説明

自動車の車体部材接合方法

【課題】 車体部材の接合部に適量の接着剤を塗布して所期の高い接合強度を得つつ、重ね合わせ挟持加圧した両接合部間から接着剤が接合部の外方側にはみ出すことを確実に抑制できる、自動車の車体部材接合方法を提供する。
【解決手段】 接着剤塗布工程において、一方の車体部材10の接合部11に熱硬化型の接着剤15を塗布し、接着剤塗布工程と並行して行うエア吹付工程において、接合部11に塗布された接着剤15に冷却用エア16を接合部11の外方側から吹き付けて、接着剤15の粘度を高めると共に接着剤15の層厚が接合部11の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤15を偏在させ、その後、接合工程において、一方の車体部材10の接合部11に他方の車体部材20の接合部21を重ね合わせ、これら接合部11,21を溶接用電極により挟持加圧して溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の車体部材の接合部同士を接合する車体部材接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体部材の端部に形成されたフランジ部等の接合部同士を接合する場合、これら両接合部を接着剤を介して重ね合わせ、スポット溶接を行って接合するウエルドボンド工法が実用に供されている。例えば、特許文献1には、一般的なウエルドボンド工法が開示され、特に、ウエルドボンド工法に常温硬化型の接着剤を適用する技術が開示されている。
【0003】
前記ウエルドボンド工法においては、一方の車体部材の接合部に接着剤を塗布してから、その接合部に他方の車体部材の接合部を重ね合わせ、これら両接合部を1対の溶接用電極により挟持加圧してスポット溶接を行い、このとき、塗布された接着剤は、重ね合わされ挟持加圧された両接合部間で延ばされる。ここで、両接合部を接合して所期の高い接合強度を得るために適量の接着剤を接合部に塗布することが必要である。
【特許文献1】特開2001−121270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の車体部材の接合部同士を接合する従来のウエルドボンド工法では、単に、接合部に接着剤を塗布した後に、両接合部を重ね合わせ1対の溶接用電極により挟持加圧してスポット溶接を行うため、このとき、塗布された接着剤が両接合部間で延ばされて広がるが、特に、1対の溶接用電極による加圧力は非常に大きいため、所期の高い接合強度を得るために適量の接着剤を接合部に塗布した場合、両接合部を重ね合わせ挟持加圧したときに、接着剤が両接合部間から接合部の外方側にはみ出す虞が高く、そうなると、接着剤が不要箇所に付着し、見栄えが悪くなる等の問題が生じる。
【0005】
そこで、接合部に塗布する接着剤の量を少なくして、接着剤が接合部の外方側にはみ出さないようにすることはできるが、そうすると、接合強度は低下する。
本発明の目的は、接合部に塗布された接着剤に冷却用エアを接合部の外方側から吹き付けて、接着剤の粘度を高めると共に接着剤の層厚が接合部の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤を偏在させて、接合部に適量の接着剤を塗布して所期の高い接合強度を得つつ、重ね合わせ挟持加圧した両接合部間から接着剤が接合部の外方側にはみ出すことを確実に抑制できる、自動車の車体部材接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の自動車の車体部材接合方法は、自動車の車体部材の接合部同士を接合する車体部材接合方法において、一方の車体部材の接合部に熱硬化型の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記接着剤塗布工程と並行して又は接着剤塗布工程の後に、前記接合部に塗布された接着剤に冷却用エアを接合部の外方側から吹き付けて、接着剤の粘度を高めると共に接着剤の層厚が接合部の内方側に比べて外方側が厚くなるように接着剤を偏在させるエア吹付工程と、次に、一方の車体部材の接合部に他方の車体部材の接合部を重ね合わせ、これら接合部を溶接用電極により挟持加圧して溶接する接合工程とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この自動車の車体部材接合方法では、接着剤塗布工程において、一方の車体部材の接合部に、エポキシ系接着剤等の熱硬化型の接着剤が塗布され、この接着剤塗布工程と並行して又は接着剤塗布工程の後に、エア吹付工程が行われる。このエア吹付工程では、接合部に塗布された接着剤に冷却用エアが接合部の外方側から吹き付けられて、接着剤の粘度が高められ、接着剤の層厚が接合部の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤が偏在するようになる。接着剤の粘度が高められるため、前記のように接着剤が偏在した状態が、次の接合工程を行うときまで極力保持される。
