自動車の操舵装置
【課題】 構造を簡素化できるとともに、小型化および軽量化ができ、さらには伝達効率を向上させることができる自動車の操舵装置の提供。
【解決手段】 各操舵輪をそれぞれの操舵回転の中心である操舵軸70と同軸に配置された歯車71を介して電動機68で操舵回転させることで、操舵回転を駆動するためのテコ・クランク機構やラックギア等を不要にする。
【解決手段】 各操舵輪をそれぞれの操舵回転の中心である操舵軸70と同軸に配置された歯車71を介して電動機68で操舵回転させることで、操舵回転を駆動するためのテコ・クランク機構やラックギア等を不要にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の操舵装置において、ステアリングホイールへの入力を電気的に検出し、この検出値に基づいて各操舵輪の操舵回転を電動機で行う、いわゆるステアバイワイヤ方式のものが提案されている(例えば特許文献1参照)。このステアバイワイヤ方式の操舵装置では、電動機の回転軸に固定されたピニオンギヤでラックギアを駆動し、このラックギアの移動でテコ・クランク機構を介して操舵輪を操舵回転させるようになっている。
【特許文献1】特開昭62−12461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、電動機の回転軸に固定されたピニオンギヤでラックギアを駆動し、このラックギアの移動でテコ・クランク機構を介して操舵輪を操舵回転させる構造の操舵装置であると、構造が複雑になるとともに、大型になって重量も増大し、さらには伝達効率も低下してしまうという問題があった。
【0004】
したがって、本発明は、構造を簡素化できるとともに、小型化および軽量化ができ、さらには伝達効率を向上させることができる自動車の操舵装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、各操舵輪(例えば実施形態における車輪21)をそれぞれの操舵回転の中心である操舵軸(例えば実施形態におけるキングピン70)と同軸に配置された歯車(例えば実施形態におけるギア71)を介して電動機(例えば実施形態における回転アクチュエータ68)で操舵回転させることを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記電動機の回転軸(例えば実施形態における回転軸69)に固定された歯車(例えば実施形態におけるウォームギア72)および前記操舵軸と同軸に配置された歯車の一対で前記操舵輪を操舵回転させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、各操舵輪をそれぞれの操舵回転の中心である操舵軸と同軸に配置された歯車を介して電動機で操舵回転させるため、操舵回転を駆動するためにテコ・クランク機構やラックギア等が不要になる。したがって、構造を簡素化できるとともに、小型化および軽量化ができ、さらには伝達効率を向上させることができる。しかも、テコ・クランク機構と違い、フルストローク位置でのロックが実質的に起きないので車輪が周辺と干渉しない範囲で最大限操舵可能となる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、電動機の回転軸に固定された歯車および操舵軸と同軸に配置された歯車の一対で操舵輪を操舵回転させるため、確実に構造を簡素化できるとともに、確実に小型化および軽量化ができ、さらには確実に伝達効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態を図面を参照して以下に説明する。
図1および図2は、自動車11を示すもので、この自動車11は、図3に示すように、中央に配置されるセンタフレーム12と、センタフレーム12上に搭載されるキャビン13とを有している。なお、キャビン13は乗員が乗車するためのもので、以下における前後左右はキャビン13における前後左右である。
【0010】
自動車11は、キャビン13の下側においてセンタフレーム12の両側に配置されるバッテリあるいは燃料電池を収納したエネルギボックス14と、図1に示すリアシート15の下側に設けられたパワーコントロールユニット22と、図3および図4に示すように、センタフレーム12の前端部の左右からそれぞれ外方に水平に延出する一対の懸架装置16と、センタフレーム12の後端部の左右からそれぞれ外方に水平に延出する一対の懸架装置17と、一対の懸架装置16および一対の懸架装置17のそれぞれの先端に設けられる操舵装置18と、各操舵装置18にそれぞれ支持される電動式のインホイールモータ(走行駆動装置,制動装置)20と、各インホイールモータ20にそれぞれ取り付けられる車輪(操舵輪)21とを有している。なお、インホイールモータ20としては、例えば特開平8−168208号公報に開示されたもの等がある。
【0011】
センタフレーム12は、前後方向に長い矩形枠状をなすフレーム本体23と、フレーム本体23の前端部の上面および下面に固定される一対(上側のみ図示)の支持板24と、フレーム本体23の後端部の上面および下面に固定される一対(上側のみ図示)の支持板25とを有している。そして、前端部の上下の支持板24には、左右対称の位置に鉛直方向に沿う一対の回動軸27が配設されており、各回動軸27にそれぞれアーム状の懸架装置16が回転可能に支持されている。同様に、後端部の上下の支持板25にも、左右対称の位置に鉛直方向に沿う回動軸28が配設されており、各回動軸28にそれぞれアーム状の懸架装置17が回転可能に支持されている。これにより、一対の懸架装置16および一対の懸架装置17はすべて水平旋回可能となっている。
【0012】
センタフレーム12には、前部にシリンダ31から前方に延出するピストン32を有する電動式の伸縮アクチュエータ33が、後部にシリンダ35から後方に延出するピストン36を有する電動式の伸縮アクチュエータ37がそれぞれ取り付けられている。
【0013】
前側の伸縮アクチュエータ33は、図4に示すように、前方に延出するピストン32の先端部の左右対称の位置に鉛直方向に沿う一対の回動軸39を有しており、各回動軸39にそれぞれアーム40の一端側が水平旋回可能に支持されている。これらアーム40の他端側は前側の懸架装置16のうちの左右方向同側のものの中間部に回動軸41を介して鉛直軸周りに回転可能に連結されている。
