説明

自動車の電気式補助暖房装置

【課題】加熱される空気の温度超過が高い信頼性で回避される電気式補助暖房装置を提供する。
【解決手段】吐き出される暖気の温度を車両の速度に依存して調整する。この調整は、格納されている特性フィールドを通じて行うことが好ましく、特性フィールドによって、複数の車両パラメータ(例えば、車両速度、コンバーチブルトップの開放状態、外側温度)を容易に考慮に入れることができる。入ってくる空気の温度は、車両においてすでに利用可能である温度値から導くこともできる。このようにして、使い勝手のよい電気式暖房装置を極めて容易に達成することができる。この暖房装置は、車両内で局所的に、例えば、車両のシート、あるいは車室の後部などにおいて、使用することができる。自動車の運転条件がたとえ動的に変化する場合においても、加熱された空気の温度変動を容易かつ高い信頼性で回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の電気式補助暖房装置に関する。具体的には、本発明は、加熱素子に加えて、加熱素子によって発生させなければならない加熱出力を制御する制御ユニットも備えている補助暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバーチブルトップを開いた状態で走行するときの快適性を向上させる目的で、カブリオレにおけるドラフト現象(draught phenomena)を防止するための暖房装置は、すでにかなり長い間使用されている。これらの暖房装置においては、ブロアに吸い込まれて吐き出される空気は、エンジンの廃熱または追加の暖房モジュールを利用して暖められ、車両の車室内に吹き出される。さらに、乗員の首領域付近に暖気の流れを伝えることができるように、車両のシートにも空気吐出口を設けることができる。車両の取付け具、シート、またはその他の部分に取り付けられているこのような暖房装置の加熱出力は、通常ではユーザによる手操作によって決定されるが、ユーザは、暖房装置から吐き出される空気の正確な温度および強さを細かく操作することはない。
【0003】
乗員の首領域に暖気を供給する目的には、例えば、特許文献1に、オープンカーのための風保護装置であって、シートに設けられている空気流開口から吐き出される空気流が車両速度に依存して制御される、風保護装置が開示されている。この特許文献1においては、車両速度が上がると空気流の強さを増大させるのに対し、車両速度が下がると空気流の強さを低減させる。さらに、空気流開口から吐き出される空気の温度が一定に維持されるように、変更された空気流の強さに加熱出力を適合させる。したがって、この特許文献1に開示されている空気流制御は、ブロアおよび加熱出力を制御しなければならないため、極めて複雑である。
【0004】
さらには、特許文献1では、空気を加熱するために使用される加熱素子は、加熱出力が変化するときに起こる慣性効果を伴うことを考慮していない。例えば、車両の加速段階時に空気体積流量が大きく増大すると、PTC加熱素子は、その慣性に起因して、吐き出される空気流の温度を一定に維持するために要求される加熱出力を提供することができない。結果として、加速段階時には、十分に加熱されていない空気が乗員の首に吹き付けられ、これによって望ましくないドラフト現象が起こる。
【0005】
車両が急激に減速するときにも、同様の問題が起こる。加熱素子の慣性のため、空気体積流量が減少するときにそれに遅れずに加熱出力を下げることができない。したがって、減速時には、過度に高い温度の空気が乗員の首に吹き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許第10054009号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、上述した問題を回避することのできる、改良された電気式補助暖房装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。本発明の都合の良いさらなる特徴を備えた有利な実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0009】
本発明の具体的な方法においては、補助暖房装置から吐き出される空気体積流量ではなく、空気流の温度を、車両速度に依存して調整する。本発明によると、電気式補助暖房装置は、補助暖房装置の中を流れる空気を加熱する少なくとも1つのPTC加熱素子と、加熱素子によって発生する加熱出力を調整する制御ユニットとを備えている。速度に依存する影響、例えば、後流に起因する影響を補正する目的で、この制御ユニットは、補助暖房装置から吐き出される空気の温度を車両速度に依存して調整する。
【0010】
したがって、本発明によると、乗員にとって心地よい温度が、乗員の首領域に生成される。従来技術によると、この目的を達成するため、空気流量を車両速度に依存して変化させる。しかしながら、この方法を採用した場合、吐き出される空気の温度を一定に維持することが難しい。流れる空気量が変化すると、短期間の間、熱い空気または冷たい空気が乗員の首領域に吹き付けられる。本発明による方法と、本発明による暖房装置とを使用すると、これらの欠点を効果的に回避することができ、さらに、電気式補助暖房装置の構造設計を単純にすることができる。
【0011】
好ましい実施形態によると、制御ユニットは、吐き出される空気の温度が変化するように、発生させる加熱出力の基本値を調整する。すなわち、基本値から開始し、車両の速度に依存して加熱出力を変化させる。この基本値は、例えば乗員によって事前に選択できることが好ましく、または、外部パラメータ、例えば、外側温度に応答して自動的に調整される。
【0012】
したがって、吐き出される暖気の温度を、乗員のニーズまたは外部の影響に容易に適合させることができる。このことは、特に、補助暖房装置が乗員の首領域において使用される場合に有利である。運転者がコンバーチブルトップを開いて運転するとき、風の冷たさ、したがってドラフト現象の強さは、外側温度によって大きく影響される。上述したように、多くの暖房装置では、乗員が手操作によって選択できるさまざまな快適性段階(それぞれに特定の加熱出力強度が割り当てられている)をさらに提供している。基本値を考慮することによって、吐き出される空気の温度制御において、乗員によって指定される個々の要求条件、または外側温度の影響を考慮することができる。
【0013】
ほとんどの車両では、暖房装置の快適性段階の選択に加えて、暖房装置の空気流量を個々の必要に応じて適合させる手段も提供している。例えば、ブロアの段階を選択して、暖房装置に空気を供給するブロアの回転数を調整することが可能である。この状況を考慮するため、基本値を調整するとき、補助暖房装置は、自身を流れる空気体積流量を考慮することが好ましい。
【0014】
温度を変化させるために発生させる必要のある加熱出力の、車両速度に対する依存性は、理論的に正確に既知ではないことが多いため、車両速度に対する加熱出力の依存性を記述する特性フィールドを、補助暖房装置が格納していることが好ましい。このような特性フィールドは、例えば、実験によって容易に求めることができる。
【0015】
要求される加熱出力には、吸い込まれる冷気の温度も重大に影響する。発生させる加熱出力を調整するため、補助暖房装置は、好ましい実施形態によると、補助暖房装置によって加熱される空気の温度(以下では「冷気温度」と称する)を判定する温度判定ユニット、をさらに備えている。確定された冷気温度に基づいて、制御ユニットは、加熱素子によって発生させる加熱出力を、さらにこの冷気温度に依存して決定する。
【0016】
