説明

自動車の内装構造

【課題】車室内の部品形状・構造などに影響を与えることなく、乗員に車室内空間を広く感じさせて幅広感を感じさせることができる自動車の内装構造を提供する。
【解決手段】多数の所定形状が集合したパターンのシボ30が自動車の内装部品1の意匠面1Mに形成されている自動車の内装構造であって、車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて前記所定形状が徐々に小さくなっており、前記シボ30が形成されている意匠面1Mの上下方向の幅は、車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて徐々に短くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内のパネルであるインストルメントパネルの意匠面には意図的にシボ(しわ模様)を施してあり、乗員が誤って意匠面に物をぶつけたり前記物で意匠面を引っ掻いたりしても意匠面に傷が付きにくくしてある。このシボには動物の皮を模した皮革調の連続模様や幾何学模様などがある。
また、近年の進化した技術および自動車ユーザーからのニーズの高まりに伴って、車室内外での空間を快適にするための機能や仕様が噌加してきている。しかし、自動車の車室内空間の大きさ、車体の高さや幅自体に大きな広がりはないため、新たに追加する部品をレイアウトするスペースを車室内のインストルメントパネル内部などに見つけ出していかなければならない。
車室内のスペースは従来も最小限のスペース内で確保していたため余裕があるわけではなく、部品サイズの縮小技術に頼らざるを得なくなっていたが、部品サイズの縮小技術にも限界がある。その結果、近年の更なる機能や仕様の増加に伴い、部品レイアウトスペースを確保するには、インストルメントパネルを乗員側まで広げざるを得ない状況に陥ってきている。
このインストルメントパネルの乗員側への広がりは、乗員にとってインストルメントパネルが近づいてきているように感じられ、乗員が車室空間に窮屈感、圧迫感を感じるような事態が起きつつある。
そこで、従来、特許文献1に開示されているように、ドアトリムに車室内側を向いたミラーを設け、ミラーの高さ寸法よりもミラーの車両前後方向の寸法を長く設定し、ミラーをインストルメントパネルの後方に離して配置した構造があった。
これにより、リアシートに着座して前方を向いた乗員がミラーを見た時に、ミラーよりも前方の車室がミラーに前後に長く映り、乗員に車室前後方向の奥行き感を感じさせていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−201976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、ミラーの高さ寸法よりもミラーの車両前後方向の寸法が長く設定されているために、ミラーの寸法自体が従来よりも大型化し、大幅な重量増を招く。すなわち、ミラーは、乗員が視認したときに後方の安全確認できる最低限の視認エリア(ミラー領域)を確保した上で、デザインや空力性能を満足できるように設計される。従来技術のように、寸法を変化させた場合、視認エリアは当然満足させ、前後方向の寸法を長くしているので、無駄な形状が付くことになる。ミラーは、板金部品で形成されていることもあり、大幅な重量増は免れない。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、車室内の部品形状・構造などに影響を与えることなく、乗員に車室内空間を広く感じさせて幅広感を感じさせることができる自動車の内装構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
多数の所定形状が集合したパターンのシボが自動車の内装部品の意匠面に形成されている自動車の内装構造であって、
車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれて前記所定形状が徐々に小さくなっている点にある。(請求項1)
【0006】
自動車の内装部品の意匠面に形成されたシボの所定形状は、車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれて徐々に小さくなっているから、遠近法により乗員に前記意匠面に対して距離感を感じさせることができ、同じ車室内空間の大きさでも乗員に車室内空間を広く感じさせて幅広感を感じさせることができる。これにより、乗員に居住性(開放感)が高まったように見せることができ、商品性を向上させることができる。
例えば、シボの各所定形状が同一の大きさであると、乗員から見てインストルメントパネルの車幅方向外側の端部のシボが間延びした形状に見えるが、本発明の上記構成のように、前記所定形状を車幅方向中央部側から車幅方向外側になるにつれて徐々に小さくしていくことで、前記車幅方向外側の端部のシボの間延びを抑制してシボをきれいに見せることができ、見栄え(外観性)を向上させることができる。