【0014】
後側の伸縮アクチュエータ37は、後方に延出するピストン36の先端部の左右対称の位置に鉛直方向に沿う一対の回動軸42を有しており、各回動軸42にそれぞれアーム43の一端側が水平旋回可能に支持されている。これらアーム43の他端側は後側の懸架装置17のうちの左右方向同側のものの中間部に回動軸44を介して鉛直軸周りに回転可能に連結されている。
【0015】
これにより、伸縮アクチュエータ33がピストン32を伸縮させることで左右のアーム40を介して左右の懸架装置16を回動軸を27を中心に左右対称に水平旋回させることになり、伸縮アクチュエータ37がピストン36を伸縮させることで左右のアーム43を介して左右の懸架装置17を回動軸28を中心に左右対称に水平旋回させることになる。これにより、伸縮アクチュエータ33,37およびアーム40,43が、懸架装置16,17を車輪21に対し反対側の回動軸27,28を中心に水平旋回させる旋回装置45を構成している。
【0016】
一対の懸架装置16および一対の懸架装置17は、それぞれ、基端側が回動軸27,28の対応するものに支持されるベース部47となっており、図5に示すように、ベース部47の先端側の上部の両側に、ベース部47の延出方向に直交しかつ水平に沿って設けられた一対の回動軸48と、各回動軸48を中心に基端側において回動可能に設けられた一対のアッパアーム49とを有している。また、ベース部47の先端側の下部の両側に、ベース部47の延出方向に直交しかつ水平に沿って設けられた一対の図6に示す回動軸51と、各回動軸51を中心に基端側において回動可能に設けられた一対のロアアーム52とを有している。そして、一対のアッパアーム49の先端側にはこれらに直交しかつ水平に沿って回動軸53が設けられており、一対のアッパアーム52の先端側にもこれらに直交しかつ水平に沿って回動軸55が設けられている。そして、これら両回動軸53および両回動軸55を介してナックル54が支持されている。これにより、一対の懸架装置16および一対の懸架装置17は、ダブルウイッシュボーンタイプの懸架装置となっている。
【0017】
また、一対のロアアーム52の基端側の中間所定位置にはこれらを橋架するピン56が設けられており、一対のロアアーム52の先端側の中間所定位置にもこれらを橋架するピン57が設けられている。そして、先端側のピン57と基端側のピン56との間に、コイルスプリングとショックアブソーバとを有するダンパユニット59と、リンク60とが設けられている。
【0018】
リンク60は、図5および図6に示すように、ロアアーム52の基端側のピン56からナックル54側に斜め上方に延出する傾斜延出部61と、傾斜延出部61の上端から略鉛直に沿って上方に延出する中間延出部62と、中間延出部62の上端からナックル54側に延出する外側延出部63とを有しており、ピン56に対し回動可能に支持されている。そして、このリンク60の外側延出部63の先端にピン56と平行な回動軸65を介してダンパユニット59の一端側が回動可能に支持されており、ダンパユニット59の他端側がロアアーム52の先端側のピン57に回動可能に支持されている。さらに、リンク60の傾斜延出部61と中間延出部62との間にピン56と平行に設けられた回動軸64を介してリンク66の一端側が回動可能に連結されており、このリンク66の他端側はピン56と平行な回動軸67においてベース部47に回動可能に支持されている。
【0019】
これにより、ナックル54は、アッパアーム49およびロアアーム52によって姿勢を略一定に維持された状態で上下動することになり、上方に移動した際に図6に二点鎖線で示すようにリンク60がダンパユニット59を押し縮め、下方に移動した際に図6に一点鎖線で示すようにリンク60がダンパユニット59を引き延ばす。
【0020】
ナックル54には、図7に示すように、電動式の回転アクチュエータ(電動機)68がその回転軸69を略水平に配置して取り付けられており、また、ナックル54には、略鉛直方向に沿って操舵回転の中心となるキングピン(操舵軸)70が回転可能に支持されている。キングピン70には、図7に示すように、中間所定位置に同軸状にギア(歯車)71が固定されており、回転アクチュエータ68の回転軸69には、このギア71に直交状態で噛み合うウォームギア(歯車)72が固定されている。そして、キングピン70にインホイールモータ20がその取付部74において固定されている。
【0021】
これにより、回転アクチュエータ68の駆動でウォームギア72が回転するとこれに噛み合うギア71と一体にキングピン70が回動し、ナックル54に対してインホイールモータ20がキングピン70を中心に操舵回転する。つまり、回転アクチュエータ68、ウォームギア72、ギア71およびキングピン70が車輪21を操舵回転させる操舵装置18を構成している。この操舵装置18は、車輪21をその操舵回転の中心であるキングピン70と同軸に配置されたギア71を介して回転アクチュエータ68で操舵回転させることになり、回転アクチュエータ68の回転軸69に固定されたウォームギア72および操舵軸であるキングピン70と同軸に配置されたギア71の一対のみで車輪21を操舵回転させる。なお、回転アクチュエータ68をキングピン70に設けられたギア71と平行に配置し回転軸69にこのギア71に平行に噛み合うギアを固定しても良い。
【0022】
インホイールモータ20は、車輪21の内側に配設された状態で車輪21を支持しており、車輪21を円周方向に転動回転させたり、車輪21の転動回転を制動したりする。
【0023】
以上により、本実施形態の自動車11は、車輪21を転動回転させるとともに車輪21の転動回転を制動するインホイールモータ20、車輪21を操舵回転させる操舵装置18および車輪21を車体側のセンタフレーム12に支持する懸架装置16,17を各車輪21毎にそれぞれ独立して備えており、全懸架装置16,17を車輪21に対し反対側を中心に水平旋回させる旋回装置45を備えている。
【0024】