加熱される冷気の温度が判定されることにより、発生させる加熱出力を、入る空気の特性に正確に適合させることができる。このようにして、暖房装置から吐き出される空気の暖気温度の速度依存制御を、車両速度に正確に適合させることができる。例えば、加熱される空気が非常に冷たい場合、この空気を事前決定される温度まで加熱するためには、より高い加熱出力が必要であるのに対し、さほど冷たくない空気を加熱するためには、より低い加熱出力で十分である。補助暖房装置から吐き出される空気の正確な温度は、冷気温度と加熱出力とに依存するため、吐き出される空気の温度をずっと効果的に制御することができる。
【0017】
温度判定ユニットは、冷気温度を、少なくとも1つの測定温度値を使用して判定することが好ましい。冷気温度の判定を向上させるため、補正係数をさらに使用することができる。補正係数を使用することにより、加熱される空気の温度を測定する目的で空気ダクト内、加熱素子の前に配置されるセンサーを使用する必要がなくなる。加熱される空気の温度は、車両の別のコンポーネント(例えば、空調システム)から利用可能である温度値から求めることができる。換気/暖房の内気循環モードにおいては、吸い込まれる空気の温度は、車両の車室内の温度に基づいて容易に求めることができるが、外の新鮮な空気が車両内に流れ込む外気導入モードにおいては、車両の外側温度が、冷気温度の良好な値である。
【0018】
冷気温度を、車両内で検出される温度値から求める場合、少なくとも1つの補正係数を使用することが好ましく、この補正係数は、測定される温度と、加熱される空気の正確な温度との間の差を補正する。この温度差は、自動車の運転中に一定ではないことがしばしばある。この時間的変動を考慮するため、さらなる有利な実施形態によると、温度判定ユニットは、測定される温度値に対する、冷気の時間的変動を補正する補正係数を使用する。
【0019】
コンバーチブルトップが開いた状態、または窓が開いた状態で車両が走行しているときには、加熱される冷気の温度に外側の温度が大きく影響するため、車両の内側温度および車両の外側温度の重み付き組合せに基づいて、冷気温度を求めることが好ましい。
【0020】
あるいは、本発明による温度判定ユニットは、ブロアと加熱素子との間の空気取り入れセクションに配置されている温度センサーを使用して、冷気温度を測定する。冷気温度は、加熱素子のすぐ前で測定されないことがしばしばあるため、冷気温度は、温度を測定してから空気を加熱するまでにおそらくはわずかに変化する。したがって、測定値からのずれを考慮する補正係数をさらに使用することが好ましい。
【0021】
発生させる加熱出力を決定するために必要なパラメータ(例えば、加熱素子の加熱特性、あるいは車両に依存する影響)は、理論的には既知でないことがしばしばあるため、補助暖房装置は、入力値に依存する発生させる加熱出力を記述する特性フィールド(characteristic field)を格納していることが好ましい。補助暖房装置の制御は、数式と特性フィールドの組合せによって実施することができる。また、制御ユニットは、加熱出力の調整を特性フィールドのみによって実行することもできる。
【0022】
好ましい実施形態によると、補助暖房装置は、加熱される冷気を加熱素子に供給するブロアをさらに備えている。補助暖房装置にブロアを組み込むことによって、補助暖房装置とブロアを取り付けるために個別の組立てステップがもはや必要ないため、車両の製造を容易にすることができる。
【0023】
本発明を使用すると、電気式補助暖房装置を、自己完結的に動作する補助暖房装置として自動車内の任意の場所において容易に使用することができる。したがって、この補助暖房装置は、局所的な暖房を実施するのに特に適しており、任意の使用場所、例えば、車両のシートの中、車室の後部、フロア空間、車両のBカラムまたはCカラムに取り付けることができる。特に、発生させる加熱出力を正確に決定することによって、乗員のすぐ近傍において補助暖房装置を使用することができる。したがって、シート、乗員の背中、または首領域に暖気を供給する補助暖房装置を、車両のシートに設けることが好ましい。
【0024】
本発明のその他の利点、特徴、および詳細は、好ましい実施形態の以下の説明と図面とから理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による電気式補助暖房装置の概略的な構造設計を示している。
【図2】負荷が変化する場合における、本発明による補助暖房装置の加熱出力の時間に伴う変化を示している。
【図3】追加の温度判定ユニットを有する、本発明による電気式補助暖房装置の概略的な構造設計を示している。
【図4】ブロアが組み込まれている、本発明による電気式補助暖房装置の構造設計を示している。
【図5】補助暖房装置が取り付けられている車両のシートを示している。
【図6】加熱素子に入る空気の温度を考慮する、電気式補助暖房装置の制御の原理を示している流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、第1の実施形態による、本発明の電気式補助暖房装置の概略的な構造設計を示している。補助暖房装置1は、加熱セクション3と制御ユニット2とを含んでおり、加熱セクション3は、1つまたは複数のPTC加熱素子と、自身の中を流れる空気に加熱出力を伝えるラジエータ要素とを備えており、制御ユニット2は、1つまたは複数の加熱素子の加熱出力を調整する。
【0027】
補助暖房装置1を車両内の別のコンポーネントに接続するため、補助暖房装置1には端子4が設けられている。この端子を使用することにより、自動車の内側または外面において求められるパラメータ値、例えば、車両速度センサーあるいは温度センサーからのパラメータ値を、制御ユニット2に供給することができる。さらに、例えば、ユーザ定義の事前決定される指定値、あるいは車両の別のコンポーネントの信号を、この端子を介して制御ユニット2に送信することもできる。補助暖房装置1は、車両の外部装置にアナログ方式またはデジタル方式において直接接続することができる。しかしながら、この場合には、外部装置それぞれを個別に補助暖房装置1に接続しなければならないため、高いケーブルコストが必要である。この問題を回避する目的で、車両内のバス(例えば、CANバス、LINバス)を使用することがますます一般的になっている。このバスは、複数の装置の信号を1本のラインによって車両の別の装置に送信する。端子4を使用することにより、補助暖房装置1をそのようなデータバスに容易に接続することができ、補助暖房装置1は、バスを介して受け取る信号をさらに処理する。例えば、制御ユニット2は、車両の速度を示す信号をこのバスを介して受け取ることができる。
【0028】
しかしながら、当業者には、上述した端子の用途は一例を示しているにすぎず、これらの端子によって、補助暖房装置に対する数多くの操作が可能であることが認識されるであろう。
【0029】
本発明の特殊な実施形態によると、補助暖房装置には、さらにブロアが設けられている。このブロアは、加熱素子によって加熱された空気を吐出口を通じて車室内に吹き込む空気流を発生させる。この実施形態については、後から図5を参照しながら詳しく説明する。
【0030】
吐き出される空気の温度の制御は、車両速度の推測値を導くことのできる信号に基づく。この信号は、例えば、車両速度の正確な値を示す回転速度計の信号とすることができる。あるいは、信号を車輪速度またはギアの回転速度とする、または、例えばアンチロックブレーキシステムから得ることもできる。制御ユニット2は、補助暖房装置から吐き出される空気の温度を、車両速度が上がるにつれて空気の温度が上昇し、車両速度が下がるにつれて空気の温度が下降するように、この信号に基づいて制御する。
【0031】
以下では、吐き出される空気の温度を速度に依存して制御する方法を示す、本発明のさまざまな例示的な実施形態について説明する。
【0032】