また、部品同士の合わせが多い車幅方向中央部は、細かなシボが入っていると(前記所定形状が小さいと)、シボの入り方によっては部品間の合わせ部の隙間が広がって見えてしまうことがある(合わせ部では各所定形状は隙間と取られることがあり、シボが細かく入っていると、この隙間に見える割合が高まるため、隙間が広がっているように乗員の目につきやすくなり、外観不良と取られる可能性が高まる)が、シボの所定形状を車幅方向内側ほど大きくすることで、合わせ部の不良を目立ちにくくすることができる。
通常、インストルメントパネル本体に合わせる部品点数(オーディオパネル、エアコンパネル、シフトパネル、装飾パネルなど)が多い車幅方向内側では、それぞれの部品とインストルメントパネル本体との合わせを精度良く出したいため、隙間管理値などの誤差範囲を厳しく設定している。
一方、樹脂成形品である車室パネル等には成形誤差が必ず発生していることから、車幅方向外側でも隙間管理値などの誤差範囲を厳しく設定すると、前記成形誤差による部品の膨らみなどが原因で組み付けができなくなることがある。
そのため、車幅方向外側では、車室パネル等の成形誤差を吸収させるためにも部品内部に支持構造を設けず(支持構造によって隙間管理をしているが、外側は組み付かなくなることもあるため支持構造をあえてつけない)、隙間管理値などの誤差範囲を車幅方向内側と比べてルーズな設定にしている。しかし、部品内部に設ける支持構造がないことは、部品自体の強度が不足し、形状変形を引き起こしやすく、外観不良につながりやすい。
これに対して、本発明の上記の構成によれば、車幅方向外側ほどシボの所定形状を小さくして所定形状を細かく数多く設定することにより、若干ではあるが、車幅方向外側のインストルメントパネルの意匠面部部分の強度を増すことができ、隙間管理値などの誤差範囲がルーズに設定されていても、変形などによる外観不良を防止することができる。
また、従来用いてきた構造や部品にも、シボ形状の入り方を変更するだけで、同様の効果が得ることができる。このように構造や部品形状に左右されることなく、デザインの自由度や形状自由度を保持しながら、室内空間に幅広感を与えることが可能となる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記シボが形成されている意匠面の上下方向の幅は、車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれて徐々に短くなっていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記シボが形成されている意匠面の上下方向の幅は、車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれて徐々に短くなっているから、乗員に車室内空間を広く見せる効果をより効果的に与えることができる。
すなわち、図2(b)に示すように、シボ30の所定形状が車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて小さくなるシボ30のパターンの変化に、前記意匠面1Mの上下方向の幅が車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて徐々に短くなる意匠面1Mの変化が追加されることで遠近法の効果がより生じやすくなり、乗員50に前記意匠面1Mとの間の距離感を感じさせる効果を助長させることができる。図2(a)はシボ30の各所定形状を同一にした構造を示しており、この構造に比べて、図2(b)の構造では遠近法の効果がより確実に生じていることが分かる。
車幅方向に延びるインストルメントパネルの意匠面の上下方向の幅を車幅方向外側になるにつれて徐々に短くすることで、車幅方向でのインストルメントパネルの幅広感を乗員に与える効果に加え、車両前後方向においてもインストルメントパネルが乗員から離れているような遠近感を与える効果を得ることができる。
すなわち図3に示すように、車両内部のインストルメントパネル1は車両の上方から見たとき、車幅方向内側W1と比べ、車幅方向外側W2は車両前方側Frに折れ曲がった形状をしていることが多い。本発明の上記構成のように、シボが形成されている意匠面の上下方向の幅を、車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれて徐々に短くすることで、車幅方向外側に向けて乗員から離れた形状に、インストルメントパネルに沿った車幅方向内側から車幅方向外側に向けた遠近法により距離感を追加し、より乗員に車室内空間の広がりを感じさせることが出来る。このように車幅方向外側ほど、乗員から離れているように感じさせることで、相対する車幅方向内側に搭載される装置類を乗員の手前にあるように錯覚させ、強調させることができる。この車幅方向中央部には搭載される商品性を高める装置(部品、パネル)類が搭載されるが、本発明の上記構成により乗員の手前側にあるように錯覚させた装置類を引き立たせることにもつながる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記内装部品はインストルメントパネルであり、
前記インストルメントパネルの意匠面に操作パネルが設けられ、