そして、図3に示すように、すべてのインホイールモータ20、両伸縮アクチュエータ33,37およびすべての回転アクチュエータ68を独立して制御可能な制御ユニット76が、センタフレーム12の両伸縮アクチュエータ33,37の間に配設されている。また、ナックル54に車輪21の円周方向に沿って延在して上側を覆うフェンダ77が取り付けられる。さらに、キャビン13の後側には着脱式の図1に示すトランク78が取り付けられる。なお、本実施形態の自動車11は、キャビン13に設けられたステアリングホイール80の操舵を電気的に検出しこれに応じて制御ユニット76が操舵装置18を制御するとともに、キャビン13に設けられた図示略のアクセルペダルおよびブレーキペダルの操作を電気的に検出しこれに応じて制御ユニット76がインホイールモータ20を制御する、いわゆるバイワイヤ方式のものである。なお、制御ユニット76は、一対の懸架装置16および一対の懸架装置17にそれぞれ独立して設けられた各操舵装置18をそれぞれ独立して制御可能となっている。
【0025】
制御ユニット76の制御により、本実施形態の自動車11は、複数の運転形態を選択可能となっており、以下に各運転形態について説明する。なお、制御ユニット76は、選択した各運転形態に応じて旋回装置45による懸架装置16,17の旋回と操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。
【0026】
キャビン13に設けられた図示略の操作部の操作等により、運転形態としてパーキングモードが選択されると、制御ユニット76が、旋回装置45の両伸縮アクチュエータ33,37をピストン32,36の突出量を最小とするように制御し、両伸縮アクチュエータ33,37のピストン32,36に押されてアーム40,43が懸架装置16,17を水平旋回させてセンタフレーム12と直交する姿勢とする。すると、図8に示すように、ホイールベースが短くなり、すべての車輪21が全体の前後方向における位置をキャビン13と重ね合わせてキャビン13の車幅方向側方に配置される。このようにホイールベースを短くすることで駐車スペース、特に前後方向の駐車スペースを縮小でき、図8に示すように駐車することで例えば一台分の駐車スペースに二台駐車することができる。
【0027】
このとき、制御ユニット76は、伸縮アクチュエータ33,37の伸縮量つまり懸架装置16,17の水平旋回量をモニタしており、モード変更後、懸架装置16,17の水平旋回量をキャンセルし、キャビン13に設けられたステアリングホイール80の操舵角と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の舵角との関係が適正となるように、伸縮アクチュエータ33による各懸架装置16の旋回と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。また、各懸架装置17の車輪21の中心軸が常に左右方向に沿うように、伸縮アクチュエータ37による各懸架装置17の旋回と各懸架装置17の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。
【0028】
また、キャビン13に設けられた図示略の操作部の操作等により、運転形態として高速走行モードが選択されると、制御ユニット76が、旋回装置45の両伸縮アクチュエータ33,37をピストン32,36の突出量を最大とするように制御し、両伸縮アクチュエータ33,37のピストン32,36に引かれてアーム40,43が懸架装置16,17を水平旋回させてセンタフレーム12に最大限沿う姿勢とする。すると、図9に示すように、ホイールベースが長くなり、すべての車輪21がキャビン13と左右方向における位置を重ね合わせてキャビン13の前後に配置される。このようにホイールベースを長くし、かつトレッドを短くすることで車輪21による空気抵抗を低減し、高速走行時の燃料消費率を低く抑えることができる。
【0029】
このときも、制御ユニット76は、モード変更後、懸架装置16,17の水平旋回量をキャンセルし、キャビン13に設けられたステアリングホイール80の操舵角と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の舵角との関係が適正となるように、伸縮アクチュエータ33による各懸架装置16の旋回と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。また、各懸架装置17の車輪21の中心軸が常に左右方向に沿うように、伸縮アクチュエータ37による各懸架装置17の旋回と各懸架装置17の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。
【0030】
さらに、キャビン13に設けられた図示略の操作部の操作等により、運転形態としてワインディング走行モードが選択されると、制御ユニット76が、旋回装置45の両伸縮アクチュエータ33,37をピストン32,36の突出量を中間の所定量とするように制御し、両伸縮アクチュエータ33,37のピストン32,36でアーム40,43が懸架装置16,17を水平旋回させてセンタフレーム12から斜めに延出する姿勢とする。すると、図10に示すように、ホイールベースが中間で、トレッドも中間で、すべての車輪21がキャビン13から前後方向に突出しかつ側方にも突出するように配置される。このとき、自動車11の重心位置等に併せてホイールベースおよびトレッドを制御することで、操縦安定性を最適にすることができる。
【0031】
このときも、制御ユニット76は、モード変更後、懸架装置16,17の水平旋回量をキャンセルし、キャビン13に設けられたステアリングホイール80の操舵角と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の舵角との関係が適正となるように、伸縮アクチュエータ33による各懸架装置16の旋回と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。また、各懸架装置17の車輪21の中心軸が常に左右方向に沿うように、伸縮アクチュエータ37による各懸架装置17の旋回と各懸架装置17の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。