本発明の特殊な方法においては、従来技術の場合とは異なり、空気流量を車両速度から切り離す。車両速度が変化するときに首領域における快適な温度を達成する目的で、空気流量を実質的に一定に維持し、吐き出される空気の温度を変化させる。
【0033】
補助暖房装置を流れる一定の空気流量を達成するため、ブロアの回転速度は、瞬間的な車両速度には関係なく同じ値のままである。したがって、加熱出力を増大または減少させると、それに直接対応して、補助暖房装置から吐き出される空気流の温度が上昇または下降する。したがって、上述した加熱素子の慣性を考慮しても、速度が大きく変化するときに従来の補助暖房装置において起こりうる不都合な温度変動を回避することが可能である。
【0034】
本発明の範囲においては、一定の空気流量とは、空気流量を変化させることができないことを意味するものではない。当然ながら、ユーザによって異なる空気流量を事前に選択することができる。さらに、空気流量を、車両速度に依存するのではなく別のパラメータに依存して変化させることもできる。この目的で、制御ユニット2は、空気流の強さに関する情報を提供する信号(ブロアまたは車両の何らかの別のコンポーネントによって送られる)を、端子4を介して受け取ることができる。この信号は、例えば、ブロアの回転数、あるいは選択されている換気段階に関する情報を提供することができる。制御ユニット2は、空気流の強さが増すと好ましくはそれに対応して加熱出力が増大し、空気流が減少すると好ましくはそれに対応して加熱出力が低下するように、受け取った信号に基づき、空気量の変化に加熱出力を適合させる。
【0035】
上述したように、補助暖房装置から吐き出される空気流の温度を、加熱出力を変化させることによって制御する。この制御においては、加熱される空気に1つまたは複数の加熱素子によって伝えられる加熱出力を、速度が上がると空気の温度が上昇し、速度が下がると空気の温度が下降するように、車両速度に適合させる。速度に対する加熱出力の依存性、したがって、速度に対する、吐き出される空気の依存性は、いくつかの方法において制御することができる。
【0036】
この制御は、例えば、車両速度または車輪速度に対する加熱出力の依存性を記述する線形または非線形の関数関係を利用することによって行うことができる。また、車両速度およびその他の使用可能なパラメータに対する加熱出力の依存性を反映する特性を使用することも可能である。この場合、加熱出力を求める計算処理を回避することができる。しかしながら、必要な加熱出力を求めるための別の可能な方法も存在し、上述した方法が一例にすぎないことが、当業者には認識されるであろう。
【0037】
前述および後述する機能を実行する場合、制御ユニット2は、例えば、加熱素子の制御を定義する制御プログラム、機能ルーチン、または特性を含んでいるメモリユニット(図示していない)を含んでいることができる。さらに、制御ユニット2は、この場合、メモリユニットに格納されているプログラムを実行するプロセッサを含んでいることが好ましい。しかしながら、暖気温度の速度依存制御は、何らかの別の方法において実現することもできることが、当業者には認識されるであろう。
【0038】
さらに、端子4を介して、メモリユニットに格納されている制御プログラムを更新する、あるいは制御ユニット2を保守することも可能である。
【0039】
加熱出力の制御は、加熱素子(または、好ましくは個別に制御可能な複数のPTC加熱素子)を流れる電流の強さを適切に選択することによって、容易に達成することができる。この目的には、通常では、補助暖房装置の個別に制御可能な加熱段階の数に応じて、電力半導体(各加熱段階に供給される電流を調整する)が使用される。
【0040】
本発明による制御により、補助暖房装置の中を流れる空気に1つまたは複数の加熱素子によって伝えられる加熱出力を、速度が上がったときに不都合な制御オーバーシュートなしに空気の温度が上昇するように、車両速度に適合させる。加熱される空気流の不快な過度の暖房を高い信頼性で回避することができる。
【0041】
補助暖房装置から吐き出される空気の暖気温度を速度に依存して変化させる場合、車両速度のみならず、外側温度も考慮することが有利である。前述したように、多くの暖房装置では、乗員が手操作によって選択できるさまざまな快適性段階(それぞれに特定の加熱出力強度が割り当てられている)がさらに提供される。
【0042】
これを考慮する目的で、加熱後の空気の温度を変化させるために使用される加熱出力を、車両の乗員によって事前に選択できる基本値から開始して、車両速度に依存して調整することが好ましい。この基本値は、手操作での入力に加えて、またはそれに代えて、制御ユニットまたは空調システムによって、外部パラメータ(例えば、外側温度、あるいは、コンバーチブルトップまたは窓が開いている程度)に依存して自動的に調整することもできる。この場合、制御ユニット2によって、各基本値および各快適性段階に、速度に依存する加熱出力値が割り当てられる。しかしながら、本発明は、正確な加熱出力値を使用することに限定されない。この方法に代えて、例えば、各快適性段階の基本値としての特定の加熱出力と、各基本値に対しての、車両速度に依存して基本値を低減または増大させなければならない程度を示す補正値とを格納することも可能である。さらに、1つのみの快適性段階の正確な温度値を格納しておき、それ以外の快適性段階については、その格納されている温度を、選択された快適性段階に依存して適合させる程度を示す補正値を使用することも可能である。しかしながら、1つまたは複数の基本値から開始して、加熱出力を速度に依存して変化させる複数の可能な方法が存在することが、当業者には認識されるであろう。
【0043】
上述したように、補助暖房装置を流れる空気流量を速度に依存して変化させないことは、本発明の重要な特徴であるが、この特徴は、本発明において、空気流の強さを変化させることをまったく除外することを意味するものではない。
【0044】
最近の換気システムでは、例えば、車両の乗員によって選択できる複数のブロア段階を提供している。さらに、空調システムによって、手操作によりまたは自動的に走行中に外気導入モードから内気循環モードに変更されることがあり、これにより、ブロアによって車室内に吹き出される空気流の強さが変動することがある。
【0045】
このような空気流の強さの変動を考慮するためには、空気流量が変動する場合に、吐き出される空気の温度が変化することが防止されるように、加熱出力の基本値を、手操作またはおそらくは自動的に選択される空気流の強さに適合させることが好ましい。したがって、換気の快適性段階が変更された場合、それに対応して、発生させる加熱出力を変更する。
【0046】
負荷が変化する場合、すなわち、加熱素子によって発生させる出力を不連続に変化させる場合における慣性効果を補正する目的で、負荷の変化が起きたときに、最初、特定の期間にわたり、事前決定された目標値から加熱出力がはずれるように、加熱素子3によって発生する加熱出力を制御することが好ましい。
【0047】
図2は、空気流の強さが増し、発生させる加熱出力がその結果として増大する場合における、加熱素子3によって発生させる加熱出力の、例示的な時間依存の特性を示している。吐き出される空気をより急速に加熱する目的と、加熱素子の慣性を補正する目的で、負荷の正の変化(例えば、快適性段階が高められる)に応答して、現在の車両速度に関連付けられる加熱エネルギよりも高い加熱エネルギを、一時的に加熱素子に供給する。より高い加熱出力を選択することによって、慣性にもかかわらず、望んだとおりに空気が加熱されることが達成される。
【0048】
