説明

自動車の換気システム用のエアフィルタ

本発明は、フィルタフレーム(2)とフィルタフレーム(2)に完全に囲まれるよう固定されたフィルタ媒体(3)とを有する、自動車の換気システム(4)用のエアフィルタ(1)であって、その表面部分に沿って収容スロット(40)に挿入可能であり、少なくともフィルタフレーム(2)の挿入領域に沿ってフィルタフレーム(2)と挿入スロット(40)の壁との間で封止されるエアフィルタ(1)に関する。本発明によれば、フィルタ(1)をできるだけ力が要らない簡単な方法で換気システム(4)に組み込むことができるようにするために、フィルタシステム(2)は、挿入方向に面する端側に、挿入方向で位置合わせされる少なくとも1つのガイドスロット(20)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の特徴を有する自動車の換気システム用のエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのフィルタは特許文献1に開示されている。このようなエアフィルタは、フィルタフレームと、前記フィルタフレームに完全に囲まれるように固定されたフィルタ媒体とを有する。換気システムのエアダクトに取り付ける場合、このタイプのフィルタはその表面の方向に沿って換気システムの収容スロットに挿入される。この場合、エアダクトのハウジングに挿入されるエアフィルタを案内するために、くぼみが設けられ、くぼみはスライドガイドの役割を果たし、エアフィルタを嵌め込まれている状態で、エアフィルタ内の流れ方向と逆方向に支える。スライドガイドの向きが互いに平行である場合、スライドガイド沿いの挿入スロットとの接触面が大きくなるため、取り付けにかなりの力が必要となることが予想可能であるため、開示されているエアフィルタでは、斜めに収束するスライドガイドとフィルタフレームの外面が提供されている。
【0003】
【特許文献1】独国特許発明第42 34 047 C1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、嵌め込みが簡単であり、嵌め込んだ状態で所定の位置に容易に固定されるエアフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有するエアフィルタによって達成される。このようなエアフィルタは、フィルタフレームと、その中に固定されたフィルタ媒体とを有し、フィルタをその面部分に沿って換気システムの収容スロットに挿入できる。フィルタは、挿入され嵌め込まれた状態では、フィルタフレームの挿入領域に沿って、フィルタフレームと対向して配置された挿入スロットの壁との間で封止される。換気システムの対応する挿入スロットへのエアフィルタの挿入について特に小さな取り付け力を実現するため、フィルタは、特別に構成した有効面を挿入スロットのスライドガイドに連結する必要はなく、挿入方向に面したフィルタフレーム端側に、挿入方向を向いた少なくとも1つのガイドスロットを有する。面部分に沿って(つまり、エア流がエアフィルタ内を通る方向に対して横切る方向に)エアフィルタを挿入することで、フィルタを交換するための構造スペースはほとんど必要ない。
【0006】
このタイプのエアフィルタでは、フィルタを挿入したときに、換気システムのハウジングの挿入スロットに設けられるガイドピンが、フィルタフレームのガイドスロットと係合できるとともに、挿入と同時に、ガイドスロットが特に力が要らない方法でガイドされ、挿入し嵌め込んだ取り付け位置にガイドスロットを固定することができる。特に力が要らない方法でエアフィルタを挿入できるだけでなく、フィルタフレームのガイドスロットによって、特に力が要らない方法で換気システムの挿入スロットにエアフィルタを取り込むことができる。これは、それぞれ対応するガイドピンの長さに応じて、エアフィルタが非常に挿入プロセスにおいて遅いポイントでのみ、及び特に前記ガイドピンの領域内だけ(つまり、挿入方向に面したガイドフレーム端側の領域内でのみ)ガイドされ、特に反対側(つまり、挿入方向と反対向きのフィルタフレーム端側)では横方向にまだ可動なためである。このため、換気システムの挿入スロットへの挿入時、エアフィルタは、その面部分に沿って例えば緩い曲線に沿ってでさえ動かされることができ、又は構造上の障害物やエッジ周りの案内では、エアフィルタの面部分に対して横方向に少しだけ動かされることさえ可能である。特に、このタイプの可動性は、横方向のくぼみによって案内される挿入スロットが、フィルタを嵌め込み状態に固定するとしたら、妨げられる。
【0007】
