説明

自動車の装飾用外装部構造

【課題】限られたスペースの中で高い奥行き感と光輝性を発揮できて、商品性の高い自動車の装飾用外装部構造を提供する。
【解決手段】車体前面部に、光輝性表面12が車両前方側Frを向く光輝性部材21を設け、前記光輝性表面12を車両前方側Frから透明なカバー31で間隔を空けて覆ってある自動車の装飾用外装部構造であって、前記カバー31を車両前方側Frに凸に湾曲させ、前記光輝性表面12を車両後方側に凸に湾曲させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
車体前面部に、光輝性表面が車両前方側を向く光輝性部材を設け、
前記光輝性表面を車両前方側から透明なカバーで間隔を空けて覆ってある自動車の装飾用外装部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の自動車の装飾用外装部構造では、縦断面において前記カバーを直線状に形成し、前記光輝性表面を直線状の凹凸面に形成してあった(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭61−132445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の構造によれば、縦断面において前記カバーを直線状に形成し、前記光輝性表面を直線状の凹凸面に形成してあったために、カバーと光輝性表面との間の奥行き感しか得られず、奥行き感が不十分で光輝性が低かった。
本発明は、限られたスペースの中で高い奥行き感と光輝性を発揮できて、商品性を向上させることができる自動車の装飾用外装部構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の特徴は、
車体前面部に、光輝性表面が車両前方側を向く光輝性部材を設け、
前記光輝性表面を車両前方側から透明なカバーで間隔を空けて覆ってある自動車の装飾用外装部構造であって、
前記カバーを車両前方側に凸に湾曲させ、
前記光輝性表面を車両後方側に凸に湾曲させてある点にある。(請求項1)
【0005】
この構成により、車両前方側から入射した光は透明なカバー内を通過し、カバーと光輝性部材の間の空間を通過して光輝性部材の光輝性表面に当たる。そして、前記光が光輝性部材の光輝性表面で反射し、再び前記空間を通過して車両前方側に放射される。
上記構成によれば、前記カバーを車両前方側に凸に湾曲させ、前記光輝性表面を車両後方側に凸に湾曲させてあるから、縦断面において、カバーと光輝性表面との間の空間が、中央が膨らんだ凸レンズ状になり、車両前方側から見た者に高い奥行き感と光輝性を感じさせることができて、自動車の商品性を高めることができる。
また、カバーの上端部と光輝性表面の上端部との間、及び、カバーの下端部と光輝性表面の下端部との間の間隔を広げなくても済んで、取り付けスペースが車両前後方向で広がるのを抑制することができる。(請求項1)
【0006】
本発明において、
前記光輝性表面を縦断面階段状に形成し、
前記光輝性表面の下半部からの反射光が前記下半部の前上方に向かうように、前記光輝性表面の下半部を下側ほど車両前方側に位置させてあると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0007】
つまり、光輝性表面の下半部からの反射光を前記下半部の前上方に向かわせることができる。通常、歩行者の目の位置は、光輝性表面よりも上方にあることから、前記下半部からの反射光を歩行者の目の位置に向かわせることができて、歩行者が見る反射光を増幅させることができる。これにより、請求項1による上記の作用効果をより得やすくすることができる。(請求項2)
【0008】
本発明において、
前記光輝性表面の前記カバー側を向く各段差面を縦断面直線状に形成してあると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0009】
各段差面を縦断面曲線状に形成してある構造に比べて、光輝性表面の下半部からの反射光を前記下半部の前上方により確実に向かわせることができ、上記請求項2の構成による作用をより奏しやすくすることができる。(請求項3)
【0010】
本発明において、
縦断面において、前記光輝性表面の各段差面の長さを、隣合う段差面間の段差の深さよりもそれぞれ長く設定してあると、縦断面における各段差面の長さを十分確保することができる。また、前記段差の深さを浅くすることができる。従って、光輝性表面を縦断面階段状に形成したことに起因してカバーと光輝性表面の車両前後方向の間隔が短かくなるのを抑制することができる。これにより、車両前方側から見た者に、より高い奥行き感と光輝性を感じさせることができて、自動車の商品性をより高めることができる。(請求項4)
【0011】
本発明において、