同様に、制御ユニット2は、負荷の負の変化(例えば、より低い快適性段階が選択される)に応答して、加熱素子に選択される加熱エネルギが、各車両速度に対して設定されている加熱エネルギよりも低くなるように、構成されている。より低い加熱出力がこのように選択されることにより、吹き出し温度の上昇(空気流量が少ないことと、加熱素子の熱質量に蓄えられているエネルギとによって生じうる)が防止される。したがって、負荷の負の変化の場合には発生させる加熱出力を減少させることにより、吹き出し温度のオーバーシュートと、結果としての過度な暖房効果とが回避される。
【0049】
1つまたは複数の加熱素子は、パルス幅変調(PWM)によって制御されることが好ましい。加熱出力はデューティサイクルを介して調整される。負荷の変化が起きたとき、このデューティサイクルを、短い期間について、増大させる(負荷の正の変化の場合であり、より高い快適性段階への切替えが行われるとき)、または減少させる(負荷の負の変化の場合、すなわち、より低い快適性段階への切替えが行われるとき)。しかしながら、デューティサイクルの一時的な増大または低減の正確な制御を、理論的に求めることは困難である。したがって、満たすべき要求条件に応じて、車両に依存する値として実験的に求めることが好ましい。
【0050】
図2に示した動作開始時のオーバーシュート(switch-on overshoot)では、選択されている期間の間、一定の値を想定しているが、必ずしもこのように選択する必要はない。時間とともに変化する、動作開始時の増加した加熱出力として、初期値から開始して、速度それぞれに関連付けられる加熱出力まで連続的または段階的に減少する増加した加熱出力を使用することも可能である。同様に、動作開始時の減少した加熱出力の場合、一定の値、または、時間とともに変化して初期値から加熱出力まで増大する値を選択することができる。
【0051】
空気流の強さが車両速度に依存して制御されないため、空気流の強さの変化は、極めてまれにしか起こらない。したがって、従来の補助暖房装置とは異なり、温度のオーバーシュートはほとんど起こることがなく、たとえ起こる状況においても、上述した動作開始時の増加した加熱出力または減少した加熱出力を使用することによって回避することができる。
【0052】
吐き出される暖気の温度の上述した制御においては、入る空気の温度を考慮していない。速度に依存しての暖気温度の適合化の改良を、加熱される空気の冷気温度を考慮することによって達成することができる。
【0053】
図3は、制御ユニット2およびPTC加熱素子3に加えて温度判定ユニット5を備えている電気式補助暖房装置の、概略的な構造設計を示している。温度判定ユニット5が制御ユニット2に接続されており、加熱素子3に入る冷気の温度を反映する温度値をこの制御ユニットに供給し、この温度値を使用して、PTC加熱素子の加熱出力を決定する。
【0054】
補助暖房装置1を車両内の別のコンポーネントに接続するため、補助暖房装置1には端子4a,4bが設けられている。端子4bを使用することにより、例えば、温度判定ユニット5を、車両の内側または外側に設けられている温度センサーに接続することができる。さらに、制御ユニットの挙動を端子4aを介して操作することも可能である。この端子は、例えば、ユーザ定義による事前決定される値、または車両の別のコンポーネントの信号を制御ユニット2に送信する目的に使用することができる。
【0055】
前述したように、補助暖房装置1は、車両の外部装置にアナログ方式またはデジタル方式において直接接続する、またはデータバスを介して接続することができる。例えば、車両に取り付けられている空調システムの温度値、または空気ダクトに設けられているセンサーの温度値を、このバスを介して温度判定ユニット5に供給することができ、温度判定ユニット5は、受け取った値に基づいて、加熱される空気の冷気温度を求めることができる。
【0056】
同様に、制御ユニット2および温度判定ユニット5を端子4a,4bを介して更新あるいは保守することも可能である。しかしながら、当業者には、上述した端子の用途は一例にすぎず、これらの端子によって、補助暖房装置に対する数多くの操作が可能になることが認識されるであろう。さらには、補助暖房装置に必ずしも2つの個別の端子を設けなくてもよい。補助暖房装置は、例えば、制御ユニット2に接続されている1つの端子4aのみを備えていることができ、この端子4aを通じて制御ユニット2にデータが供給される。この場合、温度判定ユニット5によって要求されるデータは、(必要な場合)制御ユニット2によって温度判定ユニット5に渡される。
【0057】
図4は、追加のブロアを備えた、本発明による電気式補助暖房装置を詳しく示しており、ブロアには、本発明の実施形態によると、冷気温度を測定するための温度センサーが設けられている。しかしながら、前述したように、このような温度センサーの使用は、絶対的に必要なわけではない。
【0058】
補助暖房装置1は、加熱素子3が中に並んで配置されている平坦な収納部6と、制御ユニット2および温度判定ユニット5が組み込まれている電子制御部7を有する回路基板と、ラジアルブロア8と、温度センサー10とから構成されている。収納部6の外周には、複数の取付け連結部9がさらに設けられており、これらの取付け連結部9は、収納部6を車両の支持体における相補的な連結部に結合するために使用される。温度センサー10は、冷気のセクションに設けられており、電子制御部7に接続されている。さらに、電子制御部7は、自動車の配線系統、ラジアルブロア8、または適切な制御要素(シートまたは取付け具の領域に設けられていることが好ましい)に、ライン(詳しくは図示していない)を介して接続されている。これらの制御要素は、例えば、暖気温度もしくはブロアの速度、またはその両方を、互いに独立して調整する目的で使用することができる。さらには、制御部7を、温度センサー10に加えて、または温度センサー10の代わりに、車両のバスに接続することができ、このバスは、車両において利用可能な周囲パラメータ、例えば、内側温度、外側温度、車両速度、コンバーチブルトップの状態(開/閉)などを、制御部7に供給する。
【0059】
図4は、本発明の多数の可能な使用方法を明確に示している。図4に示したタイプの補助暖房装置は、車両内の多数の場所において使用される。補助暖房装置は、例えば、ダッシュボード、シートの表面域、車両のシートの背もたれおよびネックレストに取り付けられる。さらに、最近の車両は、快適性を高めるため複数のブロアまたは暖房モジュールを備える。本発明では、車両に組み込まれる個々の加熱素子それぞれについて、入ってくる空気の温度を個別に求めることから、加熱素子それぞれが自己完結的に動作することができ、したがって、局所的に使用することができる。
【0060】
図5は、車両のシートを暖房する目的で、本発明による補助暖房装置を使用する1つの可能な実施形態を示している。車両のシート11は、通常の場合におけるように、シートクッション部12および背もたれ13を備えている。シートクッション部12および背もたれ13の両方は、本質的に支持体から構成されており、この支持体は、硬質発泡体(例えば、ポリウレタン)から作成されていることが特に有利であるが、スプリング入りシートとして支持体を実施することもでき、支持体には必要な固定レールおよびフレームが組み込まれている。硬質発泡体の表面には、例えば編地14が接着されており、その上に外側カバー15(例えば、ベロア、レザー)が載っている。
【0061】
図5に示した実施形態においては、硬質発泡体には空気流路16が形成されており、この空気流路16は、端部がチャンバ状であり、その全長にわたり編地14の方向に開いている。シートクッション部12および背もたれ13の背面には、配置目的で形成されている開口に補助暖房装置6が配置されている。補助暖房装置によって加熱された空気は、空気流路16を通じて乗員に送られる。図5はシートクッション部およびシートの背もたれ部の暖房装置を示しているのみであるが、本発明による補助暖房装置は、乗員の首領域を暖めるための空気流路(または複数の空気流路)を含んでいるシートにおいても、同じように使用することができる。この場合、1つのみの補助暖房装置ではなく、例えば3つの補助暖房装置を使用することができ、各補助暖房装置が、シート、シートに着座している人の背中、または首領域に、暖気を供給する。さらに、例えば、自動車の車室の後部を暖房する目的で、シートの外側において補助暖房装置を使用することができる。