前記操作パネルは前記所定形状に対応した形状に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれて前記シボの所定形状が徐々に小さくなっていると、例えば、前席の運転席から助手席側を眺めた時に車室内空間の幅広感を乗員に感じさせるが、図3に示すように、後席3Rからは前席3F1(運転席),3F2(助手席)のヘッドレストやシートバックにより、インストルメントパネル1の車幅方向外側W2の部分はほとんど見えない。図3における符号E1の破線はインストルメントパネル1の車幅方向中央部への乗員50の視線、E2の破線はインストルメントパネル1の車幅方向外側の部分への乗員50の視線、4はステアリング、1Mは意匠面、Frは車両前方側、Rrは車両後方側、W1は車幅方向内側、W2は車幅方向外側である。
そこで、本発明の上記構成のように、後席からも見えるインストルメントパネルの車幅方向中央部に配置されることが多い操作パネル(オーディオパネルなど)の形状をシボの所定形状に対応させることで、操作パネルから続くシボの所定形状の変化によって、前記幅広感を前席の乗員だけでなく、後席の乗員にも感じさせることができる。
さらに、車幅方向内側から車幅方向外側に向けて所定形状が並んでいることから、インストルメントパネルのデザインに統一感を持たすことができる。
また、例えば、車室内空間の快適性を向上させるために仕様が増え、それに伴って操作パネルの数が増えた場合にも、前記シボの所定形状と操作パネルの形状とが互い対応した形状をしていることで、インストルメントパネルに統一感が生まれ、すっきりしたレイアウトに見せることができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記所定形状の車幅方向の側辺は車幅方向外側に向かって尖っていると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
前記所定形状の車幅方向の側辺は車幅方向外側に向かって尖っているから、車幅方向外側に向かうシボの流れを乗員に感じさせることができて見栄えを向上させることができる。
また、フロントウインドウなどから光が入ることで、シボの形状が光ったように見えた場合、シボの角部の向きが車幅方向外側に統一されていることで、シボによる光の流れを乗員にきれいに見せることができ、見栄え(外観性)を向上させることができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記シボが形成されるインストルメントパネルの車幅方向の端部はドアトリム側に張り出し、
前記ドアトリム側に張り出した前記インストルメントパネルの車幅方向の端部を受け入れる凹部が前記ドアトリムに設けられていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
インストルメントパネルの車幅方向の端部をドアトリム側に張り出させることで、インストルメントパネルとドアトリムとの合わせ(見切り)が不鮮明になり、乗員の目の前のインストルメントパネルと乗員の側方のドアトリムとのデザイン上の一体感を乗員に与えることができる。これにより、車幅方向外側に向かうインストルメントパネルのシボの流れをドアトリム側で車両後方側に向かう流れへと変換し、インストルメントパネルとドアトリムとの一体化した幅広感を乗員に与えることができる。
そして、インストルメントパネルとドアトリムの間につながりを持たせることができ、インストルメントパネルとドアトリムの一体感を得ることができ、シボの流れは車両後方側へと変換されて、車室内空間で一体化した幅広感を生み出すことができる。(請求項5)
【0015】
本発明において、
前記ドアトリムの上面の車両前方側の端部は、車両前方側ほど上方に位置するように傾斜していると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0016】
図5に示すように、前記ドアトリム10の上面10Jの車両前方側Frの端部は車両前方側Frほど上方に位置するように傾斜しているから、図1,図4に示すように、インストルメントパネル1から続くシボ30と操作パネル5による幅広感の流れC(図4参照)をドアトリム10側でも表現し、車室内空間の幅広感を助長することができる。(請求項6)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、
車室内の部品形状・構造などに影響を与えることなく、乗員に車室内空間を広く感じさせて幅広感を感じさせることができる自動車の内装構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】自動車の車室の前部を車両後方側から見た斜視図