【0032】
加えて、キャビン13に設けられた図示略の操作部の操作等により、超信地旋回モードが選択されると、制御ユニット76が、旋回装置45の両伸縮アクチュエータ33,37をピストン32,36の突出量を中間の所定量となるように制御するととともに、これと連携して各懸架装置17,18の操舵装置18を制御することにより、図11に示すように全ての車輪21を同じ円周上に配置する。すると、一点を中心に自動車11が回転する超信地旋回が可能となり、取り回しが容易になる。
【0033】
加えて、キャビン13に設けられた図示略の操作部の操作等により、横移動モードが選択されると、制御ユニット76が、旋回装置45の両伸縮アクチュエータ33,37をピストン32,36の突出量を最大となるように制御するととともに、これと連携して各懸架装置17,18の操舵装置18を制御することにより、図12に示すようにすべての車輪21を横向きつまり中心軸が車体前後方向に沿う状態に配置する。すると、自動車11が横向きで移動が可能となり、例えば駐車が容易になる。
【0034】
さらに、上記したワインディング走行モードにおいて、走行状況により四つの車輪21をそれぞれ操舵装置18で操舵回転させることで、図13に示すように四輪操舵での走行が可能となる。
【0035】
以上に述べた実施形態によれば、各車輪21をそれぞれの操舵回転の中心であるキングピン70と同軸に配置されたギア71を介して回転アクチュエータ68で操舵回転させるため、操舵回転を駆動するためにテコ・クランク機構やラックギア等が不要になるとともにキングピン70廻りで操舵装置18が完結する。したがって、構造を簡素化できるとともに、小型化および軽量化ができ、さらには伝達効率を向上させることができる。しかも、テコ・クランク機構と違い、フルストローク位置でのロックが実質的に起きないので車輪21が周辺と干渉しない範囲で最大限操舵可能となる。
【0036】
また、回転アクチュエータ68の回転軸69に固定されたウォームギア72およびキングピン70と同軸に配置されたギア71の一対のみで車輪21を操舵回転させるため、確実に構造を簡素化できるとともに、確実に小型化および軽量化ができ、さらには確実に伝達効率を向上させることができる。
【0037】
加えて、旋回装置45によって各車輪21毎に独立して設けられた懸架装置16,17を旋回させることで、懸架装置16,17の旋回装置45とは反対側に設けられた車輪21のホイールベースを長くしたり、短くしたりすることができる。しかも、旋回装置45が懸架装置16,17を水平旋回させるため、ホイールベースの伸縮に関してキャビン13が上下方向に移動することがない。また、このように懸架装置16,17を水平旋回させても、各車輪21それぞれに独立してインホイールモータ20および操舵装置18が設けられているため、支障なく走行できる。したがって、乗降性に影響を与えることなく駐車スペース縮小と操縦安定性確保の両立を図ることができる。
【0038】
また、所望の運転形態を選択すると、その運転形態に応じて、旋回装置45による懸架装置16,17の旋回と操舵装置18による車輪21の操舵回転とが連携することになるため、懸架装置16,17を水平旋回させても操舵装置18を支障なく作動させることができる。
【0039】
加えて、リンク60,66等によってダンパユニット59の上部取付部を車体骨格部に設けない構造とすることで、キャビン13から懸架装置16,17をオフセットする配置が可能となる。これにより、低床化が図れる。また、懸架装置16,17をモジュール化できるため、生産性の向上や組み付け精度の向上が図れる。さらに、ダンパユニット59の上部取付部を車体骨格部に設けない構造とすることで、ロードノイズの低減が図れる。
【0040】
さらに、アーム40,43で旋回装置45にリンクを設定することで伸縮アクチュエータ33,37への入力を低減でき、旋回装置45の構造をシンプルかつコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態が適用された自動車を示す透過側面図である。
【図2】本発明の一実施形態が適用された自動車を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態が適用された自動車を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態が適用された自動車を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態が適用された自動車の懸架装置の先端側を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態が適用された自動車の懸架装置の先端側を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る操舵装置を示す平断面図である。
【図8】本発明の一実施形態が適用された自動車のパーキングモードを示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態が適用された自動車の高速走行モードを示す平面図である。
【図10】本発明の一実施形態が適用された自動車のワインディング走行モードを示す平面図である。
【図11】本発明の一実施形態が適用された自動車の超信地旋回モードを示す平面図である。
【図12】本発明の一実施形態が適用された自動車の横移動モードを示す平面図である。
【図13】本発明の一実施形態が適用された自動車の四輪操舵モードを示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
11 自動車
21 車輪(操舵輪)
68 回転アクチュエータ(電動機)
69 回転軸
70 キングピン(操舵軸)
71 ギア(歯車)
72 ウォームギア(歯車)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の操舵装置において、ステアリングホイールへの入力を電気的に検出し、この検出値に基づいて各操舵輪の操舵回転を電動機で行う、いわゆるステアバイワイヤ方式のものが提案されている(例えば特許文献1参照)。このステアバイワイヤ方式の操舵装置では、電動機の回転軸に固定されたピニオンギヤでラックギアを駆動し、このラックギアの移動でテコ・クランク機構を介して操舵輪を操舵回転させるようになっている。
【特許文献1】特開昭62−12461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、電動機の回転軸に固定されたピニオンギヤでラックギアを駆動し、このラックギアの移動でテコ・クランク機構を介して操舵輪を操舵回転させる構造の操舵装置であると、構造が複雑になるとともに、大型になって重量も増大し、さらには伝達効率も低下してしまうという問題があった。
【0004】
したがって、本発明は、構造を簡素化できるとともに、小型化および軽量化ができ、さらには伝達効率を向上させることができる自動車の操舵装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、各操舵輪(例えば実施形態における車輪21)をそれぞれの操舵回転の中心である操舵軸(例えば実施形態におけるキングピン70)と同軸に配置された歯車(例えば実施形態におけるギア71)を介して電動機(例えば実施形態における回転アクチュエータ68)で操舵回転させることを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記電動機の回転軸(例えば実施形態における回転軸69)に固定された歯車(例えば実施形態におけるウォームギア72)および前記操舵軸と同軸に配置された歯車の一対で前記操舵輪を操舵回転させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、各操舵輪をそれぞれの操舵回転の中心である操舵軸と同軸に配置された歯車を介して電動機で操舵回転させるため、操舵回転を駆動するためにテコ・クランク機構やラックギア等が不要になる。したがって、構造を簡素化できるとともに、小型化および軽量化ができ、さらには伝達効率を向上させることができる。しかも、テコ・クランク機構と違い、フルストローク位置でのロックが実質的に起きないので車輪が周辺と干渉しない範囲で最大限操舵可能となる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、電動機の回転軸に固定された歯車および操舵軸と同軸に配置された歯車の一対で操舵輪を操舵回転させるため、確実に構造を簡素化できるとともに、確実に小型化および軽量化ができ、さらには確実に伝達効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態を図面を参照して以下に説明する。
図1および図2は、自動車11を示すもので、この自動車11は、図3に示すように、中央に配置されるセンタフレーム12と、センタフレーム12上に搭載されるキャビン13とを有している。なお、キャビン13は乗員が乗車するためのもので、以下における前後左右はキャビン13における前後左右である。
【0010】
自動車11は、キャビン13の下側においてセンタフレーム12の両側に配置されるバッテリあるいは燃料電池を収納したエネルギボックス14と、図1に示すリアシート15の下側に設けられたパワーコントロールユニット22と、図3および図4に示すように、センタフレーム12の前端部の左右からそれぞれ外方に水平に延出する一対の懸架装置16と、センタフレーム12の後端部の左右からそれぞれ外方に水平に延出する一対の懸架装置17と、一対の懸架装置16および一対の懸架装置17のそれぞれの先端に設けられる操舵装置18と、各操舵装置18にそれぞれ支持される電動式のインホイールモータ(走行駆動装置,制動装置)20と、各インホイールモータ20にそれぞれ取り付けられる車輪(操舵輪)21とを有している。なお、インホイールモータ20としては、例えば特開平8−168208号公報に開示されたもの等がある。
【0011】
センタフレーム12は、前後方向に長い矩形枠状をなすフレーム本体23と、フレーム本体23の前端部の上面および下面に固定される一対(上側のみ図示)の支持板24と、フレーム本体23の後端部の上面および下面に固定される一対(上側のみ図示)の支持板25とを有している。そして、前端部の上下の支持板24には、左右対称の位置に鉛直方向に沿う一対の回動軸27が配設されており、各回動軸27にそれぞれアーム状の懸架装置16が回転可能に支持されている。同様に、後端部の上下の支持板25にも、左右対称の位置に鉛直方向に沿う回動軸28が配設されており、各回動軸28にそれぞれアーム状の懸架装置17が回転可能に支持されている。これにより、一対の懸架装置16および一対の懸架装置17はすべて水平旋回可能となっている。
【0012】
センタフレーム12には、前部にシリンダ31から前方に延出するピストン32を有する電動式の伸縮アクチュエータ33が、後部にシリンダ35から後方に延出するピストン36を有する電動式の伸縮アクチュエータ37がそれぞれ取り付けられている。
【0013】
前側の伸縮アクチュエータ33は、図4に示すように、前方に延出するピストン32の先端部の左右対称の位置に鉛直方向に沿う一対の回動軸39を有しており、各回動軸39にそれぞれアーム40の一端側が水平旋回可能に支持されている。これらアーム40の他端側は前側の懸架装置16のうちの左右方向同側のものの中間部に回動軸41を介して鉛直軸周りに回転可能に連結されている。
【0014】
後側の伸縮アクチュエータ37は、後方に延出するピストン36の先端部の左右対称の位置に鉛直方向に沿う一対の回動軸42を有しており、各回動軸42にそれぞれアーム43の一端側が水平旋回可能に支持されている。これらアーム43の他端側は後側の懸架装置17のうちの左右方向同側のものの中間部に回動軸44を介して鉛直軸周りに回転可能に連結されている。
【0015】
これにより、伸縮アクチュエータ33がピストン32を伸縮させることで左右のアーム40を介して左右の懸架装置16を回動軸を27を中心に左右対称に水平旋回させることになり、伸縮アクチュエータ37がピストン36を伸縮させることで左右のアーム43を介して左右の懸架装置17を回動軸28を中心に左右対称に水平旋回させることになる。これにより、伸縮アクチュエータ33,37およびアーム40,43が、懸架装置16,17を車輪21に対し反対側の回動軸27,28を中心に水平旋回させる旋回装置45を構成している。