更に、このタイプのエアフィルタでは、挿入スロットの領域で換気システムのハウジングの横方向のガイドくぼみを省略できるため、特に単純かつ構造スペースを節約した換気システムのハウジングの構成が可能である。
【0008】
更に、特に特定の装置の変形例でエアフィルタが嵌め込まれていない場合、関係するエッジでの騒音の発生が回避される。このタイプのエアフィルタにより、フレームを取り囲むとともに、その有効長が大きいため、全体として大きな覆い面を有するフィルタのガイドショルダを比較的小さい覆いを有するガイドピンに交換できるため、このタイプのフィルタは空気抵抗及び換気システムによる騒音の発生について改善をもたらす。
【0009】
挿入スロットにおけるエアフィルタの所定の取り付け位置を保証するため、エアフィルタの特定の実施形態では、挿入方向に面したフィルタフレーム端側のガイドスロットが、表面の中心から外れて配置される。これによって、ねじれた取り付け位置にエアフィルタを取り付けることができないように防止される。挿入方向に面したフィルタ端側に複数の挿入スロットが設けられる場合、この効果を実現するために、表面の中心に対して、相互に非対称に配置された構成で、前記挿入スロットが設けられる。
【0010】
特に費用効果が高く軽量なフィルタの構成を可能にするため、プリーツ状(即ち、折り返しのある)のフィルタフリースを有するフィルタ媒体が設けられる。又、これによって、フィルタ媒体の特に大きな表面積も可能になる。
【0011】
エアフィルタが換気システムの挿入スロットに挿入される際に、周囲の障害物又はエッジによってフィルタのプリーツ状のフィルタ媒体に損傷を来さないようにするため、エアフィルタの特定の改良形態では、フィルタのプリーツは、その折り目、つまり折り畳み縁端部の細長い範囲がフィルタの挿入方向に配向された状態で挿入される。これによって、角のある障害物が、フィルタの谷部に対して横方向にフィルタ媒体に係合されることが回避される。更に、ガイドスロットに係合するガイドピンを、フィルタ媒体又はフィルタフレームの特別な構成がなくても、プリーツの谷間に配置できる。
【0012】
エアフィルタの特別な実施形態では、ガイドスロットは、その全表面範囲が挿入方向に面した端部に沿った状態で(つまり、挿入方向に関してプリーツの谷部内で横方向に、つまりプリーツ状のフィルタ媒体の2つの折り目の間で重なることなく)配置されることが実現される。これにより、フィルタ媒体は、ガイドスロットを取り囲む、フィルタフレームの内側領域に沿って更に切り取ることなく、フィルタフレームに特に簡単に取り付けられることも可能である。ガイドスロットの開放設計の場合、このタイプの配置により、フィルタ媒体をその環状留め具に沿ってフィルタフレーム内に完全に封止できる。ガイドスロットの開放設計の場合、このタイプの配置では、更に、関連する換気システムのガイドピンがガイドスロットに入るようにすることで、フィルタ媒体に損傷を来さないようにしている。
【0013】
エアフィルタの特定の改良形態では、ガイドスロットが、フィルタフレームのシールの上流にてプリーツの谷部にその開口部から基部に向かう方向に配置される。このため、ガイドスロットは、エアフィルタのシールの上流と下流で、フィルタフレーム内にフィルタフレームの壁の両側に配置される。特に、ガイドスロットの開放設計の場合、フィルタスロットの開口部によってフィルタを循環する流れは、シール及びフィルタ媒体を通り過ぎる。
【0014】
最も単純な設計では、ガイドスロットは穴状の開口部としてフィルタフレームに構成される。換気システムの対応するガイドピンは、少なくとも流れが通る方向及びそれと反対の方向に特にはすべての側部でフィルタを支持するような方法で、フィルタフレームの前記穴状の開口部に受け止められるようにすることができる。
【0015】
この場合、穴状の開口部は、フィルタフレームの対応するへこみによって形成すること、或いは完全に囲まれるようにフィルタフレームと境界を接することができる。
【0016】
エアフィルタを確実に封止するため、エアフィルタの一実施形態は、フィルタフレームに溝状のくぼみによって形成されるガイドスロットを有する。これにより、穴状の開口部でエアフィルタを循環する流れが回避される。
【0017】