【図2】(a)は、シボの各所定形状が同一であり、かつ、シボが形成されている意匠面の上下方向の幅が、車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれて徐々に短くなっている構造の作用を示す図、(b)は、車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれてシボの所定形状が徐々に小さくなっており、かつ、シボが形成されている意匠面の上下方向の幅が、車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれて徐々に短くなっている構造の作用を示す図
【図3】後席の乗員から見えるインストルメントパネルの範囲を示す模式図
【図4】別実施形態のインストルメントパネルとドアトリム10の斜視図
【図5】別実施形態のインストルメントパネルとドアトリムの斜視図
【図6】図4のA−A断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動車の運転席3F1と助手席3F2の車両前方側Frにインストルメントパネル1(内装部品に相当)が配設され、運転席3F1の車両前方側Frのインストルメントパネル1から突出したロッドにステアリング4が連結され、運転席3F1と助手席3F2の間のセンターコンソール2から操作レバー6が突出して車室の前部が構成されている。インストルメントパネル1の車両前方側Frの上方にはフロントウインドガラス7が位置し、インストルメントパネル1の車幅方向中央部には操作パネル5(オーディオパネルなど)が設けられている。
【0020】
そして、多数の算盤玉形(所定形状に相当、車幅方向の両側辺は車幅方向外側W2に向かって尖っている)が集合したパターンのシボ30がインストルメントパネル1の意匠面1Mの全面に車幅方向ほぼ全長にわたって形成されている(ステアリング4よりも左側のシボ30は図示せず)。多数の算盤玉形は上下方向及び車幅方向に整列配置され、上側の算盤玉形の下辺が下側の算盤玉形の上辺に隙間(小さな隙間)を空けて平行に隣接している。また、上下に隣接する一対の算盤玉形の斜辺により形成される三角形状の空間に、その横側方の算盤玉形の車幅方向に尖った側部が隙間(小さな隙間)を空けて嵌合している。
【0021】
上下方向に並ぶ算盤玉形は互いに同一大きさに形成され、車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて算盤玉形は徐々に小さくなっている。そして、前記シボ30が形成されている意匠面1Mの上辺は上方に凸の円弧状(緩やかに曲がる円弧状)に形成され、意匠面1Mの下辺は下方に凸の円弧状(緩やかに曲がる円弧状)に形成されて、前記意匠面1Mの上下方向の幅が、車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて徐々に短くなっている。
【0022】
また、前記意匠面1Mの車幅方向中央部に操作パネル5が設けられ、操作パネル5は算盤玉形に形成されている。操作パネル5の算盤玉形の上部の高さ寸法は下部の高さ寸法よりも短く設定されて、算盤玉形の上側の斜辺が上辺に対して成す角度が、下側の一対の斜辺が下辺に対して成す角度よりも大きく設定されている。
【0023】
上記の構成によれば、
(1) 前記シボ30の算盤玉形は、車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて徐々に小さくなっているから、遠近法により乗員50に前記意匠面1Mに対して距離感を感じさせることができ、同じ車室内空間の大きさでも乗員50に車室内空間を広く感じさせて幅広感を感じさせることができる。これにより、乗員50に居住性(開放感)が高まったように見せることができ、商品性を向上させることができる。
例えば、シボ30の各算盤玉形が同一の大きさであると、乗員50から見てインストルメントパネル1の車幅方向外側W2の端部1Aのシボ30が間延びした形状に見えるが、本発明の上記構成のように、算盤玉形を車幅方向中央部側から車幅方向外側W2になるにつれて徐々に小さくしていくことで、前記車幅方向外側W2の端部1Aのシボ30の間延びを抑制してシボ30をきれいに見せることができ、見栄え(外観性)を向上させることができる。
また、部品同士の合わせが多い車幅方向中央部は、細かなシボ30が入っていると(前記算盤玉形が小さいと)、シボ30の入り方によっては部品間の合わせ部の隙間が広がって見えてしまうことがある(合わせ部では各算盤玉形は隙間と取られることがあり、シボ30が細かく入っていると、この隙間に見える割合が高まるため、隙間が広がっているように乗員の目につきやすくなり、外観不良と取られる可能性が高まる)が、シボ30の算盤玉形を車幅方向内側W1ほど大きくすることで、合わせ部の不良を目立ちにくくすることができる。
通常、インストルメントパネル本体に合わせる部品点数(オーディオパネル、エアコンパネル、シフトパネル、装飾パネルなど)が多い車幅方向内側W1では、それぞれの部品とインストルメントパネル本体との合わせを精度良く出したいため、隙間管理値などの誤差範囲を厳しく設定している。
一方、樹脂成形品である車室パネル等には成形誤差が必ず発生していることから、車幅方向外側W2でも隙間管理値などの誤差範囲を厳しく設定すると、前記成形誤差による部品の膨らみなどが原因で組み付けができなくなることがある。
