説明

自動車の車内の肘掛け用の取付け部

【課題】車内に入るとき及び車外に出るときに人の体重を確実に支持することを可能にするだけでなく、側面衝撃衝突中に車両乗員の安全性にも悪影響を与えない自動車の車内の肘掛け用の取付け部を提供する。
【解決手段】取付け部22は、自動車のボディに当接するように設計された支持部24と、前記支持部24から所定角度αで突出し、かつ肘掛けを固定するように設計されるホルダ26とを有する一体形の板金プロフィルを備え、前記取付け部22が異なる方向から作用する力に対して異なって反応することで、人の体重を支持する荷重状態を最適化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車内の肘掛け用の取付け部に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような取付け部は特許文献1から公知である。特許文献1には、車両ドアと車体のドアピラーとの間のドア間隙を横方向に横切って延びる2部構成の肘掛けが示されている。従って、肘掛けの第1の部分は車両ドアの内面に固定され、第2の部分はドアピラーに固定される。そして、上述のピラーは自己支持性のモノコックボディの荷重支持部を構成する。自己支持性のモノコックボディは以下でボディシェルとも呼ばれる。公知の肘掛けの第2の部分はキャリアとカバーとを有し、カバーは肘掛けの外観を形成する。キャリアは、ねじによってボディシェルの保持装置にねじ止めされ、取付け状態において、車両の車内に突出しかつ肘掛けが固定される安定した構造を有する。
【0003】
従って、キャリアは、自動車の車内の肘掛け用の取付け部を意味する。このような取付け部は、車内に入るとき及び車外に出るときに人の体重を支持するために使用されるので、これに応じて車両の垂直軸線の方向に作用する高い力を確実に吸収して、その力をボディシェルに伝達することができるようにしなければならない。この要求は、相応に安定した構造を有する取付け部によって容易に満たすことができる。しかし、ボディシェルが外側から内側に押圧される側面衝撃衝突の場合、安定した構造を有する取付け部は、車両乗員を危険にさらすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006055490A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1256484A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005021310A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3626897A1号明細書
【特許文献5】欧州特許第0566213B1号明細書
【特許文献6】国際公開98/00316A1号明細書
【特許文献7】米国特許第4659135A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この背景に対して、本発明の目的は、車内に入るとき及び車外に出るときに人の体重を確実に支持することを可能にするだけでなく、側面衝撃衝突中に車両乗員の安全性にも悪影響を与えない自動車の車内の肘掛け用の取付け部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。取付け部が、異なる方向から作用する力に対して異なって反応するように設計されるということは、人の体重を支持する荷重状態を最適化でき、この最適化が、側面衝撃衝突の荷重状態における乗員の安全性を犠牲にして実現されるものではないことを意味する。
【0007】
好ましい一実施形態は、取付け部が、自動車の横方向軸線の方向に作用する力よりも、自動車の垂直軸線の方向に作用する力に対して抵抗力を有することによって特徴付けられる。
【0008】
垂直軸線の方向のより硬い構造によって、体重支持力を確実に吸収することができる。これに対して、肘掛けは、通常の使用中に、車両の横方向軸線の方向の大きな力を吸収しなくてもよい。肘掛けはこの方向に、より適合するように設計され、従って、側面衝撃衝突中に肘掛けにより生じる負傷の危険性が低減される。
【0009】
垂直軸線の方向で吸収すべき力について、取付け部は、特に好ましくは、永久変形(bleibende Verformung)することなく、この方向に作用する500Nよりも大きな力を吸収し、かつそれらの力を車体に伝達するように設計される。
【0010】
特に好ましい実施形態では、取付け部は曲げヒンジを有し、この曲げヒンジは、塑性変形(plastische Verbiegung)によって、側面衝撃衝突中に発生するような車両横方向軸線の方向に作用する力に反応する。
【0011】
これらの特徴により、側面衝撃衝突中に車両の車内前方に押圧される取付け部が、座席の背もたれ又は車両乗員の身体部分への衝突時に、曲げヒンジで生じる回転によって撓むことが可能になる。
【0012】
さらに、曲げヒンジの塑性変形に必要とされる変形作用は変形エネルギーを低減し、これにより、負傷の危険も低減する。
【0013】
さらなる利点は、従属請求項、詳細な説明及び添付図面から明らかとなる。
【0014】
上述の特徴及びなお以下に説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ指定された組み合せにおいてのみでなく、他の組み合せにおいても、あるいは単独で使用できることは言うまでもない。
【0015】
本発明の例示的な実施形態が図面に示され、以下の説明においてより詳細に説明する。この図面の図は概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の技術分野の図である。
【図2】第1の視角から見た場合の本発明によるホルダの例示的な実施形態の斜視図である。
【図3】第2の視角から見た場合の図1の例示的な実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細には、図1は、自動車の車内から見た場合の自動車のドアの内側ライニング10及びドアピラーの内側ライニング12の図を示している。肘掛け14は、ドア間隙16を横方向に横切って延び、2つの部分14a、14bを有する。第1の部分14aは、内側ライニング12の背後に配置されているドアピラーに固定され、一方、第2の部分14bは、内側ライニング10の背後に配置されている車両ドアの構造に固定される。
【0018】
図示されている実施形態では、肘掛け14は内側ライニング10、12の凹部10a、12aに配置される。線18、20は、内側ライニング10、12のより低い位置にある領域10a、12aと、車両横方向18のより高い位置に配置された内側ライニング10、12の領域とを画定する。車両横方向18は紙面に対して垂直であり、これに対して、車両垂直軸線の方向20は紙面に沿う。ここで、本発明は、肘掛け14の第1の部分14a又は第2の部分14bが、それぞれ下部にある車体構造に固定される取付け部に関する。
【0019】
図2は、本発明による取付け部22の例示的な実施形態を示している。図示されている形態では、取付け部22は一体形の板金(たとえば鋼板)プロフィル(形状)として具体化され、この板金プロフィルは、車体に当接するように設計された支持部24と、支持部24から角度αで突出しかつ肘掛け14、14a又は14bを固定するように設計されたホルダ26とを有する。支持部24及びホルダ26は移行領域で互いに合体する。
【0020】
図示されている実施形態では、支持部24は、取付け部22をボディシェルに固定するために使用される開口28を有する。この固定は、好ましくは溶接接合によって実現される。
【0021】
図示されている実施形態では、ホルダ26は、第1の脚部26aと第2の脚部26bとを有するU字形のプロフィルであり、この場合、第1の脚部26aは移行領域に合体し、第2の脚部26bは、肘掛けを固定するように設計される。
【0022】
このために、図示の実施形態のホルダ26は、肘掛け14、14a又は14b用のねじ固定点としてのカットアウト30を有する。このように、開口28及び30は、ホルダ22をボディシェルに固定するための、及び肘掛け14、14a又は14bを取付け部22に固定するための手段の実施形態を意味する。
【0023】
図示の取付け部22の実施形態では、支持部24とホルダ26との間の移行領域は、車両の垂直軸線20の方向に湾曲部を有しない。これにより及び取付け部22の残りの断面形状により、この方向20において、所望の高い安定性が得られる。
【0024】
これに対して、角度αが存在する面では、取付け部22は移行領域に湾曲部を有する。この湾曲部により、移行領域は、図3の取付け部22の斜視回転位置の破線で示されているように、曲げ線34を有する曲げヒンジ32を形成する。側面衝撃衝突中に発生するような車両横方向軸線の方向の力が作用する場合、上述の曲げヒンジ34は、ホルダ26が支持部24に対して矢印方向36に回転する塑性曲げ運動により反応するように設計される。
【0025】
好ましい実施形態では、支持部24は50〜70mmの高さhと20〜30mmの幅bとを有する。ホルダ26は、好ましくは、70度〜110度の値を有する角度αで、及び30mm〜50mmの長さlで支持部24から突出する。ホルダ26の脚部26a、26bの間の距離は好ましくは15〜25mmである。さらに、鋼板プロフィルの板厚は2.5mm〜3.5mmであることが好ましい。
【符号の説明】
【0026】
14、14a、14b:肘掛け、 22:取付け部、 24:支持部、 26:ホルダ、
32:曲げヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車内の肘掛け(14、14a、14b)用の取付け部(22)において、
前記取付け部(22)が、異なる方向から前記取付け部(22)に作用する力に異なって反応するように設計されることを特徴とする取付け部(22)。
【請求項2】
前記取付け部(22)が、前記自動車の横方向軸線(18)の方向と平行又は逆平行に作用する力に対してよりも、前記自動車の垂直軸線(20)の方向と平行又は逆平行に作用する力に対して抵抗力を有することを特徴とする請求項1に記載の取付け部(22)。
【請求項3】
前記取付け部(22)が、永久変形することなく、前記垂直軸線(20)の方向と平行又は逆平行に作用する500Nの力を吸収し、かつ前記力を車体に伝達するように設計されることを特徴とする請求項1又は2に記載の取付け部(22)。
【請求項4】
前記取付け部(22)が曲げヒンジ(32)を備え、
前記曲げヒンジ(32)が、塑性変形によって、側面衝撃衝突中に発生するような前記自動車の横方向軸線(18)の方向と平行又は逆平行に作用する力に反応することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の取付け部(22)。
【請求項5】
前記取付け部(22)が、前記自動車のボディに当接するように設計された支持部(24)と、前記支持部(24)から所定角度(α)で突出し、かつ前記肘掛け(14、14a、14b)を固定するように設計されるホルダ(26)とを有する一体形の板金プロフィルを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の取付け部(22)。
【請求項6】
前記支持部(24)及び前記ホルダ(26)が、前記取付け部(22)が設置された状態で前記自動車の前記垂直軸線(20)の方向に湾曲部を有しない移行領域で互いに合体することを特徴とする請求項5に記載の取付け部(22)。
【請求項7】
前記ホルダ(26)が、第1の脚部(26a)と第2の脚部(26b)とを有するU字形のプロフィルを備え、
前記第1の脚部(26a)が前記移行領域に合体し、
前記第2の脚部(26b)が前記肘掛け(14、14a、14b)を固定するように設計されることを特徴とする請求項5又は6に記載の取付け部(22)。
【請求項8】
前記支持部(24)が50〜60mmの高さ(h)と20〜30mmの幅(b)とを有することと、
前記ホルダ(26)が、70度〜110度の値を有する角度(α)で及び30mm〜50mmの長さ(l)で前記支持部(24)から突出し、前記ホルダの前記脚部(26a、26b)の間の距離(c)が15〜25mmであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の取付け部(22)。
【請求項9】
前記取付け部(22)が鋼板プロフィルとして形成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の取付け部(22)。
【請求項10】
前記鋼板プロフィルの板厚が2.5mm〜3.5mmであることを特徴とする請求項9に記載の取付け部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−95250(P2010−95250A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233033(P2009−233033)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】