【0062】
しかしながら、車両において複数の補助暖房装置を使用するときには、個々の加熱素子3それぞれに電子制御部7を設ける必要はない。コストを低減するため、例えばバスを介して、またはアナログ方式で個々の加熱素子に接続されている1つのみの電子制御部を、車両に設けることができ、この電子制御部は、加熱素子それぞれによって発生させる加熱出力を個々に調整する。
【0063】
さらには、個々の加熱素子それぞれが個別のブロア8を備えている、あるいは接続されている必要もない。コストおよび車両重量を低減するため、複数の加熱素子を1つのブロア8に接続することができ、このブロア8が各加熱素子に空気を供給する。本発明による補助暖房装置は、例えば、中央のブロアからの空気を、車両のそれより後部に配置されている吹出口に導くために使用される空気ダクトに配置することができる。そのような場合、個々のブロアは必要ない。さらには、車両のシートは、外部ブロアに接続されている1本のみ、または複数の空気ダクトを備えていることができ、これらのダクトに、本発明による1つまたは複数の補助暖房装置を設ける。暖房装置に供給される冷気流のパラメータは、例えば中央の空調システムによって提供することができる。
【0064】
前述したように、本発明の一実施形態によると、発生させる加熱出力は、加熱される空気の冷気温度に大きく依存する。発生させる加熱出力は、さまざまな方法、例えば、制御量として冷気温度を含んでいる数学方程式によって、決定することができる。特性または特性フィールドを使用するときには、この数学的な計算処理を回避することができる。後者の方法で加熱出力を決定する場合、冷気温度に対する加熱出力の依存性と、速度に依存する暖気温度とを反映する特性が、例えば、補助暖房装置における測定値によって実験的に求められ、動作時に、補助暖房装置から吐き出される暖気を、この特性を通じて車両速度それぞれに最適に適合させることができる。
【0065】
温度の判定を向上させるため、2つの判定方法を組み合わせることもできる。例えば、数学的計算の個々の側面(例えば、パラメータの温度依存性)を特性フィールドによって容易に表すことができる。これにより、計算処理が大幅に減少し、なぜなら、パラメータの特性の正確な式がしばしば存在しないためである。特性を使用する場合、必要であれば特性を更新できるという利点もある。改良された測定方法を使用する場合、特性を決定しなおすことによって、例えば、冷気温度の判定を最適化することが可能である。これにより、さらに、補助暖房装置の変化する特性、例えば、補助暖房装置に生じうる汚れ(soiling)に、加熱出力の制御を適合させることができる。
【0066】
前述および後述する機能を実行するため、例えば、制御ユニット2もしくは温度判定ユニット5、またはその両方は、温度判定と加熱素子の制御を定義する制御プログラム、機能ルーチン、または特性を含んでいるメモリユニット(図示していない)を備えていることができる。さらに、制御ユニット2もしくは温度判定ユニット5、またはその両方は、この場合、メモリユニットに格納されているプログラムを実行するプロセッサを含んでいる。メモリユニットに含まれているデータは、端子4a,4bを介して容易に更新することもできる。
【0067】
以下では、発生させる加熱出力を計算する数学的方法について、最初に説明する。発生させる加熱出力を決定するためには、暖房装置から吐き出される空気の温度としての暖気温度を事前決定し、次いで、冷気温度を考慮し、吐き出される空気を、所望の暖気温度まで加熱するために必要な加熱出力を決定することが都合よい。
【0068】
この方法の基礎となるのは、次の式である。
【数1】


【0069】
加熱される空気が熱エネルギを取り込む効率を考慮する場合、効率係数αをさらに考慮することができる。この場合、加熱出力を計算する式は次のようになる。
【数2】

【0070】
加熱出力を計算するうえで必要な冷気温度は、いくつかの方法において求めることができる。これを達成する最も簡単な方法は、加熱される入ってくる空気の温度を測定する温度センサーとして、ブロアと加熱素子との間に位置する温度センサーを使用することである。しかしながら、必ずしもこのようなセンサーを使用する必要はなく、なぜなら、車両に取り付けられている多数の装置が車両の内側または外側の温度を測定しているためである。例えば、車両に取り付けられている空調システムは、車室内の温度をそこから推定することのできる温度を測定する。補助暖房装置に空気を供給するブロアが、例えば内気循環モードにおいて車両の車室から空気を吸い込むとき、空調システムによって測定される温度は、冷気温度の良好な値である。空気供給器が外気導入モードで動作しているときには、吸い込まれる空気は、車両内側からの空気ではなく、外側からの新鮮な空気である。この場合、車両に設けられている温度センサーによって測定される外側温度が、冷気温度の良好な尺度である。これらに基づいて、本発明では、車両の内側または外側の温度センサーによって測定される周囲温度Tambientを使用して冷気温度を求める。
【0071】
(車両の内側または外側の)周囲温度は、通常では冷気温度(吸い込み温度)に正確には対応していないため、例えばバスによって提供される温度(例えば、内側温度または外側温度)のクォリティを評価する係数Fを、さらに計算に導入することができる。例えば、バスによって提供される温度を適合させる必要がない場合、F=1を選択することができる。例えば、温度測定値と冷気温度との温度差を反映するクォリティ係数を使用して、冷気温度が得られるように周囲温度を補正する。
【数3】

【0072】
式(iii)においては、周囲温度と冷気温度の間の比を係数として求めることができるものと想定している。しかしながら、このような無条件の依存性がつねに与えられるわけではない。冷気温度がつねに特定の差異値だけ周囲温度と異なっていることもあり得る。周囲温度と冷気温度との間のそのような関係を考慮する場合、本発明では、上式に代えて、次式に示した加算補正係数fを使用する。
【数4】

【0073】
冷気温度に対する周囲温度の偏差の時間的な変動をさらに考慮する場合、補正係数を時間依存とすることもできる。例えば、周囲温度が、極めて短い時間内に特定の温度まで加熱される例えばダッシュボードあるいは中央コンソールにおいて測定されるのに対し、例えば車室の床付近において空気が吸い込まれる(この空気の温度は、コンソールの温度までゆっくりと上昇する)場合に、このような時間依存性が生じる。さらに、補正係数Fおよびfを組み合わせることによって、冷気温度を次のように求めることもできる。
【数5】

【0074】
ここまでは、車両の内側または外側において測定される1つのみの温度に基づいて冷気温度を求めた。しかしながら、冷気温度の判定は、複数の温度を使用することによって改良することができる。
【0075】
複数の温度値から冷気温度を求める場合、冷気温度に対する個々の温度の影響を表す加重係数もしくは相関係数、またはその両方を使用する。これらの係数の合計は1であることが好ましい。これらの相関係数は、時間的に一定である、あるいは時間的に変化することができる。これにより、車両によって提供される値のクォリティを評価することができる。
【0076】
以下では、複数の温度値の相関/加重について、測定される車室温度と外側温度の組合せに基づいて例示的に説明する。
【0077】