前記光輝性部材を板状の部材で形成し、
縦断面において、前記光輝性表面の各段差面の長さを、前記光輝性部材の板厚よりも長く設定してあると、上記請求項4の構成による作用効果を得やすくすることができるとともに、光輝性部材を軽量化することができる。(請求項5)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、限られたスペースの中で高い奥行き感と光輝性を発揮できて、商品性の高い自動車の装飾用外装部構造を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は自動車を正面から見た状態を示している。この図に示すように、車体前面をバンパフェイシア1で覆い、バンパフェイシア1の中間部にラジエータグリル2を配置してある。ラジエータグリル2は、エンジンルーム内のラジエータを冷却するための複数の外気導入口3を備えている。
【0014】
バンパフェイシア1の上側の車体前面部45の両端には左右一対の横長のヘッドランプ4を配置し、バンパフェイシア1の上部の取り付け部5(図2参照)に装飾用外装部品6を取り付けてある。前記取り付け部5は両ヘッドランプ4間に位置し、車両前方側Frが開放した箱形状に形成されている。
【0015】
装飾用外装部品6の上下方向の幅は、隣合うヘッドランプ4の上下方向の幅に合わせてある。これにより、車幅方向の全長にわたってヘッドランプ4と装飾用外装部品6とが車幅方向に連続したイメージを与えている。ヘッドランプ4の上端縁と装飾用外装部品6の上端縁とはフロントフード20の前端縁に近接して隣合っている。
【0016】
車体前部の分解斜視図である図2に示すように、ヘッドランプ4は予めフロントボディ7に取り付けられている。さらに、ラジエータグリル2を予め取り付けたバンパフェイシア1をフロントボディ7に取り付け、最後に装飾用外装部品6をバンパフェイシア1とヘッドランプ4の両方に取り付けてある。
【0017】
フロントボディ7には、車幅方向Wに沿うフロントアッパーメンバ8と、フロントアッパーメンバ8の下方で車幅方向に沿うラジエータサポートロアメンバ9と、フロントアッパーメンバ8とラジエータサポートロアメンバ9の左右中央部同士の間に架け渡された上下方向に沿うセンタメンバ10とを設けてある。
【0018】
図3は装飾用外装部品6の分解斜視図を示している。この図に示すように、装飾用外装部品6は、車両前方側Frが開放した横長箱形状のハウジング11と、このハウジング11の車両前方側Frに位置し、前面を金属光沢などの光輝性を備えるように表面処理した横長のリフレクタ21(光輝性部材に相当)と、このリフレクタ21の車両前方側Frに位置する透明樹脂製のカバー31とから成る。前記表面処理としては、例えば、スパッタ、ホットスタンプ、メッキ等を挙げることができる。
【0019】
このように車体前面部45に、光輝性表面12が車両前方側Frを向くリフレクタ21を設け、前記光輝性表面12を車両前方側Frから透明なカバー31で間隔を空けて覆って自動車の装飾用外装部構造を構成してある。前記リフレクタ21は板状の部材から成る。
【0020】
図4〜図6に示すように、車両前方側Frから入射した光は透明なカバー31内を通過し、カバー31とリフレクタ21の間の空間Sを通過してリフレクタ21の光輝性表面12に当たる。そして、前記光がリフレクタ21の光輝性表面12で反射し、再び前記空間Sを通過して車両前方側Frに放射される。
【0021】
図4に示すようにハウジング11の上端部に、縦断面において車両後方側に延びるフランジ11Fを設け、このフランジ11Fを取り付け部5の上面部5Jに上方から重ね合わせてクリップ46で固定してある。取り付け部5の上面部5Jは、車幅方向に沿うフロントアッパーメンバ8の上面8Mに重なってボルト47で固定されている。図5に示すように、ハウジング11の下端部には車両後方側に延びる係合爪43を設けてあり、この係合爪43を取り付け部5の下端部の係合孔Hに車両前方側Frから挿入係合させてある。
【0022】
また図5,図6に示すように、リフレクタ21の上下両端部に各別に設けた車両後方側に突出する上下の係合爪43を、ハウジング11の上下両端部に各別に設けた上下の係合孔Hに車両前方側Frから挿入係合してある。
【0023】
そして、前記カバー31を車両前方側Frに凸に緩やかに湾曲させ、カバー31の上端部に車両後方側に延びる上面部25を設け、この上面部25の車両後方側の端部に、車両後方側が開放した断面コの字状の端縁部26を設け、この端縁部26をハウジング11のフランジ11Fに車両前方側Frから対向させてある。さらに、カバー31の下端部に車両後方側に延びる下面部27を設け、この下面部27の車両後方側の端部をハウジング11の下端部11Kに車両前方側Frから対向させてある。
【0024】