そのため、車幅方向外側W2では、車室パネル等の成形誤差を吸収させるためにも部品内部に支持構造を設けず(支持構造によって隙間管理をしているが、外側は組み付かなくなることもあるため支持構造をあえてつけない)、隙間管理値などの誤差範囲を車幅方向内側と比べてルーズな設定にしている。しかし、部品内部に設ける支持構造がないことは、部品自体の強度が不足し、形状変形を引き起こしやすく、外観不良につながりやすい。
これに対して、本発明の上記の構成によれば、車幅方向外側W2ほどシボ30の算盤玉形を小さくして算盤玉形を細かく数多く設定することにより、若干ではあるが、車幅方向外側W2のインストルメントパネル1の意匠面部部分の強度を増すことができ、隙間管理値などの誤差範囲がルーズに設定されていても、変形などによる外観不良を防止することができる。
また、従来用いてきた構造や部品にも、シボ30の入り方を変更するだけで、同様の効果が得ることができる。このように構造や部品形状に左右されることなく、デザインの自由度や形状自由度を保持しながら、室内空間に幅広感を与えることが可能となる。
そして、ミラーを大型化させる従来の技術に比べると軽量化することができる。
【0024】
(2) 前記シボ30が形成されている意匠面1Mの上下方向の幅は、車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて徐々に短くなっているから、乗員50に室内空間を広く見せる効果をより効果的に与えることができる。
すなわち、図2(b)に示すように、シボ30の算盤玉形が車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて小さくなるシボ30のパターンの変化に、前記意匠面1Mの上下方向の幅が車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて徐々に短くなる意匠面1Mの変化が追加されることで遠近法の効果がより生じやすくなり、乗員50に前記意匠面1Mとの間の距離感を感じさせる効果を助長させることができる。図2(a)はシボ30の各算盤玉形を同一にした構造を示しており、この構造に比べて、図2(b)の構造では遠近法の効果がより確実に生じていることが分かる。
車幅方向に延びるインストルメントパネル1の意匠面1Mの上下方向の幅を車幅方向外側W2になるにつれて徐々に短くすることで、車幅方向でのインストルメントパネル1の幅広感を乗員50に与える効果に加え、車両前後方向においてもインストルメントパネル1が乗員50から離れているような遠近感を与える効果を得ることができる。
すなわち図3に示すように、車両内部のインストルメントパネル1は車両の上方から見た時、車幅方向内側W1と比べ、車幅方向外側W2は車両前方側Frに折れ曲がった形状をしている。本発明の上記構成のように、シボ30が形成されている意匠面1Mの上下方向の幅を、車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて徐々に短くすることで、車幅方向外側W2に向けて乗員50から離れた形状に、インストルメントパネル1に沿った車幅方向内側W1から車幅方向外側W2に向けた遠近法により距離感を追加し、より乗員50に車室内空間の広がりを感じさせることができる。このように車幅方向外側W2ほど、乗員50から離れているように感じさせることで、相対する車幅方向内側W1に搭載される装置類を乗員の手前にあるように錯覚させ、強調させることができる。この車幅方向中央部には搭載される商品性を高める装置(部品、パネル)類が搭載されるが、本発明の上記構成により乗員の手前にあるように錯覚させた装置類を引き立たせることにもつながる。
【0025】
(3) 車幅方向中央部から車幅方向外側W2になるにつれて前記算盤玉形が徐々に小さくなっていると、例えば、前席の運転席3F1から助手席3F2側を眺めた時(図1に乗員50(運転者)の視線を矢印Bで示してある。)に車室内空間の幅広感を乗員50に感じさせるが、図3に示すように、後席3Rからは前席3F1(運転席),3F2(助手席)のヘッドレストやシートバックにより、インストルメントパネル1の車幅方向外側W2の部分はほとんど見えない。図3における符号E1の破線はインストルメントパネル1の車幅方向中央部への乗員50の視線、E2の破線はインストルメントパネル1の車幅方向外側の部分への乗員50の視線、4はステアリング、1Mは意匠面、Frは車両前方側、Rrは車両後方側、W1は車幅方向内側、W2は車幅方向外側である。
そこで、本発明の上記構成のように、後席3Rからも見えるインストルメントパネル1の車幅方向中央部に配置されている操作パネル5の形状をシボ30の算盤玉形に対応させることで、操作パネル5から続くシボ30の算盤玉形の変化によって、前記幅広感を前席の乗員50だけでなく、後席の乗員50にも感じさせることができる。
さらに、車幅方向内側W1から車幅方向外側W2に向けて同一の形状(算盤玉形)が並んでいることから、インストルメントパネル1のデザインに統一感を持たすことができる。