車両を始動させる、もしくは暖房モジュールのスイッチをオンにする、またはその両方を行ったとき、通常では、内部温度と外部温度の間に調整を行う。例えば、コンバーチブルトップまたは窓が閉じている状態で、車両内の車室温度が18℃であるのに対し、外側温度が10℃である場合、コンバーチブルトップまたは窓を開けたときには、これら2つの温度の間の値に温度を調整し、その温度値を評価する。
【0078】
加熱素子に入る空気の温度は、次式によって求めることができる。
【数6】

【0079】
式から明らかであるように、外部温度および内部温度の影響は、上の例における時間依存の適切な補正係数を選択することによって考慮されている。さらに、さらなる変動を反映する加算補正係数を追加することができる。
【0080】
上述した一連の式は、数学的に記述するための多数の補正係数を含んでいるが、これら係数の正確な関数関係は既知ではないことが多い。具体的には、補正係数の正確な値は車両に固有であり、車両および補助暖房装置の年式に伴って変化しうる。このような変化にもかかわらず補正係数として正確な値または係数の時間依存性を使用するためには、温度判定ユニット5は、個々の係数の依存性を表す特性(characteristics)を格納していることが好ましい。これらの特性または特性フィールドは、一連の測定値によって実験的に求められる。したがって、車両の型式ごとに個々の値を求めることができ、これにより、加熱出力の制御を最適に車両に適合させることができる。
【0081】
式(i)から理解できるように、補助暖房装置から吐き出される暖気の正確な温度を決定することにより、速度に対する、吐き出される暖気の依存性を正確に調整することができる。この目的に必要である、冷気温度および車両速度に加熱出力を適合させるステップは、さまざまな方法において達成することができる。例えば、特定の速度および冷気温度の一組の値に所定の加熱出力を割り当てる値テーブルまたは関数を、メモリユニット、または複数のメモリユニットのうちの1つに格納することができる。
【0082】
さらに、事前に選択される車両速度について、冷気温度のさまざまな値に特定の加熱出力を割り当てる値テーブルまたは関数のみを格納しておくことも可能である。この場合、格納されている加熱出力値を車両速度に依存して補正する程度を示す補正値によって、速度に依存しての加熱出力の変更を達成することができる。しかしながら、加熱出力を速度および冷気温度に依存して制御する方法を達成する上記以外の方法も存在することが、当業者には理解されるであろう。
【0083】
表1は、3つの快適性段階および4つの異なる速度に対する暖気温度がリストされている例示的なテーブルを示している。
【0084】
【表1】

【0085】
この場合、車両が静止した状態における暖気温度を、暖気温度の基本値として使用し、この基本値を車両速度に依存して調整する。表1から理解できるように、達成する暖気温度は、車両速度が上がるにつれて上昇するように選択することが好ましい。同様に、車両速度が下がるにつれて暖気温度を下降させる。
【0086】
表1には、特定の速度に対する暖気温度が含まれているにすぎないが、これは、暖気温度を車両速度に段階的に適合させることに本発明が限定されることを意味するものではない。暖気温度を、基本値から開始して車両速度に連続的に適合させることも可能である。この適合化は、暖気温度を基本値から開始して車両速度に線形比例するように変化させることによって、容易に達成することができる。しかしながら、車両速度に対する暖気温度の非線形依存性を使用することもできる。
【0087】
さらに、暖気温度を速度に依存して制御するために使用される、表1に示した上述した方法は、単なる例であり、この制御を達成することのできる数多くの方法が存在することが、当業者には理解されるであろう。
【0088】
補助暖房装置1によって速度に依存して事前決定される暖気温度は、乗員に必要な快適さを満たすには十分でないことが多い。具体的には、多くの乗員にとって、暖房装置から吐き出される空気の暖気温度を、自身が求める快適さにできるだけ正確に適合させ得ることが重要である。
【0089】
この要求を満たす目的で、補助暖房装置の制御ユニットは、外部の入力ユニットから受け取る値に基づいて決まる、事前決定される温度値であって、暖気温度の速度依存性を制御するために使用される温度値を、さらに考慮することが好ましい。
【0090】
結果としての事前決定された温度値を暖気温度の基本値として使用し、この温度を、その事前決定された温度値によって決まる基本値から開始して、車両速度に依存して変化させる。この事前決定される温度値は、さまざまな方法において生成することができる。例えば、ユーザが入力する正確な温度値を、事前決定された温度値として制御ユニット2に渡すことができる。制御ユニット2は、事前決定された温度値を受け取った時点で、現在の車両速度を求め、事前決定された温度値および車両速度の組合せを基本値として使用して、暖気温度を速度に依存して制御する。すなわち、この基本値に基づいて、速度が下がるときには暖気温度を下げ、速度が上がるときには暖気温度を上げる。暖気温度の基本値は、必要に応じて乗員によっていつでも変更および調整することができる。
【0091】
さらに、本発明は、基本値をユーザ定義によって事前決定する方式に限定されない。これに代えて、またはこれに加えて、外部パラメータ(例えば、外側温度、あるいは、コンバーチブルトップまたは窓が開いている程度)に依存して基本値を自動的に決定することも可能である。
【0092】
場合によっては、上述した数学関数または特性フィールドを理論的に求めることができないことがあり、その場合、これらを実験的に求めなければならない。また、数学関数と、格納されている特性フィールドの組合せを使用して、暖気温度を適合させることもできる。しかしながら、適切な特性フィールドを選択することによって、補助暖房装置を制御するための数学的記述をまったく必要としないようにすることもできる。
【0093】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、制御ユニットのメモリまたは温度判定ユニットのメモリに、1つまたは複数の特性フィールドが格納されており、これらの特性フィールドは、暖房装置から吐き出される空気が特定の暖気温度を有するように、パラメータ(例えば、冷気温度、車両速度)に応じて加熱素子によって発生させなければならない加熱出力を示す。
【0094】
特性フィールドを決定する場合、冷気を目標温度まで加熱するために加熱素子によって発しなければならない加熱出力を実験的に求めることができるように、多数の入力パラメータ(例えば、冷気温度、空気流量の大きさ、窓およびコンバーチブルトップの開放状態、目標暖気温度)について、一連の測定を実行する。個々の車両それぞれ、または車両の形式それぞれにおいて求められる特性に基づいて、補助暖房装置の制御を、個々の車両それぞれ、または車両の形式それぞれに正確に適合させることができる。
【0095】
特性フィールドの決定は、個別のセクションに分けることもできる。例えば、補助暖房装置の製造業者が、暖房装置の特性を工場において実験的に確定し、それらを第1の特性フィールドに格納する一方で、その後に、自動車の製造業者が、第2の特性フィールド(車両に依存する影響によって式が定まる)を求める。
【0096】
さらに、個々の車両それぞれについて特性フィールドを求める必要もない。1つの型式の車両または1つの型式の補助暖房装置の中では、極めてわずかな特性の差異が生じるのみであるため、通常では、特定の型式の車両のうちの1つの車両のみについてと、特定の型式の補助暖房装置のうちの1つの補助暖房装置のみについて、特性フィールドを求めれば十分である。
【0097】
さらに、特性フィールドによって制御することにより、制御ユニットもしくは温度判定ユニット、またはその両方を単純に修正することができ、なぜなら、これらのモジュール/メモリユニットに格納されているデータを端子4a,4bを介して容易に更新できるためである。