【0008】
次に、接合工程において、一方の車体部材の接合部に他方の車体部材の接合部が重ね合わされ、これら接合部が溶接用電極により挟持加圧さて溶接される。この溶接についてはスポット溶接としてもよいし、シーム溶接としてもよい。接合工程において、塗布された接着剤は、重ね合わせ挟持加圧した両接合部間で広がる(延びる)が、このとき、前記エア吹付工程において偏在させた接着剤は、接合部の外方側への広がりが抑えられ外方側よりも内方側へ大きく広がるようになるため、所期の高い接合強度を得るために接合部に適量の接着剤を塗布した場合でも、その接着剤が両接合部間から接合部の外方側にはみ出すことが抑制される。
【0009】
請求項1の発明においては次の構成を採用可能である。
前記車体部材の接合部は、車体部材の端部に形成されたフランジ部である(請求項2)。前記接合部を接着した接着剤を塗装乾燥処理中に硬化させる接着剤硬化工程を備える(請求項3)。前記接着剤塗布工程において、一方の車体部材の接合部にその外方側部分に比べて内方側部分の方が接着剤の層厚が厚くなるように接着剤を塗布する(請求項4)。前記接着剤塗布工程とエア吹付工程において、ロボットハンドにより冷却用エア供給通路のエア吹出部と接着剤供給通路に接続された接着剤塗布ノズルとを一体的に移送する(請求項5)。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の自動車の車体部材接合方法によれば、接着剤塗布工程において、一方の車体部材の接合部に熱硬化型の接着剤を塗布し、この接着剤塗布工程と並行して又は接着剤塗布工程の後に行われるエア吹付工程において、接合部に塗布された接着剤に冷却用エアを接合部の外方側から吹き付けて、接着剤の粘度を高めると共に接着剤の層厚が接合部の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤を偏在させ、このように接着剤を偏在させた状態を、次の接合工程を行うときまで極力保持でき、その接合工程において、一方の車体部材の接合部に他方の車体部材の接合部を重ね合わせ、これら接合部を溶接用電極により挟持加圧して溶接し、このとき、エア吹付工程において偏在させた接着剤は、接合部の外方側への広がりが抑えられ外方側よりも内方側へ大きく広がるようにして、接合部に適量の接着剤を塗布して所期の高い接合強度を得つつ、接着剤が両接合部間から接合部の外方側にはみ出すことを確実に抑制することができる。
【0011】
請求項2の自動車の車体部材接合方法によれば、車体部材の接合部は、車体部材の端部に形成されたフランジ部であるので、接着剤のはみ出しによる問題がより顕著となる車体部材のフランジ部を接合する上で、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0012】
請求項3の自動車の車体部材接合方法によれば、接合部を接着した接着剤を塗装乾燥処理中に硬化させる接着剤硬化工程を備えたので、接着剤硬化工程にだけ別途費やす時間が不要となり、また、接着剤を硬化させる接着剤加熱硬化炉等の設備を別途設ける必要がないので、車体製造工程の短縮、設備コストの低減を図ることができる。
【0013】
請求項4の自動車の車体部材接合方法によれば、接着剤塗布工程において、一方の車体部材の接合部にその外方側部分に比べて内方側部分の方が接着剤の層厚が厚くなるように接着剤を塗布するので、エア吹付工程において接着剤を確実に偏在させ得て、その状態を接合工程を行うときまで極力保持でき、請求項1に係る効果を助長できる。
【0014】