図4〜図6に示すように、リフレクタ21の前記光輝性表面12を車両後方側に凸に緩やかに湾曲させて、カバー31とリフレクタ21との間の空間Sを、縦断面において、中央部が車両前後方向に膨らんだ凸レンズ状に形成してある。これにより、車両前方側Frからカバー31を通してカバー31の内部を見たときに、見る者に高い奥行き感と光輝性を感じさせるようにしてある。
【0025】
リフレクタ21の上端部には車両の前斜め上方に延びる上面部33を設け、この上面部33の車両前方側Frの端部に上方に延びるフランジ34を設けてある。このフランジ34の上端はカバー31の上面部25に下方から近接対向している。前記上面部33の下面33Mも金属光沢などの光輝性を備えるように表面処理してあり、光輝性表面12に含まれている。
【0026】
リフレクタ21の下端部には車両の前斜め下方に延びる下面部35を設け、この下面部35の車両前方側Frの端部に車両後方側が開放した断面コの字状の下端部36を設けてある。この下端部36の車両前方側Frの前面はカバー31の下端部に車両後方側から対向している。前記下面部35の上面35Mも金属光沢などの光輝性を備えるように表面処理してあり、光輝性表面12に含まれている。
【0027】
図3に示すように、リフレクタ21の左右両端部には車両前方側Frに延びる側壁37をそれぞれ設けてある。左右一対の側壁37の内面37M(車幅方向中心側を向く面)にも金属光沢などの光輝性を備えるように表面処理してある。
【0028】
図3〜図6に示すように、前記光輝性表面12を縦断面階段状に形成し、光輝性表面12のカバー31側を向く各段差面12Mを縦断面直線状に形成してある。さらに、縦断面において、前記光輝性表面12の各段差面12Mの長さLを、隣合う段差面12M間の段差の深さBよりもそれぞれ長く設定してある(L>B)。また、縦断面において、光輝性表面12の各段差面12Mの長さLをリフレクタ21の板厚21Tよりも長く設定し(L>21T)、段差の深さBをリフレクタ21の板厚21Tよりも少しだけ長く設定してある(B>21T)。
【0029】
そして、前記光輝性表面12の下半部12Uからの反射光が斜め前上方に向かうように、前記光輝性表面12の下半部12Uを下側ほど車両前方側Frに位置させてある。これにより、前記下半部12Uからの反射光を、リフレクタ21の光輝性表面12よりも上方の歩行者等の目の位置に向かわせることができて、歩行者等が見る反射光を増幅させることができる。図5における符号50はエンブレムである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】自動車の正面図
【図2】車体前部の分解斜視図
【図3】装飾用外装部品の分解斜視図
【図4】図1のA−A断面図
【図5】図1のB−B断面図
【図6】図1のC−C断面図
【符号の説明】
【0031】
12 光輝性表面
12M 光輝性表面のカバー側を向く段差面
12U 光輝性表面の下半部
21 光輝性部材(リフレクタ)
21T 光輝性部材の板厚
31 カバー
45 車体前面部
B 隣合う段差面間の段差の深さ
Fr 車両前方側
L 光輝性表面の各段差面の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前面部に、光輝性表面が車両前方側を向く光輝性部材を設け、
前記光輝性表面を車両前方側から透明なカバーで間隔を空けて覆ってある自動車の装飾用外装部構造であって、
前記カバーを車両前方側に凸に湾曲させ、
前記光輝性表面を車両後方側に凸に湾曲させてある自動車の装飾用外装部構造。
【請求項2】
前記光輝性表面を縦断面階段状に形成し、
前記光輝性表面の下半部からの反射光が前記下半部の前上方に向かうように、前記光輝性表面の下半部を下側ほど車両前方側に位置させてある請求項1記載の自動車の装飾用外装部構造。
【請求項3】
前記光輝性表面の前記カバー側を向く各段差面を縦断面直線状に形成してある請求項2記載の自動車の装飾用外装部構造。
【請求項4】
縦断面において、前記光輝性表面の各段差面の長さを、隣合う段差面間の段差の深さよりもそれぞれ長く設定してある請求項3記載の自動車の装飾用外装部構造。
【請求項5】
前記光輝性部材を板状の部材で形成し、
縦断面において、前記光輝性表面の各段差面の長さを、前記光輝性部材の板厚よりも長く設定してある請求項4記載の自動車の装飾用外装部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−36672(P2010−36672A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200300(P2008−200300)
【出願日】平成20年8月3日(2008.8.3)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】