。まず、図1〜図5を用いて、本発明の一実施形態に係る内装カーペット11の構成について説明する。なお、理解の容易の観点から、図1においては、座席部を省略し、車内の床部分のみを示している。また、図3においては、フロアマット12aを点線にて示している。
【0023】
図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態に係る内装カーペット11は、自動車の車内床部全域に敷設された自動車用の内装カーペットである。すなわち、内装カーペット11は、運転席領域A、助手席領域B、および後部座席領域Cの床部全域を覆うように敷設され、表面側にパイル糸が起毛しているカーペットである。内装カーペット11の上には、乗車する者の足下に相当する位置において、自動車用のフロアマット12が、敷かれている。本実施形態においては、フロアマット12は、運転席領域Aに敷かれているフロアマット12aと、助手席領域Bに敷かれているフロアマット12bと、後部座席領域Cに敷かれているフロアマット12c、12c、および12cとから構成されている。ここで、車内床部全域に敷設された内装カーペット11の内、自動車用のフロアマット12が敷かれている領域を、図2中の一点鎖線および二点鎖線の斜線によって示す。
【0024】
運転席領域Aの前方下方には、アクセルペダル13とブレーキペダル14(車種によってはさらにクラッチペダル(図示せず))とが、設けられている。ここで、本実施形態に係る内装カーペット11は、フロアマット12が敷かれるべき領域(図2中の斜線領域)に関して、アクセルペダル13およびブレーキペダル14に近接する第一領域15と、アクセルペダル13およびブレーキペダル14から離隔している第二領域16とに区分されており、第一領域15の内装カーペット11と、第二領域16の内装カーペット11とは、後述するように、それぞれ異なった構造を備えている。
【0025】
次に、図4を参照して、第一領域15および第二領域16における内装カーペット11の構造について説明する。なお、図4中の左側部分は第一領域15の内装カーペット11を示し、右側部分は第二領域16の内装カーペット11を示している。第一領域15における内装カーペット11は、自動車の床部17に貼着される基布19と、基布19の表面側に向けて起毛するように植設された表面パイル糸20とを備える。第一領域15の内装カーペット11は、通常のタフテッドタイプのカーペットである。
【0026】
第二領域16の内装カーペット11は、繊維の基本構造に関しては第一領域15の繊維構造と同様であって、基布19と、基布19の表面側に向けて起毛するように植設された表面パイル糸20とを備える。ここで、第二領域16の内装カーペット11においては、表面パイル糸20の先端部分に、後述するフロアマット12を内装カーペット11に強力に係合させるための係合部28が、設けられている。この係合部28は、第一領域15の表面パイル糸20の先端部分を加熱して形成される縮れ部分によって構成されている。
【0027】
すなわち、本実施形態に係る内装カーペット11は、フロアマット12が敷かれるべき領域(図2中の斜線領域)において、アクセルペダル13およびブレーキペダル14から離隔する第二領域16にのみ、表面パイル糸20の先端部に加熱処理による係合部28を有している。そして、第一領域15を含む車内床部のその他の領域においては、表面パイル糸20の先端部が加熱処理されていない通常のタフテッドカーペットによって構成されている。
【0028】
本実施形態に係る内装カーペット11は、上記構成を備えることから、その上にフロアマット12が敷かれた場合に、内装カーペット11に対するフロアマット12の相対移動を強力に防止することができる。以下に、本発明の一実施形態に係る内装カーペット11とフロアマット12との接合構造について、図1〜図5を用いて説明する。
【0029】
まず、図5を参照して、本発明の一実施形態に係るフロアマット12の構成について説明する。本発明の一実施形態に係るフロアマット12は、表面側カーペット21と、裏面側カーペット22の二層構造を備えている。表面側カーペット21は、表面側基布23と、表面側基布23に植設され、表面側基布23の表面側に向けて起毛する表面パイル糸24とから構成されている。表面側カーペット21の表面パイル糸24は、タフテッドパイルであって、表面側基布23の裏面側に設けられた接着層25を介して表面側基布23に植設されている。
【0030】
裏面側カーペット22は、裏面側基布26と、裏面側基布26に植設され、裏面側基布26の裏面側に向けて起毛する裏面パイル糸27とから構成されている。裏面側カーペット22の裏面パイル糸27は、ニードルパンチパイルであって、裏面側基布26の表面側に設けられた接着層25を介して裏面側基布26に植設されている。図5に示すように、表面側カーペット21と裏面側カーペット22とは、接着層25を介して互いに一体的に連結されている。
【0031】
図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態に係る内装カーペット11とフロアマット12との接合構造は、第二領域の表面パイル20に設けられた係合部28と、フロアマット12の裏面パイル27とが、互いに係合することによってもたらされる。より具体的には、上記したように、フロアマット12の裏面パイル27は、ニードルパンチパイルである。ニードルパンチパイルは、通常、パイル糸がU字状にループするように起毛する特徴を有している。したがって、内装カーペット11の表面上に、フロアマット12の裏面側を当接するようにして敷くと、上記係合部28が、U字状にループする裏面パイル27に絡みついて係合することとなる。これにより、フロアマット12が、内装カーペット11に強力に接着されることとなるため、内装カーペット11に対するフロアマット12の相対移動を効果的に防止することができる。