請求項5の自動車の車体部材接合方法によれば、接着剤塗布工程とエア吹付工程において、ロボットハンドにより冷却用エア供給通路のエア吹出部と接着剤供給通路に接続された接着剤塗布ノズルとを一体的に移送するので、接着剤塗布工程と並行してエア吹付工程を確実に行い、これらの工程に要する時間を確実に短縮することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の自動車の車体部材接合方法は、自動車の車体部材の接合部同士を接合する車体部材接合方法において、一方の車体部材の接合部に熱硬化型の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記接着剤塗布工程と並行して又は接着剤塗布工程の後に、前記接合部に塗布された接着剤に冷却用エアを接合部の外方側から吹き付けて、接着剤の粘度を高めると共に接着剤の層厚が接合部の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤を偏在させるエア吹付工程と、次に、一方の車体部材の接合部に他方の車体部材の接合部を重ね合わせ、これら接合部を溶接用電極により挟持加圧して溶接する接合工程と、次に、前記接合部を接着した接着剤を加熱して硬化させる接着剤硬化工程とを備えている。
【実施例1】
【0016】
図1、図2に示すように、自動車1の車体2において、ルーフサイドレール、ピラー、サイドシルを含む部分は、インナーパネル3とアウターパネル4を有し、例えば、そのインナーパネル3とアウターパネル4の後部乗降開口5側の端部に、後部乗降開口5の外周縁に沿って張り出すフランジ部3a,4aが夫々形成され、これらフランジ部3a,4a同士が、本発明の自動車の車体部材接合方法により接合される。
【0017】
自動車の車体部材接合方法(以下、車体部材接合方法という)について説明する。
尚、この車体部材接合方法については、前記のように、インナーパネル3とアウターパネル4(車体部材)のフランジ部3,4a(接合部)同士を接合する際に適用される他に、種々の車体部材の接合部同士を接合する際に適用可能である。
【0018】
この車体部材接合方法は、図4〜図6に示すように、一方の車体部材10の接合部11にエポキシ系接着剤等の熱硬化型の接着剤15を塗布する接着剤塗布工程と、この接着剤塗布工程と並行して、接合部11に塗布された接着剤15に冷却用エア16を接合部11の外方側から吹き付けて、接着剤15の粘度を高めると共に接着剤15の層厚が接合部11の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤15を偏在させるエア吹付工程と、次に、図7〜図9に示すように、一方の車体部材10の接合部11に他方の車体部材20の接合部21を重ね合わせ、これら接合部11,21を1対のスポット溶接用電極17,18により挟持加圧して溶接する接合工程と、次に、両接合部11,21を接着した接着剤15を塗装乾燥処理中に硬化させる接着剤硬化工程とを備えている。
【0019】
接着剤塗布工程とエア吹付工程とを並行して自動的に行うために、図3に示すように、接着剤・エア吹付ロボット30が設けられ、そのロボットハンド31の先端側に、冷却用エア供給通路40の先端部に設けたエア吹出部41と、接着剤供給通路45の先端部に接続された接着剤塗布ノズル46が取り付けられ、このロボットハンド31によりエア吹出部41と接着剤塗布ノズル46とが一体的に移送される。冷却用エア供給通路40が冷却用エア供給装置42に、接着剤供給通路45が接着剤15を充填したペール缶とその接着剤15を押し出すアクチュエータ等を有する接着剤供給装置47に夫々接続されている。
【0020】
次に、前記各工程について詳細に説明する。
接着剤塗布工程とエア吹付工程は、一方の車体部材10をロボット30を設置したステーションに搬送し、ロボット30、冷却用エア供給装置42、接着剤供給装置47が作動して行われる。図4〜図6に示すように、例えば、車体部材10の接合部11が、前記インナーパネル3(又はアウターパネル4)のフランジ部3a(又は4a)のように、比較的幅狭で車体部材10の端縁に沿って長く形成されている場合、接着剤塗布工程とエア吹付工程において、ロボットハンド31によりエア吹出部41と接着剤塗布ノズル46を、接合部11に対向させて接合部11の長手方向に移送する。
【0021】
ここで、エア吹出部41と接着剤塗布ノズル46の噴射口46aはその進行方向と直交する接合面平行方向に少しシフトし、且つ、エア吹出部41が噴射口46aに対してその進行方向と反対側に位置する位置関係となるように、エア吹出部41と接着剤塗布ノズル46を移送する。更にその際、接着剤塗布ノズル46が、接着剤15を接合部11に対して接合面直交状に所定の塗布予定部位に向けて噴射するように、また、エア吹出部41が、冷却用エア16を接合部11の外方側(つまり、車体部材10に対して外方側)から斜め下側に接合部11に付着した接着剤15に向けて噴射するように構成してある。