エアフィルタの更なる有利な改良形態は、前述した実施形態の組合せ並びにその図面及び説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、換気システムにおいてエアフィルタ1が嵌め込まれた状態の断面図であり、エアフィルタ1が挿入されるエアダクト4の一部の領域だけを示したものである。この図に基づく断面平面は、エアフィルタ1の表面部分に対して垂直方向に位置し、換気システム4の挿入スロット40の挿入開口部に平行に位置している。このため、視線方向は、挿入スロット40へエアフィルタ1を挿入する方向の、挿入スロット40の挿入開口部と反対方向となる。エアフィルタ1はエアフィルタフレーム2を有し、エアフィルタフレーム2は例えば繊維材料又は段ボール材から製造され得るか、或いは射出成形プラスチック部品の形態となり得る。プリーツ状のフィルタフリースとして具現化されたフィルタ媒体3がフレーム2内に固定される。フィルタ媒体3は、エアフィルタのフレーム2に、完全に囲まれるように、従って密に、該エアフィルタフレーム2を形成する壁の内側に沿って固定される。フィルタ媒体3のプリーツは、その折り畳み縁端部が挿入方向になるような向きである。フィルタフレーム2と換気システム4の周囲のハウジングとの間では、挿入された領域を包囲するシール5によってエアフィルタ1が封止される。エアフィルタ1が挿入される領域では、換気システムのハウジングが挿入スロット40を備える。挿入スロット40の壁は縁端部のない形状を有し、この形状は流れが通る方向の上流及び下流に取り付けられたエアダクトの壁と実質的につながっている。例えば装置の変形例の内容において、エアフィルタの取り付けが省略されている場合、騒音や空気抵抗を発生させるハウジングエッジが換気システム4のエアダクトに設けられることはない。
【0019】
エアフィルタ1(ここでは、嵌め込まれた状態で図示)は、フィルタフレーム2の末端壁(挿入方向前面に位置する)に、ガイドスロット20(ここで示す例示の実施形態では2つの異なる構成で図示)を有する。各ガイドスロット20の断面は円形の輪郭を有し、この輪郭内に、換気システム4のハウジングの丸いガイドピン41が挿入される。このタイプのガイドは摩擦面が小さいため、換気システムの挿入スロット40に挿入されるエアフィルタ1は特に力が要らない方法でガイドされ、嵌め込まれた状態に確実に固定される。挿入方向に対して横方向のエアフィルタ1の断面部では、エアフィルタ1の偏心的に設けられた2つのガイドスロット20が、対応する表面の中心に対して非対称的に配置され、従って、挿入スロット20を有するエアフィルタ1は、1つの取り付けポイントでしか、換気システム4のハウジングの対応するガイドピン41に押し込み、取り付けることができない。
【0020】
エアフィルタ1は、ガイドスロット20を介して換気システム4のハウジングのガイドピン41で、嵌め込み状態に、特にその中を流れが通る方向及びそれと反対方向に支持される。フィルタフレーム2の2つのガイドスロット20は構造が異なる。挿入スロットの一方は、ガイドフレーム2に設けられている溝状くぼみと境を接する。フィルタフレーム2の厚さが適切で、挿入方向に延びるガイドピン41の範囲が短ければ、前記くぼみは前記フィルタフレームの厚さ範囲で配置できる。図示した例示の実施形態では、ガイドスロット20はフィルタフレームのドーム形に突起した部分と境を接している。このドーム形の突起部分は、ガイドフレーム2の成形製造時に、フィルタフレーム2またはフィルタフレーム2の壁に取り付けられた接着部によって提供できる。
【0021】
もう一方の受け入れスロット20は、フィルタフレーム2の穴状の開口部と境を接する。前記穴状の開口部は、フィルタフレーム2の円形の切抜きによって形成される。ガイドフレーム2のガイドスロット20は、プリーツ状のフィルタ媒体3の谷部に全表面範囲が収まる状態で配置される。これにより、フィルタ媒体3は、特に、簡単並びに環状で密に、ガイドスロット20と境を接するガイドフレーム2の要素21を越え、ガイドスロット20と境を接する穴状の開口部を越えてフィルタフレーム2を形成する壁の内側に固定され得る。この場合、ガイドスロット20は更に、プリーツの谷部においてその開口部からその底部に向かう方向に配置され、ガイドスロット20の全表面はエアフィルタ1のシール5の上流でフィルタフレーム2の壁に沿って延在する。このため、ガイドスロット20の外側の開口部(即ち、ガイドフレームの、換気システムのハウジングの壁に面する側に配置された開口部)と内側の開口部(即ち、ガイドスロット20の開放設計の場合に設けられ、ガイドフレームの、フィルタ媒体に面する側に配置された開口部)はいずれも、エアフィルタの中を流れが通る方向でフィルタとシールの両方の上流または下流に同じ側に配置される。これにより、ガイドスロット20の開口部を介してフィルタの周囲を循環する流れが回避される。
【0022】