【0032】
さらに、上記したように、本実施形態に係る内装カーペット11においては、アクセルペダル13およびブレーキペダル14の近辺に位置する第一領域15の表面パイル20には、上記係合部28が設けられていない。したがって、アクセルペダル13およびブレーキペダル14の近辺においては、内装カーペット11の表面パイル20と、フロアマット12の裏面パイル27とが、互いに係合しないため、フロアマット12を内装カーペット11から、常に容易に引き離すことができる状態となっている。
【0033】
すなわち、本実施形態によれば、フロアマット12を適正位置に敷いて使用している場合においては、内装カーペット11の第二領域16に設けられた上記係合部28がフロアマット12の裏面パイル27と係合することによって、内装カーペット11に対するフロアマット12の相対移動を効果的に規制することができる。したがって、運転時にフロアマット12がずれてしまうことを防ぐことができる。それとともに、例えばフロアマット12を誤ってアクセルペダル13またはブレーキペダル14に覆い被せるように置いてしまった場合においても、フロアマットを常に内装カーペットから容易に引き離すことができるため、安全性を確保することができる。
【0034】
また、上記係合部28は、内装カーペット11の一部領域の表面パイル20に焼き加工を加えるといった比較的に単純な作業によって形成することが可能である。したがって、フロアマットのずれ防止のための係合部材を別途設けることもなく、上記のように安全性に優れた内装カーペットを、容易に提供することが可能である。
【0035】
なお、上記係合部28は、鈎状に形成されてもよい。係合部28をこのように形成することによって、内装カーペット11とフロアカーペット12との係合をより強固とすることができるため、内装カーペット11に対するフロアマット12の相対移動をより効果的に規制することができる。
【0036】
次に、本発明の他の実施形態に係る内装カーペット31について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の他の実施形態に係る内装カーペット31の図3中のIV−IV領域の断面図を示しており、図4に相当する図である。
【0037】
図6を参照して、本発明の他の実施形態に係る内装カーペット31は、車内床部17の全域に敷設された自動車用の内装カーペットであって、上記実施形態に係る内装カーペット11と同様に、アクセルペダル13およびブレーキペダル14に近接する第一領域15と、アクセルペダル13およびブレーキペダル14から離隔している第二領域16とに区分されている。
【0038】
第一領域15における内装カーペット31は、基布32と、基布32の表面側に向けて起毛するように植設された表面パイル糸34とを備える。本実施形態に係る内装カーペット31は、ニードルパンチタイプのカーペットである。
【0039】
第二領域16の内装カーペット31は、繊維の基本構造に関しては第一領域15の繊維構造と同様であって、基布32と、基布32の表面側に向けて起毛するように植設された表面パイル糸34とを備える。ここで、第二領域16の内装カーペット31においては、表面パイル糸34の先端部分に、フロアマット12を内装カーペット31に接着させるための係合部35が、設けられている。この係合部35は、第一領域15の表面パイル糸34の先端部分を加熱して形成される縮れ部分によって構成されている。
【0040】
すなわち、本実施形態に係る内装カーペット31は、フロアマット12が敷かれるべき領域(図2中の斜線領域)において、アクセルペダル13およびブレーキペダル14から離隔する第二領域16にのみ、表面パイル糸34の先端部に加熱処理による係合部35を有している。
【0041】
本実施形態に係る内装カーペット31は、上記構成を備えることから、上記実施形態に係る内装カーペット11と同様に、フロアマット12を適正位置に敷いて使用している場合においては、第二領域16の表面パイル糸34に設けられた上記係合部35によって、フロアマット12のずれを効果的に規制することができる。したがって、運転時にフロアマット12がずれてしまうことを防ぐことができる。それとともに、例えばフロアマット12を誤ってアクセルペダル13またはブレーキペダル14に覆い被せるように置いてしまった場合においても、フロアマット12を常に内装カーペット31から容易に引き離すことができるため、安全性を確保することができる。
【0042】
このように、本発明によれば、自動車の内装カーペットをタフテッドタイプまたはニードルパンチタイプのいずれのタイプのカーペットによって構成した場合においても、フロアマット12の裏面パイル27をニードルパンチパイルによって構成することによって、
フロアマット12のずれを効果的に防止することができる。
【0043】
ここで、以下の表1に、従来の内装カーペットとフロアマットとの接合構造における、内装カーペットとフロアマットとの間の接着力に関する表を示す。上記したように、従来は、フロアマットの裏面パイルに加熱処理を施して係合領域を設け、内装カーペットに接着させる接合構造を採用していた。
【0044】
【表1】

【0045】
表1において、二重丸印は接着力が特に優れている組み合わせを示し、丸印は良好な接着力を示し、三角印はそれほど接着力が強くない組み合わせを示している。表1より、従来の接合構造のように、加熱処理を施さない内装カーペットに対して、裏面パイルに加熱処理を施したフロアマットを接着させる方法においては、内装カーペットをタフテッドタイプとした場合に、十分な接着力を確保することができなかった。