【0022】
つまり、エア吹出部41と接着剤塗布ノズル46を一体的に移送しながら、接着剤15と冷却用エア16の噴射を行うことにより、接合部11に接着剤15を塗布しながら、順次、その接着剤15に冷却用エア16を吹き付けて、接着剤15の粘度を高めて接着剤15の層厚が接合部11の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤15を偏在させていく。こうして、接合部11の全塗布予定部位への接着剤15の塗布と、その接着剤15への冷却用エア16の吹き付けとを完了してから、接合工程を実施する。
【0023】
接合工程においては、先ず、図7、図8に示すように、一方の車体部材10の接合部11に他方の車体部材20の接合部21が重ね合わされ、次に、図9に示すように、例えば、1対の電極17,18をロボットハンドに取り付けた溶接ロボットが作動して、重ね合わせた接合部11,21の適当な複数箇所部分が順次電極17,18により挟持加圧されてスポット溶接される。ここで、塗布された接着剤15は、重ね合わせ挟持加圧した両接合部11,21間で広がる(延びる)が、このとき、エア吹付工程において偏在させた接着剤15は、接合部11,21の外方側への広がりが抑えられ外方側よりも内方側へ大きく広がるようになるため、所期の高い接合強度を得るために接合部11に適量の接着剤15を塗布した場合でも、その接着剤15が両接合部間11,21から外方側にはみ出すことが抑制される。
【0024】
ここで、自動車1の車体製造工程では車体2の要部に塗装を施す塗装処理が行われ、この塗装処理後且つ前記接合工程後に、車体2を塗装乾燥炉に入れて、例えば約170度の熱で塗装部を乾燥させる塗装乾燥処理が行われるが、この塗装乾燥処理中に接着剤硬化工程が行われる。つまり、この塗装乾燥炉の熱により接合部11,21を接着した接着剤15を加熱して硬化させ、接合部11,21を完全に接合する。
【0025】
以上説明した車体部材接合方法によれば次の効果を奏する。
接着剤塗布工程において、一方の車体部材10の接合部11に熱硬化型の接着剤15を塗布し、この接着剤塗布工程と並行して行われるエア吹付工程において、接合部11に塗布された接着剤15に冷却用エア16を外方側から吹き付けて、接着剤15の粘度を高めると共に接着剤15の層厚が接合部11の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤15を偏在させ、このように接着剤15を偏在させた状態を、次の接合工程を行うときまで極力保持することができる。
【0026】
そして次に、接合工程において、一方の車体部材10の接合部11に他方の車体部材20の接合部21を重ね合わせ、これら接合部11,21を溶接用電極17,18により挟持加圧して溶接し、このとき、エア吹付工程において偏在させた接着剤15は、接合部11,21の外方側への広がりが抑えられ外方側よりも内方側へ大きく広がるようにして、接合部11に適量の接着剤15を塗布して所期の高い接合強度を得つつ、接着剤15が両接合部11,21間から接合部11,21の外方側にはみ出すことを確実に抑制できる。
【0027】
図1、図2のように、インナーパネル3とアウターパネル4の接合に車体部材接合方法を適用した場合、車体部材10,20の接合部11,21は、インナーパネル3とアウターパネル4の端部に形成されたフランジ部3a,4aであるので、接着剤15のはみ出しによる問題がより顕著となるインナーパネル3とアウターパネル4のフランジ部3a,4aを接合する上で、上記と同様の効果を得ることができる。
【0028】
接合部11,21を接着した接着剤15を塗装乾燥処理中に硬化させる接着剤硬化工程を備えたので、接着剤硬化工程にだけ別途費やす時間が不要となり、また、接着剤15を硬化させる接着剤加熱硬化炉等の設備を別途設ける必要がないので、自動車1の車体製造工程の短縮、設備コストの低減を図ることができる。
【0029】
接着剤塗布工程と並行してエア吹付工程を行うため、これらの工程を簡単に行い時間短縮することができる。この接着剤塗布工程とエア吹付工程において、ロボットハンド31により冷却用エア供給通路40のエア吹出部41と接着剤供給通路45に接続された接着剤塗布ノズル46とを一体的に移送するので、接着剤塗布工程と並行してエア吹付工程を確実に行い、これらの工程に要する時間を確実に短縮することが可能になる。