図2は、図1の断面II−IIの図である。図1と同様、換気システム4のハウジングに嵌め込まれた取り付け位置でエアフィルタ1が示されている。この場合、エアフィルタ1は、プリーツ状のフィルタ媒体3が固定されたフィルタフレーム2によって、換気システム4のハウジングの収容スロット40に挿入される。エアフィルタ1は、この状態では、シール5を介して、挿入スロット40の対向する壁に沿って環状に封止されるように配置されている。図示した断面図には、シール5の部分区域(挿入スロット40の挿入開口部に沿って封止している)が示されている。従って、エアフィルタ1は、換気システム4のエアダクトのフルフロー断面の中を、縁端部で封止されるように、通る。エアフィルタの挿入方向に面するフィルタフレーム2の端側に、エアフィルタ1は2つのガイドスロット20を有する。示されている例示の実施形態で異なる実施形態を図示するため、1つのガイドスロット20はフィルタフレーム2に形成されている溝状のくぼみ21と境を接し、1つのガイドスロット20はフィルタフレーム2の開口部と境を接する。穴状の開口部と境を接するガイドスロット20により、エアフィルタ1の特に費用効果が高く簡単な設計が可能になる。換気システム4のハウジングの壁に配置されたガイドピンは、挿入方向に配置されているフィルタ媒体3のプリーツに沿った2つのガイドスロット20(挿入スロット20内に又は挿入スロット20を通って)の中に突出している。この場合、ガイドピン41はフィルタの通気断面の中に突出する。これにより、第一に構成要素のコンパクトで省スペースな設計が達成され、第二に換気システム4のハウジングのガイド要素による損傷からフィルタ媒体3が保護される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】フィルタの実施形態の断面図であり、挿入方向を横切る断面を示す。
【図2】図1の断面II−IIに対応する、前記実施形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタフレームと前記フィルタフレームに囲まれて固定されたフィルタ媒体とを有する、自動車の換気システム用のエアフィルタであって、
その表面の方向に沿って収容スロットに挿入可能であり、少なくとも前記フィルタフレームの挿入領域に沿って、前記フィルタフレームと前記挿入スロットの壁との間で封止され、
前記フィルタフレーム(2)は、前記挿入方向に面する端側に、前記挿入方向に配向された少なくとも1つのガイドスロット(20)を有することを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記挿入方向に面する端側の前記ガイドスロット(20)が、フィルタフレームの表面中心から外れて配置されることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ媒体(3)がプリーツ状のフィルタフリースを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記フィルタ(1)のプリーツが挿入方向に配向されることを特徴とする請求項3に記載のエアフィルタ。
【請求項5】
前記ガイドスロット(20)は、その全表面が前記挿入方向に関してプリーツの谷部内に横方向になるように配置されることを特徴とする請求項4に記載のエアフィルタ。
【請求項6】
前記ガイドスロット(20)が、前記フィルタフレーム(2)の前記シール(5)の上流で、前記谷部の開口部から基部に向けて前記プリーツの谷部に配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のエアフィルタ。
【請求項7】
前記ガイドスロット(20)が、前記フィルタフレーム(2)に穴状開口部として構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアフィルタ。
【請求項8】
前記ガイドスロット(20)が、前記フィルタフレーム(2)内に凹状くぼみとして設計されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−511332(P2009−511332A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534905(P2008−534905)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009619
【国際公開番号】WO2007/042194
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】