【0098】
図6は、暖気温度を考慮する、補助暖房装置の制御の基本的な原理を示している流れ図である。ステップS1において、車両速度、または車両速度に依存するパラメータ(例えば、車輪速度)に基づいて、暖房装置から吐き出される空気の目標暖気温度を決定する。次いで、ステップS2において、加熱する、入ってくる冷気の温度を判定する。しかしながら、冷気温度より前に暖気温度を決定する必要はなく、暖気温度を決定する前に冷気温度を判定することもでき、あるいは、両方の値を同時に求めることができることが、当業者には認識されるであろう。
【0099】
ステップ3において、加熱素子3によって発生させる加熱出力を、ステップS1およびステップS2において求めた冷気温度および暖気温度に依存して決定する。この加熱出力の決定は、上述した式に基づいて、もしくは、格納されている特性フィールドによって、またはその両方によって行うことができる。発生させる加熱出力が決定された時点で、ステップS4において、加熱素子3の加熱出力を調整する。
【0100】
図6に示した制御方法では、補助暖房装置の中を流れる空気流が変化しない。したがって、加熱出力を増大または減少させると、それぞれに対応して、補助暖房装置から吐き出される空気流の温度がただちに上昇または下降する。冷気温度を考慮することによって、吐き出される暖気が、所望の暖気温度まで正確に加熱されることがさらに達成される。このようにして、加熱される空気流の不快な過度の暖房が高い信頼性で回避される。
【0101】
自動車の暖房装置が通常では車両の空気ダクトに収容されており、ブロアによって新鮮な空気が供給されることを考えたとき、空気の吸込口または吐出口が詰まった場合、あるいはブロアが故障した場合、過度な暖房が起こりうる。これらの場合、加熱素子内において空気流量が減少する、あるいは空気が逆流するため、加熱出力が変更されないままであると、空気ダクトに含まれている空気が非常に高い温度まで加熱される。したがって、特定の状況下では、吐き出される暖気の温度が60℃を超えることがある。
【0102】
空気流の障害による問題を回避する目的で、制御ユニットは、エラー認識を実行することが好ましい。これを目的として、制御ユニットは、ブロアの実際の回転速度と、ブロアの制御入力に印加されている電圧とを比較する適正電圧チェック機能(plausibility check)を備えている。例えば、空気の吸込口が詰まることによって、ブロアによって運ばれる空気流量が減少すると、その影響として、特定の回転速度に達するために要求される電圧が低くなるため、この電圧値は、空気ダクトにおける問題の好適なインジケータである。
【0103】
したがって、特定の速度に調整されるように、電圧(おそらくは許容限界値(指定する必要がある)を減じた電圧)を余分に下げなければならない場合、制御ユニット2は、加熱出力を決定するのに、より低い空気流量値を使用する。減少した空気流量が補正されるように、例えば、1つの(快適さ)段階だけ弱まる方向に、加熱出力を切り替えることができる。空気流量値を小さくし、結果としての加熱出力が減少しても依然として適正電圧チェックに合格しない場合、考慮した空気流量値をさらに減少させる。この操作を、暖房モジュールが完全にオフになるまで続けることができる。
【0104】
しかしながら、空気ダクト内の動作障害は、加熱素子において直接的に検出することもできる。PTC加熱素子は、加熱素子の温度が上昇するにつれて増大する温度依存のオーム抵抗を有する。したがって、加熱素子を流れる電流は、電圧が一定のままであり加熱素子の温度が上昇すると、減少する。加熱素子の中を空気が流れるとき、その空気が加熱素子から熱を取り出し、加熱素子が冷える。これにより、ラジエータ要素の中を流れる空気に加熱出力が伝わるが、加熱素子の電気抵抗は一定のままである。したがって、PTC素子における連続的な空気流の場合、PTC素子を流れる電流は、特定の値(指定する必要がある)より高くなければならない。例えば、詰まりによって、あるいはブロアの故障によって、空気流が妨げられると、電流値は、指定されている限界値より下がる(PTC効果)。結果として、加熱素子が作動停止する。
【0105】
上述したPTC効果によって加熱素子が受動的に作動停止しても、吐き出される暖気は、この作動停止より前に、おそらくは、乗員にとって不快あるいは煩わしい温度まで加熱されている。これを回避する目的で、加熱素子における電流を測定することが好ましい。信号の値が所定の値よりも下がった場合、制御ユニットによって加熱素子3を作動停止する。
【0106】
上述した実施形態による補助暖房装置1は、温度判定ユニット5および制御ユニット2が個別のコンポーネントであるように実施することが好ましいが、この特殊な実施形態は、本発明による補助暖房装置1にとって必須ではない。あるいは、それぞれの機能を、例えば、メモリおよびプロセッサを備えている1つのコンポーネントに統合することもでき、このコンポーネントは、メモリに格納されている制御プログラムを使用して温度を求め、制御ルーチンを使用して加熱素子を制御する。
【0107】
後流の影響を求めるうえで、コンバーチブルトップの状態または窓の開放程度に関する情報を含んでいる信号を制御ユニット2に供給することも可能である。制御ユニット2は、コンバーチブルトップまたはサンルーフが閉じているか開いているか、あるいは、どの窓が開いているか、およびどの程度開いているかを、この信号によって認識することもできる。
【0108】
さらに、本発明は、加熱出力および暖気温度の基本値を外部パラメータ(例えば、外側温度、コンバーチブルトップの状態)に連続的に適合させることに限定されない。基本値の適合化は段階的に行うこともでき、したがって、外部パラメータの値がその限界値を下回る、または上回る場合にのみ、基本値を所定の限界値に調整する。
【0109】
要約すれば、本発明は、特に車両の加速段階時に、加熱される空気の温度のオーバーシュートが高い信頼性で回避される電気式補助暖房装置を開示する。これを目的として、吐き出される暖気の温度を車両速度に依存して調整する。この調整は、格納されている特性フィールドを通じて行うことが好ましく、特性フィールドによって、複数の車両パラメータ(例えば、車両速度、コンバーチブルトップの開放状態、外側温度)を容易に考慮に入れることができる。入ってくる空気の温度は、車両においてすでに利用可能である温度値から導くこともできる。このようにして、使い勝手のよい電気式暖房装置を極めて容易に達成することができる。この暖房装置は、車両内で局所的に、例えば、車両のシート、あるいは車室の後部などにおいて、使用することができる。自動車の運転条件がたとえ動的に変化する場合においても、加熱された空気の温度変動を容易かつ高い信頼性で回避することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の電気式補助暖房装置であって、
前記補助暖房装置の中を流れる空気を加熱する少なくとも1つのPTC加熱素子と、
前記少なくとも1つの加熱素子の加熱出力を調整する制御ユニットと、
を備えており、
前記制御ユニットは、前記補助暖房装置から吐き出される空気の温度を、前記車両速度に依存して調整する、
電気式補助暖房装置。
【請求項2】
加熱後の空気の温度が前記速度に依存して変化するように、前記制御ユニットは基本値から開始して前記加熱出力を調整する、請求項1に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項3】
前記基本値は、事前に選択される、または、外部パラメータに依存して自動的に調整される、請求項2に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記基本値を外側温度に依存して調整する、請求項2に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項5】