【実施例2】
【0030】
実施例2の車体部材接合方法は、実施例1の車体部材接合方法の接着剤塗布工程において、一方の車体部材10の接合部11にその外方側部分に比べて内方側部分の方が接着剤15の層厚が厚くなるように接着剤15を塗布するようにしたものである。これにより、エア吹付工程において接着剤15を確実に偏在させ得て、その状態を接合工程を行うときまで極力保持できる効果を助長することができる。
【0031】
その具体例として、図10に示すように、接合部11に接着剤15を塗布する際、接着剤塗布ノズル46を傾けて、その噴射口46aから接着剤15を接合部11の内方側斜め下側へ噴射するように構成し、この接着剤噴射力により、接合部11の外方側部分に比べて内方側部分の方が接着剤15の層厚が厚くなるように接着剤15が塗布される。
【0032】
また、他の具体例として、先ず、図11−1に示すように、接合部11に接着剤15を塗布した後、図11−2に示すように、塗布された接着剤15のうち接合部11の内方側部分の上面側に接着剤15aを積層状に塗布することにより、接合部11の外方側部分に比べて内方側部分の方が接着剤15,15aの層厚が厚くなるように接着剤15,15aが塗布される。
【実施例3】
【0033】
実施例3では、接合部11に接着剤15を塗布する種々の塗布パターンがあるが、エア吹付工程において、塗布パターン応じた冷却用エア16の吹き付け方法を開示する。
【0034】
例えば、図12は、接合部11の長手方向端部分に接着剤15のUターン部15bがくるように、接合部11に接着剤15を蛇行状に塗布したパターンを示している。この場合、斜線で示すように、接合部11の最も外方側に位置する接着剤15の直線部15cと、その直線部15cに連なるUターン部15bの外方側一部にのみ冷却用エア16を吹き付けて、その部分の接着剤15を前記のように偏在させるようにする。他の部分の接着剤15については冷却用エア16を吹き付けなくてもよい。
【0035】
また、例えば、図13は、接合部11の幅方向端部分に接着剤15のUターン部15d,15eがくるように、接合部11に接着剤15を蛇行状に塗布したパターンを示している。この場合、斜線で示すように、接合部11の外方側に位置する接着剤15のUターン部15eの大部分と、Uターン部15e以外に接合部11の最も外方側に位置する直線部端部分15fがある場合にはその直線部端部分15fにのみ、冷却用エア16を吹き付けて、その部分の接着剤15を前記のように偏在させるようにする。他の部分の接着剤15については冷却用エア16を吹き付けなくてもよい。
【0036】
ここで、例えば、図14に示すように、車体部材としてのパネル部材50,51の端部以外の接合部50a,51a同士を接合する場合等、接合部50a,51aからの接着剤15の全方向へのはみ出しを抑制したい場合がある。この場合、接合部50a,51aの中心側を内方側として、その外周側全ての方向を外方側とすることにより、エア吹付工程において、接合部50a,51aに塗布された接着剤15のうち前記外方側部分に冷却用エア16を吹き付けるようにして、その部分の接着剤15を偏在させるようにする。
【0037】
このように、前記の接着剤塗布パターン、また、それ以外の種々の接着剤塗布パターンの各々に応じて、適宜、エア吹付工程により冷却用エア16の吹き付けが必要な箇所を設定することにより、冷却用エア16の吹き付けの効率化を図り、接着剤15が両接合部11,21間から接合部11,21の外方側にはみ出すことを確実に抑制できる。
【実施例4】
【0038】
実施例4では、実施例1〜3のような一般的な接着剤塗布ノズル46を使用する代わりに、図15、図16に示すように、所謂カーテンノズル55を使用した場合の例を開示する。カーテンノズル55は、接合部11に接着剤15を比較的長い所定幅で連続的に塗布していくことができ、この場合、エア吹付工程において、塗布された接着剤15の全幅に亙って、接着剤15の粘度を高め、接着剤15の層厚が接合部11の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤15を偏在させる必要はない。
【0039】
即ち、エア吹付工程において、接合部11に塗布された接着剤15のうち、接合部11の幅方向の外方側より部位にのみ冷却用エア16を吹き付けることにより、その外方側より部位の接着剤15の粘度を高め、その部位の接着剤15の層厚が接合部11の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤15を偏在させるようにする。こうして、接着剤15が両接合部11,21の外方側にはみ出すことを確実に抑制できる。