【0046】
これに対して、以下の表2に、本発明に係る接合構造における内装カーペットとフロアマットとの間の接着力に関する表を示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2より、本発明に係る接合構造によれば、自動車の内装カーペットをタフテッドタイプまたはニードルパンチタイプのいずれのタイプのカーペットによって構成した場合においても、フロアマットと内装カーペットとを効果的に接着させることができるため、フロアマットのずれを効果的に防止することができる。その中でも特に、上記実施形態に示したように、内装カーペットの表面パイル糸をタフテッドパイルとし、フロアマットの裏面パイル糸をニードルパンチパイルとする組み合わせが、最も優れた接着力を実現することができる。
【0049】
なお、上記実施形態においては、内装カーペットの表面パイルに設けられた係合部を、加熱処理によって形成した場合について述べたが、これに限らず、例えば薬品を用いた化学反応を利用して係合部を形成してもよいし、その他如何なる方法によって係合部を形成してもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、内装カーペットが、タフテッドタイプまたはニードルパンチタイプのカーペットによって構成された場合について述べたが、これに限らず、その他のいずれのタイプのカーペットにおいても、本発明の概念を適用することが可能である。同様に、フロアマットの裏面パイル糸に関しても、内装カーペットの表面パイル糸に設けられた上記係合部と係合するものであれば、如何なるタイプのパイル糸であってもよい。
【0051】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、安全性に優れた内装カーペット、内装カーペットとフロアマットとの接合構造、および内装カーペットを備える自動車を提供するものであって、自動車産業に有利に利用される。
【符号の説明】
【0053】
11,31 内装カーペット、12a,12b,12c,12c,12c フロアマット、13 アクセルペダル、14 ブレーキペダル、15 第一領域、16 第二領域、17 床部、19,23,26,32 基布、20,24,34 表面パイル糸、21 表面側カーペット、22 裏面側カーペット、27 裏面パイル糸、28,35 係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内の床に敷設され、表面にパイル糸が設けられた内装カーペットであって、
前記表面パイル糸の先端部分を加熱して形成される縮れ部分によって構成され、前記内装カーペットの上にフロアマットが敷かれた場合に当該フロアマットの裏面に設けられたパイル糸と係合する係合部を有する、内装カーペット。
【請求項2】
前記内装カーペットは、自動車のアクセルペダルおよびブレーキペダルに近接する第一領域と、前記アクセルペダルおよびブレーキペダルから離隔している第二領域とに区分され、
前記第一領域の前記表面パイル糸は、前記係合部を有しておらず、
前記第二領域の前記表面パイル糸は、前記係合部を有している、内装カーペット。
【請求項3】
前記係合部は、鈎状に形成される、請求項1または2に記載の内装カーペット。
【請求項4】
前記内装カーペットは、タフテッドカーペットである、請求項1〜3のいずれかに記載の内装カーペット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の内装カーペットが敷設された、自動車。
【請求項6】
自動車内の床に敷設され、表面にパイル糸が設けられた内装カーペットと、
前記内装カーペットの上に敷かれて用いられ、裏面にパイル糸が設けられたフロアマットとの接合構造であって、
前記内装カーペットは、前記表面パイル糸の先端部分を加熱して形成される縮れ部分によって構成された係合部を有し、
前記フロアマットが前記内装カーペット上に敷かれた場合に、前記内装カーペットに設けられた前記係合部が、前記フロアマットの裏面パイルと係合することによって、前記フロアマットの前記内装カーペットに対する相対移動が規制される、接合構造。
【請求項7】
前記内装カーペットは、自動車のアクセルペダルおよびブレーキペダルに近接する第一領域と、前記アクセルペダルおよびブレーキペダルから離隔する第二領域とに区分され、
前記第一領域の前記表面パイル糸は、前記係合部を有しておらず、
前記第二領域の前記表面パイル糸は、前記係合部を有している、請求項6に記載の接合構造。
【請求項8】
前記係合部は、鈎状に形成される、請求項6または7に記載の接合構造。
【請求項9】
前記フロアマットの裏面に設けられたパイル糸は、ニードルパンチパイルである、請求項6〜8のいずれかに記載の接合構造。
【請求項10】
前記内装カーペットは、タフテッドカーペットである、請求項6〜9のいずれかに記載の接合構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−126292(P2012−126292A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280599(P2010−280599)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(597072213)ヨシミツ毛織株式会社 (2)
【Fターム(参考)】