前記基本値は、前記補助暖房装置の事前に選択される空気流量に依存して調整される、請求項2に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記車両速度に対する前記加熱出力の依存性を示す特性フィールドを格納するメモリを含んでおり、前記特性フィールドは、加熱後の前記空気の温度を変化させるために使用される、請求項1に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項7】
前記補助暖房装置は、前記補助暖房装置によって加熱される前記空気の冷気温度を判定する温度判定ユニットをさらに備えており、
前記制御ユニットは、判定された前記冷気温度にさらに依存して前記加熱出力を調整する、
請求項1に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項8】
前記温度判定ユニットは、前記冷気温度を、少なくとも1つの測定される温度値に基づいて判定する、請求項7に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項9】
前記温度判定ユニットは、前記冷気温度を、前記測定される温度値の少なくとも1つの補正係数にさらに基づいて判定する、請求項8に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項10】
前記補正係数は、前記測定される温度値と、判定される前記冷気温度との間の差を補正する、請求項9に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項11】
前記補正係数は、前記測定される温度値に対する、前記冷気温度の時間的変動を補正する、請求項9に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項12】
前記測定される温度値は、前記車両の内側の温度、もしくは、前記車両の外側の温度、またはその両方を示す、請求項8に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項13】
前記冷気温度は、前記車両の内側の温度および前記車両の外側の温度の重み付き組合せから判定される、請求項12に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項14】
前記測定される温度値は、前記自動車の空調システムによって提供される、請求項8に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項15】
前記温度を測定するために使用されるセンサーであって、加熱される前記空気を供給するブロアと前記加熱素子との間に配置されている、前記センサー、を備えている、請求項8に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項16】
前記制御ユニットは、
入力値に対する、発生させる前記加熱出力の依存性を記述する特性フィールドを格納しているメモリを備えており、
前記制御ユニットは、発生させる前記加熱出力を前記特性フィールドの値に従って調整する、
請求項1に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項17】
加熱される前記空気を前記加熱素子に供給するブロアを備えている、請求項1に記載の電気式補助暖房装置。
【請求項18】
自動車のシートであって、
前記シートの上側領域に形成されており、乗員の頭、肩、または首の領域に空気を供給するために使用される少なくとも1つの空気吐出口、を含んでいる空気ダクトを備えており、
前記空気ダクトの中を流れる前記空気を加熱する、請求項1に記載の電気式補助暖房装置をさらに含んでいる、自動車のシート。
【請求項19】
自動車の電気式補助暖房装置を制御する方法であって、前記電気式補助暖房装置は、前記補助暖房装置の中を流れる空気を加熱する少なくとも1つのPTC加熱素子を備えており、前記補助暖房装置から吐き出される加熱後の空気の温度が前記車両速度に依存して調整される、方法。
【請求項20】
加熱後の空気の前記温度が前記速度に依存して変化するように、前記加熱出力は、基本値から開始して、調整される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記基本値は、事前に選択される、または、外部パラメータに依存して調整される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基本値は、外側温度に依存して調整される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基本値は、前記補助暖房装置の事前に選択される空気流量に依存して調整される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記加熱出力を調整するために特性フィールドが使用され、前記特性フィールドは、前記車両速度に対する前記加熱出力の依存性を示しており、前記特性フィールドは、加熱後の空気の前記温度を変化させるために使用される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記補助暖房装置によって加熱される前記空気の冷気温度が判定され、
前記加熱出力は、判定された前記冷気温度に依存して調整される、
請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記冷気温度は、少なくとも1つの測定される温度値に基づいて判定される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記冷気温度は、前記測定される温度値の少なくとも1つの補正係数にさらに基づいて判定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記補正係数は、前記測定される温度値と、判定される前記冷気温度との間の差を補正する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記補正係数は、前記測定される温度値に対する、前記冷気温度の時間的変動を補正する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記測定される温度値は、前記車両の内側の温度、もしくは、前記車両の外側の温度、またはその両方を示している、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記冷気温度は、前記車両の内側の温度および前記車両の外側の温度の重み付き組合せから判定される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記冷気温度は、ブロアと前記加熱素子との間の空気ダクトに配置されているセンサーによって測定される、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−173274(P2009−173274A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−10151(P2009−10151)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(501324823)エーベルスパッヒャー・カテム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト (23)
【Fターム(参考)】