【0040】
尚、接着剤塗布工程において、接合部に接着剤を全て塗布した後、エア吹付工程を行うようにしてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記実施例1〜4に開示した事項以外を追加して実施することが可能であり、また、本発明は、種々のウエルボンド工法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1の自動車の車体の要部の側面図である。
【図2】車体部材の要部の斜視図である。
【図3】接着剤・エア吹付ロボットの側面図である。
【図4】接着剤塗布工程とエア吹付工程を示す正面図である。
【図5】接着剤塗布工程とエア吹付工程を示す側面図である。
【図6】接着剤塗布工程とエア吹付工程を示す平面図である。
【図7】接合工程を示す車体部材の側面図である。
【図8】接合工程を示す車体部材の側面図である。
【図9】接合工程を示す車体部材の側面図である。
【図10】実施例2の接着剤塗布工程を示す側面図である。
【図11−1】実施例2の別の着剤塗布工程を示す側面図である。
【図11−2】実施例2の別の着剤塗布工程を示す側面図である。
【図12】実施例3の接着剤が塗布された接合部の平面図である。
【図13】実施例3の別の接着剤が塗布された接合部の平面図である。
【図14】実施例3の更に別の接着剤が塗布された接合部の断面図である。
【図15】実施例4の接着剤塗布工程とエア吹付工程を示す側面図である。
【図16】実施例4の接着剤塗布工程とエア吹付工程を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 自動車
3 インナーパネル
4 アウターパネル
3a,4a フランジ部
10,20 車体部材
11,21 接合部
15 接着剤
16 冷却用エア
17,18 溶接用電極
31 ロボットハンド
40 冷却用エア供給通路
41 エア吹出部
45 接着剤供給通路
46 接着剤塗布ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体部材の接合部同士を接合する車体部材接合方法において、
一方の車体部材の接合部に熱硬化型の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程と並行して又は接着剤塗布工程の後に、前記接合部に塗布された接着剤に冷却用エアを接合部の外方側から吹き付けて、接着剤の粘度を高めると共に接着剤の層厚が接合部の外方側部分に比べて内方側部分の方が厚くなるように接着剤を偏在させるエア吹付工程と、
次に、一方の車体部材の接合部に他方の車体部材の接合部を重ね合わせ、これら接合部を溶接用電極により挟持加圧して溶接する接合工程と、
を備えたことを特徴とする自動車の車体部材接合方法。
【請求項2】
前記車体部材の接合部は、車体部材の端部に形成されたフランジ部であることを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体部材接合方法。
【請求項3】
前記接合部を接着した接着剤を塗装乾燥処理中に硬化させる接着剤硬化工程を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車の車体部材接合方法。
【請求項4】
前記接着剤塗布工程において、一方の車体部材の接合部にその外方側部分に比べて内方側部分の方が接着剤の層厚が厚くなるように接着剤を塗布することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動車の車体部材接合方法。
【請求項5】
前記接着剤塗布工程とエア吹付工程において、ロボットハンドにより冷却用エア供給通路のエア吹出部と接着剤供給通路に接続された接着剤塗布ノズルとを一体的に移送することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の自動車の車体部材接合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11−1】
image rotate

【図11−2】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate