説明

自動車の物品取付構造

【課題】 自動車の多種多様なシートや、グローブボックスなどに容易にかつ確実な固定が可能な物品取付構造を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 自動車の室内で物品を保持固定するための取付具において、可撓性を有し、帯状でその長手方向に直交した方向に両端を解放した筒状部を複数備えるとともに、該複数の筒状部の何れか1つに円柱状の固定部材を備えた取付具を物品から延設し、該複数の筒状部のうち、取付場所の間隙の狭さや深さ、形状に応じて最も適切な位置の筒状部に円柱状の固定部材を挿入し設けることで、取り付ける場所に応じて確実な固定が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の室内に物品を取り付けるための構造に関し、特に自動車のシートや開閉蓋のあるグローブボックスなどに、小物入れなどの物品を取り付けるための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のシートにカバーや小物入れなどの物品を取り付ける場合、その物品に備えられた固定部材をシートの座面と背もたれの間に差し込んで固定する構造が知られている。
【0003】
特許文献1の実開S63−179858号及び特許文献2の登録実用新案第3030112号はシートカバーに前記方法を用いた例であり、円柱状の固定部材をシートの座面と背もたれとの間隙に挿入することでシートカバーを固定する構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献3の登録実用新案第3025731号は自動車の座席用のトレイに前記方法を用いた例であり、先端に鉤型のフックを有する取付具をシートの座面と背もたれとの間隙に挿入することでトレイを固定する構造が開示されている。また、特許文献3の請求項2乃至3に開示されるように該取付具は、該トレイを最も確実に固定することができるように、トレイ本体からの鉤状のフックの突出量を調整できるようになっている。鉤状のフックがシートの座面と背もたれとの間隙を通過して後方に突出するように調整したときの位置が最も確実にトレイを固定することが可能なのである。
【0005】
【特許文献1】 実開S63−179858号
【特許文献2】 登録実用新案第3030112号
【特許文献3】 登録実用新案第3025731号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2の自動車用のシートカバーの円柱状の固定部材は、シートカバーから一定の長さの帯状の布を延設し、その先端部に固定部材を設けているので、シートの座面と背もたれとの間隙に挿入した際、固定部材がシートの座面と背もたれとの間隙を通過して後方に突出すれば適切な保持力が得られるが、背もたれの厚みや形状によっては間隙の中で留まってしまう場合がある。このような場合取付部材は座面と背もたれとの間隙で無理矢理挟まれていることで保持力を得ているわけであるが、引っ張れば容易に抜け外れてしまうといった問題点があった。
【0007】
特許文献3の自動車座席用トレイにおいては、前述の通り最も確実に固定することができるように、トレイ本体からの鉤状のフックの突出位置を調整できるようになっているが、取付部材はトレイ本体底面と同一面、すなわち水平方向、しかも一方向に延設されるため、トレイを一方向にしか固定することができない。なおかつ、シートの座面と背もたれとの間隙に挿入するには良いが、ベンチシートの運転席と助手席の間の間隙に挿入する場合は垂直下方向に挿入する必要があるので、向きの関係からこのような構造では固定が不可能である。
【0008】
そこで本発明は、昨今の多種多様な自動車のシートや、グローブボックスなどに容易にかつ確実な固定が可能な物品取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は本発明の請求項1によれば、自動車の室内で物品を保持固定するための取付具において、可撓性を有し、帯状でその長手方向に直交した方向に両端を解放した筒状部を複数備えるとともに、該複数の筒状部の何れか1つに円柱状の固定部材を備えた取付具を物品から延設したことで解決される。
【0010】