また、例えば、車室内空間の快適性を向上させるために仕様が増え、それに伴って操作パネル5の数が増えた場合にも、前記シボ30の算盤玉形と操作パネル5の形状とが互い対応した形状をしていることで、インストルメントパネル1に統一感が生まれ、すっきりしたレイアウトに見せることができる。
【0026】
(4) 前記算盤玉形の車幅方向の側辺は車幅方向外側W2に向かって尖っているから、車幅方向外側W2に向かうシボ30の流れを乗員50に感じさせることができて見栄えを向上させることができる。
また、フロントウインドウなどから光が入ることで、シボ30の形状が光ったように見えた場合、シボ30の角部の向きが車幅方向外側W2に統一されていることで、シボ30による光の流れを乗員50にきれいに見せることができ、見栄え(外観性)を向上させることができる。
【0027】
[別実施形態]
(1) 図4〜図6に示すように、前記シボ30が形成されるインストルメントパネル1の車幅方向の端部1Aがドアトリム10側に張り出し、ドアトリム10側に張り出したインストルメントパネル1の車幅方向の端部1Aを受け入れる凹部15がドアトリム10に設けられていてもよい。
上記の構成によれば、インストルメントパネル1の車幅方向の端部1Aをドアトリム10側に張り出させることで、インストルメントパネル1とドアトリム10との合わせ(見切り)が不鮮明になり、乗員50の目の前のインストルメントパネル1と乗員の側方のドアトリム10とのデザイン上の一体感を乗員に与えることができる。これにより、車幅方向外側W2に向かうインストルメントパネル1のシボ30の流れをドアトリム10側で車両後方側に向かう流れへと変換し、インストルメントパネル1とドアトリム10との一体化した幅広感を乗員に与えることができる。
そして、インストルメントパネル1とドアトリム10の間につながりを持たせることができ、インストルメントパネル1とドアトリム10の一体感を得ることができ、シボ30の流れは車両後方側へと変換されて、車室内空間で一体化した幅広感を生み出すことができる。
【0028】
前記ドアトリム10の上端部は車幅方向外側に折曲し、図5に示すように、前記ドアトリム10の上面10Jの車両前方側Frの端部は車両前方側Frほど上方に位置するように傾斜している。この構成によれば、図1,図4に示すように、インストルメントパネル1から続くシボ30と操作パネル5による幅広感の流れCをドアトリム10側でも表現し、車室内空間の幅広感を助長することができる。
【0029】
(2) 本発明は、インストルメントパネル以外のパネルや開閉式ボックスのリッド、エアバッグのリッドなど乗員50の目に触れる内装部品全般に適用することができる。
【0030】
(3) 本発明は、前記算盤玉形以外の形状が集合したパターンのシボ30にも適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 内装部品(インストルメントパネル)
1A インストルメントパネルの車幅方向の端部
1M 内装部品の意匠面
5 操作パネル
10 ドアトリム
10J 上面(ドアトリムの上面)
15 凹部
30 シボ
Fr 車両前方側
W2 車幅方向外側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の所定形状が集合したパターンのシボが自動車の内装部品の意匠面に形成されている自動車の内装構造であって、
車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれて前記所定形状が徐々に小さくなっている車室構造。
【請求項2】
前記シボが形成されている意匠面の上下方向の幅は、車幅方向中央部から車幅方向外側になるにつれて徐々に短くなっている請求項1記載の自動車の内装構造。
【請求項3】
前記内装部品はインストルメントパネルであり、
前記インストルメントパネルの意匠面に操作パネルが設けられ、
前記操作パネルは前記所定形状に対応した形状に形成されている請求項1又は2記載の自動車の内装構造。
【請求項4】
前記所定形状の車幅方向の側辺は車幅方向外側に向かって尖っている請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動車の内装構造。
【請求項5】
前記シボが形成されるインストルメントパネルの車幅方向の端部はドアトリム側に張り出し、
前記ドアトリム側に張り出した前記インストルメントパネルの車幅方向の端部を受け入れる凹部が前記ドアトリムに設けられている請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動車の内装構造。
【請求項6】
前記ドアトリムの上面の車両前方側の端部は、車両前方側ほど上方に位置するように傾斜している請求項5記載の自動車の内装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−14264(P2013−14264A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149419(P2011−149419)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】