説明

自動車の収納体

【課題】収納体本体の重量を増大させることなく、その剛性を高めることにある。
【解決手段】収納体本体15の上方の開口部13における後部シート3側の縁部近傍で車幅方向に一体に延びるヒンジ部17を介して車体前後方向に回動可能に板状の回動ボード19を収納体本体15に一体に形成する。回動ボード19は、開口部13を開放した状態で常時車体前方に付勢されて上端がシートバック4背面に当接して起立状態を保持し、シートバック4のリクライニング動作時又は車体前後方向への移動に追従してヒンジ部17を支点に回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の後部シート後方の荷室フロア下方に取り付けられる収納体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された収納体は、自動車の後部シート後方の荷室フロア下方に形成された樹脂製の凹状収納体本体と、該収納体本体の開口部を閉塞する樹脂製のフロアボードとを備えている。上記フロアボードは、固定ボードと回動ボードとを車幅方向に延びるヒンジ部を介して折畳み・展開可能に連結したものである。上記固定ボードは、収納体本体の底面から隆起する固定パネル部に、車幅方向両側の2箇所でファスナにより固定されている。
【特許文献1】特開2006−199063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、回動ボードを固定ボードを介して車幅方向の2箇所のみで収納体本体に連結しているだけなので、回動ボードは収納体本体の剛性向上には余り寄与しておらず、収納体本体の肉厚を厚くしたり、リブを多数形成する等して剛性を高める必要があった。しかし、このようにすると収納体本体の重量が増大し、自動車の軽量化の観点から好ましくない。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、収納体本体の重量を増大させることなく、その剛性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、収納体本体に回動ボードを車幅方向に亘って一体に形成したことを特徴とする。
【0006】
具体的には、本発明は、自動車の後部シート後方の荷室フロア下方に取り付けられる収納体を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上方に開口部を有し、車体に取り付けられる樹脂製の箱状収納体本体と、該収納体本体の上記開口部における後部シート側の縁部近傍で車幅方向に一体に延びる樹脂製のヒンジ部を介して車体前後方向に回動可能に上記収納体本体に一体に形成された板状の回動ボードとを備え、上記回動ボードは、上記開口部を開放した状態で常時車体前方に付勢されて上端がシートバック背面に当接して起立状態を保持し、該シートバックのリクライニング動作時又は車体前後方向への移動に追従して上記ヒンジ部を支点に回動するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車の収納体において、上記ヒンジ部は、上記収納体本体及び回動ボードを一体に連結する薄肉ヒンジ部であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自動車の収納体において、上記収納体本体の後部シート側の側壁部外面には、上端がヒンジ部より下方に位置し、上記回動ボードが車体前方に略水平に倒れた状態で回動ボードのヒンジ部側基端に近接又は当接する支持部が車体前方に向けて一体に突設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、収納体本体は、ヒンジ部を介して車幅方向に亘って一体に形成された回動ボードにより剛性が高まっている。したがって、収納体本体の剛性向上のためにその肉厚を厚くしたり、リブを必要以上に形成したりする必要がなく、換言すれば、肉厚やリブ等を最小限に抑制することができる。これにより、収納体本体を重量増大させることなく剛性を高めることができる。
【0011】
また、収納体本体と回動ボードとを別体にした場合に比べて部品点数が少なくなり、製造コストを削減できる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、収納体本体、回動ボード、及びヒンジ部を1つの成形型で一体に成形できるので、製造が容易になる。また、回動ボードが略水平に倒れた状態の形状に収納体を成形してから回動ボードを起立状態にすることで、回動ボードを車体前方に常時付勢された状態にすることができるため、回動ボード付勢用のコイルスプリング等の付勢部品が不要となるとともに、ヒンジ部周りにアンダーカット部を有さない簡素な構造の成形型で収納体を成形できる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、車体前方に倒れた状態の回動ボードに荷物が載置されると、当該回動ボードのヒンジ部周辺が支持部により下方から支持されるので、当該状態で回動ボードに荷物が載置されても、当該荷物の荷重が支持部に分散してヒンジ部に集中しない。したがって、回動ボードのヒンジ部周辺の変形やヒンジ部の破損が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、自動車の後部荷室1を示す。該後部荷室1は、リクライニング動作可能なシートバック4を備えた後部シート3後方に位置している。該後部荷室1の車体後方下寄りの位置には、金属製の車体パネル21により段差状の後方受け部21aが形成され、上記後部荷室1の車体前方下端近傍にも、車体パネル21により前方受け部21bが形成されている。上記車体パネル21の後方受け部21a及び前方受け部21b上には本発明の収納体11が載置されている。
【0016】
上記収納体11は、図2にも示すように、上方に略矩形状の開口部13を有するとともに内部に収納部9を有する略矩形箱状の樹脂製収納体本体15を備えている。該収納体本体15は、底壁部15aと、該底壁部15aを車体前後左右方向から取り囲む側壁部15bと、該側壁部15bの開口部13端縁から外側方に全周に亘って張出形成されたフランジ部15cとで構成されている。また、上記底壁部15aと側壁部15bとの後部シート3側隅部には、当接部15dが切欠き状に形成されている。そして、上記収納体本体15における車体後方側のフランジ部15cが上記後方受け部21aに上方から当接して支持されるとともに、当接部15dが上記前方受け部21bによって上方から当接して支持され、上記収納体本体15が車体パネル21に取り付けられている。
【0017】
上記収納体本体15のフランジ部15c上には、上記開口部13を開閉可能に樹脂製フロアボード5が載置され、該フロアボード5によって上記後部荷室1のフロア(荷室フロア)が構成されている。なお、上記収納部9には、スペアタイヤや工具等が収納される。
【0018】
また、上記収納体本体15における後部シート3側のフランジ部15cの先端縁には、上方に突出する突出部23が車幅方向全体に亘って形成され、該突出部23の突出端縁には、矩形板状の樹脂製回動ボード19が樹脂製で薄肉のヒンジ部17を介して車体前後方向に回動可能に収納体本体15に一体に連結され、該ヒンジ部17は収納体本体15の車幅方向全体に亘って一体に延びている。このヒンジ部17は、上記回動ボード19を図1の二点鎖線のように略水平に倒れた状態で上面に形成されたV溝18により薄肉に形成されている。また、収納体本体15の後部シート3側の側壁部15b外面には、上端がヒンジ部17より下方に位置し、回動ボード19が車体前方に略水平に倒れた状態で回動ボード19のヒンジ部17側基端に近接して該基端と上端との間に隙間Sを有するように、板状支持部25が車幅方向に間隔をあけて車体前方に向けて複数個一体に突設されている。
【0019】
上記収納体11は、回動ボード19が略水平に倒れた姿勢で一体成形される。したがって、成形後に回動ボード19を起立状態にすることで、その反力により回動ボード19を車体前方に常時付勢された状態にすることができる。成形に際して、回動ボード19を略水平に倒れた姿勢で成形するのは、ヒンジ部17に対応するV溝18がアンダーカットとなるのを回避するためである。この場合、支持部25と回動ボード19のヒンジ部17側基端との間に車幅方向にスライドする薄板状のスライド型を対応するように配置する。このようにして成形するのは、回動ボード19を回動可能にする必要があるからであり、上記スライド型を用いることで、成形後に支持部25の上端と回動ボード19のヒンジ部17側基端とが一体に成形されないように両者間に隙間Sを形成するためである。当該成形方法によると、収納体本体15、回動ボード19、及びヒンジ部17を1つの成形型で一体に成形できるので、製造が容易になる。
【0020】
上記のように構成された収納体11では、上記回動ボード19は、シートバック4がリクライニングすると該リクライニング動作に追従してヒンジ部17を支点に車体前後方向に回動する。具体的に説明すると、回動ボード19は、図1の実線で示すように、常時車体前方に付勢されていて、乗員が着座すべくシートバック4が起立状態となっているときは、回動ボード19先端部がシートバック4の後面と当接して起立状態を保持する。一方、図1の二点鎖線で示すように、シートバック4が車体前方に最も傾倒したときには回動ボード19が略水平に倒れてシートバック4後面上に載る。このときの回動ボード19は、展開状態(略水平状態)に成形型で成形された際の状態であるため、回動ボード19のヒンジ部17側基端と支持部25の上端とが間に隙間Sを有して近接しているが、回動ボード19のヒンジ部17側基端近傍に荷物等が積載され該基端に荷重が加わると、回動ボード19のヒンジ部17側基端が支持部25の上端に上方から当接して支持部25が回動ボード19を下方から支持し、回動ボード19がフロアボード5とともに略平坦なトランクフロアを形成する。したがって、当該状態で回動ボード19に荷物が載置されても、当該荷物の荷重が支持部25に分散してヒンジ部17に集中しない。これにより、回動ボード19のヒンジ部17周辺の変形やヒンジ部17の破損が防止される。