上記の課題は本発明の請求項2によれば、自動車の室内で物品を保持固定するための取付具において、可撓性を有し、帯状でその長手方向に直交した方向に両端を解放した筒状部を複数備えるとともに、該複数の筒状部の何れか1つに固定部材を備えた取付具を物品に対して着脱可能としたことで解決される。
【0011】
本発明の請求項3によれば、前記固定部材はリング状であることで解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自動車の室内で物品を保持固定するための取付具において、可撓性を有し、帯状でその長手方向に直交した方向に両端を解放した筒状部を複数備えるとともに、該複数の筒状部の何れか1つに円柱状の固定部材を備えた取付具を物品から延設したので、携帯電話機、眼鏡、煙草、ガムなどの小物入れや、自動車の座席に被せて使用するシートカバーなどの物品を、シートの座面と背もたれとの間隙や、ベンチシートの運転席と助手席との間隙、グローブボックスやコンソールなどの蓋付きの物入れなどに取付固定する場合、複数の筒状部のうち、取付場所の間隙の狭さや深さ、形状に応じて最も適切な位置の筒状部に円柱状の固定部材を挿入し設けることで、物品を確実に固定することが可能となる。
【0013】
また、取付部材は物品に対して着脱可能としたことで、物品が小物入れの場合は、自由に向きを変えたり、取付部材を使用せずに底面に両面粘着テープや面ファスナーを用いてシート上やダッシュボード上に載置するといった使い方も可能となる。
【0014】
さらにまた、固定部材をリング状とすることで、自動車の室内に予めあるいは後から備えられたフックにリングを引っ掛けて使用することも可能である。この場合も複数の筒状部のうち、何れかにリングを装着することで、取付場所の状況に応じて、帯状の取付部材を長め、あるいは短めに設定することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を図1から図15に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は本発明の物品の取付構造の全体図であり、(1)は物品(4)から延設された取付具、(2a)は固定部材である。図1は袋状の小物入れである物品(4)の上部の縁から取付具(1)を上方に向かって延設した例である。図2はトレイ状の小物入れの底面から下方に向かって取付具(1)を延設した例である。
【0016】
図4から図8は本発明の第一実施例の使用状態を示したもので、図4は、シートのシートのベースの間隙に物品(4)を取り付ける状態を示した図で、図5は、グローブボックスの蓋を開けた状態で固定部材(2a)を入れそのまま蓋を閉めると物品(4)が固定される状態を示す。図6は図5と同様にフロントコンソールの蓋付きボックス部に物品(4)を固定した状態を示したものである。図7は、図2に示したトレイ状の小物入れの底面から下方に向かって取付具(1)を延設した物品(4)であり、ベンチシートの運転席と助手席の座面の間の間隙に取り付ける状態を示す。図8は、シートの座面と背もたれとの間隙に取り付ける状態を示す。
【0017】
取付具(1)は帯状でナイロンや綿などの可撓性を有する素材からなるので、シートの座面と背もたれとの間隙や、グローブボックスの蓋の部分などへの取り付けに際し柔軟に対応することができる。かつ、取付具(1)は図3に示すように帯状でその長手方向に直交した方向に両端を解放した筒状部(1a)を複数備えている。この複数の筒状部(1a)の何れかに固定部材(2a)を挿入して装着し、小物入れなどの物品(4)を、図4から図8の取付状態を示す図に現されるように、シートの座面と背もたれとの間隙や、ベンチシートの運転席と助手席との間隙、グローブボックスやコンソールなどの蓋付きの物入れなどに取付固定する。
【0018】
固定部材(2a)は、断面が概ね円の円柱状であれば材質は金属、樹脂、天然木など特に問わないが、押し込む場所であるシートの隙間が著しく狭い場合や、硬い場合は、指で潰せる程度に軟質であることが使い勝手がよく望ましい。
【0019】