【0016】
一対の懸架装置16および一対の懸架装置17は、それぞれ、基端側が回動軸27,28の対応するものに支持されるベース部47となっており、図5に示すように、ベース部47の先端側の上部の両側に、ベース部47の延出方向に直交しかつ水平に沿って設けられた一対の回動軸48と、各回動軸48を中心に基端側において回動可能に設けられた一対のアッパアーム49とを有している。また、ベース部47の先端側の下部の両側に、ベース部47の延出方向に直交しかつ水平に沿って設けられた一対の図6に示す回動軸51と、各回動軸51を中心に基端側において回動可能に設けられた一対のロアアーム52とを有している。そして、一対のアッパアーム49の先端側にはこれらに直交しかつ水平に沿って回動軸53が設けられており、一対のアッパアーム52の先端側にもこれらに直交しかつ水平に沿って回動軸55が設けられている。そして、これら両回動軸53および両回動軸55を介してナックル54が支持されている。これにより、一対の懸架装置16および一対の懸架装置17は、ダブルウイッシュボーンタイプの懸架装置となっている。
【0017】
また、一対のロアアーム52の基端側の中間所定位置にはこれらを橋架するピン56が設けられており、一対のロアアーム52の先端側の中間所定位置にもこれらを橋架するピン57が設けられている。そして、先端側のピン57と基端側のピン56との間に、コイルスプリングとショックアブソーバとを有するダンパユニット59と、リンク60とが設けられている。
【0018】
リンク60は、図5および図6に示すように、ロアアーム52の基端側のピン56からナックル54側に斜め上方に延出する傾斜延出部61と、傾斜延出部61の上端から略鉛直に沿って上方に延出する中間延出部62と、中間延出部62の上端からナックル54側に延出する外側延出部63とを有しており、ピン56に対し回動可能に支持されている。そして、このリンク60の外側延出部63の先端にピン56と平行な回動軸65を介してダンパユニット59の一端側が回動可能に支持されており、ダンパユニット59の他端側がロアアーム52の先端側のピン57に回動可能に支持されている。さらに、リンク60の傾斜延出部61と中間延出部62との間にピン56と平行に設けられた回動軸64を介してリンク66の一端側が回動可能に連結されており、このリンク66の他端側はピン56と平行な回動軸67においてベース部47に回動可能に支持されている。
【0019】
これにより、ナックル54は、アッパアーム49およびロアアーム52によって姿勢を略一定に維持された状態で上下動することになり、上方に移動した際に図6に二点鎖線で示すようにリンク60がダンパユニット59を押し縮め、下方に移動した際に図6に一点鎖線で示すようにリンク60がダンパユニット59を引き延ばす。
【0020】
ナックル54には、図7に示すように、電動式の回転アクチュエータ(電動機)68がその回転軸69を略水平に配置して取り付けられており、また、ナックル54には、略鉛直方向に沿って操舵回転の中心となるキングピン(操舵軸)70が回転可能に支持されている。キングピン70には、図7に示すように、中間所定位置に同軸状にギア(歯車)71が固定されており、回転アクチュエータ68の回転軸69には、このギア71に直交状態で噛み合うウォームギア(歯車)72が固定されている。そして、キングピン70にインホイールモータ20がその取付部74において固定されている。
【0021】
これにより、回転アクチュエータ68の駆動でウォームギア72が回転するとこれに噛み合うギア71と一体にキングピン70が回動し、ナックル54に対してインホイールモータ20がキングピン70を中心に操舵回転する。つまり、回転アクチュエータ68、ウォームギア72、ギア71およびキングピン70が車輪21を操舵回転させる操舵装置18を構成している。この操舵装置18は、車輪21をその操舵回転の中心であるキングピン70と同軸に配置されたギア71を介して回転アクチュエータ68で操舵回転させることになり、回転アクチュエータ68の回転軸69に固定されたウォームギア72および操舵軸であるキングピン70と同軸に配置されたギア71の一対のみで車輪21を操舵回転させる。なお、回転アクチュエータ68をキングピン70に設けられたギア71と平行に配置し回転軸69にこのギア71に平行に噛み合うギアを固定しても良い。
【0022】
インホイールモータ20は、車輪21の内側に配設された状態で車輪21を支持しており、車輪21を円周方向に転動回転させたり、車輪21の転動回転を制動したりする。
【0023】
以上により、本実施形態の自動車11は、車輪21を転動回転させるとともに車輪21の転動回転を制動するインホイールモータ20、車輪21を操舵回転させる操舵装置18および車輪21を車体側のセンタフレーム12に支持する懸架装置16,17を各車輪21毎にそれぞれ独立して備えており、全懸架装置16,17を車輪21に対し反対側を中心に水平旋回させる旋回装置45を備えている。
【0024】
そして、図3に示すように、すべてのインホイールモータ20、両伸縮アクチュエータ33,37およびすべての回転アクチュエータ68を独立して制御可能な制御ユニット76が、センタフレーム12の両伸縮アクチュエータ33,37の間に配設されている。また、ナックル54に車輪21の円周方向に沿って延在して上側を覆うフェンダ77が取り付けられる。さらに、キャビン13の後側には着脱式の図1に示すトランク78が取り付けられる。なお、本実施形態の自動車11は、キャビン13に設けられたステアリングホイール80の操舵を電気的に検出しこれに応じて制御ユニット76が操舵装置18を制御するとともに、キャビン13に設けられた図示略のアクセルペダルおよびブレーキペダルの操作を電気的に検出しこれに応じて制御ユニット76がインホイールモータ20を制御する、いわゆるバイワイヤ方式のものである。なお、制御ユニット76は、一対の懸架装置16および一対の懸架装置17にそれぞれ独立して設けられた各操舵装置18をそれぞれ独立して制御可能となっている。