【0021】
したがって、本実施形態によれば、収納体本体15は、ヒンジ部17を介して車幅方向に亘って一体に形成された回動ボード19により剛性が高まっている。したがって、収納体本体15の剛性向上のためにその肉厚を厚くしたり、リブを必要以上に形成したりする必要がなく、換言すれば、肉厚やリブ等を最小限に抑制することができる。これにより、収納体本体15を重量増大させることなく剛性を高めることができる。
【0022】
また、収納体本体15と回動ボード19とを別体にした場合に比べて部品点数が少なくなり、製造コストを削減できる。
【0023】
なお、本実施形態では、板状支持部25を間欠的に複数箇所に突設したが、支持部25は他の形状であってもよく、例えば、車幅方向に連続する1本のブロック状のもの、あるいは該ブロック状のものを車幅方向に複数に分割したものであってもよい。
【0024】
また、本実施形態では、回動ボード19がシートバック4のリクライニング動作に追従して車体前後方向に回動するようになっているが、シートバック4の車体前後方向への移動に追従して車体前後方向に回動するようにしてもよい。
【0025】
また、本実施形態では、突出部23の先端にヒンジ部17を形成したが、収納体本体15の開口部13における後部シート3側の縁部近傍にヒンジ部17を形成するのであれば、他の箇所にヒンジ部17を形成してもよい。また、収納体11のヒンジ部17周辺の形状は、フランジ部15c及び突出部23からなる本実施形態の形状に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、例えば自動車の後部シート後方の荷室フロア下方に取り付けられる収納体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る収納体が取り付けられた自動車の後部荷室を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る収納体の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
3 後部シート
4 シートバック
11 収納体
13 開口部
15 収納体本体
15b 側壁部
17 ヒンジ部
19 回動ボード
25 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の後部シート後方の荷室フロア下方に取り付けられる収納体であって、
上方に開口部を有し、車体に取り付けられる樹脂製の箱状収納体本体と、
該収納体本体の上記開口部における後部シート側の縁部近傍で車幅方向に一体に延びる樹脂製のヒンジ部を介して車体前後方向に回動可能に上記収納体本体に一体に形成された板状の回動ボードとを備え、
上記回動ボードは、上記開口部を開放した状態で常時車体前方に付勢されて上端がシートバック背面に当接して起立状態を保持し、該シートバックのリクライニング動作時又は車体前後方向への移動に追従して上記ヒンジ部を支点に回動するように構成されたことを特徴とする自動車の収納体。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の収納体において、
上記ヒンジ部は、上記収納体本体及び回動ボードを一体に連結する薄肉ヒンジ部であることを特徴とする自動車の収納体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の自動車の収納体において、
上記収納体本体の後部シート側の側壁部外面には、上端がヒンジ部より下方に位置し、上記回動ボードが車体前方に略水平に倒れた状態で回動ボードのヒンジ部側基端に近接又は当接する支持部が車体前方に向けて一体に突設されていることを特徴とする自動車の収納体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−137703(P2010−137703A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315677(P2008−315677)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】