以上のように、複数の筒状部(1a)のうち、取付場所の間隙の狭さや深さ、硬さ、形状に応じて最も適切な位置の筒状部に固定部材(2a)を挿入し設けることで、物品(4)を確実に固定することが可能となる。例えば、シートの座面と背もたれとの間隙を利用して物品(4)を固定する場合は、取付具(1)の固定部材(2a)をシートの座面と背もたれとの間隙に押し込み、固定部材(2a)が間隙を通り越して背面に出た段階が、最も確実な固定が可能となる。もし、固定部材(2a)が間隙の中間部で留まっている場合は、狭い間隙の中で固定部材(2a)が圧迫固定されているのである程度の保持力は得ているが、引っ張ることで容易に抜け外れてしまう。このように本発明では、前記したように固定具(1)の複数の筒状部(1a)のうち、取付場所に応じた最も適切な位置の筒状部(1a)に固定部材(2a)を挿入し装着することにより、取り付け場所に応じて最も確実な固定を行うことが可能となるものである。
前記した説明では物品(4)を自動車用の小物入れとしたが、自動車の座席に被せて使用するシートカバーとしても同様な効果を得ることが可能である。
【0020】
請求項2に示す第二実施例においては、取付具(1)を物品(4)から着脱可能にした。これにより、図示しないが物品(4)の底面に両面粘着テープや面ファスナーを用いて自動車のダッシュボート上面や、シートの座面上に載置して使用することも可能となる。また、図9に示すように取付具(1)の固定部材(2a)を挿入するための筒状部(1a)とは逆の端部に板状部材(5)を備え、図10及び図11に示すように物品(4)の底面に該板状部材(5)を向きを変えて装着すれば、固定部材(2a)の向きが横向きか縦向きかを選択可能となるので、物品(4)を固定する場所に応じて使い勝手の良い最適な向きとすることが可能となる。
【0021】
請求項3に示す第三実施例においては、固定部材(2b)をリング状とした。該リング状の固定部材(2b)は図12に示すようにその一部に切欠部(2b−1)を設け、その切欠部(2b−1)に筒状部(1a)を通して装着する。このようにしてリング状の固定部材(2b)を装着した物品(4)は、図14に示すように、ヘッドレストのステーに通して使用したり、図15に示すように自動車に備えられたフックに固定部材(2b)を引っ掛けて使用することができる。
【0022】
この場合も第一実施例と同様に、複数の筒状部(1a)のうち、何れかに固定部材(2b)を装着することで、取付場所の状況に応じて、帯状の取付具(1)を長め、あるいは短めに設定することが可能となった。(図13参照)
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の物品の取付構造の全体図である。
【図2】本発明の物品の取付構造の全体図である。
【図3】第一実施例の取付具の詳細図である。
【図4】第一実施例の使用状態を示す図である。
【図5】第一実施例の使用状態を示す図である。
【図6】第一実施例の使用状態を示す図である。
【図7】第一実施例の使用状態を示す図である。
【図8】第一実施例の使用状態を示す図である。
【図9】第二実施例の取付具を示す図である。
【図10】第二実施例の使用状態を示す図である。
【図11】第二実施例の使用状態を示す図である。
【図12】第三実施例の固定部材の取付説明図である。
【図13】第三実施例の取付具の詳細図である。
【図14】第三実施例の使用状態を示す図である。
【図15】第三実施例の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 取付具
1a 筒状部
2a 固定部材
2b 固定部材
2b−1 切欠部
3 板状部材
4 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の室内で物品を保持固定するための取付具において、可撓性を有し、帯状でその長手方向に直交した方向に両端を解放した筒状部を複数備えるとともに、該複数の筒状部の何れか1つに円柱状の固定部材を備えた取付具を物品から延設したことを特徴とする自動車の物品取付構造。
【請求項2】
自動車の室内で物品を保持固定するための取付具において、可撓性を有し、帯状でその長手方向に直交した方向に両端を解放した筒状部を複数備えるとともに、該複数の筒状部の何れか1つに固定部材を備えた取付具を物品に対して着脱可能としたことを特徴とする自動車の物品取付構造。
【請求項3】
前記固定部材はリング状であることを特徴とする請求項1及び2に記載の自動車の物品取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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