【0025】
制御ユニット76の制御により、本実施形態の自動車11は、複数の運転形態を選択可能となっており、以下に各運転形態について説明する。なお、制御ユニット76は、選択した各運転形態に応じて旋回装置45による懸架装置16,17の旋回と操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。
【0026】
キャビン13に設けられた図示略の操作部の操作等により、運転形態としてパーキングモードが選択されると、制御ユニット76が、旋回装置45の両伸縮アクチュエータ33,37をピストン32,36の突出量を最小とするように制御し、両伸縮アクチュエータ33,37のピストン32,36に押されてアーム40,43が懸架装置16,17を水平旋回させてセンタフレーム12と直交する姿勢とする。すると、図8に示すように、ホイールベースが短くなり、すべての車輪21が全体の前後方向における位置をキャビン13と重ね合わせてキャビン13の車幅方向側方に配置される。このようにホイールベースを短くすることで駐車スペース、特に前後方向の駐車スペースを縮小でき、図8に示すように駐車することで例えば一台分の駐車スペースに二台駐車することができる。
【0027】
このとき、制御ユニット76は、伸縮アクチュエータ33,37の伸縮量つまり懸架装置16,17の水平旋回量をモニタしており、モード変更後、懸架装置16,17の水平旋回量をキャンセルし、キャビン13に設けられたステアリングホイール80の操舵角と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の舵角との関係が適正となるように、伸縮アクチュエータ33による各懸架装置16の旋回と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。また、各懸架装置17の車輪21の中心軸が常に左右方向に沿うように、伸縮アクチュエータ37による各懸架装置17の旋回と各懸架装置17の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。
【0028】
また、キャビン13に設けられた図示略の操作部の操作等により、運転形態として高速走行モードが選択されると、制御ユニット76が、旋回装置45の両伸縮アクチュエータ33,37をピストン32,36の突出量を最大とするように制御し、両伸縮アクチュエータ33,37のピストン32,36に引かれてアーム40,43が懸架装置16,17を水平旋回させてセンタフレーム12に最大限沿う姿勢とする。すると、図9に示すように、ホイールベースが長くなり、すべての車輪21がキャビン13と左右方向における位置を重ね合わせてキャビン13の前後に配置される。このようにホイールベースを長くし、かつトレッドを短くすることで車輪21による空気抵抗を低減し、高速走行時の燃料消費率を低く抑えることができる。
【0029】
このときも、制御ユニット76は、モード変更後、懸架装置16,17の水平旋回量をキャンセルし、キャビン13に設けられたステアリングホイール80の操舵角と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の舵角との関係が適正となるように、伸縮アクチュエータ33による各懸架装置16の旋回と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。また、各懸架装置17の車輪21の中心軸が常に左右方向に沿うように、伸縮アクチュエータ37による各懸架装置17の旋回と各懸架装置17の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。
【0030】
さらに、キャビン13に設けられた図示略の操作部の操作等により、運転形態としてワインディング走行モードが選択されると、制御ユニット76が、旋回装置45の両伸縮アクチュエータ33,37をピストン32,36の突出量を中間の所定量とするように制御し、両伸縮アクチュエータ33,37のピストン32,36でアーム40,43が懸架装置16,17を水平旋回させてセンタフレーム12から斜めに延出する姿勢とする。すると、図10に示すように、ホイールベースが中間で、トレッドも中間で、すべての車輪21がキャビン13から前後方向に突出しかつ側方にも突出するように配置される。このとき、自動車11の重心位置等に併せてホイールベースおよびトレッドを制御することで、操縦安定性を最適にすることができる。
【0031】
このときも、制御ユニット76は、モード変更後、懸架装置16,17の水平旋回量をキャンセルし、キャビン13に設けられたステアリングホイール80の操舵角と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の舵角との関係が適正となるように、伸縮アクチュエータ33による各懸架装置16の旋回と各懸架装置16の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。また、各懸架装置17の車輪21の中心軸が常に左右方向に沿うように、伸縮アクチュエータ37による各懸架装置17の旋回と各懸架装置17の操舵装置18による車輪21の操舵回転とを連携して制御する。
【0032】
加えて、キャビン13に設けられた図示略の操作部の操作等により、超信地旋回モードが選択されると、制御ユニット76が、旋回装置45の両伸縮アクチュエータ33,37をピストン32,36の突出量を中間の所定量となるように制御するととともに、これと連携して各懸架装置17,18の操舵装置18を制御することにより、図11に示すように全ての車輪21を同じ円周上に配置する。すると、一点を中心に自動車11が回転する超信地旋回が可能となり、取り回しが容易になる。
【0033】
加えて、キャビン13に設けられた図示略の操作部の操作等により、横移動モードが選択されると、制御ユニット76が、旋回装置45の両伸縮アクチュエータ33,37をピストン32,36の突出量を最大となるように制御するととともに、これと連携して各懸架装置17,18の操舵装置18を制御することにより、図12に示すようにすべての車輪21を横向きつまり中心軸が車体前後方向に沿う状態に配置する。すると、自動車11が横向きで移動が可能となり、例えば駐車が容易になる。
【0034】
さらに、上記したワインディング走行モードにおいて、走行状況により四つの車輪21をそれぞれ操舵装置18で操舵回転させることで、図13に示すように四輪操舵での走行が可能となる。
【0035】
以上に述べた実施形態によれば、各車輪21をそれぞれの操舵回転の中心であるキングピン70と同軸に配置されたギア71を介して回転アクチュエータ68で操舵回転させるため、操舵回転を駆動するためにテコ・クランク機構やラックギア等が不要になるとともにキングピン70廻りで操舵装置18が完結する。したがって、構造を簡素化できるとともに、小型化および軽量化ができ、さらには伝達効率を向上させることができる。しかも、テコ・クランク機構と違い、フルストローク位置でのロックが実質的に起きないので車輪21が周辺と干渉しない範囲で最大限操舵可能となる。
【0036】
また、回転アクチュエータ68の回転軸69に固定されたウォームギア72およびキングピン70と同軸に配置されたギア71の一対のみで車輪21を操舵回転させるため、確実に構造を簡素化できるとともに、確実に小型化および軽量化ができ、さらには確実に伝達効率を向上させることができる。
【0037】
加えて、旋回装置45によって各車輪21毎に独立して設けられた懸架装置16,17を旋回させることで、懸架装置16,17の旋回装置45とは反対側に設けられた車輪21のホイールベースを長くしたり、短くしたりすることができる。しかも、旋回装置45が懸架装置16,17を水平旋回させるため、ホイールベースの伸縮に関してキャビン13が上下方向に移動することがない。また、このように懸架装置16,17を水平旋回させても、各車輪21それぞれに独立してインホイールモータ20および操舵装置18が設けられているため、支障なく走行できる。したがって、乗降性に影響を与えることなく駐車スペース縮小と操縦安定性確保の両立を図ることができる。
【0038】
また、所望の運転形態を選択すると、その運転形態に応じて、旋回装置45による懸架装置16,17の旋回と操舵装置18による車輪21の操舵回転とが連携することになるため、懸架装置16,17を水平旋回させても操舵装置18を支障なく作動させることができる。
【0039】
加えて、リンク60,66等によってダンパユニット59の上部取付部を車体骨格部に設けない構造とすることで、キャビン13から懸架装置16,17をオフセットする配置が可能となる。これにより、低床化が図れる。また、懸架装置16,17をモジュール化できるため、生産性の向上や組み付け精度の向上が図れる。さらに、ダンパユニット59の上部取付部を車体骨格部に設けない構造とすることで、ロードノイズの低減が図れる。
【0040】
さらに、アーム40,43で旋回装置45にリンクを設定することで伸縮アクチュエータ33,37への入力を低減でき、旋回装置45の構造をシンプルかつコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態が適用された自動車を示す透過側面図である。
【図2】本発明の一実施形態が適用された自動車を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態が適用された自動車を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態が適用された自動車を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態が適用された自動車の懸架装置の先端側を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態が適用された自動車の懸架装置の先端側を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る操舵装置を示す平断面図である。
【図8】本発明の一実施形態が適用された自動車のパーキングモードを示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態が適用された自動車の高速走行モードを示す平面図である。
【図10】本発明の一実施形態が適用された自動車のワインディング走行モードを示す平面図である。
【図11】本発明の一実施形態が適用された自動車の超信地旋回モードを示す平面図である。
【図12】本発明の一実施形態が適用された自動車の横移動モードを示す平面図である。
【図13】本発明の一実施形態が適用された自動車の四輪操舵モードを示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
11 自動車
21 車輪(操舵輪)
68 回転アクチュエータ(電動機)
69 回転軸
70 キングピン(操舵軸)
71 ギア(歯車)
72 ウォームギア(歯車)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各操舵輪をそれぞれの操舵回転の中心である操舵軸と同軸に配置された歯車を介して電動機で操舵回転させることを特徴とする自動車の操舵装置。
【請求項2】
前記電動機の回転軸に固定された歯車および前記操舵軸と同軸に配置された歯車の一対で前記操舵輪を操舵回転させることを特徴とする請求項1記載の自動車の操舵装置。
【請求項1】
各操舵輪をそれぞれの操舵回転の中心である操舵軸と同軸に配置された歯車を介して電動機で操舵回転させることを特徴とする自動車の操舵装置。
【請求項2】
前記電動機の回転軸に固定された歯車および前記操舵軸と同軸に配置された歯車の一対で前記操舵輪を操舵回転させることを特徴とする請求項1記載の自動車の操舵装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−264511(P2006−264511A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85891(P2005−85891)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]